2017/02/28 2017年2月度チェックテスト第1問解答画面(正解)

正解です。
CBは普通社債に「一定の株価で株式に転換する権利」(オプションと呼ばれる)を加えた金融商品です。したがって、発行時にはオプションの価値(オプションプレミアム)の分だけ、普通社債よりも金利(クーポン)を抑えることができるはすですが、低金利が続く昨今、もともと単なる普通社債の金利も十分に低いため、CBの発行条件の一つである「金利」をゼロ(ゼロクーポン)にするだけでは、オプションの価値を十分に吸収できないケースが増えているようです。理論上は、吸収できなかったオプションの価値(金利を上回るオプションの価値)の分だけ、額面よりも高い価格でCBを発行できるはずですが、実際には額面前後で発行されることが多いです。これは、オプションの価値が過小評価された状態でCBが発行されているということに他なりません。この過小評価分は本来、企業にとっては「CBの引受先からもらい損ねた分」という性質を持ちますが、発行後になって発行企業がCBの引受先に請求できるはずもなく(そもそもCBの発行企業としても「もらい損ねたこと」に気付いていないケースが少なくありません)、デリバティブの取得者(通常はヘッジファンド)がその分安く株式を取得する(「株式を購入する権利を安く取得する」と言ったほうが正確)ことになります。すなわち、CBの発行企業がオプションプレミアムをもらい損ねた結果、一般株主の持ち分が希薄化することになります(問題文は正しいです)。

こちらの記事で再確認!
2017/02/01 リキャップCBは悪か?(会員限定)

2017/02/28 【失敗学第33回】テクノメディカの事例(会員限定)

概要

テクノメディカ(東証第一部上場)で、売上が前倒し計上されていた(2017年3月期は374百万円の売上取消が必要になった)。

経緯

テクノメディカが、2016年9月に東京証券取引所に改善報告書を提出するまでの経緯を時系列で示すと、次のとおり。
<2016年>
4月23日:テクノメディカは、会計監査人の有限責任監査法人トーマツより、採血管準備装置に係る売上取引に関して、「取引の実態が従前からの説明と異なる可能性があることを把握した」として、実態を説明することを求められた。トーマツは、テクノメディカの回答では不適切な会計処理がなされている疑いを払拭できないとして、テクノメディカに第三者委員会による調査の実施を求めた。
4月28日:テクノメディカは取締役会を開催し、第三者委員会の設置を決議(リリースはこちら)。
6月23日:テクノメディカは第三者委員会の調査報告書を公表(リリースはこちら)。
8月3日:テクノメディカは会計不祥事の責任を取り役員3名が辞任(会長および2名の常務取締役の辞任。退職慰労金は不支給)したことおよび会計監査人が異動(トーマツ→中小の監査法人)したことを発表。
8月19日:テクノメディカは過年度の財務報告の訂正を公表(リリースはこちら)するとともに、退任しなかった役員についても会計不祥事の責任を取り報酬を減額することを公表(リリースはこちら)。
9月8日:東京証券取引所はテクノメディカに対して「公表措置」を実施するとともに、改善報告書の提出を請求する(リリースはこちら)。
9月26日:テクノメディカが東京証券取引所に改善報告書を提出。

内容・原因・改善策

テクノメディカが2016年9月26日に東京証券取引所に提出した改善報告書によると、本件の問題点の主な内容とその原因、再発防止策は次のとおりである。

1 国内向け医療用装置の売上の前倒し計上

内容 「採血管準備装置」の売上の一部について、2007年3月期から前倒し計上が行われていた。また、「電子カルテ・検査システム」の売上の一部についても、2010年3月期から前倒し計上が行われていた。
原因 ・テクノメディカでは、製品の売上計上基準として出荷基準を採用していたが、エンドユーザーから依頼を受けた場合に限り、例外的に出荷していない段階で売上を計上する慣行(「先上げ」と称していた)があった(エンドユーザーの予算上の都合が主な理由)ところ、売上高の水増しを図るため、エンドユーザーからの依頼があったかのように書類を整えて売上の前倒し計上を行う不正が始まり、そのうちエンドユーザーからの依頼書面がなくても売上の前倒し計上が行われるようになった。その結果、社内倉庫が先上げの製品(売上は計上済み)でいっぱいとなり、外部倉庫を賃借して、そこに「出荷したはずの製品」を保管するようになった。3月末と9月末のたな卸の際には、「出荷したはずの製品」がカウントされることを防ぐため、監査法人に外部倉庫の存在を伝えていなかった。これらの不正は会長(当時。創業者でもある)の指示によるものであった。
・テクノメディカでは、創業者でもある会長の強いリーダーシップのもと経営が行われていた。会長が掲げた経営方針の一つに「右肩上がりの成長」(売上高は右肩上がりで増加し続けなければならない)という考えあり、適切な根拠を欠いたまま毎年右肩上がりの予算を立て、それを会長が「必達目標」と指示していた。その結果、会長をはじめ役員・従業員が根拠なき予算に縛られてしまった。
・売上目標の達成状況に基づく人事評価が行われていた。
・内部通報の通報窓口が内部監査室であり、社長直轄の組織であるため、先上げ取引に関して異を唱えにくい状況であった。
・常勤監査役(当時。現常勤監査等委員)は書類がそろっていないにもかかわらず売上計上している先上げ取引に気付き、常務取締役経営管理部長兼経営企画室長(当時)に確認したところ「グレーではあるが問題ない」という回答を受け、監査法人からも当該取引について特に指摘を受けていなかったことから、常務取締役の説明を信じ、問題のない取引であるとの認識を持つに至った。
・内部監査室長(当時)も先上げ取引に疑問を持ち、常勤監査役へ相談したところ、常勤監査役より「常務取締役からグレーではあるが問題はない」という回答をすでに得ていると説明があったことから、それ以上の追及は不要と判断し、監査報告書にも特段先上げ取引について記載しなかった。
・監査役や内部監査室がそれぞれの監査結果を監査法人にフィードバックしていなかったことから、監査法人が十分な情報を得にくい状況であった。
対応策 ・コンプライアンス研修の実施
・倫理規程・行動規範の周知徹底
・予算制度の見直し
・人事評価制度の見直し
・取締役会・監査等委員会の活性化と機能強化
・内部通報制度の活用促進
・内部監査の強化
・監査法人とのコミュニケーション強化
・経営管理部役職員の会計知識の強化
・売上計上基準の変更
・外部倉庫管理の強化

2 システム売上の前倒し計上

内容 ITソリューション部が、採血管準備装置等の売上の一部について、2010年3月期から、売上高の前倒し計上が行われていた。また、架空売上も計上されていた。
原因 常務取締役の指示または営業担当者の判断で、検収確認書兼受領書が偽造されていた。
改善策 1を参照

3 海外取引に関する不正

内容 海外の販売代理店に採血管準備装置等を売却する取引につき、書類が偽造され売上の前倒し計上が行われていた。
原因 輸出管理室の責任者が顧客注文書、船荷証券、航空貨物運送状を偽造していた。一部の取引については、常務取締役が船荷証券や航空貨物運送状を偽造していた。
改善策 1を参照
<この失敗から学ぶべきこと>

テクノメディカでは、これまでにも不正が発覚する契機が何度かあったものの、「信頼の連鎖」により、不正は発覚に至らず、長期間にわたり売上水増しが行われることになりました。まず、書類がそろっていないにもかかわらず売上計上している先上げ取引があることに気付いた常勤監査役は、常務取締役に問い合わせたところ「グレーではあるが問題ない」という回答を受け、監査法人からも当該取引について特に指摘を受けていなかったことから、経営管理部長として経理知識に詳しかった常務取締役の説明を信じ、問題のない取引であるとの認識を持つに至りました。また、内部監査室長も先上げ取引に疑問を持ち、常勤監査役へ相談したところ、常勤監査役より「常務取締役からグレーではあるが問題はない」という回答をすでに得ていると説明があったことから、それ以上の追及は不要と判断し、監査報告書にも特段の記載をしませんでした。このように、常勤監査役や内部監査室長が不正の兆候を掴んでいたにもかかわらず、常勤監査役の常務取締役への信頼、内部監査室長の常勤監査役への信頼が連鎖したことで不正の発覚が遅れることになりました。監査は性悪説に立ちつつ、人の説明を鵜呑みにはしない慎重さが求められる職務であることを改めて思い起こさせる事件と言えます。

また、テクノメディカでは、外部倉庫を賃借して先上げした製品を隠すことで、監査法人の目を逃れていました。上場会社の取締役としては、テクノメディカの再発防止策に掲げられている外部倉庫管理の強化(①契約実務を担当する業務課において、生産技術部から新規の外部倉庫の利用申請を受けた際には倉庫の必要性を確認する、②業務課では「どの倉庫に、どの物品を、いつ入庫したのか」という情報を把握したな卸業務に使用するほか、長期滞留しているものがないか、モニタリングを行う。③業務課が持つ外部倉庫情報は監査法人と共有する)を参考にして予防的統制を構築するとともに、上場会社の監査役や内部監査担当者としては、自社で同様の事件がないことを確認するために、倉庫料や地代家賃等の勘定科目をレビューしたり押印管理簿をレビューしたりして、社内でも一部の者しか知らない隠された外部倉庫との契約がないかどうかを確認するようにすべきです。

2017/02/28 決算短信の改正に伴い判断が求められる事項

企業と投資家の「建設的な対話」を促進する観点から、決算短信・四半期決算短信について、開示の自由度を高めるとともに、“速報”としての役割に特化するための見直しが金融庁主導で進められてきたのは周知のとおり(2016年6月27日のニュース「決算短信・四半期決算短信改正が企業に与える具体的な影響」、2016年11月25日のニュース「経営指標をサマリー情報のトップに記載することも可能に」、2016年12月12日のニュース「MD&Aに求められる経営者の視点」参照)。今月(2017年2月)10日には東証から改正上場規則が公表されている。改正の中身は概ね予想通りとなっているが、経営陣は、今回の改正を受け開示の方法や内容を変更するのか否か、判断を迫られることになる。

具体的にどのような判断を迫られるのかについて見る前に、今回の改正内容をおさらいしておこう。まず、・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから

2017/02/28 決算短信の改正に伴い判断が求められる事項(会員限定)

企業と投資家の「建設的な対話」を促進する観点から、決算短信・四半期決算短信について、開示の自由度を高めるとともに、“速報”としての役割に特化するための見直しが金融庁主導で進められてきたのは周知のとおり(2016年6月27日のニュース「決算短信・四半期決算短信改正が企業に与える具体的な影響」、2016年11月25日のニュース「経営指標をサマリー情報のトップに記載することも可能に」、2016年12月12日のニュース「MD&Aに求められる経営者の視点」参照)。今月(2017年2月)10日には東証から改正上場規則が公表されている。改正の中身は概ね予想通りとなっているが、経営陣は、今回の改正を受け開示の方法や内容を変更するのか否か、判断を迫られることになる。

具体的にどのような判断を迫られるのかについて見る前に、今回の改正内容をおさらいしておこう。まず、開示の自由度を高める観点から、決算短信等の「サマリー情報」は、使用が「強制」から「要請」とされ、その様式は「参考様式」と位置付けられた。また、添付資料については、「一律に記載を要請する事項」「投資判断に有用な情報の追加の要請」の区分が撤廃され、決算短信等で記載が要請される事項は、原則として“速報性”が求められる情報のみとなった。これに伴い、従来は一律に記載が求められていた「経営方針」は削除され、「有価証券報告書」の記載事項とされている。

下表は、改正前と改正後の決算短信で記載が要請されている内容を項目レベルで比較したものである(網掛部分が変更箇所)。

26643_1

改正後の決算短信の記載について判断が求められるのは以下の4点だ。以下、それぞれについて解説しよう。

判断①「サマリー情報」の参考様式に基づくか否か
改正前は「サマリー情報」の使用が「強制」されていたが、改正後はその様式が「参考様式」と位置付けられ、使用も「強制」でななく「要請」となった。このため、「サマリー情報参考様式」に基づかない「サマリー情報」の開示も可能となる(2016年11月25日のニュース 「経営指標をサマリー情報のトップに記載することも可能に」参照)。

ただし、参考様式に基づく開示が「要請」されていることから、参考様式と著しく異なる内容の開示を行うことは憚られるところだろう。現実的には、参考様式をベースにしつつ、投資者等との対話を通じ、「サマリー情報」において必要な記載の追加や、従来の記載の修正を検討することになる。

判断②「サマリー情報」における業績予想の開示方法
今回の改正により、サマリー情報の業績予想記載欄には「投資者が通期業績を見通す際に有用と思われる情報を記載」することとされ、従来の「表形式」「自由記載形式」の区分が撤廃されている。これは、2016年1月27日の「第4回 未来投資会議」で、安倍首相から「過度に短期的、投機的取引に陥ることなく、中長期的な企業価値の向上を後押しする観点から、四半期報告を含め、企業情報開示の在り方を見直し、投資家が真に求める情報が効率的・効果的に開示されるように」との方針が示されたことを踏まえたものだ。

決算短信・四半期決算短信作成要領等においては、以下のとおり実際の記載例が示され、“多様かつ柔軟な”開示が可能であることが明確化されている。

<業績予想の開示例>
A.業績の予測値を記載
ⅰ予想期間を「第2四半期(累計)・通期」、「通期のみ」、「四半期のみ」などとして記載
ⅱ 予想項目(売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益、1株当たり当期純利益)を選択して記載
B. 予想数値を特定値ではなくレンジで記載
C. 業績の予想値を記載しない旨やその理由を記載
D.中長期的な目標などを記載

多くの会社は、表形式で5項目(「売上高」「営業利益」「経常利益」「親会社株主に帰属する当期純利益」「1株当たり当期純利益」)を開示していたと考えられるが、今回の改正を契機に柔軟な記載方法を検討することになろう。特に記載要領で示されている「D.中長期的な目標などを記載」は注目に値する。短期の利益に縛られず中長期的な経営を重視している会社の開示はこの方向に向かうことが予想される。

判断③決算発表と同時に財務諸表を開示するか否か
「連結財務諸表及び主な注記」は「サマリー情報」との同時開示が要請されている。ただし、投資判断を誤らせる恐れがない場合には、決算短信等の開示を早期化するため「サマリー情報」および「経営成績等の概況」を先行して開示し、準備が整い次第直ちに「連結財務諸表及びその注記」を開示することが可能となった。

サマリー情報の参考様式で求められている事項は、少なくとも連結財務諸表に記載する数値等が確定していなければ記載できない。しかし、今回の改正により、「連結財務諸表及びその注記」が、連結財務諸表規則が求める水準を満たしていない段階(例えば必要な注記のうちの一部を作成できていない)でも、「サマリー情報」および「経営成績等の概況」を作成することが可能な場面も想定される。このような場合は、速報性を重視して、「サマリー情報」および「経営成績等の概況」を先行して開示することも検討に値する。

連結財務諸表規則 : 連結財務諸表の様式や開示内容に関するルール

判断④取引所が要請していない事項を開示するか否か
改正前は、「一律に記載を要請する事項」のほか、「投資判断に有用な情報の追加」が要請されていた。改正後は、「速報性が求められる情報」のみが要請されることとなったが、要請されている事項以外でも、投資者等との対話を通じ会社が必要と判断した事項を追加で記載することは可能だ。

もっとも、追加で記載する事項が多ければ多いほど速報性は損なわれる。したがって、追加の記載事項は、速報性を害しない範囲にとどめるのが妥当であろう。

以上の決算短信の改正は、2017年3月期から適用とされる。

また、四半期決算短信でも同様の趣旨の改正が行われており、2017年3月31日以降に終了する四半期末から適用される。したがって、12月決算会社の第1四半期からは、改正後の取扱いに基づき四半期決算短信を作成する必要がある。改正前と改正後の四半期決算短信で記載が要請されている内容を項目レベルで比較すれば下表のとおりとなる(網掛部分が変更箇所)。

26643_2

改正後の四半期決算短信の記載で求められる判断として挙げられるのが、決算短信における判断④でも述べた「取引所が要請していない事項を開示するか否か」という点だ。例えば、「経営成績等に関する分析」や四半期連結財務諸表注記の「セグメント情報」は投資判断に有用な情報として多くの会社で開示されてきたが、今後も当該内容を開示し続けるのか否か、判断を求められることになる。

2017/02/28 【2017年1月の課題】買収防衛策の継続:解答(会員限定)

買収防衛策をめぐる環境は大きく変化

買収防衛策(*1)は2006年から08年にかけて導入が相次ぎ、08年末時点の導入企業は569社に達しました。その後、導入企業は頭打ちとなる一方、有効期限が切れるのに合わせて廃止(非継続)する企業が相次いだため、直近(2016年末)の導入企業は450社まで減っています。

*1 日本で最も活用されている買収防衛策が「ライツプラン」です。ライツプランという名称は、新株を購入する「権利(ライツ)」から来ています。また、毒薬が回って体が弱るようなイメージがあることから、「ポイズンピル(毒薬条項)」とも呼ばれます。
事前警告型ライツプランの基本的な流れは、(1)一定割合以上の株式取得を狙う敵対的な買収者に対し、事前に設定した「猶予期間」中に、買収者自身や買収提案の内容など詳細な情報の提供を要求する、(2)社外役員や有識者などから構成される「独立委員会」が買収提案を精査する、(3)独立委員会の勧告を踏まえて、取締役会が賛成/反対の対応を決定する―――となっています。
買収者がこのプロセスに従わずに買収(一定比率(通常は15ー20%)以上の株式の買付け)を強行した場合、あるいはこのプロセスを通じて買収提案が濫用的と判断された場合には、(3)により取締役会は買収提案への「反対意見」を提示し、必要に応じて対抗措置(新株予約権の発行など)を決議することになります。「濫用的」と見なされる買収行為の典型例として、株式を買い占めた後に高値で買い取ることを要求する、といったことが挙げられます。

この間、ブルドックソース事件(2007年)の発生に加え、持合い解消、機関投資家による議決権行使の活発化、議決権行使助言機関のポリシー変更、日本企業のコーポレートガバナンスの強化など、買収防衛策を巡る環境は大きく変わっています。

ブルドックソース事件 : 米スティール・パートナーズが、ブルドックのすべての発行済株式の取得を目指し公開買付けを公告したのに対し、ブルドックソース社が買収防衛策(新株予約権無償割当)を発動した(スティール・パートナーズは新株予約権を行使できないという差別的行使条件あり)。そこでスティール・パートナーズは裁判所に新株予約権無償割当の差止めを請求したが、最高裁はこの請求を退けている。
議決権行使助言機関のポリシー変更 : 買収防衛策の導入議案については、議決権行使助言会社大手のISS、準大手のグラスルイスとも原則反対のスタンスをとっている。ISSは「独立社外取締役が3分の1かつ2名以上」など形式審査の項目を掲げているが、すべてクリアしても次の個別審査(具体的な株主価値向上施策など)には厳しいスタンスで臨むことになる。グラスルイスも一部の「例外的事案」を除き、基本的に反対である。

通常、買収防衛策の有効期限は3年とされており、有効期限が迫る度に継続か廃止かで悩む企業が多いようです。以下、買収防衛策の意義を確認したうえで、継続か廃止かを判断する際に検討するべきポイントについて解説します。

買収防衛策の意義

まず確認しておきたいのは、買収防衛策が企業(経営陣)を敵対的な買収者から防衛するためのものと捉えるのは誤りであるということです。

上場企業である以上、たとえ敵対的な(=経営陣の同意を得ない)買収だとしても、買収者が株式を買う権利、さらには一般株主が買収者に株式を売る権利を否定することはできない、というのが原則です。一方、買収防衛策が目指すのは「“濫用的な”買収者から企業価値および株主共同の利益を守る」こと、すなわち、株主の権利を濫用することで企業価値を損なうような買収者から一般株主を守ることです。これを踏まえると、買収防衛策の意義は、①買収時の手続きを定めることで十分な時間・情報を確保することと、②潜在的な買収者を牽制することで拙速な買収提案を予防すること、と整理することができます。以下、それぞれについて詳しく説明します。

①買収時の手続きを定めることで十分な時間・情報を確保する
買収防衛策は買収者に対し、一方的な株式の買付けを避け、一連の手続きに従うことを要求します。通常の買収防衛策では、買収者がこの要求に反する場合には新株予約権の割当て(*2)に代表される対抗措置が発動されるように設計されているため、買収者はこの手続きを守らざるを得ません。これにより、取締役会・独立委員会は買収者が濫用的か否かを判断する、あるいは経営陣が水面下で買収者と交渉を行うために十分な時間や情報を得ることができます。

*2 「時価より安い価格で新株を取得する」権利を株主に無償で割り当てる手法。買収者はこの権利を行使できないようにすることで、買収者の持株比率を低下させる効果がある。(株式数が増えることで)1株当たりの株価が安くなるため、保有する株式数の変わらない敵対的買収者は大きな損失を被ることになる。

なお、買収者が手続きに従ったとしても、取締役会が当該買収を濫用的と判断した場合には対抗措置が発動されることになりますが、これに対し、買収者は裁判所に差止請求を行うことが予想されます。しかし、日本では買収防衛策を巡る判例がブルドッグソース事件しかないため(同事件では、買収者による差止請求は認められず)、実際に差止請求が行われた場合に裁判所がどのような判断を下すのか、極めて不透明なのが実情です。したがって、よほど典型的な濫用的買収者でない限り対抗措置の発動は回避し、交渉によって妥協点を模索する方が得策でしょう。

②潜在的な買収者を牽制することで拙速な買収提案を予防する
買収者の立場からすると、買収防衛策を導入する企業との交渉は(1)で言及した手続きに従う必要があるために一定の時間を要することになります。しかも、拙速な買収提案を行った結果として「濫用的な買収者」とのレッテルを貼られてしまうと、対抗措置の発動により経済的な損失を受けるだけでなく、レピュレーションも大きく損なわれることになります。したがって、買収者としては、拙速な買収提案を避け、慎重にならざるを得ないでしょう。

継続・非継続を検討する際のポイント

(1)株主の理解
まず現実的な問題として検討する必要があるのは、株主総会で買収防衛策の継続議案を上程した場合に株主の理解を得られるのか、ということです。

買収防衛策は会社法上の決議事項ではないため、「宣言的決議」として株主の意思を確認することになります。通常は普通決議と同じく過半数の賛成を得られれば可決とされますが、過去には否決されたり、あるいは直前で上程を撤回したりといった事例もないわけではありません。なかには、はじめから否決リスクを懸念して議案の上程を断念し、非継続としたケースもあるようです。また、可決されるにしても、過半数ギリギリでは株主の十分な理解を得たとは言い難いという見方もあります。

買収防衛策の継続議案を株主総会に上程する際には、前回の継続時以降の株主構成の変化、特に持合い解消による安定株主の減少や機関投資家の増加を踏まえ、賛成率がどの程度変化しそうなのか、票読みをしておく必要があります。最近は議決権行使に関するポリシーを公開している機関投資家が増えていますので、票読みの際には参考にするとよいでしょう。

(2)敵対的な買収提案が行われるリスク
次に考えるべきは、敵対的な買収提案が行われるリスクが本当にあるのか、ということです。特にオーナーや政策保有といった安定株主が株主構成の大半を占めている場合にはリスクは低く、買収防衛策を継続すると“過剰防衛”となる可能性もあります。

逆にリスクが高い典型例としては、安定株主が少なく株主に機関投資家が多い企業、中長期的な成果を目指す取組みが株式市場に理解されず株価が割安に放置されている企業、が挙げられます。このような企業であれば、買収防衛策が必要と判断したとしても、一定の説得力があるでしょう。

このように、経営陣は自社のリスクの程度に応じて、本当に買収防衛策が必要なのか、改めて議論するべきです。

(3)買収防衛策の内容
上記(1)や(2)にも関連しますが、買収防衛策が機関投資家の理解を得られる内容になっているか、想定される敵対的買収リスクに対応した内容になっているか、という点も重要です。例えば、機関投資家の理解を得るために、買収時の手続き期間の上限(例えば、買収提案から60日以内に結論を出すなど)を設けることで期間の引き伸ばしを自ら防止する、自社の敵対的買収リスクの内容に応じて買収者を濫用的と判断する場合の要件を絞り込む(例えば、想定される買収者が(アクティビスト等ではなく)事業会社に限定されるのであれば、ステークホルダーに迷惑をかけるような買収が行われる可能性は低いため、ステークホルダーへの影響に関連した要件は不要など)、といった工夫が代表的です。

また、買収提案を精査する独立委員会(上記*1参照)のメンバー構成も機関投資家の関心事です。従前は社外取締役がいない、あるいは、いても人数が少ない企業が多かったため、独立委員会の委員には社外の有識者が就任するケースが少なくありませんでしたが、社外取締役の設置・増員が進んだ今日では、独立委員会の委員を社外取締役・監査役に限定するケースが増えているようです。

上記(1)と(2)に加え、後述の(4)も踏まえて買収防衛策の内容を見直す必要があるかどうか、検討することが求められます。

(4)買収防衛策を生かす体制
上述のとおり、買収防衛策の意義の一つは、敵対的買収提案が行われた場合に時間と情報を確保し、買収者との交渉を有利に進めることにあります。逆に言えば、この意義を生かす体制が整っていないと、買収防衛策は無意味なものになってしまいかねないということです。経営者、経営者を監督するコーポレートガバナンス(独立委員会・独立社外取締役)、さらに両者を支える事務局、に分けて考えてみましょう。

経営者に求められるのは、企業価値向上のストーリーを確立することです。「買収者が実現する企業価値=買収価格」ですから、経営者が描くストーリーが実現した場合の企業価値が買収価格を上回っていなければ、端から交渉になりません。また、想定される買収提案の内容によって、このストーリーにおいて強調するべき内容が変わってくるという点も重要です。例えば、金融資産や不動産に目を付けた買収提案に対しては、金融資産や不動産を有効活用して企業価値向上につなげるということを強調する必要があります。同業他社が事業上のシナジーを目指して買収提案をしてきた場合には、買収以外の方法でもシナジーを実現できることを強調する内容になっていると、一般株主の理解を得やすいでしょう。そのためには、企業価値向上のストーリーを、自社に起こり得る買収提案の内容に柔軟に対応できるようなものにしておくことが重要です。

独立委員会・独立社外取締役(コーポレートガバナンス)は、企業価値ひいては株主共同の利益の視点から、経営者が示すストーリーと買収提案を公平に比較し、どちらが株主の利益となるのかを判断する必要があります。経営者は買収が成立すれば自らの立場が大きく変わる可能性がある利害関係者であるため、公平な判断は困難と言わざるを得ません。そこで、経営者から独立した立場にある独立委員会や独立社外取締役が客観的な判断を適切に下すことのできる体制を整備しておく必要があります。そのためには、単に人数を揃えるだけでなく、平時から上述した企業価値向上のストーリーを独立委員会や独立社外取締役と共有するよう努めることが重要です。

事務局が果たすべき役割も決して小さくありません。上述のとおり、買収防衛策は買収時の手続きを定めるものですが、期限内に必要なアクションを着実に実行するためには、平時からの準備が不可欠となります。社内規定を整備し、関与する担当者や責任の所在・役割分担などを明確にしておくべきでしょう。敵対的買収を想定したシミュレーションを行っておくのも有益です。

このように、買収防衛策を有効に機能させるためには様々な体制整備が必要になりますが、買収提案が行われていない平時の状態では、このような体制整備の議論は後回しにされがちです。買収防衛策の継続・非継続の議論を好機として、是非社内(できれば取締役会)で議論してみてください。

2017/02/28 【2017年2月の課題】働き方改革への対応

2017年2月の課題

政府や経済界が重点的に取り組んでいる「働き方改革」を巡る議論が活発化しています。 昨年(2016年)末には「同一労働同一賃金に関するガイドライン」の政府案が提示されたほか、今後は労働契約法やパートタイム労働法、労働者派遣法の改正も予想されるところであり、企業の賃金体系や人材マネジメントに大きな影響が出ることは必至となっています。
経営陣としては、この働き方改革にどのように対応していくべきでしょうか。

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

模範解答を見る
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから

2017/02/27 海外機関投資家、役員報酬議案に厳しい基準

日本企業の役員報酬が欧米企業に比べて低いと言われる中、欧米企業に倣って株式報酬など長期インセンティブ報酬の拡充を検討している日本企業は多い。その一方で、昨年(2016年)には英国の石油会社BPのCEOに対する巨額報酬に実に59%もの株主による反対票が投じられ話題を呼ぶなど(2016年4月18日のニュース「株主の59%が反対票 CEOの報酬議案を巡る“誤解”」参照)、欧米企業において高額報酬への批判が巻き起こっているのは皮肉とも言える。

高額報酬批判の背景には(一般従業員の給与と役員報酬の)“格差問題”があり、こうしたなか英国政府は、・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから

2017/02/27 海外機関投資家、役員報酬議案に厳しい基準(会員限定)

日本企業の役員報酬が欧米企業に比べて低いと言われる中、欧米企業に倣って株式報酬など長期インセンティブ報酬の拡充を検討している日本企業は多い。その一方で、昨年(2016年)には英国の石油会社BPのCEOに対する巨額報酬に実に59%もの株主による反対票が投じられ話題を呼ぶなど(2016年4月18日のニュース「株主の59%が反対票 CEOの報酬議案を巡る“誤解”」参照)、欧米企業において高額報酬への批判が巻き起こっているのは皮肉とも言える。

高額報酬批判の背景には(一般従業員の給与と役員報酬の)“格差問題”があり、こうしたなか英国政府は、昨年11月に役員報酬の透明化等を主な内容とするコーポレートガバナンス改革案を打ち出している(2016年12月9日のニュース『英国、報酬委員会に「従業員代表」を加える構想』参照)。そして、このような社会情勢を受け、高額報酬に対する厳しい目が海外機関投資家の間で広がりつつあるのは日本企業にとっても気になるところだ。

英国では、支払われた役員報酬額を記載した「年次報酬報告書」を作成し、毎年株主総会で決議することを求めている。否決されたとしても法的拘束力はないが(ただし、企業は否決された理由を説明する必要がある)、英たばこ会社Imperial Brandsの今年の株主総会では、CEOの報酬を850万ポンド(約12億円。昨年比300万ポンド(4.2億円)増)とする報酬方針報告書案が株主総会で否決され、訂正を求められている。また、英旅行代理店のThomas Cookが今年実施した株主総会では、同社の年次報酬報告書に対し、3分の1以上の株主が反対した。いずれも、高額な役員報酬に対する機関投資家の厳しい姿勢が反映された結果と言えるだろう。英国の2017年の株主総会は4月下旬~5月下旬にピークを迎えるが、上述した石油会社BPなど昨年の株主総会で多数の反対票が投じられた企業は、役員報酬を引き下げる等の対応をしない限り、昨年と同じことが繰り返される可能性もある。

機関投資家は既に役員報酬議案に関する厳格なガイドラインを作成しており、今年の株主総会でもそれに沿って議決権を行使するものとみられるが、その中でも特に重視されそうなのが、従業員の給与の上昇率との連動性だ。仮に役員報酬の上昇率が従業員の給与の上昇率を上回るようだと、反対票が投じられる可能性は高くなる。

コーポレートガバナンス・コード4-2、4-2①や機関投資家の求めに応じ、よりインセンティブの効いた役員報酬体系への改革を進める日本企業にとって、欧米企業における役員報酬抑制の流れには違和感を覚えるかもしれない。実際、役員報酬の絶対額が大きくない日本企業で「払い過ぎ」という論点が出てくるのはまだ先の話だと思われるが、“格差”により敏感な日本社会の特性も踏まえると、従業員の給与の伸び率に比べ役員報酬の伸び率が大きい場合には、少なくともその理由を説明できるようにしておいた方がよさそうだ。

2017/02/26 【役員会 Good&Bad発言集】社外取締役の選任目的

新興市場に上場するA社では、たった今、定例の取締役会が終了したところです。社外取締役のX氏らが退室した後、部屋に居残った社内取締役数名が小声で話し合いをしています。

専務取締役の「せっかくIT会社のB社から社外取締役のX氏を招聘したにもかかわらず、IT事業部の業績は低迷したままだ。」との発言に対して、取締役A・B・Cが下記の発言をしました。誰の発言がgood発言でしょうか?

IT事業担当取締役A:「X氏を通じてB社に対して期末までに相互に売上を計上できるようバーター取引を持ち掛けてみましょうか。B社と当社の双方が同額の売上を計上できる取引であれば、win-winの取引となるので、B社には話を持って行きやすいですね。IT事業部としてどのような内容のバーター取引にするのがよいのかすぐに検討を始めます。」

常務取締役B:「X氏は『取締役会への出席率』と『役員報酬』は高いが、売上への貢献度は低い。今は増収増益の実現のために全取締役が一丸となるべき時である。社外取締役も取締役の一員である以上、X氏には売上増にコミットしてもらいたいものだ。」

人事担当取締役C:「ちょっと待ってください。わが社は、そもそもIT事業部の売上増を期待してX氏を社外取締役に選任したのでしょうか。いま一度、選任時の目的に立ち返ってみてはいかがでしょうか?」

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

解説と正解はこちらをクリック
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから

2017/02/26 【役員会 Good&Bad発言集】社外取締役の選任目的(会員限定)

<解説>
「役割の明確化」で社外取締役への期待ギャップを解消

会社法改正、コーポレートガバナンス・コードの導入、投資家の要望などを受けて、この数年間で社外取締役を選任する上場企業が急増しました。従来、社外取締役を選任していなかった上場企業では、急ごしらえで社外取締役を迎え入れたため、社外取締役への期待ギャップ(期待と現実との落差)に悩む企業も少なくありません。

よく見受けられる期待ギャップの例として「社外取締役を導入したものの、業績が一向に上がらない」というものがあります。まず、はっきりさせておかなければならないのは、「社外取締役は業績向上のために選任するわけではない」ということです。社外取締役の役割は2017年2月13日のニュース「社外取締役をフル活用するためのPDCAサイクル」で紹介したとおり、「社内取締役だけでは適正に判断したり評価したりすることが難しい事項について独立した立場から関与し経営を適正ならしめる」というものです。社外取締役への期待ギャップが生じている企業では、この社外取締役の役割を当初から誤解していたのか、あるいはいつの間にか「経営の受託」「業務の執行」をも期待するようになってしまい、それが期待ギャップを生む原因になったものと思われます。

社外取締役を選任する前に、社外取締役に「期待する役割」と「期待しない役割」を明確にしておけば、社外取締役への期待が過度に膨らみ期待ギャップが生じてしまう事態を避けることができます。もちろん、選任済みの社外取締役に対しても、改めて「期待する役割」と「期待しない役割」を明確にすることで、すでに生じていた期待ギャップを解消する効果を期待できます。

経済産業省に設置されている「CGS研究会」(コーポレート・ガバナンス・システム研究会)が近日中に公表予定の「社外取締役活用のため実務指針」(案)では、社外取締役に「期待される役割・機能の例」や「期待しない役割・機能の例」として、以下の事項を指摘しています。

社外取締役に期待される役割・機能の例 社外取締役に期待しない役割・機能の例
・経営戦略・計画の策定への関与
・指名・報酬決定プロセスへの関与
・利益相反の監督
・投資家やその他のステークホルダーの意見の反映
・業務執行の意思決定への関与
個別の業務執行の細部にわたる指導

社外取締役に対して「期待する役割」を明確にすることには、社外取締役を評価する際のものさしを明らかにするというメリットもあります。なお、社外取締役の評価方法としては次の3つの方法が考えられます(上述の「社外取締役活用のため実務指針」(案)より)が、そのいずれの方法においても、社外取締役に対して「期待する役割」が明確になっていることが、評価の前提になることは間違いありません。
・社外取締役同士の相互評価
・取締役会の実効性評価を実施する中での評価
・株主等のステークホルダーによる評価

バーター取引の危険性

バーター取引は、相手の製商品・サービス(以下、製品等)を仕入れることを条件に自社の製品等を販売する取引のことです。バーター取引が実需をもとにした純粋な交換取引であれば何ら問題はないのですが、実需をもとにせずに相互に売上を融通しあう取引になると、売上のかさ上げ(粉飾)という問題が生じます。実需をもとにしないバーター取引では、購買企業では調達した製品等をまったく利用しない場合も少なくありません。売上欲しさに自社にとって価値のない製品等を調達してしまうのは、会社財産を不当に流出させる行為であるとともに、投資家を欺く行為でもあり、重大なコンプライアンス違反となります。上場会社でバーター取引が問題になった実例としてオークファンの事例がありますので、【失敗学第31回】オークファンの事例の「6 無形固定資産の会計処理の誤り(実質的な検収時期と売上計上時期)」を参照してください。

さて、以上の解説をご覧いただければ、どれがGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。

<正解>
GOOD発言はこちら

人事担当取締役C:「ちょっと待ってください。わが社は、そもそもIT事業部の売上増を期待してX氏を社外取締役に選任したのでしょうか。いま一度、選任時の目的に立ち返ってみてはいかがでしょうか?」
コメント:取締役Cは、取締役A・Bが社外取締役Xに「売上への貢献」を期待していることを知り、2人に「選任時の目的に立ち返ること」を促しています。この発言は、A社で生じた社外取締役への期待ギャップの解消を意図するものであり、GOOD発言です。取締役Cは、バーター取引の問題点も指摘できていれば、なおGOODでした。

BAD発言はこちら
IT事業担当取締役A:「X氏を通じてB社に対して期末までに相互に売上を計上できるようバーター取引を持ち掛けてみましょうか。B社と当社の双方が同額の売上を計上できる取引であれば、win-winの取引となるので、B社には話を持って行きやすいですね。IT事業部としてどのような内容のバーター取引にするのがよいのかすぐに検討を始めます。」
コメント:取締役Aの発言は、社外取締役の選任目的を勘違いしているだけでなく、「金額が先にありき」の実需なきバーター取引に手を染めようとしており、BADな発言です。
常務取締役B:「X氏は『取締役会への出席率』と『役員報酬』は高いが、売上への貢献度は低い。今は増収増益の実現のために全取締役が一丸となるべき時である。社外取締役も取締役の一員である以上、X氏には売上増にコミットしてもらいたいものだ。」
コメント:社外取締役に売上増へのコミット(関わり)を期待するのは、まさに“お門違い”です。また、X氏の役員報酬が高いかどうかは、X氏が「求められた役割」をどの程度果たせているかが重要になるところ、そもそも取締役BはX氏の役割を正しく理解していない以上、役員報酬の多寡を正しく判断できる前提を欠いていると言えます。以上より、取締役Bの発言はBAD発言です。