高くなりすぎた株価を引き下げるために株式分割を行う上場会社は少なくない。株式分割により株価が“手が届く”水準となれば、個人投資家を中心に売買が活発化し(流動性の向上)、株主層の拡大も期待できる。
株式分割を行うためには、取締役会で「基準日」や「分割の割合」等を決議し(取締役会設置会社を前提)、さらに「基準日」の2週間前までに公告をしなければならないが(株式分割の手続きについては、ケーススタディ「株式の分割をしたい」の「株式分割を行うための手続き」を参照)、最近、この公告を失念した上場会社がある。マザーズに上場しているフリークアウトだ。
基準日 : 株式分割により株式の割当てを受ける株主を確定するために設定される日
同社は、先月(2016年9月)1日に株式分割を行っている。本来、同社の株式分割は下記のスケジュールで進むはずだった。
2016年8月16日:基準日公告
2016年8月31日:株式分割の基準日
2016年9月1日:株式分割の効力発生日
ところが、8月31日になって「8月16日の基準日公告」を失念していたことが判明、急きょその旨のリリースを行うことになった。このリリースで同社は、当該株式分割は「手続きに瑕疵があった」ものの、当該株式分割は取りやめないとの方針を打ち出した。ミスが発覚したのが株式分割の効力発生日の前日ということで、既に証券保管振替機構や証券取引所では株式分割が実行されることを前提にした実務上の諸手続きが完了する中、いまさら株式分割にストップをかけることはできないと同社は判断したのだろう。その結果、同社の株式分割は、手続き上の瑕疵があるまま予定どおり9月1日に実行された。
その後、フリークアウトは10月17日に再びリリースを出し、株式分割の基準日公告を失念した原因として「開示等に係る規程および手順書の未整備」「人員不足などによる開示等に係る相互チェック体制の不備」「組織的な教育研修会等の未整備」などを挙げるとともに、次に掲げる再発防止策を実施する方針を示した。
・取締役会で重要な事実を決定する際には、経営管理部管掌役員が「適時開示事項か否か」「法定公告が必要か否か」を事前に確認する
・開示規程や開示手順書を整備する
・開示担当者を増員(現在の2名から4名に増員)する
・法定公告の担当者を置く
・外部の専門家(証券印刷会社)と連携する
・開示責任者は、適時開示や法定公告を実施した際には、実施した旨をすべての役員、経営管理部門関係者および内部監査担当者に電子的方法で連絡する
・経営管理部適時開示担当マネージャーは、期日に適時開示がされているかどうかを「適時開示等チェック表」に基づいて確認する
・内部監査により、法定公告の有無を含む開示事項の種類・可否等の状況を毎月確認する。確認結果は常勤監査役を通じて監査役会に報告する
実は、株式分割時の基準日の公告を失念した上場会社はフリークアウトが初めてではなく、2007年のフリービット(現東証一部。当時マザーズ)や2013年の日本アセットマーケティング(マザーズ)などの前例がある。両社とも、効力発生日の5日前に基準日公告をし忘れていたことが発覚して株式分割の延期を余儀なくされ、東京証券取引所から改善報告書の提出を求められている(日本アセットマーケティングの事例については、「役員と会社の失敗学」を参照)。
いずれの事例も大事には至っていないものの、会社法上の手続きの瑕疵があれば、最悪の場合、株式分割そのものが無効ということにもなりかねない。また、こうした手続きミスは、会社のブランドイメージの毀損や、投資家や顧客などからの信頼の喪失につながる恐れもある。
法定公告の出稿は頻繁に発生する業務ではないだけに、担当者が習熟しづらい面があるのは事実だが、それは言い訳にならない。総務担当の取締役をはじめとする経営陣としては、自社でも法定公告忘れは発生しうると考え、そのリスクへの備え(内部統制)が十分と言えるか、検証しておくべきだろう。