2016/10/22 【ケーススタディミニテスト】追徴課税を受けた 第1問解答画面(正解)

正解です。
企業が、税務当局に税法の解釈が”微妙”な新規ビジネス・スキームについて事前照会をしても、“保守的”な回答しか得ることはできません。万が一税務当局から「×(=実行すれば課税する)」との回答が出た場合、企業は当該スキームをあきらめざるを得なくなります。逆に、事前照会で「〇(=実行しても課税しない)」という回答をもらった場合には、企業は照会をかけたスキームどおりにビジネスを実行せざるを得ません。事前照会で「〇」という回答をもらった後でビジネス・スキームを変更すれば、「事前照会の段階では把握されていなかった“新たな事実”」が生じたことになり、一転して課税を受けてしまう恐れがあるからです。ビジネス・スキームはちょっとした状況の変化で手直しが必要になることが珍しくないにもかかわらず、照会をかけたスキームに縛られてしまうのは避けたいところです。これらの点を踏まえれば、あえて税務当局への事前照会は行わず、「事前検討・対策」を徹底したうえでビジネス・スキームを実行し、税務調査に備えるということも経営判断としてはあり得るでしょう。以上より、問題文は「スキームを確定していない段階でも積極的に」という点で誤りです。

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2016/10/21 (新用語・難解用語)ソートリーダーシップ

大手メーカーでは、競合他社の製品を分解し、ネジに至るまで徹底的に調べ上げるという。競合他社との差別化は経営陣にとって永遠の経営課題だが、市場が成熟し、各社の製品やサービスにも大きな差がなくなる中、製品やサービスそのものでの差別化は容易なことではない。

こうした中、近年注目されているのが「ソートリーダーシップ(Thought leadership)」という考え方だ。ソートリーダーシップとは、ソート(Thought)、すなわち企業としての「志」や「理念」「思い」などを掲げ、それに対して顧客や消費者からの共感を得ることで、結果的に競合他社との差別化や売上増加につなげていこうという一種のマーケティング手法である。また、会社の評判を高めるという観点に立てば、レピュテーションマネジメントの一種とも言えよう。

例えば、あるメーカーが「自然環境の保護」を経営理念に掲げ、「原材料から製造過程まで一貫してエコにこだわる」という方針を打ち出したとする。その結果、・・・

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2016/10/21 (新用語・難解用語)ソートリーダーシップ(会員限定)

大手メーカーでは、競合他社の製品を分解し、ネジに至るまで徹底的に調べ上げるという。競合他社との差別化は経営陣にとって永遠の経営課題だが、市場が成熟し、各社の製品やサービスにも大きな差がなくなる中、製品やサービスそのものでの差別化は容易なことではない。

こうした中、近年注目されているのが「ソートリーダーシップ(Thought leadership)」という考え方だ。ソートリーダーシップとは、ソート(Thought)、すなわち企業としての「志」や「理念」「思い」などを掲げ、それに対して顧客や消費者からの共感を得ることで、結果的に競合他社との差別化や売上増加につなげていこうという一種のマーケティング手法である。また、会社の評判を高めるという観点に立てば、レピュテーションマネジメントの一種とも言えよう。

例えば、あるメーカーが「自然環境の保護」を経営理念に掲げ、「原材料から製造過程まで一貫してエコにこだわる」という方針を打ち出したとする。その結果、この理念に共感した消費者が、同じような機能を持った競合他社の製品よりも自社の製品を購入してくれることもあろう。場合によっては、若干価格が高くても自社の製品を選択してくれるかもしれない。

また、常に斬新な発想で新たな価値を生み出している企業、社会を変革する知恵とパワーを持った企業は「共感」を得やすい。スマートフォンを生み出したアップルや流通革命を起こしたアマゾン、膨大な情報に誰もが容易にアクセスできる社会を実現したグーグルなどはその典型であり、まさに「ソートリーダーシップ」を実践している企業と言えるだろう。ソートリーダーシップを発揮できるようになれば、企業側から広報宣伝活動をしなくても、顧客・将来側から自社の商品を手に取ってくれるという現象が起きる。ソートリーダーシップによるPR効果は、通常の広告宣伝に勝るとも劣らないと言える。

日本企業の中でソートリーダーシップを実践しているところは現時点ではあまり多くないが、機能面での商品やサービスの差別化が困難となる中、「良いモノを作れば売れる」という発想は捨て、ソートリーダーシップをもっと意識していくべきだろう。

ソートリーダーシップを発揮するためには、顧客や消費者が現在・将来においてどのような課題持ち、それを解決するために自社が今後何に取り組んでいくのかといったことを社会に向けて「メッセージ」として示す必要がある。ESGへの取組みを統合報告書に盛り込むのも一つのやり方だろうし、また、経営トップがメディア(インターネット、SNSを含む)を活用して積極的にメッセージを発信するのも有効だろう。

ソートリーダーシップを発揮するには、経営トップが「ソートリーダー」であることが望ましい。今は亡きアップルの創業者スティーブ・ジョブズ氏などはソートリーダーの典型であり、同氏が語る新商品への思いや今後の事業展開に共感し、同社のファン、そしてユーザーとなった人は多いはずだ。

日本企業でも経営トップの後継者の選任プロセスを透明化すべきという投資家の声を受け、指名委員会(任意のものを含む)を設置するところが増えているが、後継者選びにおいては、ソートリーダーとなりえる人物かどうかということも重要な視点の一つとなろう。

2016/10/20 会社への信頼を揺るがす法定公告の失念

高くなりすぎた株価を引き下げるために株式分割を行う上場会社は少なくない。株式分割により株価が“手が届く”水準となれば、個人投資家を中心に売買が活発化し(流動性の向上)、株主層の拡大も期待できる。

株式分割を行うためには、取締役会で「基準日」や「分割の割合」等を決議し(取締役会設置会社を前提)、さらに「基準日」の2週間前までに公告をしなければならないが(株式分割の手続きについては、ケーススタディ「株式の分割をしたい」の「株式分割を行うための手続き」を参照)、最近、この公告を失念した上場会社がある。・・・

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2016/10/20 会社への信頼を揺るがす法定公告の失念(会員限定)

高くなりすぎた株価を引き下げるために株式分割を行う上場会社は少なくない。株式分割により株価が“手が届く”水準となれば、個人投資家を中心に売買が活発化し(流動性の向上)、株主層の拡大も期待できる。

株式分割を行うためには、取締役会で「基準日」や「分割の割合」等を決議し(取締役会設置会社を前提)、さらに「基準日」の2週間前までに公告をしなければならないが(株式分割の手続きについては、ケーススタディ「株式の分割をしたい」の「株式分割を行うための手続き」を参照)、最近、この公告を失念した上場会社がある。マザーズに上場しているフリークアウトだ。

基準日 : 株式分割により株式の割当てを受ける株主を確定するために設定される日

同社は、先月(2016年9月)1日に株式分割を行っている。本来、同社の株式分割は下記のスケジュールで進むはずだった。
2016年8月16日:基準日公告
2016年8月31日:株式分割の基準日
2016年9月1日:株式分割の効力発生日

ところが、8月31日になって「8月16日の基準日公告」を失念していたことが判明、急きょその旨のリリースを行うことになった。このリリースで同社は、当該株式分割は「手続きに瑕疵があった」ものの、当該株式分割は取りやめないとの方針を打ち出した。ミスが発覚したのが株式分割の効力発生日の前日ということで、既に証券保管振替機構や証券取引所では株式分割が実行されることを前提にした実務上の諸手続きが完了する中、いまさら株式分割にストップをかけることはできないと同社は判断したのだろう。その結果、同社の株式分割は、手続き上の瑕疵があるまま予定どおり9月1日に実行された。

その後、フリークアウトは10月17日に再びリリースを出し、株式分割の基準日公告を失念した原因として「開示等に係る規程および手順書の未整備」「人員不足などによる開示等に係る相互チェック体制の不備」「組織的な教育研修会等の未整備」などを挙げるとともに、次に掲げる再発防止策を実施する方針を示した。

・取締役会で重要な事実を決定する際には、経営管理部管掌役員が「適時開示事項か否か」「法定公告が必要か否か」を事前に確認する
・開示規程や開示手順書を整備する
・開示担当者を増員(現在の2名から4名に増員)する
・法定公告の担当者を置く
・外部の専門家(証券印刷会社)と連携する
・開示責任者は、適時開示や法定公告を実施した際には、実施した旨をすべての役員、経営管理部門関係者および内部監査担当者に電子的方法で連絡する
・経営管理部適時開示担当マネージャーは、期日に適時開示がされているかどうかを「適時開示等チェック表」に基づいて確認する
・内部監査により、法定公告の有無を含む開示事項の種類・可否等の状況を毎月確認する。確認結果は常勤監査役を通じて監査役会に報告する

実は、株式分割時の基準日の公告を失念した上場会社はフリークアウトが初めてではなく、2007年のフリービット(現東証一部。当時マザーズ)や2013年の日本アセットマーケティング(マザーズ)などの前例がある。両社とも、効力発生日の5日前に基準日公告をし忘れていたことが発覚して株式分割の延期を余儀なくされ、東京証券取引所から改善報告書の提出を求められている(日本アセットマーケティングの事例については、「役員と会社の失敗学」を参照)。

いずれの事例も大事には至っていないものの、会社法上の手続きの瑕疵があれば、最悪の場合、株式分割そのものが無効ということにもなりかねない。また、こうした手続きミスは、会社のブランドイメージの毀損や、投資家や顧客などからの信頼の喪失につながる恐れもある。

法定公告の出稿は頻繁に発生する業務ではないだけに、担当者が習熟しづらい面があるのは事実だが、それは言い訳にならない。総務担当の取締役をはじめとする経営陣としては、自社でも法定公告忘れは発生しうると考え、そのリスクへの備え(内部統制)が十分と言えるか、検証しておくべきだろう。

2016/10/19 有償ストックオプション導入企業、2016年だけで既に100社超え

会計基準の改正により、(労働サービスの提供に対する対価として)費用に計上することが求められる方向となっている「有償ストックオプション」を導入する上場企業が相次いでいることが当フォーラムの調査で確認された。2016年1月1日から9月末までで少なくとも100社を超える上場企業が有償ストックオプションを導入しており、7月~9月の3か月間でも少なくとも30社以上の上場企業が導入をリリースしている。

2016年8月30日のニュース「有償ストックオプション、駆け込み導入が相次ぐ可能性も」でもお伝えしたとおり、企業会計基準委員会(ASBJ)は、「経過的な取扱い」として、注記を行うことを条件に、新会計基準等を新会計基準の「適用日以降」あるいは「公表日以降」に発行した有償ストックオプションに適用することとし、その前に発行されたものにはこれまで通りの会計処理を認める方向となっている。費用計上が必要なく決算に影響しない有償ストックオプションを導入するなら「今のうちに」と考えている上場企業は少なくないとみられる。

有償ストックオプションを導入している企業をリストアップしてみると気付くのが、・・・

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2016/10/19 有償ストックオプション導入企業、2016年だけで既に100社超え(会員限定)

会計基準の改正により、(労働サービスの提供に対する対価として)費用に計上することが求められる方向となっている「有償ストックオプション」を導入する上場企業が相次いでいることが当フォーラムの調査で確認された。2016年1月1日から9月末までで少なくとも100社を超える上場企業が有償ストックオプションを導入しており、7月~9月の3か月間でも少なくとも30社以上の上場企業が導入をリリースしている。

2016年8月30日のニュース「有償ストックオプション、駆け込み導入が相次ぐ可能性も」でもお伝えしたとおり、企業会計基準委員会(ASBJ)は、「経過的な取扱い」として、注記を行うことを条件に、新会計基準等を新会計基準の「適用日以降」あるいは「公表日以降」に発行した有償ストックオプションに適用することとし、その前に発行されたものにはこれまで通りの会計処理を認める方向となっている。費用計上が必要なく決算に影響しない有償ストックオプションを導入するなら「今のうちに」と考えている上場企業は少なくないとみられる。

有償ストックオプションを導入している企業をリストアップしてみると気付くのが、新興市場に上場している企業の多さだ。2016年7月以降の導入企業を見ると、下記の通り、マザーズ、JASDAQなどの新興市場に上場する企業が、東証一部・二部上場企業より圧倒的に多くなっている。

<2016年7月~9月の間に有償ストックオプションを導入した新興市場上場企業>

  企業名 市場
1 (株)エコミック 札証アンビシャス
2 (株)ジャパンインベストメントアドバイザー マザーズ
3 アイティメディア(株) マザーズ
4 (株)レアジョブ マザーズ
5 (株)マイネット マザーズ
6 アプリックスIPホールディングス(株) マザーズ
7 (株)ホープ マザーズ
8 (株)プラザクリエイト JASDAQ
9 あんしん保証(株) マザーズ
10 (株)Aiming マザーズ
11 (株)イトクロ マザーズ
12 CYBERDYNE(株) マザーズ
13 (株)エボラブルアジア マザーズ
14 (株)夢テクノロジー JASDAQ
15 ヒロセ通商(株) JASDAQ
16 (株)TOKYO BASE マザーズ
17 アビックス(株) JASDAQ
18 アドアーズ(株) JASDAQ
19 ピクセルカンパニーズ(株) JASDAQ
20 (株)エンバイオ・ホールディングス マザーズ

<2016年7月~9月の間に有償ストックオプションを導入した東証一部・二部上場企業>

  企業名 市場
1 ウェルネット(株) 東証一部
2 (株)メディアドゥ 東証一部
3 ソフトバンク・テクノロジー(株) 東証一部
4 日本商業開発(株) 東証一部
5 Jトラスト(株) 東証二部
6 (株)ブイ・テクノロジー 東証一部
7 (株)ファンコミュニケーションズ 東証一部
8 コンドーテック(株) 東証一部
9 (株)エス・エム・エス 東証一部
10 (株)ウィルグループ 東証一部
11 (株)ピーシーデポコーポレーション 東証一部

ただ、もう少し過去に遡ると、オムロン(株)、大和ハウス工業(株)、マネックスグループ(株)といった有力企業(いずれも東証一部上場)も有償ストックオプションを導入している。

当フォーラムの取材によれば、新会計基準は早ければ来年(2017年)4月に公表されることになろう(ただし、本件を議論しているASBJの実務対応専門委員会は多くの審議項目を抱えているため、もっと遅れるのではないかとの見方もある)。“駆け込み”発行を防止するため、ASBJは「公表日」から新会計基準を適用するのではないかとの観測もあるが、仮に「適用日」からとなったとしても、公表日からあまり間を空けないよう適用日が設定される可能性が高い。いずれにせよ、ASBJは有償ストックオプションを導入する企業が引き続き多いことを踏まえ、早期の適用開始を目指しているのは間違いない。有償ストックオプションの導入を検討する企業にとって、残された時間は多くないと言えよう。

2016/10/18 英国の取締役会評価が自己評価から第三者評価に移行した経緯

ウイリス・タワーズワトソン
組織人事部門シニアコンサルタント
高岡明日香

コーポレートガバナンス・コードが導入された当初は最も「エクスプレイン」の割合が高かった取締役会の実効性評価を求める補充原則4-11③だが、同原則のコンプライ率は、昨年(2015年)12月の36%から今年7月には55%へと上昇している(東証 コーポレートガバナンス・コードへの対応状況(2016年7月時点)5ページ参照)。ただし、日本企業における取締役会評価の中身は、コーポレートガバナンス・コード導入にあたり日本が手本とした英国のそれとは若干様相が異なる。

多くの日本企業が社内で評価を完結させる「自主評価」を行っているのに対し、英国では上場企業の約45%が第三者機関による評価、すなわち第三者評価を実施している。第三者評価が普及していないのは日本企業だけではない。英国以外の欧州諸国における導入割合は1割程度、米国では未だ数パーセントに過ぎない。米国ウイリス・タワーズワトソンによると、S&P500上位企業においてもまだまだ自主評価が主流だという。多岐にわたるコーポレート・ガバナンスに関連するプラクティスの中で、取締役会評価の分野においては、英国が最も先進的と言えそうだ。

もっとも、その英国でも、かつては自主評価が中心だった。取締役会評価を巡る英国の歴史を紐解くと、・・・

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2016/10/18 英国の取締役会評価が自己評価から第三者評価に移行した経緯(会員限定)

ウイリス・タワーズワトソン
組織人事部門シニアコンサルタント
高岡明日香

コーポレートガバナンス・コードが導入された当初は最も「エクスプレイン」の割合が高かった取締役会の実効性評価を求める補充原則4-11③だが、同原則のコンプライ率は、昨年(2015年)12月の36%から今年7月には55%へと上昇している(東証 コーポレートガバナンス・コードへの対応状況(2016年7月時点)5ページ参照)。ただし、日本企業における取締役会評価の中身は、コーポレートガバナンス・コード導入にあたり日本が手本とした英国のそれとは若干様相が異なる。

多くの日本企業が社内で評価を完結させる「自主評価」を行っているのに対し、英国では上場企業の約45%が第三者機関による評価、すなわち第三者評価を実施している。第三者評価が普及していないのは日本企業だけではない。英国以外の欧州諸国における導入割合は1割程度、米国では未だ数パーセントに過ぎない。米国ウイリス・タワーズワトソンによると、S&P500上位企業においてもまだまだ自主評価が主流だという。多岐にわたるコーポレート・ガバナンスに関連するプラクティスの中で、取締役会評価の分野においては、英国が最も先進的と言えそうだ。

もっとも、その英国でも、かつては自主評価が中心だった。取締役会評価を巡る英国の歴史を紐解くと、エンロン事件(2001年)後の2003年、ロンドン証券取引所上場企業に対し、原則として毎年取締役会評価(取締役会及び取締役個人の評価、(報酬、指名等の)委員会の評価)を実施することが義務付けられた。その後、英国の銀行業界を揺るがした金融危機(2008年)の反省を踏まえ、自主評価では不十分との論調が主流となり、2010年に導入されたコーポレートガバナンス・コードにより、「FTSE350対象企業は、少なくとも3年毎に取締役会の第三者評価を行い、年次報告書で開示すること」が義務付けられた。以降、英国における取締役会評価では「第三者評価」が標準となり、自主評価は、3年毎の第三者評価の間の2年間に簡易的かつ補完的に行われるものと位置付けられている。

FTSE350 : ロンドン証券取引所に上場する銘柄のうち時価総額上位350銘柄による時価総額加重平均型の株価指数。

では、第三者評価はどのような機関により行われているのだろうか。筆者は、2012年~2015年までの3年間、ロンドンで取締役会評価等に携わっていたが、当時から第三者評価の実務では、エグゼクティブサーチファーム、人事コンサルディングファームのほか、無数の「ブティックファーム」が存在感を示している。元来ロンドンでは、金融や司法の分野ではこうした小規模ながら専門性の高いブティックファームの格式が高いとされる独特の文化的背景があり、これは取締役会評価においても例外ではない。取締役会評価を手掛けるブティックファームでは、著名な取締役会議長経験者や、心理学の博士号を有する経営者評価の専門家らが「第三者」として取締役会全体および個々の取締役のパフォーマンスを評価したうえで課題を特定し、次年度にとるべきアクションを提案する。企業側は、受けた提案の実施及び達成状況を翌年の年次報告書に記載する。英国ではこうした一連のプロセスが基本パターンとして浸透しており、また、ビジネスにおける一領域として確立している。

取締役会評価に関する年次報告書の記載例を見てみよう。英ボーダフォン社は2016年の年次報告書の中で、取締役会評価について下記の項目を公表している。
①前年評価で出されたアクション項目の振り返り、進捗状況のレビュー
②2016年評価プロセスの概要(取締役会メンバーとコア幹部社員についての個別評価、及び取締役会全体の評価)
③評価結果のレビュー
④2017年に向けたアクション項目
最後に、2017年に向けたアクション項目を実施たうえで同年の年次報告書で報告することを約束している。

英国では取締役会の充実に向けた新たな試みも登場しており、第三者評価の進化系とも言うべき「外部専門家が取締役会に陪席して行う定性評価」や、取締役会における議論を活性化するための「取締役会のファシリテーション」といった取組みも散見される。第三者評価を含め海外の先進的なプラクティスを見てきた投資家が日本株について投資判断を行う際には、日本企業の取締役会評価への取組みに対しても厳しい視線が注がれることになりそうだ。

<本記事をご執筆いただいた高岡明日香様のご連絡先>
03-3581-6482
asuka.takaoka@willistowerswatson.com

2016/10/17 ある上場企業のアジア子会社の内部監査で発見された事項

今や上場企業の大部分がアジア諸国に子会社を持つが、その管理には頭を悩ませているところも多いのではないだろうか。親会社としては、問題を見過ごしたままこれが拡大し、不祥事等に発展するケースだけは避けたいところ。そのために重要なのが「内部監査」だ。

実際、最近実施された某上場企業のアジア子会社の内部監査で発見された事項(実例)を紹介しよう。・・・

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