<解説>
第三者委員会とは?
かつては、企業などの法人組織で法令違反、犯罪行為、社会的非難を招くような不正や不適切行為(以下、不祥事といいます)が発生した場合、経営者の命により社内で内々に調査を進めることが一般的でした。しかしながら、こうした「経営者自身による」「経営者のための」内部調査では、調査の客観性への懸念を払拭できないため、不祥事によって失墜した社会的信頼を回復することができません。そこで近年は、外部者を交えた委員会を設け、そこに調査を依頼するケースが増えています。具体的には、企業から独立した委員のみをもって構成され、徹底した調査を実施したうえで、専門家としての知見と経験に基づいて原因を分析し、必要に応じて具体的な再発防止策等を提言するタイプの委員会、すなわち「第三者委員会」です。
第三者委員会の“ベストプラクティス”
もっとも、上記の説明だけでは実際にどのような第三者委員会を作ればよいのか、イメージしにくいでしょう。企業が第三者委員会を作る際に参考にしたいのが、日本弁護士連合会(日弁連)が2010年7月に策定(2010年12月に改訂)した「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」(以下、第三者委員会ガイドライン)です。
第三者委員会が設置される場合、弁護士がその主要なメンバーとなるのが一般的ですが、通常の弁護士業務とは異質な面も多く、また、メンバーとなった弁護士が不慣れなことと相まって、調査の手法がまちまちになっているという状況が散見されます。第三者委員会ガイドラインはこうした状況を改善すべく日弁連が自主的に策定したものですが、同ガイドラインには「第三者委員会の委員の適格性」ついての指針なども定められていることから、企業にとっても、第三者委員会を設置する場合の拠り所になるものと考えられます。
第三者委員会ガイドラインが示す“第三者委員会のベスト・プラクティス”は以下のとおりです。
(1) 委員の数
第三者委員会の委員数は3名以上を原則とする。
(2) 委員の適格性
第三者委員会の委員となる弁護士は、当該事案に関連する法令の素養があり、内部統制、コンプライアンス、ガバナンス等、企業組織論に精通した者でなければならない。
第三者委員会の委員には、事案の性質により、学識経験者、ジャーナリスト、公認会計士などの有識者が委員として加わることが望ましい場合も多い。
(3)企業との利害関係
企業と利害関係を有する者は、委員に就任することができない。
顧問弁護士は、「利害関係を有する者」に該当する。
当該企業の業務を受任したことがある弁護士や社外役員については、直ちに「利害関係を有する者」に該当するものではなく、ケース・バイ・ケースで判断される。
(4)調査担当弁護士
第三者委員会は、調査担当弁護士を選任できる。調査担当弁護士は、第三者委員会に直属して調査活動を行なう。
調査担当弁護士は、法曹の基本的能力である事情聴取能力、証拠評価能力、事実認定能力等を十分に備えた者でなければならない。
(5)調査を担当する専門家
第三者委員会は、事案の性質により、公認会計士、税理士、デジタル調査の専門家等の各種専門家を選任できる。これらの専門家は、第三者委員会に直属して調査を行なう。
(6)報酬
弁護士である第三者委員会の委員および調査担当弁護士に対する報酬は、時間制を原則とする。委員の著名性を利用する「ハンコ代」的な報酬は不適切な場合が多い。成功報酬型の報酬体系も、企業等が期待する調査結果を導こうとする動機につながりうるので、不適切な場合が多い。
一読しておきたい「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」
また、日本取引所自主規制法人が「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」を2016年2月24日に策定・公表していますので、こちらも要チェックです。
日本取引所自主規制法人 : 東証、大証の「品質管理」を行う法人(両証券取引所を傘下に持つ日本取引所グループの子会社)。新規上場の適格性を判断する「上場審査」や、開示情報に虚偽があった場合などにおいて改善報告書の提出を求めたり、特設注意市場銘柄への指定を行ったりする「上場管理」、インサイダー取引防止のための「売買審査」などを担う。
このプリンシプルは、不祥事に直面した上場会社に強く期待される対応や行動に関する原則(プリンシプル)であり、上場会社における不祥事対応の中には、原因究明や再発防止策が不十分であるケース、調査体制に十分な客観性や中立性が備わっていないケース、情報開示が迅速かつ的確に行なわれていないケースなどが一部に見受けられるとの認識の下、策定されたものです。法令や取引所規則等のルールとは異なって、上場会社を一律に拘束するものではないものの、各社の不祥事対応の根底にあるべき「共通の行動原則」であり、各社が自社の実情や不祥事の内容に即して個別に対応策を検討する際にも拠り所にできるものです。
そして、プリンシプルでは、「第三者委員会を設置する場合における独立性・中立性・専門性の確保」について、「第三者委員会を設置する際には、委員の選定プロセスを含め、その独立性・中立性・専門性を確保するために、十分な配慮を行なう。また、第三者委員会という形式をもって、安易で十分な調査に、客観性・中立性の装いを持たせるような事態を招かないよう留意する。」としています。
先に紹介した日弁連「第三者委員会ガイドライン」の趣旨は、このプリンシプルの趣旨とも合致しています。したがって、基本的には第三者委員会ガイドラインで“ベスト・プラクティス”とされる第三者委員会を設置・運用しておけば、企業のステークホルダーや世間から不祥事への対応への理解が得やすくなるものと考えられます。
さて、以上の解説をご覧いただければ、どれがGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。
<正解>
取締役C:「第三者委員会の独立性、中立性を保つためには、社長といえども当社関係者はメンバーに入れない方が良いのではないですか?社長には失礼ですが、不適正会計の舞台となっている事業部門のかつての責任者だったということもあります。当時社長の関与があったとは思いませんが、委員選定の妥当性が疑われ、世間から二重の批判を受けることになりかねませんので、外れてもらうべきです。」
(コメント:第三者委員会の独立性、中立性確保の意義を良く理解した発言です。会社の最高責任者である社長のことを客観的・冷静に分析している点も好感が持てます。)
(コメント:第三者委員会のメンバーを選ぶ際には、専門性のほか、独立性・中立性にも留意する必要があります。独立性・中立性を確保するためには、会社関係者を委員にすることは避けるべきです。また、第三者委員会ガイドラインは「企業と利害関係を有する者は、委員に就任することができない」としたうえで、「顧問弁護士は、「利害関係を有する者」に該当する」と明記されていますので、顧問弁護士は委員になることはできません。自社の監査をしている監査法人の会計士も、第三者委員会が監査法人の責任を追及する場合もあることを考えれば、利益相反の観点および監査人としての独立性の確保の観点から委員になることはありません。ただし、従業員に第三者委員会の調査を補助させることは問題ありません。また、第三者委員会と並行して社内調査委員会が調査活動することも問題はなく、むしろ、社内調査委員会の調査結果を第三者委員会に逐一報告するなど、両者がうまく連携できれば、第三者委員会の活動も効率的、効果的に進めることが可能となります。本発言の前半部分は的確ですが、後半部分(「第三者委員会の委員は・・・」以降)がBADです。)
(コメント:顧問弁護士や監査を担当する監査法人の会計士の委員就任が第三者委員会の独立性・中立性確保の観点から望ましくないことは上述のとおりです。一方、第三者委員会を設置する企業には、所有する資料、情報、従業員へのアクセスを第三者委員会に保障したり、従業員に対して第三者委員会による調査への優先的な協力を業務として命令したりするなどの協力が求められます。本発言は前半部分がBADです。)
