今年(2016年)6月の株主総会では、ソフトバンクで社外取締役を務める永守重信 日本電産代表取締役会長兼社長(CEO)に対する議決権行使助言会社最大手・ISSのスタンスが話題になった。ISSでは、「前会計年度における取締役会の出席率が 75%未満」の社外取締役の選任議案に対しては反対を推奨することとしているのは周知のとおりだが、昨年度における永守氏の取締役会出席率は55.6%(9回中5回出席)と75%を割っており、ISSの助言ポリシーに明らかに抵触するにもかかわらず、賛成推奨を行っている。結果として、永守氏の再任議案に対する賛成率は92.6%となった。ソフトバンクの外国人株主比率が40%近いことを考えれば、非常に高い賛成率と言ってよいだろう。
その一方で、「前会計年度における取締役会の出席率が 75%未満」というISSの助言ポリシーの順守に努めてきた上場企業や社外取締、さらに一部の機関投資家からは、「拍子抜けした」「75 %という数字は何だったのか」といった声も上がっている。ソフトバンクは招集通知に「同氏から、これまで以上に出席する旨の発言があった」「より踏み込んだ日程調整を行う」と記載、今年度における改善を約束し、ISS側もこれに呼応するように「人物本位で評価した」「出席率が改善すれば同氏の知見がソフトバンクグループの株主価値向上に貢献すると判断した」と説明しているが、ある機関投資家からは「議決権行使助言会社は資本市場のコンサンサスに従った厳格なスタンスを徹底すべき」との指摘も聞かれた。ISSが助言ポリシーを曲げてまで永守氏の社外取締役再任議案に賛成したからには、ソフトバンクとの間で対話の機会が持たれたと考えるのが自然だろう。
もっとも、本来ISS等の助言ポリシーは文字通り“助言”のためのものに過ぎず、機関投資にとってそれは絶対的なものではない。スチュワードシップ・コードの指針5-1では「機関投資家は・・・投資先企業の状況や当該企業との対話の内容等を踏まえた上で、議案に対する賛否を判断すべきである」とし、指針5-4は「議決権行使助言会社の助言に機械的に依拠するのではなく、投資先企業の状況や当該企業との対話の内容等を踏まえ、自らの責任と判断の下で議決権を行使すべきである」としている(ちなみに、ISSもスチュワードシップ・コードの受け入れを表明している)。
今回のようなISSスタンスが定着するならば、機関投資家が、企業との対話(エンゲージメント)に基づき議決権を行使するケースは増加するだろう。また、企業にとっても、今回の一件がISS等の助言ポリシーの形式的な適用を打ち破るきっかけとなる可能性もありそうだ。





