2016/07/15 助言ポリシーとは異なる議決権行使が増加する可能性も(会員限定)

今年(2016年)6月の株主総会では、ソフトバンクで社外取締役を務める永守重信 日本電産代表取締役会長兼社長(CEO)に対する議決権行使助言会社最大手・ISSのスタンスが話題になった。ISSでは、「前会計年度における取締役会の出席率が 75%未満」の社外取締役の選任議案に対しては反対を推奨することとしているのは周知のとおりだが、昨年度における永守氏の取締役会出席率は55.6%(9回中5回出席)と75%を割っており、ISSの助言ポリシーに明らかに抵触するにもかかわらず、賛成推奨を行っている。結果として、永守氏の再任議案に対する賛成率は92.6%となった。ソフトバンクの外国人株主比率が40%近いことを考えれば、非常に高い賛成率と言ってよいだろう。

その一方で、「前会計年度における取締役会の出席率が 75%未満」というISSの助言ポリシーの順守に努めてきた上場企業や社外取締、さらに一部の機関投資家からは、「拍子抜けした」「75 %という数字は何だったのか」といった声も上がっている。ソフトバンクは招集通知に「同氏から、これまで以上に出席する旨の発言があった」「より踏み込んだ日程調整を行う」と記載、今年度における改善を約束し、ISS側もこれに呼応するように「人物本位で評価した」「出席率が改善すれば同氏の知見がソフトバンクグループの株主価値向上に貢献すると判断した」と説明しているが、ある機関投資家からは「議決権行使助言会社は資本市場のコンサンサスに従った厳格なスタンスを徹底すべき」との指摘も聞かれた。ISSが助言ポリシーを曲げてまで永守氏の社外取締役再任議案に賛成したからには、ソフトバンクとの間で対話の機会が持たれたと考えるのが自然だろう。

もっとも、本来ISS等の助言ポリシーは文字通り“助言”のためのものに過ぎず、機関投資にとってそれは絶対的なものではない。スチュワードシップ・コードの指針5-1では「機関投資家は・・・投資先企業の状況や当該企業との対話の内容等を踏まえた上で、議案に対する賛否を判断すべきである」とし、指針5-4は「議決権行使助言会社の助言に機械的に依拠するのではなく、投資先企業の状況や当該企業との対話の内容等を踏まえ、自らの責任と判断の下で議決権を行使すべきである」としている(ちなみに、ISSもスチュワードシップ・コードの受け入れを表明している)。

今回のようなISSスタンスが定着するならば、機関投資家が、企業との対話(エンゲージメント)に基づき議決権を行使するケースは増加するだろう。また、企業にとっても、今回の一件がISS等の助言ポリシーの形式的な適用を打ち破るきっかけとなる可能性もありそうだ。

2016/07/14 (新用語・難解用語)ネットキャッシュ

企業のバランスシート上、現金および現金等価物(預金、短期の有価証券)から有利子負債(借入金・社債)を控除した値が正となっている状況のこと、あるいは当該控除後の金額のことをいう(負の場合は「ネット負債」)。ネットキャッシュとなっていれば、有利子負債がないか、あるいは有利子負債があったとしても、それをすべて返済した後も手元にキャッシュが残るので、財務が健全な状況にあると言える。ネットキャッシュ企業では、大きな金額となる設備資金はともかく、運転資金の資金繰りで苦労することはない。また、ネットキャッシュ企業は金融機関等の債権者にとって信用力が高いことから、設備資金の調達が必要な場合も、低い金利で有利子負債を調達することができる。

短期の有価証券 : 「流動資産」の部に計上される有価証券。売買目的の有価証券や1年内に償還される債券などが該当する。
有利子負債(借入金・社債) : 返済までに利子の負担が必要となる負債。買掛金、支払手形、未払金は利子に負担が必要ないことから、有利子負債に含まれない。
設備資金 : 企業が建物や機械などの生産設備に投下する資金のこと

東証1部上場企業(金融業を除く)を例にとると、ネットキャッシュ企業の割合は、1990年時点では39.7%に過ぎなかった。しかし、四半世紀かけて多くの企業で借入金の返済が進んだ結果、2015年には半数以上(56.7%)がネットキャッシュ企業となった。56.7%という比率は、過去最高の水準である。

不確実性が増した現代ではネットキャッシュは多ければ多いほど望ましいように見えるが、必ずしもそうとは言えない。なぜなら、・・・

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2016/07/14 (新用語・難解用語)ネットキャッシュ(会員限定)

企業のバランスシート上、現金および現金等価物(預金、短期の有価証券)から有利子負債(借入金・社債)を控除した値が正となっている状況のこと、あるいは当該控除後の金額のことをいう(負の場合は「ネット負債」)。ネットキャッシュとなっていれば、有利子負債がないか、あるいは有利子負債があったとしても、それをすべて返済した後も手元にキャッシュが残るので、財務が健全な状況にあると言える。ネットキャッシュ企業では、大きな金額となる設備資金はともかく、運転資金の資金繰りで苦労することはない。また、ネットキャッシュ企業は金融機関等の債権者にとって信用力が高いことから、設備資金の調達が必要な場合も、低い金利で有利子負債を調達することができる。

短期の有価証券 : 「流動資産」の部に計上される有価証券。売買目的の有価証券や1年内に償還される債券などが該当する。
有利子負債(借入金・社債) : 返済までに利子の負担が必要となる負債。買掛金、支払手形、未払金は利子に負担が必要ないことから、有利子負債に含まれない。
設備資金 : 企業が建物や機械などの生産設備に投下する資金のこと

東証1部上場企業(金融業を除く)を例にとると、ネットキャッシュ企業の割合は、1990年時点では39.7%に過ぎなかった。しかし、四半世紀かけて多くの企業で借入金の返済が進んだ結果、2015年には半数以上(56.7%)がネットキャッシュ企業となった。56.7%という比率は、過去最高の水準である。

不確実性が増した現代ではネットキャッシュは多ければ多いほど望ましいように見えるが、必ずしもそうとは言えない。なぜなら、ネットキャッシュを増やしたところで、この低金利の時代に受け取ることができる利息は微々たる額であるため、ネットキャッシュを貯め込むほど、資産効率を落としてしまうことになるからだ。経営陣は事業性資産、とりわけ成長事業にキャッシュを投入し、企業価値の向上を図らなければならない。また、ネットキャッシュを貯め込んだ企業は、株価が下落した場合に(キャッシュを目当てに)買収されるリスクが高まるという問題もある。たとえ買収されなくても、株主から資産効率の改善を要求され、「事業性資産に投資しないのであれば配当や自己株式取得で株主に還元するよう」圧力をかけられかねない。

資産効率 : 資産をいかに効率的に活用し、売上高や利益につなげているかを示す概念
事業性資産 : 事業を行うために必要な資産。例えば、棚卸資産、工場、機械などが該当する。

上場企業にネットキャッシュが多い状況を投資家はどのようにとらえているのだろうか。実は、投資家の多く(76%)が「上場企業は手元資金を多く抱え過ぎている」と考えている(生命保険協会が実施したアンケート調査結果「株式価値向上に向けた取り組みについて」(平成27年度版)の22ページの【図表 29】を参照)。一方で、これとは逆に大半の企業(65%)が「現在の自社の手元資金は適正な水準にある」と考えている点は興味深い。つまり、手元資金の水準について、企業の認識と投資家の認識に大きな隔たりがあるということだ。

この隔たりは埋めるためには、手元資金の水準をテーマに企業と投資家が対話を行う必要がある。このような対話こそが、コーポレートガバナンス・コード基本原則5(下記参照)をコンプライすることにもつながるはずだ。

コーポレートガバナンス・コード基本原則5
【株主との対話】
上場会社は、その持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資するため、株主総会の場以外においても、株主との間で建設的な対話を行うべきである。 経営陣幹部・取締役(社外取締役を含む)は、こうした対話を通じて 株主の声に耳を傾け、その関心・懸念に正当な関心を払うとともに、自らの経営方針を株主に分かりやすい形で明確に説明しその理解を得る努力を行い、株主を含むステークホルダーの立場に関するバランスのとれた理解と、そうした理解を踏まえた適切な対応に努めるべきである。

2016/07/13 公取、裁量的課徴金制度提案へ 企業側の防御権も強化?

ライバル企業との激しい価格競争に疲れ、ついカルテルに手を染めてしまう企業・業界は後を絶たない。昨日(2016年7月12日)も、東京電力に納入する電力保安通信用機器メーカー間でカルテルがあったとして、公正取引委員会は日本電気、富士通、大井電気の3社に対し、排除措置命令課徴金を課す旨を公表している(ただし、リニエンシー制度の利用により、日本電気は課徴金を免除され、その他2社は30%減額されている。公正取引委員会のリリースはこちらを参照)。

カルテル : 事業者間で、価格や生産量、販売地域などについて協定を結ぶこと。これにより、価格競争による価格低下を防ぐことができる。
排除措置命令 : 独占禁止法違反行為をした企業等に、速やかにその行為をやめさせ、市場における競争を回復させるために必要な措置を命じること。
課徴金 : 「違反行為対象商品等の売上高」に対し、製造業の場合は10%、小売業の場合は3%、卸売業の場合は2%。

今回の一件では、カルテルに関与したすべての企業に対しリニエンシーが適用されたが、リニエンシーが適用されるのは課徴金が減免されるのは調査開始日の前後合わせて「最大5社(ただし調査開始日以後は最大3社)」となっているため、関与する事業者が多い場合には、リニエンシーの適用を受けられないところが出てくる。リニエンシーの恩恵を得られない事業者は、公正取引委員会の調査に協力しようというインセンティブは薄い。調査に協力してもしなくても、課徴金の額に変わりはないからだ。

こうした中、公正取引委員会により設置され、2016年2月から課徴金制度のあり方についての検討してきた「独占禁止法研究会」は本日(7月13日)・・・

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2016/07/13 公取、裁量的課徴金制度提案へ 企業側の防御権も強化?(会員限定)

ライバル企業との激しい価格競争に疲れ、ついカルテルに手を染めてしまう企業・業界は後を絶たない。昨日(2016年7月12日)も、東京電力に納入する電力保安通信用機器メーカー間でカルテルがあったとして、公正取引委員会は日本電気、富士通、大井電気の3社に対し、排除措置命令課徴金を課す旨を公表している(ただし、リニエンシー制度の利用により、日本電気は課徴金を免除され、その他2社は30%減額されている。公正取引委員会のリリースはこちらを参照)。

カルテル : 事業者間で、価格や生産量、販売地域などについて協定を結ぶこと。これにより、価格競争による価格低下を防ぐことができる。
排除措置命令 : 独占禁止法違反行為をした企業等に、速やかにその行為をやめさせ、市場における競争を回復させるために必要な措置を命じること。
課徴金 : 「違反行為対象商品等の売上高」に対し、製造業の場合は10%、小売業の場合は3%、卸売業の場合は2%。

今回の一件では、カルテルに関与したすべての企業に対しリニエンシーが適用されたが、リニエンシーが適用されるのは課徴金が減免されるのは調査開始日の前後合わせて「最大5社(ただし調査開始日以後は最大3社)」となっているため、関与する事業者が多い場合には、リニエンシーの適用を受けられないところが出てくる。リニエンシーの恩恵を得られない事業者は、公正取引委員会の調査に協力しようというインセンティブは薄い。調査に協力してもしなくても、課徴金の額に変わりはないからだ。

こうした中、公正取引委員会により設置され、2016年2月から課徴金制度のあり方について検討してきた「独占禁止法研究会」は本日(7月13日)、「課徴金に関する制度改正に向けての論点整理」を公表 、公正取引委員会の裁量により課徴金の額を決定できる仕組みの導入を打ち出している。

現状、独占禁止法違反の事業者に課される課徴金の額は、「違反行為対象商品等の売上高」に対し製造業の場合は10%、小売業の場合は3%、卸売業の場合は2%というように、法定された客観的な算定方式に従って、画一的・機械的に算定される。上述のとおり課徴金の額がリニエンシー制度により免除または減額される場合もあるが、免除・減額の条件や減額率も決まっており、そこに公正取引委員会の裁量の余地はない。

このように課徴金を機械的に算定するやり方は、事業者にとっては課徴金額の予測可能性が高いというメリットがあるものの、公正取引委員会にとっては事業者(特にリニエンシーの恩恵を得られない事業者)からの調査協力を得にくいという問題が指摘されていた。

本日公表された論点整理では、公正取引委員会が「公正取引委員会の調査に対して、事業者がどの程度協力したのか、あるいは協力しなかったのか」を勘案したうえで裁量により課徴金の額を決定する仕組みの導入が提案されている。この仕組みが実現すれば、公正取引委員会は、調査に協力的な事業者の課徴金を減額し、非協力的な事業者の課徴金は増額するという裁量権を有することになる。このような裁量的な課徴金制度は諸外国では一般的なものとされる。

一方、このような裁量的な課徴金制度が導入された場合に問題となるのが、企業側の「防御権」だ。現行法制上は、公正取引委員会の調査の際に、事業者に「弁護士と事業者の間のやりとりの内容」を公正取引委員会に開示することを拒む権利である弁護士・依頼者間秘匿特権を認めていない。また、公正取引委員会が任意の供述聴取をする際に弁護士を立ち会わせることも事業者の権利として認めていない()。このような事業者側の防御権が認められていない中で、公正取引委員会が課徴金額について裁量権を手にすれば、企業と公正取引委員会と間のバランスを失することになる。また、公正取引委員会のストーリーに沿った供述を行わないことが調査に対する非協力とみなされる可能性もある。そこで論点整理では、「企業側の防御権の強化」も課題に挙げられている。

 独占禁止法審査手続に関する指針によると、「供述聴取時の弁護士を含む第三者の立会い、供述聴取過程の録音・録画、調書作成時における聴取対象者への調書の写しの交付及び供述聴取時における聴取対象者によるメモの録取については、事案の実態解明の妨げになることが懸念されることなどから、これらを認めない」とされているが、この指針に対しては「企業側の防御権が不十分である」との批判がある。論点整理では、このような企業側の防御権について「諸外国の制度との整合性にも留意」するとされており、諸外国の制度と同様のものが日本でも認められるようになるのか、議論の行方が注目される。

公正取引委員会では、本論点整理について8月末日までパブコメを募集している。導入から約40年間が経過した独占禁止法の課徴金制度は、大きな転換期を迎えている。

2016/07/12 特許法改正から3か月、いまだに企業からよく受ける2つの質問とは?

本年(2016年)4月、発明について特許を受ける権利が「従業員のもの」から「会社のもの」へと変更されるなど約90年ぶりの抜本的見直しとなった改正特許法が施行され、その指針(以下、ガイドライン)も公表されたところだが(2016年3月18日のニュース「職務発明の対価の所得区分が変更へ」参照)、それから約3ヶ月が経過し、企業側の対応も本格化している。企業から頻繁に聞かれるのが、下記の2つの質問だ。・・・

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2016/07/12 特許法改正から3か月、いまだに企業からよく受ける2つの質問とは?(会員限定)

本年(2016年)4月、発明について特許を受ける権利が「従業員のもの」から「会社のもの」へと変更されるなど約90年ぶりの抜本的見直しとなった改正特許法が施行され、その指針(以下、ガイドライン)も公表されたところだが(2016年3月18日のニュース「職務発明の対価の所得区分が変更へ」参照)、それから約3ヶ月が経過し、企業側の対応も本格化している。企業から頻繁に聞かれるのが、下記の2つの質問だ。

(1)特許を受ける権利は、法改正と同時に法人帰属になるのか?
(2)従業員が、特許を受ける権利を法人に取得させた場合には、相当の金銭その他の経済上の利益を受ける権利を有するとされているが、ここでいう「相当の利益」は一体いくらにすればいいのか?

それぞれについて解説しよう。

(1)特許を受ける権利は、法改正と同時に法人帰属になるのか?

まず確認しておきたいのは、今回の特許法改正は、あくまで従来「従業者帰属」とされていた特許を受ける権利を「法人帰属」とするという選択肢を追加するものであり、全ての企業に対し「法人帰属」とすることを強制するものでもなければ、「法人帰属」とすることを前提に何らかの対応を求めるものでもないということだ。企業は、これまで通り「従業者帰属」のままとすることも可能である。

したがって、特許を受ける権利が「法改正と同時に法人帰属になる」ことはない。法人帰属とするには、原則として企業がその旨を意思表示(例えば契約や職務発明規程に定めを置くなど)することが必要になる。ただし、現在の職務発明規程等における書き振り、表現の仕方によっては、改正法施行とともに、「既に法人帰属の意思表示をしている」とみなされる可能性があるので要注意だ(例えば、「発明が完成したときに、会社は発明者から特許を受ける権利を譲り受ける」と規定(いわゆる「予約承継」の定め)している場合)。従来から職務発明規程等を設けている企業は、一度その内容を確認しておく必要がある。

(2)従業員が、特許を受ける権利を法人に取得させた場合には、相当の金銭その他の経済上の利益を受ける権利を有するとされているが、ここでいう「相当の利益」は一体いくらにすればいいのか?

結論から言うと、「いくらにすればよい」という金額の目安はない。理論的には、「相当の利益」をいくら高額に設定したとしても、発明者から「相当の利益が不十分」として訴えられることはあり得る。また、会社の規模や経営状態によって、いくらが「相当」と言えるかも変わってくる。このため、政府や特許庁が「○○円が妥当」とは言うことは今後もないだろう。

発明者との間でトラブルを避けるためには、むしろ「金額を決定するプロセス」が重要になる。発明者に訴えを起こされた場合、支払った金額の相当性(妥当性)を裁判所に認めてもらうのは非常に難しいのが実情。個社の事情や業界の特性を理解してもらうだけでも至難の業と言える。裁判判所で金額の相当性が争点とならないようにするためには、今回の特許法改正に合わせて策定されたガイドラインの考え方に沿って金額を決めることが極めて有効になる。この指針は、企業がどのようなプロセスを踏んで相当の利益の内容を決定すれば、裁判所で金額の相当性を争わないで済むかを示している(例えば、ガイドラインの11ページには、金額についての従業員との協議は必ずしも一人ひとりと行う必要はなく、社内イントラネットの掲示板や電子会議等を通じて集合的に行ってもよい旨が記載されている)。

また、どの時点での支払いを厚くするかという視点も、トラブルを避けるためには欠かせない。特許等には、出願・登録・実施(特許等を使って物を生産したり、販売したり、使用したりする行為)という3つのステージがあるが、このうち「出願・登録時」に多く支払い、実施時の支払いは抑えめにする場合、発明者にとっては「相当の利益」としていくらもらえるのかという金額についての予見可能性が高くなるという利点がある。ただし、最終的に当該特許等が会社の業績に大きな貢献をしたような場合、発明者が不満を抱き、トラブルに発展しかねないという欠点がある。逆に、実施時に多く支払うこととし、出願・登録時の支払いは抑えめにする場合は、会社への貢献度に比例した支払いが可能となる利点はあるものの、発明者・会社の双方にとって、トータルの金額の予測が立てにくいという欠点がある。

また、自社ではどのような知財が生まれやすいかといった事情も考慮する必要がある。一般的には、特許に比べ、意匠や実用新案は少し低めに金額が設定される傾向があるようだ。

知的財産戦略が経営戦略の1つに位置づけられる中、役員も社内の勉強会などを通じてこのガイドラインに目を通しておく必要がある。ただし、ガイドラインは改正特許法を根拠としているため、内容が法律に近く、法務系以外の役員には難解なものとなっている。既に市販の解説書()もいくつか出版されているので活用したい。

 例えば「職務発明制度Q&A-平成27年改正特許法・ガイドライン実務対応ポイント」(経団連出版)などは、Q&A形式で平易に書かれており、お勧め。

2016/07/11 企業年金のスチュワードシップコード受入れでエンゲージメント活発化も

スチュワードシップ・コードが導入(2014年2月~)されてから間もなく2年半が経つが、運用会社によるエンゲージメント(企業との対話)活動はまだ十分でないとの声も聞かれる。金融庁が開催している「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」でも、「機関投資家には、企業側に「気づき」を与える実質的な対話を行うことが求められるが、形式的な対話が増加し、機関投資家による経営理念等への理解が不十分なケースがある」といった、エンゲージメント活動への不満を指摘する意見が出ている。

こうした中、先月(平成28年6月)2日に政府が閣議決定した「日本再興戦略2016」の中には、「企業年金等の改善」として「年金基金等において、スチュワードシップ・コードの受入れの促進など、コーポレートガバナンスの実効性の向上に向けた取組を通じて、加入者等の老後所得の充実を図る。」との一文が入っている(162ぺージの一番下)。

日本がスチュワードシップ・コードを”輸入”した英国でも、運用会社が真剣にスチュワードシップ活動に取り組むには、運用会社のみならず、その顧客である年金基金など「アセット・オーナー」自身もスチュワードシップ・コードの受入れを表明し、これにコミットしていることが重要だと言われてきた。しかし日本では、GPIFをはじめとする公的年金による受入れ表明は進んでいるものの、企業年金は、メガバンク系やセコムなど一部を除き、スチュワードシップ・コードの受入表明に慎重な姿勢をとってきた。政府の狙いは、企業年金にもスチュワードシップ・コードを受け入れさせることで、結果的に運用会社による「エンゲージメント活動」を強化することにあると見られる。

アセット・オーナー : 年金基金をはじめとする、資産(アセット)を保有する者のこと。

ただ、気になるのは企業年金側の対応だ。これまで・・・

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2016/07/11 企業年金のスチュワードシップコード受入れでエンゲージメント活発化も(会員限定)

スチュワードシップ・コードが導入(2014年2月~)されてから間もなく2年半が経つが、運用会社によるエンゲージメント(企業との対話)活動はまだ十分でないとの声も聞かれる。金融庁が開催している「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」でも、「機関投資家には、企業側に「気づき」を与える実質的な対話を行うことが求められるが、形式的な対話が増加し、機関投資家による経営理念等への理解が不十分なケースがある」といった、エンゲージメント活動への不満を指摘する意見が出ている。

こうした中、先月(平成28年6月)2日に政府が閣議決定した「日本再興戦略2016」の中には、「企業年金等の改善」として「年金基金等において、スチュワードシップ・コードの受入れの促進など、コーポレートガバナンスの実効性の向上に向けた取組を通じて、加入者等の老後所得の充実を図る。」との一文が入っている(162ぺージの一番下)。

日本がスチュワードシップ・コードを”輸入”した英国でも、運用会社が真剣にスチュワードシップ活動に取り組むには、運用会社のみならず、その顧客である年金基金など「アセット・オーナー」自身もスチュワードシップ・コードの受入れを表明し、これにコミットしていることが重要だと言われてきた。しかし日本では、GPIFをはじめとする公的年金による受入れ表明は進んでいるものの、企業年金は、メガバンク系やセコムなど一部を除き、スチュワードシップ・コードの受入表明に慎重な姿勢をとってきた。政府の狙いは、企業年金にもスチュワードシップ・コードを受け入れさせることで、結果的に運用会社による「エンゲージメント活動」を強化することにあると見られる。

アセット・オーナー : 年金基金をはじめとする、資産(アセット)を保有する者のこと。

ただ、気になるのは企業年金側の対応だ。これまで企業年金がスチュワードシップ・コードの受入れに慎重だった大きな理由として、(1)運用委託先のスチュワードシップ活動を管理(エンゲージメントの内容を確認し、その是非を判断するなど)するための人的リソースがない、(2)議決権行使基準を含むスチュワードシップ・コードの受入れ方針を自力では作成できない、(3)親会社やその取引先の株主総会議案に対してどう対応すべきか悩ましいーーというものがある。

しかし、その多くは”誤解”に過ぎない。英国の例を見ても、アセット・オーナーに求められるスチュワードシップ責任はシンプルだ。英国年金基金協会は、アセット・オーナーに求められるスチュワードシップ責任として、主に(1)スチュワードシップの受入れ宣言を行う、(2)運用会社の選別にあたってはスチュワードシップ・コードを受入れていることを確認する、(3)(運用会社からの)運用報告を踏まえ、運用会社のスチュワードシップ活動をモニタリングするーーの3点を挙げている。

このうち(1)については単に宣言を行えばよいだけであり、(2)については、日本でも既にほとんどの運用機関がスチュワードシップ・コードを受入れている。

問題になるとすれば、(3)の運用会社のスチュワードシップ活動のモニタリングだろう。確かに企業年金は少人数で運営されているため、一つひとつの案件を確認することは困難と言える。そこで英国では、アセット・オーナーのスチュワードシップ責任が強調されるようになるのとともに、「運用会社の開示強化」と「運用会社による活動内容の第三者保証の取得(「アシュアランス(assurance=保障)」と呼ばれる)」が強化されてきた。これを受け、英国の運用会社のウェブサイトにおけるスチュワードシップ・コード関連のページを見てみると、そこには詳細な活動方針と活動内容に関する証跡(証拠となる痕跡)が示されている。つまり、企業年金は、運用会社が適切にスチュワードシップ責任を果たしていることの証跡が整っていることを確認するだけでよいわけだ。

これらの取組みは、企業年金にとっても、運用会社の報告内容が理解しやすくなるというメリットがある。英国でも、2010年に初めてスチュワードシップ・コードが導入された際には年金基金などのアセット・オーナーの受入れは進まず、2010年末時点ではアセット・オーナー全体で17、年金基金の受入れは12に過ぎなかった。しかし、2013年末にはアセット・オーナー全体で74、年金基金の受入れは57となり、その後も受入れ機関の拡大が続いている。日本でも企業年金がスチュワードシップ・コードを受け入れやすい環境が整えば、受入れ数は増加していくだろう。

上述のとおり、アセット・オーナーがスチュワードシップ・コードにコミットすることは、運用会社が真剣にスチュワードシップ活動に取り組むことにつながる。そしてそれは、企業から見れば、運用会社によるエンゲージメント活動が活発化することを意味する。企業年金によるスチュワードシップ・コードの受入れは、エンゲージメント時代の”第2ステージ”の幕開けとなる可能性もありそうだ。

2016/07/11 【WEBセミナー】現在の経済情勢において投資家が望む株主還元策

概略

【セミナー開催日】2016年7月1日(木)

日本経済が依然としてデフレから脱却し切れない中、政府・日銀からは量的緩和、マイナス金利といった政策が打ち出されています。インフレを実現するためには、紙幣の量が増えるだけではなく、それが回転しなければなりません。ところが、企業は長らく資金余剰で負債を減らす一方であり、「非営業資産」としての現金保有すら増大させ、回転を下げることに一役買ってしまっています。現在では東証一部に上場する非金融系企業の半数程度が負債をすべて返済できる状況です。本セミナーでは、日本株式の調査分析等で内外機関投資家から高い評価を受ける日興アセットマネジメント チーフ・ストラテジストの神山直樹 様をお招きし、こうした経済情勢において投資家ひいては日本経済社会が望む株主還元策について語っていただきます。投資家との建設的な対話を進める上で役員にとって必須の知識となっているファイナス理論も交えながら「そもそも株主還元とは何なのか?」といった本質的な話から、それを踏まえ何故「今」が配当をはじめとする株主還元を行う時なのかまで、投資家目線で解説していただきます。役員の皆様にとって本セミナーは、適切な株主還元と資本効率、また、社会貢献としての株主還元について考える良い機会になるのはもちろんのこと、本セミナーを通じ、株主との対話を進める上でのヒントを得ることもできるはずです。

※本セミナーの公開期間は、講師のご希望により、公開(2016年7月11日)から1か月間で終了しておりますが、閲覧をご希望の方には個別に閲覧用のURLをお送りさせていただきますので、ご遠慮なくお申し付けください。
閲覧をご希望の方は会員ページ(こちらをクリックしてください)からお申し込みください。
また、本セミナーは公開が終了していることから、マイ研修レポートへの所感の登録ボタンは設置しておりません。

【講師】日興アセットマネジメント
    チーフ・ストラテジスト
    神山 直樹 様

セミナー資料 現在の経済情勢において投資家が望む株主還元策.pdf(1.31MB)

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セミナー動画

動画(1)株主還元とデフレには関係がある、デフレは悪い
19909a

動画(2)政府のオーバー/企業のアンダーレバレッジ、東証1部企業のネットキャッシュ分布
19909b

動画(3)議論の始まり、還元と資本
19909c

動画(4)アベノミクスがROEを求める理由、低ROEは持続可能性の危機、資本コストの本質は「比較」
19909d

動画(5)資本コストとROE、資本コストとしてのROEと内部留保、還元と企業価値、企業価値の本質、適切なリターン、よくある配当政策、結び
19909e