2016/05/27 中期経営計画は「数値目標」だけか?

2016年3月期の決算発表が一巡した。コーポレートガバナンス・コード導入2年目を迎える中で注目されるのが、多くの企業が公表している中期経営計画の達成状況だ。同コードは、中期経営計画において資本効率の目標を示した上で(原則5-2)、未達の場合にはその原因を説明するよう求めている(補充原則4-1②)。

補充原則4-1②
取締役会・経営陣幹部は、中期経営計画も株主に対するコミットメントの一つであるとの認識に立ち、その実現に向けて最善の努力を行うべきである。仮に、中期経営計画が目標未達に終わった場合には、その原因や自社が行った対応の内容を十分に分析し、株主に説明を行うとともに、その分析を次期以降の計画に反映させるべきである。

公表された目標値は投資家を中心とするステークホルダーに対するコミットメントであり、達成状況について説明責任が生じるのは当然だ。しかし、上記補充原則4-1②を含め、近年は中期経営計画について「数値目標」に関心が偏り過ぎている気がしてならない。例えば・・・

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2016/05/27 中期経営計画は「数値目標」だけか?(会員限定)

2016年3月期の決算発表が一巡した。コーポレートガバナンス・コード導入2年目を迎える中で注目されるのが、多くの企業が公表している中期経営計画の達成状況だ。同コードは、中期経営計画において資本効率の目標を示した上で(原則5-2)、未達の場合にはその原因を説明するよう求めている(補充原則4-1②)。

補充原則4-1②
取締役会・経営陣幹部は、中期経営計画も株主に対するコミットメントの一つであるとの認識に立ち、その実現に向けて最善の努力を行うべきである。仮に、中期経営計画が目標未達に終わった場合には、その原因や自社が行った対応の内容を十分に分析し、株主に説明を行うとともに、その分析を次期以降の計画に反映させるべきである。

公表された目標値は投資家を中心とするステークホルダーに対するコミットメントであり、達成状況について説明責任が生じるのは当然だ。しかし、上記補充原則4-1②を含め、近年は中期経営計画について「数値目標」に関心が偏り過ぎている気がしてならない。例えば明治ホールディングスは昨年公表した中期経営計画の数値目標を1年目で達成したが、決算説明会では早くも次の展開についての説明を求める声が聞かれた。数値目標の達成は企業努力の賜物として尊重されるべきではあるが、数値は外部環境次第で変動するのも事実。中期経営計画には目先の数値にはつながらない「中長期的な取組み」も含まれているはずであり、次期計画の前に、その進捗を議論するべきだろう。

明治ホールディングスとは対照的な事例が日立製作所だ。中期経営計画の数値目標こそ未達だったが、キャッシュフロー経営に向けた取組みについて進捗があったことが注目されている。

やや極端な2つの事例を紹介したが、企業は「数値目標」と「中長期的な取組み」について一体どのように整理するべきだろうか。

これには様々な考え方があり得るが、まず考慮するべきは足元の実績だ。コーポレートファイナンスの理論に従えば、自己資本利益率(ROE)が資本コスト(資本コストの定義は「(新用語・難解用語辞典)ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)法」参照)を下回る場合、経営者は企業価値を損なっていることになる。資本コストの水準は企業により異なるが、伊藤レポートでは日本企業の資本コストを6-7%と見積もった上で、ROEについては8%という水準を示している。足元のROEが資本コストを上回っている企業は、目先の数値目標だけでなく、中長期的な取組みについても投資家と十分な議論を行うべきだろう。一方で、足元のROEが資本コストを下回っている企業は、目先のROEを資本コスト以上の水準に引き上げることが最優先課題であり、中長期的な取組みよりも数値目標がフォーカスされるのもやむを得ない。コーポレートガバナンス・コードは原則主義を採用している。各社の現状に合わせて同コードを解釈し、対応していくことが望まれる。

原則主義 : 形式的な文言・記載ではなく、その趣旨・精神に照らして適切に解釈すること。

2016/05/27 【重要】規約変更のお知らせ

新任役員向けトレーニングプログラムのサービス開始に伴い、上場会社役員ガバナンスフォーラムの会員規約が変更になりました。変更箇所と内容は次の通りです(赤字が変更箇所)。

変更前 変更後
第 3 条
会員は、次のサービスを受けることができる。
当フォーラムのウェブサイト上のすべてのコンテンツの閲覧、役員向け最新情報の閲覧、役員相談窓口の利用、役員人材バンクの利用(原則として法人会員を除く。ただし、法人の許可がある場合にはこの限りではない)、当フォーラムが主催するイベント・セミナーへの参加、会社別オーダーメイド研修の割引受講(原則として法人会員に限る)、会員資格の名刺・履歴書等への記載
第 3 条
会員は、次のサービスを受けることができる。
当フォーラムのウェブサイト上のすべてのコンテンツ(ただし「新任役員向けトレーニングプログラム」の受講者向けコンテンツを除く)の閲覧および視聴、役員相談窓口の利用、役員人材バンクの利用(原則として法人会員を除く。ただし、法人の許可がある場合にはこの限りではない)、当フォーラムが主催するイベント・セミナーへの参加、会社別オーダーメイド研修の割引受講(原則として法人会員に限る)、会員資格の名刺・履歴書等への記載

2016/05/27 新任役員向けトレーニングプログラムをリリースしました。

上場会社役員ガバナンスフォーラムではこのたび、
Web研修「新任役員向けトレーニングプログラム」をリリースいたしました。

本プロググラムは、役員の責任、企業法務、コーポレートガバナンス、株主・投資家対応、財務・会計、経営戦略、経営分析、人事労務、税務など、企業経営に関わりの深い分野を体系的にカバーしており、短期間かつ低コストで、役員としての職務執行に必要となる実践的な知識を身に着けていだだくことができるように設計されています。

現役役員の知識補強や、役員候補の教育ツールとしてもご活用いただくことができます。

詳細はこちら

2016/05/26 (新用語・難解用語)ブロックシェアホルダー

機関投資家あるいは創業家などで、例えば5%程度(日本では3%程度とする場合もある)を保有する大株主のことを指す。生命保険会社などの金融機関もこのブロックシェアホルダーに該当することが多い。

株主が会社のガバナンスにどの様な影響を与えるかは、「株式の保有構造」に大きく左右される。これまで日本企業では、株主総会で会社議案に対して基本的に無条件に賛成票を投じる「安定株主」と、外国人機関投資家など“是々非々”で賛否を判断する「アウトサイダー株主」の比率が注目されてきた。しかし、たとえ外国人機関投資家などの株式保有比率が高くても、保有割合が各機関投資家に細かく分散されていると、その企業のガバナンスに対して“当事者意識”を持った働きかけが十分行われないということが起こり得る。

このため海外では、株式の保有構造がその企業のガバナンスにどのような影響を与えているのかを分析する際には、「ブロックシェアホルダー」の有無がチェックされる。「外国人機関投資家」という括りで見た保有比率は同じでも、1つの機関投資家が高い保有比率を有している場合と、小さい保有比率の機関投資家が複数ある場合とでは、ガバナンスにもたらすインパクトは異なるというわけだ。株式の保有構造が自社のガバナンスに与える(良い)影響は、単に「外国人機関投資家の保有比率が高い」ということだけではなく、「優良な大株主」が存在し、かつ当該株主としっかりと対話を行っているということをもって示す必要があろう。

最近は日本でも、・・・

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2016/05/26 (新用語・難解用語)ブロックシェアホルダー(会員限定)

機関投資家あるいは創業家などで、例えば5%程度(日本では3%程度とする場合もある)を保有する大株主のことを指す。生命保険会社などの金融機関もこのブロックシェアホルダーに該当することが多い。

株主が会社のガバナンスにどの様な影響を与えるかは、「株式の保有構造」に大きく左右される。これまで日本企業では、株主総会で会社議案に対して基本的に無条件に賛成票を投じる「安定株主」と、外国人機関投資家など“是々非々”で賛否を判断する「アウトサイダー株主」の比率が注目されてきた。しかし、たとえ外国人機関投資家などの株式保有比率が高くても、保有割合が各機関投資家に細かく分散されていると、その企業のガバナンスに対して“当事者意識”を持った働きかけが十分行われないということが起こり得る。

このため海外では、株式の保有構造がその企業のガバナンスにどのような影響を与えているのかを分析する際には、「ブロックシェアホルダー」の有無がチェックされる。「外国人機関投資家」という括りで見た保有比率は同じでも、1つの機関投資家が高い保有比率を有している場合と、小さい保有比率の機関投資家が複数ある場合とでは、ガバナンスにもたらすインパクトは異なるというわけだ。株式の保有構造が自社のガバナンスに与える(良い)影響は、単に「外国人機関投資家の保有比率が高い」ということだけではなく、「優良な大株主」が存在し、かつ当該株主としっかりと対話を行っているということをもって示す必要があろう。

最近は日本でも、「タイヨウファンド」や「ハリス」などエンゲージメントを行うと言われる運用機関の保有割合が高い企業がいくつも出てきている。これに対し株式市場も反応している。すなわち、これらの投資家が大株主であることが知られた場合、「大株主にガバナンス体制をしっかりチェックされるので、会社も明らかに企業価値を棄損するような行動は取らないだろう」との判断から「ガバナンスリスクが低下した」とみなされ、株価が上昇するケースが散見される。

もっとも、エンゲージメント型ファンドやアクティビストは、株主還元や会社の機関設計などについてかなり厳しい意見を出す場合もある。だからこそ“株主ガバナンス”が効いているとも言えるわけだが、会社がそれに対応するのは容易ではない。また、逆に、こうした投資家に自ら望んで株主になってもらうことも簡単ではない。

そこで考えられる1つの解決策が、これまで「安定株主」と考えられていた機関投資家と建設的な対話を行い、そのことを外部にアピールしていく方法だ。スチュワードシップ・コードの受入れにより、投資家に「顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任」が求められる中(スチュワードシップ・コードの冒頭参照)、「安定株主」の定義も変化しつつある。例えば、これまで「安定株主」と考えられてきた生命保険会社などが会社議案に反対するケースも出てきており、市場関係者の間からは「生命保険会社などは安定株主の定義から外すべき」との声さえ上がっている。つまり、日本企業の株主の顔ぶれは大きく変化したわけではなくても、「議決権行使」という観点からは、(これまでの安定株主の行動が変化することで)それなりに株主からの牽制が効く状況へと変化しつつある。日本の企業文化を理解している株主は時間軸も日本企業と類似しており、経営計画達成までの道のりもお互い共有しやすいと考えられる。「安定株主」というと、これまではガバナンス上は「マイナス」と考えられてきたが、今後は安定株主ではなく「ブロックシェアホルダー」と捉え、むしろガバナンス上もプラスの存在とすることができれば、市場からも企業価値の向上に大いに貢献すると捉えてもらえる可能性がある。「ブロックシェアホルダー」という考え方は、いずれ日本でも注目される時が来るだろう。

2016/05/25 監査役と監査等委員の違い

(2016年)6月の株主総会では、監査等委員会設置会社への移行を諮る上場会社が相次ぐことになりそうだ。この結果、監査等委員会設置会社の数は6月末までにおよそ600社に到達することが見込まれている。

監査等委員会設置会社への移行に伴い、通常は社外監査役が「監査等委員」である社外取締役に就任することになるが、「監査役」と「監査等委員」の職務範囲や権限等の違いを正確に説明できる経営陣は意外と多くない。

まずは両者の違いを整理した下表を見ていただきたい。・・・

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2016/05/25 監査役と監査等委員の違い(会員限定)

(2016年)6月の株主総会では、監査等委員会設置会社への移行を諮る上場会社が相次ぐことになりそうだ。この結果、監査等委員会設置会社の数は6月末までにおよそ600社に到達することが見込まれている。

監査等委員会設置会社への移行に伴い、通常は社外監査役が「監査等委員」である社外取締役に就任することになるが、「監査役」と「監査等委員」の職務範囲や権限等の違いを正確に説明できる経営陣は意外と多くない。

まずは両者の違いを整理した下表を見ていただきたい。

監査役(監査役会) 監査等委員(監査等委員会)
身分 監査役 監査等委員である取締役
(非業務執行)
取締役会での議決権 なし あり
職務範囲 取締役の業務執行の監査 取締役の業務執行の監査および監督
権限 独任制 合議制
監査手法 基本的に独自で監査(内部統制システム
を活用する場合もある)
原則として内部統制システムを
活用した監査

独任制 : 自らの権限で自ら監査を行うこと。
内部統制システム : 取締役の職務の執行が法令や定款に適合することを確保するための体制および株式会社や企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制を指す。会社法上の大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上)であれば、取締役会は内部統制システムの整備について必ず決議をしなければならない(会社法362条4項6号)。

上の表の「職務範囲」にあるように、監査等委員には取締役の業務執行の監査のみならず、「監督」業務が付与されている。これは、委員会設置会社における監査委員が行う「監督」業務と同様、取締役の業務執行状況を評価し、それを株主総会で意見として発出することで実質的な人事権を行使するというものであると考えられている。つまり、監査等委員は当該取締役が取締役として相応しいか否かを評価し、意見を表明するという業務を担うということである。

また、取締役会での議決権が付与されている点も大きな違いと言える。取締役会における監査役の業務は、取締役会が適切に運営されているか否かを監査するとともに、必要に応じ意見を表明することだが、監査等委員はそれに加え、「一議決権者」として自身の意見を議決権という形で表明しなければならない。上の表でも示したとおり監査役は独任制ではあるものの、実務上は例えば会計に関する事項は公認会計士資格を持った監査役が行うというように“分野の分担”がなされているケースが多いが、一議決権者となれば、自身の専門分野でない事項についてもそれぞれが「企業の中長期的な発展に資するか」という視点から十分な情報をもって検討し、投票を行わなければならない。

一方、監査等委員の監査の手法は「内部統制システムを活用して行う」のが原則とされており、監査の水準という点では、監査役よりも監査等委員の方が落ちるようにも見えるが、そうではない。内部統制システムを活用するのはあくまで“原則”であり、必ずこれに依らなければならないということではない。場合によっては監査等委員自身が実査を行い、適切な監査証拠を収集する必要があろう。

実査 : 監査を行う者が実際に現物にあたること。

このほか、上の表では触れていないが、監査等委員は(監査役よりも)「妥当性監査」により踏み込んだ形で監査を行うべきであるとされている。これは、監査等委員は取締役であるという点で、業務執行が妥当か否かを判断できると考えられるためだ。したがって、監査等委員会設置会社に移行する際は、就任予定者が「妥当性」まで判断する責任を負えるのか否かについても検討が必要であろう。

妥当性監査 : 取締役の職務執行が経営方針等に準拠して合理的であるか否かを検討する監査。取締役の職務執行が法令や定款に準拠して実施されているか否かを検討する適法性監査とは区別される。

2016/05/24 中国子会社に対する税務調査の実例

景気減速が伝えられる中国では、不景気のため地方自治体の税収が減っている。こうした中、税務当局も「取れる企業から取る」という方針を強めており、税務調査による追徴課税が多発している。中国で製造販売を行っている日本企業の子会社の実例を紹介しよう。

中国ではまず、現地の地方税務局(地税)が企業に対して移転価格調査を打診してくる。その後、当局担当者により現場調査及び書類審査が行われ、双方による協議を経て、「正式調査」か「自主調整」いずれの手法を採用するかが決まる。と言っても、・・・

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2016/05/24 中国子会社に対する税務調査の実例(会員限定)

景気減速が伝えられる中国では、不景気のため地方自治体の税収が減っている。こうした中、税務当局も「取れる企業から取る」という方針を強めており、税務調査による追徴課税が多発している。中国で製造販売を行っている日本企業の子会社の実例を紹介しよう。

中国ではまず、現地の地方税務局(地税)が企業に対して移転価格調査を打診してくる。その後、当局担当者により現場調査及び書類審査が行われ、双方による協議を経て、「正式調査」か「自主調整」いずれの手法を採用するかが決まる。と言っても、要するに追加納税額で折り合いがつけば「自主調整」となるが、折り合いがつかなければ当局による「正式調査」になるという、ある意味非常に分かりやすい図式である。

移転価格 : 企業グループ内の取引価格のこと。例えば、日本企業が税率の低い国にある海外の販売子会社に、通常よりも低い金額で商品を卸すことにより、日本企業に生じるはずの利益を海外関連企業に移転させ、日本企業およびグループ全体の税負担を軽減することが可能になる。このため、移転価格には各国の税務当局が関心を持っている。

正式調査は納税額の更正につながるため国家の承認を要し、手続も複雑になる。しかも調査期間が長期にわたり、その期間の利息も加算されることになる。

これに対し自主調整では、国家ではなく地税当局と交渉し、”合意”を得た自主調整税額を追加納税すればよく、正式調査を受けた場合と比べて納税額が少なくなるケースがほとんどである。

冒頭で触れた日本企業の中国子会社の場合、6年間を対象期間とする移転価格調査の通知が来た。その後、当局担当者と折衝を重ねるも折り合いがつかず、自主調整はできなかった。結局、税務当局により対象期間が数年間も延長され、最終的に調査期間の利息(約5億円)を含め約30億円を納付することになった。

その一方で、他の子会社も4年間を対象期間とする移転価格調査の打診を受けたものの、この子会社は現地の税務コンサルティング会社に折衝を依頼した結果、”交渉“がまとまり、単年度の自主調整税額の納付だけで済んでいる。

課税の公平を重んじる日本の税務当局に慣れた日本企業からすると耳を疑うような話だが、キャッシュフローへの影響が大きい納税額の軽減という観点からは、”合意税額”に納得できないとしても「自主調整」に応じるという経営判断を否定することはできないだろう。