2016/05/31 2016年5月度チェックテスト第1問解答画面(不正解)

不正解です。
有価証券報告書の【コーポレート・ガバナンスの状況】には、取締役・監査役・社外役員といった役員区分ごとの「報酬等の種類別の総額」が開示されています。併せて支給人員も開示されているので、一人当たりの役員報酬を算定することができます。この一人当たりの役員報酬を、自社の役員報酬の水準が適正かどうかを判断するためのベンチマークとして用いるのは慎重になるべきです。その期において役員として1年間フルに在籍していなかった人(例えば「9か月」や「3か月」)の報酬が含まれていたり、「専務」や「常務」などの役位別に集計されていなかったりとベンチマークとしてのデータの有用性に欠けるからです。問題文は「正確に把握することができる」という点が誤りです。

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2016/05/11 役員報酬、他社との比較の仕方は?(会員限定)

2016/05/31 2016年5月度チェックテスト第1問解答画面(正解)

正解です。
有価証券報告書の【コーポレート・ガバナンスの状況】には、取締役・監査役・社外役員といった役員区分ごとの「報酬等の種類別の総額」が開示されています。併せて支給人員も開示されているので、一人当たりの役員報酬を算定することができます。この一人当たりの役員報酬を、自社の役員報酬の水準が適正かどうかを判断するためのベンチマークとして用いるのは慎重になるべきです。その期において役員として1年間フルに在籍していなかった人(例えば「9か月」や「3か月」)の報酬が含まれていたり、「専務」や「常務」などの役位別に集計されていなかったりとベンチマークとしてのデータの有用性に欠けるからです。問題文は「正確に把握することができる」という点が誤りです。

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2016/05/11 役員報酬、他社との比較の仕方は?(会員限定)

2016/05/31 【役員会 Good&Bad発言集】不当表示に対する課徴金制度

一般消費者向け日用品メーカーであるX社の広告宣伝会議において、次のような会話が交わされました。取締役A・B・C・Dの発言のうち、誰の発言がgood発言でしょうか?

企画担当取締役A:「2014年に改正された景品表示法により、不当表示を行なった違反事業者に対して、売上高の1%相当の課徴金を課す制度が2016年4月から施行されています。経営への影響が大きいため、従来にも増して慎重に広告宣伝を打つ必要があります。」

宣伝担当取締役B:「我が社の商品を消費者に訴求させるためには、多少の無茶は止むを得ないのではないでしょうか。萎縮していては何もできません。課徴金の減免制度があるので、これを活用して、万一課徴金を支払っても元が取れるように売上高と利益を伸ばすことに貢献する攻めの広告宣伝を実施していきましょう。」

営業担当取締役C:「萎縮する必要はありませんが、不当表示の未然防止を心掛けましょう。当社は一般消費者向け商品を取り扱っているのだから、一般消費者の誤解を招くことのないよう常に消費者目線での広告宣伝が基本です。この姿勢は従来から何ら変わることはありません。」

営業担当取締役D:「ごもっともです。改正景品表示法では、不当表示の未然防止の観点から、表示管理責任者・担当者の設置が義務付けられているので、私が担当する部署においても、部長のE君を表示管理責任者に、課長のF君を表示管理担当者とするように手配しましょう。」

以上の取締役A~Dの発言のうち、誰の発言がGOOD発言でしょうか?

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2016/05/31 【役員会 Good&Bad発言集】不当表示に対する課徴金制度(会員限定)

<解説>
2014年に2度にわたって改正された景品表示法

2013年秋以降に発覚したホテルでのメニュー等の不当表示をきっかけに、事業者のコンプライアンス体制の確立と行政の監視指導体制の強化を図るため、2014年6月に「不当景品類及び不当表示防止法」(景品表示法)が改正され、同年12月に施行されました。また、2014年6月改正法において、不当表示に対する抑止力を高める方策として課徴金制度の整備について検討を加えることとされ、その検討の結果、2014年11月に更なる改正法が成立、公布され、景品表示法に課徴金制度が導入されることになりました。

2016年4月1日から施行された課徴金制度

この課徴金制度は、2016年4月1日以降に行なわれた課徴金対象行為に適用されます。景品表示法における課徴金制度は、上述のとおり(1)不当表示規制の抑止力を高めて不当表示を防止するために、不当表示を行なった事業者に対して課徴金という経済的不利益を課すとともに、併せて(2)不当表示による一般消費者の被害回復を促進する観点から、所定の手続に沿った自主返金を実施した事業者に対しては課徴金額を減額する――ことを主な内容としています。詳細は下記のとおりです。
(1)課徴金対象行為
 ①優良誤認表示(景品表示法8条1項1号)
②有利誤認表示(同2号)
(2)課徴金額の算定方法
不当表示の対象商品・役務(サービス)の売上額(最長で3年)の3%
(3)課徴金の免除
 以下に該当する場合には、課徴金は課されません。
①事業者が「課徴金対象行為をした期間を通じて」課徴金対象行為となる表示が「優良誤認表示」又は「有利誤認表示」に該当することを「知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠った者でないことが認められる」場合
②課徴金額150万円未満(売上額5,000万円(=5,000万円×3%)未満)の場合
(4)課徴金の減額
①違反事業者が、(ⅰ)返金額を個別に特定できる返金対象者に対する返金措置の実施に関する計画を作成し、消費者庁長官の認定を受け、(ⅱ)この計画に沿って返金を実施し、(ⅲ)返金措置の実施期間経過後1週間以内に報告した場合、返金相当額が課徴金の額から減額されます。また、返金相当額が課徴金額以上となる場合には課徴金は課されません。
②違反行為を自主申告した事業者に対しては、課徴金額の1/2が減額されます。

事業者としての対応

不当表示を未然に防止するとともに、不当表示に対する課徴金の賦課を回避するために、事業者には、以下のような対応が求められます。
(1)不当表示の発生を未然に防止するために、景品表示法の考え方の周知・啓発、法令遵守方針等の明確化、表示の根拠となる情報の確認・関係部門での共有・保管、表示管理担当者等の選任と周知、などを講じておく。
(注)「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」(2014年11月14日内閣府告示第276号)3ページ~参照
(2)景品表示法違反の疑いを認識したら、迅速かつ徹底的に調査を行なう。
不当表示かどうかの判断は、事業者目線ではなく、消費者が誤認するおそれがあるかどうかという「消費者目線」での検討が重要です。
① 不当表示に該当する可能性が高ければ、消費者庁に報告するとともに不当表示の内容を改め(あるいは表示を取り止め)、違反事実を公表する。
② 消費者庁と協議のうえ返金等の措置を行なう。
③ 再発防止策を検討し、実施する。
さて、以上の解説をご覧いただければ、どれがGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。

<正解>
GOOD発言はこちら

営業担当取締役C:「萎縮する必要はありませんが、不当表示の未然防止を心掛けましょう。当社は一般消費者向け商品を取り扱っているのだから、一般消費者の誤解を招くことのないよう常に消費者目線での広告宣伝が基本です。この姿勢は従来から何ら変わることはありません。」
コメント:平凡な意見のように見えますが、法改正(課徴金制度の導入)に対して萎縮する必要はないこと、不当表示の未然防止が重要であること、消費者目線での広告宣伝が基本であること、はいずれも正しい視点による的確な発言です。

BAD発言はこちら
企画担当取締役A:「2014年に改正された景品表示法により、不当表示を行なった違反事業者に対して、売上高の1%相当の課徴金を課す制度が2016年4月から施行されています。経営への影響が大きいため、従来にも増して慎重に広告宣伝を打つ必要があります。」
コメント:課徴金額は不当表示の対象商品・役務の売上額に「3%」を乗じた額です。景品表示法の改正内容についてある程度詳しいものの、細部の理解に誤りのあるBAD発言です。
宣伝担当取締役B:「我が社の商品を消費者に訴求させるためには、多少の無茶は止むを得ないのではないでしょうか。萎縮していては何もできません。課徴金の減免制度があるので、これを活用して、万一課徴金を支払っても元が取れるように売上高と利益を伸ばすことに貢献する攻めの広告宣伝を実施していきましょう。」
コメント:積極的な攻めの姿勢は大事ですが、コンプライアンスを無視するわけにはいきません。また、悪気はないのでしょうが、一般消費者をないがしろにした発言と受けとられかねない内容であり、BtoC企業の経営幹部として相応しくない発言です。
営業担当取締役D:「ごもっともです。改正景品表示法では、不当表示の未然防止の観点から、表示管理責任者・担当者の設置が義務付けられているので、私が担当する部署においても、部長のE君を表示管理責任者に、課長のF君を表示管理担当者とするように手配しましょう。」
コメント:表示管理責任者や担当者の設置は、内閣府告示(事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針)において示されている管理の一例であり、設置が義務付けられているわけではありません。これも、景品表示法の改正内容についてある程度詳しさが見られるものの、細部の理解に誤りのあるBAD発言です。

2016/05/31 【2016年5月の課題】「基本報酬+賞与」のみで成り立つ役員報酬の見直し

2016年5月の課題

東証一部上場企業であるA社は、業績連動報酬の見直しに着手しようとしています。

A社の現在の役員報酬体系は、月々固定的に支払われる基本報酬と、単年度の業績を総合的に勘案した賞与のみで成り立っています。コーポレートガバナンス・コードや投資家の声を踏まえると、A社はどのような点に留意して業績連動報酬を見直すべきでしょうか。

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2016/05/31 【2016年4月の課題】株主総会前の投資家とのエンゲージメントのテーマと対応:解答(会員限定)

「成長戦略」の1つとして制定されたコーポレートガバナンス・コード

今年(2016年)6月の定時株主総会は、多くの3月決算の上場企業にとって、コーポレートガバナンス・コードへの対応方針を示した後初めての定時株主総会となります。

コーポレートガバナンス・コードへの対応で機関投資家が関心を持っているのは、形式的に各原則を「コンプライ」しているかどうかではなく、「実効性のある対応ができているか」ということであり、企業はこの点について説明を行うことが求められています。

特に重要なのは以下の3点です。

1.成長戦略との関係
「ガバナンス」というとリスク管理的な意味合いで捉えられがちですが、コーポレートガバナンス・コードは政府の「成長戦略」の1つとして作られたものであるということを企業は改めて認識する必要があります。機関投資家に対しても、自社のガバナンス体制が自社の成長戦略の中でどのように位置付けられているのか、自社の成長にどのように貢献するのかを整理して説明することが重要です。成長戦略と現在の自社のステージを踏まえ、投資家から「なぜ現在のガバナンス体制を選択しているのか」と質問された場合、明確に答えられるか再考してみてください。例えば、取締役会が示した成長戦略を実現するために経営幹部による適切なリスクテイクを支える体制となっていることなどを具体的に説明できるようにしておきたいところです。

2.(独立)社外取締役の位置付け
コーポレートガバナンス・コードで複数の選任が求められている独立社外取締役については、複数選任の事実だけでなく、各独立社外取締役がどのような役割を担うことで企業の成長につながるのかということを明確に説明できるようにしておく必要があります。まずは複数選任することを優先せざるを得なかった企業も多いと思いますが、このような場合であっても、各社外取締役にどのような役割を担ってもらえば成長と結び付くのかを再度検討・整理し、それをいかにして機関投資家に説明するのかを考えてください。

機関投資家、特にグローバル機関投資家は、コーポレートガバナンス・コードの要諦は「経営陣の指名・報酬の決定機能」にあると考えており、取締役会の過半数を独立社外取締役が占めたうえで指名・報酬を決定することが望ましいと思っています。しかし、現状ではそのような体制となっている日本の上場企業はごく少数です。たとえ体制面でグローバル機関投資家が望むような姿にはなっていなくても、少なくとも「問題のないガバナンス体制」を構築するためにどのような工夫を行っているかの説明は欲しいところです。例えば、コーポレートガバナンス・コード「補充原則4-10①」でも勧められている任意の諮問委員会の設置を検討している旨の説明などが考えられます。

補充原則4-10①
上場会社が監査役会設置会社または監査等委員会設置会社であって、独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない場合には、経営陣幹部・取締役の指名・報酬などに係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するため、例えば、取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする任意の諮問委員会を設置することなどにより、指名・報酬などの特に重要な事項に関する検討に当たり独立社外取締役の適切な関与・助言を得るべきである。

3.取締役会評価
コーポレートガバナンス・コードで開示が求められている項目であり、内容を「毎年」更新しなければならないのが取締役会評価です。コーポレートガバナンス・コードの補充原則4-11③では、取締役会評価では「“結果”の概要」を開示するよう求めていますが、だからと言って、単に「取締役会評価を行った結果、取締役会の実効性は十分に確保されていた」というような結果だけの説明ではなく(実際、コーポレートガバナンス・コードの実施後最初に提出された各社のコーポレートガバナンス報告書には、このような開示例が多く見られました)、評価によって見つかった取締役会の課題やそれに対する改善の方向性も示したいところです。機関投資家は「問題がない」という回答を求めているのではなく、企業がどのような課題を認識し、それをいかに解決しようとしているのかが知りたいのです。

補充原則4-11③
取締役会は、毎年、各取締役の自己評価なども参考にしつつ、取締役会全体の実効性について分析・評価を行い、その結果の概要を開示すべきである。
「無条件に賛成」とはいかなくなった監査等委員会設置会社への移行

東芝の不祥事やセブン&アイにおける経営者の交代などは、今総会に対する機関投資家の関心をかつてなく高めることになりました。最近のトピックスに関係して機関投資家が特に関心を持ちそうなテーマは以下のとおりです。

1.監査等委員会設置会社への移行
従来、監査等委員会設置会社への移行は「ガバナンスの改善」との見方が多く、機関投資家もほぼ無条件に近い形でこれを認めてきました。しかしながら、オプトホールディングが、監査等委員会設置会社に移行するための定款変更議案に対し大株主である米国運用会社RMBキャピタルの反対を受けたように(結果は可決。2016年4月19日のニュース「機関投資家に反対される監査等委員会設置会社移行の定款変更議案」参照)、今後は無条件で賛成が得られるとは限りません。

機関投資家が監査等委員会設置会社への移行に疑念を抱きつつあるのは、社外取締役の役割を積極的に認めていない企業が、新たな社外取締役の採用を避けるために社外監査役を横滑りさせている事例が散見されるからです(昨年(2015年)6月の株主総会の終了までに監査等委員会設置会社に移行した企業のうち、独立役員の人数が増加したケースは約3割にとどまっています)。このような姿勢は“形式的”には「複数の社外取締役会の選任」という要件を満たしているように見えても、“実質的”にはガバナンスの後退であり、社外取締役の活用を求めるコーポレートガバナンス・コードの精神に反しているとの見方があります。企業にそのような姿勢が見えた場合には反対票を投じる機関投資家は今後も出てくると予想されます。

したがって、監査等委員会設置会社への移行について機関投資家に説明する場合には、「制度上認められている」といったものではなく、株主の賛同が得られるように、その目的と積極的な意義を明確に説明することが必要です。上述のとおり、機関投資家にとって、コーポレートガバナンス・コードの要諦は「経営陣の指名・報酬の決定機能」にあります。会社法上、監査等委員会設置会社における監査等委員会には、監査等委員でない取締役の人事・報酬について株主総会での「意見陳述権」が認められている(会社法361条6項)ことを踏まえ、「社外取締役が過半数の監査等委員会で、監査等委員でない取締役の人事・報酬を評価している」旨をアピールするのもよいでしょう。また、コーポレートガバナンス・コードの補充原則4-10①は、「独立社外取締役が取締役会の過半数に達していない場合には、経営陣幹部・取締役の指名・報酬などに係る取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するため、例えば、取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする任意の諮問委員会を設置することなどにより、指名・報酬などの特に重要な事項に関する検討に当たり独立社外取締役の適切な関与・助言を得るべきである」としていますので、監査等委員会設置会社への移行にあたっては、指名委員会等設置会社と同様の指名(諮問)委員会、報酬(諮問)委員会を任意で設置することも検討したいところです。

また、監査役会設置会社から監査等委員会設置会社に移行した場合、常勤監査役がいなくなることで、監査機能がむしろ弱くなってしまうのではないかという懸念が機関投資家から示されることも考えられます。その場合、内部統制・内部監査機能の強化についてコメントを準備することも有効でしょう。

なお、議決権行使助言会社ISSは基本的には監査等委員会設置会社への移行に賛成する方針ですが、「経営権」に絡む株主提案(例えば委任状争奪戦の状態にある場合)として議案が提出された場合には、株主提案の内容を踏まえて個別判断する可能性もありますので、注意が必要です。

委任状争奪戦 : 株主総会において、会社提案の議案を否決したり、株主提案の議案を可決させたりするために、株主が会社の経営陣と委任状(議決権)を奪い合うこと。ファンド等の株主が、会社提案の否決または株主提案への賛成を求める委任状を他の株主に送付する形で行われる。別名「プロキシー(=委任状)ファイト」。

2.指名委員会の位置付け
指名委員会の設置は欧米企業では常識になっているため、機関投資家にも受け入れられ易いガバナンス体制だと言えます。しかしながら、形式的には優れたガバナンス体制を有しているとされてきた東芝では指名委員会が機能せず、歴代社長経験者が次期社長を決めるという密室人事が不祥事を招く大きな要因となりました。一方、セブン&アイのケースは、「コーポレートガバナンスが機能した事例」として資本市場から高い評価を受けています(2016年5月10日のニュース「セブン&アイで実証されたコーポレートガバナンスの「形」による効能」参照)。

東芝事件に象徴されるように、「日本企業の指名委員会は形骸化している」と考えている機関投資家は多く、本当に実効性がある体制となっているかどうか、開示資料の端々(社外取締役の経歴など)から読み取ろうとしています。企業としては、従来のような「社会的地位」や「独立性」の説明にとどまらず、「指名委員会の活動にどれくらい時間を割くことができるのか」「会社が委員に対して具体的に求めていること」など、実効性の有無を判断する材料を提供したいところです。また、指名委員会も取締役会評価の対象とし、評価結果も踏まえて説明すると、より説得力が高まるでしょう。

形式的なコードへの対応は早期に

コーポレートガバナンス・コードにおける株主総会に関する原則の中には、コストさえかければ容易に対応できるものがあります。具体的には補充原則1-2②「招集通知の早期発送・WEB開示」、補充原則1-2④「招集通知の英文対応」などです。

また、補充原則1-2③「開催日の適切な設定」、補充原則1-2⑤「機関投資家の総会出席」についても全国株懇連合会のガイドラインに、定款変更により議決権の代理行使を認める方法などが提示されています(12ページの「ルートD」参照)。このような取組みは、コーポレートガバナンスの改善に向け積極的な姿勢を投資家に示すことになります。これらの原則への対応は根本的な取組みが必要になる他の原則に比べれば容易であり、早期に対応した方が投資家にもアピールすることになると考えられます。

2016/05/31 定年後の賃金減額は違法?

日本企業の約8割は定年を満60歳と定めたうえで、その後は「勤務延長」または「再雇用」として従業員を継続雇用しているという(厚生労働省「平成27年就労条件総合調査」第13表参照)。これは、高年齢者雇用安定法上、事業主は原則として「満60歳」を下回る定年制を定めることができず(同法8条)、また、定年到達後も本人が希望している場合は、「少なくとも満65歳まで」は雇用を確保しなければならないとされているからだ(同法9条)。

ただ、典型的な日本企業における年功型賃金制度は、従業員を「新卒採用から定年まで」雇用することを前提に設計されている。会社からすれば、「定年後も雇用しなければならないのであれば、賃金をその時の能力に見合った額に設定し直したい」というのが偽らざる本音だろう。実際、国税庁の調査によると、60~64歳の平均給与は「3,725千円」であり、55~59歳(4,804千円)から23%低下している(国税庁「平成26年分民間給与実態統計調査」)。

こうした中、最近話題を呼んだのが、・・・

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2016/05/31 定年後の賃金減額は違法?(会員限定)

日本企業の約8割は定年を満60歳と定めたうえで、その後は「勤務延長」または「再雇用」として従業員を継続雇用しているという(厚生労働省「平成27年就労条件総合調査」第13表参照)。これは、高年齢者雇用安定法上、事業主は原則として「満60歳」を下回る定年制を定めることができず(同法8条)、また、定年到達後も本人が希望している場合は、「少なくとも満65歳まで」は雇用を確保しなければならないとされているからだ(同法9条)。

ただ、典型的な日本企業における年功型賃金制度は、従業員を「新卒採用から定年まで」雇用することを前提に設計されている。会社からすれば、「定年後も雇用しなければならないのであれば、賃金をその時の能力に見合った額に設定し直したい」というのが偽らざる本音だろう。実際、国税庁の調査によると、60~64歳の平均給与は「3,725千円」であり、55~59歳(4,804千円)から23%低下している(国税庁「平成26年分民間給与実態統計調査」)。

こうした中、最近話題を呼んだのが、定年前と全く同じ業務に就いていたトラック運転手3人の賃金を定年後に嘱託社員となったことを理由として2~3割ほど減額した会社に対しその額すべてを支払うよう命じた判決(東京地判H28.5.13)だ。現在政府が進める“1億総活躍”プロジェクトでも「同一労働同一賃金」は大きなテーマとなっていることもあり、この裁判をセンセーショナルに報道するメディアも見られた。

しかし、労働契約法9条・10条は就業規則を変更することによる労働条件の不利益変更について厳しい制約を課しており(「勤務延長」の場合に適用)、また、同法20条では、有期契約であることを理由として労働条件が不合理に相違してはならない旨を定めている(再雇用の場合に適用)。実は上記裁判はこのことを改めて確認したものに過ぎない。

もっとも、定年後の賃金の減額が絶対にダメというわけではない。(同じような業務に就かせるとしても)役職を解いたり、責任を軽くしたりするなどして、役職手当・職務手当等に相当する金額の範囲内では減額が許されると考えてよい。この点は上記判決でも「特段の事情があれば賃金減額が可能」であることを示唆しており、また、過去には「高年齢雇用継続給付金は定年前からの賃金減額率が61%以上75%未満の場合に支給されることから、法制度上、賃金額の低下は織り込み済みというべき」とした裁判例(大阪高判H22.9.14)もある。したがって、上記地裁判決だけをもって「定年後の賃金減額がすべて違法とされた」というわけではないので留意したい。

2016/05/30 株を保有していない投資家との対話に応じるべきか

英国から“輸入”されたスチュワードシップ・コードは、日本語では「責任ある機関投資家の諸原則」と訳されている。「責任ある」という言葉からは、同コードは機関投資家による「株式保有」が前提になっていると感じる向きは多いだろう。同コードの指針の冒頭では「エンゲージメントなどを通じて、企業価値の向上やその持続的成長を促すことにより、顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図るべき」とされており、その実現にはやはり株式の保有が前提になると考えるのが自然だが、この点について投資家の中には両論がある。

スチュワードシップ・コード 指針1-1
機関投資家は、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づく建設的な「目的を持った対話」(エンゲージメント)などを通じて、当該企業の企業価値の向上やその持続的成長を促すことにより、顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図るべきである。

ESGの分野で近年テーマの1 つとなっている・・・

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2016/05/30 株を保有していない投資家との対話に応じるべきか(会員限定)

英国から“輸入”されたスチュワードシップ・コードは、日本語では「責任ある機関投資家の諸原則」と訳されている。「責任ある」という言葉からは、同コードは機関投資家による「株式保有」が前提になっていると感じる向きは多いだろう。同コードの指針の冒頭では「エンゲージメントなどを通じて、企業価値の向上やその持続的成長を促すことにより、顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図るべき」とされており、その実現にはやはり株式の保有が前提になると考えるのが自然だが、この点について投資家の中には両論がある。

スチュワードシップ・コード 指針1-1
機関投資家は、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づく建設的な「目的を持った対話」(エンゲージメント)などを通じて、当該企業の企業価値の向上やその持続的成長を促すことにより、顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図るべきである。

ESGの分野で近年テーマの1 つとなっている「タバコ」の例で見てみよう。

今月(2016年5月)23日にはフランス最大の保険会社であるアクサがタバコ業界への投資をやめることを発表し、大きな話題を呼んだ。同社は保有株式2億ユーロおよび保有債券16億円(日本円で総額約2,200億円)を売却するという。

もっとも、タバコ産業への投資から撤退する動きは今に始まったことではない。数年前からCalPERS(カルパース=カリフォルニア州職員退職年金基金)やCalSTRS(カルスターズ=米カリフォルニア州教職員退職年金基金)、ノルウェーの年金基金などがタバコ産業には投資を行わない方針を打ち出している(2016年3月23日のニュース「パリ協定きっかけに高まる「気候変動リスク」に関する情報開示ニーズ」参照)。とはいえ、民間企業、しかも保険業界のトップ企業であるアクサが投資撤退に伴うコストを覚悟のうえで今回の決断に踏み切ったインパクトは大きい。同社は同業他社にも追随を呼びかけており、タバコ産業が受けるダメージ(企業イメージへの影響も含め)は小さくないだろう。

これに対し、機関投資家の間では、投資を継続したまま「責任のある投資家」として、投資先企業との対話を通じて対応を促す“エンゲージメント投資”の方が効果的であると指摘する声も少なくない。業界全体を一律に「不適切」と断じ、投資を引き揚げるのは無責任との考え方だ。確かに、「大株主」であるからこそ、企業への直接的な対話・働きかけが可能であるということは紛れもない事実だろう。実際、英国の大手石油会社BPの昨年(2015年)の株主総会では、低炭素エネルギーの研究開発拡充を求める「株主提案」が賛成多数で可決されている。もし大株主が「化石燃料を扱う企業には投資しない」として投資を引き揚げていれば、このような株主提案は実現しようもなかったはずだ。環境問題に熱心なマイクロソフト創業者ビル・ゲイツ氏も同様の考えを持っている。昨年(2015年)盛り上がった化石燃料企業への投資引き揚げを求める署名に対し、「投資こそが解決につながる」として応じなかったのは有名な話だ。

先月開催された投資家フォーラム第5回会合でも、「株式の売却後も対話のパートナーとなりうる」との発言が聞かれたが(2016年5月25日公表の「第5回会合報告書」3ページの上から3つめのコメント参照)、実際のところ、株を売却してしまった後も「パートナー」としての関係が続くのかどうかは微妙だろう。もちろん、再び投資対象となることもあり得るし、たとえ現時点では株主でなくても、企業価値を高める意見には耳を傾けるくらいの度量は経営者には持って欲しいところではある。株主総会を前に、コーポレートガバナンス・コードに対する企業の対応に機関投資家の注目が集まっているが、「責任ある投資家」とは何なのか、今後は企業から機関投資家に対しても議論が投げかけられることになるかもしれない。