2016/03/15 チェックリスト:監査等委員会設置会社に移行したい(会員限定)

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■チェックリスト:監査等委員会設置会社に移行したい

チェック事項 備考 対応未了 対応済
監査等委員会設置会社への移行に伴い、現在の「社外監査役」を「監査等委員である社外取締役」にスライドさせる場合、社外性要件に抵触しないかどうかを確認したか。 会社法上の社外性要件のみならず、東証の有価証券上場規程に規定される独立性や、議決権行使助言会社の議決権行使助言方針に規定される独立性基準も考慮する必要がある。
監査等委員会設置会社への移行後の適正な取締役の人数を検討したか。 取締役の数をいたずらに増やさないよう、一部の社外監査役には「監査等委員である社外取締役」への就任を依頼しないことも考えられる。
社外監査役に対し、「監査等委員である社外取締役」への就任の意思を確認したか。 社外取締役に就任することで責任が重くなることを理由に、就任を望まない社外監査役が出て来る可能性もある。
監査等委員会設置会社への移行にあたっては、取締役を退任する者や社内監査役などの処遇について検討したか。 例えば顧問契約や雇用契約を締結し、「監査等委員のスタッフ」や「内部監査室の監査担当」とすることも考えられる。
監査等委員会設置会社に移行について、総議決権の3分の2以上の賛成を得られる見込みがあるか。 監査等委員会設置会社への移行には定款変更が必要であり、定款変更には、株主総会の特別決議が求められる。
監査等委員会設置会社に移行について投資家に納得してもらうだけの十分な理由を用意できるか。 「社外取締役の確保」だけでは不十分。「社外取締役が過半数の監査等委員会」で、監査等委員でない取締役の人事・報酬を評価している旨をアピールすれば、投資家に対しても一定の説得力がある。また、指名・報酬(諮問)委員会を任意で設置することも検討したい。
監査等委員の選任について、株主総会の同意を得られる見込みはあるか。 監査等委員は取締役でもあるが、監査等委員以外の取締役とは区別して、株主総会で選任の可否が問われる。
監査等委員の任期を理解したうえで、候補者に同委員への就任を依頼しているか。 監査等委員の任期は2年であり、短縮することはできない。また、監査役会設置会社が監査等委員会設置会社に移行した場合、監査役の任期に残りがあっても引き継がれない。

ケーススタディ役員実務「監査等委員会設置会社に移行したい(会員限定)」はこちら

2016/03/14 鬼怒川ゴムが示した“営業利益低下企業”の進むべき道

東証一部上場の鬼怒川ゴム工業は(2016年)3月11日、政府系金融機関の日本政策投資銀行(政投銀)からのTOB(株式公開買い付け)を受けて非上場化することを発表している(同社によるリリース「公開買付けに関する意見表明のお知らせ 」参照)。同社は、「競争力を高めるためには事業拡大が必要」と判断し、国内外に取引先を持つ政投銀の傘下に入るという。

TOB(株式公開買い付け) : 特定の上場会社の株式を、買取り株数・価格・買付期間を公告したうえで、株式市場外で不特定多数の株主から買い集めること。TOBとは「Take-Over Bid」の略。

同社の2015年3月期のROE(自己資本利益率)は12.8%に達しており、2016年3月期も増収増益を見込んでいる。こうした中で実施される今回のTOBは、一見すると、いわゆる企業再生型の買収ではなく、前向きな事業再編を目的としたものに見える。ただ、同社の経営指標を詳細に確認すると、・・・

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2016/03/14 鬼怒川ゴムが示した“営業利益低下企業”の進むべき道(会員限定)

東証一部上場の鬼怒川ゴム工業は(2016年)3月11日、政府系金融機関の日本政策投資銀行(政投銀)からのTOB(株式公開買い付け)を受けて非上場化することを発表している(同社によるリリース「公開買付けに関する意見表明のお知らせ」参照)。同社は、「競争力を高めるためには事業拡大が必要」と判断し、国内外に取引先を持つ政投銀の傘下に入るという。

TOB(株式公開買い付け) : 特定の上場会社の株式を、買取り株数・価格・買付期間を公告したうえで、株式市場外で不特定多数の株主から買い集めること。TOBとは「Take-Over Bid」の略。

同社の2015年3月期のROE(自己資本利益率)は12.8%に達しており、2016年3月期も増収増益を見込んでいる。こうした中で実施される今回のTOBは、一見すると、いわゆる企業再生型の買収ではなく、前向きな事業再編を目的としたものに見える。ただ、同社の経営指標を詳細に確認すると、必ずしも盤石の経営状態にはないことが分かる。直近3年間で売上高は7.8%増加しているものの、営業利益は16.9%減少しており、マージン率の低下が顕著となっている。これを受けて、ROEは過去3年間で28.7%から12.8%に低下しており、株価も2012年以来「400~800円」のボックス圏を抜け出せていない。

同社のような自動車部品サプライヤーは完成車メーカーからの値引き要請が厳しく、株主資本コスト(株式資本コストの定義は「(新用語・難解用語辞典)ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)法」の2参照))を充足できるROEを持続的に確保することは難しいものと推測される。単なる「下請け」的な立場から抜け出すには、圧倒的なスケールメリットを獲得してコストダウンを進めるか高付加価値品に特化してマージンを確保することが考えられるが、いずれもマルチクライアント化なくして達成することは難しい。

マルチクライアント : 「複数の顧客」という意味。

もう1つの選択肢としては、そもそも株主資本コストの充足を目指さなくてもよくすること、すなわち特定メーカーの100%子会社となる途も考えられるが、冒頭で述べたとおり鬼怒川ゴムは国内外に取引先を持つ政投銀の傘下に入ることで、マルチクライアント化による収益力強化を選んだ。株式保有割合2割の筆頭株主であり、取引の6割を占める大口取引先である日産も、同社の戦略転換を認めたということだろう。

政投銀は、鬼怒川ゴムの企業価値が高まった段階で株式売却を検討するという。マルチクライアント化の成功によりマージン率を引き上げることができれば、同社株式が再上場する可能性は高いだろう。一方、もし目論見通りに事業改革が進まなければ、改めて完成車メーカーや同業サプライヤーの傘下入りが俎上に上ることも考えられる。

売上は伸びているものの営業利益が下がっている上場企業が少なくない中、業績がある程度の水準にあるうちに「非上場化」という退路を断つ選択を断行した鬼怒川ゴムの今後の動向に注目したい。

2016/03/11 4月から義務付けられる「障害者への合理的配慮」とは?

来月(2016年4月)1日から改正障害者雇用促進法が施行される。今回の改正は、障害者差別解消法(平成25年6月成立・公布)の施行(2016年4月1日~)と相まって、「障害者差別の禁止」と「合理的配慮の提供義務」の2つが大きな柱とされている。それぞれ具体的に説明しよう。

まず「障害者差別の禁止」とは、(1)労働者の募集および採用について、障害者でない者と均等な機会を与えなければならない(改正法第34条)、(2)賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、労働者が障害者であることを理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはならない(同第35条)――ということである。これに対し、「積極的差別是正措置として障害者を有利に取り扱うこと(ポジティブアクション)」はもちろん、「労働能力などの適正な評価によって採否を決定したり賃金等に差異を設けること」や「著しく労働能力の低い者について都道府県労働局長の許可を受けて最低賃金額より低い賃金を設定すること」はここでいう「差別」には該当しない。

企業がより注意を払わなければならないのは、「合理的配慮の提供義務」の方だろう。労働者の募集および採用について障害者から申し出があった場合には、均等機会確保の支障となっている事情を改善する措置を講じなければならず(改正法36条の2)、採用後は、施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならない(同第36条の3)。

誤解されがちだが、・・・

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2016/03/11 4月から義務付けられる「障害者への合理的配慮」とは?(会員限定)

来月(2016年4月)1日から改正障害者雇用促進法が施行される。今回の改正は、障害者差別解消法(平成25年6月成立・公布)の施行(2016年4月1日~)と相まって、「障害者差別の禁止」と「合理的配慮の提供義務」の2つが大きな柱とされている。それぞれ具体的に説明しよう。

まず「障害者差別の禁止」とは、(1)労働者の募集および採用について、障害者でない者と均等な機会を与えなければならない(改正法第34条)、(2)賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、労働者が障害者であることを理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはならない(同第35条)――ということである。これに対し、「積極的差別是正措置として障害者を有利に取り扱うこと(ポジティブアクション)」はもちろん、「労働能力などの適正な評価によって採否を決定したり賃金等に差異を設けること」や「著しく労働能力の低い者について都道府県労働局長の許可を受けて最低賃金額より低い賃金を設定すること」はここでいう「差別」には該当しない。

企業がより注意を払わなければならないのは、「合理的配慮の提供義務」の方だろう。労働者の募集および採用について障害者から申し出があった場合には、均等機会確保の支障となっている事情を改善する措置を講じなければならず(改正法36条の2)、採用後は、施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならない(同第36条の3)。

誤解されがちだが、これらは“努力義務”ではなく、あくまで“義務”とされている。罰則規定こそないものの、都道府県労働局の指導や勧告の対象であり、また、仮にトラブルに発展した場合には、「義務を果たしていない」というだけで訴訟では不利になるため、甘く見るのは危険だ。

ただし、「合理的配慮の提供義務」には、「事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない」という例外規定が設けられている。過重な負担であるかどうかは、①事業活動への影響の程度、②実現困難度、③費用負担の程度、④企業の規模、⑤企業の財務状況、⑥公的支援の有無、の6要素を総合的に勘案して判断される(厚生労働省「合理的配慮指針」7ページ参照)。

建物の改築を要する場合などは「事業主の負担が過重」と言えそうだが、軽微な段差の解消やソフト面での配慮であれば、実現できそうなことは多いはずだ。ソフト面での配慮の具体例としては、「出退勤時刻等の勤怠管理を柔軟に運用する」「業務指示に筆談やメールを利用する」「会議資料をデータ化する(これにより、文字を拡大したり、音声ソフトで読み上げさせたりできるようになる)」「何か困っている様子だったら声を掛ける」といったことが挙げられる。

上場企業は、障害者への合理的配慮を単なる法的義務としてだけでなく、CSR(企業の社会的責任)の一環としても捉えておく必要があろう。

2016/03/10 (新用語・難解用語)エグゼクティブ・セッション

社外取締役だけで構成される委員会のこと。OECDコーポレートガバナンス原則(2004改訂版)には以下の記述が見られる(経産省による仮訳53ページ「E」の上から5行目参照)が、下線部の「社外取締役の会議」がエグゼクティブ・セッションである。

単層構造の取締役会構造をとる多くの国では、最高経営責任者(CEO)と取締役会会長との職を分離することや、それが兼務される場合には、筆頭非執行役員に社外取締役の会議を招集させ、その会議の議長を務めさせることにより、取締役会の客観性や経営陣からの独立性が強化され得る。

エグゼクティブ・セッションは、エンロン事件後の米国で、ニューヨーク証券取引所の上場基準によって義務付けられた(303A.03 Executive Sessions)。米国企業の取締役会は大部分が社外取締役で構成されているものの、議長はCEOが兼任している例が多い。このことがCEOによる取締役会の支配、社外取締役の“飼い犬(lapdog)”化につながり、深刻な企業不祥事が発生する一因となったとの反省が、エグゼクティブ・セッション義務付けの背景にある。

一方、我が国コーポレートガバナンス・コードの補充原則4-8①は、エグゼクティブ・セッションについて以下のように定めている。・・・

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2016/03/10 (新用語・難解用語)エグゼクティブ・セッション(会員限定)

社外取締役だけで構成される委員会のこと。OECDコーポレートガバナンス原則(2004改訂版)には以下の記述が見られる(経産省による仮訳53ページ「E」の上から5行目参照)が、下線部の「社外取締役の会議」がエグゼクティブ・セッションである。

単層構造の取締役会構造をとる多くの国では、最高経営責任者(CEO)と取締役会会長との職を分離することや、それが兼務される場合には、筆頭非執行役員に社外取締役の会議を招集させ、その会議の議長を務めさせることにより、取締役会の客観性や経営陣からの独立性が強化され得る。

エグゼクティブ・セッションは、エンロン事件後の米国で、ニューヨーク証券取引所の上場基準によって義務付けられた(303A.03 Executive Sessions)。米国企業の取締役会は大部分が社外取締役で構成されているものの、議長はCEOが兼任している例が多い。このことがCEOによる取締役会の支配、社外取締役の“飼い犬(lapdog)”化につながり、深刻な企業不祥事が発生する一因となったとの反省が、エグゼクティブ・セッション義務付けの背景にある。

一方、我が国コーポレートガバナンス・コードの補充原則4-8①は、エグゼクティブ・セッションについて以下のように定めている。

独立社外取締役は、取締役会における議論に積極的に貢献するとの観点から、 例えば、独立社外者のみを構成員とする会合を定期的に開催するなど、独立した客観的な立場に基づく情報交換・認識共有を図るべきである。

上記原則の目的はあくまでも「独立した客観的な立場に基づく情報交換・認識共有を図る」ことにあり、「独立社外者のみを構成員とする会合」はその一例に過ぎない。しかし、東証一部上場企業の「75.5%」においては社長が議長職を務めており、また、同じく東証一部上場企業の「97.2%」においては社外取締役が全取締役の半数以下であることを考えても(東証上場会社コーポレートガバナンス白書201519ページの図表22【取締役会の議長の属性(市場区分別)】および24ページの図表29【社外取締役の取締役会に占める比率(市場区分別)】参照)、エグゼクティブ・セッションを設置する意義は決して小さくないと考えられる。

「エグゼクティブ・セッションを設置するには社外取締役の人数が少ない」という企業は、社外監査役を含めた「社外役員委員会」としてもよいだろう。また、コーポレートガバナンス・コードに記載されている「情報交換・認識共有」の実効性を高めるための工夫として、(社内の)常勤監査役もメンバーに加えた「非執行役員委員会」とすることも検討に値する。要は、自社の現状に合った形でメンバー構成を考えればよいということだ。

2016/03/10 【役員会 Good&Bad発言集】労働契約法の“5年ルール”への対応(会員限定)

<解説>
2013年1月に施行された「改正労働契約法」の内容

 有期労働契約は、パート労働、派遣労働をはじめ、いわゆる正社員以外の労働形態に多くみられる労働契約です。有期労働契約で働く人は全国で1200万人以上おり、そのうちの約3割が、通算5年を超えて有期労働契約を反復更新していると言われています。リーマンショック以降は、経営の悪化から雇止めをする企業が増え、雇止めを不服とする労働者と企業の間で労働紛争が急増しました。

雇止め : 有期労働契約の期間満了時に更新せず、契約を終了させること。

 そこで政府は「安心して働き続けることができる社会」の実現を目指して労働契約法を改正し(2012年8月10日公布)、次の3つのルールを設けました。

(1)無期労働契約への転換 有期労働契約の期間が同一の使用者との間で反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換される。
(2)「雇止め法理」の法定化 「雇止め法理」とは、労働者保護の観点から雇止めを無効とする最高裁判例で確立したルールであり、具体的には、①過去に反復更新されてきた有期労働契約で、その雇止めが無期労働契約の解雇と実質的に同視できる、②労働者が、有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由がある――のいずれかの場合において、使用者が雇止めをすることが「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」は、雇止めを認めないというもの(①は最高裁第一小法廷昭和49年7月22日判決(東芝柳町工場事件)、②は最高裁第一小法廷昭和61年12月4日判決(日立メディコ事件)に基づいている)。この場合、有期労働契約は、従前と同一の労働条件で更新されることになる。
労働契約法の改正では、最高裁判例で確立した「雇止め法理」を、そのままの内容で法律に規定した。
(3)不合理な労働条件の禁止 有期労働契約者と無期労働契約者との間で、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違を設けることを禁止

 上記のルールのうち、(2)は2012年8月10日に改正労働契約法の公布と同時に施行され、(1)と(3)は2013年4月1日に施行されています。

無期労働契約への転換時期は?「3年契約」に要注意

 上述のとおり、同一の使用者との間で有期労働契約が通算で「5年」を超えて反復更新された場合は、労働者の申込みにより、有期労働契約は無期労働契約に転換します(労働契約法第18条)。通算契約期間のカウントの対象になるのは、2013年4月1日以後に開始する有期労働契約からとなります。契約期間が「1年」の場合と「3年」の場合それぞれの通算契約期間のカウント方法は以下のとおりです。

【契約期間が1年の場合】
 例えば2013年4月1日付で1年の有期労働契約を締結し、以後1年毎に同契約を更新し続けた場合、労働者は「6年目」すなわち2018年4月1日に開始する更新契約期間の初日から期間末日までの間に、無期転換の申し込みをすることができます。

 労働者が無期転換の申し込みをすると、使用者が当該申込みを承諾したものとみなされ、その時点で無期労働契約が成立します。ただし、無期契約に転換されるのは、申込み時に存在していた有期労働契約が終了する日の翌日、すなわち2019年4月1日からとなります。

図1 契約期間が1年の場合の無期限労働契約への転換時期
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(厚生労働省「労働契約法改正のポイント」を参考)

【契約期間が3年の場合】
 では、労働基準法第14条第1項で認められている通常の契約期間の上限である「3年」毎の有期労働契約の場合はどうでしょうか。

 2013年4月1日付で3年の有期労働契約を締結した場合、2016年4月が最初の更新期となり、ここで再び3年の有期契約を結ぶと通算で5年を超えることが確定するので、労働者は当該更新直後の2016年4月1日から無期転換の申し込みができることになります。

図2 契約期間が3年の場合の無期限労働契約への転換時期
goodbad15971b
(厚生労働省「労働契約法改正のポイント」を参考)

「クーリング」の活用で、有期労働契約の再契約も

 ただし、1年契約であろうが3年契約であろうが、有期労働契約とその次の有期労働契約の間に「契約のない空白期間」が6か月以上ある場合には、その空白期間より前の有期労働契約は通算契約期間に含めないことになっています。これを「クーリング」といいます。また、通算対象の契約期間が「1年未満」の場合は、その1/2以上の空白期間があれば、それ以前の有期労働契約は通算契約期間に含めないこととされています。

クーリング : 「冷却(cooling)期間」というニュアンスで使われている。

 一方、無期労働契約への転換を申し込まないことを契約更新の条件とするなど、あらかじめ労働者に無期契約への「転換申込権」を放棄させることはできないので要注意です。
有期労働契約から無期労働契約に転換された労働契約の職務・勤務地・賃金・労働時間などの労働条件は、別段の定め(労働協約・就業規則・個々の労働契約)がない限り、「直前の有期労働契約」と同一となります。逆に言うと、別段の定めをすることによって、労働条件を変更することは可能です。

企業の選択肢は?

 以上を踏まえると、労働契約法の5年ルールへの企業の対応としては、次のような5つのパターンが考えられます。
①無期労働契約への移行を容認し、正社員化を推進する(処遇は正社員と同様とする)。
②    〃          正社員と非正規社員の中間の処遇制度を新設する。
③    〃          処遇は転換前と同様とする(処遇の変更なし)。
④通算契約期間にクーリングを設けることで、同じ者と有期労働契約を再契約する。
⑤有期労働契約者数を減らしていく(更新の厳格化・抑制を含む)。

 経営的に見れば、有期労働契約の無期契約化は固定費の増加につながるため、容易に決断できることではありません。一方で、労働力不足の時代が到来したといわれる昨今、人材の確保は企業の存続・成長のために不可欠です。5年ルールへの対応は“2018年問題”といった一時的なものではなく、長期的な労働力の確保という視点から考える必要があります。たとえ固定費の増加につながったとしても、企業の成長に必要な良質な労働力を確保できるのであれば、正社員化を推進するという選択肢も十分あり得ます。5年ルールへの対応を単なるコストの問題と捉えるべきではありません。

 また、目線を変えれば、有期労働契約者の側にも家庭や年齢など様々な事情があります。「ブラック企業」といったネガティブな評価を受けないようにするためにも、働く側のニーズを汲みとって、企業と有期労働契約者の間でwin-winの関係を築くことが重要です。

 さて、以上の解説をご覧いただければ、どれがGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。

<正解>
GOOD発言はこちら

取締役B:「いやいや、有期契約は必ずしも1年契約とは限らないのでは? また、今後2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて労働者不足がいっそう深刻になると言われていますし、早めに方針を決定して公表するなど先手を打っておけば、現在の有期嘱託社員の引き止めにもなるし、新たな労働力確保にもつながると思います。」
コメント:有期労働契約が1年契約とは限らないことに着目している点、自社の有期労働契約の実態について理解していることがうかがえます。また、労働市場の先行きを、社外に目を向け広い視点から捉えている点や、労働力の確保という経営上の重要課題にも目配りができている点もGOODです。

BAD発言はこちら
取締役A:「有期の嘱託社員は1年毎の契約更新なので、無期契約への転換が問題になるのは2018年4月のはずです。それまで猶予があるのだから、今慌てて方針を決定しなくてもよいのではないでしょうか。それに、人事担当取締役が言うように、無期労働契約はあくまで労働者の申込みがあって成立するものであり、通算期間が5年を超えただけで自動的に成立するものではありません。会社が前もって方針を決めておく必要はないと思います。」
コメント:3年の有期労働契約を締結している場合には、2016年4月から無期契約への転換の申し込みが生じ得るため、会社としての対応を決める必要があります。労働契約法の改正内容についてはある程度知識があるようですが、自社の実態を正確に把握できておらず、思い込みによって誤った判断をしてしまっているBAD発言です。
取締役C:「当社の対応としては、無期の正社員と同一条件での雇用に切り換えるか、通算5年を超えないように契約を終了させるしかないですね。前者はコストアップ要因になるし、後者は雇止めの問題がありそうです。」
コメント:具体的な対応策とその課題分析に意識が向いている点はGOODですが、労働契約法は、無期労働契約への転換に際して必ずしも正社員との同一処遇を求めておらず、また、対応策も二者択一ではなくバラエティがありますので、決めうちは早計です。

2016/03/10 【役員会 Good&Bad発言集】労働契約法の“5年ルール”への対応

 サービス業を営むX社は、有期労働契約の嘱託社員を多数抱えている。そのX社の経営会議で、人事担当取締役が労働契約法への対応を話題にした。

 「2013年4月に改正労働契約法が施行され、有期労契約に“5年ルール”が導入されたのは皆さんもご存知かと思います。5年ルールでは、有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えた場合には、労働者から申し込みがあれば、「期間の定めのない無期労働契約」に転換しなければなりません。今年(2016年)4月に改正法施行後3年を迎えるため、当社としても、そろそろ5年ルールへの対応方針を決めておく必要があります。」人事担当取締役のこの発言に対して、取締役A・B・Cが次のような発言をしました。取締役A・B・Cの発言のうち、誰の発言がgood発言でしょうか?

取締役A:「有期の嘱託社員は1年毎の契約更新なので、無期契約への転換が問題になるのは2018年4月のはずです。それまで猶予があるのだから、今慌てて方針を決定しなくてもよいのではないでしょうか。それに、人事担当取締役が言うように、無期労働契約はあくまで労働者の申込みがあって成立するものであり、通算期間が5年を超えただけで自動的に成立するものではありません。会社が前もって方針を決めておく必要はないと思います。」

取締役B:「いやいや、有期契約は必ずしも1年契約とは限らないのでは? また、今後2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて労働者不足がいっそう深刻になると言われていますし、早めに方針を決定して公表するなど先手を打っておけば、現在の有期嘱託社員の引き止めにもなるし、新たな労働力確保にもつながると思います。」

取締役C:「当社の対応としては、無期の正社員と同一条件での雇用に切り換えるか、通算5年を超えないように契約を終了させるしかないですね。前者はコストアップ要因になるし、後者は雇止めの問題がありそうです。」

雇止め : 有期労働契約の期間満了時に更新せず、契約を終了させること。

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2016/03/09 “トーナメント方式”は時代にマッチしたCEOを生むのか?

サントリーや資生堂など、近年、社外からプロフェッショナルなCEOを招聘する企業が出てきているが、こうした企業はまだまだ少数にとどまる。多くの日本企業では、CEOは「社内」から選出される。しかしながら、現在の大手企業の人事制度の下で、果たして社内から適任者が選出されるのか、疑問が残る。

通常、日本の大手企業は、新卒を一括採用し、長い時間をかけて徐々に経営者候補を選抜していく。昇格の時期など節目節目である一定割合の人を選抜し、これに入れなかった人は将来の経営者候補から外れることになる。この選抜を繰り返すことで経営者候補はさらに絞り込まれ、最終的には「CEO候補」が選出されことになる。いわば“トーナメント方式”である。

これは、従業員の立場からは比較的フェアなシステムであるように思われる。特に日本企業各社が同じ戦略で発展できた高度成長期には優れたシステムだった。しかし、経営環境が激変する現代において、こうした“トーナメント方式”によって選抜された人が、経営者として適任かどうかは大いに疑問がある。というのも、数々の選抜をくぐり抜けて生き残った人というのは、結局は「大きなミスをしなかった人」であると考えられるからだ。言い換えれば、「リスクを取らなかった人」とも言うことができる。

逆に「リスクを取った人」はどうなるのだろうか。日本の人事制度では、いくら大きな成果を上げても、飛び級で出世することはできない。そして、リスクを取る限り、どこかで失敗をして、トーナメントから脱落することになる。

しかし、いま多くの日本企業の経営者に求められているのは、リスクをとって投資をし、稼ぐ力を取り戻すことである。この点からすると、現在は、「経営者候補者のプール」と「経営者に求められるニーズ」とがミスマッチの状態になっていると言える。これを解消するためには、・・・

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