2024年12月3日のニュース「野村アセットが議決権行使基準を厳格化、取締役会の監督機能強化と資本生産性の向上求める」および12月5日のニュース「大和アセット、「取締役」の構成のみでジェンダー多様性を判断 監査役は考慮せず」でもお伝えしたとおり、国内主要機関投資家による議決権行使基準の改定が相次いでいる。こうした中、昨年(2024年)11月28日には、ESG投資やエンゲージメントに積極的な姿勢で知られる「りそなアセットマネジメント」が『信託財産等における「議決権に関する行使基準」の改定内容および今後の方針』を公表している。りそなアセットマネジメントの基準改定は、広く国内機関投資家に影響を及ぼすものと考えられる。
今回の改定項目は以下の4点で、いずれも2024年1月に開催される株主総会より適用される。
1.ジェンダー・ダイバーシティ
従来は「取締役、監査役、指名委員会等設置会社の執行役」に女性が「確認できない」、すなわち女性役員がゼロの場合に代表取締役の選任議案に反対することとしていたが、今回の改定ではこれが「取締役会全体に占める女性取締役の比率が10%に達していない場合」へと変更された。対象が取締役に限定されたことは、監査役設会置会社に影響を与えるだろう。また、「10%」という閾値は段階的に引き上げるとしていることにも備える必要がある(後述)。
2.資本効率(ROE基準)
在任3年以上の代表取締役の選任議案に反対する資本効率の基準として、従来は「3年連続ROEが5%未満」を“一次スクリーニング”の閾値としていたが、今回の改定により、これが「3年連続でROEが8%未満」に引き上げられた。資本市場においてはROEの最低基準に関わるコンセンサスが、議決権行使助言最大手ISSの「5%」から、経済産業省の伊藤レポートの「8%」に移行する流れが加速していると言えよう。なお、“二次スクリーニング”については、従来はネットキャッシュが「総資産の25%以上」または「業種別でROEが3年連続下位25%以下」とされていたが、このうち前者が「3年連続で総資産の25%以上」に改定された。
ROE : ROE(Return On Equity = 株主資本利益率)とは株主資本に対する当期純利益の割合であり、「当期純利益 ÷ 株主資本」により算出される。
ネットキャッシュ : 現預金−有利子負債
3.政策保有株式
従来は政策保有株式の保有額が「連結純資産の20%以上」ある企業で「ROEが8%以上」ない場合、代表取締役の選任議案に反対するとしていたが、今回の改定でこれが「3年連続でROEが8%未満」の企業で政策保有株式の保有額が「連結純資産の20%以上」ある場合とされた。すなわち、政策保有株式の保有額が多いからといって必ずしも代表取締役の選任議案に反対するのではなく、まずは「資本効率が低いこと」を問題視することとなった。また、ROE基準に「3年連続」という限定が付いたことから、実際に反対を受けるリスクは従来より低くなったと言えよう。
4.配当政策
従来、剰余金処分案については、「ROE5%未満」かつネットキャッシュが「総資産の25%以上」で、「更なる内部留保の蓄積」となる場合には原則反対とされていた。今回の改定では、ROEの閾値を「8%未満」に引き上げた上で、剰余金処分案ではなく取締役再任議案に反対することとされた。一方、剰余金処分案には原則賛成する(ただし、3期連続最終赤字の場合には個別に妥当性を検討し、財務の安定が優先と判断すれば反対)。株主還元は取締役会の責務であることを明確にしたものと言える。
このほか今回のリリースでは、「今後の方針」と題し、「取締役会の高い独立性と多様性が確保されることが重要」との考えに基づき、今後の検討事項が示されている。具体的には、(1)取締役会における独立社外取締役の過半数化と、(2)ジェンダー・ダイバーシティ基準の引き上げだ。(2)では、対象を監査役を含む「女性役員」ではなく「女性取締役」とすること、閾値を10%から30%に引き上げること、適用対象企業をプライム市場上場企業のみならず全上場企業に拡大すること、が示されている。同様の議決権行使基準は他の機関投資家でも広く検討されているとみられ、「社外取締役過半数」かつ「女性取締役30%」が上場企業の取締役会に対するミニマム・リクワイヤメントとなる時期は遠くないと考えるべきだろう。
