2016/02/22 変化するCSR

 サステナビリティ投資を推進する国際機関であるグローバル・サステナブル・インベストメント・アライアンス(Global Sustainable Investment Alliance)によると、2014年における機関投資家によるサステナビリティ投資の運用資産額は21兆4000億ドル(約2,500兆円)に達している。これは機関投資家の運用資産総額の約3割を占める。昨年(2015年)9月16日にはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が国連のPRI(Principles for Responsible Investment=責任投資原則) に署名したが、英国では主要なアセットオーナー(年金基金など)は運用機関に対してスチュワードシップ・コードの受入れと国連PRIへの署名を委託にあっての要件としており、日本でもアセットオーナーによるPRIへの署名や、署名を委託先運用機関に求める動きが加速することが予想される。


アセットオーナー : 年金基金をはじめとする、資産(アセット)を保有する者のこと。
PRI : 機関投資家に対し、投資判断プロセスにESGを反映することや、投資対象企業にESGに関する情報開示を求めることなどを提唱するもの。これに署名した機関投資家は、国連に投資の状況を報告する義務が生じるため、ESGを重視した投資を実践せざるを得ない。

 ところで、サステナビリティに関連する言葉として「SRI」と「ESG」があるが、両者の意味は異なる。SRI(Socially responsible investmentまたはSustainable and Responsible Investmentとされる。詳細は後述)は「社会的責任投資」と訳され、企業の社会的責任(CSR=Corporate Social Responsibility)への取組みを考慮して行う投資手法を指す。すなわち、持続可能な社会を構築することを目的に、企業のCSRへの取り組みを積極的に評価し、投資先を選別するのがSRIである。一方、投資にあたって「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の3つの要素を考慮する「ESG投資」は、あくまで中長期的に見て投資収益を拡大するための投資手法と位置付けられている。つまり、SRI とESG投資はともに社会的に良いと認められる事業活動を行っている企業に投資しようという点では共通しているものの、SRIは「倫理観」に基づき、投資を通じて社会を良くすることが目的であるのに対して、ESG投資は環境・社会・ガバナンスに十分配慮出来ている企業に投資をすることは長期的な企業価値向上やリスクの低減につながるという考え方に基づいて行われる。

 これまでの日本企業のCSRは、・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから

2016/02/22 変化するCSR(会員限定)

 サステナビリティ投資を推進する国際機関であるグローバル・サステナブル・インベストメント・アライアンス(Global Sustainable Investment Alliance)によると、2014年における機関投資家によるサステナビリティ投資の運用資産額は21兆4000億ドル(約2,500兆円)に達している。これは機関投資家の運用資産総額の約3割を占める。昨年(2015年)9月16日にはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が国連のPRI(Principles for Responsible Investment=責任投資原則) に署名したが、英国では主要なアセットオーナー(年金基金など)は運用機関に対してスチュワードシップ・コードの受入れと国連PRIへの署名を委託にあっての要件としており、日本でもアセットオーナーによるPRIへの署名や、署名を委託先運用機関に求める動きが加速することが予想される。


アセットオーナー : 年金基金をはじめとする、資産(アセット)を保有する者のこと。
PRI : 機関投資家に対し、投資判断プロセスにESGを反映することや、投資対象企業にESGに関する情報開示を求めることなどを提唱するもの。これに署名した機関投資家は、国連に投資の状況を報告する義務が生じるため、ESGを重視した投資を実践せざるを得ない。

 ところで、サステナビリティに関連する言葉として「SRI」と「ESG」があるが、両者の意味は異なる。SRI(Socially responsible investmentまたはSustainable and Responsible Investmentとされる。詳細は後述)は「社会的責任投資」と訳され、企業の社会的責任(CSR=Corporate Social Responsibility)への取組みを考慮して行う投資手法を指す。すなわち、持続可能な社会を構築することを目的に、企業のCSRへの取り組みを積極的に評価し、投資先を選別するのがSRIである。一方、投資にあたって「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の3つの要素を考慮する「ESG投資」は、あくまで中長期的に見て投資収益を拡大するための投資手法と位置付けられている。つまり、SRI とESG投資はともに社会的に良いと認められる事業活動を行っている企業に投資しようという点では共通しているものの、SRIは「倫理観」に基づき、投資を通じて社会を良くすることが目的であるのに対して、ESG投資は環境・社会・ガバナンスに十分配慮出来ている企業に投資をすることは長期的な企業価値向上やリスクの低減につながるという考え方に基づいて行われる。

 これまでの日本企業のCSRは、「企業市民」として企業が社会に対して責任を果たすという考え方をベースに実施されてきた。ESGの要素は一見するとCSRの要素と重なっているが、日本企業のCSR活動は例えば植樹など本業とは関係のない活動も見られる。これは、ESG投資の要素として投資家が求める活動とは異なる。投資収益よりも倫理観を優先して投資対象を選ぶSRIに対しては、「年金運用者は投資利益の拡大に対する受託者義務を負っている以上、特定の倫理観に基づく投資は受託者義務違反」と指摘する声もある。日本企業は、現在行っているCSR活動を、ESG投資において必要とされる要素との整合性という観点から再点検する必要があろう。

 ヨーロッパのサステナビリティ投資推進団体であるEurosifがSRIの定義を「社会的責任投資(Socially Responsible Investment)」から「持続性を意識した責任投資(Sustainable and Responsible Investment)」に変更したことに象徴されるように、CSRの視点は、社会的な影響から財務的なインパクトのある環境、社会、ガバナンスの把握へと軸足が大きく変化している。確かに「倫理」は持続性を維持するための1つのコンポ―ネントではあるが、倫理的であることが必ずしも「持続的な発展」につながるわけでない。現在、上場企業のCSR部門が行っているPDCAサイクルは社会的規範を尊重した形で作られているが、今後はサステナビリティ上の各課題がどのような財務的インパクトを与えるのかという視点で検証していくと、マテリアリティ・マップのプロットも変わってくると考えられる。そして、それを検討することこそが投資家との対話において重要なアジェンダの1つとなろう。

PDCA : Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Action(改善)の4つを繰り返すことにより業務を継続的に改善すること。

2016/02/19 “OBガバナンス”排除の鍵を握る指名委員会

 日本企業のコーポレートガバナンス・改革に注目するグローバル投資家の大きな関心事の1つがCEO人事だ。ある機関投資家のトップは、これまでの日本企業におけるCEOの選出プロセスが経営そのものに与える“悪影響”を懸念する。

 従来、日本企業では、現CEOが後継者を部屋に呼び、そこで次期CEOに内定したことを伝えるというように、現CEOが単独で(場合によっては、相談役等を加えて)次期CEOを選出するということが少なからず行われてきた。株主に対しては事後的に選任理由が知らされるが、そのプロセスについての説明と透明性は不十分と言わざるを得ない。株主は議決権行使を通じて選任に反対することは可能であるが、その前段階で適任者をCEOに選ぶことはできない。

 機関投資家が現CEOによる次期CEOの決定を好ましく思わないのは、このようなプロセスで選ばれた後任のCEOは、自分を選んだ前任のCEO(その多くは会長、相談役等になる)に気兼ねして、リーダーシップを発揮することが困難になる恐れがあるからだ。特に構造改革が求められる場面では、前CEOの戦略を否定しなければならない。どんなに優秀なCEOであっても、会長の顔色をうかがいながらでは大胆な改革は難しい。

 そこで期待されるのが「指名委員会」の役割だ。指名委員会によって選ばれた次期CEOは、前CEOの呪縛にとらわれることなく、自由な経営を行うことができる。言い換えれば、指名委員会によってCEOのリーダシップが向上することになる。次期CEOが責任を負うべき対象は「株主」であり、前任のCEOではない。この株主から経営の監督を委任されているのが取締役会であることを踏まえれば、取締役会の中に委員長をはじめメンバーの過半数が社外取締役から構成される指名委員会を設置することは、コーポレートガバナンスの観点からは必須となりつつある。会社法上、指名委員会は指名委員会等設置会社にのみ設置が義務付けられているが、監査役会設置会社や監査等委員会設置会社が任意で指名委員会を設置するケースも増えつつある。

 とはいえ、機関投資家の間では・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから

2016/02/19 “OBガバナンス”排除の鍵を握る指名委員会(会員限定)

 日本企業のコーポレートガバナンス・改革に注目するグローバル投資家の大きな関心事の1つがCEO人事だ。ある機関投資家のトップは、これまでの日本企業におけるCEOの選出プロセスが経営そのものに与える“悪影響”を懸念する。

 従来、日本企業では、現CEOが後継者を部屋に呼び、そこで次期CEOに内定したことを伝えるというように、現CEOが単独で(場合によっては、相談役等を加えて)次期CEOを選出するということが少なからず行われてきた。株主に対しては事後的に選任理由が知らされるが、そのプロセスについての説明と透明性は不十分と言わざるを得ない。株主は議決権行使を通じて選任に反対することは可能であるが、その前段階で適任者をCEOに選ぶことはできない。

 機関投資家が現CEOによる次期CEOの決定を好ましく思わないのは、このようなプロセスで選ばれた後任のCEOは、自分を選んだ前任のCEO(その多くは会長、相談役等になる)に気兼ねして、リーダーシップを発揮することが困難になる恐れがあるからだ。特に構造改革が求められる場面では、前CEOの戦略を否定しなければならない。どんなに優秀なCEOであっても、会長の顔色をうかがいながらでは大胆な改革は難しい。

 そこで期待されるのが「指名委員会」の役割だ。指名委員会によって選ばれた次期CEOは、前CEOの呪縛にとらわれることなく、自由な経営を行うことができる。言い換えれば、指名委員会によってCEOのリーダーシップが向上することになる。次期CEOが責任を負うべき対象は「株主」であり、前任のCEOではない。この株主から経営の監督を委任されているのが取締役会であることを踏まえれば、取締役会の中に委員長をはじめメンバーの過半数が社外取締役から構成される指名委員会を設置することは、コーポレートガバナンスの観点からは必須となりつつある。会社法上、指名委員会は指名委員会等設置会社にのみ設置が義務付けられているが、監査役会設置会社や監査等委員会設置会社が任意で指名委員会を設置するケースも増えて来ている。

 とはいえ、機関投資家の間では“形だけの指名委員会”に対する疑念の声も聞かれる。指名委員会では、現CEOが何名かの次期CEO候補者を推薦し、委員会がその中から次期CEOに最適な人材を選出するというプロセスを経るという建前になっている。ここでいうCEO候補者は社内の人材だけとは限らない。しかしながら、指名委員会を設置している会社であっても、現実には前任のCEOと相談役等のOBの独断により事実上次期CEOに決まっている候補者が1人だけ出てきて、それを指名委員会が形式的に承認するという中身のない委員会運営が行われているケースも少なくないとみられる。スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議(第5回)では、こうした次期CEOの決定プロセスを「OBガバナンス」と呼び、「絶対に排除すべき」と厳しく批判している(冨山メンバーの発言参照。冨山メンバーはさらに「大体ややこしい事件が起きるのは全部こういう会社」と断言している)。

 まずは指名委員会を設置するというのが現段階では日本企業にとっての第一ステップとしても、早晩その中身が投資家から厳しく問われる時代が来るだろう。

2016/02/18 (新用語・難解用語)限定正社員

 勤務地や勤務時間、職種等を限定して雇用される者のこと。

 安倍首相は今通常国会(2016年)の施政方針演説で、「多様な働き方が可能な社会への変革が必要」と表明したが、この発言の背景には、平成24年3月に厚生労働省が主宰する有識者懇談会が提唱し、それ以来毎年のように厚生労働白書に登場している「多様な正社員」の存在がある。「多様な正社員」にはいわゆる「正社員」も含まれるが、一般的には「限定正社員」を指すことが多い。限定正社員は、非正規雇用者を正規雇用化する際の受け皿として活用でき、逆に正社員にとっては、育児や家族の介護等により離職することを避けるための選択肢として機能することも期待されている。

 経営者の中には「限定正社員は解雇しやすい」と考えている向きも見られるが、・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから

2016/02/18 (新用語・難解用語)限定正社員(会員限定)

 勤務地や勤務時間、職種等を限定して雇用される者のこと。

 安倍首相は今通常国会(2016年)の施政方針演説で、「多様な働き方が可能な社会への変革が必要」と表明したが、この発言の背景には、平成24年3月に厚生労働省が主宰する有識者懇談会が提唱し、それ以来毎年のように厚生労働白書に登場している「多様な正社員」の存在がある。「多様な正社員」にはいわゆる「正社員」も含まれるが、一般的には「限定正社員」を指すことが多い。限定正社員は、非正規雇用者を正規雇用化する際の受け皿として活用でき、逆に正社員にとっては、育児や家族の介護等により離職することを避けるための選択肢として機能することも期待されている。

 経営者の中には「限定正社員は解雇しやすい」と考えている向きも見られるが、必ずしもそれは正しいと言えない。「整理解雇の4要素」と呼ばれる判例法理のうちの1つ「被解雇者選定の合理性」においては、一般論として「正規雇用者の解雇よりも先に非正規雇用者を解雇すべし」とされているが、そもそも限定正社員は「非正規雇用」ではなく「正規雇用」であり、これに該当しない。

 また、裁判例を見ても、たとえ当該限定された勤務地や勤務時間やの職種がなくなる場合であっても、解雇回避努力義務を尽くさない安易な解雇は認められていない。この点はいわゆる「正社員」と何ら変わるものではない。ただし、限定社員の勤務地や勤務時間は労働者側の都合で限定されているケースが多いため、(限定社員がこれに対応することができず)結果的に整理解雇が肯定された例も少なくない。しかし、これも、会社から本人に対して勤務地や勤務時間を変更したうえでの雇用継続を打診する等の解雇回避努力義務を果たしたことが前提だ。

 もっとも、「職種限定正社員」となると少し話は変わってくる。職種限定正社員は、採用の経緯や成績評価の妥当性等に鑑みたうえで、会社の期待に応えられなかった者の解雇が許されると解されている。予定されていた職務によっては、職務の変更や降格等の解雇回避措置すら要しないと判示した裁判例(東京高裁S63.2.22、札幌高裁H11.7.9等)もあるほどだ(ただし、解雇は「客観的に合理的な理由を有し、社会通念上相当であること」(労働契約法16条)が大前提であることは忘れてならない)。経営陣は、「限定正社員なら解雇しやすい」というのはごく限られた“例外事例”であることを認識しておく必要がある。

2016/02/17 マイナス金利とコーポレートガバナンス改革

 昨日(2016年2月16日)、日銀によるマイナス金利政策がスタートした。マイナス金利が日銀の当座預金(民間の銀行が日銀預けているもの)に滞留する資金に対する“ペナルティー”として機能することで、銀行による企業や家計への資金供給を増やそうというのが日銀の狙いである。実際、マイナス金利政策の公表直後から長期金利は大きく低下しており、住宅ローン金利を引き下げる動きも出始めているようだ。

 一方で懸念されるのが、・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから

2016/02/17 マイナス金利とコーポレートガバナンス改革(会員限定)

 昨日(2016年2月16日)、日銀によるマイナス金利政策がスタートした。マイナス金利が日銀の当座預金(民間の銀行が日銀預けているもの)に滞留する資金に対する“ペナルティー”として機能することで、銀行による企業や家計への資金供給を増やそうというのが日銀の狙いである。実際、マイナス金利政策の公表直後から長期金利は大きく低下しており、住宅ローン金利を引き下げる動きも出始めているようだ。

 一方で懸念されるのが、“債権者によるコーポレートガバナンス”すなわちデット・ガバナンスの低下だ。高度経済成長期、日本におけるコーポレートガバナンスの担い手として大きな役割を果たしていたのはメインバンクに代表される債権者だった。資金需要が旺盛だった当時、債権者は経営の規律が不十分な企業に対して資金供給を絞ることでガバナンスの担い手としての役割を果たすことができた。しかし、高度経済成長の終焉とともに企業の資金需要は大きく減退した。今日はデット・ガバナンスがその効果を発揮する環境とは言い難く、今回のマイナス金利はこれに追い打ちをかける可能性が高い。マイナス金利により銀行が企業に対して「頼むから借りてくれ」と言わざるを得ないとしたら、デット・ガバナンスによる規律付けに多くは期待できないだろう。

 アベノミクスによるコーポレートガバナンス改革が期待する改革の担い手は債権者ではなく「株主」であり、それが意味するところは「デット・ガバナンスからエクイティ・ガバナンスへの転換」に他ならない。ポリシー・ミックス(政策の組み合わせ)においては、ある政策に副作用が伴う場合にはもう一方の政策がこれをカバーする必要がある。今回のマイナス金利では、それがコーポレートガバナンス改革ということになろう。マイナス金利により低コストで調達された資金は中長期の企業価値の向上のために有効活用されるべきだが、そのためには規律付けが必要だ。エクイティ・ガバナンスにおいてその役割を担うのは株主あるいはその代理としての社外取締役ということになるが、コーポレートガバナンス・コードの要求に応じ独立社外取締役を2名設置するだけで規律付けが機能するとは考えにくい。コーポレートガバナンス・コードへの対応が一段落し、一息ついている企業経営者は少なくないと思われるが、取締役会改革をはじめとするコーポレートガバナンス強化への取組みは継続していく必要がある。

2016/02/16 キヤノンの取締役会改革は成功するか

 日本型のコーポレートガバナンスを推進してきたキヤノンが大胆な取締役会改革に乗り出している。同社は(2015年)1月27日付けで代表取締役の異動を発表、真栄田専務が社長COOに昇格し、御手洗会長兼社長は引き続き会長としてCEOに留まる。この人事は3 月 30 日開催の株主総会、およびその後の取締役会で決定される予定となっている。さらに、取締役の人数を17名から6名に大幅削減、社内取締役はCEOとCOOのほか、CFO、CTO(最高技術責任者)の4名のみで、残り2名は社外取締役となる。これによって現在の取締役は大部分が執行役員に専任することになる。経営体制の監督と執行の役割の分離が同社の狙いだ。

 同社は長らく社内取締役と監査役を中心とした日本型コーポレートガバナンスの旗振り役と目されてきただけに、今回の発表は多くの企業経営者に驚きを・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから

2016/02/16 キヤノンの取締役会改革は成功するか(会員限定)

 日本型のコーポレートガバナンスを推進してきたキヤノンが大胆な取締役会改革に乗り出している。同社は(2015年)1月27日付けで代表取締役の異動を発表、真栄田専務が社長COOに昇格し、御手洗会長兼社長は引き続き会長としてCEOに留まる。この人事は3 月 30 日開催の株主総会、およびその後の取締役会で決定される予定となっている。さらに、取締役の人数を17名から6名に大幅削減、社内取締役はCEOとCOOのほか、CFO、CTO(最高技術責任者)の4名のみで、残り2名は社外取締役となる。これによって現在の取締役は大部分が執行役員に専任することになる。経営体制の監督と執行の役割の分離が同社の狙いだ。

 同社は長らく社内取締役と監査役を中心とした日本型コーポレートガバナンスの旗振り役と目されてきただけに、今回の発表は多くの企業経営者に驚きを与えた。御手洗氏は2月11日付の産経新聞で、「新社長には事業、開発、生産、販売を重点的に見てもらいたい。私は渉外、営業などを重点的に見ていく」と語っている。この発言から見えてくるのは、現在のビジネスモデルの強化をCOOに任せる一方、新たなニーズへの対応やM&AなどはCEOが手掛けるという「戦略と業務」を役割分担する姿勢である。

 これまでは創業家出身の御手洗氏が強力な指導力で戦略面をリードすると同時に、取締役会に各事業の担当者を集めることで業務面にも目を光らせてきた。いわばオーナーシップをベースとしたコーポレートガバナンス体制と言える。ただ、カリスマ的なトップの下でのガバナンスは極めて合理的な反面、属人的な要素に左右されるというリスクがあることも否定できない。この点、新しい取締役会には各事業の担当者が含まれておらず、経営の視点から創業家CEOの戦略策定を監督する布陣に見える。一方、業務遂行(その監督を含む)については、非創業家が業務執行のトップである社長COOとして取締役会メンバーにいることで、各事業の担当者(執行役員)に対してリーダーシップを発揮しやすいのではないか。今回の取締役会改革に、“脱・オーナーシップ依存”を感じる向きも多いはずだ。

 上述した推論がキヤノンの狙いとして正しければ、成功の鍵として以下の2点が挙げられよう。
(1)取締役会における社外取締役の発言力を高めること
 創業家CEOに対し社内取締役が監督を効かせるのは難しい。社外取締役としての資質も重要。
(2)経営戦略会議におけるCEOの発言力を抑えること
 非創業家のCOOが名実ともにトップでなければならない。CEO不参加も想定可能。

 キヤノンの同社取締役会改革の“本気度”に注目していきたい。