2016/01/12 最高裁判決が“模倣”を促進も(会員限定)

 企業がビジネスを行っていくうえでつきまとう悩みの1つは「模倣」だろう。これを防ぐ仕組みが特許と言えるが、特許には期限がある。こうした中、期限切れの特許技術を使って、先行して売り出された製品と同じ機能・効用を持つ廉価な製品が売り出され、国としてもその積極的な活用を推進するという、他の業界ではあまり考えられないようなビジネス形態が存在するのが、製薬業界だ。

 特許期間が終了した薬は、有効成分、分量、用法、用量、効能および効果が同じものを他の製薬企業が別の医薬品として申請・製造・販売することができる。こうした医薬品は「後発薬(ジェネリック)」と呼ばれているのは周知のとおり(これに対し、先行して販売されている医薬品は「先発薬」と呼ばれる)。この後発薬を巡り、製薬業界はもちろん、企業の知財関係者の注目を集めているのが、昨年(2015年)11月17日に下された最高裁判決だ。この判決は、製薬会社(先発薬開発企業)による特許期限の延長申請を認めたものであり(特許庁が敗訴)、新聞報道などでは「製薬会社に有利な判決」として紹介されているが、知財関係者の間では、本判決が「後発薬開発企業」を利することにつながるリスクを指摘する声がある。

 この裁判は、米国の製薬会社Genentechが日本の特許庁に対し、特許期間延長を認めなかったことを不服として提起したもの。最高裁は、「医薬品では、同一成分でも用法・用量が異なれば特許の延長が認められる場合がある」としたうえで、今回の事案では「用法、用量が異なり、それにより初めて可能になった療法もある」と判断、Genentech社勝訴の判決を下している。また、本判決では、用法、用量のほか、「成分や分量」「効能」「効果」が異なるかどうかも、特許の延長が認められるか否かの判断基準として例示されている点も注目される。特許庁は、これまで同じ成分や用法の医薬品については延長を認めていなかったため、今回の最高裁判例を踏まえ、審査基準の見直しを迫られることになる。

Genentech : 米国の大規模製薬企業で、スイスのロシュ社の完全子会社。なお、ロシュ社の傘下には日本の中外製薬もある。

 今回の判断は、一見すると、先発薬開発企業にとっては特許期間の延長が認められるケースが増加し、収益拡大につながるかに見える。しかし、先発薬開発企業が用法などを変えることで特許を延長できる裏返しとして、後発薬開発企業に「延長された特許の効力は狭い(特定の用法などに限られる)」旨主張する余地が与えられたと見る知財の専門家もいる。

 例えば、先発薬開発企業が発明した技術Aを出願し、取得した特許をaとしよう。特許aの範囲は、上記最高裁判決前の考え方では、製法や効果にかかわらずAを活用するものに及ぶことになる。しかし、最高裁判決によって製法や効果によって細切れに特許を延長できるとされたことで、後発薬開発企業から見ると、「製法や効果が異なれば、技術Aを活用していても、特許aの効力が及ばず、技術Aを無断で使っても特許aを侵害したことにならない」という解釈が成り立ち得る。これを受け、後発薬開発企業が特許の範囲を「用法、用量、効能、効果」等によって細かく区切って、特許による保護の対象を狭く解釈してくる可能性があろう。

 先発薬の開発には10~15年を要し、数百億もの投資が必要と言われるのに対し、後発薬の開発期間は3年ほどに過ぎない。当然ながら研究開発費用も低くなるため、価格も安く(先発薬の2割~7割(平均して半額)に抑えることが可能とされる)、患者の医療費(薬剤費)だけではなく、国庫における医療費負担も軽減できる。特に、経済水準・医療水準が高くない新興国等においては、国民一般に広く医薬品を供給するには安価な後発薬が欠かせない。

 とはいえ、先発薬と同じ効能でしかも安価な後発薬があまりに早期に販売されれば、先発薬開発企業は新たな医薬品の研究開発に投資するための十分な収益を得ることが出来なくなり、結果的に新薬の開発が阻害され、医療水準の低下を招きかねない。先発薬開発企業にとっては、開発した医薬品が有する特許が有効な(市場を独占できる)期間内は、相応の価格による販売による投資の回収が必須となる。

 先発薬開発企業は先進国に集中する一方、後発薬開発企業は新興国に多く、その新興国の後発薬開発企業がさらに途上国に医薬品を供給しているという構造になっているため、先発薬と後発薬の問題は、ともすれば国と国との経済格差、医療水準の格差とリンクしたいわゆる南北問題のような議論に陥りがちだ。単純な産業政策として語れないところに、この問題の難しさがある。

南北問題 : 開発途上国と先進国の間の経済的格差から生じる政治問題や経済問題の総称。先進国が北半球に、開発途上国が南半球に多く存在することからこのように呼ばれる。

 医療水準の確保のためには、先発薬開発企業の投資回収の機会を適正に担保しつつ、後発薬もバランスよく供給されることが必要なだけに、行政には的確な舵取りが求められるところだ。

2016/01/10 【役員会 Good&Bad発言集】安定株主を確保するための方策

 上場30周年を迎えるBtoBメーカーA社では安定株主が不在で、年々株主数が減少している。

 そこで、株主数増加のための方策が取締役会で話題になった。

 どの役員の発言がGoodでしょうか。

取締役A:「年々株主数が減少しているということは、当社を支持している株主が減少している証拠であり、寂しい限りですね。我が社は業種的に個人株主への知名度がいま一つですし、ある程度の専門知識がないと製品を理解することも困難なので、個人株主数を増加させるのは難しいと考えざるを得ません。そこで、“機関投資家詣で”に力を入れるべきではないでしょうか。」

取締役B:「いえ、この際、明確な目標を持って個人株主数の増加に取り組んではどうでしょうか。例えば配当額を2倍に増やせば、株主にアピールできるはずです。また、ある食品会社では、株主優待を充実させたことで個人株主数が数倍に増えたという話を耳にしました。当社の製品は個人がもらっても使えないので、クオカードでも配ってはどうでしょうか。」

取締役C:「個人投資家にアピールするために、マイナースポーツの支援をしてはどうですか?」

取締役D:「コストをかける前に、個人投資家が参加しやすい環境を作ることが重要ではないでしょうか。当社の株式を買うには最低でも150万円以上が必要です。株主数を増加させるために株主分割を実施して株価を低くし、NISA口座でも買えるようにするべきではないでしょうか。」

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2016/01/10 【役員会 Good&Bad発言集】安定株主を確保するための方策(会員限定)

<解説>
なぜ株主数の増加が必要なのか

 上場会社にとって、株主数の増加は「小口投資」を中心とする一般の個人投資家からの支持が拡大している証拠であり、好ましいこととされています。また、適度な株主数が確保できている状況は、幅広い株主から支持されている証拠でもあり、経営の安定度を高めるうえでも重要です。

 一般に、株主数増加につながるとされている施策には下記のようなものがあります。

1.単元株式数のくくり直しや株式分割による「個人投資家が投資しやすい環境」の整備
2.集中日を避けて株主総会を開催する、自社商品を展示することなどにより個人投資家にも分かりやすい株主総会にするといった株主総会改革
3.個人投資家にも分かりやすい経営目標の設定や事業報告の作成、ホームページにおける情報開示の充実など個人株主を意識したIR活動
4.長期安定的な配当、積極的な自社株買い
5.株主優待や株主総会における魅力的なお土産

単元株式数 : 株主総会での議決権行使や株式の売買に必要な一定数(一単元)の株式数のこと。
事業報告 : 会社の事業の状況を株主に説明するための書類。会社法上、株主招集通知に添付して株主へ交付することが必要とされている。記載する内容は非財務情報が中心となる。ちなみに、貸借対照表、損益計算書など、財務情報を記載した会社法上の書類が「計算書類」である。

 しかし、株主数増加につがなる施策といっても、なかには機関投資家などから必ずしも支持されないものもあるので注意が必要です。

 例えば株式分割は、自社の株式を購入できる投資家が増えるという点や、投資家にとっては保有株式のウェイトを調整することが容易になるという点で、一般的に投資家にとっては好ましい施策と考えられているものの、かつてライブドアが実施した“100分割”など過度な株式分割のように必要以上に購入単価を低下させることは投資家層の拡大とは直接的に関係なく、基本的に無意味であるうえ、株式管理事務コストの増大にもつながります。

 また、配当を増やすことも個人株主数の増加という観点からは好ましい施策と言えますが、配当政策はあくまで資本政策の一環として行うものです。なぜなら、高いリターンが見込める投資対象があるにもかかわらず配当を行うと、企業価値自体が低下し株価の上昇機会を逃してしまうからです。したがって、個人株主数の増加を狙って無理に増配を行うことは企業価値の毀損につながるリスクもあります。

資本政策 : 資金を調達するための増資、株主に対する配当、自社株買い、株主構成の適正化など、調達資本の額や内訳の変動を伴う財務戦略のこと。

 株主優待や株主総会のお土産は、BtoCビジネスを展開する企業にとっては、株主に対して自社商品への理解を深めてもらう取組みと言えますが、機関投資家や外国人投資家にはメリットがないことから、株主平等原則に反するという批判もあります。また、個人株主向けの自社商品がない場合にクオカードやお米などを配る行為は個人株主からは喜ばれるものの、機関投資家からの批判が特に強いことには注意が必要です。

 個人株主数の増加を図るためには、個人投資家にも分かりやすい経営目標を掲げ、個人投資家を意識したIR活動を行っていくことが王道であり、こうした行為は全ての投資家から評価されます。東証が毎年実施している「ディスクロージャー表彰」で評価されている企業の開示内容・方法やIR活動を参考にこうした取り組みを強化することは、株主数の増加だけでなく企業価値自体を高めることにもつながるでしょう。

<正解>
GOOD発言はこちら

取締役D:「コストをかける前に、個人投資家が参加しやすい環境を作ることが重要ではないでしょうか。当社の株式を買うには最低でも150万円以上が必要です。株主数を増加させるために株主分割を実施して株価を低くし、NISA口座でも買えるようにするべきではないでしょうか。」
コメント:株主数の増加には個人の小口投資が欠かせないため、株式分割により個人株主が投資しやすい環境を作るという発言は的を得ています。特にNISA口座で購入できるように最低投資額を100万円以下にすることは有効でしょう。ただし、株主数が増えすぎると事務コストが増大することになりますので、過度の分割は避けるべきです。

NISA : 新規購入した株式や投資信託などの配当や譲渡益を最長5年間、非課税にする制度。新規購入の金額は年間120万円が上限とされるが、非課税となる配当や譲渡益に上限はない。

BAD発言はこちら
取締役A:「年々株主数が減少しているということは、当社を支持している株主が減少している証拠であり、寂しい限りですね。我が社は業種的に個人株主への知名度がいま一つですし、ある程度の専門知識がないと製品を理解することも困難なので、個人株主数を増加させるのは難しいと考えざるを得ません。そこで、“機関投資家詣で”に力を入れるべきではないでしょうか。」
コメント:機関投資家に対するIRを強化する姿勢はGOODですが、機関投資家の数は限られるため、株主数増加にはつながりません(ただし、そこで得た知見を基にIRを充実させ、個人投資家にも分かりやすい開示ができるようになる可能性があるため、機関投資家詣が全く無駄なわけではありません)。また、製品自体の理解が難しいからというだけで個人投資家へのアピールを諦めるのは早計です。例えば分かりやすい経営目標を示すことにより、個人投資家数の増加を図ることは可能です。
取締役B:「いえ、この際、明確な目標を持って個人株主数の増加に取り組んではどうでしょうか。例えば配当額を2倍に増やせば、株主にアピールできるはずです。また、ある食品会社では、株主優待を充実させたことで個人株主数が数倍に増えたという話を耳にしました。当社の製品は個人がもらっても使えないので、クオカードでも配ってはどうでしょうか。」
コメント:配当政策は株主数増加のために行うのではなく、企業価値を考えた資本政策の一環として実施するべきです。配当を引き上げるべきかどうかは、①現在のROEが資本コストを超えているか下回っているか(資本コストの詳細は、「(新用語・難解用語辞典)ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)法」の「2.資本コスト」参照)、②中期的成長率と内部留保の増加率の整合性が取れているか――で決まります。つまり、ROEが資本コストを下回っている場合には配当を増やすことを検討すべきですし、逆にROEが資本コストを上回っている場合には(投資家へのリターンは十分ということになるため)、成長率が内部留保の増加率を上回っている限り、配当よりも投資に向けることが望まれます(*)。配当政策は機関投資家との対話や議決権行使の際にも重要なテーマであり、しっかりとした理論武装が必要です。また、株主優待は機関投資家などからはネガティブな評価となる可能性が高いので注意が必要です。

* 企業価値向上のためには、企業の成長を図る必要があり、それには投資が不可欠です。もし成長率より内部留保の増加率の方が高ければ、株主からの配当要求圧力が高まり、投資どころではなくなってしまいます。一方、成長率の方が内部留保の増加率よりも高い場合には、株主からの配当要求圧力は高まりにくいため、配当に回さずに済んだ資金を投資に回して企業の成長を図り、ひいては企業価値を向上させることが可能になります。)

ROE : Return On Equity(株主資本利益率)=当期純利益÷自己資本(株主資本)

取締役C:「個人投資家にアピールするために、マイナースポーツの支援をしてはどうですか?」
コメント:本業に関係ないCSR活動を個人のファン株主を増やすために行うというのは論外です。機関投資家の理解を得られず、そのような経営判断を行った取締役の選任議案では反対票を投じられる可能性がありますし、企業価値を毀損するリスクもあることため、株価下落につながることも考えられます。

2016/01/08 東芝事件が示した“守りのガバナンス”の必要性

 金融庁が昨年(2015年)9月に設置した「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」が近く中間報告をまとめる。会議では、両コードの策定があくまでコーポレートガバナンス改革の「スタート」に過ぎないことや、「形だけではなく、実効的にガバナンスを機能させるなど、コーポレートガバナンスの更なる充実は引き続き重要な課題」であることが念押しされており(第1回会議 事務局説明資料 の6、7ページ参照)、今後も両コードの見直しや実効性の検証が継続的に行われていくことになるのは間違いないが、その第一弾としての中間報告に対する企業の関心は高い。

 こうした中、中間報告に影響を与えることが必至なのが東芝事件だ。・・・

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2016/01/08 東芝事件が示した“守りのガバナンス”の必要性(会員限定)

 金融庁が昨年(2015年)9月に設置した「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」が近く中間報告をまとめる。会議では、両コードの策定があくまでコーポレートガバナンス改革の「スタート」に過ぎないことや、「形だけではなく、実効的にガバナンスを機能させるなど、コーポレートガバナンスの更なる充実は引き続き重要な課題」であることが念押しされており(第1回会議 事務局説明資料 の6、7ページ参照)、今後も両コードの見直しや実効性の検証が継続的に行われていくことになるのは間違いないが、その第一弾としての中間報告に対する企業の関心は高い。

 こうした中、中間報告に影響を与えることが必至なのが東芝事件だ。コーポレートガバナンス・コードは「攻めのガバナンス」の実現を目指すものであることが1つの売りとなっているのは周知のとおり。コーポレートガバナンス・コードの序文には「会社におけるリスクの回避・抑制や不祥事の防止といった側面を過度に強調するのではなく、むしろ健全な企業家精神の発揮を促し、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図ることに主眼を置いている」と謳われているが(コーポレートガバナンス・コード原案2ページ「本コード(原案)の目的」の「7」参照)、東芝事件は、奇しくもここで言う「会社におけるリスクの回避・抑制や不祥事の防止といった側面」に関わるいわば“守りのガバナンス”の重要性を再確認させたと言えるだろう。

 実際、フォローアップ会議では、東芝事件に触発される形で、(形の上では「攻めのガバナンスの観点から」の論点としているものの)最高経営責任者(CEO)のサクセッション(選解任)のあり方、独立取締役の人選及び増員、取締役会の「独立した客観的立場」を確保するための方法、会社の機関設計など、取締役会を巡る論点について踏み込んだ議論が展開されている(取締役会等をめぐる論点(2)<攻めのガバナンスの観点から>参照)。この議論では、「社外取締役は本当に役に立つのか」「取締役会が企業価値の毀損を防ぐ、あるいは企業価値の中長期的な向上をもたらすためには何が必要か」が問われていると言えるだろう。

 フォローアップ会議では、会合で議論・検証されるべき事項などについて意見募集が行われたが、CFA協会(日本CFA協会と共同)や国際コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(ICGN)、アジア・コーポレートガバナンス協会(ACGA)など、グローバルな投資専門家の団体からも、独立取締役の人選及び増員(より厳格な独立性基準と選任基準)、取締役会の「独立した客観的立場」を担保するための仕組み(独立取締役を中心した実効性のある監査委員会、指名委員会等の設置など)、会社の機関設計(監査役会設置会社、監査等委員会設置会社、監査役会設置社を巡る問題点など)など、取締役会等をめぐる論点について意見が提出されている。

 「攻めのガバナンス」を標榜するコーポレートガバナンス・コードが、東芝事件を踏まえどこまで「守り」の側面を取り入れるのか、中間報告書の内容が注目される。

2016/01/07 (新用語・難解用語)CRE戦略

 経営戦略の一環として、「不動産を保有するべきか売却するべきか」「保有する場合、どこにどのような不動産を、どのくらいの規模で保有するのか」などを検討し、不動産投資の効率を最大化させることにより企業価値の向上につなげていこうという考え方(CREとは「Corporate Real Estate(企業の不動産)」の略)。

 日本企業の多くが不動産を保有しているが、不動産を“戦略的”に活用するところまでは至っていないケースが多いものと思われる。投資家からの「貴社の拠点(本社、支店、工場など)をそこに置いている理由は何ですか?」という問いかけに対し、自社の経営戦略を踏まえて回答できる経営陣は少ない。ましてや、「本社ビルの利回り」を即答できる経営陣はほとんどいないのではないだろうか。

 保有する必要のない不動産を保有しているような企業も少なくない。不動産を大量に保有し、時価純資産価額が株式時価総額よりも高くなっている場合には、M&A(買収)のターゲットにされやすい(不動産の取得を狙ったいわゆる“不動産M&A”)。

時価純資産価額 : 「時価評価した資産-時価評価した負債」により算出される。

 こうした中、近年注目を集めているのがCRE戦略だ。CRE戦略は、・・・

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2016/01/07 (新用語・難解用語)CRE戦略(会員限定)

 経営戦略の一環として、「不動産を保有するべきか売却するべきか」「保有する場合、どこにどのような不動産を、どのくらいの規模で保有するのか」などを検討し、不動産投資の効率を最大化させることにより企業価値の向上につなげていこうという考え方(CREとは「Corporate Real Estate(企業の不動産)」の略)。

 日本企業の多くが不動産を保有しているが、不動産を“戦略的”に活用するところまでは至っていないケースが多いものと思われる。投資家からの「貴社の拠点(本社、支店、工場など)をそこに置いている理由は何ですか?」という問いかけに対し、自社の経営戦略を踏まえて回答できる経営陣は少ない。ましてや、「本社ビルの利回り」を即答できる経営陣はほとんどいないのではないだろうか。

 保有する必要のない不動産を保有しているような企業も少なくない。不動産を大量に保有し、時価純資産価額が株式時価総額よりも高くなっている場合には、M&A(買収)のターゲットにされやすい(不動産の取得を狙ったいわゆる“不動産M&A”)。

時価純資産価額 : 「時価評価した資産-時価評価した負債」により算出される。

 こうした中、近年注目を集めているのがCRE戦略だ。CRE戦略は、①コストを下げる(例えば他の不動産への代替え)、②資産価値を上げる(利用価値の向上を図る)、③売却する――のいずれか、あるいはこれらの組み合わせが基本となる。また、①~③によって得たキャッシュをM&Aの資金に充てたり、事業に投資して新たな企業価値を創造することや、配当や自己株式取得を行うこともCRE戦略に含まれる。

 例えば収益性が低い事業に使われている不動産を売却し、得られたキャッシュを収益性の高い事業に投資するといったCRE戦略を実現できれば、ROEの分子となる純利益が増え、ROEも向上することになる。また、CRE戦略によって得たキャッシュで自己株式を取得すれば、ROEの分母の自己資本が減少し、やはりROEが上がる。さらに、CRE戦略の導入が経営の安定化につながったと投資家に評価されれば、それだけ投資リスクも減るため、株式資本コストも下がる(事業収益の変動が激しい企業は、株価の変動も大きく投資リスクが高いため、株主資本コストが高いと判断される。詳細は(新用語・難解用語辞典)ディスカウント・キャッシュフロー(DCF)法参照)。

 ただし、こうした定量的な観点だけととらえたCRE戦略にはリスクがある。例えば不動産を開発すれば周囲の環境や景観などにも影響を与えるため、CRE戦略はCSR(企業の社会的責任)戦略を踏まえたうえで実施する必要がある。また、本社ビル等はその企業のアイデンティティの1つでもある。たとえその売却により多額の売却益を得たとしても、同時に社員のモラル低下を招いてしまう恐れもある。採用活動にも悪影響を及ぼすことも十分考えられる。CRE戦略においては、定性的な面の考慮も欠かせないと言えよう。

 このように考えると、CRE戦略を特定の部門のみが担うことにはリスクがある。管財部門などに任せきりにするのではなく、役員による管轄の下、CSR部門をはじめとする他部門を巻き込ん全社横断的な体制の整備が求められることになろう。

 CRE戦略の実施にあたっては、国土交通省から出されているガイドラインも 参考にしたい。

2016/01/06 中国子会社の経理に潜む不正リスク

 中国に子会社を置く日本企業が中国特有のカントリーリスクに頭を悩ませることは少なくない。その1つが、中国子会社の「経理」だ。経理の問題は不正行為に直結しかねないだけに、日本企業の悩みは深い。

 例えばある日本企業の中国子会社(社員数約400名)では、売上高200億円に対し、交際費(販管費の一部)が3億2千万円も計上されていた。しかも、親会社である日本企業が中国子会社の経理部担当者に確認したところ、その使用状況や管理状況を知らなかったというから驚きだ。

 そこで後日、営業担当者に交際費の内容を文書で提出させると、そこには・・・

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2016/01/06 中国子会社の経理に潜む不正リスク(会員限定)

 中国に子会社を置く日本企業が中国特有のカントリーリスクに頭を悩ませることは少なくない。その1つが、中国子会社の「経理」だ。経理の問題は不正行為に直結しかねないだけに、日本企業の悩みは深い。

 例えばある日本企業の中国子会社(社員数約400名)では、売上高200億円に対し、交際費(販管費の一部)が3億2千万円も計上されていた。しかも、親会社である日本企業が中国子会社の経理部担当者に確認したところ、その使用状況や管理状況を知らなかったというから驚きだ。

 そこで後日、営業担当者に交際費の内容を文書で提出させると、そこには①教育訓練費2億円、②手土産代5千万円、③食事代7千万円と記載されていた。このうち①の教育訓練費は「販売した機器の使用方法の訓練」という名目になっており、訓練場所はなぜか日本で、訓練対象者の旅費・宿泊費が含まれていた。②の手土産代には、約150社の得意先に定期的(年6回)に手土産(硯(すずり)等)を渡していたものだという。

 慣習の違いがあることを勘案しても、金額としてあまりにも突出しており、親会社が不審に思うのも無理はない。習近平国家主席による腐敗一掃運動により減少傾向にあるとはいえ、依然として賄賂(?)に近い支出は存在しているようであり、これらは交際費として処理されているのが実態だ。このような支出は不正の温床ともなりかねないだけに、親会社の経営陣は現地法人の営業部門に任せきりにせず、支出内容や金額を確実に把握するとともに、支出の是非についても検討する必要があろう。

 このほか、手許現金の取扱いにも問題があったという。具体的には、手許現金の金庫への入出や残高管理が経理部の担当者1名のみにより実施されており、牽制機能がまったく働いていなかった。これについても親会社が説明を求めたところ、「会計事務所から『会社の所在地とは異なる市に居住している者1名により現金を取扱うことという税務当局の通達がある』と聞いており、それに従った」との回答があった。しかし、後日親会社が当該会計事務所に問い合わせたところ、そのような通達は存在せず、また、担当パートナーは既に退職していた。そこで親会社は「今後は、現金の取扱いは複数人で行うよう」提案したが、担当者およびその上司の頑強な抵抗に遭い、結局、今後の業務遂行を勘案した結果、現状の体制を変更できず、何か問題が起きた際の責任の重大性を確認させることで終わりにせざるを得なかったという。

手許現金 : 小口現金のこと。預金における通帳のように入出金を網羅する外部証憑がないことから、横領などの不正が起きやすい。

 このように、中国の現地法人では、日本企業の経理の常識では考えられない事態が発生していることがあるが、親会社である日本企業からの出向者は、現地の経理に精通していないことに加え、現地の担当者とのコミュニケーションが十分にとれないことから、これを是正できずにいることが少なくない。すなわち、そこには不正をはじめとする潜在的なリスクが存在し続けていることになる。中国に子会社を持つ日本企業の経営陣は、こういったリスクの存在を認識するとともに、その除去に継続的に努める必要があろう。

2015/12/31 2015年12月度チェックテスト第10問解答画面(正解)

正解です。
 インクルージョン(Inclusion)とは、価値観や社会的・文化的背景、嗜好の違いから生じる差別や(明示的か暗黙的化を問わず)排斥行為をなくし、多様な人材が組織に参加することを目指す取組みのことです。ダイバーシティは、女性や外国人、LGBTなど多様な人材を積極的に活用し、これを競争優位の源泉にしようという考え方であり、どちらかというと「多様性のある環境の確保」に主眼が置かれているのに対し、インクルージョンはダイバーシティを一歩進め、多様な人材が実際に組織に参加し、価値を発揮できるようにするための「マネジメント」に主眼を置いています。たとえダイバーシティを確保しても、インクルージョンが伴わなければ、ダイバーシティは「絵に描いた餅」となります。女性管理職や女性取締役の比率について目標値を設定している企業は少なくありませんが、このような数字先行型のダイバーシティが推進される場合、インクルージョンが疎かになりやすい点には注意が必要です。ダイバーシティの実践により必ずインクルージョンが実現できるわけではないので、問題文は誤りです。

こちらの記事で再確認!
2015/12/24 (新用語・難解用語)インクルージョン(Inclusion)(会員限定)