欧米企業に比べて低いと言われる日本の役員報酬だが、実は基本報酬だけ見るとそれほど差があるわけではない。役員報酬を(1)基本報酬、(2)業績連動賞与、(3)長期インセンティブ(株式報酬など)の3つに分けると、欧米と大きな格差があるのは業績連動賞与と長期インセンティブであり、特に長期インセンティブにおける差は圧倒的に大きい。
こうした中、投資家からは役員報酬における長期インセンティブ等の割合を増やすよう求める声があることから(2015年8月21日のニュース「創業経営者がトップにいる企業の強さの理由」参照)、役員報酬制度改革を検討している企業は少なくないことだろう。ただ、長期インセンティブ等の割合が大きくなった場合には、また別の問題が発生する可能性もありそうだ。
特に日本企業の経営者の報酬体系が「株価」との連動性がより高いものへと変わっていった場合、報酬の絶対額は大きく増える可能性がある。日本がスチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードを導入する際に手本とした“ガバナンス先進国”の英国では、2013年10月から役員と従業員の報酬格差を公表するルールを導入したが、それでも2014年度におけるFTSE100の構成銘柄の経営トップの報酬と従業員の平均給与の格差(経営トップの報酬÷従業員の平均給与)が150倍近くにものぼっている。自分の給与とはかけ離れた高額の報酬を経営陣が手にしているという事実は、従業員のモチベーションを低下させ、企業を弱体化させかねないため、報酬格差問題に対する株主の関心は高い。英国の大手銀行HSBCの株主総会では、30%を超える株主が役員報酬決議に反対するという事態も起きている。
FTSE100 : ロンドン証券取引所に上場する銘柄のうち時価総額上位100銘柄による時価総額加重平均型の株価指数。
均質性を求めがちな日本社会では、高額な役員報酬は個人投資家や世間の関心を集めることになろう。役員報酬制度改革にあたっては、中長期的な企業業績への連動と、金額の妥当性という2つの視点を持つ必要がありそうだ。
