2024/12/09 コンプライアンスに敏感な大企業で安易なステマ規制違反が起こる背景(会員限定)

周知のとおり、広告であるにもかかわらず広告であることを隠す「ステルスマーケティング」(略称:ステマ)は昨年(2023年)10月に景品表示法の規制対象に加えられ(規制の経緯については2023年1月17日のニュース「“ステマ天国”の汚名返上に向けた第一歩 まずは広告主を告示で規制」参照)、今年(2024年)6月にはステマ規制の適用第1号事案が公表されたところだ(ステマ規制第1号事案の詳細は2024年6月18日のニュース「ステマ規制に措置命令、第1号事案から読み解く規制内容」参照)。その3か月後の9月には第2号事案として、RIZAPグループ(札証アンビシャス市場上場)の子会社RIZAPが運営する「chocoZAP」の自社ウェブサイトにおける広告にステマ規制が適用されるなど(2024年9月4日のニュース「ステマ規制第2号案件から学ぶべきこと」参照)、景品表示法を所管する消費者庁はステマ規制の運用を積極化させている。そして11月13日には、第3号事案として大正製薬(親会社の大正製薬ホールディングスは2024年4月9日に東証スタンダード市場への上場を廃止)のサプリメント「NMN taisho」の広告をステマ規制違反として同社に措置命令を行った。「ステマがあふれかえっている」とも言われているサプリメント業界では初の適用事例となる。


ステルス : ステルスには「隠密」「こっそり行う」といった意味がある。
措置命令 : 法律に規定する措置をとるよう命じる行政処分

消費者庁によると、大正製薬は第三者(インフルエンサー)に対し、本件商品の無償提供および対価の提供を条件に、Instagramに本件商品に関する投稿をするように依頼し、その投稿を引用する形で自社ウェブサイトにおいて、2024年4月3日および4月19日から5月22日までの間、下記の表示を行っていた(消費者庁の「大正製薬株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について」より抜粋)。


インフルエンサー : 世間に与える影響力が大きい人物

大正製薬の自社ウェブサイト上の表示
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このような「自社サイトで第三者のSNS投稿を紹介している体裁」だと、消費者は広告だとは気づきにくい(「広告ではない」と誤解しがち)。そもそもこのSNS投稿自体、大正製薬の“やらせ”であり、Instagramの方には「#PR」のハッシュタグがあるものの(下の大正製薬リリースにおけるキャプチャの赤枠を参照)、それを抜粋した上記表示では当該ハッシュタグ部分が見えないようにカットされていた。

インフルエンサーのInstagram上の表示
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消費者庁は、「大正製薬は、本件商品に係る同表「表示内容」欄記載の表示内容の決定に関与しているものであり、当該表示は、大正製薬が自己の供給する本件商品の取引について行う表示(以下「事業者の表示」という。)であると認められる」とした上で、当該表示は「第三者が投稿した表示について、大正製薬が当該第三者に対して依頼した投稿であることを明らかにしておらず、表示内容全体から一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭になっているとは認められないことから、当該表示は、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難であると認められる表示に該当する」とステマ規制違反を認定。消費者庁は大正製薬に対し、本件表示は、「一般消費者に誤認されるおそれがあるものであり、景品表示法に違反するものである旨を一般消費者に周知徹底すること」「再発防止策を講じて、これを役員及び従業員に周知徹底すること」「今後、同様の表示を行わないこと」を命令した。

この命令を受け、大正製薬は景品表示法違反を認めるリリースを出している。

このような“やらせSNS投稿”を「#PR」等のハッシュタグ部分をカットして自社サイトで紹介する手法は、ステマ規制適用第2号案件(RIZAPが運営する「chocoZAP」の自社ウェブサイトにおける広告)とまったく同じ手法であり、上述のとおり、美容業界とともに、口コミの有効性の高さから「ステマがあふれかえっている」と言われるサプリメント業界の現状を裏付けている。大正製薬はリリースで「自社ウェブサイト上に表示しているものであることから、一般生活者においては、インフルエンサーの投稿部分についても当社の広告であることが判別できる」と考え、自社ウェブサイトの表示では「#PR」のハッシュタグ部分をカットしていたと説明しているが、この説明もRIZAPとまったく同じものとなっている。RIZAPと大正製薬の件を通じて、「自社ウェブサイト上の表示であれば広告そのものだと消費者は判別できる」という考え方はステマ規制上、通用しないことが明白となった。

そもそも、ハッシュタグ部分をカットするのは、広告であることを隠そうとする意図(ハッシュタグ部分を残しておけば、消費者庁による摘発を免れたであろうが、肝心の消費者に「やらせ投稿」がばれてしまう)があるからにほかならず、消費者を欺こうとしていると言われてもやむをえない。コンプライアンスに敏感なはずの大企業まで、このような安易な不正に手を染めてしまう背景の一つには、ステマ規制に関する基本的な知識さえ欠如しているということがあると考えられる。消費者庁がステマ規制の強化に動く中、B2C企業では、自社のサイトで“やらせSNS投稿”を広告に使っていないか再点検するとともに、営業・広告担当者へのステマ規制に関する教育を徹底するようにしたい。

2024/12/06 東証の取引時間延伸が上場企業の決算短信開示時刻に与えた影響

周知のとおり、東京証券取引所(以下、東証)は2024年11月5日より現物市場の取引終了時刻を15時00分から15時30分に30分延伸(以下、立会時間の延伸)している。立会時間の延伸は「市場を巡る環境変化や多様化する投資家のニーズに対応するとともに、市場利用者の利便性や国際競争力、レジリエンスをさらに高めていく観点から実施」されたものだが、立合時間の延伸により上場企業の決算短信開示時刻はどのように変化したのだろうか。・・・


レジリエンス : ここでいう「レジリエンス」とは、市場の回復力や耐久性を指す。具体的には、市場が予期せぬショックや変動に対してどれだけ迅速かつ効果的に対応できるか、またその後どれだけ早く正常な状態に戻れるかを意味する。市場のレジリエンスが高まることで、投資家や市場利用者にとっての信頼性や安定性が向上し、結果として市場全体の競争力が強化される。

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2024/12/06 東証の取引時間延伸が上場企業の決算短信開示時刻に与えた影響(会員限定)

周知のとおり、東京証券取引所(以下、東証)は2024年11月5日より現物市場の取引終了時刻を15時00分から15時30分に30分延伸(以下、立会時間の延伸)している。立会時間の延伸は「市場を巡る環境変化や多様化する投資家のニーズに対応するとともに、市場利用者の利便性や国際競争力、レジリエンスをさらに高めていく観点から実施」されたものだが、立合時間の延伸により上場企業の決算短信開示時刻はどのように変化したのだろうか。


レジリエンス : ここでいう「レジリエンス」とは、市場の回復力や耐久性を指す。具体的には、市場が予期せぬショックや変動に対してどれだけ迅速かつ効果的に対応できるか、またその後どれだけ早く正常な状態に戻れるかを意味する。市場のレジリエンスが高まることで、投資家や市場利用者にとっての信頼性や安定性が向上し、結果として市場全体の競争力が強化される。

東証が2024年11月20日に公表した「2025年3月期第2四半期 決算短信の開示時刻動向」(以下、本調査結果)では、立会時間の延伸後に上場企業の決算短信(2025年3月期第2四半期の決算短信で、2024年11月14日までの間に公表されたもの)の開示時刻がどのように変化したのかが明らかにされている。それによると、立会時間の延伸後に2025年3月期第2四半期の決算短信を提出した3月決算上場企業1,657社のうち、立会終了前の15時29分以前に開示した企業は583社(33.7%)にのぼることが分かった(下表(本調査結果の2ページ目より引用)参照)。昨年同期(2024年3月期第2四半期)においては立会終了前に開示した上場企業は21.0%であり、立会終了前に決算短信を開示する企業の比率が増加したことが分かる。

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東証はかねてより上場企業に対して、「立会時間中であるか否かにかかわらず、上場企業が決定した場合等に、速やかに開示する」ことを求めてきた。一方、多くの上場企業では、取締役会で決算短信の承認決議をしてもすぐに決算発表をせず、立会終了後に発表するのが通例となってきた。これは、立会時間中に決算発表を行うと株価が乱高下しかねないためだ。しかし、決算短信の承認決議後、立会時間終了までに決算発表をしないと、未発表の重要な情報が社内に留め置かれることになり、インサイダー取引を惹起しやすくなるという問題がある(立会時間終了後の決算発表の問題については2022年3月17日のニュース『立会時間終了前の決算発表実現を支える「考え方」』参照)。

こうした中、立会時間延伸を受け東証は、上場企業に対し数回にわたって「立会時間延伸に伴い決算短信等の開示時刻を単純に後倒しするのではなく、午前立会と午後立会の間の時間帯(昼休み)に開示するなど、より速やかな開示に向けた取組みを積極的にご検討ください」といった呼びかけをしてきたところ(例えば2024年9月6日の情報取扱責任者宛通知「適時開示の開示時刻に関する留意事項について(より速やかな開示に向けたお願い)」参照)。上表のとおり、立会時間の延伸後、立会終了前に第2四半期決算短信を開示した企業が前年同期より12.7%増加(=33.7%-21.0%)したことからすると、東証の呼びかけどおりに立会終了後の開示をやめ、「より速やかな開示」に踏み切った企業が相次いだようにも見える。

しかし、上表の緑枠(当フォーラムが追加)の比率を比較すると、2025年3月期第2四半期(延伸後開示)と2024年3月期第2四半期とでは14時59分より前に決算短信を開示した企業の比率に大きな変化はない。すなわち、2025年3月期第2四半期(延伸後開示)において15時から15時29分までに開示した企業185社(11.2%)が、立会終了前開示を12.7%増加させた立役者と言える。

ただ、この185社には、意図的に立会時間中の速やかな開示を心掛けた企業だけでなく、立会時間が延伸したことを失念していて従来通りの行動パターンで15時から15時29分の間に漫然と開示した企業も含まれている可能性がある。

もちろん、立会時間中の速やかな開示を心掛けるようになった企業が純増していることは確実であることに変わりはない。下表(本調査結果の3ページ目より引用)は、2025年3月期第1四半期において15時から15時29分の間に決算短信を開示した企業が2025年3月期第2四半期においてどの時間帯に決算短信を開示したかを示したものである(上表とは調査時点が異なることに注意)。

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これを見ると、14時59分前に開示している企業が延伸前で19社、延伸後で96社ある。これらの企業は意図的に立会時間中の速やかな開示を心掛けた企業と言えよう(もちろん、これらの企業の中に「以前より速やかな開示を実施しており、たまたま取締役会の決算承認時間が早まっただけの企業」が含まれている可能性はゼロではない)。

いずれにしろ、2025年3月期第2四半期の場合、立会時間の延伸前に開示した企業と延伸後に開示した企業が混在しているという特殊性があり、単純比較が難しい。立会時間延伸を機に決算短信の速やかな開示に切り替えた企業が増えているのは確実だとしても、立会時間内に開示した企業の中には上述したとおり従来通りの行動パターンで15時から15時29分の間に漫然と開示した企業も含まれているからだ。2025年3月期第3四半期になれば上場企業各社に立会時間の延伸と速やかな開示の要請が今以上に浸透しているはず。立会時間の延伸を機に決算短信の開示タイミングに変化が生じたことを確認するためにはその段階での集計結果を待った方が良さそうだ。

2024/12/05 大和アセット、「取締役」の構成のみでジェンダー多様性を判断 監査役は考慮せず

2024年12月3日付のニュース「野村アセットが議決権行使基準を厳格化、取締役会の監督機能強化と資本生産性の向上求める」では野村アセットマネジメントが11月1日に公表した新たな議決権行使基準についてお伝えしたが、証券系の大手運用機関として野村アセットマネジメントに並ぶ存在の大和アセットマネジメントも11月20日、「議決権の行使に関する方針(国内株式)の見直しおよび検討課題について」と題する議決権行使基準の改定版をリリースした。本改定は原則として2025年2月に開催される株主総会から適用される(例外については後述)。

今回の改定は以下の5点となっている。・・・

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2024/12/05 大和アセット、「取締役」の構成のみでジェンダー多様性を判断 監査役は考慮せず(会員限定)

2024年12月3日付のニュース「野村アセットが議決権行使基準を厳格化、取締役会の監督機能強化と資本生産性の向上求める」では野村アセットマネジメントが11月1日に公表した新たな議決権行使基準についてお伝えしたが、証券系の大手運用機関として野村アセットマネジメントに並ぶ存在の大和アセットマネジメントも11月20日、「議決権の行使に関する方針(国内株式)の見直しおよび検討課題について」と題する議決権行使基準の改定版をリリースした。本改定は原則として2025年2月に開催される株主総会から適用される(例外については後述)。

今回の改定は以下の5点となっている。

1.業績基準
下表の取締役選任議案における業績基準の条件2について、従来は(ⅰ)「ROEが業種内で下位3分の1」、(ⅱ)「PBRが1倍未満」の両方に抵触している場合に、3期以上の在任者の選任に反対するとされていたところ、今回の改定で(ⅱ)のPBR基準が廃止される一方、(ⅰ)のROE基準に「8%未満」という閾値が追加された。大和アセットマネジメントは今回の改定の理由として、「PBR1倍は最終ゴールではなく継続的に向上を目指すべき」であることと、「経営の成果はROEのみで判断すべき」であることを挙げている。


ROE : Return On Equity=株主資本利益率(当期純利益/株主資本)
PBR : Price Book-value Ratio=株価純資産倍率(株価÷1株当たり株主資本)。株価が1株当たり純資産(BPS:Book value Per Share)の何倍まで買われているか(=1株当たり純資産の何倍の値段が付いているか)を指す。PBRが1.0を大幅に下回る場合、投資家が企業の将来性に疑問を持っていたり、減損リスクのように潜在的な資産の含み損が多額にのぼる可能性が株価に織り込まれていたりすることを示唆する。

2023/10/30基準 2024/11/20基準
・条件1:3期連続赤字の企業。なお赤字か否かの判断には、親会社株主に帰属する当期純利益を用いる。
・条件2:以下の(ⅰ)および(ⅱ)に該当する企業。
(ⅰ)直近3期のROEがすべて、同一業種内下位33%水準を下回っている企業。ただし、ROEが直近2期上昇傾向にある企業については適用除外とする場合がある。
(ⅱ)直近決算期末のPBRが1倍を下回っている企業。なおPBR1倍以上であっても過小資本によるものと判断する場合は本条件に該当するものとする。
・条件1:直近3期連続赤字の企業。なお赤字か否かの判断には、親会社株主に帰属する当期純利益を用いる。
・条件2:直近3期のROEがすべて、同一業種内下位33%水準(この水準が8%を上回る場合には8%)を下回っている企業。ただし、ROEが直近2期上昇傾向にある企業については適用除外とする場合がある。

2.IRの実施に関する基準
これまで業績基準の一環として採用されてきた「IR活動が不十分」との基準が廃止され、新たに独立した基準として「決算説明会を実施していない」との基準が設けられた。具体的には、決算短信の表紙の「決算説明会開催の有無」欄に「無」と記載されていた場合、経営トップの選任議案に反対する。大和アセットマネジメントは改定の理由として、「上場企業として説明責任を果たすことの重要性」を鑑みたとしている。

2023/10/30基準 2024/11/20基準
・条件3:条件2の(ⅰ)に該当し、かつIR活動が極めて不十分と判断する企業。
(*)IR活動が極めて不十分と判断する基準は、法定開示以外の任意のIR活動がない企業。
6 決算説明会を実施していない企業の代表取締役(または代表執行役)である再任候補者。なお決算説明会の実施の有無は、決算短信をもとに判断する。

3.役員のジェンダー多様性に関する基準
取締役選任議案におけるジェンダー多様性基準については従来、(監査役会設置会社の)監査役も含めて「複数」か否かを判断していたが、今回の改定で機関設計を問わず「取締役」のみにより判断することとされた。大和アセットマネジメントは改定の理由として、「経営判断への反対という意味」を勘案したとしている。ただし、ジェンダー基準の対象はプライム市場上場企業のみとされている。

2023/10/30基準 2024/11/20基準
8 プライム市場上場企業において、役員(取締役および監査役会設置会社における監査役)が複数のジェンダーで構成されていない企業の代表取締役(または代表執行役)である再任候補者。

9 プライム市場上場企業において、取締役が複数のジェンダーで構成されていない企業の代表取締役(または代表執行役)である再任候補者。

4.資本コストや株価を意識した経営
取締役選任議案について新たに設けられた基準である。PBRが1倍未満の企業が、コーポレートガバナンス報告書で「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を開示していない(東証が公表している「開示企業一覧表」に掲載されていない)の場合、経営トップの再任議案に反対する。大和アセットマネジメントは本基準を設けた理由として、「開示要請が出されてから相応に時間が経過している」ことを挙げている。なお、本基準は2025年6月総会から適用される。

2023/10/30基準 2024/11/20基準
(新設) 13 直近決算期末のPBRが1倍未満で、資本コストや株価を意識した経営を行っていないと判断する企業の代表取締役(または代表執行役)である再任候補者。
(*)資本コストや株価を意識した経営を行っていないと判断する基準は、東京証券取引所の「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の開示要請への対応を行っていない企業。
(本基準は2025年6月総会から適用)

5.社外役員の取締役会等への出席率
これまで、取締役会への出席率が「75%未満」の社外取締役および社外監査役の再任議案に反対することとされていたが、今回の改定で出席率が「85%未満」に引き上げられた。取締役会が月1回開催されている企業であれば、従来は年3回欠席(出席率75%)しても反対されなかったが、今後は年2回の欠席(出席率83.3%)でも反対されることになる。大和アセットマネジメントは改定の理由として、「極力出席すること」が役員の責務であることを挙げている。なお、本基準は取締役会のみならず監査役会についても適用される。

2023/10/30基準 2024/11/20基準
3 取締役会への出席状況について問題があると判断する候補者。
(*)取締役会への出席状況について問題があると判断する基準は、以下のいずれかの条件に合致する候補者。
条件1:取締役会の出席率が75%未満の再任候補者。
条件2:出席率を把握できる明確な情報 が開示されていない再任候補者。
3 取締役会への出席状況について問題があると判断する候補者。
(*)取締役会への出席状況について問題があると判断する基準は、以下のいずれかの条件に合致する候補者。
条件1:取締役会の出席率が85%未満の再任候補者。
条件2:出席率を把握できる明確な情報が開示されていない再任候補者。

今回の大和アセットマネジメントの議決権行使基準の改定を総括すると、ROEのみによる業績評価と「8%」という閾値の設定、「不十分なIR活動=決戦説明会の不実施」との整理、取締役のみによるジェンダー多様性基準の適用、東証の開示要請への対応の有無、社外役員の取締役会への出席率の閾値引上げという、基準の「明確化」と「厳格化」が推し進められた内容と言える。今後は他の機関投資家においても、大和アセットマネジメントと同様、厳格かつ猶予の余地を狭める議決権行使基準の改定および運用が予想されよう。

2024/12/04 過去5年以内の政策保有株式の純投資目的への変更、有報での開示強化へ

政策保有株式の保有は資産の効率的運用を妨げ、上場会社のROE(自己資本利益率)やROA(総資産利益率)を低める要因になっているとされる。コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)原則1-4でも、政策保有株式の縮減を促しているところだ。


ROE : Return On Equity=株主資本利益率(当期純利益/株主資本)
ROA : Return On Assets =総資産利益率(利益/総資産)。ROAは利益を総資産で除して求めるため、分母である総資産の増加はROAの低下をもたらす。実務上、ROAの利益には「営業利益」もしくは「事業利益」を使うことが多い。これは、総資産に対応する利益は、営業利益あるいは事業利益であるという考え方による。

【原則1-4.政策保有株式】
上場会社が政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有株式の縮減に関する方針・考え方など、政策保有に関する方針を開示すべきである。また、毎年、取締役会で、個別の政策保有株式について、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証するとともに、そうした検証の内容について開示すべきである。
上場会社は、政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための具体的な基準を策定・開示し、その基準に沿った対応を行うべきである。

原則1-4のコンプライ率(「政策保有株式なし」と記載している会社は原則1-4を「コンプライ」しているものとして集計)は、プライム市場で95.05%、スタンダード市場で90.38%と高い(東証の「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況」(2022年7月14日時点)24ページを参照)。

ただ、たとえ原則1-4をコンプライしている会社であっても、政策保有株式の残高が多いと資本コストを意識した経営ができていないとの烙印を押されかねない。また、議決権行使助言会社最大手のISSは政策保有株式を純資産の20%以上有する上場会社の経営トップ選任議案に反対推奨するとしている(グラスルイスはさらに厳しく、10%以上)。しかも、昨今の株高により政策保有株式の純資産に対する比率は上昇しており、議決権行使助言会社の定める基準に抵触する会社も増えている(株高によるISS等の基準への抵触については2024年9月9日のニュース「株高で政策保有株式の割合が上昇、ISS等の基準に抵触も」を参照)。

「資本コストを意識していない」と言われたくはないものの、本音では、ビジネス上の関係が強いなどの理由で政策保有株式を積極的に売却したくないという会社も少なくない。そのような会社が手を出しがちなのが、実際に政策保有株式を売却して縮減するのではなく、保有目的を見かけだけ「純投資目的」に変更する策だ。これにより政策保有株式が純資産に占める割合を低下させ、議決権行使助言会社が定める基準への抵触を回避しようというわけだが、保有目的変更後も政策保有株式という実態は何ら変わっていない。

金融庁はこのような実態を既に令和5年度の有価証券報告書レビュー(以下、有報レビュー)の段階で把握している(下記の「金融庁が認識した課題」を参照)。

金融庁が認識した課題
会社への質問等の結果、政策保有株式縮減の方針を示しつつ、政策保有株式に関して売却可能時期等について発行者と合意をしていない状態で純投資目的の株式に変更を行っており、実質的に政策保有株式を継続保有していることと差異がない状態になっているような事例が認められた。また、政策保有株式縮減の方針を示しつつ、発行者から売却の合意を得た上で純投資目的の株式に区分変更したものの、実際には売却に取り組む予定は長期間なく、実質的に政策保有株式を継続保有していることと差異がない状態になっているような事例も認められた。
令和5年度 有価証券報告書レビューの審査結果及び審査結果を踏まえた留意すべき事項等の37ページより引用)

令和6年度の有報レビューにおける法令改正関係審査では「政策保有株式及び純投資目的の株式の開示(株式の売却制限等及び長期保有株式の状況)」を調査項目の一つとして明示し、下記の質問を含む調査票を用いて現在審査を実施している。

調査票の質問項目
・保有目的が純投資目的である投資株式のなかに、発行者との株式持ち合いや株式の売却の制限(株式売却時期の制限を含む。)に関する合意又は発行体からの要望等により、機動的に売却できない株式は含まれていませんか。「含まれている」場合、機動的に売却できない具体的な理由(発行者との株式持ち合いや株式売却の制限に関する合意・発行者からの要望等の具体的な内容を含む。)及び純投資目的の株式に区分することが合理的と判断している理由
・保有目的を純投資目的以外から純投資目的に変更した株式のうちに、変更後長期間(1年以上)売却をしていない株式又は長期間売却を予定しない株式が含まれていませんか。「含まれている」場合、長期間売却していない若しくは長期間売却を予定していない具体的な理由及び純投資目的の株式に区分することが合理的と判断している理由

また、2024年6月に公表された「コーポレートガバナンス改革の実践に向けたアクション・プログラム2024」でもこの課題が指摘されており、制度改正など今後の方向性が提言された(アクション・プログラム2024については2024年6月19日のニュース「総会前の有報開示、いよいよ実現の可能性」を参照)。

アクション・プログラム2024で指摘された課題
政策保有株式について、各社において縮減に向けた取組みが進められている一方、議決権行使の状況を含む実態を踏まえた開示等の適切な対応がなされていないとの指摘がある。特に保有目的について、純投資目的への変更についてはその理由の開示が求められていないことから、実態が不透明となっているとの指摘がある。その要因として、例えば、社内の関係者間(IR 担当や営業担当等)で認識に差があるとの指摘もある。また、他方で形式的に売却することは必ずしも望ましくなく、発行会社の経営の支援等を通じて保有の合理性を説明し得るような場合もあるため、適切に検証を行う必要があるとの指摘がある。

さらに、2024年8月に公表された「2024事務年度金融行政方針」では、「政策保有株式の開示の適切性について有価証券報告書レビュー等で検証を行うとともに、政策保有株式に係る開示事項の追加等を検討する」との方針も示されている(同方針の4ページを参照)。

こうした開示要請の高まりを受け、金融庁が新たに打ち出したのが・・・

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2024/12/04 過去5年以内の政策保有株式の純投資目的への変更、有報での開示強化へ(会員限定)

政策保有株式の保有は資産の効率的運用を妨げ、上場会社のROE(自己資本利益率)やROA(総資産利益率)を低める要因になっているとされる。コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)原則1-4でも、政策保有株式の縮減を促しているところだ。


ROE : Return On Equity=株主資本利益率(当期純利益/株主資本)
ROA : Return On Assets =総資産利益率(利益/総資産)。ROAは利益を総資産で除して求めるため、分母である総資産の増加はROAの低下をもたらす。実務上、ROAの利益には「営業利益」もしくは「事業利益」を使うことが多い。これは、総資産に対応する利益は、営業利益あるいは事業利益であるという考え方による。

【原則1-4.政策保有株式】
上場会社が政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有株式の縮減に関する方針・考え方など、政策保有に関する方針を開示すべきである。また、毎年、取締役会で、個別の政策保有株式について、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証するとともに、そうした検証の内容について開示すべきである。
上場会社は、政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための具体的な基準を策定・開示し、その基準に沿った対応を行うべきである。

原則1-4のコンプライ率(「政策保有株式なし」と記載している会社は原則1-4を「コンプライ」しているものとして集計)は、プライム市場で95.05%、スタンダード市場で90.38%と高い(東証の「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況」(2022年7月14日時点)24ページを参照)。

ただ、たとえ原則1-4をコンプライしている会社であっても、政策保有株式の残高が多いと資本コストを意識した経営ができていないとの烙印を押されかねない。また、議決権行使助言会社最大手のISSは政策保有株式を純資産の20%以上有する上場会社の経営トップ選任議案に反対推奨するとしている(グラスルイスはさらに厳しく、10%以上)。しかも、昨今の株高により政策保有株式の純資産に対する比率は上昇しており、議決権行使助言会社の定める基準に抵触する会社も増えている(株高によるISS等の基準への抵触については2024年9月9日のニュース「株高で政策保有株式の割合が上昇、ISS等の基準に抵触も」を参照)。

「資本コストを意識していない」と言われたくはないものの、本音では、ビジネス上の関係が強いなどの理由で政策保有株式を積極的に売却したくないという会社も少なくない。そのような会社が手を出しがちなのが、実際に政策保有株式を売却して縮減するのではなく、保有目的を見かけだけ「純投資目的」に変更する策だ。これにより政策保有株式が純資産に占める割合を低下させ、議決権行使助言会社が定める基準への抵触を回避しようというわけだが、保有目的変更後も政策保有株式という実態は何ら変わっていない。

金融庁はこのような実態を既に令和5年度の有価証券報告書レビュー(以下、有報レビュー)の段階で把握している(下記の「金融庁が認識した課題」を参照)。

金融庁が認識した課題
会社への質問等の結果、政策保有株式縮減の方針を示しつつ、政策保有株式に関して売却可能時期等について発行者と合意をしていない状態で純投資目的の株式に変更を行っており、実質的に政策保有株式を継続保有していることと差異がない状態になっているような事例が認められた。また、政策保有株式縮減の方針を示しつつ、発行者から売却の合意を得た上で純投資目的の株式に区分変更したものの、実際には売却に取り組む予定は長期間なく、実質的に政策保有株式を継続保有していることと差異がない状態になっているような事例も認められた。
令和5年度 有価証券報告書レビューの審査結果及び審査結果を踏まえた留意すべき事項等の37ページより引用)

令和6年度の有報レビューにおける法令改正関係審査では「政策保有株式及び純投資目的の株式の開示(株式の売却制限等及び長期保有株式の状況)」を調査項目の一つとして明示し、下記の質問を含む調査票を用いて現在審査を実施している。

調査票の質問項目
・保有目的が純投資目的である投資株式のなかに、発行者との株式持ち合いや株式の売却の制限(株式売却時期の制限を含む。)に関する合意又は発行体からの要望等により、機動的に売却できない株式は含まれていませんか。「含まれている」場合、機動的に売却できない具体的な理由(発行者との株式持ち合いや株式売却の制限に関する合意・発行者からの要望等の具体的な内容を含む。)及び純投資目的の株式に区分することが合理的と判断している理由
・保有目的を純投資目的以外から純投資目的に変更した株式のうちに、変更後長期間(1年以上)売却をしていない株式又は長期間売却を予定しない株式が含まれていませんか。「含まれている」場合、長期間売却していない若しくは長期間売却を予定していない具体的な理由及び純投資目的の株式に区分することが合理的と判断している理由

また、2024年6月に公表された「コーポレートガバナンス改革の実践に向けたアクション・プログラム2024」でもこの課題が指摘されており、制度改正など今後の方向性が提言された(アクション・プログラム2024については2024年6月19日のニュース「総会前の有報開示、いよいよ実現の可能性」を参照)。

アクション・プログラム2024で指摘された課題
政策保有株式について、各社において縮減に向けた取組みが進められている一方、議決権行使の状況を含む実態を踏まえた開示等の適切な対応がなされていないとの指摘がある。特に保有目的について、純投資目的への変更についてはその理由の開示が求められていないことから、実態が不透明となっているとの指摘がある。その要因として、例えば、社内の関係者間(IR 担当や営業担当等)で認識に差があるとの指摘もある。また、他方で形式的に売却することは必ずしも望ましくなく、発行会社の経営の支援等を通じて保有の合理性を説明し得るような場合もあるため、適切に検証を行う必要があるとの指摘がある。

さらに、2024年8月に公表された「2024事務年度金融行政方針」では、「政策保有株式の開示の適切性について有価証券報告書レビュー等で検証を行うとともに、政策保有株式に係る開示事項の追加等を検討する」との方針も示されている(同方針の4ページを参照)。

こうした開示要請の高まりを受け、金融庁が新たに打ち出したのが有価証券報告書における開示の強化だ。具体的には、政策保有株式の開示に関して、「企業内容等の開示に関する内閣府令」(以下、開示府令)を下記の新旧対照表のとおり改正する。改正案は2024年11月26日に公表され、12月26日までパブリックコメントを募集している。

開示府令の一部改正案
改正前(現行) 改正後
e 保有目的が純投資目的である投資株式を非上場株式とそれ以外の株式に区分し、当該区分ごとに次の(a)及び(b)に掲げる事項を記載すること。また、最近事業年度中に投資株式の保有目的を純投資目的から場合には、それぞれ区分して、銘柄ごとに、銘柄、株式数及び貸借対照表計上額を記載すること純投資目的以外の目的に変更したもの又は純投資目的以外の目的から純投資目的に変更したものがある場合には、それぞれ区分して、銘柄ごとに、銘柄、株式数及び貸借対照表計上額を記載すること。
(a) 提出会社の最近事業年度及びその前事業年度における銘柄数及び貸借対照表計上額の合計額
(b) 提出会社の最近事業年度における受取配当金、売却損益及び評価損益のそれぞれの合計額
e 保有目的が純投資目的である投資株式を非上場株式とそれ以外の株式に区分し、当該区分ごとに次の(a)及び(b)に掲げる事項を記載すること。
(a) 提出会社の最近事業年度及びその前事業年度における銘柄数及び貸借対照表計上額の合計額
(b) 提出会社の最近事業年度における受取配当金、売却損益及び評価損益のそれぞれの合計額
(新設。既存のfはgに繰り下げ) f 投資株式の保有目的を変更したもの(最近事業年度末において保有しているものに限る。)がある場合には、次の(a)又は(b)に掲げる場合の区分に応じ、銘柄ごとに、当該⒜又は⒝に定める事項を記載すること。
(a) 最近事業年度において保有目的を純投資目的から純投資目的以外の目的に変更したものがある場合 次に掲げる事項
ⅰ 銘柄
ⅱ 株式数
ⅲ 貸借対照表計上額
(b) 最近5事業年度(6箇月を1事業年度とする会社にあっては、10事業年度)において保有目的を純投資目的以外の目的から純投資目的に変更したものがある場合 次に掲げる事項
ⅰ (a)に定める事項
ⅱ 保有目的を変更した事業年度
ⅲ 保有目的の変更の理由及び保有目的の変更後の保有又は売却に関する方針

本改正のポイントは、「当期を含む最近5事業年度以内に政策保有目的から純投資目的に保有目的を変更した株式」の詳細が開示対象とされたことだ(上表の右列の「f」を参照)。過去5年以内に「政策保有目的から純投資目的に保有目的を変更した株式」を有する会社は、当該株式の状況(銘柄、株式数、貸借対照表計上額、保有目的を変更した事業年度、保有目的の変更の理由及び保有目的の変更後の保有又は売却に関する方針)を説明しなければならなくなる。配当もなく株式価値も低減しているにもかかわらず保有し続けている銘柄があれば説明に苦慮することになるだろう。

また、金融庁は「企業内容等の開示に関する留意事項について」(以下、開示ガイドライン)も一部改正し、「純投資目的」の定義を開示ガイドライン上に明記した。これまでは、2010年3月31日の開示府令改正時のパブコメに対する「金融庁の考え方」に記載された「純投資目的とは、専ら株式の価値の変動又は株式に係る配当によって利益を受けることを目的とする場合を言う」という一文が“公式見解”として機能していたが、この定義がそのまま開示ガイドラインに格上げされた。

それとともに、従来の“公式見解”に「例えば、当該株式の発行者が提出会社の株式を保有する関係にあること、当該株式の売却に関して発行者の応諾を要すること等により、発行者との関係において提出会社による売却を妨げる事情が存在する株式は、純投資目的で保有しているものとはいえないことに留意する。」といった「純投資目的性が否定される例」が追加されている点には注意が必要だ。過去5年以内に「政策保有目的から純投資目的に保有目的を変更した株式」を有する会社は、当該株式が「純投資目的性が否定される例」に該当しないことを点検しておきたい。また、万が一「純投資目的性が否定される例」に該当する銘柄があれば、「相互保有の解消」「発行者より売却の応諾を得る」など「純投資目的」に相応しい対応を迅速に取るべきだ。

開示ガイドラインの一部改正案
改正前(現行) 改正後
(新設) 5-19-3-2 開示府令第二号様式記載上の注意(58)a、e及びfに規定する「純投資目的」とは、専ら株式の価値の変動又は株式に係る配当によって利益を受けることを目的とすることをいう。例えば、当該株式の発行者が提出会社の株式を保有する関係にあること、当該株式の売却に関して発行者の応諾を要すること等により、発行者との関係において提出会社による売却を妨げる事情が存在する株式は、純投資目的で保有しているものとはいえないことに留意する。

金融庁は開示府令改正案に加えて開示ガイドラインの改正案についても12月26日までパブリックコメントを募集し、2025年3月31日以後に終了する事業年度の有価証券報告書等から適用する予定としている。

金融庁が“偽り”の政策目的株式縮減に開示面から網を掛けようとしているのに対し、業界ルールで行動を縛ろうという動きもある。一般社団法人日本損害保険協会(以下、損保協会)は2024年9月19日、「政策保有株式に係るガイドライン」を取りまとめ公表している。本ガイドラインでは、保有実態を変えずに政策保有株式を純投資に区分変更する行為を禁止している。本ガイドラインは損保協会が定める「資産運用における指針」の下位規程であり、法的拘束力は持たないものの、加盟する損害保険会社(31社)各社が本ガイドラインに準拠して対応することが期待されている。裏を返せば、業界団体が乗り出さないといけないほど損害保険会社では保有実態を変えずに政策保有株式を純投資に区分変更する行為が横行していることの表れとも言えよう。

損保協会の政策保有株式に係るガイドライン
(1)政策保有株式の新規の保有は行わない。
(2)現存する政策保有株式(非上場株式を含む)は、早期になくすべく残高縮減に努める。特に上場株式については、明確な期限を定めて保有をゼロにする方針を定める。
(3)同様に公正な競争を阻害する要因となり得る、預金協力等その他の行為は行わない。
(4)投資株式を保有目的に応じた投資区分に適切に分類し、その開示にあたっては企業内容等の開示に関する内閣府令等に基づき、具体的かつ十分な説明を行う。
(5)保険取引先の株式を純投資株式として保有する際には、「売買の随意性の確保」「資産運用部門による判断の独立性」「適切な議決権行使」「運用組織や人員の態勢整備」「運用プロセスの規律と実効性」に留意する。なお、政策保有株式について、保有実態を変えずに純投資株式に区分変更する行為は行わない。

2024/12/03 野村アセットが議決権行使基準を厳格化、取締役会の監督機能強化と資本生産性の向上求める

国内機関投資家として最大規模の野村アセットマネジメントは2024年11月1日、「日本企業に対する議決権行使基準」の改定版を公表している。2023年も11月1日に公表したが、今年は国内大手機関投資家の中で最も早い公表日となった(昨年は大和アセットマネジマントが10月31日に公表)。本改定は即日発効されており、2024年11~12月および2025年1月以降に開催される株主総会において適用される。

今回の改定項目は以下の4点となっている。・・・

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2024/12/03 野村アセットが議決権行使基準を厳格化、取締役会の監督機能強化と資本生産性の向上求める(会員限定)

国内機関投資家として最大規模の野村アセットマネジメントは2024年11月1日、「日本企業に対する議決権行使基準」の改定版を公表している。2023年も11月1日に公表したが、今年は国内大手機関投資家の中で最も早い公表日となった(昨年は大和アセットマネジマントが10月31日に公表)。本改定は即日発効されており、2024年11~12月および2025年1月以降に開催される株主総会において適用される。

今回の改定項目は以下の4点となっている。

1. モニタリング・ボード基準
野村アセットマネジメントは取締役会が「モニタリング・ボード」であると認められる場合、取締役選任議案への賛否を判断するROE基準や、同じく役員報酬議案における増額・賞与支給の基準などに抵触があったとしても反対しないことで、上場企業のモニタリング・ボードへの移行を後押しする独自のポリシーを設けている。下表のとおり、今回の改定では「社外取締役が過半数」(②)との要件が見直され、単に社外取締役であるだけではなく、「選任時に独立性の要件を全て満たす」との条件が追加された。同要件を満たすためには独立役員であること、在任期間が12年未満であること、大株主出身者でないことが求められる。


モニタリング・ボード : 経営陣の監督を主たる役割・任務とする取締役会のこと。これに対し、業務執行におけるコンセンサスを形成する場としての取締役会が「マネジメント・ボード 」である。
ROE : Return On Equity=株主資本利益率(当期純利益/株主資本)

<モニタリング・ボードと認められるための要件>
2023/11/1基準 2024/11/1基準
取締役の人数が5名以上20名未満
社外取締役が過半数
社外取締役が過半数を占める指名・報酬委員会を設置し、社外取締役が議長に就任
女性の取締役が取締役の人数の10%以上
買収防衛策を導入していない
政策保有株式を過大に保有していない
監査役会設置会社の場合、取締役の任期が1年
支配株主がいる場合、取締役会議長は社外取締役
取締役の人数が5名以上20名未満
選任時に独立性の要件を全て満たす社外取締役が過半数
社外取締役が過半数を占める指名・報酬委員会を設置し、社外取締役が議長に就任
女性の取締役が取締役の人数の10%以上
買収防衛策を導入していない
政策保有株式を過大に保有していない
監査役会設置会社の場合、取締役の任期が1年
支配株主がいる場合、取締役会議長は社外取締役

2. ロールモデル基準
野村アセットマネジメントはTOPIX100構成銘柄に対し、望ましい経営の実現に積極的に取り組むことで、日本企業の「ロールモデル」となることを期待する独自のポリシーを設けている。この「ロールモデル」になるための要件として今回新たに「ジェンダーの多様性」(③)が追加された。具体的には、「管理職における女性比率」を開示するとともに、同比率を高めるための中長期的な目標を設定・開示することが求められる。仮に「女性管理職比率および中長期的な目標」の開示が不十分と判断された場合、経営トップの選任議案が反対行使の対象となる。

<「ロールモデル」になるための要件>
2023/11/1基準 2024/11/1基準
ESG課題を統合した情報開示:統合報告書を含む適切な媒体により、国際的に同意された基準に則って情報を開示し、数値データについては可能な限り第三者の保証を得ること。
気候変動: 中長期的なGHG排出量のネットゼロ目標を設定しSBTの認定を取得すること及び気候変動問題に対するガバナンス・戦略・リスク管理・指標および目標を明らかにすること。
実効的なスキルを有する社外取締役:株主総会資料においてスキル・マトリクスを開示し、社外取締役が経営・財務・ESGを含む能力と経験を有することを示すこと。
ESG課題を統合した情報開示:統合報告書を含む適切な媒体により、国際的に同意された基準に則って情報を開示し、数値データについては可能な限り第三者の保証を得ること。
気候変動:中長期的なGHG排出量のネットゼロ目標を設定しSBTの認定を取得すること及び気候変動問題に対するガバナンス・戦略・リスク管理・指標および目標を明らかにすること。
ジェンダーの多様性:管理職における女性比率を開示し、同比率を高めるための中長期的な目標を設定・開示すること。
実効的なスキルを有する社外取締役:株主総会資料においてスキル・マトリクスを開示し、社外取締役が経営・財務・ESGを含む能力と経験を有することを示すこと。

3. 女性取締役人数の最低水準
野村アセットマネジメントが取締役選任議案において経営トップの選任に反対するケースとしている「女性の取締役がいない場合」(③)とのトリガーが、今回「女性の取締役の人数が“10%”を下回る場合」に引き上げられた(従来は「いない場合」なので1名)。これにより、取締役の人数が10名を超える企業については、2名以上の女性取締役を選任することが必要になる。もっとも、本改定には1年間の猶予期間が設定されており、3月決算企業であれば2026年6月の株主総会において10%以上、取締役10名超の場合には2名以上を確保すればよいことになる。

<取締役選任議案に関する議決権行使基準>
2023/11/1基準 2024/11/1基準
取締役の人数が5名未満又は20名以上の場合。
社外取締役の人数が最低水準を下回る場合。「最低水準」は取締役の人数の過半数を原則とするが、支配株主がいない会社において指名ガバナンスを整備している場合は取締役の人数の3分の1とする。
女性の取締役がいない場合。
監査役会設置会社において取締役の任期が2年の場合。
取締役の人数が5名未満又は20名以上の場合。
社外取締役の人数が最低水準を下回る場合。「最低水準」は取締役の人数の過半数を原則とするが、支配株主がいない会社において指名ガバナンスを整備している場合は取締役の人数の3分の1とする。
女性の取締役の人数が最低水準を下回る場合。「最低水準」は取締役の人数の10%を原則とするが、2025年10月までに開催される株主総会については1名とする。
監査役会設置会社において取締役の任期が2年の場合。

4. ROEの最低水準
野村アセットマネジメントはこれまで、「5%未満かつ業界の下位3分の1」とのROE基準を設定し、これに抵触した場合には、取締役選任議案における経営トップ(在任3年以上)の選任に反対してきた。今回の改定ではROE基準を「5%未満または業界の下位3分の1」へと厳格化するとともに、「キャッシュリッチ企業」(下表参照)については「8%未満または業界の下位2分の1」との基準を別途設定した。

本改定について同社は「資本コストや株価を意識した経営をさらに後押しするため」と説明している。コーポレートガバナンスの“実質”とも言うべき資本生産性を厳しく追求するスタンスの表れと言えよう。

<ROE基準>
2023/11/1基準 2024/11/1基準
直近3期連続して株主資本利益率(ROE)が5%未満かつ業界の33%ile未満の場合、取締役会がモニタリング・ボードであり、かつ経営改善努力が認められる場合を除き、直近3期以上在任した会長・社長等の取締役再任に原則として反対する。 直近3期連続して株主資本利益率(ROE)が最低水準に満たない場合、取締役会がモニタリング・ボードであり、かつ経営改善努力が認められる場合を除き、直近3期以上在任した会長・社長等の取締役再任に原則として反対する。
ROE「最低水準」は以下のとおりとする。
キャッシュリッチ企業に該当する場合は8%と業界の50%ileのうち低い方
キャッシュリッチ企業に該当しない場合は5%と業界の33%ileのうち低い方
「キャッシュリッチ企業」とは、直近2期連続で下記①、②及び③の全項目に該当する企業をいう。
株主資本比率>50%
ネット金融資産/売上高>30%
ネット金融資産/総資産>30%


%ile : 「%タイル(パーセンタイル)」と読む。データを小さい順に並べた場合に、例えば小さい方から数えて全体の75%に位置する値を75パーセンタイルという。75パーセンタイルは「第三四分位数」ともいわれる。25パーセンタイルは「第一四分位数」、50パーセンタイルは中央値を指す。

また、2023年12月1日のニュース「野村アセットマネジメント、改定議決権行使基準で「社外取締役は過半数を原則」を明示」でお伝えした、社外取締役の人数を原則過半数とする基準(同ニュースの「(1) 取締役会の構成」参照)、およびロールモデル基準(同ニュースの「(3)ロールモデル基準」参照)についての適用猶予期間が満了し、2024年11月1日以降、適用開始となった。今回の改定内容と同様、いずれも取締役会の監督機能を強化し、中長期的な株主価値向上を求めるものであり、企業にとっては相対的にクリアのハードルは高いと言える。他の機関投資家における議決権行使基準の改定に与える影響が注目されるところだ。

2024/12/02 年末年始休業のお知らせ

誠に勝手ながら、2024年12月27日(金)~2025年1月6日(月)は事務局の年末年始休業となります。
ご不便をおかけしますが、何卒ご理解いただきますようお願い致します。

なお、会員登録は冬季休業期間中もオンラインにて可能です。
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