2015/02/05 (新用語・難解用語)シグナリング効果

 あるものの中身や真実が外部からは明確には見えないという状況の中で、外部に対し何らかのシグナル(サイン、メッセージ)を発することにより、それらをイメージさせること。企業経営上は、マーケティング、人事、株価対策など様々なシーンで用いられる。

 マーケティングにおいては、例えば化粧品など、その品質の良し悪しが外観からだけでは判断しにくい(要するに、使ってみないと分からない)商品の購入を促進するため、価格、パッケージ、店舗の立地や豪華さなどのシグナリング効果が利用される。価格を例にとると、ある程度高価な方が消費者に「品質が高いのではないか」との想像をかき立てやすい。ここでは「高価格」がシグナリング効果を発揮している。CMに著名人を起用するのもシグナリング効果を狙ったものである。

 人事におけるシグナリング効果の活用シーンの典型例として挙げられるのが・・・

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2015/02/05 (新用語・難解用語)シグナリング効果(会員限定)

 あるものの中身や真実が外部からは明確には見えないという状況の中で、外部に対し何らかのシグナル(サイン、メッセージ)を発することにより、それらをイメージさせること。企業経営上は、マーケティング、人事、株価対策など様々なシーンで用いられる。

 マーケティングにおいては、例えば化粧品など、その品質の良し悪しが外観からだけでは判断しにくい(要するに、使ってみないと分からない)商品の購入を促進するため、価格、パッケージ、店舗の立地や豪華さなどのシグナリング効果が利用される。価格を例にとると、ある程度高価な方が消費者に「品質が高いのではないか」との想像をかき立てやすい。ここでは「高価格」がシグナリング効果を発揮している。CMに著名人を起用するのもシグナリング効果を狙ったものである。

 人事におけるシグナリング効果の活用シーンの典型例として挙げられるのが新卒採用である。職務経歴を持たない新卒の能力を判断するのは容易ではない。そこで、卒業した大学名など「学歴」というシグナルが、その人物を採用するか否かの判断に大きく影響することになる。この場合、会社側がシグナリング効果の受け手になっている。

 株価対策としてシグナリング効果を狙ったものが、自社株買いや増配などの株主還元である。会社が自ら自社の株式を取得すれば、「現在の株価は割安であると経営陣が考えている」というシグナル(メッセージ)が株式市場に伝わり、株価にプラスに働くことが少なくない。増配も同様だ。増配は投資家に「多くの配当を支払えるだけの利益を生み出すことに経営陣が自信を持っている」との期待を抱かせ、やはり株価上昇の材料となりやすい。ただし、例えば成長性の高い新興上場企業が配当せずにその資金を新規事業への投資に使う場合、むしろ減配や無配という選択が投資家に「会社のさらなる成長」を予感させ、株価を上昇させる可能性もある。

 このように、企業経営上、様々な場面で利用されているシグナリング効果だが、やり過ぎれば逆効果となりかねない点には留意する必要がある。例えば、シグナリング効果により商品のブランドイメージが上がったとしても、品質が伴っていなければクレームにつながり、ひいては会社の信用を失墜させる。学歴主義の弊害はこれまでも指摘されてきたとおりであり、また、いくら株主還元に力を入れても、業績が伴っていなければ「成長事業に資金を使うべきだった」などと批判を受けることにもなりかねない。シグナリング効果は「実質」を伴ってこそ最大化されると言える。

2015/02/04 メールに潜むリスク

 いまや業務に欠かせないメール。打ち合わせ等と違って時間や場所を選ばず、また、内容を整理して伝えられるうえ、記録が残るため、後々検索機能を使って当時のやり取りを検証することもできる。

 ただ、このような特徴を持つがゆえ、メールは税務調査において恰好の証拠資料となっている。近年は税務調査でメールがチェックされるのは当然となりつつあり、メールが巨額の追徴課税のきっかけになった事例は少なくない。メールは、税務調査で問題となった取引や行為が行われた当時に作成された文書であるため、税務当局でも「証拠価値が高い」と評価されている。

 特に・・・

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2015/02/04 メールに潜むリスク(会員限定)

 いまや業務に欠かせないメール。打ち合わせ等と違って時間や場所を選ばず、また、内容を整理して伝えられるうえ、記録が残るため、後々検索機能を使って当時のやり取りを検証することもできる。

 ただ、このような特徴を持つがゆえ、メールは税務調査において恰好の証拠資料となっている。近年は税務調査でメールがチェックされるのは当然となりつつあり、メールが巨額の追徴課税のきっかけになった事例は少なくない。メールは、税務調査で問題となった取引や行為が行われた当時に作成された文書であるため、税務当局でも「証拠価値が高い」と評価されている。

 特に税金を減らすこと(タックスプランニング)についてやり取りしたメールに対して税務当局は敏感に反応するだろう。

 経営陣にとっては、ある事業活動(例えば資産の売却や組織再編など)を行う場合、キャッシュフローに直接影響を与える税金を考慮するのは当然のことであり、株主に対する責任を果たすという観点からも、むしろ考慮しない方が問題だが、そのやり取りがメールという形で残っていると、税務当局としてはどうしても「税金を逃れようとしたのではないか」という目線でとらえがちだ。したがって、税金を不当に逃れるつもりはなかったとしても、税務調査で無用のトラブルを避けるためには、税負担の軽減に関するやりとりはメールでは行わない方が無難だろう。

 また、絶対にやってはいけないのが、メールの削除だ。メールを削除する行為は、「仮装・隠ぺい」行為に該当するため、もしこれが税務調査で発覚すれば、重加算税というペナルティ的な重い税金の対象になる。実際、重加算税が課された理由の上位には「メールの削除」がランクインしている。税務調査ではパソコン上で削除したメールの復元が図られることは珍しくないほか、パソコン上では完全に削除されていたとしても、サーバーにメールが残っており、削除したことが発覚するケースもある。また、メールはCCやBCC、転送、さらにその組み合わせにより広範囲に拡散するため、拡散先で把握されることもある。

 数十億、数百億単位でキャッシュフローに影響する重要なタックスプランニングであれば、経営陣には少なくともCCが入っていることは多い。この1本のメールが巨額の追徴課税につながるリスクとなり得ることを、経営陣は認識すべきだろう。

2015/02/03 新法でも防げない集団訴訟に対するリスクマネジメント

 一段落した感もあったベネッセコーポレーションの個人情報大量漏えい問題だが、ここに来て、同社に対しかつてない規模の集団訴訟が提起されている。「明日は我が身」と、大きな脅威を感じている企業は少なくないだろう。

 ベネッセへの集団訴訟が大規模化している背景には、弁護団が被害者に対し、インターネットを通じて容易に訴訟への参加を呼びかけられるということがある。今回の一件は、濫訴(むやみやたらに訴訟を起こすこと)で悪名高い米国の「クラスアクション」を想起させる。

 集団訴訟と言えば、当フォーラムでも何度か報じてきたとおり、新たな消費者裁判の手続である「消費者裁判手続特例法」が平成25年12月11日に公布され、米国のような濫訴を防止するために、政府から認定を受けた特定適格消費者団体のみが「実際に被害を受けた個々の消費者に代わって」損害賠償請求訴訟を提起する仕組みが導入される(2014年3月19日のニュース「集団訴訟の対象とならないためにやるべきこととは? 」、同年9月10日のニュース「集団訴訟を防ぐリコールと防がないリコール」参照)。

 この新法が創設されたにもかかわらず、ベネッセコーポレーションへの集団訴訟が提起されたことに疑問を持つ向きもあるかもしれないが、そもそも新法はまだ施行されていない(交付日である「平成25年12月11日」から“3年以内”に施行されることになっている)。現在は、特定適格消費者団体の認定基準に関する検討が政府内で大詰めを迎えているところである。

 もっとも、新法が施行された後も、今回のようなタイプの集団訴訟を止めることはできない。なぜなら、・・・

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2015/02/03 新法でも防げない集団訴訟に対するリスクマネジメント(会員限定)

 一段落した感もあったベネッセコーポレーションの個人情報大量漏えい問題だが、ここに来て、同社に対しかつてない規模の集団訴訟が提起されている。「明日は我が身」と、大きな脅威を感じている企業は少なくないだろう。

 ベネッセへの集団訴訟が大規模化している背景には、弁護団が被害者に対し、インターネットを通じて容易に訴訟への参加を呼びかけられるということがある。今回の一件は、濫訴(むやみやたらに訴訟を起こすこと)で悪名高い米国の「クラスアクション」を想起させる。

 集団訴訟と言えば、当フォーラムでも何度か報じてきたとおり、新たな消費者裁判の手続である「消費者裁判手続特例法」が平成25年12月11日に公布され、米国のような濫訴を防止するために、政府から認定を受けた特定適格消費者団体のみが「実際に被害を受けた個々の消費者に代わって」損害賠償請求訴訟を提起する仕組みが導入される(2014年3月19日のニュース「集団訴訟の対象とならないためにやるべきこととは?」、同年9月10日のニュース「集団訴訟を防ぐリコールと防がないリコール」参照)。

 この新法が創設されたにもかかわらず、ベネッセコーポレーションへの集団訴訟が提起されたことに疑問を持つ向きもあるかもしれないが、そもそも新法はまだ施行されていない(交付日である「平成25年12月11日」から“3年以内”に施行されることになっている)。現在は、特定適格消費者団体の認定基準に関する検討が政府内で大詰めを迎えているところである。

 もっとも、新法が施行された後も、今回のようなタイプの集団訴訟を止めることはできない。なぜなら、今回の訴訟は「精神的損害」に対する賠償を求めて提起されているが、新法では精神的損害を適用対象外としているからだ。

 「精神的損害」とは、財産的損害の対となる概念であり、「悲しみ」や「苦痛」といった精神に加えられた不利益を指す。例えば、クレジットカード会社に登録されている個人情報が流出した場合、たとえクレジットカードの不正利用等は行われておらず財産的な損害は生じていないとしても、情報の流出によって「何となく嫌な気持ち」を感じる人もいるだろう。法的には、この“嫌な気持ち”をもって、損害賠償を請求することができる。問題を発生させてしまった側の企業からすると、「精神的損害」という不明瞭な根拠に基づき訴えを提起されたらたまったものではないだろうが、精神的損害の賠償は民法上の「不法行為」に関する規定に基づき賠償されることが明記されているうえ(民法710条)、また、憲法上の権利である「訴えを提起する権利」を制限することもできない。

 そして、この「精神的損害」のやっかいなところは、賠償を請求する動きが拡がった場合には、実際には大して苦痛などを感じていなかった人にも訴訟参加の動きが広がる可能性が高いということだ。特に、インターネットにより個人が容易に情報を入手することができるようになった現在、日和見主義的な動きがとられるリスクは大幅に高まっている。

 では、こうした中、企業にはどのようなリスクマネジメントが必要だろうか。ひとつ言えるのは、問題発覚時には中途半端な対応をしないということであろう。ベネッセコーポレーションのケースでは、被害者に対して500円の金券が配布されているが、個人情報の漏えいという事実に対する補償として被害者の十分な納得感が得られていない、との指摘もある。被害者の数が膨大であることを考えると、たとえ500円の金券の配付であったとしても企業には大規模な損失が発生することになるが、それによって騒動が沈静化しなければ、無意味な出費となってしまう。こうした事態を避けるためには、問題が発覚した時点で大胆な対応、すなわち、ある程度「高額」な出費を覚悟する必要があろう。

 逆に言えば、こうした大胆な対応をとることを迅速に発表し、実行に移せば、「精神的損害に対して賠償を求めるという行動は非常識ではないか」との世論が形成され、インターネットによって集団訴訟への参加を大々的に呼びかけるといったこともやりにくくなる可能性がある。上述のとおり、訴えを起こすこと自体は、憲法でも認められた権利であり、制限することは難しいだけに、「訴えを起こすのはおかしい」と消費者側に思わせる状況をいち早く作ることが、企業にとって最大のリスクマネジメントと言えよう。

2015/02/02 英国企業の社内・外取締役比率に「2:8」が多い理由

 今年(2015年)の6月1日から導入される日本版コーポレートガバナンス・コードは英国版をモデルにしているため、両者の共通点は少なくないが、独立社外取締役の人数に関する記述は異なる。日本版コーポレートガバナンス・コードが「少なくとも2名以上」としたのに対し、英国版では「少なくとも半数(比較的小規模な上場会社の場合、少なくとも2名)」となっている。すなわち、日本版コーポレートガバナンス・コードでは、英国版で「比較的小規模な上場会社」に適用される基準が採用されているということだ。

 2名以上の独立社外取締役の確保に苦労する日本企業が少なくない中、英国では、コーポレートガバナンス・コードが求める「少なくとも半数」という基準をはるかに上回る独立社外取締役が採用されているケースが少なくない。英国企業における社内取締役と独立社外取締役の比率として多いのが「2:8」である。つまり、取締役が10人いたとすると、8人は独立社外取締役ということになる。日本でも、指名委員会等設置会社では「過半数」が常識となっているが(例えば日立製作所では、取締役12人のうち7人が社外取締役)、さすがに「2:8」とまではいかない。

 英国企業がこれほど高い比率で社外取締役を置いているのは、・・・

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2015/02/02 英国企業の社内・外取締役比率に「2:8」が多い理由(会員限定)

 今年(2015年)の6月1日から導入される日本版コーポレートガバナンス・コードは英国版をモデルにしているため、両者の共通点は少なくないが、独立社外取締役の人数に関する記述は異なる。日本版コーポレートガバナンス・コードが「少なくとも2名以上」としたのに対し、英国版では「少なくとも半数(比較的小規模な上場会社の場合、少なくとも2名)」となっている。すなわち、日本版コーポレートガバナンス・コードでは、英国版で「比較的小規模な上場会社」に適用される基準が採用されているということだ。

 2名以上の独立社外取締役の確保に苦労する日本企業が少なくない中、英国では、コーポレートガバナンス・コードが求める「少なくとも半数」という基準をはるかに上回る独立社外取締役が採用されているケースが少なくない。英国企業における社内取締役と独立社外取締役の比率として多いのが「2:8」である。つまり、取締役が10人いたとすると、8人は独立社外取締役ということになる。日本でも、指名委員会等設置会社では「過半数」が常識となっているが(例えば日立製作所では、取締役12人のうち7人が社外取締役)、さすがに「2:8」とまではいかない。

 英国企業がこれほど高い比率で社外取締役を置いているのは、そうしなければ取締役会の機能が果たせないと考えているからだ。取締役会とは株主より負託を受け、業務執行をウォッチし、時にはこれにリスク・オンすることにより“企業価値を高める集団”であり、そのような役割を担うためには、様々な角度から「スペシャリティ」に裏打ちされたアドバイスを業務執行側に行うことが求められる。これを実現するには、例えばファイナンスが分かる人材、サイエンスが分かる人材、インターナショナルビジネスに秀でた人材、自社の事業内容について造詣の深い人材、自社にない事業の経験がある人材など、多様な人材が必要になる。そう考えると、必然的に社外取締役の人数は増えざるを得ない。「2:8」という比率は、“比率ありき”ではなく、あくまで取締役会に必要なスペシャリティを積み上げた結果というわけだ。

 このように、取締役会に多くのスペシャリティが必要であるという点は、日本企業においても変わらないはず。この観点からすると、日本版コーポレートガバナンス・コードが求める最低ラインである「2人」というのは十分とは言えない。いずれ、取締役が10人いれば半分は社外取締役というのが常識になる時代が来るだろう。

2015/02/01 【2015年1月の課題】独立社外取締役の人選:解答(会員限定)

取締役会を「監視の場」にするマイクロマネジメント思考

 社外取締役の人選においては、当然肩書も重視されます。しかし、いくら立派な肩書を持っていても、その人が自社に本当に役に立つかどうかは、選任後一定期間してみないと分からないものです。選任してみたものの、社外取締役としての資質に欠けていたり、自社のビジネスに理解がなかったりして、後で失望するケースも珍しくないのが現実です。社外取締役は2年または1年の任期とはいえ、一度選任されれば、病気にでもならない限り改選により数期は務めることになるのが通常です。誤った人選をすれば、その後長期間にわたって取締役会にフラストレーションを与えることになるだけに、そのリスクは大きいと言えます。

 避けたいタイプの筆頭が、“マイクロマネジメント”思考の人です。「こういうことやってはいけない」「この社内規程が良くできていない」など細かいことをあげつらって、それで責任を果たしたと思っている社外取締役は決して少なくありません。日本人の生真面目な性格も影響しているとも言えそうですが、マイクロマネジメントは社外取締に求められている役割、力量ではありません。そもそも、こうしたチェック役には監査法人や顧問弁護士、外部のアドバイザー、さらに(社内・外)監査役がおり、それが取締役である必要はないでしょう。

 社外取締役は他のボードメンバーとともに企業価値を高める“同志”であり、この意識を共有できない人を社外取締役に選任してはいけません。取締役会が単なる「監視の場」「ネガティブチェックの場」になってしまえば、思い切った経営判断ができなくなる恐れもあります。これまで、日本企業においては「社外取締役=監視役」といったイメージが強かったと思いますが、これからの時代の社外取締役像は従来とは全く違ったものになっていくはずです。社外取締役の選任にあたっては、企業側も従来の認識を変える必要があります。

日本ではなかなか実現しない「ライバル会社の元経営者」の登用

 社外取締役候補としてまずリストアップしたいのは、他企業の元経営者です。実際に経営を経験した者の客観的な目は、企業経営上極めて有益です。また、現役の経営者よりも時間的な余裕があるので、社外取締役の職務にも深くコミットしてもらいやすいはずです。ただし、現役時代に優れた業績を残した元経営者ともなれば引く手あまたのため、早めにアプローチしておきたいところです。

 元経営者の起用は、取締役会の風通しを良くする効果も期待できます。例えば取締役会にはワンマン社長とイエスマンしかおらず、実質的に社長の独断で議論の行方が決まっているような場合、この状況を改善するためには、ワンマン社長が一目置かざるを得ないような人物を社外取締役として招聘することが有効です。一例として、社長よりも年齢が上で、自社より規模の大きい企業の出身者が挙げられます。もっとも、ワンマン社長がこうした人材をいきなり社外取締役に受け入れるとは考えにくいため、最初はアドバイザリーボードなど社長の諮問機関に招聘するといったステップを踏んでから、社外取締役に迎え入れることも考えられます。

 海外では、ライバル企業の元経営者を社外取締役に起用するケースが珍しくありません。業界に精通し、しかも、競争相手として自社を外部から分析してきたライバル企業の元CEOの意見は、まさに自社にとっては企業価値向上のための金言となり得ます。しかし、日本では異業種の元経営者を社外取締役に起用するケースはあっても、同業界からの起用はほとんど見られません(むしろタブーになっています)。その背景には、企業秘密の漏洩問題や愛社精神の強さなどがあるものと思われますが、日本企業の価値向上のためには、我が国においてもこの壁を打ち破ることが必要でしょう。そのためには、政府が主導して何らかのガイドライン(例えば、経営者を辞めてから何年すればライバル企業の社外取締役となっても問題ないのか、元の所属企業とのコンフィデンシャル・アグリーメントの締結など)を定めるなどして、日本企業の背中を押すことが必要かも知れません。

 同業界からの起用が難しい場合には、他業界ながらもビジネスモデルが近いところ(例えば、ヘルスケアと医薬品など)から元経営者を招聘することも検討に値します。

元経営者以外の適任は?

 元経営者以外の適任者としてはどのような人材が考えられるでしょうか。

 社外取締役の選任において意識する必要があるのはダイバーシティ(多様性)です。企業価値の向上に貢献するためには、社外取締役は様々な角度から「スペシャリティ」に裏打ちされたアドバイスを業務執行側に行う必要があります。そのためには、例えばファイナンスのプロ、科学技術のプロ、インターナショナルビジネスのプロ、自社にない事業の経験がある人材などの登用が考えられます。また、企業のエシックス(倫理)などを検討するうえで、CSR(企業の社会的責任)やESGに造詣が深い人も入れておくとよいでしょう。

 このほか、取締役会のメンバーが50代後半の男性ばかりで発想が似通っているという場合には、例えば中堅世代のベンチャー経営者、上場企業の女性経営幹部などを招聘するのも有効でしょう。また、言葉の問題はあるものの、発想が全く異なる外国人は、ダイバーシティの実現にはもってこいと言えます。

 アナリストも有力な候補となり得ます。多くのアナリストは同じ業界を長年見ているだけに業界への見識もあり、企業にアドバイスしたり、意思決定に携わることが可能でしょう。

 企業からは、「大学の先生は使いやすい」という声がよく聞かれます。必ずしも自社業務に精通しているわけではないものの、「正論」「あるべき論」を述べてくれるところが重宝されているようです。

 経営戦略やM&Aといったテーマでは経営コンサルタントの発言も有用でしょう。ただし、経営コンサルタントの能力は極めて属人的なため、人選は慎重に行う必要があります。

 一方、「単に有名だから」という理由での人選は、投資家の評判も芳しくありません。あくまで、その人がどのように会社の企業価値向上に貢献できるのか説明できる人を選ぶべきです。

能力だけでなく「姿勢」も確認を

 このように、元経営者を筆頭として様々な分野の人材が社外取締役候補となり得ますが、肩書や能力は似通っていても、社外取締役という職務に取り組む「姿勢」によって、企業価値向上への貢献度は大きく変わってきます。

 例えばメーカーの社外取締役に就任したら、事業所や工場、主要な取引先などをくまなく回る人がいる一方で、多忙を理由に、取締役会への出席以外の活動に消極的な人もいます。後者は、本気で企業価値の向上に貢献しようという覚悟の不足が疑われます。この点は、選任前にしっかり確認しておく必要があります。

 また、社外取締役の役割を、取締役会に上がってきた議案について単にチェックボックス的なチェックをすることと考え、「取締役会での議論やディシジョンメイキングは自分の役割ではない」と割り切っている社外取締役(候補)も少なくありません。例えば海外の企業に数千億円の投資をすることについて取締役会で決議するとします。この議案に対し、ビジネススクール的な発想で「どういう風にリターンをはじいてますか」とまでは言えたとしても、相手の会社の内容までしっかり聞いた上でそれが企業価値向上にどう貢献するのかというところまでは議論できていないことが多いのではないでしょうか。業務執行役員は当然ながら当該投資に対して明確なロジックを持っており、ここで社外取締役に色々言われるのは勘弁して欲しいというのが企業側の本音でしょう。しかし、社外取締役はそこで“嫌な役割”を果たさなければなりません。自分が株主や投資家の“エージェント”となり、客観的な目で、投資家や株主が抱くであろう疑問をクリアにしていくといった姿勢がなければ、現実問題として社外取締役としてはワークしません。そのためには、社外取締役に「質問する能力」「解釈する能力」「理解する能力」が備わっていなければなりません。こうした能力に欠ける人は、そもそも社外取締役候補から外すべきでしょう。

 社外取締役としても、功なり名を遂げた経営者に対して発言することには気が引けることもあるかも知れません。しかし、いかにワンマンな企業経営者であっても、自分の経営判断が正しいかどうか迷うことも、また間違った判断を下すこともあるものです。そういう時にこそ、社外の人と議論することが経営者にとっても重要であり、逆に言うと、そういうことに対して胸襟を開いていない経営者は自らの決断を検証する機会を失っていることになります。最終的には自分の考えを押し通すとしても、一度揉んでみるという作業が経営判断の際には極めて重要であり、その作業を行うのが取締役会の役割に他なりません。社外取締役を上手く活用できるかどうかという局面では、経営者の度量の広さも試されていると言えるでしょう。

2015/02/01 【経理・財務】手形・小切手の管理を適正に行いたい

 

手形・小切手は便利な反面、特有の危険も

手形・小切手は信用取引(商品の受け渡しと代金決済を同時に行う現金取引と異なり、商品の受け渡し時点で代金決済を行わず、将来の一定の期日に支払うことを約束して商品を受け渡す取引方法)による支払時に用いられる支払方法の1つです。

小切手は、支払期日を指定できる手形と異なり、「一覧払い」という点が特徴的です。一覧払いとは、小切手の所持人はいつでも銀行に小切手を呈示することができ(*1)、呈示を受けた銀行は直ちに振出人の口座から支払いを行うというものです。これにより、小切手の所持人は現金化したいタイミングで現金化することができることになります。仮に振出日欄に将来の日付が入っていても(これを先日付小切手(*2)と言います)、銀行は小切手の呈示があった時点で振出人の口座から支払いをします。したがって、振り出した側は、振出日欄の日付を問わず、小切手の振り出しとともに当座預金を減らす会計処理をします(*3)。また、小切手の受取人は銀行に小切手を呈示するまでは現金同等物として会計処理します。

*1 厳密には支払呈示期間(振出日の翌日から10日以内)があります。
*2 小切手の振出日の欄に将来の日付を記載して振り出された小切手のこと。振り出し時には資金手当てができていないものの、後日資金手当の見込みが付いているような場合等に、受取人に振出日まで提示しないことを要請し、承諾を受けて振り出します。もっとも振出日を待たずに銀行に呈示されるリスクがあり、資金ショートを起こしかねないので原則として振り出しを禁止すべきです。
*3 これにより小切手の過振り(当座預金の残高以上に振り出すこと)を防ぐ効果もあります。

呈示 : 小切手に記載されている支払銀行の支店にて支払いを求めること。もっとも、通常は、自社の取引銀行に預け、取り立てを依頼する。
振出日 : 手形を発行した日

一方、手形は支払期日を指定するのが通常()であり、支払期日が到来するまでは振出人は支払猶予を得ることになります。そこで振出人としては小切手のように振り出しただけでは当座預金を減らすことはせず、支払日までは「金銭債務」(支払手形)として取り扱います。一方、手形の受取人は支払期日が到来するまでは受取手形として会計処理します。

 手形も支払期日を記載しなければ、一覧払いになります。

手形・小切手は、現金と比べると持ち運びが容易であるという性質があります。仕入先に多額の現金を持ち運ぶことは、とてもかさばるため現実的ではなく、盗難にあう危険も増します。また、手形については支払期日前であっても割引裏書)により現金化することが可能となり、資金繰りの観点からは現金払いに近い効果もあります。さらに、振出人側から見ると支払猶予機能がある点が大きなメリットです。

割引 : 金融機関等に手形を売却すること。支払期日前に支払いを受けるため、支払期日までの利息や手数料を控除されることになり、手取額は減る。利息相当額は「手形売却損」として会計処理する。
裏書 : 手形を譲渡すること。譲渡人(裏書人)・譲受人(被裏書人)の名前(名称)や住所が手形面の裏に記載されていることから、“裏”書と言われる。例えば、A社に商品を販売してA社から手形を受け取ったB社が、今度はC社から商品を仕入れた場合、C社への支払いにA社から受け取った手形を充てるような場合に用いられる。裏書された手形は回し手形とも言われる。

 手形を回すことを前提として、手形を受け取る会社側の都合の良い金額に分割して手形を発行することもあります。

一方で、手形・小切手にはデメリットもあります。まず、有効な手形・小切手を振り出すためには法定の要式を充たさなければならないことから、一定の知識を有する者に取り扱わせる必要があります。また、後述するように管理も煩雑となります。さらに、金額を自由に記載できることから着服など“不正”に用いられてしまうと、会社に多額の損失をもたらしてしまいます。加えて、“誤謬”にも注意しなければなりません。手形・小切手に記載されていない事情は一切考慮されないことから、金額を誤って記載した手形・小切手を交付してしまうと、正しくない金額の手形・小切手が一人歩きしてしまうことになります。振り出しに先立ち、金額欄に間違いがないか入念にチェックする必要があります。

手形には下記の印紙税が必要となる点もデメリットの1つです(小切手は印紙税が不要です)。

<手形と印紙税>

記載された金額 税額
10万円未満のもの 非課税
10万円以上 100万円以下 200円
100万円を超え 200万円以下 400円
200万円を超え 300万円以下 600円
300万円を超え 500万円以下 1,000円
300万円を超え 500万円以下 1,000円
500万円を超え 1,000万円以下 2,000円
1,000万円を超え 2,000万円以下 4,000円
2,000万円を超え 3,000万円以下 6,000円
3,000万円を超え 5,000万円以下 10,000円
5,000万円を超え 1億円以下 20,000円
1億円を超え 2億円以下 40,000円
2億円を超え 3億円以下 60,000円
3億円を超え 5億円以下 100,000円
5億円を超え 10億円以下 150,000円
10億円を超える 200,000円

印紙は振出人が貼付しなければなりません。このような印紙税の負担を軽減するために、手形を分割して発行することもあります。たとえば、5,500万円の支払をする際に、5,500万円の手形を1枚発行すれば20,000円の収入印紙が必要になりますが、5,000万円の手形と500万円の手形の2枚を発行すれば11,000円の収入印紙で済みます。

貼付した印紙の再利用を防ぐため、印章や署名により手形と印紙をまたぐように消印をしておかなければなりません。単に斜線を引いたり「印」の一文字を署名したりするだけでは、「印章や署名による消印」には該当しません。

一枚一枚に印紙を貼付し消印をするのは、手形の数が多いと大変な作業になります。そこで、印紙税を前納して、税務署長の承認を受けて印紙税納付計器を社内に設置し、この計器によって課税文書に納付印(スタンプ)を押す方法などが認められています。

また、決済の手段として、約束手形ではなく為替手形を用いる場合もあります。その場合、受取人が収入印紙の負担を負うことになります。

手形帳・小切手帳の管理は現金と同等

不正に持ち出されないよう厳格に管理されるべきものの代表例は「現金」ですが、手形・小切手も厳格な管理が必要という点では現金と同様です。手形・小切手は換金化が容易であることから、現金と同様不正に使用される危険性が高いからです。とりわけ、未使用の手形・小切手()は現金同様に厳格に管理すべきです。

 通常は手形帳・小切手帳に綴じ込まれていますが、手形・小切手発行機を使用している会社では綴じ込まれていない状態(単票)のまま管理する場合もあります。

例えば、手形帳や小切手帳が誰でも持ち出せるような場所に無造作に置いてあれば、不正に使用されるリスクが高まりますので、金庫にしまうとともに、金庫の鍵を厳重に管理(財務課長が常に携帯する等)しなければなりません。また、金庫にしまいこんだとしても、手形・小切手帳の管理を1人の担当者に任せていたのでは、その担当者が横領してしまうリスクは残されています。そこで、役員としては、こういった不正を防止するための内部統制を整備・運用していく必要があります。詳しくは次で解説します。

手形帳に関する内部統制の12のポイント

手形帳管理者と銀行届出印管理者が同一である場合、手形を共謀会社に振り出し、入金口座を当該管理者の管理下にある口座にしておけば、結果的に着服が可能となります。そのため、財務担当取締役としては手形帳に関して、現金と同様、厳格な内部統制を整備・運用しなければなりません。内部統制の基本は「担当者任せにしない」ことです。業務を担当者だけで完結させるのではなく、必ず担当者と承認者の2人以上で管理し、承認者の承認プロセスがないと業務が完結しないようにすることが重要となります。

手形に関する不正や誤謬を防止するためには、例えば、次のような統制が・・・

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小切手帳に関する内部統制の14のポイント

小切手を銀行に支払提示すれば、銀行は振出人の口座から支払いをします。つまり金額を間違えて多く記入してしまった小切手を交付してしまうと、そのまま出金されてしまうことになります。不正に発行された小切手も同様です。そのため、財務担当取締役としては小切手帳に関しても、現金や手形帳と同様に内部牽制の効いた厳格な内部統制を整備・運用する必要があります。

小切手に関する不正・誤謬を防止するためには、・・・

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一番望ましい支払手段は?

手形・小切手は、上述したように現物の管理に手間がかかること、手形は収入印紙の負担()があることから、流通量が年々減っています。また、万が一不渡りとなった時に銀行取引が停止してしまうことを考慮すると、手形払いを続けることのリスクもあります(不渡りについては「取引先が倒産してしまった」を参照してください)。

 発行時の負担だけでなく、受取側も領収書に貼付しなければなりません。領収書の印紙税についてはこちらの「売上代金の受取書の場合」を参照してください。

そこで手形・小切手以外の支払手段を検討してみましょう。その他の支払手段としては、・・・

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有害的記載事項や融通手形に注意

これまでは手形・小切手を支払手段として用いる場合の注意点を述べてきましたが、逆に手形・小切手を受け取る局面も少なくありません。その場合の注意点は次のとおりです。

まず、受け取った手形・小切手の表面や裏面をチェックし、・・・

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