連結財務諸表は親会社の財務諸表と子会社の財務諸表を“連結”することで作成されます。子会社は業績の良し悪しにかかわらず連結するのが原則ですが、業績が芳しくない子会社を連結すると連結グループとしての業績は悪化してしまいます。連結グループの業績アップに腐心する経営者としては、「グループの足を引っ張るような子会社の決算は連結決算に反映させたくない」といった考えがよぎることもあるでしょう。
子会社を連結決算の範囲から除くことを「連結外し」といいます。「連結外し」により、連結の範囲を恣意的に操作して粉飾決算を行うと、連結グループの財政状態や損益状況が歪められ、誤った財務報告を投資家に対して行うことになってしまいます。それを防ぐために、「連結外し」は原則として禁止されています(例外については「連結の範囲に含めてはいけない「例外」と含めなくてもいい「例外」」を参照してください)。それにもかかわらず、過去には米国におけるエンロンや、我が国におけるライブドア、日興コーディアルグループ等において、SPCを用いて、自社グループの連結決算が有利になるような恣意的な「連結外し」による粉飾事件が発覚しました。そのため、「連結外し」に対する会計監査の目は非常に厳しいものとなっています。役員としては、「連結外し」により、会計監査で不適正意見の表明または意見差控になり、ひいては上場廃止に至るリスクがあることを胸に刻んでおきましょう。
連結決算を理解するためには、まず子会社と関連会社の違いについて理解しておく必要があります。子会社とは、「財務および営業または事業の方針を決定する機関(株主総会、取締役会等)を、他の会社によって支配されている会社」を言います。一方、関連会社とは、「自社との関係で、人事、技術、取引、資本等によって、支配とはいわないまでも、意思決定に重大な影響力をもつことができる会社」を言います。ちなみに、関係会社という概念もあるので注意が必要です。関係会社とは、簡単に言ってしまうと、企業グループを構成する会社のうち自社以外の会社のことです。親会社(自社が他の会社の子会社の場合、当該他の会社)、子会社、関連会社、その他の関係会社(自社が他の会社の関連会社の場合、当該他の会社)が該当します。
冒頭で述べたように、連結財務諸表は親会社の財務諸表と子会社の財務諸表を“連結”して作成します。一方、関連会社は「子会社」ではありませんので、当該関連会社の財務諸表そのものがその関連会社に投資している会社(以下、投資会社)に連結されることはありません。しかし、関連会社の最終利益(損失)に投資会社の持分割合を乗じた分は、当該投資会社を親会社としたグループに帰属すべき利益(損失)と考えることができますので、これを連結決算で取り込むことになります。このように関連会社の最終利益(損失)を投資会社グループの連結決算に取り込む手法を「持分法」といいます。持分法は、最終利益(損失)のみを取り込むため、「一行連結」と呼ばれたりもします。
なお、持分法は関連会社に適用されることが一般的ですが、子会社であっても、金額的にも質的にも重要性がないため例外的に連結しないことが認められる子会社(非連結子会社)にも持分法が適用されます(非連結子会社および持分法の例外については後述します)。
したがって、親会社は連結財務諸表を作成する前提として、連結の範囲と持分法の適用範囲、すなわち自社グループの会社のうち、どの会社が「連結子会社」で、どの会社が「関連会社」で、どの会社が「非連結子会社」なのかを明確にしておく必要があります。そのため、毎期、連結の範囲と持分法の適用範囲を検討・確認することは非常に重要な作業と言えます。特に、新たに子会社や関連会社が増えた、もしくは子会社や関連会社の増資や売却等持分の変動があったり、役員の変更があったりして、親会社から見て子会社や関連会社の支配のあり方や影響力(支配力基準や影響力基準については後述します)に変動があった場合、連結決算において連結の範囲または持分法の適用範囲に含めるタイミングや除外するタイミングについて、十分に検討を行うことが必要になります。
- SPCや組合を使った“連結外し”は事実上不可能
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冒頭で述べたとおり、親会社は、原則としてすべての子会社を連結の範囲に含めなければなりません(連結財務諸表に関する会計基準第13項)。会社の形式をとるSPCのほか、民法上の組合や投資事業有限責任組合(LPS)等の組合についても、一定の要件を満たした場合には子会社と同様に連結決算に組み入れる必要があります。ここで言う「一定の要件」とは、財務および営業または事業の方針を決定する機関(株主総会、取締役会等)を支配していることです。この要件にしたがって連結の範囲に含めるかどうかを判断することを「支配力基準」と言います。組合の場合、株式会社における株主の議決権行使と異なり、各組合員が定期的に当該方針決定に関わっているかどうかを判別できないことが多いため、当該方針を決定できないことが明らかであると認められる場合(例えば、他の会社が組合を支配している場合や業務執行者が単に組合員によって決定された事業の方針を行っているに過ぎない場合)を除き、組合も連結の範囲に含めなければなりません。このように、支配力基準は厳格に適用されるので、SPCや組合を使った“連結外し”は基本的にはできないと考えてください。
また、関連会社かどうかの判定にあたっては、他の会社等(会社に準ずる事業体を含む)の財務・営業の方針決定に対して重要な影響力を与えることができるかどうかということが重要になります(影響力基準)。
子会社と関連会社の判定基準の違いをまとめたのが、次の表です。
子会社と関連会社の判定基準の違い
そして、それぞれの基準による具体的な判定方法は下記のとおりです(ここでは判定対象となる会社を「その会社」とします)。
<支配力基準>
(1)その会社の議決権の過半数を自己の計算において所有している場合
(2)その会社の議決権の40%以上、50%以下を自己の計算において所有し、かつ下記のいずれかに該当する場合
ア 「緊密な関係にある者が所有する議決権」とあわせて過半数を所有
イ 自社が影響を与えることができる人で、その階差の取締役会の構成員の過半数を占めている
ウ 自社とその会社との間で重要な財務および営業または事業の方針を決定する契約が交わされている
エ 自社や自社と緊密な関係にある者がその会社に融資(債務保証を含む)を行っている場合、その融資がその会社の資金調達額の総額の過半に達している
オ 上記のアからエ以外で、その会社の意思決定機関の支配が推測される事実があること
(3)「自社が有する議決権」と「緊密な関係にある者が有する議決権」を合わせると、その会社の議決権の過半数を所有し、かつ、上記のイ~オのいずれかに該当する場合
自己の計算 : 自社が資金を出したということ。名義は問わない。よって、名義は自社以外の他社(他人)であるものの、資金を出したのが自社であれば、それも含める。
緊密な関係にある者 : 自社と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があるため、議決権の行使の際に自社と同じ内容の議決権を行使すると認められる会社や人を指す。
<影響力基準>
(1)その会社の議決権の20%以上を自己の計算において所有している場合(*)
(2)その会社の議決権の15%以上、20%未満を自己の計算において所有し、かつ、下記のいずれかに該当する場合(*)
ア 自社が影響を与えることができる人が、代表取締役、取締役等に就任
イ その会社に重要な融資を実施
ウ その会社に重要な技術を提供
エ 重要な販売、仕入その他の営業上または事実上の取引があること
オ その他重要な影響を与えうることが推測される事実があること
(3)「自社が有する議決権」と「自己と緊密な関係にある者が有する議決権」と「自己の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者が有する議決権」を合わせると、その会社の議決権の20%以上を所有し、かつ、上記ア~オに該当する場合(*)
* 子会社を除きます。
連結すべきかどうかは「株式の保有比率」だけで決まると誤解している方が多いのですが、上記の判定方法を見れば分かるように、実際には「株式の保有比率」ではなく「議決権の比率」です。自己株式には議決権はないので、その会社が自己株式を保有していれば、自己株式を除外して議決権比率を判定します。
また、連結すべきかどうかは「議決権の比率」だけで決まるものではなく、「議決権の比率」にその他の要因も加味して決まることになります。すなわち、子会社の場合、議決権の比率に加えて、他の会社等(社団法人や投資事業有限責任組合など会社に準ずる事業体を含む。以下同じ)の意思決定機関(取締役会、社員会など)を支配しているかという観点からも、子会社かどうかの判定が行われます。例えば、他の会社の議決権所有割合が40%であったとしても、取締役会の過半数が自社から出向している従業員で占められている場合、他の会社は子会社と判定されます。
関連会社も同様です。例えば、他の会社の議決権を15%所有しており、他の会社にとって、販売取引等自社との取引割合が相当程度ある場合は、関連会社と判定されます。
なお、更生会社、破産会社その他これらに準ずる企業であって、かつ、有効な支配従属関係が存在しないと認められる企業は、そもそも子会社には該当しないものとして取り扱います(連結会計基準7項)。なぜなら、更生会社や破産会社の場合、管財人が会社の業務および財産を管理することになるので、たとえ議決権基準で100分の50を超えていても、有効な支配従属関係が存在しない(*)からです。なお、「その他これらに準ずる企業」とは、休眠会社等を指します。
* あえて言えば、管財人の支配従属下にあります。
一方、例えば清算中の株式会社のように、継続企業とは認められない企業であっても、特別清算ではなく親会社の役員が清算人を兼ねているようなケースでは、意思決定機関を支配していると言え、子会社に該当することになります。よって、原則として連結の範囲に含められることになります(*)。
* 下記の「連結の範囲に含めてはいけない「例外」と含めなくてもいい「例外」」の例外条項に該当して非連結子会社になる可能性はあります。
なお、関連会社もこれと同様の判断を行います(ただし、支配力基準ではなく影響力基準で判断します)。
- 連結の範囲に含めてはいけない「例外」と含めなくてもいい「例外」
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連結決算上、あくまですべての子会社を連結することが原則です。ただし、以下の場合には、例外的に子会社を連結の範囲に含めないものとされています。
1 支配が一時的である子会社
2 利害関係人の判断を著しく誤らせるおそれがある子会社
1の「支配が一時的である子会社」が連結の範囲から除かれる理由は、株式の取得が一時的で支配を目的としておらず、短期間の所有後に処分することが明らかな場合まで当該子会社を「短期間だけ」連結対象とすれば、かえって連結財務諸表の期間比較性を損なうことになるためです。たとえば、今期はたまたま所有議決権数が100分の50を超えたため「支配している」こととされたものの、前期は所有議決権数が100分の50以下で支配に該当しておらず、来期以降も相当の期間にわたって支配に該当しないことが確実に予定されているような場合、「支配が一時的である」として連結の範囲から除かれることになります。実務上は、「支配が一時的である」ことを明確にするために、親会社における株式取得の際の取締役会決議等で「支配が一時的である」ことも含めて決議するとともに、具体的な処分方法や時期まで計画しておくべきです。
2の「利害関係人の判断を著しく誤らせるおそれがある子会社」も、連結の範囲に含めないものとされていいます。「利害関係人の判断を著しく誤らせる」とは、事業の方針等を決定できない会社の財政状態や経営成績が、自社の連結財務諸表に含まれてしまうことで、財務諸表を利用する利害関係者の意思決定を誤らせてしまうような場合です。ただし、このパターンで連結の範囲に含めないとされるケースは限定的です。具体的にはリース会社の事例として「子会社が匿名組合契約方式による賃貸事業を行っている営業者であり、その子会社の資産および損益が子会社に実質的に帰属しない場合」などがあるようです。
以上は、連結の範囲に含めてはならないという例外でした。一方、連結の範囲に含めないことが認められるという例外もあります。それが、「重要性の乏しい子会社」という例外です。これは、連結の範囲に含めるかどうかは親会社が合理的に判断すればよいというものです。連結の範囲に含めるほどの重要性がないという判断に合理性があれば、連結対象から除くことができます。
これは、連結の範囲に含めるべき子会社の要件を形式的には満たしているものの、たとえ連結の範囲から除いてもその企業集団(連結グループ)の財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況に関する利害関係者の合理的な判断を妨げない程度に重要性が乏しい会社を指します(連結財務諸表規則5条第2項)。ここで言う「重要性に乏しい」に該当するかどうかの判断は、下表に示した当該子会社の特性ならびに少なくとも資産、売上高、利益、利益剰余金基準の4項目の影響度合いで判断することとなります(監査・保証実務委員会報告第52号「連結の範囲及び持分法の適用範囲に関する重要性の原則の適用等に係る監査上の取扱い」)。
<資産、売上高、利益および利益剰余金の基準>

<個々の子会社の特性や上記算式で計量できない要件>
連結の範囲から除こうとする子会社が複数ある時は、これらの子会社が全体として重要性が乏しいものでなければなりません。すなわち、上記の4項目の影響度合いは連結の範囲から除こうとする子会社全部のデータで判断することになります。
なお、連結の範囲から除かれる子会社は、翌連結会計年度以降も相当の期間にわたって「重要性が乏しい子会社」と認められるものである必要があります(連結財務諸表規則ガイドライン5-2③)。そうでなければ、連結の範囲が短期間で変わってしまい、連結財務諸表の期間比較性を損なうことになるからです。したがって、例えば当期においては「重要性が乏しい」状況にあるものの、来期に大幅な売上増加が見込まれて重要な子会社に該当することが見込まれる子会社は、連結の範囲に加える必要があります。
役員としては、資産、売上高、利益および利益剰余金基準の4項目の影響度合いを、小規模の子会社から順にあてはめて機械的に連結の範囲から除外する子会社を選定するのではなく、個々の子会社の特性や上記算式では計量できない要件にも配慮する必要があります。上記算式では計量できない要件は下記のとおりであり、この要件に該当する子会社は、質的に重要であるため連結の範囲から除外することはできないとされています。
<非連結子会社とすることができない会社>
1 連結財務諸表提出会社の中・長期の経営戦略上の重要な子会社
2 連結財務諸表提出会社の製造、販売、流通、財務等の業務を実質的に担っていると考えられる子会社。地域別販売会社、運送会社、品種別製造会社等の同業部門の複数の子会社は、原則としては、その子会社群全体を1社として判断する。
3 セグメント情報の開示に重要な影響を与える子会社
4 多額な含み損失や発生の可能性の高い重要な偶発事象を有している子会社
以上の基準により子会社であっても連結子会社とならないものを「非連結子会社」といいます。非連結子会社は「連結の範囲」からは除かれるものの、持分法の適用対象になるのが原則です。持分法を適用することで、投資簿価の修正を通じて、被投資会社の利益の持分相当額を取り込むことができ、連結しないことのデメリットを少しでも回復できるからです。もっとも、持分法の適用範囲に含めないことが認められる「例外」に該当すれば、持分法を適用しないことが認められます(次の「持分法の範囲に含めてはいけない「例外」と含めなくてもいい「例外」」を参照してください)。
- 持分法の範囲に含めてはいけない「例外」と含めなくてもいい「例外」
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関連会社に該当することになれば、持分法が適用されるのが原則です。また、「連結の範囲」から除かれた非連結子会社にも持分法が適用されるのが原則です。ただし、次の1または2に該当する場合には、関連会社や非連結子会社であったとしても、持分法は適用されません。
1 財務および営業または事業の方針の決定に対する影響が一時的であると認められる関連会社
2 持分法を適用することにより連結財務諸表提出会社の利害関係人の判断を著しく誤らせるおそれがあると認められる非連結子会社および関連会社
1の「影響が一時的である関連会社」が持分法から除かれる理由は、「支配が一時的である子会社」が連結の範囲から除かれる理由と同様で、「短期間だけ」持分法の対象とすれば、かえって連結財務諸表の期間比較性を損なうことになるためです。
また、2に該当することにより持分法を適用しないケースは限定的と考えられております。
以上は、持分法の適用範囲に含めてはならないという例外でした。一方、持分法の適用範囲に含めないことが認められる(すなわち、持分法の範囲に含めてもよいし、含めなくてもよい。どちらにするかは親会社が決めればよいという会社)という例外もあります。それが、「重要性の乏しい非連結子会社および関連会社」という例外です。この例外に該当するかどうかは、個々の非連結子会社および関連会社の特性ならびに少なくとも利益および利益剰余金の2項目に与える影響で判断することになります。
<利益および利益剰余金の基準>

もし、持分法の適用範囲から除こうとする非連結子会社および関連会社が複数ある場合は、これらの非連結子会社および関連会社の合計が全体として重要性の乏しいものでなければなりません。すなわち、上記の2項目の影響度合いは持分法の範囲から除こうとする非連結子会社および関連会社すべての合計数値で判断することになります。
役員としては、単純に利益および利益剰余金基準の4項目の影響度合いを、小規模の子会社から順にあてはめて機械的に持分法を適用しない会社を選定していくのではなく、個々の非連結子会社および関連会社の特性や上記算式で計量できない要件にも配慮しなければならないことに留意が必要です。
これまでの解説で、次のような連結会計基準の仕組みをご理解いただけたかと思います。
・すべての子会社を連結の範囲に入れることが原則であり、子会社を連結の範囲から除外することが認められるのはあくまで“例外”であり、そのための要件は会計基準により厳格に定められている
・この例外に該当する子会社であっても、次に持分法が適用されることが原則であり、持分法の適用範囲からも除外するためには、会計基準で定められた厳格な要件をクリアしなければならない
そして、連結外しは、この要件に該当するという事実を隠すことで行われます。
子会社を連結の範囲から除外することが許容されうるのは、「連結の範囲に入らないまで」に持分比率や影響力を下げた場合といった、きわめて限られた局面です。実際のところ、子会社を連結決算から除外するには、M&A等による子会社売却、子会社と他社との合併、あるいは子会社の清算が必要である、くらいに考えておいてよいでしょう。
そして、経理担当取締役としては、「非連結子会社とした理由」、「持分法を適用しない理由」について文書化をしておき、その他の取締役・監査役がその理由を検討できるようにしておくべきです。その他の取締役・監査役は「連結外し」が行われていないかという視点で、その理由を十分に検討しておきます。
また、経理担当取締役としては「取締役が個人的に保有している会社」や「取締役が役員に就任している会社」の全体像を把握しておき、連結する必要があるのではないかを継続的に検討していくべきです。そのためにも、関連当事者との取引を網羅的に把握する仕組みが必要となります(関連当事者との取引を網羅的に把握する仕組みについては「会社と関係が深い者との取引があった」の「関連当事者取引注記が必要になる取引とは?」を参照してください)。
そもそも役員としては、意図的に子会社を連結から外すというような小手先の対策に腐心するよりも、すべての子会社を連結するという前提に立ち、グループ全体の利益向上に努めるべきです。
- SPCへの不動産流動化でも子会社判定が“胆”
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ここで、親会社が不動産を売却したケースを考えてみましょう。売却価額が簿価を上回れば、親会社の単体決算では売却益が計上されます。さて、単体決算と同様、連結決算でも売却益を計上しようとすると、売却先が連結子会社に該当しないことが必須となります。なぜなら、もし売却先が連結子会社に該当してしまえば、親会社が連結子会社へ不動産を売却したことになり、連結財務諸表ではグループ内取引に該当してしまい、この取引における利益は、連結決算上、連結グループ全体としては実現していない利益(未実現利益)として控除しなければならないからです。
図1
上のケースは親会社の単体決算において売却益の計上が認められるケースですが、親会社の単体決算で売却益計上が認められないケースもあります。それは、不動産の流動化を目的としてSPC(特別目的会社)を用いるケースです。その際、売却先のSPCが売却元の企業の子会社と認定されれば、売却元では売却処理を行うことができません。SPCに売却した不動産をオフバランスすることが認められる要件は、「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」(会計制度委員会報告第15号)に定められています。同指針によると、この要件はSPCへのリスク負担割合(以下、理解を容易にするため、リスク負担割合イコール出資額に限定して解説します)が不動産の譲渡時の適正な価額の「おおむね5%の範囲」であれば、単体財務諸表においても売却が認められることになります(同指針13項)。そして、子会社や関連会社がSPCに出資している場合は、子会社または関連会社の出資も勘案することになります(同指針16項)。
流動化 : 資産の収益力を背景に、資産を切り離し資金調達を行うこと。
オフバランス : 売却により貸借対照表から外すこと
図2
上図において、不動産の時価が100とすると、親会社の出資額と子会社の出資額を合わせて“概ね5”の範囲であれば、売却処理が認められます。
しかし、“概ね5”の範囲を超えてしまうと、会計上売却処理が認められず、かわりに金融取引として会計処理をすることが必要になります。具体的には、下図のように親会社が投資家や金融機関からお金を借りただけ(不動産が生み出す収入やコストは親会社のまま)となります。
図3
不動産の流動化目的のSPCを利用して不動産の売却益を計上したものの、後になってそのSPCは実質子会社に該当するため、連結財務諸表だけでなく単体財務諸表における売却処理も不適切であったと認定された事例としては、2009年に問題となったB社の事例があります。
同社は、2002年8月、同社が14億7千万円を出資したSPCに自社不動産を290億円で売却しました。本事例では、B社からSPCへの出資額と不動産売却価額を比較すると、14億7千万円/290億円=5.06%でおおむね5%範囲内とする要件を満たしていたため、売却処理が行われました。ところが、T企画という会社もSPCへ75億5千万円出資していて、このT企画がB社の子会社に該当するのではないかということが問題になりました。つまり、図2で言えば、当初T企画は「投資家」として扱われていたものの、実際は「子会社」として見るべきではないかが問題になったわけです。
T企画は、表面上、B社とは親子関係がないように見られていましたが、T企画がSPCに出資した資金は、B社の社長が保有するB社株式を担保とした銀行借り入れにより調達されていました。さらにこれに加えて、B社の社長が実質的にT企画の全株式を保有していたことが判明し、結果として支配力基準(財務諸表等規則第8条第4項第3号および同項第2号二)により子会社と認定されてしまいました。
その結果、B社グループによるSPCへの出資額は90億円超となり、売却価額290億円の30%超となるため、不動産のオフバランス化すなわち売却処理は認められません。そのため、B社は2002年に行った不動産の売却取引を金融取引として処理をし直す(図3参照)ことになり、その結果、2002年8月期から2008年8月期の決算を訂正するに至りました。
このように不動産の流動化スキームを描く際に連結外しのテクニックが用いられることで、投資家の中に実質的な子会社が紛れ込んでいる可能性があります。不動産流動化の計画の是非を検討する際、役員としては、「投資家」の洗い出しとリスク負担割合の計算の妥当性を十分に検討すべきです。
- グループ会社株式の真の所有者は?
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もう一点、子会社の判定にあたって留意しなければならないのが「名義株」です。「名義株」とは、株主名簿上の名義と実質的な株式所有者の名義が一致していない株式のことをいいます。
「名義株」で問題となったものとして、S社の有価証券報告書の事例があります。これは株主であるK社のS社株式の所有割合を約43%と長年記載していたものの、実はK社の所有するS社株式は名義株を含めれば約65%であることが判明し、これが虚偽の記載に該当するのではないかとされた事例です。結局、S社は上場廃止とならざるをえなくなりました。この一連の騒動を受け、経営者は、「有価証券報告書等の適正性に関する確認書 」(現行の「有価証券報告書の記載内容に係る確認書」)や「適時開示に係る宣誓書」(現行の「取引所規則の遵守に関する確認書」)の提出が義務付けられ、役員の有価証券報告書の記載内容に対する過失責任が認定されやすくなりました。
このような事件を自社で起こさないためにも、役員としては、経営者や従業員のコンプライアンス意識の向上を図ることを目的としたコンプライアンス規程の整備、教育・研修による社内への浸透、内部監査体制の強化といった内部統制を整備運用すべきです。
- 連結子会社の数や非連結子会社の数を有価証券報告書で開示
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連結子会社の数が増減した場合には、有価証券報告書の第5【経理の状況】において、連結子会社の数、連結子会社の増減の内容等の注記が必要となります。
また、連結の対象となるSPCを保有している場合には、同様に注記が必要になります。SPCによっては、子会社に該当しないものと推定され、開示対象になるものもあります(これを「開示対象特別目的会社」と言います)。開示対象特別目的会社は、出資者等の子会社に該当しないものと推定されたSPCです。これらのSPCは、開示対象特別目的会社の概要、同社を利用した取引の概要および同社との取引金額等を注記しなければなりません。
なお、有価証券報告書の第1【企業の概況】、3【事業の内容】では、子会社、関係会社の内容(名称、住所、資本金、主要な事業の内容、持分比率、関係内容)を記載することになります。
開示担当取締役としては、有価証券報告書の提出に先立ち、有価証券報告書において上記の記載が正しくされていること、それぞれの項目に齟齬(例えば、3【事業の内容】と第5【経理の状況】に記載されている連結子会社数が異なっていること等)が生じていないことを確かめておかなければなりません。
(事例)A社 平成×年3月期有価証券報告書 第5【経理の状況】
【連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項】
| 1.連結の範囲に関する事項
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① 本連結財務諸表は、主要な子会社439社(前連結会計年度436社)を連結したものであります。
当連結会計年度の連結範囲の異動は、増加5社、減少2社で、主な増減は以下のとおりであります。
なお主要な連結子会社名は、「第1 企業の概況 4.関係会社の状況」に記載しているため省略しております。
(当年度取得・設立等により、連結子会社とした会社)…………………4社
(非連結子会社から連結子会社とした会社)……………………………… 1社
(清算・売却等により減少した会社)………………………………………1社
●●株式会社
(合併により減少した会社)………………………………………………… 1社
② 非連結子会社とした会社は、その総資産、売上高、当期純利益及び利益剰余金等からみて企業集団の財政状態及び経営成績に関する合理的な判断を妨げない程度に重要性の乏しい会社であります。主な内訳は以下のとおりであります。
●●株式会社 他
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| 2.持分法の適用に関する事項
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① 非連結子会社及び関連会社に対する投資につきましては、持分法を適用しており、適用会社数は18社(前連結会計年度15社)であります。
(関連会社)…………………18社
(主な持分法適用会社)
株式会社●●
●●株式会社 他
当連結会計年度の持分法適用会社の異動は、増加3社であります。
② 持分法を適用しない非連結子会社及び関連会社は、それぞれ当期純利益並びに利益剰余金等に及ぼす影響が軽微であるため、原価法により評価しております。主な内訳は以下のとおりであります。
●●株式会社 他
③●●株式会社の発行済株式の20%以上を所有しておりますが、同社は情報処理産業振興のため、●●株式会社等6社の共同出資により運営されている特殊な会社でありますので、関連会社としておりません。
④ 持分法適用会社の投資差額につきましては、連結子会社に準じて処理しております。
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| 3.連結子会社及び持分法適用会社の事業年度等に関する事項
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以下の12月期及び1月期決算会社を除き、年1回3月期決算であります。
(連結子会社)
●●有限公司(中国) 他28社
(持分法適用関連会社)…………4社
上記会社のうち、連結子会社の●●有限公司(中国)他15社については、連結決算日に正規の決算に準ずる手続による決算を行い連結しております。その他の会社については、連結決算日との差異期間における重要な取引の調整を行っております。
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