釣った魚の餌代の方が安い!?
「1:5の法則」―――これは何を意味するのかをご存じでしょうか?
1:5の法則とは、「新規得意先に販売するコストは既存得意先へ販売するコストの5倍かかる」というマーケティング用語です。このほか、「既存の顧客離れを5%改善すれば、利益が最低でも25%は改善される」ということを意味する「5:25の法則」という用語もあります。
いずれもその意図するところは、いうなれば「釣った魚には餌をあげない」のではダメだということです。要するに、既存顧客を継続的に囲い込んでおくことこそが重要であるとマーケティング論では説いているわけです。既存顧客の購入量や購入頻度を高める仕組みを構築して、既存顧客の離反率を抑えれば、コスト面でも(1:5の法則)、収益面でも(5:25の法則)会社にプラスの効果をもたらす可能性は高くなるでしょう。
そうであれば、既存の顧客を多数抱えている会社は新規取引先の開拓を止めて、既存顧客の維持だけに注力すべきではないかと考えてしまいがちですが、果たしてそれでよいのでしょうか?
既存顧客は減っていくものと考えるべき
既存顧客を維持していくことは、会社が安定した収益を獲得していくうえで極めて重要です。しかし、既存顧客のうち特定の顧客への依存度が高まると、その顧客の業績悪化に連動して自社の収益も悪化してしまうリスクがあります。例えば、2011年の東日本大震災によって大口顧客が被災し業績が大きく低迷した結果、それに連動して供給元の会社も大きなダメージを受けてしまったというケースが少なからずありました。
また、競合他社が多い分野で事業を展開している会社は、常に競合他社との価格競争にさらされているため、既存顧客への依存度が高ければ高いほど、今後も既存顧客との関係を継続したいと考え、既存顧客からの値下げ要請に応じざるを得なくなります。
しかし、たとえ値下げ要請に応じたとしても、競合他社が品質や機能の点で差別化を図り、顧客のニーズにより適合した製品を導入してきた場合には、いくら長年付き合いのある大口の顧客であっても、競合他社にシフトしてしまうリスクがあります。
会社の業種や事業内容、製品・サービスの差別化の程度、競合他社の状況にもよりますが、既存顧客を1社も離反させることなく維持していくことは難しく、毎年何%かの既存顧客は他社に流れていくのではないでしょうか。したがって、値下げ要請や既存顧客のロストに起因する収益の減少分を何らかの形で補っていかなければ、事業を継続していくことは難しくなります。
そこで新規取引先の開拓が必要となります。既存顧客の維持に努めつつも、新規取引先の開拓をバランスよく行うことは、会社の事業継続という長期的な視点から非常に重要です。
- 「営業手法」と「営業先」に要注意
- 与信限度枠の設定ミスで多額の貸倒れや取込み詐欺も
- 新規取引先の信用力を判断するポイントは?
- 与信限度枠の設定方法は自社に合ったものを
- 与信限度枠の承認時にやってはならないこと
- 定例会議で報告する仕組みを
- 反社チェックの必要性と反社条項
- 新規取引先の開拓に伴いコストの増加も
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2015/01/20 飲酒運転で検挙された従業員を解雇できるか
新年会が多い1月は飲酒運転が増えやすい時期でもある。飲酒運転に対して世間が厳しい目を向ける中、仮に自社の従業員が飲酒運転により検挙され、報道でもされようものなら、企業ブランドへのダメージは決して小さくない。
それだけに、飲酒運転を犯した従業員に対し会社が厳しい姿勢で臨むのは当然と言えるが、会社が従業員を懲戒する権利を有するのはあくまで「企業秩序を維持確保するため」(最三小S52.12.13判など)であり、企業秩序に関係のない“私的行為”は懲戒の対象とならないのが原則となっている。実際、「業務外におけるバイクの飲酒運転で事故を起こした従業員を会社が懲戒解雇した事案」について解雇を無効とした判決(福井地H22.12.20判)もある。また、そもそも運転免許を必要としない職務に就いている者は、運転免許がなくても仕事はできるため、たとえ飲酒運転により運転免許が取り消されたとしても、それを理由に解雇することはできない。
では、運転免許を必要とする職務に就いている者であれば運転免許が取り消されたことを理由として解雇できるかと言うと、・・・
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2015/01/19 非上場企業との組織再編が“裏口上場”に該当しないか検証を
上場企業にとって、優れた技術を持った企業や斬新なビジネスモデルを持つ非上場企業は合併などの組織再編の対象として魅力的だ。ただし、あくまで経営上の必要から行った非上場企業との組織再編が、証券取引所の上場規程上「不適当な合併等」に該当してしまうことがあり得る点には注意する必要がある。
「不適当な合併等」は、通称“裏口上場”とも言われる。「裏口」というとまっ先に裏口入学という言葉が思い浮かぶが、実際両者は似ている。裏口上場で、裏口入学における入学試験に相当するのが、上場に先立ち行われる証券取引所による「上場審査」だ。
上場するためには、本来であればこの上場審査を通過しなければならないが、裏口上場では既に上場している企業を利用して実質的な上場を達成することになる。例えば非上場企業が上場企業に吸収合併してもらえば、非上場企業の株主に対して上場企業の株式が割り当てられる結果、非上場企業の株式が上場企業の株式に“化ける”ことになる。つまり、非上場企業は、上場審査を受けることなく、上場を果たしたのと似たような状態になる。これが“裏口上場”と言われるゆえんだ。裏口上場の手法には、合併のほか、「株式交換」や「株式移転」といった組織再編が用いられることもある。
裏口上場が起きる背景には、証券取引所の厳しい上場審査により上場を許されない企業が少なくないという事情がある。“表玄関”からは株式市場に入れない非上場企業が“裏口”に回るというわけだ。ただ、裏口上場が放置されれば、上場を目指す企業の多くが厳しい上場審査を避け、裏口上場を選択しかねない。そうなれば、株式市場に“不良品”が多数流通することになり、株式市場は信頼を失うだろう。
そこで証券取引所は、裏口上場を「不適当な合併等」と位置付け(東京証券取引所の場合、有価証券上場規程601条1項9号)、上場企業が「不適当な合併等」を行った場合には改めて上場審査に準じた審査を行い、これを通過しなければ、上場廃止にするというルールを設けている。
「不適当な合併等」とは、例えば自社よりも規模の大きな非上場企業を吸収合併した場合のように、上場企業が実質的な存続企業とは言えない合併などの組織再編を指す。この場合、規模の大きい企業が存続企業になるのが通常であることから(規模の小さい企業が存続企業になるのは不自然)、たとえ形式的には上場企業が存続企業であっても、非上場企業を実質的な存続企業として、上場審査に準じた審査を行うことになる。
実際、「不適当な合併等」を理由に、これまで10社以上の上場企業が上場廃止になっている。最近の事例では、上場企業の株式会社FXプライムbyGMOが非上場企業のGMOクリックホールディングス株式会社と平成27年4月1日に行う株式交換が「不適当な合併等」に当たると判断されている。
もっとも、証券取引所がこのような措置をとるのは、「不適当な合併等」として類型化されたものに該当した場合に限られる。すなわち、「不適当な合併等」に該当しないケースでは、たとえその真意が裏口上場にあったとしても、証券取引所の審査の対象にならない。外観からは通常の合併や株式交換等と区別が付かないからだ(「裏口上場します」と宣言して裏口上場する企業などない)。例えば、ある非上場企業が、自社よりも規模の大きな上場企業に吸収合併される場合などは、たとえその真意が裏口上場にあったとしても、証券取引所側としては審査する機会がないのである。
逆に言えば、上場企業があくまで経営上の必要から行った非上場企業との組織再編が、裏口上場の意図など全くないにもかかわらず、形式的に「不適当な合併等」に該当してしまう場合があり得ることになる。仮に「不適当な合併等」に当たると判断されれば、・・・
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2015/01/19 非上場企業との組織再編が“裏口上場”に該当しないか検証を(会員限定)
上場企業にとって、優れた技術を持った企業や斬新なビジネスモデルを持つ非上場企業は合併などの組織再編の対象として魅力的だ。ただし、あくまで経営上の必要から行った非上場企業との組織再編が、証券取引所の上場規程上「不適当な合併等」に該当してしまうことがあり得る点には注意する必要がある。
「不適当な合併等」は、通称“裏口上場”とも言われる。「裏口」というとまっ先に裏口入学という言葉が思い浮かぶが、実際両者は似ている。裏口上場で、裏口入学における入学試験に相当するのが、上場に先立ち行われる証券取引所による「上場審査」だ。
上場するためには、本来であればこの上場審査を通過しなければならないが、裏口上場では既に上場している企業を利用して実質的な上場を達成することになる。例えば非上場企業が上場企業に吸収合併してもらえば、非上場企業の株主に対して上場企業の株式が割り当てられる結果、非上場企業の株式が上場企業の株式に“化ける”ことになる。つまり、非上場企業は、上場審査を受けることなく、上場を果たしたのと似たような状態になる。これが“裏口上場”と言われるゆえんだ。裏口上場の手法には、合併のほか、「株式交換」や「株式移転」といった組織再編が用いられることもある。
裏口上場が起きる背景には、証券取引所の厳しい上場審査により上場を許されない企業が少なくないという事情がある。“表玄関”からは株式市場に入れない非上場企業が“裏口”に回るというわけだ。ただ、裏口上場が放置されれば、上場を目指す企業の多くが厳しい上場審査を避け、裏口上場を選択しかねない。そうなれば、株式市場に“不良品”が多数流通することになり、株式市場は信頼を失うだろう。
そこで証券取引所は、裏口上場を「不適当な合併等」と位置付け(東京証券取引所の場合、有価証券上場規程601条1項9号)、上場企業が「不適当な合併等」を行った場合には改めて上場審査に準じた審査を行い、これを通過しなければ、上場廃止にするというルールを設けている。
「不適当な合併等」とは、例えば自社よりも規模の大きな非上場企業を吸収合併した場合のように、上場企業が実質的な存続企業とは言えない組織再編を指す。この場合、規模の大きい企業が存続企業になるのが通常であることから(規模の小さい企業が存続企業になるのは不自然)、たとえ形式的には上場企業が存続企業であっても、非上場企業を実質的な存続企業として、上場審査に準じた審査を行うことになる。
実際、「不適当な合併等」を理由に、これまで10社以上の上場企業が上場廃止になっている。最近の事例では、上場企業の株式会社FXプライムbyGMOが非上場企業のGMOクリックホールディングス株式会社と平成27年4月1日に行う株式交換が「不適当な合併等」に当たると判断されている。
もっとも、証券取引所がこのような措置をとるのは、「不適当な合併等」として類型化されたものに該当した場合に限られる。すなわち、「不適当な合併等」に該当しないケースでは、たとえその真意が裏口上場にあったとしても、証券取引所の審査の対象にならない。外観からは通常の合併や株式交換等と区別が付かないからだ(「裏口上場します」と宣言して裏口上場する企業などない)。例えば、ある非上場企業が、自社よりも規模の大きな上場企業に吸収合併される場合などは、たとえその真意が裏口上場にあったとしても、証券取引所側としては審査する機会がないのである。
逆に言えば、上場企業があくまで経営上の必要から行った非上場企業との組織再編が、裏口上場の意図など全くないにもかかわらず、形式的に「不適当な合併等」に該当してしまう場合があり得ることになる。仮に「不適当な合併等」に当たると判断されれば、改めて上場審査に準じた審査を受けなければならなくなり、もしもその審査に通過しなければ、上場廃止になってしまう。上場企業は「上場」というプレミアムの分だけ信用が増しており、上場廃止になってしまえばその分だけ企業価値が棄損する。また、投資家が保有株式を換金する市場がなくなることで、投資家にも迷惑をかけてしまう。上場企業の役員が非上場企業との組織再編の是非を判断する場合には、上場廃止になるリスクがないかどうかを慎重に確認する必要がある。
参考文献:『検証裏口上場―不適当合併等の事例分析』(鈴木広樹著、清文社)
※「不適当な合併等」に当たると判断された多くの事例が検証されており、証券取引所の考え方が分かる好著である。
2015/01/18 チェックリスト:子会社に役員を送り込みたい(会員限定)
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| チェック事項 | 備考 | 対応未了 | 対応済 |
|---|---|---|---|
| 買収防衛策の導入(継続)時に、株主総会における宣言的決議で少なくとも過半数の賛同を得たか。 | 賛同を得られなかった場合には、買収防衛策を発動したとしても、裁判所により新株予約権の発行などが差し止められる可能性がある。 | ||
| 議決権行使助言会社・ISSが設ける買収防衛策への賛成推奨基準を満たしているか。 | 取締役会に占める独立社外取締役の比率などを設けている(詳細は本文参照)。 | ||
| 自社の株価はTOPIXと比較してどの程度のパフォーマンスを上げているか確認したか。 | 株価パフォーマンスがTOPIXを大きく下回る状況で買収防衛の継続議案を株主総会に諮ったところ、否決された事例がある。 | ||
| 大会社である取締役会設置会社では、取締役会が「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備(会社法362条4項6号)」を決定する際に、「当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制」(会社法施行規則100条1項5号)を決定しているか。 | 大会社とは、資本金5億円または負債総額200億円以上の株式会社を指す。 具体的には、次のような事項を決定することが多い。 ・ 子会社における業務の適正のための議決権行使の方針、親会社の監査役と子会社の監査役等の連携に関する仕組み ・ 親会社による不当な圧力に関する予防・対処方法、親子会社間の兼任役員の忠実義務に関する仕組み |
||
| 子会社管理の観点から、親会社の方針を伝達するルートや子会社からの情報を入手するルートを構築しているか。 | 親会社の方針を伝達するルートや子会社からの非会計情報の入手ルート確保のために子会社へ役員を送り込むケースが多い。 また、子会社の会計情報の入手のために基幹系システムや会計ソフトの統一が考えられる。 |
||
| 役員の就任に際しては、兼任禁止に該当していないかどうかの検討を行ったか。 | 監査役の兼任禁止は以下のとおり。 ・当該会社の取締役、支配人その他の使用人 ・子会社の取締役、支配人その他の使用人、会計参与、執行役 (親会社の監査役が海外子会社の取締役を兼任することも認められないと考えられる) |
||
| 親会社の取締役が子会社の監査役を兼ねることは、できる限り避けているか。 | 我が国の会社法上は禁止されていないものの、諸外国で禁止されている例もある。 | ||
| 親子会社双方の取締役を兼ねている者に対し、子会社側から報酬を支払う場合、その根拠について熟考したか。 | 子会社から役員報酬は親会社株主の目が届きにくいという問題点がある。 |
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2015/01/18 【ガバナンスのあり方】子会社に役員を送り込みたい
グループ経営における子会社管理の重要性
我が国では、財務報告における主役の座が単体財務諸表から連結財務諸表に代わってから、かなりの時間が経過し、その間に純粋持株会社制度や連結納税制度などが導入されたことに伴い、グループ経営や連結経営といった経営手法がずいぶん浸透したと言えます。そのような中、近時の経済不況とグローバル化により、個々の企業が自主性や独自性を保ちつつ、グループ経営によってグループ全体で人材や情報を有効活用することで競争力を高めることの重要性が再認識されています。
その一方で、グループ企業内で不祥事が発生すると、それがグループ全体の信用に影響することから、親会社だけでなくグループ全体でしっかりとした管理体制を構築することが必要です。会社法でも、大会社(資本金5億円または負債総額200億円以上の株式会社)である取締役会設置会社や指名委員会等設置会社には、取締役会が「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備(会社法362条4項6号)」を決定することが求められています。この「その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制」には「当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制」(会社法施行規則100条1項5号)が含まれています。そのため、親会社の役員にとっては、自社の管理体制だけでなく、「企業集団」という視点から子会社の管理体制にまで気を配る必要があります。
この「当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制」ですが、次のようなことを決定する会社が多く見受けられます。
・ 子会社における業務の適正のための議決権行使の方針、親会社の監査役と子会社の監査役等の連携に関する仕組み
・ 親会社による不当な圧力に関する予防・対処方法、親子会社間の兼任役員の忠実義務に関する仕組み
もっとも、実際のところ、子会社は親会社と異なり、人員や予算が十分でないことから、子会社管理をどのように行うべきかについて頭を悩ませることも多いのではないでしょうか。とりわけ、別法人となると情報が遮断されがちなので、情報の入手経路も考慮する必要があります。会計ソフトの統一により会計情報の定期的な入手は可能になっても、非会計情報の入手は別に手当てしなければなりません。そこで、多くの企業が活用しているのが、「子会社への役員送り込み」です。送り込まれた親会社の役員・従業員は、子会社の役員として親会社の方針を確実に伝達するとともに、子会社から非会計情報を含めた情報を親会社に吸い上げるための役割を期待されることになります。
そこで、ここでは親会社が子会社に役員・従業員を役員として送り込む場面にフォーカスし、その場合に生じうる問題点について、検討してみます。
子会社の取締役や監査役は誰が選ぶ?
100パーセント親子会社関係にあるような場合には、子会社の役員を誰にするのかを実質的に親会社(の経営陣)が決定し、子会社の取締役会はその方針に従った会社提案の議案を株主総会に上程することになるでしょう。
しかし、親子会社関係も様々ですので、中には親会社が独自に自ら役員候補を提案したいというケースもあることでしょう。この場合には、親会社は株主として株主提案をして役員候補を株主総会に上程することになります。具体的には、役員選任の議題が株主総会にかけられることが決定している場合には、株主総会の日の8週間前までに具体的な役員候補についての議案を提案し(会社法305条)、株主総会に役員選任の議題がかけられることが確定していない場合には、株主総会の日の8週間前までに役員の選任の議題と具体的な役員候補についての議案を提案することになります(会社法303条、305条)。さらには、実際には稀であるとは思われますが、株主総会当日に修正動議として具体的な役員候補についての議案の提案を行なうこともできます(会社法304条)。
以下に、役員候補の選任議案の記載例を挙げておきます。
(記載例)
第●号議案 取締役●名選任の件
本総会終結時をもって取締役●名が任期満了となりますので、取締役●名の選任をお願いします。
その候補者は、次のとおりであります。
| 候補者番号 | 氏名 (生年月日) |
略歴、地位及び担当並びに他の法人等の代表状況 | 所有する株式数 |
| 1 | ●●株 | ||
| 2 | ●●株 |
子会社の役員との兼任、どれがOKでどれがNG?
親子会社においては、それぞれに所属する人材を効率よく適材適所に配置させるため、双方の役員を同一人物が兼任することが多くあります。以下では、どのような場合に兼任が認められるのか、またその場合に生じる問題点について、取締役と監査役それぞれに分けて検討します。
(取締役の兼任)
親子会社間で同一人物が取締役を兼任することは、会社法上は・・・
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- 役員の兼任の場合の報酬はどちらが払う?
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2015/01/18 【ガバナンスのあり方】子会社に役員を送り込みたい(会員限定)
グループ経営における子会社管理の重要性
我が国では、財務報告における主役の座が単体財務諸表から連結財務諸表に代わってから、かなりの時間が経過し、その間に純粋持株会社制度や連結納税制度などが導入されたことに伴い、グループ経営や連結経営といった経営手法がずいぶん浸透したと言えます。そのような中、近時の経済不況とグローバル化により、グループ経営によって個々の企業が自主性や独自性を保ちつつ、グループ全体で人材や情報を有効活用することにより競争力を高めることの重要性が再認識されています。
その一方で、グループ企業内で不祥事が発生すると、それがグループ全体の信用に影響することから、グループ経営をより実効化させるためには、グループ全体でしっかりとした管理体制を構築することが必要です。この点、大会社(資本金5億円または負債総額200億円以上の株式会社)である取締役会設置会社や指名委員会等設置会社では、会社法により、取締役会が「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備(会社法362条4項6号)」を決定することが求められています。この「その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制」には「当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制」(会社法施行規則100条1項5号)が含まれています。そのため、親会社の役員にとっては、自社の管理体制だけでなく、「企業集団」という視点から子会社の管理体制にまで気を配る必要があります。
この「当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制」ですが、次のようなことを決定する会社が多く見受けられます。
・ 子会社における業務の適正のための議決権行使の方針、親会社の監査役と子会社の監査役等の連携に関する仕組み
・ 親会社による不当な圧力に関する予防・対処方法、親子会社間の兼任役員の忠実義務に関する仕組み
もっとも、実際のところ、子会社は親会社と異なり、人員や予算が十分でないことから、子会社管理をどのように行うべきかについて頭を悩ませることも多いのではないでしょうか。とりわけ、別法人となると情報が遮断されがちなので、情報の入手経路も考慮する必要があります。会計ソフトの統一により会計情報の定期的な入手は可能になっても、非会計情報の入手は別に手当てしなければなりません。そこで、多くの企業が活用しているのが、「子会社への役員送り込み」です。送り込まれた役員は、親会社の方針を確実に伝達するとともに、子会社から非会計情報を含めた情報を親会社に吸い上げるための役割を期待されることになります。
そこで、ここでは親会社が子会社に役員を送り込む場面にフォーカスし、その場合に生じうる問題点について、検討してみます。
子会社の取締役や監査役は誰が選ぶ?
100パーセント親子会社関係にあるような場合には、子会社の役員を誰にするのかを実質的に親会社(の経営陣)が決定し、子会社の取締役会はその方針に従った会社提案の議案を株主総会に上程することになるでしょう。
しかし、親子会社関係も様々ですので、中には親会社が独自に自ら役員候補を提案したいというケースもあることでしょう。この場合には、親会社は株主として株主提案をして役員候補を株主総会に上程することになります。具体的には、役員選任の議題が株主総会にかけられることが決定している場合には、株主総会の日の8週間前までに具体的な役員候補についての議案を提案し(会社法305条)、株主総会に役員選任の議題がかけられることが確定していない場合には、株主総会の日の8週間前までに役員の選任の議題と具体的な役員候補についての議案を提案することになります(会社法303条、305条)。さらには、実際には稀であるとは思われますが、株主総会当日に修正動議として具体的な役員候補についての議案の提案を行なうこともできます(会社法304条)。
以下に、役員候補の選任議案の記載例を挙げておきます。
(記載例)
第●号議案 取締役●名選任の件
本総会終結時をもって取締役●名が任期満了となりますので、取締役●名の選任をお願いします。
その候補者は、次のとおりであります。
| 候補者番号 | 氏名 (生年月日) |
略歴、地位及び担当並びに他の法人等の代表状況 | 所有する株式数 |
| 1 | ●●株 | ||
| 2 | ●●株 |
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2015/01/16 変革著しい三菱重工と富士重工が“模擬エンゲージメント”で投資家と対話
昨年(2014年)2月に導入されたスチュワードシップ・コード、そして今年6月1日に導入される予定のコーポレートガバナンス・コードが“両輪”となり、今後企業と投資家の対話(エンゲージメント)が益々加速していくのは間違いないが、実際にどのような形でエンゲージメントが行われるのか(行われるべきなのか)、企業はもちろん、国内機関投資家でさえも模索中というのが現状だろう。
こうした中、経済産業省内に設置されている「投資家フォーラム作業部会」は、来月(2015年2月)27日に、“模擬エンゲージメント”と言える「企業と投資家による持続的な価値創造を⽬指して 〜スチュワードシップの実践〜」と題した対話シンポジウムを開催する。
2014年12月10日のニュース「機関投資家が企業に投げかけたい質問の一覧が明らかに」でもお伝えしたとおり、「投資家フォーラム」とは、投資家が企業との対話に向けた実力を高めるために、投資家同士で知識や経験を共有したり、議論や情報発信等をしたりできるプラットフォームで、日本版スチュワードシップ・コードや伊藤レポートでその設置が推奨されているもの。現在、作業部会が設置準備を行っているところだが、メンバーは巨額資金を動かす有力資産運用会社に所属する者が中心となるため、今後その影響力は大きなものになると見込まれる。
今回の“模擬エンゲージメント”は、企業や投資家の 「あるべき対話」の参考になればとの趣旨で開催されるものであり、「模擬」と言ってもその内容はかなり実践的なものとなりそうだ。これは、今回投資家の対話相手として、・・・
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2015/01/16 変革著しい三菱重工と富士重工が“模擬エンゲージメント”で投資家と対話(会員限定)
昨年(2014年)2月に導入されたスチュワードシップ・コード、そして今年6月1日に導入される予定のコーポレートガバナンス・コードが“両輪”となり、今後企業と投資家の対話(エンゲージメント)が益々加速していくのは間違いないが、実際にどのような形でエンゲージメントが行われるのか(行われるべきなのか)、企業はもちろん、国内機関投資家でさえも模索中というのが現状だろう。
こうした中、経済産業省内に設置されている「投資家フォーラム作業部会」は、来月(2015年2月)27日に、“模擬エンゲージメント”と言える「企業と投資家による持続的な価値創造を⽬指して 〜スチュワードシップの実践〜」と題した対話シンポジウムを開催する。
2014年12月10日のニュース「機関投資家が企業に投げかけたい質問の一覧が明らかに」でもお伝えしたとおり、「投資家フォーラム」とは、投資家が企業との対話に向けた実力を高めるために、投資家同士で知識や経験を共有したり、議論や情報発信等をしたりできるプラットフォームで、日本版スチュワードシップ・コードや伊藤レポートでその設置が推奨されているもの。現在、作業部会が設置準備を行っているところだが、メンバーは巨額資金を動かす有力資産運用会社に所属する者が中心となるため、今後その影響力は大きなものになると見込まれる。
今回の“模擬エンゲージメント”は、企業や投資家の 「あるべき対話」の参考になればとの趣旨で開催されるものであり、「模擬」と言ってもその内容はかなり実践的なものとなりそうだ。これは、今回投資家の対話相手として、近年経営戦略に大きな変化が見られる三菱重工業社(以下、三菱重工)と富士重工業社(以下、富士重工)が選ばれている点からも想像できる。三菱重工は従来の“自前主義”を捨て、火力発電事業を日立製作所と統合するなど、変革の真っただ中にある。一方の富士重工は、北米での好調な販売や国内中心の生産体制に起因する円安の恩恵などにより好業績を維持しているが、自己資本比率の増加によるROEの低下や中国など北米以外のグローバル戦略などの課題も指摘されている。投資家フォーラム作業部会は昨年(2014年)12月、機関投資家が企業に質問したい事項をまとめたペーパー「企業経営者と長期投資家の実りある対話のために」を公表したが、投資家にとっては聞きたいことが山のようにあると思われる両社とのエンゲージメントであれば、ペーパーを離れ純粋に投資者としての視点から、興味深い質問が“アドリブ”でどんどん出て来ることになりそうだ。
ちなみに、登壇するのは、三菱重工が「グループ戦略推進室長 兼 戦略企画部長」の 小口正範氏、富士重工が「取締役専務執行役員」の高橋充氏となっている。小口氏は三菱重工のグローバル戦略の企画担当者、高橋氏は富士重工のCFOであり、実際のエンゲージメントでも機関投資家等に対峙することになると見られるだけに、リアリティのある対話が期待できる。企業が今回の模擬エンゲージメントに(聴講者として)参加するのであれば、今後のためにも投資家対応担当部署から人を出すべきだろう。
一方、投資家側は投資家フォーラム作業部会のメンバーが3人ずつ、それぞれ三菱重工と富士重工の質問者になる模様。
エンゲージメントは近い将来どの上場企業にも十分に起こり得るだけに、必見のイベントとなりそうだ。
2015/01/15 (新用語・難解用語)ROIC
「Return On Invested Capital」の略で、日本語では「投下資本利益率」と呼ばれる。文字通り、「企業が投資した資金に対してどれだけ効率的に利益を上げているか」という資本効率を表す指標である。
資本効率を表わす指標というと、企業の自己資本に対する当期純利益の割合であるROE(Return On Equity=自己資本利益率)を思い浮かべる向きも多いだろう。ROEは機関投資家が最も重視する指標の1つだが、実は2つの問題点がある。具体的に説明しよう。
ROEは下記の算式により算出される。
ROE=純利益 ÷ 自己資本
自己資本は企業に対する株主の持分であるため、ROEは「企業が株主から調達した資金をどの程度効率的に使って利益を上げたか」を表す指標と言える。ROEが低い場合、株主は「企業が資金を効率的に使っていない」と判断し、配当や自己株式取得による株主還元を要求することがある。
このROEには、以下のような問題点がある。・・・
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