一橋大学大学院商学研究科 准教授・日本IR協議会 客員研究員
円谷 昭一
東京証券取引所(東証)は2月24日、今年度で4回目となる企業価値向上表彰を行ったが、今回初めて上位企業49社の個別企業名を公表した。
企業価値向上表彰の審査プロセスは、まず第一次選抜で東証の全上場会社を対象にエクイティ・スプレッド(ROE-自己資本コスト率)の平均値および成長率が高い400社を選定する。第二次選抜ではこの400社に対して簡易アンケート調査が実施され、回答内容によってさらに上位50社が選ばれる。さらにこの50社に対して詳細アンケート調査が実施され、受賞対象となるファイナリスト数社が選ばれる。最後にこのファイナリスト企業の経営陣に対して選定委員がヒアリングを実施して表彰企業を決定するという流れとなっている。
第3回までは最終的に表彰された企業名しか公表されていなかったが、今年は第二次審査(詳細アンケート調査)に進んだ49社の個別企業名が公表されている。市場関係者などからの公表要望を受けてのことだという。
また、第一次選抜でのスクリーニング基準についても、前回まではROEが基準となっていたが、今回からエクイティ・スプレッドに変更されている。単にROEが単に高い企業が選ばれるのではなく、各社の自己資本コスト率の違いをスクリーニングに反映させることでより説得力のある選抜基準にしようというのが変更の趣旨である。
企業名が公表された49社のROEの平均は20.57%であり、これは東証1・2部全上場会社平均の7.16%を大きく上回る。「純利益 ÷ 自己資本」により算出されるROEは下記の算式に分解できるが(これをデュポン式という)、この算式からも分かるように、財務レバレッジが大きくなればROEは高くなる。このため、マスコミ報道等では「財務レバレッジを効かせた企業が高ROEを達成している」と指摘されることもあるが、この49社についてはそうは言えない。・・・
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