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TPP著作権条項が企業に及ぼす“隠れたインパクト”

TPP協定(環太平洋パートナーシップ協定)の項目の一つである「著作権」関係条項に対しては、著作権の保護期間の延長や非親告罪化といった点を中心に、協議段階から多くの批判が寄せられていたが、2015年11月24日のニュース「著作権のTPP、“青空文庫問題”は解決も「非親告罪化」で新たな懸念」でもお伝えしたとおり、現在では、「青空文庫やコミックマーケット(コミケ)といった草の根的な活動への影響は大きくない」という理解が広がり、状況は落ち着きを見せている。その背景には、協定の批准を急ぐ政府筋はもちろん、協定締結に向け脅威と目されていた権利者団体までもが“火消し”に走ったということがある。この点は、政府の知的財産戦略本部が11月24日に開催した会合で、安倍首相がわざわざ「二次創作が萎縮しないよう留意する」と強調したことからもうかがえるところだが、これをもってTPP著作権関係条項が企業にもたらしかねないリスクが消えたわけではない。

親告罪 : 被害者による訴えがなければ刑事訴追ができない犯罪類型。

日本の著作権法は、著作権者の利益への影響を個別に考慮することなく、一定の行為類型に該当すれば「著作権侵害」となるという考え方に則って作られている。現段階では、「著作権法によって阻害されるべきではない活動(二次創作)」の存在が関係者間で幅広く確認されたに過ぎない。今後、TPP協定の中に盛り込まれている「非親告罪化の対象を、市場との関連において当該著作権者等の利益に実質的かつ有害な影響を及ぼすものに“限定”する」というセーフガード規定の趣旨を、具体的な条文として著作権法の中に取り込む過程では、かなり難しい問題が出てくることが予想される。著作物を利用する側への“好意的な視線”は、あくまで既存の著作物を元に新たな著作物を創作(二次創作)する場面に対してのみ向けられており、それ以外の著作物の利用行為に関して、利用者側のリスクが増している状況に変わりがない、ということを企業は認識しておく必要がある。

例えば、会社の業務の中では、・・・

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