WEBサイトや雑誌等の広告やチラシ、商品のパッケージなどに、利用者満足度や売上・品質などが「No.1」「日本一」「第一位」であることを強調した金メダルやトロフィーのようなデザインのマークを一度は目にしたことがあるだろう。
これらは、“No.1表示”(「No.1広告」とも言う。以下、No.1表示で統一)と称されるPR手法であり、商品・サービスに対する顧客の信頼感を高めるには抜群の効果があると言われているものの、その実態はマーケティング調査会社により実施された不適切な調査による結果に基づいていることが多い(不適切な調査の具体例については2023年11月8日のニュース「“No.1広告”に潜む闇」を参照)。
特に問題が多いのが、「イメージ調査」を用いた「第三者の主観的評価を指標とするNo.1表示」だ。イメージ調査とは、アンケートの回答者に対して、対象商品等や、これと比較する商品等を提供する各事業者のウェブサイトのURLを示し、当該ウェブサイトの閲覧を促した上で、例えば、「ご覧いただいたサイトの中で、「サポートの手厚さ満足度が高い○○」だと思うものを、すべて選んでください。」といった質問を投げかける調査のことである(消費者庁が2024年9月26日に公表した「No.1表示に関する実態調査報告書」の14ページ)。通常、回答者は、対象商品等や、比較対象とされている同種又は類似の商品等の利用経験の有無を問わずに集められる。つまり、イメージ調査は実際のユーザーでなくても回答できるようになっている。この点で、イメージ調査とは「実際のサポートの手厚さ」について回答を求めるのではなく、「サイトを見てサポートの手厚さの満足度が高いという印象(イメージ)を持ったかどうか」について回答を求めるものに過ぎない。換言すると、イメージ調査では実際のユーザーでなくても回答できる質問しか用意されていない。このようなイメージ調査のカラクリを知れば、「イメージ調査を用いたNo.1表示」の胡散臭さに気付くはずだが、「イメージ調査」とはどういった調査なのかが広く知られていないことから、下記のような「イメージ調査を用いたNo.1表示」が横行しているのが現状だ。
消費者庁の実態調査(消費者意識調査)において、この広告を見た者に「これは実際の利用者に調査をしていると思うか」と尋ねたところ、いずれも約半数の者が「実際の利用者に調査をしている」と思ったと回答している。つまり、これらの広告は消費者の半数を騙す広告と言える。
広告主によっては、下記のような注記を付している場合もある。
<注記の例> ① サイトイメージ調査 ② 本調査はサイトのイメージをもとにアンケートを実施しています。 ③ 本ブランドの利用有無は聴取していません。 |
しかし、このような注記を付しても、表示内容と調査結果が適切に対応するようになるわけではない。
また、「高評価%表示」も消費者を騙す手法の一つだ。「高評価%表示」とは、商品等の品質や規格の優良性を直接示すものではないが、「他者からの好意的な評価を多数(例えば「90%」など)獲得している商品等であること」を示す表示であり、具体例としては下記のようなものがある(「No.1表示に関する実態調査報告書」の22ページ)。
消費者庁の実態調査(消費者意識調査)によると、この広告を見た者のうち「G商品は、医師の知見により、専門的な根拠や裏付けがあると思う」または「G商品の品質・内容(例えば、効果効能等)に関する客観的なデータを元に、調査を行ったと思う」と回答した者が約5割いたとされる。
しかし、実際に行われた調査が例えば以下のようなものであった場合には、当該表示との関係で合理的な根拠があるとはいえず、景品表示法上問題となるおそれがある(「No.1表示に関する実態調査報告書」の23ページ)。
① 調査回答者が医師かどうかを自己申告により確認するだけで、医師であることを客観的に担保できていない場合
② 調査対象者である医師の専門分野(専門の診療科など)が、対象商品等を評価するに当たって必要な専門的知見と対応していない場合
③ 調査対象者である医師が、回答に際し、調査会社等から、対象商品等の品質・内容について合理的な根拠がない情報の提供を受けている場合(例えば、「△△試験の結果、この商品には○○の効果がある」「この商品は安全性について○○の認定を受けている」等の情報が提供されているが、当該情報が事実と異なっていたり、効果等が客観的に実証されているとはいえない場合)
調査会社の中には、1位になるまでひたすら調査回答者の抽出を繰り返し、No.1(高評価%表示の場合、○%以上)になったタイミングで調査を終了するなど、“結論ありき”の調査を行うところもある。
こういった不当なNo.1表示等(「No.1表示」だけでなく「高評価%表示」も含む)が横行している要因・背景として、以下の3つが指摘されている(消費者庁の「No.1表示に関する実態調査報告書(概要)」の6ページ(一部は同5ページ)より引用)。
動機の存在 | 広告主は、広告効果を期待して、あるいは、「競合他社に見劣りしないようにしたい」等の理由で、No.1表示等を行いたいという動機を有している |
機会の存在 | 不適切な調査を廉価(費用の安さ(1フレーズ10万円~数十万円程度)で行う調査会社の存在により、上記の動機を有する広告主は、容易に、主観的評価の調査を委託することができる環境にある |
安易な正当化 | 広告主は、「他社も同じ調査会社を利用しているから大丈夫」、「調査会社が適法と言っている」等の理由で、自ら調査内容を確認することなく、法的に問題がないものと結論付けてしまっている |
No.1表示等が調査会社による不適切な調査結果に基づくものであり、広告主が景品表示法違反を問われた場合に、「調査会社が景品表示法上の問題はないと言っていた」「具体的な調査の内容は調査会社に任せていた」といった抗弁は認められない。なぜなら、・・・
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