一橋大学大学院商学研究科 准教授・日本IR協議会 客員研究員
円谷 昭一
議決権行使助言会社大手の米グラス・ルイス(GL)が2016年版の議決権行使助言方針の日本語要約版を公表した(完全版は英語のみ)。3月決算企業の株主総会のほとんどが開催される2016年6月にはこの方針に従った助言が行われる。これまで英語のみでの公表であったが、要約版とはいえ、今年から初めて日本語版が公表されている。公表された方針の特徴と企業側の取るべき対策について私見を述べたい。
議決権行使助言サービスの市場は米ISS(Institutional Shareholder Services)とGLの複占市場である。一般的には、ISSと比べてGLの助言方針の方が厳しいと言われることが多いが、両者の2016年版の方針を見る限り、GLが特段厳しい内容のようには見えない。ただし、重視する点や判断基準は両社で差があり、企業としては両社の方針を両睨みで考慮する必要がある。
両社でまず異なるのがROE基準である。ISSは2015年版の助言方針から「過去5年平均のROEが5%を下回っており、かつ直近年度も5%を下回っている場合には経営トップの選任議案に反対を推奨する」としている。GLはこのような「収益性基準」は採用していない(現時点では、採用する予定もないという)。
一方で、ISSは採用していないがGLは採用(または公表)している基準もある。たとえば・・・
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