印刷する 印刷する

機関投資家に続き上場会社にも「投資先の議決権行使結果の開示」

当フォーラムでは、来月(2018年6月)から適用される改訂コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)で見直されることになった政策保有株式に関する原則に関する議論が、「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」から金融庁・金融審議会の「ディスクロージャーワーキング・グループ」へと引き継がれることを予想していたが(2018年3月23日掲載の「CGコード改訂で大幅見直しの政策保有株式、開示府令も見直しへ」参照)、そのとおりの動きが本格化してきた。

政策保有株式に関する改訂原則(原則1-4、補充原則1-4①)は、上場企業にとっては従来のものより厳しくなっている。経済界からは、改訂CGコードが取締役会に対し毎年「個別の」政策保有株式を対象に「目的が適切か」「資本コストに見合っているか」などを具体的に精査しその検証の内容を開示することを求めていることなどに対し、「個別検証結果の開示は膨大で負担が重く、企業秘密の観点からも困難」、「資本コストとは具体的に何なのか」などの不満や疑問の声が上がっているが(2018年5月7日 のニュース「改訂CGコードに対する経済界のコメント」、2018年4月16日のニュース『改訂CGコードで把握が求められる「資本コスト」、投資家にはどう説明する?』参照)、政策保有株式に対する機関投資家の不満は大きい(機関投資家が考える政策保有株式の問題点は【2017年10月の課題】政策保有株式が抱える問題点と対応策を参照)。「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」のメンバーである冨山和彦氏(経営共創基盤代表取締役CEO)は、株式の政策保有、すなわち“持ち合い”は「取引関係強化の美名のもと行われる無能な経営者同士の安全保障条約」に過ぎないとして、解消を強く求めている。

こうした中、機関投資家には投資判断にあたり投資先や投資候補先における「株式の持ち合い」(あるいは「片持ち」)の状況を把握しておきたいというニーズが以前からある。2010年3月期にはそのニーズに応えるべく開示制度が改正され、上場企業は有価証券報告書の【コーポレート・ガバナンスの状況等】で「株式の保有状況」を開示することとされたのは周知のとおりだ。具体的には、上場企業は「純投資目的以外の目的」(以下、政策保有目的)で保有する上場株式のうち、銘柄別による投資株式の貸借対照表計上額が提出会社の資本金額の100分の1を超えるもの(当該株式が30銘柄に満たない場合には、当該貸借対照表計上額の大きい順の30銘柄(この場合、資本金額の100分の1以下の銘柄も開示することになる))について、「株式数」「貸借対照表計上額」「保有目的」を開示する必要がある。

純投資目的 : 専ら株式の価値の変動または株式に係る配当によって利益を受けることを目的とする場合

しかし、この開示には次のような問題点が指摘されている。

・「政策保有目的」か「純投資目的」かの明確な判断基準が開示府令では示されておらず、上場企業がそれぞれ判断することになるため、投資家から見ると判断基準が“ブラックボックス化”している。また、純投資目的であれば銘柄ごとの開示は不要になるため、上場企業には、保有目的の判断が微妙な銘柄は純投資目的であると判断するインセンティブが働きやすい。
・資本金額の100分の1を超えず、かつ上位30銘柄に入っていない銘柄はそもそも保有しているかどうかも分からない。
・株式持ち合いをしているかどうかを調べるには、持ち合い相手の上場企業の有価証券報告書を閲覧する必要があるが、持ち合い相手がこちらの株式の保有目的を純投資目的と判断していたり、政策保有目的と判断していても資本金額の100分の1を超えず、上位30銘柄にも入っていなかったりすれば開示されないため、持ち合いの実態を把握できない。

こうした問題点を踏まえ、機関投資家からは、上場企業に「純投資と政策投資の区分の基準や考え方」「純投資目的で保有している銘柄についての情報」を開示させようという声が上がっていたが、それを受け・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから