印刷する 印刷する

年金母体企業に機能発揮求める原則2-6、確定拠出年金導入企業の対応

(2018年)6月1日から施行された改訂コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)では、下記の原則2-6(企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮)が新設されている。

上場会社は、企業年金の積立金の運用が、従業員の安定的な資産形成に加えて自らの財政状態にも影響を与えることを踏まえ、企業年金が運用(運用機関に対するモニタリングなどのスチュワードシップ活動を含む)の専門性を高めてアセットオーナーとして期待される機能を発揮できるよう、運用に当たる適切な資質を持った人材の計画的な登用・配置などの人事面や運営面における取組みを行うとともに、そうした取組みの内容を開示すべきである。
その際、上場会社は、企業年金の受益者と会社との間に生じ得る利益相反が適切に管理されるようにすべきである。

この原則は、企業年金がアセットオーナーとしての機能を発揮できるよう、母体企業として「人事面や運用面」に取り組み、取り組みの内容を開示することを求めるとともに、母体企業と企業年金の受益者(従業員)との間に生じ得る利益相反(例えば、母体企業の取引先に企業年金の運用委託機関が投資している場合において、取引先の議案に反対の意向を示している運用委託先を解約するよう指示するなど)の適切に管理を求めるもの(2018年3月15日のニュース「続報・CGコード改訂 企業年金への関与を求める原則に込められた“警告”」参照)。

ここでいう「企業年金」とは、原則にある「自らの財政状態にも影響を与える」との記述からも分かるように、企業が年金資産を一括して運用・管理企業が運用する確定給付年金や厚生年金基金を指しており、加入者自身が資産を運用・管理することになる確定拠出型年金は想定していない(年金の種類についてはケーススタディ「【人事・労務】退職金を廃止・減額したい」の「廃止の対象となる退職金は?」の図参照)。こうした中、確定拠出年金を導入する2つの企業が、本原則について対照的な開示を行っている(下表参照)。

企業名 開示例
本多通信工業 確定拠出型企業年金制度であり、企業年金の積立金の運用はなく財政状況への影響はないため、対象外。
SOMPOホールディングス 損害保険ジャパン日本興亜(株)や損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険(株)をはじめとする当社の主要国内子会社では、企業会計における将来リスクの軽減および経済合理性ならびに従業員一人ひとりのライフプランに応じた自由な資産形成を支援するため、確定拠出型年金制度を採用しています。当社の子会社である損保ジャパン日本興亜DC証券(株)を、その高い専門性から、運営管理機関として採用し、制度導入各社の従業員に対し、eラーニングを活用した加入者教育の徹底やマッチング拠出制度の利用推奨等の働きかけを行っています。

果たしてどちらの開示が“正解”だろうか?・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから