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気候変動対応、地銀やその融資先に強まるプレッシャー

広島県などに甚大な被害をもたらした西日本豪雨や連日の異常な高気温などから、2018年の夏は誰もが地球温暖化を“差し迫った危機”として意識しているのではないだろうか。人類が豊かに生存し続けるためのベースとなる地球環境は、もはや限界(プラネタリー・バウンダリー=地球の限界)に達したとも言われている。

地球温暖化への危機感はまずグローバル機関投資家の間で共有され(2018年3月9日のニュース「グローバル機関投資家の新たな関心事」参照)、ESGに優れた企業を選定して投資するESG投資を通じて日本企業にも影響を及ぼしているが(2018年6月22日のニュース「気候変動対策、グローバル機関投資家の高評価を受けた日本企業は?」参照)、地球温暖化対策(気候変動対策)を実際に講じている日本企業は、上場企業でもまだまだ少ないのが現状であり、中小企業となればなおさらだろう。こうした中、政府は、大手金融機関のみならず地銀など地方金融機関も巻き込み、大手企業から中小企業まで気候変動対策に取り組むよう促す方針だ。

ESG : ESGとは、「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を組み合わせたもので、近年、特にグローバル機関投資家の間で、企業の投資価値を測る評価項目としての地位を確立しつつある。

環境庁に設置されたESG金融懇談会は、直接金融市場(証券市場を通じた金融)におけるESG投資のみならず、間接金融市場(銀行融資を通じた金融)にも“ESG融資”を通じて企業の環境行動を促すための施策を検討するべく今年1月から議論を重ねて来たが、本日(7月27日)、これまでの議論を踏まえた「提言~ ESG金融大国を目指して」を公表した。同懇談会で、ESG投資のみならず “ESG融資”もテーマとされた背景には、環境金融に取り組んでいる銀行が一部にとどまっているという現状がある。また、同懇談会の開催趣旨には、「今後、特に地域において環境金融が広がることにより、環境と経済の両方の観点から地域の持続可能性が高まっていくことが期待される」とあり、地銀をはじめとする地方金融機関にも“ESG融資”の担い手となることを求めていくことが示唆されていた。環境省は「会合でのご議論については、今後の環境省における環境金融施策に、可能な限り反映させていく予定」と明言しているだけに、直接金融と間接金融の双方がESG(とりわけE(環境))の要素を取り込むとともに国に対しても必要な施策を講ずるよう求めた今回の提言には重みがある。

提言ではまず、直接金融市場におけるESG投資の加速化策として、金融安定理事会(FSB=Financial Stability Board)が2015年12月に設置した気候変動関連財務情報開示タスクフォース(TCFD=Task Force on Climate-related Financial Disclosures)が2017年6月に公表した「気候変動関連財務情報の任意の開示の枠組みに関する最終報告書」(Recommendations of the Task Force on Climate-related Financial Disclosures 以下、TCFD報告書)を踏まえた情報開示の促進を挙げている(提言の4ページ参照)。TCFD報告書は、企業に対し、・・・

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