日本シェアホルダーサービス株式会社
シニアアナリスト 水嶋 創
12月決算企業の株主総会がピークを迎えつつある一方、3月決算企業においても株主総会に向けた準備が本格化していることだろう。上場企業各社にとっては、株主総会に付議した議案の可決、さらには十分な賛成率の確保が大きな関心事となる。これらを達成する上では海外機関投資家の動向が重要と思われがちだが、実は鍵を握ることが多いのが「国内機関投資家」だ。
近年の国内機関投資家の議決権行使動向を見ると、2018年11月1日掲載の「【特集】2018年6月総会・機関投資家の議決権行使結果分析」で解説したとおり(「3.投資家別の反対率分析(役員選任議案)」参照)、主要国内機関投資家の取締役選任議案に対する反対率は、議決権行使助言会社ISSの「反対推奨率」を上回っている。すなわち、もはや「国内機関投資家は海外機関投資家に比べると議決権行使判断が甘い」とは言えない状況にある。
議案の賛成率には株主構成における「機関投資家比率」が大きな影響を及ぼすことになるが、東証の売買動向調査によると、足元では海外機関投資家は日本株を売り越していると考えられ、海外機関投資家比率が減少している企業も多いことが想定される。一方、国内機関投資家は相対的にパッシブ運用の比率が高いことなどから、国内投資家比率が大きく低下している企業はあまり多くないと思われる。
パッシブ運用 : パッシブ(「消極的」なという意味)運用とは、東証のTOPIXのような株価指数(インデックス)の値動きに連動する運用成果を目指し、株価指数を構成する銘柄をポートフォリオに組み入れるなどして、運用会社は定性的な判断を入れずに機械的に投資判断を行う運用手法であり、ファンドマネジャーが独自に銘柄を選択して運用する「アクティブ運用」とは対極の関係にある。 文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム
また、国内機関投資家の議決権行使率はほぼ100%であると言われている。一方、海外機関投資家の場合、概ね70%から80%となることが多い。この行使率の差がもたらす影響について考えてみよう。例えば下記の【図表】のように、・・・
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