印刷する 印刷する

会計基準見直しで、「重要な繰越欠損金」抱える会社の業績が上振れも

 繰延税金資産の積み増し額が大きければ、税引前利益から控除される「法人税等」の金額が減り、税引後の「当期純利益」も増えることになるが(繰延税金資産の詳細な解説は新用語・難解語辞典の「資産負債法」参照)、繰延税金資産は「将来の回収可能性」がなければそもそも計上することはできない。

 現行の税効果会計の実務では、将来の回収可能性を「会社の業績の良し悪し」によって5つに区分しているが(監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」。以下「66号」という)、現在、この分類の見直しが企業会計基準委員会(ASBJ)で進行していることは、2014年4月30日のニュース「繰延税金資産の回収可能性、会社に求められるより高い立証レベル」でお伝えしたとおりだ(ちなみに、66号の管轄は現在の日本公認会計士協会から企業会計基準委員会に移り、その位置付けも「監査の指針」から「会計の指針」に変わる)。

 その議論の中で浮上しているのが、5区分を「機械的」に当てはめるのではなく、会社の「経済実態」を踏まえて繰延税金資産の回収可能性を判断できないか、というものだ。こうした議論の背景には、IFRSや米国会計基準の取扱いがある。

 66号の5区分のうち下の2つを見ると、「重要な繰越欠損金が存在する会社等(規定の番号をとって「4号会社」とも言われる)」は「翌年1年分の課税所得の見積額」しか回収可能性の判断対象とできず、もっとも評価が低い「過去連続して重要な税務上の欠損金を計上している会社等(5号会社)」は「繰延税金資産の回収可能性なし」と判断される。要するに、4号会社、5号会社のように過去に業績が低迷した結果、重要な欠損金を抱えるに至った会社については、繰延税金資産をほとんど計上させない規定ぶりになっている。

 一方、IFRSおよび米国会計基準(66号は単体会計基準であるのに対し、IFRSおよび米国会計基準は連結会計基準)には66号の5区分のような細かな規定はなく、会社の経済実態に即して繰延税金資産の回収可能性を判断することを要求している。したがって、たとえ4号会社や5号会社のような会社であっても、将来の課税所得が見込まれる場合には、(1年に限定せずに)将来の課税所得を見積もることができる範囲で繰延税金資産の回収可能性を判断することになる。この結果、5号会社のような会社であっても、繰延税金資産を積み増すことがある。

 また、5区分の見直しを検討している企業会計基準委員会が公表した経団連が国内企業に対して行ったアンケートでも、IFRS/米国基準を採用している会社では、4号、5号会社のような「重要な欠損金を抱えた連結子会社」についても、連結財務諸表の作成にあたっては繰延税金資産の積み増しをしている会社が多いとの結果が出ている。

 この結果から、・・・

このコンテンツは会員限定です。会員登録(有料)すると続きをお読みいただけます。

続きはこちら
まだログインがお済みでない場合はログイン画面に遷移します。
会員登録はこちらから