日本企業の時価総額トップに君臨するトヨタ自動車がIFRS(国際会計基準)の適用に踏み切る(2021年3月期〜)など、IFRS適用企業は「時価総額」ベースでは既に全上場企業の40%を突破している。ただ、「企業数」で見ると、IFRS適用企業は200社超に過ぎず、未だ多くの企業がIFRSを適用するには至っていない。その大きな要因の一つとなっているのが、のれんの会計処理だ。
のれん : 企業を買収したり合併したりする際における「支払対価-企業の時価純資産」こと(これがプラスの場合、「正ののれん」という。以下は「正ののれん」を前提とする)。のれんは「財務諸表には表れない企業の価値」と言える。つまり、のれんは投資原価の一部を構成している。このため、そこで日本の会計基準では、のれんについては「20年以内の期間」で償却し、のれんの価値が下がった場合には「減損」を行うことになっている。一方、IFRSおよび米国会計基準では、「のれん」の定期償却は認められていない(減損処理しか認められない)。そこには、利益の平準化を好む日本型経営と、業績好調時にはできるだけ利益を出し、逆に業績悪化時にはすべて“膿”を出すという欧米型経営の発想の違いがある。
現状、IFRSではのれんを償却しなくてよいことになっている。これに対し、日本が中心となって「のれんの償却処理」の再導入を主張していることを受け、IFRSを策定する国際会計基準審議会(IASB)は現在、のれんの会計処理を検討している。多くの市場関係者からも、「IFRSにおいてはのれんの減損認識が“too little, too late”(少なすぎて、遅すぎる)」という問題が指摘されており、IASBでは「のれんの減損と償却」が優先テーマとされてきた。こうした経緯を踏まえ、IASBは2020年12月31日を意見募集の期限として、ディスカッションペーパー「企業結合―開示、のれん及び減損」を公表し、今後の検討課題を整理している。
減損 : 固定資産による将来の現金回収見込額が簿価を下回った場合に、下回った分だけ損失を計上すること。
ディスカッションペーパーでは、「取得に関する開示の改善」が優先課題とされ大量のページが割かれており、特に「取得」について多くの情報開示(注記)を求めている。
具体的には、・・・
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