先の通常国会で成立した「会社法の一部を改正する法律」では、取締役会制度の改革の一環として「監査等委員会設置会社」制度が創設されている。監査役設置会社、委員会設置会社(会社法改正により指名委員会等設置会社に名称変更)と並ぶ“第三の類型”の会社法上の機関と言えるものだ。
現行の委員会設置会社は、取締役会の中に指名委員会、監査委員会、報酬委員会の3委員会をセットで導入しなければならない。なかでも会社経営の要である人事を(社外取締役が過半数を占める)指名委員会に握られることに対する企業の抵抗感は強く、導入は進んでいないのが現状だ。日本取締役協会の調査によれば、委員会設置会社を導入している上場企業は59社にすぎない(2014年8月1日現在)。
今回創設される運びとなった監査等委員会も取締役3人以上で構成され、その過半数は社外取締役でなければならない。この点では委員会設置会社と同様だが、監査等委員会設置会社には、委員会設置会社のような指名委員会や報酬委員会は設置されない。監査役会設置会社のように監査役もいない。
ただし、取締役会の中に設置された監査等委員会が、取締役の業務執行の 妥当性の監査を行うとともに、株主総会において、業務執行者を含む取締役の人事(指名および報酬)に関する“意見陳述権”を有することになる。委員会設置会社と比べ人事への影響力が格段に弱まっているだけに、委員会設置会社導入に二の足を踏んでいた企業にとっては検討の余地がありそうだ。
なお、監査等委員会の構成員は取締役でもあるので、当然ながら取締役会での投票権を有する。また、監査等委員会設置会社では、会社法上の機関としての執行役は設置されない(会社法上の機関ではない執行役員を任意で設置することは可能)。そのため、取締役が業務執行を行っても良い点も、委員会設置会社と異なるところだ。
監査等委員会設置会社は、会社法上の大会社や公開会社に限らず、株式会社であれば導入することは可能。もっとも、定款の定めによって設置することから、既存の会社であれば定款変更が避けられない。法務省によると、改正会社法の施行日は平成27年4月または5月を予定しているため、3月決算会社が最短で監査等委員会設置会社に移行するには、平成27年6月の定時総会で定款変更を行うことになる。
大会社 : 「資本金が5億円以上」または「負債総額が200億円以上」の株式会社
公開会社 : すべての株式に譲渡制限をつけていない株式会社
ただし、法務省では、・・・
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