フィデューシャリーアドバイザーズ代表
早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター招聘研究員 吉村一男
ミネベアミツミ(ミネベア)は4月10日、芝浦電子に対して4月23日を目途にTOBを開始することを発表したが(ミネベアのリリースはこちら、補足資料はこちら)、芝浦電子には既に台湾の電子部品大手 国巨(ヤゲオ)もTOB予告を行っていたため、ミネベアは「ホワイトナイト」と言える。
ホワイトナイト : 敵対的買収を仕掛けられた際に、当該買収者に対抗して、友好的な買収を提案してくれる会社等のこと。白馬の騎士(ホワイトナイト)に例えてこう呼ばれる。通常は、敵対的買収者よりも高い価格で株式を買い取るか、第三者割当増資を引き受けることになる。
2025年2月4日のニュース「買収提案の競合と取締役の義務」で触れたとおり、M&Aにおける「買い手」には「売り手」を探すためのコストがかかるが、株式市場で「売り手」が“セール中”であればこれに買収提案しない手はないため、ホワイトナイトによる買収は今後も増加することが予想される。証券会社もホワイトナイトによる買収をビジネスにしており、証券会社から「同意なき買収提案を受けた企業を買収する提案」を打診された取締役も少なくないのではないだろうか。
もっとも、ホワイトナイトによる買収も通常のM&Aと同様に「価値を創造するM&A」でなければならないことは論を待たない。また、M&Aは「投資」に他ならないため、買収対象会社の「企業価値」を算定し、その範囲内で「買収価格」を設定しなければならない。ここでいう企業価値とは「現経営者の下での企業価値」ではなく「買収者の下での企業価値」であるため、「M&A後のシナジーが生む企業価値」も算定する必要がある。しかも、買収対象会社は上場しているため、買収価格としては現在の「時価総額」以上の価格を設定しなければならない。「買収価格」と「時価総額」の差が「買収プレミアム」となり、株主に分配される。すなわち、買収価格が「時価総額」を超え「企業価値」を上限とする範囲内で設定されなければ、そのM&Aは価値を創造しないということだ。
買収プレミアム : 買収価格と株価の差
しかし、なかには価値を創造しないM&Aも存在する。それは、・・・
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