2014/12/31 2014年12月度チェックテスト第1問解答画面(不正解)

不正解です。
 コーポレートガバナンス・コード原案の公表(2014年12月17日)を受け、取締役会のあり方を巡る議論が盛んになっています。とりわけ取締役会のダイバーシティ(多様性)の議論と女性登用(=女性取締役数の増加)の議論は同じ文脈で語られることも少なくありません。しかし、ヨーロッパの100以上の機関投資家を対象にしたアンケートでは、投資先企業の取締役会に関して「性別の多様化」が重要と考えている機関投資家は27%にとどまり、逆に重要ではないとする機関投資家は35%にも上っています。ヨーロッパの機関投資家は取締役会のダイバーシティとして「性別の多様化」ではなく「経験の多様化」(86%の機関投資家がそのように回答)を重視しているということを頭の片隅に入れておきたいところです。

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2014/12/03 「取締役会のあり方」機関投資家の本音(会員限定)

2014/12/31 2014年12月度チェックテスト

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【問題1】

ヨーロッパの機関投資家は、取締役会のダイバーシティ(多様性)に関して、「性別」よりも「経験」の多様化を重視している。


正しい
間違い
【問題2】

米国の研究機関GMI Ratingsが2013年までの3年間を対象に行った時価総額1兆ドル以上の米国企業に対する調査では、取締役の人数が多ければ多いほど業績が良好であることが判明した。


正しい
間違い
【問題3】

2014年8月に公表された伊藤レポートでは、各企業はグローバルな投資家と対話する際の“最低ライン”としてROE5%にコミットすべきとしている。


正しい
間違い
【問題4】

東京証券取引所は2015年3月期より決算短信の開示事項として「会計基準の選択に関する基本的な考え方」という項目を追加した。これにより、日本基準採用会社であれば「なぜ会計基準として日本基準を選択しているのか」という理由について開示する必要が生じた。


正しい
間違い
【問題5】

コーポレートガバナンスの議論が進展した結果、最近では「上場会社」と「機関投資家」は対立する関係にあることが望ましいという考え方が新潮流になっており、スチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードもその考え方に基づいて取りまとめられている。


正しい
間違い
【問題6】

2015年5月1日より施行される改正会社法では、子会社の内部統制は親会社が整備しなければならないことが明確化された。


正しい
間違い
【問題7】

KGIとは、KPIを達成するための“小さな指標”あるいは“中間目標”と位置付けられる。


正しい
間違い
【問題8】

企業側の社長やIR担当取締役が外国人ファンドマネージャーとのエンゲージメント(企業と投資家の建設的な対話)に臨む際には、彼らのファンドのポートフォリオの種類を知っておくべきである。


正しい
間違い
【問題9】

「セルサイド・アナリスト」は運用会社に所属するアナリストであるのに対し、「バイサイド・アナリスト」は証券会社に所属するアナリストである。


正しい
間違い
【問題10】

会社法改正により、監査役会設置会社(公開会社、かつ、大会社)である有価証券報告書提出会社では、独立社外取締役を選任していない場合に、それを置くことが相当でない理由を定時株主総会で説明しなければならないことになった。


正しい
間違い

2014/12/28 【総務等】固定資産を取得したい (会員限定)

 

“不適切”な固定資産取得が役員の責任問題に発展も

「固定資産」とは、土地・建物や長期貸付金のように、正常営業循環活動(その会社の本業のプロセス)の外にあるか、または「1年内に換金されない資産」を言います。

何が固定資産かどうかは会社によって異なります。土地を例にすると、不動産会社にとっての土地は「販売」するためのものであり、正常営業循環活動(不動産会社の場合、土地を仕入れて、転売したり、建物を建てたうえで売却し、その売却代金により次の土地を仕入れたりといった循環する活動)の中にあるため固定資産には該当しません(流動資産の在庫になります)。一方、製造業にとっての土地は、工場の敷地などに利用され、正常営業循環活動(製造業にとっては、材料を仕入れて、加工し、製品を販売した代金で、次の材料を仕入れるといった循環する活動)の外にあり、また長期保有されるのが通常であるため、固定資産に該当します。換言すると、製造業にとって固定資産とは、営業循環を外部から支えるために必要な資産と言うこともできます。

そして、固定資産は「有形固定資産」「無形固定資産」「投資その他の資産」の3つに分類されます。「有形固定資産」には本社や工場、店舗等の建物や土地、製造設備、備品、車両など、「無形固定資産」には、ソフトウェアや特許権、商標権、実用新案権、営業権(いわゆる“のれん”)など、「投資その他の資産」には(決算日から1年以上所有することを予定している)有価証券や出資金、長期前払費用(例えば2年分を先払いする賃貸借契約を結んだ場合などにおいて、決算日から1年以上先に発生する費用)、長期貸付金(貸付金のうち、返済期限が決算日から1年以上先に到来するもの)などが該当します。

有価証券や出資金まで固定資産に該当する()と言うと意外に思えるかも知れません。有価証券については、決算日から1年以上所有することを予定していれば、1年内に換金されない資産に該当することになります。出資金も通常は1年以上の継続的な出資を前提としたものなので、1年内に換金されない資産に該当することになります。

 金融業ではない、通常の事業会社を前提とします。

固定資産の取得は多額の自己資金や借入金等による資金調達(借入れによる資金調達については「借入れにより資金調達したい」を参照してください)を必要とし、会社のキャッシュ・フローに少なからず影響を与えます。また、固定資産は長期間保有するのが通常であるため、ひとたび取得すれば、後述するように、減価償却や、場合によっては減損会計、資産除去債務を通じて長期的に会社の決算に影響を与えます。さらに、維持費・修繕費(これらの費用は固定資産の劣化に伴い年々増加していく傾向があります)、固定資産税等の税金もかかってきます。逆に言うと、経営上“不適切”な固定資産の取得を行えば、会社に多額の損害を与えるとともに、その影響が長期間に及ぶことになり、場合によっては、その取得にgoサインを出した役員は責任を問われかねません。バブル経済期の経営者による高額な美術品の購入等はその最たる例です。

したがって、固定資産の取得にあたって、担当役員は、取得の合理性や価格の適正性を慎重に判断する必要があります。そのためには、会社法上の要請の遵守(*1)、資本コスト(*2)、設備投資の経済性計算(*3)、リースの利用との比較(*4)、税務上のメリットの検討(*5)が不可欠となります。また、取得後もメンテナンスや大規模修繕が不可欠になるだけでなく、「減損会計」や「資産除去債務」といった会計処理(*6)、業績予想の修正や減損・被災等の情報開示(ディスクロージャー。*7)といった様々なタスクが付随して発生します。以下、それぞれについて具体的に見ていきましょう。なお、店舗に関連する固定資産に関しては「店舗を新規出店したい」も参照してください。

*1 後述の「取締役会の決議が必要な“重要性”の判断基準は?」を参照してください。
*2 後述の「購入原資は自己資本か、それとも借入金か?」を参照してください。
*3 後述の「固定資産投資の効果を計る3つの計算方法」を参照してください。
*4 後述の「購入かリースかは一概に判断できず」を参照してください。
*5 後述の「補助金や減税などの優遇制度の見落としに要注意」を参照してください。
*6 後述の「業績への影響が大きい減損処理」を参照してください。
*7 後述の「固定資産取得で「業績予想の修正」の要否を検討」を参照してください。

取締役会決議が必要な“重要性”の判断基準は?

高額な固定資産の購入(会社法でいう「重要な財産の譲受け」)は、たとえそれが代表取締役であったとしても、取締役の一存だけで決定できません。つまり、代表取締役や担当取締役といった個人の判断だけでは購入できず、必ず「取締役会の決議」が必要になります(会社法362条4項1号 )。

 取締役会設置会社を前提とします。

逆に言うと、取締役会の決議を経る必要があるかどうかは、取得しようとしている資産が「重要な財産」に該当するかどうかに左右されることになります。

何をもって「重要な財産」と判断するかについて、会社法には明確な基準は定められていませんが、参考になる判例はあります。

この判例では、会社が保有する株式の譲渡が「重要な財産」の処分に該当するかが争われましたが、裁判所は「重要性」の判断について、「当該財産の価額、その会社の総資産に占める割合、当該財産の保有目的、処分行為の態様及び会社における従来の取扱い等の事情を総合的に考慮して判断すべきものと解するのが相当である」と判示しています(平成6年1月20日 最高裁判決、民集48巻1号1頁)。

この判例は、「重要な財産」の“処分”に関するもので、“譲受け”に関するものではありませんが、会社法では、重要な財産を譲り受ける場合だけではなく、その処分(売却など)を決定する際にも取締役会決議を求めています(会社法362条4項1号)。また、「重要な財産」の処分と譲受けは同一の条文に規定されているため、「重要な財産」の譲受けに該当するかどうかについても、この判例を参考にして、「取得する財産の価額」「取得する財産の総資産に占める割合」「財産の取得目的」「従来の取扱い」等の事情を総合的に考慮して判断することができると考えられます。

なお、「重要な財産の譲受け」は必ずしも“有償”であるとは限りません。低廉の譲受けや無償での譲受けであっても、例えば、借入金や税金の未払額もあわせて引き受けるような負担が付いたものであれば、その負担を考慮した上で「重要性」が判断されます。

実務上は取締役会規則等に定めた「金額基準」で判断

もっとも、会社が資産を譲り受ける都度、その資産が「重要な財産」に該当するか否かを判断して取締役会決議の要否を判断していたのでは、機動的な事業運営に支障をきたす可能性があります。そこで、取締役会規則等の社内規程や決裁権限規程に、資産の種類ごとに「取締役会決議が必要となる固定資産の処分・譲受けの金額基準」等を設けておくのが通常です。

もちろん、社内規程で定めた基準に従っていれば問題ないというわけではありません。そもそも、「取締役会決議が必要な金額」として社内規程に定められた額が適切ではない場合には、その基準に従って行われた資産の取得や処分は「会社法上必要な取締役会決議が欠けている」ことになってしまう可能性が十分にあるからです。このような事態を回避するためには、社内規程の金額基準について今一度見直しを図り、前述の判例の基準も参考にしながら慎重に定める必要があります。

通常の取締役会を開催せずに高額な固定資産を取得する方法

このように高額な固定資産の購入(「重要な財産」の譲受け)は取締役会の決議を経て行うのが原則ですが、取締役の人数が多い会社になると、高額な固定資産を購入するたびに取締役会を開催するのは大きな負担になりかねません。そのような場合に利用を検討したいのが、特別取締役制度です。

特別取締役とは、取締役会であらかじめ選定した少数の取締役(3名以上)のことです。この特別取締役のみにより構成される取締役会()で、取締役に決定を委任できない「重要な財産」の譲受けのほか、重要な財産の処分や多額の借財についても決議できます(下表参照。会社法373条1項)。特別取締役制度は、一部の取締役(=特別取締役)だけによる迅速な意思決定を可能にするための制度と言えます。

 会社法には「特別取締役会」という用語はありません。

ただし、特別取締役による決議ができるのは、以下の要件を両方とも充たす会社に限定されているので注意が必要です。

(1)取締役の数が6人以上であること
(2)取締役のうち1人以上が社外取締役であること

また、上述のとおり、特別取締役は「3名以上」選定しなければなりません(特別取締役に社外取締役が含まれていなくてもOKです)。原則として、特別取締役のうち過半数が出席し、その出席者のうち過半数が賛成すれば、通常の取締役会の決議を経なくても、「重要な財産」の譲受けなどが可能になります(定足数・決議要件については定款で異なる定めを設けることができるとされています。また、特別取締役自身が固定資産の譲渡人である場合のように決議内容に関して会社と利害が対立することになる特別取締役は議決に参加できません)。特別取締役制度を利用している会社は、その旨と、特別取締役および社外取締役の氏名を登記しなければなりません(会社法911条3項21号)。

<取締役の一存では決定することができない事項と特別取締役制度による決議の可否(会社法362条4項)>

取締役の一存では決定することができない事項 特別取締役制度による決議の可否
重要な財産の処分および譲受け
多額の借財
支配人その他の重要な使用人の選任および解任 不可
支店その他の重要な組織の設置、変更および廃止 不可
募集社債の総額その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要事項 不可
取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備(内部統制システムの構築に関する事項) 不可
定款の定めに基づく取締役会による役員等の株式会社に対する責任免除 不可

いずれにせよ、特別取締役制度を導入する際には、コーポレートガバナンスの観点からも、特別取締役による取締役会の権限を明確にしておかなければなりません。具体的には、取締役会規則、決裁権限規程等の社内規程において、「重要な財産」と「多額の借財」の定義を明確化し、特別取締役による取締役会の権限をはっきりさせておくことが必須となります。

特別取締役による取締役会を開催した後、すぐに議事録を整えなければならない点は、通常の取締役会と同じです。また、やはり通常の取締役会と同様、決議事項に反対する特別取締役がいた場合には、異議を述べた旨を議事録に残す必要があります。

このほか、特別取締役による取締役会で決議が行われた場合、特別取締役の互選により選ばれた者が、決議後遅滞なく、決議内容を特別取締役以外の取締役に報告しなければなりません(会社法373条2項)。報告の仕方については、文書によるべきか、口頭や電子メールでも構わないのか、会社法には特段規定されていません。特別取締役による取締役会の後に遅滞なく、通常の取締役会が開催される場合には、当該取締役会において報告し、取締役会議事録にその旨を記載する方法が考えられます。もっとも、必ずしも、遅滞なく、通常の取締役会が開催されるとは限りません。その場合、報告が行われたことが記録に残るように、文書または電子メールによる報告が望ましいです。特別取締役による取締役会の議事録のコピーを各取締役に送付または送信する方法が簡便でしょう。

互選 : 関係者(ここでは特別取締役)の中だけで選挙を行い、ある役に就任する者を選ぶこと

では、監査役の役割はどのようなものでしょうか。特別取締役による取締役会には監査役全員が出席するのが原則です。ただし、監査役の互選によって、監査役の中から特別取締役による取締役会に出席する者を定めることもできます(会社法383条1項ただし書き)。特別取締役制度が「迅速な意思決定」を狙いとしている点を考えると、特別取締役による取締役会に出席する監査役を「常勤監査役」に限定しておくのも一つの手です。もっとも、特別取締役による取締役会に出席する監査役を定めた場合でも、その取締役会の招集通知は各監査役に対して発しなければならない点については留意が必要です(会社法368条1項)。

固定資産取得の承認時に判断すべき要素は金額だけではない

上述したように、取得する固定資産が「重要な財産の譲受け」に該当すれば、取得に際して事前に通常の取締役会または特別取締役による取締役会の決議を経なければなりません。取締役会では、購入の原資、すなわち自己資金によるのか、あるいは銀行等から借り入れるのか、場合によっては社債を発行したり、新株を発行したりするのか、といった資金調達手法についても、あわせて議論をしておく必要があります。

一方、会社法上は取締役会の決議を求められないような少額の固定資産の取得であったとしても、会社の資金から購入する以上、個人的な転売等の不正を防ぐために、その取得に際しては「内部統制」が十分に機能していることが大前提となります。

具体的には、まず、取得する固定資産の金額的重要性・質的重要性に見合った決裁者・機関(通常は、金額が大きくなるにつれ、また、質的重要性が高いものほど承認権限者が高位となり、個人から経営会議や常務会、取締役会等の会議体に移っていきます)を決裁権限規程で定めます。固定資産の取得の意思決定においては、起案部署(経営企画や工場、店舗開発等)が物件の選別および購入の申請を行い、これを受け、決裁者・機関が申請内容を評価し、承認の可否を決定することになります。

承認の可否の判断は、社内の「承認ルール」に沿って行われる必要があります。承認のルールが定められていないと、合理性のない固定資産の取得が承認されてしまう恐れがあるからです。例えば、申請部門が取引先からの要請に応じて、市場価格よりも割高な価格での購入を申請し、それが承認されてしまうような場合です。

承認に際しては、「取得目的・理由」、「取得内容(購入先、性能、納期、価格、保証条件等)」、「支払条件」、「予算の有無」等の項目を総合的に判断して決定します。従ってこういった項目が漏れなく購入申請に記載されるように、これらの項目があらかじめ記載された固定資産取得専用の稟議書の使用を義務付ける事も有用です。

上記の項目の中で購入代価は非常に重要な判断要素と言えます。なぜなら、上述のように固定資産の価格は多額となるのが通常のため、相場よりも割高に購入してしまうリスクや取得申請者が特定業者と癒着することでバックマージンを得るために割高な価格で購入してしまうといったリスクがあるからです。このようなリスクに対応するためにも、原則として2社以上より見積書をとる事をルール化する事も有用です。

その際、金額的重要性の高い固定資産の取得であれば、投資の経済性計算を事前に行っておき、その計算結果を投資の承認の際の判断材料の一つに位置付ける必要があります。例えば生産設備の購入を想定すると、その設備から産出される製品を販売することによってどれほどの利益が得られるか、投資額は何年で回収されるのか、収益率はいかほどか(資本コストを上回っているのか)といった投資の経済性計算に基づく設備投資計画を策定し、それを稟議書等に添付することで、決裁者が投資の可否の判断材料の一つとして活用することが可能になります。

中期事業計画と予算を踏まえた取得を

上場会社では中期事業計画(2~3年程度)が定められ、それに基づき各年度の事業計画が策定されるのが通常です。固定資産取得の効果は長期間に及ぶため、固定資産の取得は、中(長)期事業計画と整合していなければなりません。例えば、中期事業計画にてある製品が強化・成長分野の製品として位置付けられており、現存の設備では販売計画・生産計画を実現するだけの生産能力がない場合に実施する生産能力向上のための設備投資は、中期事業計画と整合する設備投資と言えます。

設備投資はコスト負担を伴うものである以上、投資額は予算内に収まっていなければなりません。固定資産の購入のための予算は「設備予算」と言われます。設備予算には毎年策定されるものと、中期事業計画に合わせ2~3年の期間を単位に作成されるものがあります。固定資産に限ったことではありませんが、予算は損益のみならず、キャッシュ・フローの観点からも検討されるべきです。特に固定資産の取得では、一時に多額の現金が流出するため、なおさらです。資金予算もあわせて検討し、固定資産の取得により資金繰りが困難とならないか、借入れをすべきか否か、借入金の調達は果たして可能なのかどうか、借入金の返済原資は毎期の利益と非現金支出費用の合計見込みの範囲内に十分に収まるのか(悲観的な予想利益の元ではどうか)といった点を検討することになります。

なお、設備取得の申請者は、固定資産の購入代価・付随費用(運搬費用、据付費用)だけでなく、維持・管理費用および撤去費用も含めた“ライフサイクルコスト”を考慮することも必要です。また、一口に固定資産の取得と言っても、自己資金での取得か借入金での取得かにより、負担する資本コストが税引前か税引後かといった違いが生じます(借入金の利息は営業外費用ですが、株主への配当は税引後利益をベースとした利益剰余金から行われます)。また、購入かリースかによって、利息負担や事務管理コスト、所有権の有無が異なってきます。そのため、設備取得の申請者は調達手段ごとに費用を検討することになります(この点については後述します)。

固定資産投資の効果を計る3つの計算方法

設備取得の申請に際しては、費用面のみならず、固定資産が生み出す収益、すなわち「投資効果」の面からの検討も不可欠になります。固定資産の投資効果は、一般的に以下の3つの方法のいずれか(またはその組み合わせ)で判定されます(投資の意思決定に関する採算性計算方法については「店舗を新規出店したい」の「投資コストを把握し採算性を計算」も参照してください)。

(正味現在価値法)
正味現在価値法とは、投資したことによって得られる年々の現金流入額(現金流出額を控除後)を資本コストで割り引き、その合計額から投資額の現在価値合計を控除して正味現在価値を算定するものです。正味現在価値の大きさが評価基準となります。下図の「増分」とは、その投資によって増えた分という意味です(以下、同様)。

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(内部利益率法)
内部利益率法とは、投資をしたことによって得られる年々の現金流入額(現金流出額を控除後)の現在価値合計が、投資額の現在価値合計と等しくなる利益率(割引)を算定し、その利益率の高さを評価するものです。

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(回収期間法)
回収期間法とは、当初の投資額を年々の現金流入額(現金流出額を控除後)で回収するのに要する期間を算定し、その回収期間の短さを評価するものです。年々の現金流入額の計算にあたっては、現在価値を考慮する方法としない方法があります。下図は現在価値を考慮しない方法です(現在価値を考慮する場合には、年々の増分現金流入額を現在価値に割り引いて、計算します)。

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購入原資は自己資本か、それとも借入金か?

固定資産の購入の際にファイナンスを行う場合には、自己資本(増資)か借入金(他人資本)によることになります。借入金の場合は利息が発生する一方、自己資本であれば利息は発生しません。また、借入金は返済期限がありますが、資本金は法的には返済する必要がありません。そのため、自己資本の方はコストがかからなくて済むようにも見えますが、それは間違いです。自己資本に対しても配当金(インカムゲイン)や株価上昇期待(キャピタルゲイン)という「資本コスト」が発生しているからです。

資本コストとは、資金調達に伴って発生するコストのことを言います。借入れによって資金を調達すれば「利子」という資本コストが発生し、株主から資金を調達すれば、上述したように株主への配当金(インカムゲイン)や株主が有する株価上昇期待(キャピタルゲイン)という資本コストが発生します。したがって、企業の資本コストは「借入金」と「株式市場からの調達額」の割合で決まることになります。我が国では「無借金経営」が理想的な経営のように言われることが少なくありません。しかし、実は、税引後に配当の支払いや株価上昇期待に応えなければならない株式市場からの資金調達の方が、利息(税金計算上損金になります)を支払えば済む借入金よりも資本コストが高いことが実証研究により分かっています。そのため、調達額に占める借入金の割合が小さければ小さいほど(株式市場からの調達が多ければ多いほど)資本コストは高くなります。会社は、資本コストをまかなうために資本コストを上回る利益を出さなければなりません。資本コストが高ければ高いほど、それだけ多くの利益を上げる必要があります。

もっとも、自己資本の資本コストは測定が容易ではなく、長期的にはともかく短期的には意識しづらいものであり、一方で借入金の金利は可視的で市中の資金需要の高低や金融政策の動向に影響し変動するものです。リストラ時には配当を支払わないこともできますが、金利を支払わないと社債や借入金のデフォルトとなり、追加借り入れができず資金がショートしてしまう可能性があります。そのため、過度に借入金の割合を高めるわけにはいきません。

そこで、通常は「他人資本(借入金)」と「自己資本」のバランスを考慮して資金調達します。したがって、固定資産の取得にあたり、借入金と自己資本のどちらを選択するかは、その時点における会社の資金調達状況(借入れ過多になっているのか、あるいは自己資本が過多なのか)に応じて判断するのがセオリーです。

また、資本コストは、固定資産への投資(取得)の可否を判断する際にも利用できます。すなわち、「投資の経済性計算から導き出された固定資産への投資から得られる収益率」が資本コストを超えている(ハードル・レート)ことが投資の前提となり、収益率が資本コストを超過する幅が大きいほど、投資に前向きな判断になります。上場会社では社内の分業が進んでおり、資金調達活動を財務部のような専門部署が一手に担っているのが一般的ですが、この場合、その弊害として、投資判断を行う部署(例えば経営企画、工場、店舗開発等)における資金調達コスト(資本コスト)への意識が希薄となっている場合が少なくありません。よって、客観的な指標である資本コストを投資判断に用いることは、投資判断を行う部署だけの事情ではなく、「全社的に」適切な投資判断を行う上で有用です。

購入かリースかは一概に判断できず

固定資産の新規導入を検討する際には、リースという手法も検討してみる価値があります。リースでは、購入した場合と比べるとトータルでの支払い総額は高くなりますが、一時の資金流出が抑えられるというメリットに加え、節税効果もあるからです。

リースのメリットは以下のとおりです。

・一時の資金流出が低く抑えられる
固定資産の取得を自己資金または借入れによって行うとなると、一時に多額の資金が必要となります。一方、リースを利用すると、初期費用としてかかるのは、リース料1回ないし3回分程度の「前払リース料」だけです。また、リースは借入れの一種ですが、担保も不要です。

・節税メリット
リース期間を通じた支払リース料の総額は、自己資金で固定資産を取得した場合の取得価額よりも高額になります。しかし、リース期間は法定耐用年数(法人税法に定めれられた耐用年数)よりも短く設定されるのが通常ですから、早めに費用(リース料)計上が行われる分、節税効果が生じます。そのため、資本コストを考慮せずに、リース期間に限り資金流出額に節税効果も加味して比較すると、“自己資金で資産を購入した場合”よりも資金流出額を抑えることができるのが一般的です。一方、法定耐用年数の期間で比較すると、“自己資金で資産を購入した場合”の方が資金流出額を抑えることができます。資本コストを考慮したうえで比較すると、当初に多額の資金流出が必要となる“自己資金で資産を購入した場合”の方が、資本コストが高いほど不利な結果になる傾向にあります。なお、“借入金により資産を購入した場合”と比較すると、借手の担保価値、収益力などの資金調達能力の如何や、市場金利の動向に左右されるため、どちらが有利とは一概に決まりません。

・事務負担の軽減
リースでは月々のリース料を支払うのみで、減価償却費の計算や固定資産税の計算・納付が必要なく、事務負担が軽減されるというメリットがあります。なお、固定資産税の納付はないものの(固定資産税はリース会社に課せられます)、固定資産税相当額はリース料に反映されているはずなので、実質的にはリース資産の借り手が負担しているとも言えます。

・陳腐化の回避
ファイナンス・リース契約(実質的に購入したのと同じリース契約)では中途解約を認めていません(仮に認める場合、購入したのと同程度の追加支払を求められることになります)が、リース期間を短縮することは可能なので、資産が陳腐化する前にリース期間が終わるようリース期間を短縮すれば、陳腐化を回避することができます。ただしこの場合、月々の支払リース料は当然ながら増えることになります。

・金利水準に左右されず、キャッシュ・フローを固定できる
借入れによる購入の場合には、借入金の利率によって支払額が変動しますが、リースの場合、いったん契約した物件について金利動向によりリース料が変動することはありませんので(金利水準の変動リスクはリース会社が負うことになります)、リース期間中のキャッシュ・フローは固定されます。もっとも、リース会社は金利水準の変動リスクを織り込んだ高めの金利水準でリース料を設定するため、そのリスクの大半は借り手に転嫁されていると言えます。

一方、リースにはデメリットも存在します。具体的には次のとおりです。

・中途解約ができない
通常のファイナンス・リースであれば、実質的に中途解約ができない仕組みになっています。ただし、上述のとおり、リース期間を短縮することによって陳腐化を回避することは可能です。

・リース料が割高
リース料には、物件の購入代金のほかに付随費用(管理費用)、リース会社の利益が含まれていますので、リース料の総額は、購入した場合より割高となります。

・物件の所有権を取得できない
リース物件の所有権はリース会社が有しています。基幹資産については自社所有したいというニーズを有する会社もありますが、リースを用いる限り、借り手は所有することができません。

このように、リースにはメリットとデメリットがありますので、会社の状況や、金利情勢等を総合的に判断して利用の是非を決定する必要があります。たとえば、繰越欠損金を抱えている企業は上記の節税効果を得られない点で購入の方が有利と言えます。所有する固定資産の数が多く、その管理コスト(例えば償却資産税の申告の手間や故障時の取り換え等)に悩んでいる会社の場合は、リースの方が有利と言えます。

補助金や減税などの優遇制度の見落としに要注意

固定資産を取得した企業は、国や地方公共団体による取得資金の補助や減税といった優遇制度を利用できる場合が少なくありません。仮にこれらの優遇制度を見落としてしまうと、本来は内部留保ができたはずのキャッシュが流出してしまうことになり、担当役員(補助金については総務担当役員、減税については経理担当役員が一般的)の責任問題にもつながりかねません。

以下、優遇制度ごとに見ていきましょう。

・補助金
補助金には、身近なところでエコカー補助金(制度終了済)があります。また、太陽光発電や風力発電といった新エネルギー関連設備の取得のための補助金も注目を集めています。補助金の種類は多岐に渡るため、業界誌や各省庁のサイト等で情報収集を続け、見落としの無いようにする必要があります。

こうした補助金は会計上「利益」であり、本来は法人税も課税されてしまうところですが、国等からの補助金に税金をかけてしまうと、実質的に補助金の一部が税金として国等に返還されてしまうという矛盾が生じます。この矛盾の解消のため、法人税法には「圧縮記帳制度」という制度が設けられています(次で詳しく説明します)。

・圧縮記帳
圧縮記帳にはいくつかの種類があります。まず補助金に関する圧縮記帳を例に説明します。補助金を受け取ると、受け取った額を営業外収益や特別利益に計上する一方で、取得した固定資産の取得原価から補助金と同額を減額(取得原価を“圧縮”するため圧縮記帳と言われます)し、当該減額分を「損失」として計上することが法人税法において認められています。この結果、利益と損失が相殺され、補助金を受け取った事業年度においては、補助金に対する課税が行なわれないことになるわけです。ただし、損失計上により固定資産の取得価額が減額されることに伴い、各事業年度の減価償却費は減少しますので、その分、法人税の負担は増えます。つまり、圧縮記帳制度は、法人税を“非課税”にするわけではなく、本来は補助金を受け取った事業年度に課されるはずだった法人税を、固定資産の耐用年数期間にわたって少しずつ課税(これを「課税の繰延べ」と言います)しているに過ぎないということです。もっとも、固定資産の取得価額を直接減額する方式(直接減額方式)では、固定資産の評価という観点から問題がある(固定資産の簿価が著しく少なくなってしまう)ため、上場会社の場合、固定資産の取得価額を直接減額せずに、積立金を用いた会計処理(積立金方式)を用いるケースが良く見受けられます。

圧縮記帳は、補助金の受取時以外にも適用できるケースがあります。具体的には、保険金で固定資産を購入した場合や、「特定資産」を買い換えた場合などです。前者は、被災に伴い受け取った保険金により固定資産を購入する場合に、当該保険金受取額に税金をかけてしまうと、税額分だけ取得できる固定資産が少なくなってしまい、被災からの回復を妨げることになりかねないため法人税法において認められた圧縮記帳です。一方、後者は、事業用資産の買換え促進や、誘致区域等への移転を促進するという趣旨で租税特別措置法において認められた圧縮記帳です。

このうち、土地、建物、機械装置といった会社経営上の重要資産を購入する際に活用できることが多いのが、後者の「特定資産」を買い換えた場合の圧縮記帳です。例えば、企業等の資産の買替え時の負担を軽減することで、土地取引の活性化や土地の有効利用を促進するとともに設備更新・事業再編の円滑化を図るため、長期保有(10年超)の土地等を譲渡し、新たに事業用資産(買換資産)を取得した場合において、譲渡した事業用資産の譲渡益について課税の繰延べ(繰延率80%)を認めています。高額な固定資産を購入する場合には、手持ちの資産を売却し、その資金を元手に新たな固定資産を取得するケースも少なくないと思いますので、それが「特定資産の買換え」に関する圧縮記帳制度の適用要件を充たすか否か、その適用期限を含めて必ず確認しておくべきです。

・特別償却・税額控除制度
特別償却・税額控除制度とは、企業の設備投資(機械装置等の購入)を促したり、省エネや環境保護に資する設備の購入を促すといった政策目的から、購入金額の一定割合を損金に算入したり(特別償却)、法人税からの控除(税額控除)を認めるものです(会社は、特別償却と税額控除のうち、より税金が少なくなる方を選択することになります)。

主な制度としては、研究開発税制、グリーン投資減税(環境関連投資促進税制)、エネルギー需給構造改革推進税制などがあります(特別償却、税額控除制度の一覧はこちら)。特別償却と税額控除のどちらを選択するのか、適用要件を満たしているかどうかなどは顧問税理士を交え経理部門(税務部門)が検討することになりますが、役員としては、適用漏れがないかどうか、また、ある固定資産が複数の特別償却・税額控除制度の適用要件を充たす場合、もっとも税金が安くなる制度はどの制度なのか()を確認する必要があります。

 特別償却は課税の繰延であるのに対し、税額控除は純粋な税金の減額であり、その性質は異なります。

なお、特別償却の会計処理の1つである固定資産の取得価額を直接減額する方式(直接減額方式)は、固定資産の簿価が著しく少なくなってしまうため、固定資産の評価という観点から問題があります。そこで、上場会社の場合、固定資産の取得価額を直接減額せずに、積立金を用いた会計処理(積立金方式)を用いるケースが良く見受けられます。

・その他
上記の他にも、各自治体が企業誘致目的で設けている、固定資産税の減免等の優遇制度がありますので、それらの制度も有効に活用すべきです。

取得後もフォローアップが重要

固定資産の取得後は、固定資産管理台帳(通常は固定資産管理システムの一機能となります)に登録されますが、事業の用に供されたこと(稼働し始めたこと)を管理部門が確認できるまでは減価償却することはできません。減価償却は固定資産管理システムにより会計方針に基づき規則的に自動計算・計上されますが、そもそも固定資産管理台帳への登録内容が誤っていれば減価償却費が誤って計算されてしまいます(例えば耐用年数が10年のところ、誤って20年として登録されてしまうと、各年度の減価償却費の計上が過少になってしまいます)。そこで総務担当の取締役としては、固定資産管理台帳への登録内容の確認のための内部統制(入力内容を入力者以外の者がチェックする等)や取得した固定資産が事業の用に供されていることの確認のための内部統制(固定資産稼働報告書を固定資産設置場所の部門長が承認し、管理部門に回付する等)を整備・運用しておく必要があります。

なお、中古建物を取得した場合は、売り手の簿価を入手する等して取得価額を建物と各附属設備に按分しておかなければ、適切な減価償却ができなくなるとともに除却時の除却損益を適切に算定できなくなってしまう点に注意が必要です。また、付随費用の扱いにも留意しなければなりません。雪国まいたけ社の事例では費用化すべき別の土地の関連支出が土地の取得原価に混入していたため、過年度の有価証券報告書等の訂正が必要となりました(雪国まいたけ社の事例はこちら)。

固定資産管理台帳上の固定資産番号を記載したプレートを固定資産に貼付し、現物管理を行います。機械を外注先に貸し出ししている場合、外注先の倒産等の事態に備えて会社名が記載されたプレートを貼付しておく必要があります。

固定資産は定期的(たとえば部門や事業所ごとに巡回する方式で数年に一度)に棚卸を行い、実物が現存していることを確認します。外注先の場合、預り証を発行してもらったり、棚卸担当者()が訪問して現物を確認したりといった手続を踏む必要があります。

 貸出担当者以外の者が現物を確認します。

それに備えて、固定資産の移動があれば、固定資産台帳上で管理している「固定資産の所在場所」を更新しておきます。また、固定資産の除却の際に、固定資産管理台帳に除却の事実を反映することを失念しないよう除却プロセスに組み込んでおきます。

また、取得した固定資産が予定通りの投資効果を獲得できているかどうかについても、フォローしなければなりません。具体的には当初の予算と実績の比較管理、すなわち予算実績管理を行っていく必要があります。

これにより、固定資産取得に投下した資本が回収されないリスクを早期に把握することができ、予算が未達成となっている場合には、生産部門と販売部門の会議等において、その原因、今後の生産計画の実現可能性について協議し、例えば営業のテコ入れによる売上高のアップ、他の製品を製造すること(転用)の可否等について検討する事になります。これらの検討の結果、固定資産を維持し続けることの有益性に疑義が生じた場合には、資産の廃棄、取替え等を検討することになります。生産計画の大幅な見直しが必要になったり、資産の廃棄により多額の損失が発生したりするなど重要な経営判断が必要になる場合には、取締役会に意思決定を仰ぐことになります。

固定資産に関する予算実績差異分析の業務フローをまとめると、下記のとおりです。金額的重要性の高い生産設備等については、このような分析が有用と言えます。

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また、固定資産の価値を維持するためには定期的な修繕が欠かせません。この修繕のための支出には、固定資産の取得原価に含めるもの(資本的支出)と、修繕費として費用処理するもの(収益的支出)があります。資本的支出とは、当該支出により固定資産の耐用年数が延長される場合や、固定資産の価値が増加する場合の支出であり、いったん固定資産に計上します(減価償却を通じて費用化されます)。また、現状維持のための支出は収益的支出として費用処理されます。その判断は実務上、経理規程や経理マニュアルに明示される等してルール化されているのが通常といえ、それらのルールは税法の判断基準を参考に規定化されているのが一般的です。資本的支出と収益的支出の区別が微妙なものについては、利益や損失の調整に用いられるおそれが大と言えます。役員は、自社のルールが適切に運用されていることを確認する必要があります。

業績への影響が大きい減損処理

固定資産の中でも、建物や機械装置、器具備品、ソフトウェア、特許権などの「償却対象資産」を取得した場合には、その耐用年数や償却期間の間、(減価)償却費が費用として計上されることになり、長期的に会社の業績に影響を与えることになります。

もっとも、固定資産の取得にあたり考慮しなければならないのは(減価)償却費だけではありません。

まず、固定資産の状況によっては計上を求められるのが「資産除去債務」です。固定資産によっては、将来それが耐用年数を終えた場合に、法令や契約によって撤去・除去が義務付けられているものがあります。例えば、定期借地契約で賃借した土地の上に建設した建物等を除去する義務や、有害物質を特別の方法で除去する義務として、アスベストやPCBの除去の義務が挙げられます。企業会計では、このように撤去・除去が法令や契約で要求されている場合には、将来必要になる撤去・除去費用を見積もって、これを固定資産の取得時に「資産除去債務」として計上し、資産の取得原価とともに耐用年数にわたって費用に計上していくことが義務付けられています(資産除去債務については、「新規出店したい」の「新規出店が「資産除去債務」を生むことも」を参照してください)。かつては、資産の処分時に一括で費用計上すれば十分であった資産除去債務ですが、「平成22年4月1日以降開始の事業年度」からは、あくまで「資産の取得時」に計上しなければいけなくなったので注意が必要です。

なお、資産除去債務の計上が必要になるのは建物や機械装置、器具備品などの「有形固定資産」であり、有形固定資産であっても法令や契約で撤去・除去が求められていない場合や、そもそも撤去や除去を想定できない特許権や水道施設利用権などの無形固定資産については、資産除去債務を計上する必要はありません。

また、固定資産の価格や収益性が著しく低下している場合には、固定資産の簿価を時価まで減額する減損処理を行わなければなりません。減損処理は、「減価償却資産」のみならず有価証券のような「非減価償却資産」に対しても必要になります。それらの減損処理額は多額になるのが通常であり、業績に大きな影響を与えることになります。

固定資産取得で「業績予想の修正」の要否を検討

固定資産を取得した場合、事業報告の設備投資の状況で開示することになります(通常は当期中の設備投資総額と主なものの具体的内容を記載)。また、附属明細書の「有形固定資産及び無形固定資産の明細」で重要な増減を記載()することになります。

 重要性についての金額的基準は、特にありません。上位数件を記載する企業が大半です。

また、有価証券報告書提出会社の場合、有価証券報告書の【設備投資等の概要】や【設備の新設、除却等の計画】で開示するとともに、附属明細表の【有形固定資産明細表】において重要なもの()について欄外で注記を行います。

 同一の種類のものについて資産の総額の1%を超える額の増加について注記します。

固定資産の取得により連結会社の資産の額が直前連結会計年度の末日における連結純資産額の30%以上増加する見込みがあれば、取得した固定資産の内容を適時開示する必要があります。

固定資産の取得や減損・被災により、業績予想の着地見込みを更新しなければならない場合もあります。なぜなら、業績予想を開示している場合、前回予想値と今回予想値又は当期実績値とを比較して、売上高が10%以上、また営業利益・経常利益・当期純利益が30%以上増減する場合は、業績予想の修正を開示しなければならず、固定資産の取得によりそういった影響が生じる場合もあるからです(業績予想の修正の詳細は「業績予想を修正したい」を参照してください)。

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2014/12/28 【総務等】固定資産を取得したい

 

“不適切”な固定資産取得が役員の責任問題に発展も

「固定資産」とは、土地・建物や長期貸付金のように、正常営業循環活動(その会社の本業のプロセス)の外にあるか、または「1年内に換金されない資産」を言います。

何が固定資産かどうかは会社によって異なります。土地を例にすると、不動産会社にとっての土地は「販売」するためのものであり、正常営業循環活動(不動産会社の場合、土地を仕入れて、転売したり、建物を建てたうえで売却し、その売却代金により次の土地を仕入れたりといった循環する活動)の中にあるため固定資産には該当しません(流動資産の在庫になります)。一方、製造業にとっての土地は、工場の敷地などに利用され、正常営業循環活動(製造業にとっては、材料を仕入れて、加工し、製品を販売した代金で、次の材料を仕入れるといった循環する活動)の外にあり、また長期保有されるのが通常であるため、固定資産に該当します。換言すると、製造業にとって固定資産とは、営業循環を外部から支えるために必要な資産と言うこともできます。

そして、固定資産は「有形固定資産」「無形固定資産」「投資その他の資産」の3つに分類されます。「有形固定資産」には本社や工場、店舗等の建物や土地、製造設備、備品、車両など、「無形固定資産」には、ソフトウェアや特許権、商標権、実用新案権、営業権(いわゆる“のれん”)など、「投資その他の資産」には(決算日から1年以上所有することを予定している)有価証券や出資金、長期前払費用(例えば2年分を先払いする賃貸借契約を結んだ場合などにおいて、決算日から1年以上先に発生する費用)、長期貸付金(貸付金のうち、返済期限が決算日から1年以上先に到来するもの)などが該当します。

有価証券や出資金まで固定資産に該当する()と言うと意外に思えるかも知れません。有価証券については、決算日から1年以上所有することを予定していれば、1年内に換金されない資産に該当することになります。出資金も通常は1年以上の継続的な出資を前提としたものなので、1年内に換金されない資産に該当することになります。

 金融業ではない、通常の事業会社を前提とします。

固定資産の取得は多額の自己資金や借入金等による資金調達(借入れによる資金調達については「借入れにより資金調達したい」を参照してください)を必要とし、会社のキャッシュ・フローに少なからず影響を与えます。また、固定資産は長期間保有するのが通常であるため、ひとたび取得すれば、後述するように、減価償却や、場合によっては減損会計、資産除去債務を通じて長期的に会社の決算に影響を与えます。さらに、維持費・修繕費(これらの費用は固定資産の劣化に伴い年々増加していく傾向があります)、固定資産税等の税金もかかってきます。逆に言うと、経営上“不適切”な固定資産の取得を行えば、会社に多額の損害を与えるとともに、その影響が長期間に及ぶことになり、場合によっては、その取得にgoサインを出した役員は責任を問われかねません。バブル経済期の経営者による高額な美術品の購入等はその最たる例です。

したがって、固定資産の取得にあたって、担当役員は、取得の合理性や価格の適正性を慎重に判断する必要があります。そのためには、会社法上の要請の遵守(*1)、資本コスト(*2)、設備投資の経済性計算(*3)、リースの利用との比較(*4)、税務上のメリットの検討(*5)が不可欠となります。また、取得後もメンテナンスや大規模修繕が不可欠になるだけでなく、「減損会計」や「資産除去債務」といった会計処理(*6)、業績予想の修正や減損・被災等の情報開示(ディスクロージャー。*7)といった様々なタスクが付随して発生します。以下、それぞれについて具体的に見ていきましょう。なお、店舗に関連する固定資産に関しては「店舗を新規出店したい」も参照してください。

*1 後述の「取締役会の決議が必要な“重要性”の判断基準は?」を参照してください。
*2 後述の「購入原資は自己資本か、それとも借入金か?」を参照してください。
*3 後述の「固定資産投資の効果を計る3つの計算方法」を参照してください。
*4 後述の「購入かリースかは一概に判断できず」を参照してください。
*5 後述の「補助金や減税などの優遇制度の見落としに要注意」を参照してください。
*6 後述の「業績への影響が大きい減損処理」を参照してください。
*7 後述の「固定資産取得で「業績予想の修正」の要否を検討」を参照してください。

取締役会決議が必要な“重要性”の判断基準は?

高額な固定資産の購入(会社法でいう「重要な財産の譲受け」)は、たとえそれが代表取締役であったとしても、取締役の一存だけで決定できません。つまり、代表取締役や担当取締役といった個人の判断だけでは購入できず、必ず「取締役会の決議」が必要になります(会社法362条4項1号 )。

 取締役会設置会社を前提とします。

逆に言うと、取締役会の決議を経る必要があるかどうかは、取得しようとしている資産が「重要な財産」に該当するかどうかに左右されることになります。

何をもって「重要な財産」と判断するかについて、会社法には明確な基準は定められていませんが、参考になる判例はあります。

この判例では、会社が保有する株式の譲渡が「重要な財産」の処分に該当するかが争われましたが、裁判所は「重要性」の判断について、「当該財産の価額、その会社の総資産に占める割合、当該財産の保有目的、処分行為の態様及び会社における従来の取扱い等の事情を総合的に考慮して判断すべきものと解するのが相当である」と判示しています(平成6年1月20日 最高裁判決、民集48巻1号1頁)。

この判例は、「重要な財産」の“処分”に関するもので、“譲受け”に関するものではありませんが、会社法では、重要な財産を譲り受ける場合だけではなく、その処分(売却など)を決定する際にも取締役会決議を求めています(会社法362条4項1号)。また、「重要な財産」の処分と譲受けは同一の条文に規定されているため、「重要な財産」の譲受けに該当するかどうかについても、この判例を参考にして、「取得する財産の価額」「取得する財産の総資産に占める割合」「財産の取得目的」「従来の取扱い」等の事情を総合的に考慮して判断することができると考えられます。

なお、「重要な財産の譲受け」は必ずしも“有償”であるとは限りません。低廉の譲受けや無償での譲受けであっても、例えば、借入金や税金の未払額もあわせて引き受けるような負担が付いたものであれば、その負担を考慮した上で「重要性」が判断されます。

実務上は取締役会規則等に定めた「金額基準」で判断

もっとも、会社が資産を譲り受ける都度、その資産が「重要な財産」に該当するか否かを判断して取締役会決議の要否を判断していたのでは、機動的な事業運営に支障をきたす可能性があります。そこで、取締役会規則等の社内規程や決裁権限規程に、資産の種類ごとに「取締役会決議が必要となる固定資産の処分・譲受けの金額基準」等を設けておくのが通常です。

もちろん、社内規程で定めた基準に従っていれば問題ないというわけではありません。そもそも、・・・

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通常の取締役会を開催せずに高額な固定資産を取得する方法

このように高額な固定資産の購入(「重要な財産」の譲受け)は取締役会の決議を経て行うのが原則ですが、取締役の人数が多い会社になると、高額な固定資産を購入するたびに取締役会を開催するのは大きな負担になりかねません。そのような場合に利用を検討したいのが、・・・

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固定資産取得の承認時に判断すべき要素は金額だけではない

上述したように、取得する固定資産が「重要な財産の譲受け」に該当すれば、取得に際して事前に通常の取締役会または特別取締役による取締役会の決議を経なければなりません。取締役会では、購入の原資、すなわち自己資金によるのか、あるいは銀行等から借り入れるのか、場合によっては社債を発行したり、新株を発行したりするのか、といった資金調達手法についても、あわせて議論をしておく必要があります。

一方、会社法上は取締役会の決議を求められないような少額の固定資産の取得であったとしても、会社の資金から購入する以上、個人的な転売等の不正を防ぐために、その取得に際しては「内部統制」が十分に機能していることが大前提となります。

具体的には、まず、・・・

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中期事業計画と予算を踏まえた取得を

上場会社では中期事業計画(2~3年程度)が定められ、それに基づき各年度の事業計画が策定されるのが通常です。固定資産取得の効果は長期間に及ぶため、固定資産の取得は、中(長)期事業計画と整合していなければなりません。例えば、・・・

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固定資産投資の効果を計る3つの計算方法

設備取得の申請に際しては、費用面のみならず、固定資産が生み出す収益、すなわち「投資効果」の面からの検討も不可欠になります。固定資産の投資効果は、一般的に以下の3つの方法のいずれか(またはその組み合わせ)で判定・・・

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購入原資は自己資本か、それとも借入金か?

固定資産の購入の際にファイナンスを行う場合には、自己資本(増資)か借入金(他人資本)によることになります。借入金の場合は利息が発生する一方、自己資本であれば利息は発生しません。また、借入金は返済期限がありますが、資本金は法的には返済する必要がありません。そのため、自己資本の方はコストがかからなくて済むようにも見えますが、それは間違いです。自己資本に対しても配当金(インカムゲイン)や株価上昇期待(キャピタルゲイン)という「資本コスト」が発生しているからです。

資本コストとは、・・・

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購入かリースかは一概に判断できず

固定資産の新規導入を検討する際には、リースという手法も検討してみる価値があります。リースでは、購入した場合と比べるとトータルでの支払い総額は高くなりますが、一時の資金流出が抑えられるというメリットに加え、節税効果もあるからです。

リースのメリットは以下の・・・

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補助金や減税などの優遇制度の見落としに要注意

固定資産を取得した企業は、国や地方公共団体による取得資金の補助や減税といった優遇制度を利用できる場合が少なくありません。仮にこれらの優遇制度を見落としてしまうと、・・・

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取得後もフォローアップが重要

固定資産の取得後は、固定資産管理台帳(通常は固定資産管理システムの一機能となります)に登録されますが、事業の用に供されたこと(稼働し始めたこと)を管理部門が確認できるまでは減価償却することはできません。減価償却は固定資産管理システムにより会計方針に基づき規則的に自動計算・計上されますが、そもそも固定資産管理台帳への登録内容が誤っていれば減価償却費が誤って計算されてしまいます(例えば耐用年数が10年のところ、誤って20年として登録されてしまうと、各年度の減価償却費の計上が過少になってしまいます)。そこで総務担当の取締役としては、・・・

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業績への影響が大きい減損処理

固定資産の中でも、建物や機械装置、器具備品、ソフトウェア、特許権などの「償却対象資産」を取得した場合には、その耐用年数や償却期間の間、(減価)償却費が費用として計上されることになり、長期的に会社の業績に影響を与えることになります。

 もっとも、固定資産の取得にあたり考慮しなければならないのは(減価)償却費だけではありません。

まず、・・・

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固定資産取得で「業績予想の修正」の要否を検討

固定資産を取得した場合、事業報告の設備投資の状況で開示することになります(通常は当期中の設備投資総額と主なものの具体的内容を記載)。また、・・・

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2014/12/28 チェックリスト:固定資産を取得したい (会員限定)

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■チェックリスト:固定資産を取得したい

チェック事項 備考 対応未了 対応済
高額な固定資産を購入する場合、それが取締役会の決議を要する「重要な財産」に該当するかどうか検討したか。 金額基準等を取締役会規則や職務権限規程に明示しておくのが通常。
なお、低廉の譲受けや無償での譲受けであっても、例えば、借入金や税金の未払額もあわせて引き受けるような負担が付いたものであれば、その負担を考慮した上で「重要性」を考慮する。
高額な固定資産の購入に関する意思決定を迅速に行うため、特別取締役制度の導入を検討したか。 特別取締役制度を利用できるのは、以下の要件のすべてを満たす会社に限られる。
・取締役の数が6人以上であること
・取締役のうち1人以上が社外取締役であること
特別取締役制度を導入した場合、特別取締役による取締役会の決議権限が取締役会規則等により「重要な財産の処分および譲受け」と「多額の借財」に限定されているか。
特別取締役による取締役会が開催された場合、取締役会議事録を作成しているか。
特別取締役による取締役会で決議が行われた場合、決議内容が特別取締役以外の取締役に報告されているか。 特別取締役の互選により定められた者が、決議後遅滞なく報告を行う。
特別取締役による取締役会に出席する監査役を事前に定めているか。 監査役は、特別取締役による取締役会には全員出席するのが原則であるが、例外的に監査役の中から特別取締役による取締役会に出席する者を定めることができる。
特別取締役による取締役会に出席する監査役を事前に定めている場合でも、その取締役会の招集通知は各監査役に対して発しているか。
取締役会では、固定資産購入の原資や資金予算について議論をしているか。
・自己資金によった場合、固定資産の取得により資金繰りが困難とならないか
・銀行等から借り入れる場合、借入金の調達は果たして可能なのかどうか
・借入金の返済原資は毎期の利益と非現金支出費用の合計見込みの範囲内に十分に収まるのか(悲観的な予想利益の元ではどうか)
その他、場合によっては社債を発行したり、新株を発行したりするのか、資本コストはどう変動するのかといった資金調達手法について議論を行う。
取得する固定資産の金額的重要性・質的重要性に見合った決裁者・機関を決裁権限規程で定めているか。 金額が大きくなるにつれ、また、質的重要性が高いものほど承認権限者が高位となり、かつ、個人から経営会議や常務会、取締役会等の会議体に移ることになる。
承認に際しては、「取得目的・理由」、「取得内容(購入先、性能、納期、価格、保証条件等)」、「支払条件」、「予算の有無」等の項目を総合的に判断して決定しているか。 これらの項目があらかじめ記載された、固定資産取得専用の稟議書の使用を義務付ける事も有用である。
固定資産の取得に先立ち、2社以上より見積書をとる事が社内ルール化されているか。 固定資産の価格は多額となるのが通常のため、相場よりも割高に購入してしまうリスクや取得申請者が特定業者と癒着することでバックマージンを得るために割高な価格で購入してしまうといったリスクがある。
固定資産の取得に先立ち、投資の経済性計算を事前に行っているか。 一般的な経済性計算方法
「正味現在価値法」
「内部利益率法」
「回収期間法」
取得予定の固定資産の、中(長)期事業計画や設備予算との整合性を検討しているか。
固定資産の購入にあたり、購入代価・付随費用だけでなく、維持・管理費用および撤去費用も含めた“ライフサイクルコスト”を検討したか。
固定資産の購入にあたり、リースによった場合との比較を行ったか。 繰越欠損金を抱えている企業は節税効果を得られないため固定資産の購入が有利である。
一方、所有する固定資産の数が多く、その管理コスト(例えば償却資産税の申告の手間や故障時の取り換え等)に悩んでいる会社の場合は、リースの方が有利である。
固定資産への投資(取得)の可否を判断する際に、資本コストを活用しているか。 資本コストをハードル・レートとして用いる。
固定資産の取得に際して、国や地方公共団体による取得資金の補助や減税といった優遇制度を利用できるかどうか、検討したか。 補助金の種類は多岐に渡るので、業界誌や各省庁のサイト等で情報収集を続け、見落としの無いようにする。
圧縮記帳・特別償却・税額控除・固定資産税の減免制度の利用も検討する。
圧縮記帳の会計処理は直接減額方式ではなく積立金方式を用いているか。
総務担当の取締役は、固定資産管理台帳への登録内容の正確性を確認するための内部統制を整備・運用しているか。 耐用年数や取得価額(付随費用の妥当性も含む)の入力内容を入力者以外の者がチェックする等が考えられる。
総務担当の取締役は、取得した固定資産が事業の用に供されていることの確認のための内部統制を整備・運用しているか。 固定資産稼働報告書を固定資産設置場所の部門長が承認し、管理部門に回付する等が考えられる。
固定資産管理台帳上の固定資産番号を記載したプレートを固定資産に貼付しているか。
機械を外注先に貸し出ししている場合、外注先の倒産等の事態に備えて会社名が記載されたプレートを貼付しているか。 貸し出し時に外注先から預かり証を入手しておく。
定期的に固定資産の棚卸を行い、実物が現存していることを確認しているか。 たとえば部門や事業所ごとに巡回する方式で数年に一度実施することが考えられる。
固定資産の移動があれば、固定資産台帳上で管理している「固定資産の所在場所」を更新しているか。
固定資産の除却の際に、固定資産管理台帳に除却の事実を反映することを失念しないよう除却プロセスに組み込んでいるか。
予算実績管理により、取得した固定資産が予定通りの投資効果を獲得できているかどうかを確認しているか。 固定資産を維持し続けることの有益性に疑義が生じた場合には、資産の廃棄、取替え等を検討する。
総務担当の取締役は、固定資産の修繕のための支出には、固定資産の取得原価に含めるもの(資本的支出)と、修繕費として費用処理するもの(収益的支出)の区別のための社内ルールを整備・運用しているか。 税法の判断基準を参考にしているケースが多い。
固定資産取得時に資産除去債務の計上が漏れないような体制を整備・運用しているか。 「資産除去債務に関する会計基準」(企業会計基準第18号)
固定資産の価格や収益性が著しく低下している場合には、固定資産の簿価を時価まで減額する減損処理の必要性を検討する体制を整備・運用しているか。 「固定資産の減損に係る会計基準」(企業会計審議会)
事業報告や附属明細書での開示の要否を検討したか?
固定資産の取得により、業績予想の着地見込みの更新が必要になるかどうか、検討する体制を整備・運用しているか。

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2014/12/26 「社外取締役」と「独立社外取締役」の違い、明確に説明できますか?

会社法の改正やコーポレートガバナンス・コードの原案公表などにより、「社外取締役」「独立社外取締役」という言葉を見聞きする機会が増えている。実は両者の中身は微妙に異なるが、誤用されているケースも少なくない。

上場会社の役員であれば当然両者の定義を正確に理解しておく必要がある。改めて両者の違いを確認しておこう。

まず決定的に異なるのは、・・・

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2014/12/26 「社外取締役」と「独立社外取締役」の違い、明確に説明できますか?(会員限定)

会社法の改正やコーポレートガバナンス・コードの原案公表などにより、「社外取締役」「独立社外取締役」という言葉を見聞きする機会が増えている。実は両者の中身は微妙に異なるが、誤用されているケースも少なくない。

上場会社の役員であれば当然両者の定義を正確に理解しておく必要がある。改めて両者の違いを確認しておこう。

まず決定的に異なるのは、「社外取締役」は会社法上の用語であるのに対して、「独立社外取締役」は、先日原案が公表されたコーポレートガバナンス・コード上の用語であるということだ。コーポレートガバナンス・コードに「独立社外取締役」の定義はないものの、証券取引所の規則上の用語である「独立役員」を用いると、「独立役員である社外取締役」と言い換えることができる。「独立役員である社外取締役」は「社外取締役」である以上、会社法上の社外性の要件を充たしており、さらに「独立性」という証券取引所の規則独自の要件も加わることになる(下図参照)。

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現行の会社法では、社外取締役と言えるためには、次の2つの要件を両方充たす必要がある(上図の黄色い枠の中(緑の枠も含む。以下同じ))。
(1)当該会社またはその子会社の業務執行取締役、執行役、支配人、その他の使用人でないこと
(2)過去に当該会社またはその子会社の業務執行取締役、執行役、支配人、その他の使用人でないこと

執行役 : 委員会設置会社において、実際の業務の執行を行う役員

一方、東証の有価証券上場規程に規定される「独立役員」である社外取締役と言うためには、まず会社法上の社外取締役に該当する必要がある(上図の黄色い枠)。その上で、追加して次の要件に該当しないこと(上図の緑の枠)が条件となる(「上場管理等に関するガイドライン」より)。

(1)当該会社の親会社や兄弟会社の業務執行者(取締役から使用人まで)
(2)当該会社の下請けのように当該会社を主要な取引先とする者(個人の場合)やその業務執行者(法人の場合)
(3)当該会社から見て主要な取引先に該当する先(例えばメインバンク等)の業務執行者
(4)当該会社から役員報酬以外に多額の金銭その他の財産を得ているコンサルタント、会計専門家または法律専門家(当該財産を得ている者が法人、組合等の団体である場合は、当該団体に所属する者)
(5)最近()において(1)から(4)に該当していた者
(6)当該会社またはその子会社の業務執行者(最近までそうであった者も含む)の近親者や(1)から(5)に該当する者の近親者

 具体的な期間は明示されていないが、「実質的に(1)から(4)までに掲げる事由に該当している者と同視できるような場合」が該当し、「当該独立役員を社外取締役に選任する株主総会の議案の内容が決定された時点」といった例が示されている(東証「独立役員の確保に係る実務上の留意事項」より)。

証券取引所の「独立性」の概念の方が、親会社・兄弟会社の業務執行者や主要な取引先まで含むことから、会社法の「社外性」よりも相当広く網をかけていることがわかる。例えば借入金の多くを依存するメインバンクの役員は、会社法上は社外取締役にはなれるが、東証の規則上は、「主要な取引先の業務執行者」に該当するため、独立社外取締役の要件を充たさない。東証の規則の方が、「経営陣から独立した第三者としての地位」をより厳格に求めていると言える。

このように会社法の「社外性」要件よりも、証券取引所の規則による「独立性」の要件の方が厳しいのが現状だが、会社法が改正(2015年5月1日に施行)され、そのような現状が変更されることになった。改正会社法では、社外取締役は、まず選任時点現在において、次の要件をすべて充たす必要がある。

(a)「親会社」の取締役、執行役、支配人、その他の使用人(従業員一般を指す。以下同じ)でないこと
(b)「子会社」「兄弟会社」の業務執行取締役、執行役、支配人、その他の使用人ではないこと
(c)自社の取締役、執行役、支配人、重要な使用人(部長や執行役員等)の近親者ではないこと

執行役員 : 委員会設置会社以外の会社で実際の業務執行の責任者である従業員。委員会設置会社の「執行役」とは異なり、会社法上の役員とは位置付けられていない。

また、(d)当該会社と過去に一定の関わりがあった場合にも社外性は認められない。具体的には、社外取締役に就任する前の10年間のうちに、自社または子会社の業務執行取締役、執行役、支配人その他の使用人であった場合には、「社外性」は認められない。

その結果、改正会社法の「社外性」と東証規則の「独立性」が近似することになった。なかでも上記(d)の要件については、東証規則の「独立性」(「最近において親会社等の業務執行者や取引先、コンサルタント等に該当していた者」に該当しないこと)よりも厳格なものとなっている。なお、現行の東証規則では、過去に独立性基準に抵触していた者は、抵触していた時期が最近でなければ独立役員に選任すること自体は可能であるものの、当該者を独立役員に選任する場合には、「過去に抵触していたという事実を踏まえてもなお一般株主と利益相反の恐れがないと判断した理由」を独立役員届出書やコーポレート・ガバナンスに関する報告書に記載する必要がある。この規定は、会社法改正に伴い改正されることが予想される。

コーポレートガバナンス・コードが上場会社に求めているのは、2名以上の「独立社外取締役」の選任である以上、上場会社は厳格化された会社法の「社外性」を充たす人物で、かつ、独立性の要件も充たす人物を2名以上選任する必要がある(または2名以上選任しなかった理由を説明する必要がある)。例えば自社に売上の多くを依存している下請会社の役員のように、会社法上は「社外取締役」と認められても、東証の規則上は「独立社外取締役」に該当しないケース場合には、社外取締役候補から外すべきかどうかを検討しなければならない点には留意したい。

2014/12/25 (新用語・難解用語)CSA(コミッション・シェアリング・アレンジメント)

 企業が持続的に成長していくためには、成長のための投資を支える長期的な資金が不可欠となるが、それに反し、投資家は目先のリターンばかりを求める「短期志向(英語の「ショートターミズム」という言葉がよく使われる)」に走ることが少なくない。

 その原因の1つとして指摘されているのが、「セルサイド・アナリスト」が作成する短期志向のアナリスト・レポートだ。

 セルサイド・アナリストは証券会社に所属しており(株式を売る側にいることからこう呼ばれる)、そのレポート(アナリスト・レポート)は、証券会社の顧客である個人投資家や機関投資家に提供され、投資家はこれを投資先の選定や売買のタイミングの判断に利用する(ちなみに、「バイサイド・アナリスト」とは運用会社に所属するアナリストであり、そのレポートは、自社のファンドマネージャーの運用成績向上のために作成される)。

 ただ、証券会社は、投資家が売買を頻繁に行えば行うほど手数料収入が増える構造になっているため、そこに所属するセルサイド・アナリストも、自社の証券手数料収入を増やすため、売買を促す役割を担っているという面がある。このため、セルサイド・アナリストには、四半期決算等を過度に重視した“短期志向のレポート”を出すインセンティブがあると言える。こうした中、セルサイド・アナリストに対しては、中長期的なファンダメンタルズ分析や、持続的な成長をテーマとした企業との対話の不足を指摘する声がある。

 この状況を改善するため、・・・

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2014/12/25 (新用語・難解用語)CSA(コミッション・シェアリング・アレンジメント)(会員限定)

 企業が持続的に成長していくためには、成長のための投資を支える長期的な資金が不可欠となるが、それに反し、投資家は目先のリターンばかりを求める「短期志向(英語の「ショートターミズム」という言葉がよく使われる)」に走ることが少なくない。

 その原因の1つとして指摘されているのが、「セルサイド・アナリスト」が作成する短期志向のアナリスト・レポートだ。

 セルサイド・アナリストは証券会社に所属しており(株式を売る側にいることからこう呼ばれる)、そのレポート(アナリスト・レポート)は、証券会社の顧客である個人投資家や機関投資家に提供され、投資家はこれを投資先の選定や売買のタイミングの判断に利用する(ちなみに、「バイサイド・アナリスト」とは運用会社に所属するアナリストであり、そのレポートは、自社のファンドマネージャーの運用成績向上のために作成される)。

 ただ、証券会社は、投資家が売買を頻繁に行えば行うほど手数料収入が増える構造になっているため、そこに所属するセルサイド・アナリストも、自社の証券手数料収入を増やすため、売買を促す役割を担っているという面がある。このため、セルサイド・アナリストには、四半期決算等を過度に重視した“短期志向のレポート”を出すインセンティブがあると言える。こうした中、セルサイド・アナリストに対しては、中長期的なファンダメンタルズ分析や、持続的な成長をテーマとした企業との対話の不足を指摘する声がある。

 この状況を改善するため、欧米の機関投資家の間では「CSA(コミッション・シェアリング・アレンジメント)」という手法を採用するケースが広がっている。従来、機関投資家は、セルサイド・アナリストのレポートに対する対価と売買手数料を一本で証券会社に対して支払っていたが、両者を分離して支払おうというのがCSAである。レポートに対する対価と売買手数料それぞれの金額が明確になれば、セルサイド・アナリストのレポートのクオリティの向上が期待でき、また、アナリスト間の競争も促すことになるだろう(その結果、さらにレポートの質が向上する)。証券会社とは距離を置いた独立系アナリストが増える可能性もある。

 そして、セルサイド・アナリストは、機関投資家が求める中長期的な視点からのレポートを作成するため、積極的に企業に対話を求めることになるだろう。CSAは伊藤レポートでも提案されており、その普及が日本でも進めば、セルサイド・アナリストが企業を分析する視点も変わっていくことになりそうだ。