2014/12/16 チェックリスト:子会社で不祥事が発覚した(会員限定)

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■チェックリスト:子会社で不祥事が発覚した

チェック事項 備考 対応未了 対応済
上場会社の子会社で不祥事が発覚した場合、不祥事の調査を当該子会社に任せきりにしていないか。 親会社の取締役や監査役が調査を主導する必要がある。
子会社で不祥事が発覚した場合、証券取引所での適時開示は段階的に行っているか。
各取締役への具体的な支給金額は取締役会または代表取締役に一任しているか。 ・事実の発生が判明した時点:概要と今後の対応に関する開示
・第三者委員会の任命時:概要と調査のスケジュール
・第三者委員会の調査報告書の受領時:調査結果と再発防止策や業績予想の修正の開示
子会社での不祥事を、行政・司法当局へ通報(海外子会社の場合、現地当局への通報)すべきかどうかについて検討したか。
親会社は子会社の株主という立場から、次のような責任追及の是非を検討したか。
(1)子会社に対し不祥事を犯した者の解雇指示
(2)不祥事を犯した者への法的責任の追及(子会社の行う損害賠償請求の訴訟を親会社として支援、株主代表訴訟の提起)
(3)管理責任者・役員の減俸・降格の指示
不祥事が発覚した場合に備えて、親会社および子会社のリスク管理規程等に不祥事調査の初動を担う機関を定めているか。
リスク管理委員会の事務局は、打ち合わせやインタビューに際して記録を必ず取るようにしているか。 後日の行政機関による捜査や訴訟、ディスクロージャー等に備える必要がある。
リスク管理委員会の事務局は、親会社の取締役会や監査役会および子会社の取締役会や監査役会と情報を共有しているか。
上場会社の子会社で会計不正が起きた場合、リスク管理委員会の事務局は、監査法人に情報提供し、連携を図っているか。
上場会社の子会社で不祥事が起きた場合、親会社は証券取引所にリリース内容やリリース時期の相談をしたか。
リスク管理委員会の事務局は実行された不祥事の手口を想定し、調査範囲を仮決めしたか。 調査範囲を不正が発覚した部署に限定できるのか、広げるべきなのかを検討する。
社内調査委員会と第三者委員会の両方が設置された場合、効率性を考慮した調査を行っているか。 スケジュールをすり合わせて関係者へのインタビューを同時に行ったり、情報共有のための会議を設けたり、社内調査委員会の調査結果を第三者委員会の調査が援用したりすることが考えられる。
社内調査委員や第三者委員の人選は、調査対象からの独立性と調査内容への知識や経験を判断して行っているか。
社内調査委員や第三者委員の人選は、調査対象からの独立性と調査内容への知識や経験を判断して行っているか。 不祥事がセクハラ問題であれば、被害者へのインタビューでの2次被害を防ぐためにインタビュワーに女性の臨床心理士や精神保健福祉士を関与させることが不可欠になる。また、調査や再発防止策に女性側の視点を盛り込む必要があることから、調査委員にも女性を任命すべき。
調査委員のダイバーシティ(多様性)を確保しているか。
調査に際しては、外部のコンサルティング会社の活用を検討したか。 調査が広範囲に及んだり、フォレンジックのような専門知識が必要になったりする場合、親会社の監査役スタッフや内部監査室スタッフでは調査を遂行できなくなくなる。
調査に従事する“社内人材”や外部のコンサル会社に対しては、「利害関係がないこと」や「情報を漏えいしないこと」について誓約書の提出を要請しているか。
証券取引所におけるリリースが必要となるような不祥事であれば、証券取引所と調査期限について相談をしているか。 調査期限は不祥事の内容や調査の範囲により様々であるが、概ね1か月、長くても2か月程度が1つの目安になる。
会計不祥事であれば、調査期限と決算スケジュールを連動させているか。
会計不祥事であれば、四半期報告書や有価証券報告書に調査結果を反映させる必要があるものの、調査結果を待っていては四半期報告書や有価証券報告書の提出期限までに提出できる見込みがない場合は、財務(支)局に対して提出期限の延長申請を行っているか。
不祥事関与者へのインタビューの時期の決定は慎重に行っているか。 証拠隠滅のリスクや記憶があいまいになるリスク等を考慮しなければならない。
金融業等規制業界の場合、当局への相談・報告の時期をスケジュールに織り込んでいるか。
独占禁止法違反の場合は、課徴金減免制度(リーニエンシー)の利用を考慮し公正取引委員会へ報告する時期を考慮しているか。
不祥事調査の初動で、必要となる証拠を確保したか。 電子データの場合、証拠能力を低下させないため、確保した時点のデータとの同一性を維持するためのデジタル・フォレンジックという手法を利用しなければならない。
不祥事の調査は「仮説検証アプローチ」によっているか。
インタビューの際には、質問者との会話を録音したか。 インタビューのやり取りを文書に起こして、可能な限り、回答者の署名捺印を入手すべきである。
調査に際しては、問題点の見落としがないかを多角的に検討したか。 調査委員のダイバーシティ(多様性)が重要になる。
不祥事の裏に、子会社の社長の経営姿勢やコンプライアンスの順守に関する組織風土、親会社と子会社の関係に問題点が潜んでいる可能性がないかを検討したか。
子会社は、不祥事の関与者の懲戒解雇や降格、減俸等の責任追及を検討したか。
子会社のガバナンス力の低さを補うために、子会社自身のガバナンス力を高めるのか、あるいは子会社の権限や機能を親会社や別の子会社に移譲することでグループ会社の力を借りてガバナンスを強めるのか、を検討したか。
子会社に内部通報制度を導入する場合、その窓口は親会社の監査役や親会社の顧問法律事務所にしているか。
子会社の内部監査業務を親会社に委託することを検討したか。 子会社のすべてに内部監査室を設置することはコストがかかり過ぎることから、親会社への委託を検討すべきである。
子会社において、倫理教育や法令順守(コンプライアンス)研修を実施しているか。
取引先や金融機関への不祥事の経緯説明は、適時開示よりも前には行わないようにしているか。 インサイダー情報に該当する可能性がある。
子会社の不祥事が連結子会社に係る財政状態および経営成績に著しい影響を与える事象に該当する場合、臨時報告書の提出を行ったか。
子会社の不祥事が過年度の財務報告に影響を与える場合、過去の有価証券報告書等を訂正したか。 重要性の判断に際しては、財務諸表に及ぼす金額的な面と質的な面の双方を考慮する必要がある。
子会社の不祥事が過年度の財務報告に影響を与える場合、既に証券取引所へ提出済みの決算短信・四半期決算短信についても、訂正したか。

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2014/12/15 子会社への債権放棄(会員限定)

<解説>
子会社に対する債権放棄損の連結上の影響

 連結子会社を有する上場会社は、年度決算において連結財務諸表と個別財務諸表の2種類の決算書を作成し開示する必要があります。連結財務諸表とは、提出会社(ここでは親会社)と子会社等を含むグループ会社全体の状況を示した決算書となります。一方、個別財務諸表とは、提出会社1社の状況を示した決算書となります。投資家は親会社の状況しか分からない個別財務諸表よりも、連結グループ全体の状況を示す連結決算書を重視する傾向にあります(ちなみに四半期ごとの決算を開示する四半期報告書では、四半期連結財務諸表のみが開示対象とされています)。

 このように投資家が重視する連結財務諸表は、次の手順で作成されることになります。まず、連結グループ各社の個別財務諸表を合算します(連結手続き上は「単純合算」と呼びます)。続いて単純合算した数値から連結グループ内の取引について相殺消去を行ったり、連結グループ内での利益の移動に過ぎないものについてその分の利益を消去したりします(この消去の仕訳を「連結修正仕訳」と呼びます)。連結修正仕訳の目的を端的に言えば、連結グループ内の取引をすべて「なかったことにする」ということです。この作業を行うことにより、親会社側で利益を出すために子会社に押し込み販売をしたり、合理性のない価格で取引を行ったりすることにより決算書を良く見せようとする粉飾ができなくなります。また、連結財務諸表ではグループ内における業績の良い会社(本ケースにおけるP社)の決算だけでなく、業績の悪い会社(本ケースにおけるS社)の決算も合算されることになるため、投資家は連結グループ全体としての業績を把握しやすくなるというメリットがあります。

 さて、今回の取締役会での発言ですが、社長をはじめとする取締役の方々は、「子会社に対する債権を放棄することによる貸倒損失が(連結)決算書に計上されることで、業績予想で公表済みの利益が大きく下振れをする」ことを気にされているようです。確かに個別財務諸表上では子会社に対する債権を放棄すれば損失として計上する必要がありますが、上述したように連結決算上はグループ内の取引は原則としてすべて「なかったこと」にします。そこで、親会社で計上された債権放棄損は同じように子会社で計上されている債務免除益と相殺消去されることになります。

 しかし「債権放棄する以上連結グループで考えたとしても資金を回収できるわけではなく、個別上だけでなく連結上も損失なのではないか」という反論もあるのではないでしょうか。確かに債権放棄した以上、その資金は連結上でも回収できていないことになります。しかし、その損失に見合う金額は、毎期の連結決算において子会社業績の不振(赤字)という形で連結の業績に取り込まれていたことになります。すなわち、連結上損失は計上済みだったのです。一方で個別財務諸表上は子会社に対する貸付金という形、貸付金額のまま計上されており、これが債権放棄という形で一括して損失計上されたということになります。連結財務諸表の有用性が明確になるケースと言えます。

 ちなみに今回のパターンとは反対に含み益のある資産を子会社に時価で買い取らせて(あるいは子会社から買い取って)利益を計上しようとする場合がありますが、これも同じように連結財務諸表上はなかったこととされ売却益を取り消す連結修正仕訳を計上することとなります。

以上の解説をご覧いただければ、誰の発言がGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。

<正解>
GOOD発言はこちら

社外監査役C:「S社への何らかの支援が不可欠であるということはよく分かりました。もっとも、債権放棄以外の支援の方法は検討されたのでしょうか? 例えば、債権の株式化(デット・エクイティ・スワップ)や吸収合併なども考えられると思います。そういった代替案と比較検討ができるような資料を提供してください。また、それ以前に、S社の事業を親会社として今後どのようにしていくのかという議論が欠けているのではないでしょうか。その方向性を定めたうえで、初めて具体的な支援策について議論できることになると考えます。取締役会は経営の方向性を意思決定する場ですから、S社の事業を連結グループの事業の中でどのような位置づけにしていくべきかといった点について議論を深める必要があります。」
コメント:取締役会では1つの再建策の妥当性を検討するよりも、複数の再建策を選択肢として示したうえで比較検討する方が、より実のある議論ができます。「代替案と比較検討ができるような資料の提供」を依頼した社外監査役C氏の発言はGOOD発言でした。また、取締役会では具体的な再建策といった戦術的な議論に入る前に、そもそもS社の事業をどうしたいのかといった戦略的な議論をすべきです。仮にS社の事業がノンコア事業として連結グループには不要という結論になれば、再建策ではなく事業売却や撤退策の検討に入らなければなりません。先に再建策の議論をしてしまうと、その結論に引っ張られてしまい、大局的な議論ができなくなってしまいます。社外監査役C氏の発言はそれに気付いているので、GOODと言えます。

BAD発言はこちら
取締役営業部長A:「当社が貸付金全額を債権放棄した場合、巨額の貸倒損失の計上が不可避になってしまう。当社グループは今期、経常利益ベースで最高益の予想を開示しているが、それへの影響も慎重に考える必要があるのではないだろうか?」
コメント:S社の業績不振についてはすでに連結利益に取り込み済みであり、S社への貸付金を債権放棄したところで、連結上の経常利益に影響が生じるわけではありません。それにもかかわらず、「連結上の経常利益に影響がある」と勘違いしているためBAD発言と言えます。余談ですが、親会社単体の損益計算書であっても、子会社債権の貸倒損失が特別損失に計上されれば、経常利益への影響はないことになります。
代表取締役社長B:「確かに今期の連結業績予想として、創業以来の最高益となる経常利益の予想を開示している。2月までの11か月の分の連結月次決算を考慮すると、その実現可能性は相当高いと考えている。しかし、巨額の貸倒損失までは織り込んでいなかった。幸い、債権をいつ放棄するかのタイミングは債権者である我が社側に決定権があるのだから、あえて最高益をあきらめてまで今期に債権放棄に踏み切る必要もないだろう。」
コメント:代表取締役社長Bも取締役営業部長Aと同様、連結上の経常利益に影響が生じることを前提にした発言であることから、BAD発言と言えます。なお、「債権をいつ放棄するかのタイミングは債権者である我が社側に決定権がある」という点は適切な発言ですが、債権に対する回収可能性について疑義がある場合(子会社が債務超過等)には、債権放棄の意思決定に関わらず、会計基準に則って貸倒引当金や投資損失引当金といった損失処理が必要になる点には留意が必要です。

2014/12/15 【役員会 Good&Bad発言集】子会社への債権放棄

 中堅ハウスメーカーP社は高価格帯のオーダーメイド型住宅の施工に強みを持ち、高級感のあるデザイン性が高く評価され、競合他社との差別化に成功している。そのためここ数年、業界全体としては厳しい状況の中、安定的に利益を計上している。一方、P社の100%子会社であるS社は低価格帯の住宅に特化したハウスメーカーであるが、競争が激しく、ここ数年は赤字が続いている。S社は資金繰りも厳しく、親会社からの借入金と銀行からの借入金が年々増加している。期末も目前に迫った3月のP社役員会では子会社S社の自力再建策の進捗状況が報告されていた。

 取締役経営企画部長「S社の状況は、ただ今説明したとおりでございます。S社の自力再建は困難と言え、親会社の更なる支援が必要です。経営企画といたしましては、当社のS社への貸付金全額につき債権放棄を行い、早急にS社の財務体質の改善を図ることが必要と考えます。」

 取締役経営企画部長の説明に対して、他の役員が次のような発言をしました。次のAからCの発言のうち、誰の発言がGOOD発言でしょうか?

取締役営業部長A:「当社が貸付金全額を債権放棄した場合、巨額の貸倒損失の計上が不可避になってしまう。当社グループは今期、経常利益ベースで最高益の予想を開示しているが、それへの影響も慎重に考える必要があるのではないだろうか?」

代表取締役社長B:「確かに今期の連結業績予想として、創業以来の最高益となる経常利益の予想を開示している。2月までの11か月の分の連結月次決算を考慮すると、その実現可能性は相当高いと考えている。しかし、巨額の貸倒損失までは織り込んでいなかった。幸い、債権をいつ放棄するかのタイミングは債権者である我が社側に決定権があるのだから、あえて最高益をあきらめてまで今期に債権放棄に踏み切る必要もないだろう。」

社外監査役C:「S社への何らかの支援が不可欠であるということはよく分かりました。もっとも、債権放棄以外の支援の方法は検討されたのでしょうか? 例えば、債権の株式化(デット・エクイティ・スワップ)や吸収合併なども考えられると思います。そういった代替案と比較検討ができるような資料を提供してください。また、それ以前に、S社の事業を親会社として今後どのようにしていくのかという議論が欠けているのではないでしょうか。その方向性を定めたうえで、初めて具体的な支援策について議論できることになると考えます。取締役会は経営の方向性を意思決定する場ですから、S社の事業を連結グループの事業の中でどのような位置づけにしていくべきかといった点について議論を深める必要があります。」

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2014/12/15 独立社外取締役を2名以上選任することが難しい場合の対応策は?

 金融庁と東京証券取引所は12月12日に開催した有識者会議で、コーポレートガバナンス・コードの原案を取りまとめた。字句等の修正は座長(池尾和人 慶應義塾大学経済学部教授)に一任され、近日中にも最終原案が公表される。その後、1か月程度意見募集を行い、来年2月頃には正式決定する運びだ。

 コーポレートガバナンス・コード原案の中身は2014年11月25日のニュース『独立社外取締役「2名以上」も「相当でない理由」の開示は不要に』でお伝えした通りだが、今回は11月25日に示された案に「序文」が追加されている(2014年12月10日のニュース『12日最終案のコーポレートガバナンス・コードは「序文」に注目』参照)。コードはいわゆる「コンプライ・オア・エクスプレイン」(ルールに従え(comply:コンプライ)、従わないのであればその理由を説明せよ(explain:エクスプレイン))の手法を採用しているが、「すべてコンプライする必要はない」旨が明記された点が序文のポイント。各企業の個別事情に照らし「何を実施して、何を実施しないのか」、その判断に至った理由を説明することこそが投資家とのコミュニケーションの促進につながるというのがその趣旨である。したがって、各原則の文言や記載を表面的にとらえ、その一部を実施していないことのみをもって「実効的なコーポレートガバナンスが実現できていない」と機械的に評価することは適切ではないとされた。

 コーポレートガバナンス・コードの適用対象は「上場企業」とされたものの、マザーズやジャスダックなどの新興市場に上場する企業については、会社の規模などを考慮したうえ、適用に一定の配慮を行うかどうかを検討する。具体的には、・・・

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2014/12/15 独立社外取締役を2名以上選任することが難しい場合の対応策は?(会員限定)

 金融庁と東京証券取引所は12月12日に開催した有識者会議で、コーポレートガバナンス・コードの原案を取りまとめた。字句等の修正は座長(池尾和人 慶應義塾大学経済学部教授)に一任され、近日中にも最終原案が公表される。その後、1か月程度意見募集を行い、来年2月頃には正式決定する運びだ。

 コーポレートガバナンス・コード原案の中身は2014年11月25日のニュース『独立社外取締役「2名以上」も「相当でない理由」の開示は不要に』でお伝えした通りだが、今回は11月25日に示された案に「序文」が追加されている(2014年12月10日のニュース『12日最終案のコーポレートガバナンス・コードは「序文」に注目』参照)。コードはいわゆる「コンプライ・オア・エクスプレイン」(ルールに従え(comply:コンプライ)、従わないのであればその理由を説明せよ(explain:エクスプレイン))の手法を採用しているが、「すべてコンプライする必要はない」旨が明記された点が序文のポイント。各企業の個別事情に照らし「何を実施して、何を実施しないのか」、その判断に至った理由を説明することこそが投資家とのコミュニケーションの促進につながるというのがその趣旨である。したがって、各原則の文言や記載を表面的にとらえ、その一部を実施していないことのみをもって「実効的なコーポレートガバナンスが実現できていない」と機械的に評価することは適切ではないとされた。

 コーポレートガバナンス・コードの適用対象は「上場企業」とされたものの、マザーズやジャスダックなどの新興市場に上場する企業については、会社の規模などを考慮したうえ、適用に一定の配慮を行うかどうかを検討する。具体的には、東証が、コーポレートガバナンス・コード決定後に上場規則を定める際に、新興市場に上場する企業の取扱いを検討することになる。ただし、少なくとも東証1部及び2部上場企業は確実に適用対象となるため、今から準備しておくことが必要となろう。

 適用時期は「平成27年6月1日」に決まった。すなわち、3月決算法人の6月総会から適用されることになる。有識者会議における議論では、「少なくとも2名以上選任すべき」と明記された独立社外取締役を確保するため、「1年程度の経過措置を求めるべきでは」といった意見も出た。しかし、今年6月に閣議決定された「日本再興戦略 改訂2014」が平成27年6月総会からの実施を求めているため、適用時期の延期はできなかった。こうした中、平成27年6月総会で独立社外取締役を2名以上選任することが難しい場合には、「今後の取組み予定や実施時期の目途」を説明すればよいとされた点も注目される。

2014/12/12 子会社の内部統制は親会社が整備すべきか

上場会社の多くが子会社を有しているが、このところ「子会社の内部統制は親会社が整備しなければならない」といった理解が広がっている。これは、改正会社法が、内部統制システムの整備に関する規定で、「当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要な体制の整備」を求めているからだ。この規定を受け、一部の法律雑誌では、「親会社は、法人間の壁を越えて子会社の内部統制を整備する義務を負うとともに、子会社を監督すべき」といった解説記事も見られる。果たしてこれは本当だろうか。・・・

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2014/12/12 子会社の内部統制は親会社が整備すべきか(会員限定)

上場会社の多くが子会社を有しているが、このところ「子会社の内部統制は親会社が整備しなければならない」といった理解が広がっている。これは、改正会社法が、内部統制システムの整備に関する規定で、「当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要な体制の整備」を求めているからだ。この規定を受け、一部の法律雑誌では、「親会社は、法人間の壁を越えて子会社の内部統制を整備する義務を負うとともに、子会社を監督すべき」といった解説記事も見られる。果たしてこれは本当だろうか。

会社法の改正を受け、法務省は先月(2014年11月)25日に「会社法施行規則案」を公表しているが、この中の「内部統制システムの整備」に関する規定では、(1)子会社の取締役、執行役、業務を執行する社員等の職務の執行に係る事項の親会社への報告に関する体制、(2)子会社の損失の危機の管理に関する規程その他の体制、(3)子会社の取締役等の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制、(4)子会社の取締役等及び使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制――が定められている(会社法施行規則案100条1項5号)。内部統制とはもともと企業内部における自律的なコントロールを指すが、これらの規定は、親会社に「子会社からの報告体制(1)」や「危機管理規程(2)」の整備、「子会社の取締役や従業員の職務執行の効率性の確保(3)」「子会社の取締役や従業員の職務執行の法令および定款への適合性確保(4)」を求めているに過ぎない。あくまでも内部統制は「子会社ごと」に子会社自身が整備することが前提であり、巷で言われていたような「親会社が子会社の内部統制を整備する義務」などは規定されていない。

やや分かりづらいので具体例で見てみよう。今回の会社法改正施行(平成27年5月1日)後に、まず親会社の取締役会で「子会社AおよびBには、○○といった体制構築を求める。子会社Cには、会社組織が小規模であることから○○といった体制構築を求める。」といった方針(大枠)を決議する。そして、各子会社にそれを求め、各子会社がそれを整備・運用できているかをモニターすることになる。あくまで子会社の内部統制を構築する義務を負うのは子会社の取締役であり、親会社の取締役は企業集団としての方針を決議し、その通りに整備・運用されていることを確認する義務を負うに過ぎないことになる。

ただ、会社法施行規則案で子会社の内部統制構築義務を求められなかったからといって、それで安心できるわけではない。親会社の取締役に対して子会社の管理責任が問われた株主代表訴訟では、子会社への監視義務違反などによる忠実義務および善管注意義務違反が認められている(2014年3月25日のニュース「多重代表訴訟適用対象外の子会社でも、親会社取締役は安心できず!?」参照)。親会社の取締役には、子会社への管理責任がついて回るということは認識しておきたい。

2014/12/11 (新用語・難解用語)経営判断の原則

変化の激しい時代を会社が生き抜くために、取締役は時に大胆な経営判断を下さなければならないこともある。また、会社を別次元へと成長させるには、社運をかけた新規事業を打ち出す必要もあるだろう。

ただ、こうした大きな決断にはリスクも伴う。結果としてそれが誤りで、会社に損失をもたらしてしまうことも十分にあり得る。このような場合、取締役として気にしておきたいのが善管注意義務違反だ。

取締役には、会社との委任関係に基づいて「善良な管理者の注意」をもって職務を遂行する義務、すわなち「善管注意義務」がある。善管注意義務を怠って会社に損害が生じた場合には、取締役はこれを賠償する責任を負うことになる。

ただ、会社を経営していくうえで経営判断のミスは付きものであり、それに対していちいち善管注意義務違反を問われるとなれば、取締役は委縮して思い切った経営ができなくなる。そこで、取締役の経営判断が善管注意義務に違反するかどうかを判定する基準が必要になる。これが「経営判断の原則」である。

経営判断の原則とは、役員の経営上の判断が善管注意義務に違反するかどうかの判定は、経営判断の前提となった事実の認識について「不注意な誤りがなかったかどうか」、また「その事実に基づく意思決定の過程が通常の企業人として著しく不合理でなかったかどうか」という点から行うべきである、とするもの。具体的には、・・・

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2014/12/11 (新用語・難解用語)経営判断の原則(会員限定)

変化の激しい時代を会社が生き抜くために、取締役は時に大胆な経営判断を下さなければならないこともある。また、会社を別次元へと成長させるには、社運をかけた新規事業を打ち出す必要もあるだろう。

ただ、こうした大きな決断にはリスクも伴う。結果としてそれが誤りで、会社に損失をもたらしてしまうことも十分にあり得る。このような場合、取締役として気にしておきたいのが善管注意義務違反だ。

取締役には、会社との委任関係に基づいて「善良な管理者の注意」をもって職務を遂行する義務、すわなち「善管注意義務」がある。善管注意義務を怠って会社に損害が生じた場合には、取締役はこれを賠償する責任を負うことになる。

ただ、会社を経営していくうえで経営判断のミスは付きものであり、それに対していちいち善管注意義務違反を問われるとなれば、取締役は委縮して思い切った経営ができなくなる。そこで、取締役の経営判断が善管注意義務に違反するかどうかを判定する基準が必要になる。これが「経営判断の原則」である。

経営判断の原則とは、役員の経営上の判断が善管注意義務に違反するかどうかの判定は、経営判断の前提となった事実の認識について「不注意な誤りがなかったかどうか」、また「その事実に基づく意思決定の過程が通常の企業人として著しく不合理でなかったかどうか」という点から行うべきである、とするもの。具体的には、(1)行為当時の状況に照らし、経営判断の前提となる事実認識の過程(情報収集とその分析・検討)に問題はなかったか、(2)事実認識に基づく意思決定の推論過程および内容において問題がなかったか、の2つの基準により、善管注意義務違反の有無を判定することになる。

経営判断の原則により善管注意義務違反に問われないために、取締役は経営判断を行う際にこの2つを充足することを意識する必要がある。
(1)については、
・経営判断の前提となる情報は多岐に渡ることを踏まえ、社内・社外の様々なソースからタイムリーに情報を入手する。
・情報の分析・検討に必要となる知見を深めるための継続的な努力を続ける。
・入手した情報を盲目的に信用することなく、様々な角度から検討を加え、取捨選択する。
(2)については、
・取捨選択した情報を踏まえ、「通常の企業人」であればどのような判断を下すのか、自問自答を繰り返す。
・自社における過去の経営判断の失敗原因を徹底的に研究し、再発防止策を講じる。
・他社の失敗事例を研究する。
―――といった取組みを実践することで、善管注意義務違反に該当することを避けられるだろう。

2014/12/10 機関投資家が企業に投げかけたい質問の一覧が明らかに

 スチュワードシップ・コードの導入により企業と投資家の対話(エンゲージメント)が求められているが、企業としては「投資家が何を知りたいのか」、大いに気になるところだろう。

 こうした中、経済産業省内に設置されている「投資家フォーラム作業部会」は、機関投資家が企業に質問したい事項をまとめたペーパー「企業経営者と長期投資家の実りある対話のために」を取りまとめた。

 「投資家フォーラム」とは、経済産業省の企業報告ラボのプロジェクトの1つで、機関投資家等により構成されるもの。下記のとおり、今年(2014年)2月に公表された「日本版スチュワードシップ・コード」や8月に公表された伊藤レポートには、投資家間の意見交換などを後押しする記述が盛り込まれており、「投資家フォーラム」プロジェクトはこれらを根拠にしている。

日本版スチュワードシップ・コード 指針7-3
 対話や判断を適切に行うための一助として、必要に応じ、機関投資家が、他の投資家との意見交換を行うことやそのための場を設けることも有益であると考えられる。

伊藤レポート P.90
 企業との対話に向けた実力を高めるため、機関投資家等が知識や経験を共有し、投資家間での忌憚ない議論や情報発信等ができるプラットフォームづくりを促進することも重要である。対話・エンゲージメントに関し、その深さや相手、対話軸はどうあるべきかといった共通基盤を知的インフラとして提供することなどが期待されよう。

 投資家フォーラムの参加者は、所属運用会社の商業的利害関係や運用方針または投資ポジションによる利益相反の介在を排除するため、基本的には「個人」となるが、参加者には巨額資金を動かす資産運用会社に所属する者が多数含まれる見込みであり、その影響力は大きいものになるだろう。実際、主要運用会社が投資する株式数を合算すれば、保有割合が20%を超えることになる上場会社は少なくない。

 今回取りまとめられたペーパーでは、「長期的な戦略課題と持続的な価値創造」「規律ある経営の仕組み」「投資家への向き合い方」の3つに分けて、機関投資家等から企業に投げかけられるであろう質問項目が列挙されている。

 なかでも機関投資家が最も重視しているのが、「長期的な戦略課題と持続的な価値創造」だ。今回のペーパーの目的は、決して機関投資家が企業に文句を言うことではない。あくまでも企業の価値創造を後押し、価値創造のビジョンを企業と機関投資家がシェアすることを狙いとしている。報酬問題が典型であるように、これまでのコーポレートガバナンスに関する議論を踏まえると、つい「機関投資家vs企業」という図式を想像しがちだか、それは企業価値の創造という観点からはあまり意味がないというのが、投資の世界における世界的な新潮流となっている。

 具体的には、「中長期的な企業価値向上や持続的成長を促す」という観点から、「経営理念」「ビジョン」「目標達成のための具体的戦略」「成長原資の確保」をテーマにした下記のような質問項目が並んでいる(一部、当フォーラムで要約)。

・10 年後にどのような姿になっていたいと考えるか。また、会社の将来像、経営理念や長期ビジョンなどが経営計画や経営戦略等にどのような形で反映されているか。
・ 経営計画等における財務係数や経営管理指標(KPI)の目標値はどのような考え方にもとづいて決定されたか。そして実際にどのように現場への浸透を図っているか。
・株主資本をどのように活用しようと考えているか。中長期的な事業拡大に向けた投資に備えた部分、リスクへの対応を目的とする部分、株主への還元を想定する部分などの配分についてどのように考えているか。
・現金等(含む現金相当物)について適正と考えられる水準(比率等)はどの程度か。それはどのような考え方に・・・

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