2014/09/22 個人情報流出、「個人情報保護」と並んで重要なもう1つの視点

 ベネッセコーポレーションの個人情報大量流出事件は、グループ会社の派遣社員の逮捕(不正競争防止法違反(営業秘密の複製))に至った。この事件を受け、政府は事業者に対し、改めて個人情報の保護を徹底するよう求めている。経済産業省は今月(2014年9月)末にも個人情報保護法ガイドラインの改訂版を公表し、パブリックコメントに付す予定だ。

 ガイドラインの改訂のポイントは次のとおりとなる見込み。
(1)個人情報保護管理者に役員を任命すること
 現行のガイドラインでは、「個人情報保護管理者(チーフ・プライバシー・オフィサー(CPO)」を置くことが規定されているが、改訂版では、情報の管理体制を明確にするため、CPOを「役員」の中から選ぶことが求められる。
(2)当該役員が、情報の委託先の安全管理が適正かどうかを確認する
 個人情報保護法22条および現行のガイドラインでも「委託先の監督」について規定はしているが、「誰」がその責任を負うかまでは明記していない。ベネッセの事件はまさに情報の委託先を舞台に起こったことを受け、委託先の情報管理についてもCPO(役員)が責任を負うことを示すことにより、情報流出の防止効果を高める。
(3)第三者から個人情報を取得する場合には、情報の取得経路の確認を求める
 第三者が不正な経路により個人情報を取得することを牽制する効果を狙う。

 いずれも、「義務付け」までは求められることはない見込みだが、企業としては、個人情報管理体制がガイドラインに沿ったものかどうか、確認する必要が出てくるだろう。

 こうした個人情報の保護とともに、情報流出に関して企業が忘れてはならないのが・・・

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2014/09/22 個人情報流出、「個人情報保護」と並んで重要なもう1つの視点(会員限定)

 ベネッセコーポレーションの個人情報大量流出事件は、グループ会社の派遣社員の逮捕(不正競争防止法違反(営業秘密の複製))に至った。この事件を受け、政府は事業者に対し、改めて個人情報の保護を徹底するよう求めている。経済産業省は今月(2014年9月)末にも個人情報保護法ガイドラインの改訂版を公表し、パブリックコメントに付す予定だ。

 ガイドラインの改訂のポイントは次のとおりとなる見込み。
(1)個人情報保護管理者に役員を任命すること
 現行のガイドラインでは、「個人情報保護管理者(チーフ・プライバシー・オフィサー(CPO)」を置くことが規定されているが、改訂版では、情報の管理体制を明確にするため、CPOを「役員」の中から選ぶことが求められる。
(2)当該役員が、情報の委託先の安全管理が適正かどうかを確認する
 個人情報保護法22条および現行のガイドラインでも「委託先の監督」について規定はしているが、「誰」がその責任を負うかまでは明記していない。ベネッセの事件はまさに情報の委託先を舞台に起こったことを受け、委託先の情報管理についてもCPO(役員)が責任を負うことを示すことにより、情報流出の防止効果を高める。
(3)第三者から個人情報を取得する場合には、情報の取得経路の確認を求める
 第三者が不正な経路により個人情報を取得することを牽制する効果を狙う。

 いずれも、「義務付け」までは求められることはない見込みだが、企業としては、個人情報管理体制がガイドラインに沿ったものかどうか、確認する必要が出てくるだろう。

 こうした個人情報の保護とともに、情報流出に関して企業が忘れてはならないのが「営業秘密」の管理という視点だ。

 冒頭で述べたとおり、ベネッセコーポレーションの事件では、グループ会社の派遣社員が不正競争防止法違反により逮捕されている。不正競争防止法違反に問うことができれば、違法行為に対する差止めや損害賠償請求といった民事上の保護を受けることが可能になる。ただ、不正競争防止法上、「営業秘密」に該当するためには、秘密管理性、有用性、非公知性といった要件を充たす必要がある。逆に言うと、企業は個人情報をこれらの要件を充たす「営業秘密」として管理しておかなければ、個人情報を盗んだり、漏洩した犯人を不正競争防止法違反に問えないことになるので要注意だ。

 もっとも、たとえ営業秘密に該当しなくても、重要な情報が流出すれば企業はこれまでに築き上げたノウハウを一気に失うことにもなりかねない。こうした事態を避けるためには、不正行為が行われれないよう事前に適正な管理体制を築いておく必要がある。営業秘密を含め、企業にとって重要な情報の管理については、独立行政法人情報処理推進機構が出している「組織における内部不正防止ガイドライン」が参考になるだろう。同ガイドラインでは、「受渡しから廃棄まで」適切に管理することを求めている(4.4(13)参照)。

 なお、ベネッセの事件を受け、同ガイドラインも、委託先の情報管理に対する責任などについて改訂が行われる見込みだ。同ガイドラインの改訂内容は明らかになり次第続報したい。

2014/09/19 アクティビストと大手資産運用会社のスタンスの違い

 日本でも「アクティビスト *」、つまり投資先企業の経営陣に積極的に提言を行い、企業価値の向上や株主還元の増加を目指す、いわゆる“物言う株主”の存在感が高まっている。アクティビストの動きが活発化すればするほど、日本企業は株主還元の拡大を迫られることになるだろう。アメリカの例を見ると、昨年(2013年)7-9月期のS&P500社による自社株買いと配当は2007年以来の高水準となったが、その背景には、アクティビストの攻勢があると言われている。

* アメリカの投資情報会社 スタンダード&プアーズが選定した、ニューヨーク証券取引所、NASDAQ、アメリカン証券取引所に上場する代表的な500社

 企業にとっては脅威となり得るアクティビストだが、逆に言うと、投資家にとっては、アクティビストが投資する銘柄は魅力があり、実際、アクティビストの手法を活用するファンド(アクティビスト・ファンド)には大量の資金が流入している。アクティビスト・ファンドの運用資産は、2009年の360億ドルから、2013年第3四半期末時点では890億ドルまで増加しており、しかも高い運用実績を残している。シティグループの報告書によると、17の有力なアクティビスト・ヘッジファンドで構成されるインデックスは、2009年以降19%ものリターンを上げているという。これは、全ヘッジファンドの平均リターン7.5%を大きく上回るものとなっている。

 ただ、市場関係者の間では、こうしたアクティビストの活動に警鐘を鳴らす向きも少なくない。・・・

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2014/09/19 アクティビストと大手資産運用会社のスタンスの違い(会員限定)

 日本でも「アクティビスト *」、つまり投資先企業の経営陣に積極的に提言を行い、企業価値の向上や株主還元の増加を目指す、いわゆる“物言う株主”の存在感が高まっている。アクティビストの動きが活発化すればするほど、日本企業は株主還元の拡大を迫られることになるだろう。アメリカの例を見ると、昨年(2013年)7-9月期のS&P500社による自社株買いと配当は2007年以来の高水準となったが、その背景には、アクティビストの攻勢があると言われている。

* アメリカの投資情報会社 スタンダード&プアーズが選定した、ニューヨーク証券取引所、NASDAQ、アメリカン証券取引所に上場する代表的な500社

 企業にとっては脅威となり得るアクティビストだが、逆に言うと、投資家にとっては、アクティビストが投資する銘柄は魅力があり、実際、アクティビストの手法を活用するファンド(アクティビスト・ファンド)には大量の資金が流入している。アクティビスト・ファンドの運用資産は、2009年の360億ドルから、2013年第3四半期末時点では890億ドルまで増加しており、しかも高い運用実績を残している。シティグループの報告書によると、17の有力なアクティビスト・ヘッジファンドで構成されるインデックスは、2009年以降19%ものリターンを上げているという。これは、全ヘッジファンドの平均リターン7.5%を大きく上回るものとなっている。

 ただ、市場関係者の間では、こうしたアクティビストの活動に警鐘を鳴らす向きも少なくない。配当や自社株買いといった株主還元は、企業の計画的な資本戦略の一環として行われるべきであり、株主による短期的利益の追求と引き換えに企業の投資が犠牲になれば、企業は持続的な成長の機会を失うことになるだろう。すなわち、設備投資・イノベーション・人材育成・内部統制システムなど、企業に持続的な成長をもたらすものへの投資と、株主還元のバランスを図ることが重要であり、アクティビストの活発化により企業が過度な株主還元を実施すれば、自らの成長の芽を摘む結果になりかねないということだ。

 この点を踏まえ、大手資産運用会社の中には、短期的な利益よりも「長期的な成長」を第一の目標に運用を行うことを基本とするところも少なくない。今後、日本でも益々アクティビストの活動が本格化すると思われるが、アクティビストの要求と大手資産運用会社のスタンスはしばしば異なるということを念頭に、過度な株主還元には慎重であるべきだろう。

2014/09/18 【ディスクロージャー】連結決算を早期化したい

 

決算の早期化はなぜ必要?

上場会社には、投資家に投資判断の材料を提供するため、財務情報について頻繁な情報開示(ディスクロージャー)義務が課されています。具体的には、金融商品取引法、会社法、証券取引所規則の3つの法令・規則により、それぞれ下表のような開示が求められています。

法令・規則 四半期(年度末は除く)ごと 年度ごと
書類 期限 書類 期限
金融商品取引法 四半期報告書 四半期決算期末
から45日以内
有価証券報告書 決算期末から
3か月以内
会社法 不要 計算書類 決算期末から
3か月以内
証券取引所規則 四半期決算短信 四半期決算期末
から45日以内
(四半期報告書
より前に開示
する必要)
決算短信 決算期末から
45日以内
が望ましい

金融商品取引法に基づく開示書類には上の表のような提出期限が設けられており、期限を遵守できない場合は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金(またはこれの併科)という罰則を課されることになります。上場会社が有価証券報告書または四半期報告書の提出を遅延してしまうと、上場廃止に至る可能性もあります(東証の有価証券上場規程601条1項10号)。

なお、決算短信の場合、「45日以内が望ましい」とはされているものの「期限」とまではされておらず、あくまで「迅速な開示」が求められているに過ぎません。

また、開示が遅れた場合、特に開示書類の中でもっとも開示時期が早く、投資家やメディアの注目度も高い決算短信や四半期決算短信の開示が予定日より遅れた場合には、投資家に「何か問題が起きたのでは?」という疑念を抱かせることになりかねません。

こうした事態を避けるために必要になるのが、決算の早期化です。一時のような“短信の早期提出争い”ブームは既に終焉しているとはいえ、決算短信の開示時期が同業他社に比べて遅れがちな会社は、投資家から「決算早期化」の強いプレッシャーを受けることになります。仮に決算早期化を実現できたとしても、来年になると、投資家や経営陣は、それ以上に早い時期での開示を求めることになります。一方で、経理部門に目標管理制度を導入した場合、決算早期化がテーマになりがちです。そのような事情が決算早期化に拍車をかけることになります。

開示の遅れは、決算数値に対する会計監査人との意見の相違などが原因になることもありますが、こうした要因による開示スケジュールの遅れを吸収する日数を確保するためにも、決算早期化が必要になります。また、経営環境が目まぐるしく変化する昨今、経営陣の迅速な意思決定に欠かせないスピーディーな決算数値の確定は、経営管理の観点からも極めて重要と言えます。

IFRS導入で子会社決算の早期化が促進

上場会社の多くは連結決算を行い、開示しています。したがって、「決算早期化」という場合、通常は、親会社単体の決算早期化に加えて、子会社や関連会社も含めた連結グループにおける「連結決算の早期化」も意味していることになります。

日本の会計基準では、親会社と子会社の決算日が3か月を超えない場合には、子会社の財務諸表をそのまま(仮決算せずに)連結することができます()。

 ただし、連結決算日(=親会社の決算日。例えば3月末)と子会社の決算日(例えば12月末)の間に生じた重要な連結グループ内取引については子会社側で追加計上する等の調整が必要となります。

一方、国際会計基準(以下、「IFRS」という)では、実務上不可能な場合を除き、親会社と子会社の決算日は同日とする必要があります。ここでいう「実務上不可能」とは、「あらゆる合理的な努力をしても実現が不可能」という意味です。 そこで、IFRSに対応するため、親会社と子会社の決算日を統一する会社が増えてきています。よく見受けられるのは子会社の決算日を親会社に合わせるケースですが、逆に、親会社が子会社に決算日を合わせる事例もあります。例えばJT(日本たばこ産業株式会社)は、収益の半分を占める海外グループ会社の大部分が12月期決算であることから、親会社であるJTが3月決算から12月決算に移行しました。

実は、このような親会社と子会社の決算日を統一する流れは、子会社に決算の早期化を迫ることになります。その理由を説明しましょう。

日本の会計基準で認められている“3か月ルール”の下では、子会社の決算日から連結決算日まで時間がある分、子会社は余裕を持って決算作業を行うことができ、連結決算のスケジュールも早期化しやすいというメリットがあります()。

 ただし、これは子会社の決算日が12月末、親会社の決算日(=連結決算日)が3月末というように、子会社の決算日が先に来る場合の話であり、逆に、あまり実例はありませんが、親会社の決算日が子会社の決算日より早い場合には(例えば親会社の決算日が12月末、子会社の決算日が3月末)、子会社は12月末に仮決算を行うことが考えられます。

一方、IFRSでは決算日を統一しなければならないため、子会社は、親会社の決算スケジュールに合わせて決算を締める必要があります。したがって、もし子会社の決算作業に遅れが出れば、連結決算全体の作業も大幅に遅れてしまう可能性があります。

なお、子会社の決算日を親会社と同一日にできない場合(例えば、12月決算が強制される中国の子会社と、3月決算の日本の親会社)には、子会社は「仮決算」を行う必要があります。仮決算とは、本来の決算日とは異なる時期に決算を締めることであり、ここでは、子会社は親会社と同一の決算日(3月末)に「仮決算」を行って、実質的に親会社と決算日を合わせることになります。

連結決算早期化の進め方

連結決算の早期化は、一般的に下記のような方法により進めていくことになります。

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「現状の調査・分析」では、各子会社(場合によっては重要度の高い関連会社も含みます。以下同じ)の決算業務の現状について調査を行います。調査のタイミングとしては、決算の邪魔にならないよう経理の繁忙期を避けた時期となります。そして、その結果を分析することで、各子会社の決算早期化を妨げている要因を具体的に特定していきます(阻害要因の特定)。そのうえで、阻害要因ごとに解決策を検討・実施して、決算早期化を図ります。

以下、それぞれの内容を具体的に見ていきましょう。

決算早期化の鍵を握る「レポーティング・パッケージ」

第一段階の「各子会社の決算業務の現状についての調査・分析」でまず押えておく必要があるのが、連結決算の月次・四半期・年次における試算表確定日(主要な勘定科目別の確定日)、社内的な連結決算確定日、監査後の連結決算確定日(監査法人の承認を受けた連結決算の確定日)です。これらの日を把握することにより、現状、連結決算が暦日ベース(決算作業は休日返上で行われることも多く、休日も含めて何日の作業日数なのかを把握します)で何日かけて締められており(社内的な決算確定日-期末日)、また、監査には暦日ベースで何日かかっているのか(監査後決算確定日-社内的な決算確定日)を分析することができます。早期化の観点から理想的な日数は、・・・

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資料の入手時間を短縮する方法

阻害要因の1つに、子会社の経理担当者が自社の決算を締めるための資料(長期未回収債権の一覧表、長期滞留在庫の一覧表など)やレポーティング・パッケージを作成するための資料(金融商品の時価に関する情報、退職給付や年金資産に関する情報など)を、社内の各部署(例えば長期未回収債権の一覧表であれば営業部門、長期滞留在庫の一覧表であれば事業所や工場など)から入手するのに時間がかかってしまい、親会社からの指定期限に間に合うように子会社の決算を締められないというものがあります。その原因は、経理担当者のスキル不足・事前準備不足・要員不足、IT化が進んでいないこと、社内のデータ管理が不十分、他部門との連携不足など様々です。

こうした阻害要因を取り除くためには、まず資料入手に至るまでの業務フローを確認して、業務フローの中のどこがボトルネックとなっているのかを把握したうえで、そのボトルネックを解決していくことになります。

例えば長期未回収債権の一覧表や長期滞留在庫の一覧表といった資料は、・・・

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海外子会社の「休日」に要注意

企業活動のグローバル化に伴い、海外子会社を持つ上場企業は増加の一途をたどっています。海外子会社も国内子会社と同様に原則として連結対象になりますが、海外子会社が連結決算の遅れの原因となっていることが少なくありません。

その理由としては、まず・・・

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親会社の不明確な指示がレポーティング・パッケージ作成遅延の原因に

また、子会社でレポーティング・パッケージの作成に時間がかかりすぎ、親会社からの指定期限通りにこれを提出できないというケースがあります。

その原因としてまず考えられるのが、・・・

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入力項目の決定は“費用対効果”の発想で

また、レポーティング・パッケージの様式の分量(記載が必要となる項目)が多いために入力作業に時間がかかっている場合もあります。

対処方法としては、まず、・・・

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子会社の担当者のモチベーションアップが入力ミス防止に

これまで述べてきたような対策を実施してもなおレポーティング・パッケージの入力に時間がかかってしまう場合は、子会社におけるレポーティング・パッケージの入力担当者を増やす、システムでの対応を図る等の対応を検討することになります。

会計システムとレポーティング・パッケージのデータ連携ができていないことから、レポーティング・パッケージに入力する必要のある各項目の数字を“手入力”している場合には、会計システムとレポーティング・パッケージをつなぐ新たなシステムの構築・改修(会計システムのデータが、手入力を経ることなくレポーティング・パッケージに向け集計・出力されるようにする)が有効です。

また、よくある例として、・・・

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経理以外の部門が子会社の決算作業遅延の一因に

子会社の決算早期化というと、親会社の中では“経理マター”という認識が一般的だと思いますが、実は経理以外の部署が子会社の決算作業の遅れの一因を作っている場合もあります。

具体的には、・・・

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監査に時間がかかる場合どうするか?

ここまで、子会社の決算作業が遅れる原因とその対策について解説してきましたが、子会社の決算作業自体は予定通りに進んだものの、会計監査が終わる時期が遅れ、親会社が指定した期限通りにレポーティング・パッケージを提出できないというケースがあります。

その原因としては、まず、・・・

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「統一」と「集約」が決算を早期化

さらに踏み込んだ対応としては、親会社と子会社とで違いのある勘定科目の統一(例えば、子会社Aでは「機械及び車輛運搬具」の勘定科目を用いており、子会社Bでは「機械装置」と「車両運搬具」といった別々の勘定科目を用いている場合、親会社の「機械装置及び運搬具」に統一する)、連結グループ各社で異なる会計システム・固定資産管理システム等を同一のものに統一することによる連結グループ各社の業務の標準化、連結グループ各社の経理業務を受託する子会社を設立して情報の集約を図る、ホールディングカンパニーに経理機能を集中させる、といった対応が考えられます。

また、子会社の決算早期化を推進する段階では、・・・

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「決算早期化事例集」の作成を

以上、子会社の決算早期化およびそれによる連結決算の迅速化について述べてきましたが、これらはすぐに達成できるものではありません。

そこで、各子会社には、決算早期化達成に向けてのマイルストーン(第●期までにシステムの統一化を図り、その翌期には●日での公表を目指し、さらにその翌期には●日短縮するといった具合に、節目ごとに設定する具体的な目標)を設定させたうえで、各目標時期までに、各子会社において親会社への報告を遅延させている要因を取り除くよう努力することを求めることになります。そのうえで、・・・

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2014/09/18 チェックリスト:連結決算を早期化したい(会員限定)

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■チェックリスト:連結決算を早期化したい

チェック事項 備考 対応未了 対応済
各子会社の現状での決算業務について調査・分析したか。 月次・四半期・年次における試算表確定日(主要な勘定科目別の確定日)、監査後決算確定日、経理要員数、会計監査人の状況、使用している会計システムの状況など。
親会社への報告期限に対しての調査を実施したか。 現状の決算日程を順守できているか、順守できていない場合には、どのような阻害要因があって、その阻害要因を解決するためにはどのような対応が必要となり、いつまでに対応が完了する見込みなのかなどを調査する。
阻害要因として、資料の入手に時間がかかっている場合には、業務のフローを確認したか。
阻害要因として、資料の入手に時間がかかっている場合には、業務の分担や管理を確認したか。
阻害要因として、資料の入手に時間がかかっている場合には、子会社の所在地国の祝日を確認したか。
阻害要因として、親会社からの指示が不明確なためにレポーティング・パッケージの作成に必要以上の時間がかかっている場合には、レポーティング・パッケージの入力方法について文書による詳細な指示をしたか。
場合によっては、子会社担当者を集めた事前の説明会や研修会を開催して、直接、レポーティング・パッケージの入力についての説明を実施したか。
阻害要因として、レポーティング・パッケージの作成についての各子会社から問い合わせを受けた事項を事例集として他の子会社と共有したか。
阻害要因として、レポーティング・パッケージの様式の分量が多いために入力作業に時間がかかっている場合、レポーティング・パッケージに不必要な項目がないかを洗い直したか。
阻害要因として、レポーティング・パッケージの様式の分量が多いために入力作業に時間がかかっている場合、子会社のレポーティング・パッケージの入力担当者を増やすことを検討したか。
阻害要因として、レポーティング・パッケージの様式の分量が多いために入力作業に時間がかかっている場合、子会社のシステムで対応を図ることを検討したか。
親会社の経理担当役員が中心となり、四半期ごとに親会社と子会社の経理担当者の会合を開き、項目の過不足について打ち合わせするとともに、監査法人担当者とも意見交換を行ったか。
親会社の経理担当者が中心となって、子会社担当者を集めた事前の決算作業説明会(トピック、改正事項等の情報共有)を開催して丁寧な説明を行ったか。
阻害要因として、監査人の監査スケジュールが遅い場合には、監査人と事前にスケジュールの打ち合わせを行って、必要なタイミングで監査を実施してもらえるように交渉したか。
阻害要因として、監査時間が多くかかっているのが資料提供に原因がある場合には、いつまでにどの資料を監査人に提供するのかを監査人との協議で明確にしたか。
阻害要因として、監査時間が多くかかっているのが監査人側で会計上の問題点の検討に時間がかかっているケースでは、決算前に既に発生している事象については早目に監査人に連絡したか。
子会社ごとの勘定科目の統一、会計システム・固定資産管理システム等のシステム統一による連結グループ内での業務標準化、連結グループ内で経理業務を受託する子会社を設立して情報の集約を図る、ホールディングカンパニーに経理機能を集中化させる、といった対応を検討したか。
一時的に人的リソース不足となる場合で、社内で人員の手当てをするのが難しい場合には、親会社から一時的に経理マンを出向させる方法や社外から会計士等の専門家を一時的に採用するといった方法も検討したか。
監査対応で会社側窓口となる担当者は、社内調整力の優れた者を起用しているか。また、その者には監査対応中はルーチンの作業を持たせないようにしているか。
連結決算の早期化達成に向けたマイルストーンを設定したか。
各子会社が継続的に決算早期化の阻害要因の解決を図って、決算の早期化を進めているかを継続的に確認しているか。
各子会社における決算早期化の阻害要因の解決方法は、事例集に集積しとして、各子会社間で共有する仕組みを構築したか。

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2014/09/18 【ディスクロージャー】連結決算を早期化したい(会員限定)

決算の早期化はなぜ必要?

上場会社には、投資家に投資判断の材料を提供するため、財務情報について頻繁な情報開示(ディスクロージャー)義務が課されています。具体的には、金融商品取引法、会社法、証券取引所規則の3つの法令・規則により、それぞれ下表のような開示が求められています。

法令・規則 四半期(年度末は除く)ごと 年度ごと
書類 期限 書類 期限
金融商品取引法 四半期報告書 四半期決算期末
から45日以内
有価証券報告書 決算期末から
3か月以内
会社法 不要 計算書類 決算期末から
3か月以内
証券取引所規則 四半期決算短信 四半期決算期末
から45日以内
(四半期報告書
より前に開示
する必要)
決算短信 決算期末から
45日以内
が望ましい

金融商品取引法に基づく開示書類には上の表のような提出期限が設けられており、期限を遵守できない場合は、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金(またはこれの併科)という罰則を課されることになります。上場会社が有価証券報告書または四半期報告書の提出を遅延してしまうと、上場廃止に至る可能性もあります(東証の有価証券上場規程601条1項10号)。

なお、決算短信の場合、「45日以内が望ましい」とはされているものの「期限」とまではされておらず、あくまで「迅速な開示」が求められているに過ぎません。

また、開示が遅れた場合、特に開示書類の中でもっとも開示時期が早く、投資家やメディアの注目度も高い決算短信や四半期決算短信の開示が予定日より遅れた場合には、投資家に「何か問題が起きたのでは?」という疑念を抱かせることになりかねません。

こうした事態を避けるために必要になるのが、決算の早期化です。一時のような“短信の早期提出争い”ブームは既に終焉しているとはいえ、決算短信の開示時期が同業他社に比べて遅れがちな会社は、投資家から「決算早期化」の強いプレッシャーを受けることになります。仮に決算早期化を実現できたとしても、来年になると、投資家や経営陣は、それ以上に早い時期での開示を求めることになります。一方で、経理部門に目標管理制度を導入した場合、決算早期化がテーマになりがちです。そのような事情が決算早期化に拍車をかけることになります。

開示の遅れは、決算数値に対する会計監査人との意見の相違などが原因になることもありますが、こうした要因による開示スケジュールの遅れを吸収する日数を確保するためにも、決算早期化が必要になります。また、経営環境が目まぐるしく変化する昨今、経営陣の迅速な意思決定に欠かせないスピーディーな決算数値の確定は、経営管理の観点からも極めて重要と言えます。

IFRS導入で子会社決算の早期化が促進

上場会社の多くは連結決算を行い、開示しています。したがって、「決算早期化」という場合、通常は、親会社単体の決算早期化に加えて、子会社や関連会社も含めた連結グループにおける「連結決算の早期化」も意味していることになります。

日本の会計基準では、親会社と子会社の決算日が3か月を超えない場合には、子会社の財務諸表をそのまま(仮決算せずに)連結することができます()。

 ただし、連結決算日(=親会社の決算日。例えば3月末)と子会社の決算日(例えば12月末)の間に生じた重要な連結グループ内取引については子会社側で追加計上する等の調整が必要となります。

一方、国際会計基準(以下、「IFRS」という)では、実務上不可能な場合を除き、親会社と子会社の決算日は同日とする必要があります。ここでいう「実務上不可能」とは、「あらゆる合理的な努力をしても実現が不可能」という意味です。 そこで、IFRSに対応するため、親会社と子会社の決算日を統一する会社が増えてきています。よく見受けられるのは子会社の決算日を親会社に合わせるケースですが、逆に、親会社が子会社に決算日を合わせる事例もあります。例えばJT(日本たばこ産業株式会社)は、収益の半分を占める海外グループ会社の大部分が12月期決算であることから、親会社であるJTが3月決算から12月決算に移行しました。

実は、このような親会社と子会社の決算日を統一する流れは、子会社に決算の早期化を迫ることになります。その理由を説明しましょう。

日本の会計基準で認められている“3か月ルール”の下では、子会社の決算日から連結決算日まで時間がある分、子会社は余裕を持って決算作業を行うことができ、連結決算のスケジュールも早期化しやすいというメリットがあります()。

 ただし、これは子会社の決算日が12月末、親会社の決算日(=連結決算日)が3月末というように、子会社の決算日が先に来る場合の話であり、逆に、あまり実例はありませんが、親会社の決算日が子会社の決算日より早い場合には(例えば親会社の決算日が12月末、子会社の決算日が3月末)、子会社は12月末に仮決算を行うことが考えられます。

一方、IFRSでは決算日を統一しなければならないため、子会社は、親会社の決算スケジュールに合わせて決算を締める必要があります。したがって、もし子会社の決算作業に遅れが出れば、連結決算全体の作業も大幅に遅れてしまう可能性があります。

なお、子会社の決算日を親会社と同一日にできない場合(例えば、12月決算が強制される中国の子会社と、3月決算の日本の親会社)には、子会社は「仮決算」を行う必要があります。仮決算とは、本来の決算日とは異なる時期に決算を締めることであり、ここでは、子会社は親会社と同一の決算日(3月末)に「仮決算」を行って、実質的に親会社と決算日を合わせることになります。

連結決算早期化の進め方

連結決算の早期化は、一般的に下記のような方法により進めていくことになります。

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「現状の調査・分析」では、各子会社(場合によっては重要度の高い関連会社も含みます。以下同じ)の決算業務の現状について調査を行います。調査のタイミングとしては、決算の邪魔にならないよう経理の繁忙期を避けた時期となります。そして、その結果を分析することで、各子会社の決算早期化を妨げている要因を具体的に特定していきます(阻害要因の特定)。そのうえで、阻害要因ごとに解決策を検討・実施して、決算早期化を図ります。

以下、それぞれの内容を具体的に見ていきましょう。

決算早期化の鍵を握る「レポーティング・パッケージ」

第一段階の「各子会社の決算業務の現状についての調査・分析」でまず押えておく必要があるのが、連結決算の月次・四半期・年次における試算表確定日(主要な勘定科目別の確定日)、社内的な連結決算確定日、監査後の連結決算確定日(監査法人の承認を受けた連結決算の確定日)です。これらの日を把握することにより、現状、連結決算が暦日ベース(決算作業は休日返上で行われることも多く、休日も含めて何日の作業日数なのかを把握します)で何日かけて締められており(社内的な決算確定日-期末日)、また、監査には暦日ベースで何日かかっているのか(監査後決算確定日-社内的な決算確定日)を分析することができます。早期化の観点から理想的な日数は、個々の会社の状況によるため一概には言えませんが、会社が決算を締めるのに5~10日、監査法人の監査には5~10日程度ではないかと思われます。

連結決算およびその監査に必要な日数を把握したら、親会社は連結決算の発表を行う日を決め、その日より逆算して、子会社からいつ(日付まで特定)までにレポーティング・パッケージ(連結パッケージと言われることもあります)を受領する必要があるかを特定し、子会社に通知します。

レポーティング・パッケージとは、親会社の連結財務諸表を作成するために必要になる、子会社から親会社に提出される財務諸表です。レポーティング・パッケージは、一般的に、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、各勘定の増減明細等の情報から構成されます。レポーティング・パッケージの様式や、作成の際に使用する会計基準は親会社が決めます。一方、子会社は、子会社の単体決算の数字を基に、親会社から送付されたレポーティング・パッケージに数字を入力します。

株主資本等変動計算書 : 株主に帰属する株主資本などの変動事由を報告する書類。変動事由には、当期純利益や当期純損失の計上、新株発行、配当、自己株の取得・消却などがある。

親会社は、子会社からレポーティング・パッケージを受領する日を決めたら、今度は各子会社について、(1)現状の決算スケジュールで、レポーティング・パッケージの報告ができているか (2)スケジュールどおりに報告ができていない場合には、「どのような阻害要因があるのか」「その阻害要因を取り除くにはどのような対応が必要となるのか」「いつまでにその対応が完了する見込みなのか」 などを調査します。

では、「阻害要因」にはどのようなものがあるのでしょうか? その解決方法とともに、次に検討します。

資料の入手時間を短縮する方法

阻害要因の1つに、子会社の経理担当者が自社の決算を締めるための資料(長期未回収債権の一覧表、長期滞留在庫の一覧表など)やレポーティング・パッケージを作成するための資料(金融商品の時価に関する情報、退職給付や年金資産に関する情報など)を、社内の各部署(例えば長期未回収債権の一覧表であれば営業部門、長期滞留在庫の一覧表であれば事業所や工場など)から入手するのに時間がかかってしまい、親会社からの指定期限に間に合うように子会社の決算を締められないというものがあります。その原因は、経理担当者のスキル不足・事前準備不足・要員不足、IT化が進んでいないこと、社内のデータ管理が不十分、他部門との連携不足など様々です。

こうした阻害要因を取り除くためには、まず資料入手に至るまでの業務フローを確認して、業務フローの中のどこがボトルネックとなっているのかを把握したうえで、そのボトルネックを解決していくことになります。

例えば長期未回収債権の一覧表や長期滞留在庫の一覧表といった資料は、日々の管理業務を適時に行っていれば、決算までに入手しておくことができるはずです。こうした事前準備がされていないと、資料入手が遅れた分だけ決算作業の開始も遅れてしまうことになります。

また、他部門との連絡不足により、決算前に入手しようと思えば入手できた資料が入手できていないというケースもあります。よく見られるのは、遊休資産や不稼働設備の一覧表などです。

このほか、業務の分担や管理が上手くいっていないために必要な資料の入手に時間がかかっている場合があります。例えば、1人の経理部員が決算業務と日常の経理業務の両方を兼任しているため、決算期間中にもかかわらず日々の支払業務などに追われ、決算作業が後回しになってしまっているようなケースです。こうした場合には業務の分担や管理を見直し、今まで決算業務で行っていた業務を日々の経理業務として実施し、決算業務の負担を軽減するなどの対応が考えられます。

また、社内のデータ管理が不十分なため、必要なデータを探したり、データを集計するといった作業に時間がかかったりするケースもあります。そのような場合には、IT化を進めることで早期化が図れることもあります。

海外子会社の「休日」に要注意

企業活動のグローバル化に伴い、海外子会社を持つ上場企業は増加の一途をたどっています。海外子会社も国内子会社と同様に原則として連結対象になりますが、海外子会社が連結決算の遅れの原因となっていることが少なくありません。

その理由としては、まず言語の壁が挙げられます。通常、海外子会社の決算は、現地の言語で行われますが、レポーティング・パッケージは、英語での作成となります。そのため、現地へのレポーティング・パッケージの指示は、英語で行い、少なくとも英語でコミュニケーションを図れる人を現地の経理担当者として置いておく必要があります。

「時差」の問題もあります。決算時期においては、1日たりとも無駄にできないところ、時差によっては、半日近く情報伝達が遅れてしまうこともあります。これを避けるためには、レポーティング・パッケージの提出期限を明確に定めた上で、期限までに提出できるように適宜コミュニケーションを図ることが必要です。

また、最近は、IFRS(国際会計基準)の任意適用の増加や日本基準のIFRSへの歩み寄り(コンバージェンス)により次第に解消されてきたとはいえ、「会計基準の違い」も連結決算の遅れの原因となります。例えば、のれんの償却では、海外子会社がIFRSもしくは米国会計基準を採用していたとしても、日本の親会社において連結決算手続上で修正する必要があります。

このほか、海外子会社の「祝日」にも注意が必要です。祝日は国によって異なりますが、その時期次第では決算業務が中断してしまうケースもあります。特に中国では、毎年10月前半に長期の休日(国慶節)があるため、その対応が大きな課題となります。中国に子会社を持つ企業では、徹底的に事前準備を行うことで、国慶節を避けて短期間での決算業務達成を目指す動きもあります。

親会社の不明確な指示がレポーティング・パッケージ作成遅延の原因に

また、子会社でレポーティング・パッケージの作成に時間がかかりすぎ、親会社からの指定期限通りにこれを提出できないというケースがあります。

その原因としてまず考えられるのが、親会社からの指示が不明確なために、レポーティング・パッケージの作成に必要以上の時間がかかっているということです。

例えば、レポーティング・パッケージに入力すべき情報が、一定の範囲の数字を集計したものである場合に、その集計範囲についての指示が不明確な場合です。これにより、子会社のレポーティング・パッケージの作成に必要以上の時間がかかっている可能性があります。

対処方法としては、親会社が子会社に対し、レポーティング・パッケージの入力方法を詳細な「文書」により指示するのが効果的です。場合によっては、子会社が決算作業に入る前に、子会社担当者を集めた研修会を開催し、直接、レポーティング・パッケージの入力方法を説明するのもよいでしょう。

また、レポーティング・パッケージの入力方法に関して各子会社から問い合わせを受けた事項を親会社が「よくある質問集(FAQ)」としてまとめ、これを各子会社に共有させておけば、子会社においてFAQと同様の疑問が生じた場合には、わざわざ親会社に問い合わせることなく、子会社が自力で解決することができるようになります。

入力項目の決定は“費用対効果”の発想で

また、レポーティング・パッケージの様式の分量(記載が必要となる項目)が多いために入力作業に時間がかかっている場合もあります。

対処方法としては、まず、レポーティング・パッケージに「不必要な項目」がないかどうか、洗い直してみてください。その結果、制度改正があったにもかかわらずレポーティング・パッケージのアップデートが適切に行われなかったため、既に不必要となった注記事項に関する情報の入力をいまだに子会社に求めていた――といった事例が見つかるかも知れません。例えば、制度改正により現在は省略可能となった第1・3四半期でのキャッシュ・フロー計算書に関する項目がいまだに残っているケースは実際に散見されます。

レポーティング・パッケージは、開示制度の改正に合わせたアップデートが必要です。そこで、親会社の経理担当役員が中心となり、四半期ごとに親会社と子会社の経理担当者が一堂に会するミーティングを開催したり、会計監査人とも意見交換を行ったりすることで、不必要な項目がまぎれていないかを確認する必要があります。

また、親会社からすれば「開示に使うわけではないが、念のため集めておこう」といった趣旨の情報であっても、実は各子会社側ではその情報を作成するために多大な労力や時間を費やしており、連結グループ全体から見ると“リソースの無駄使い”になっていることがあります。例えば、決算期末日が金融機関の休日の場合には、その日に満期を迎える手形について、会計処理()および金額を注記する必要がありますが、親会社の経理部がこの注記を作成するため、子会社に会計処理および金額(会計処理が統一されている場合は金額のみ)について回答を求める際、開示対象にはなっていない期日に現金決済しない「売掛金」に関する情報についても、あわせて回答を求めるようなケースです。

 次の2つの会計処理が考えられます。
・実際に決済された日(休日明け最初の金融機関営業日)に受取手形・支払手形から当座預金に振り替える処理を行う方法
・手形に記載された決済日(休日)に決済があったものと“みなして” 受取手形・支払手形から当座預金に振り替える処理を行う方法

子会社の入力項目を増やせば、それだけ決算早期化の実現が遠のきます。子会社の入力作業に時間がかかっていると感じたら、連結グループ全体の“費用対効果”という発想をもって、入力項目を再検討してみることが不可欠と言えます。

ただし、レポーティング・パッケージの項目が不十分だと、親会社は子会社からレポーティング・パッケージを回収した後で、子会社に質問をしなければならなくなることがあります。これでは連結決算遅延の一因になりかねませんので、「余計な項目」は減らしながらも、項目に不足がないように注意する必要があります。

子会社の担当者のモチベーションアップが入力ミス防止に

これまで述べてきたような対策を実施してもなおレポーティング・パッケージの入力に時間がかかってしまう場合は、子会社におけるレポーティング・パッケージの入力担当者を増やす、システムでの対応を図る等の対応を検討することになります。

会計システムとレポーティング・パッケージのデータ連携ができていないことから、レポーティング・パッケージに入力する必要のある各項目の数字を“手入力”している場合には、会計システムとレポーティング・パッケージをつなぐ新たなシステムの構築・改修(会計システムのデータが、手入力を経ることなくレポーティング・パッケージに向け集計・出力されるようにする)が有効です。

また、よくある例として、レポーティング・パッケージに入力した情報が最終的にどのように親会社における開示につながるのか、子会社の担当者の理解が不足していることがあります。このような理解不足は、レポーティング・パッケージへの誤った数字の入力につながります。これを防止するには、親会社の経理部門が中心となって、子会社の担当者を集めて開催する事前の決算作業説明会(トピック、改正事項等の情報共有)等の場で、親会社の具体的な開示内容とレポーティング・パッケージとの関係について丁寧な説明を行うのが効果的です。その結果、子会社の担当者自身のモチベーションとスキルの両方を上げることもできるでしょう。

経理以外の部門が子会社の決算作業遅延の一因に

子会社の決算早期化というと、親会社の中では“経理マター”という認識が一般的だと思いますが、実は経理以外の部署が子会社の決算作業の遅れの一因を作っている場合もあります。

具体的には、親会社の経理部が子会社に要求するレポーティング・パッケージとは別に、親会社の経営企画、営業、総務等さまざまな部門や担当者がバラバラに子会社に情報提供を要求することで、子会社側は似たような資料(かといって100%同じでもない)をそれぞれ作成・提供することを迫られるケースが散見されます。例えば、経営企画が経営計画策定のために業績等の情報を求めたり、営業が営業管理のために主な得意先ごとの販売実績等の情報を求めたりといったことがあります。

これは、親会社における各部門の連絡不足が原因と言えます。親会社の(経理部門以外の)各部門は、自社の経理部門が入手していると思われる子会社の情報は、子会社ではなく、まずは自社の経理部門にその有無を確認するべきです。

監査に時間がかかる場合どうするか?

ここまで、子会社の決算作業が遅れる原因とその対策について解説してきましたが、子会社の決算作業自体は予定通りに進んだものの、会計監査が終わる時期が遅れ、親会社が指定した期限通りにレポーティング・パッケージを提出できないというケースがあります。

その原因としては、まず、そもそも会計監査人が提示してきた監査スケジュールの終了時期が遅いということが考えられます。こうした場合には、会計監査人とスケジュールについて打ち合わせ、決算早期化の観点から望ましいタイミングで監査を実施してもらえるよう交渉しましょう。会計監査人としても監査人員の手当てが必要になりますので、遅くとも監査の開始前までには打ち合わせの機会を持ち、監査時期の終了時期に関する要望を伝えておくべきです。場合によっては、監査報酬の値上げも受け入れる必要があるでしょう。会計監査人としても、繁忙期が集中する中、必要な時期に必要な人員を手当てするには、それなりのコストがかかるからです。

また、子会社と親会社の会計監査人が異なっている場合には、会計監査人を統一することで、情報共有による監査の効率化が図られ、監査期間の短縮が期待できます。特に、親会社の会計監査人がワールドワイドな会計ファームと提携していない場合には、決算早期化とは別に海外子会社の会計監査や海外での資金調達をも考慮し、大手監査法人への変更を検討する必要があります。

監査時間が多くかかっている場合には、会計監査人とその原因を協議することをお勧めします。ありがちなものとしては、会社から会計監査人に対して監査に必要な資料の提供が遅れているケース、提供した資料の精度が低いケース、会計監査人側で会計上の検討に時間がかかっているケース(よくあるのが、投資や固定資産の減損、繰延税金資産の回収可能性などです)、会社側の窓口となる経理担当者が多忙で会計監査人対応が遅れがちとなるケースなどがあります。

多忙のため精度の高い書類を一度に提出することができない場合には、いつまでにどの資料を提供するのか、会計監査人と協議して明確にしたうえで、優先順位をつけて提供するという方法もあります。例えば、監査を実施する項目を選ぶための資料(例えば、固定資産を例にすると、今期に新規取得した固定資産の一覧や除売却した固定資産の一覧)は、最優先で提供する必要があります。なぜなら、会計監査人はその資料を用いた上でサンプルを抽出し、抽出したサンプルについて関連する証憑の提出を会社側に依頼するといった具合に、「後工程」が控えているからです。

また、会計監査人側で会計上の問題点の検討に時間がかかりそうな事象がある場合、例えば、固定資産の減損や繰延税金資産の回収可能性など、それが決算前に既に発生・判明しているのであれば、早目に会計監査人に連絡して、監査人の検討を進めておいてもらうようにするとよいでしょう。

このほか、監査対応の子会社側窓口となる担当者には社内調整力に優れた者を起用し、かつ、決算期にはルーチンの作業を持たせない等の工夫も、迅速な監査対応のためには必要です。

「統一」と「集約」が決算を早期化

さらに踏み込んだ対応としては、親会社と子会社とで違いのある勘定科目の統一(例えば、子会社Aでは「機械及び車輛運搬具」の勘定科目を用いており、子会社Bでは「機械装置」と「車両運搬具」といった別々の勘定科目を用いている場合、親会社の「機械装置及び運搬具」に統一する)、連結グループ各社で異なる会計システム・固定資産管理システム等を同一のものに統一することによる連結グループ各社の業務の標準化、連結グループ各社の経理業務を受託する子会社を設立して情報の集約を図る、ホールディングカンパニーに経理機能を集中させる、といった対応が考えられます。

また、子会社の決算早期化を推進する段階では、その分子会社の経理部門に負荷がかかりますので、一時的に人的リソースが不足することがあります。この場合、子会社内で人員の手当てをするか、それが難しい場合には、親会社から一時的に経理部員を出向させるといった方法や、社外から公認会計士等の専門家を一時的に採用するといった方法も考えられます。

「決算早期化事例集」の作成を

以上、子会社の決算早期化およびそれによる連結決算の迅速化について述べてきましたが、これらはすぐに達成できるものではありません。

そこで、各子会社には、決算早期化達成に向けてのマイルストーン(第●期までにシステムの統一化を図り、その翌期には●日での公表を目指し、さらにその翌期には●日短縮するといった具合に、節目ごとに設定する具体的な目標)を設定させたうえで、各目標時期までに、各子会社において親会社への報告を遅延させている要因を取り除くよう努力することを求めることになります。そのうえで、親会社の経理担当役員としては、各子会社がマイルストーンに沿って決算の早期化を進めているかどうか、継続的に確認していく必要があります。

また、ある子会社での阻害要因の解決方法が他の子会社でも上手く機能する場合もありますので、各子会社における阻害要因の解決方法の成功事例は「事例集」としてまとめ、これを各子会社や各関連会社で共有する仕組みを構築するとよいでしょう。

 

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2014/09/18 (新用語・難解用語)付加価値労働生産性

 アベノミクスの流れの中で従業員の給与引上げに踏み切る上場企業は少なくないが、給与を引き上げれば会社財産の減少につながる以上、引上げにあたっては、現在の給与水準に対する評価・検証も必要になる。

 そのモノサシとして有効なのが「付加価値労働生産性」だ(単に「労働生産性」ということもある)。付加価値労働生産性とは、従業員1人当たりが生み出している付加価値(売上高-前給付原価 )額を示すもので、下記の算式により算出される。付加価値労働生産性が高いということは、少ない従業員数で大きな付加価値を獲得しているということを意味している。

付加価値労働生産性 = 付加価値 ÷ 従業員数
 

 付加価値労働生産性(=従業員1人当たりの付加価値額)が同業他社より低く、売上高人件費比率 も低ければ、給与引上げにも合理性がある。むしろ、待遇を改善することで、従業員のモチベーションを挙げることが経営課題と言えるだろう。

 付加価値労働生産性とトレードオフの関係にあるのが・・・

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2014/09/18 (新用語・難解用語)付加価値労働生産性(会員限定)

 アベノミクスの流れの中で従業員の給与引上げに踏み切る上場企業は少なくないが、給与を引き上げれば会社財産の減少につながる以上、引上げにあたっては、現在の給与水準に対する評価・検証も必要になる。

 そのモノサシとして有効なのが「付加価値労働生産性」だ(単に「労働生産性」ということもある)。付加価値労働生産性とは、従業員1人当たりが生み出している付加価値(売上高-前給付原価*)額を示すもので、下記の算式により算出される。付加価値労働生産性が高いということは、少ない従業員数で大きな付加価値を獲得しているということを意味している。

付加価値労働生産性 = 付加価値 ÷ 従業員数

* 原材料費、外注加工費、商品仕入高、水道光熱費など、「外部から購入した価値」のこと。自社が売上を上げる前の段階で支払う原価であることからこう呼ばれる。

 付加価値労働生産性(=従業員1人当たりの付加価値額)が同業他社より低く、売上高人件費比率も低ければ、給与引上げにも合理性がある。むしろ、待遇を改善することで、従業員のモチベーションを挙げることが経営課題と言えるだろう。

* 売上高に対する人件費の割合

 付加価値労働生産性とトレードオフの関係にあるのが「資本生産性」だ。資本生産性は、投下した資本がどれくらいの付加価値を生み出しているのかを示す指標で、「付加価値÷有形固定資産」により算出される。したがって、例えば高額の機械を大量に導入すれば(有形固定資産が大きくなり)資本生産性は低くなるが、その一方で、機械の導入によりにより生産が自動化されれば従業員数を削減することができるため、「付加価値÷従業員数」によって算出される付加価値労働生産性は高くなる。

2014/09/17 顧問や相談役に対する株主の目

 会社法改正により、現行会社法上は社外取締役や社外監査役(以下、社外役員)の要件を充たす「会社の経営を支配している個人およびその配偶者や2親等以内の親族」が社外役員になれなくなる(ただし、経過措置により、改正会社法施行後最初に終了する事業年度に関する定時株主総会(3月決算法人であれば、2016年6月の株主総会となる見込み)の終結の時までは、社外役員の要件を満たすことになっている)。

 一方、こうした会社法上の要件が課されていないのが「顧問」や「相談役」だ。とはいえ、・・・

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