2014/08/05 会社法施行前に「監査等委員会設置会社」へ移行で投資家にアピールも

 先の通常国会で成立した「会社法の一部を改正する法律」では、取締役会制度の改革の一環として「監査等委員会設置会社」制度が創設されている。監査役設置会社、委員会設置会社(会社法改正により指名委員会等設置会社に名称変更)と並ぶ“第三の類型”の会社法上の機関と言えるものだ。

 現行の委員会設置会社は、取締役会の中に指名委員会、監査委員会、報酬委員会の3委員会をセットで導入しなければならない。なかでも会社経営の要である人事を(社外取締役が過半数を占める)指名委員会に握られることに対する企業の抵抗感は強く、導入は進んでいないのが現状だ。日本取締役協会の調査によれば、委員会設置会社を導入している上場企業は59社にすぎない(2014年8月1日現在)。

 今回創設される運びとなった監査等委員会も取締役3人以上で構成され、その過半数は社外取締役でなければならない。この点では委員会設置会社と同様だが、監査等委員会設置会社には、委員会設置会社のような指名委員会や報酬委員会は設置されない。監査役会設置会社のように監査役もいない。

 ただし、取締役会の中に設置された監査等委員会が、取締役の業務執行の 妥当性の監査を行うとともに、株主総会において、業務執行者を含む取締役の人事(指名および報酬)に関する“意見陳述権”を有することになる。委員会設置会社と比べ人事への影響力が格段に弱まっているだけに、委員会設置会社導入に二の足を踏んでいた企業にとっては検討の余地がありそうだ。

 なお、監査等委員会の構成員は取締役でもあるので、当然ながら取締役会での投票権を有する。また、監査等委員会設置会社では、会社法上の機関としての執行役は設置されない(会社法上の機関ではない執行役員を任意で設置することは可能)。そのため、取締役が業務執行を行っても良い点も、委員会設置会社と異なるところだ。

 監査等委員会設置会社は、会社法上の大会社公開会社に限らず、株式会社であれば導入することは可能。もっとも、定款の定めによって設置することから、既存の会社であれば定款変更が避けられない。法務省によると、改正会社法の施行日は平成27年4月または5月を予定しているため、3月決算会社が最短で監査等委員会設置会社に移行するには、平成27年6月の定時総会で定款変更を行うことになる。

大会社 : 「資本金が5億円以上」または「負債総額が200億円以上」の株式会社
公開会社 : すべての株式に譲渡制限をつけていない株式会社

 ただし、法務省では、・・・

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2014/08/05 会社法施行前に「監査等委員会設置会社」へ移行で投資家にアピールも(会員限定)

 先の通常国会で成立した「会社法の一部を改正する法律」では、取締役会制度の改革の一環として「監査等委員会設置会社」制度が創設されている。監査役設置会社、委員会設置会社(会社法改正により指名委員会等設置会社に名称変更)と並ぶ“第三の類型”の会社法上の機関と言えるものだ。

 現行の委員会設置会社は、取締役会の中に指名委員会、監査委員会、報酬委員会の3委員会をセットで導入しなければならない。なかでも会社経営の要である人事を(社外取締役が過半数を占める)指名委員会に握られることに対する企業の抵抗感は強く、導入は進んでいないのが現状だ。日本取締役協会の調査によれば、委員会設置会社を導入している上場企業は59社にすぎない(2014年8月1日現在)。

 今回創設される運びとなった監査等委員会も取締役3人以上で構成され、その過半数は社外取締役でなければならない。この点では委員会設置会社と同様だが、監査等委員会設置会社には、委員会設置会社のような指名委員会や報酬委員会は設置されない。監査役会設置会社のように監査役もいない。

 ただし、取締役会の中に設置された監査等委員会が、取締役の業務執行の妥当性の監査を行うとともに、株主総会において、業務執行者を含む取締役の人事(指名および報酬)に関する“意見陳述権”を有することになる。委員会設置会社と比べ人事への影響力が格段に弱まっているだけに、委員会設置会社導入に二の足を踏んでいた企業にとっては検討の余地がありそうだ。

 なお、監査等委員会の構成員は取締役でもあるので、当然ながら取締役会での投票権を有する。また、監査等委員会設置会社では、会社法上の機関としての執行役は設置されない(会社法上の機関ではない執行役員を任意で設置することは可能)。そのため、取締役が業務執行を行っても良い点も、委員会設置会社と異なるところだ。

 監査等委員会設置会社は、会社法上の大会社公開会社に限らず、株式会社であれば導入することは可能。もっとも、定款の定めによって設置することから、既存の会社であれば定款変更が避けられない。法務省によると、改正会社法の施行日は平成27年4月または5月を予定しているため、3月決算会社が最短で監査等委員会設置会社に移行するには、平成27年6月の定時総会で定款変更を行うことになる。

大会社 : 「資本金が5億円以上」または「負債総額が200億円以上」の株式会社
公開会社 : すべての株式に譲渡制限をつけていない株式会社

 ただし、法務省では、改正会社法の「施行前」であっても、同法の施行日を始期とする定款変更をしても差し支えないとの見解を明らかにしている。ここで想定されているのは、例えば、12月決算法人が平成27年3月末に開催する定時株主総会で定款変更を行うケースだ。監査等委員会設置会社に移行する意思がある会社であれば、改正会社法の施行日を待たずに投資家等にアピールすることが可能になる。

 注意しておきたいのは、「監査等委員会を構成する取締役3人以上のうち、その過半数が社外取締役でなければならない」ということは、最低でも2人以上の社外取締役がいなければならないという点である。したがって、社外取締役が1名しかいない会社の場合、社外取締役の追加選任とセットにしなければ監査等委員会設置会社には移行できない。

 なお、現行の委員会設置会社は、監査等委員会設置会社が創設されたことにより、改正会社法の施行後は「指名委員会等設置会社」に名称変更が行われることになる。ただ、名称変更による定款変更や新たな登記は必要ない(改正会社法附則3条)。この点、該当企業の役員は覚えておきたい。

2014/08/04 経営陣の2つのこだわりが招いた過重労働の負のスパイラル

 建設・運輸・外食等一部の業種で、人手不足が叫ばれ始めて久しい。「受注しても、それをこなす人がいない」といった経営者の嘆きが随所で聞かれる。人手確保のための人件費増加が経営を圧迫しかねないほどだ。

 人手不足は業界トップの企業であっても同様。外食業の売上1位のゼンショーホールディングス(東証一部)の子会社「ゼンショー」が運営する牛丼の「すき家」において、一部店舗が人手不足による一時閉店や深夜・早朝営業の休止に追い込まれた件は広く報道されているとおりだ。この問題に関して、7月31日に「すき家」の労働環境改善に関する第三者委員会の調査報告書(以下、「調査報告書」)が公表された。調査報告書では、労働環境悪化で退職者が増え、在籍社員が増えない中で新店オープンが相次いだことで人手不足に拍車がかかり、更なる労働環境の悪化を招くという“負のスパイラル”に陥った過程が浮き彫りとなっている。

 「すき家」の営業時間は「24時間、365日営業」が基本だ。第三者委員会が営業時間について経営幹部にヒアリングした際、経営幹部は「営業時間の短縮は考えたこともない」と回答している。また、「売上高日本一」を達成するためには、既存店売上高を高めるだけでなく、新規の出店を次々に行う必要があった。そのため、出店はハイペースで行われ、これに買収により子会社化した既存飲食店の売上が加わることでゼンショーホールディングスの連結売上高は年々増加し、2011年3月期連結決算には3,707億円となった。これは日本マクドナルドホールディングスの連結売上高約3,147億円(同社は12月決算であるため、同期間(2010年4月~2011年3月)の連結売上高を単純に合計したもの)を上回る額であり、外食業では1位となった。

 しかし、その裏では「すき家」の店舗における労働環境が年々悪化しており、それが上述の人手不足の負のスパイラルを加速させていたことが、このほど公表された調査報告書で明らかになった。労働環境悪化の原因を作ったのが、同社の2つの“こだわり”だ。2つのこだわりとは・・・

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2014/08/04 経営陣の2つのこだわりが招いた過重労働の負のスパイラル(会員限定)

 建設・運輸・外食等一部の業種で、人手不足が叫ばれ始めて久しい。「受注しても、それをこなす人がいない」といった経営者の嘆きが随所で聞かれる。人手確保のための人件費増加が経営を圧迫しかねないほどだ。

 人手不足は業界トップの企業であっても同様。外食業の売上1位のゼンショーホールディングス(東証一部)の子会社「ゼンショー」が運営する牛丼の「すき家」において、一部店舗が人手不足による一時閉店や深夜・早朝営業の休止に追い込まれた件は広く報道されているとおりだ。この問題に関して、7月31日に「すき家」の労働環境改善に関する第三者委員会の調査報告書(以下、「調査報告書」)が公表された。調査報告書では、労働環境悪化で退職者が増え、在籍社員が増えない中で新店オープンが相次いだことで人手不足に拍車がかかり、更なる労働環境の悪化を招くという“負のスパイラル”に陥った過程が浮き彫りとなっている。

 「すき家」の営業時間は「24時間、365日営業」が基本だ。第三者委員会が営業時間について経営幹部にヒアリングした際、経営幹部は「営業時間の短縮は考えたこともない」と回答している。また、「売上高日本一」を達成するためには、既存店売上高を高めるだけでなく、新規の出店を次々に行う必要があった。そのため、出店はハイペースで行われ、これに買収により子会社化した既存飲食店の売上が加わることでゼンショーホールディングスの連結売上高は年々増加し、2011年3月期連結決算には3,707億円となった。これは日本マクドナルドホールディングスの連結売上高約3,147億円(同社は12月決算であるため、同期間(2010年4月~2011年3月)の連結売上高を単純に合計したもの)を上回る額であり、外食業では1位となった。

 しかし、その裏では「すき家」の店舗における労働環境が年々悪化しており、それが上述の人手不足の負のスパイラルを加速させていたことが、このほど公表された調査報告書で明らかになった。労働環境悪化の原因を作ったのが、同社の2つの“こだわり”だ。

 2つのこだわりとは「24時間、365日営業」と「外食世界一という目標」を指す。その2つのこだわりが、AM(エリア・マネージャー)*1クルー*2に多大な負荷をかけることになる。社員やクルーの新規採用がままならない中、店舗だけは次々と増えていき、少ない人数でローテーションを回していく――。調査報告書では、クルーの中には月間労働時間が400から500時間に上る者がおり、なかには「回転」と称して24時間連続で勤務する者もいたことが報告されている。また、同社において、AMはたとえ勤務時間外であっても店舗クルーからの携帯電話への連絡に対応する必要がある。店舗は24時間営業であることから、結果的にAMは24時間にわたり携帯電話対応を迫られることになる。これでは、仕事から完全に解放されたプライベートな時間を確保することは到底できない。調査報告書では『「24時間営業」は、従業員に「24時間勤務」を要求する理由にはならない』と断罪している。厚生労働省が定める残業時間の過労死ラインは月80時間だが、それを超える従業員を多数抱えながら、個々人の踏ん張りだけで「24時間、365日営業」にこだわり続け、「売上高日本一」を達成したことになる。

*1 エリア内の店舗(約3~7店舗程度)を管理するマネージャー。「すき家」では、飲食業の直営店でよく見られるような「1店舗に1人正社員を配置する」という社員配置は行わず、AMが複数の店舗を管理している。

*2 「すき家」では、店舗の「役職なし」のアルバイトを指す。

 「すき家」の店舗運営の特殊性は、1人勤務体制(ワンオペレーション)にあるといっても過言ではない。同社では予測売上額に応じて投入可能な労働時間を決定していることから、売上が小さいと見込まれる深夜・早朝の時間帯は、店舗によってはワンオペレーションが基本となる。もっとも、ワンオペレーションでは「防犯面」が手薄になってしまう。実際、2009年頃からワンオペレーションの「すき家」店舗を狙った強盗事件が相当数発生するという異常事態が起きていた。また、ワンオペレーションでは厨房と接客の双方をこなすのが精いっぱいで、清掃もままならず、顧客満足度も低下してしまう。そこでゼンショーホールディングスでは2011年10月に、ワンオペレーションの解消を対外的にアナウンスしていたものの(リリースはこちら)、実際にはワンオペレーションは解消されていなかった。調査報告書では、「10時間以上もの間、休憩時間を取れず、トイレにも行けない」というワンオペレーションの過酷な実態が明らかにされている。

 しかも、同社内にはサービス残業を強制させる雰囲気や社内的圧力があり、過重労働をしても金銭的に十分報われるわけではない。そのような過酷な労働環境から、退職者が相次ぐことになる。同社では年間100人を超える新卒社員が入社するものの、2年以内離職率は45.7%と高く、2011年4月に575人いた在籍社員は2014年2月で589人にしか増えていない(14人増)。一方で、売上高を増やすために新店オープンは相次いでおり、2011年4月の時点で1,572店舗であったところ、2014年4月には1,986店舗と、3年間で400店舗増加した。その結果、社員1人当たりの店舗数も増加し、社員への負荷は高まっていった。

 社員やクルーの不満が頂点に達したのが今年(2014年)の2月であった。2月14日に新メニュー「牛すき鍋」が投入されるも、牛丼と異なり手間がかかるメニューであることから現場のオペレーションは混乱し、クルーの不満が増加した。特にワンオペレーション時には「牛すき鍋」への対応が難しい。仕込みのためにサービス残業を行う者もいた。そのような中、2月7日から16日にかけて全国的に記録的大雪となり、一部店舗でクルーが帰宅できず、交代するはずのクルーも出勤できない状態となり、「48時間勤務」という事態が多数発生、現場は疲弊した。

 見切りをつけた多くのクルーがアルバイトを辞めた。そして、その穴埋めにAM自身がシフトに入らざるを得なくなり、過重負担に限界を感じた社員が退職したり、または無断欠勤したうえで行方をくらませたりすることになった。その結果、運営不能となる店舗が続出し、123店舗(2014年4月12日現在)で一時休業や時間帯休業の措置がとられた。この騒動は、「すき家」関係者を中心に、“鍋の乱”と称されている。

 ちなみに、ゼンショーの社名は「(全戦)全勝」等に由来する。「売上高日本一」を達成し、会社としては勝利を手にしたように見えても、それは同社従業員の多大な犠牲のもとに成り立っていたことを改めて気付かせられる騒動であった。

 ゼンショーホールディングスの社長の小川氏は、元々は全共闘出身。1978年に吉野家に入社後、同社の倒産などをきっかけに独立し、ゼンショーを創業したのが1982年。創業から30年を経て、もはや業界の風雲児ではなく、業界のトップランナーに上り詰めた。ベンチャー企業とは異なり、業界トップの会社であれば社会的影響力も多大であり、「パブリックな存在」としてコンプライアンス体制の確保と従業員満足度の向上に努める義務がある。今回の騒動は、そういった立ち位置の変化に社外役員を含めた経営陣が誰一人として気付かなかったことに原因があると言えよう。

 調査報告書は、「強い使命感と超人的な長時間労働で、すき家を日本一にしたという成功体験を共有しており、部下にもそれを求めた」経営陣が、過去の成功体験にとらわれ、「巨大化したすき家に対する新しい時代の社会的要請(コンプライアンスとCSRを実践して発展すること)を理解できなかった」と指摘している。全共闘出身の社長が、労働者の犠牲のもと成立するビジネスモデルで外食日本一を達成したのは皮肉としか言いようがない。

 今回の調査報告書を単なるガス抜きで終わらせては、「外食世界一」を狙うことはできない。ゼンショーの経営陣は、従業員満足度を高めながらこれを目指すという難しいかじ取りを迫られている。

2014/08/01 【2014年8月の課題】統合報告書

2014年8月の課題  統合報告書

 統合報告書を作成する企業が増えているという新聞記事を見て、貴社の社長が経営会議で「当社でも作るべきではないのか」と問題提起しました。貴社は既にアニュアルレポートとCSR報告書を作成しており、これらを「統合」すればコストダウンにもつながるのではないか、との認識があるようです。
 あなたは上場会社の役員として、社長にどのようなアドバイスをするべきでしょうか?

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2014/08/01 新興国への投資額を逆転の可能性 先進国への投資が長期的に回復

 アジア諸国をはじめとする新興国に投資している(あるいは、投資を検討している)日本企業は多いが、グローバルで見ると、このトレンドに変化が生じている。

 それを裏付けるのが、2014年6月に国連貿易開発会議(UNCTAD)が発表した「2014年版・世界投資報告: World Investment Report 2014」だ。これは、企業等の民間部門による海外直接投資(Foreign direct investment)の世界的な動向を分析したもので、毎年発表されている。今回の報告は、2013年の動向および分析、これを踏まえた2014~2016年の世界的な海外投資トレンド予測などを示しているが、それによると、世界の企業による「先進国」への投資の回復が明確となっており、2016年までには、先進国への投資額が新興国への投資額を上回るという、リーマンショック(2008年)前の状況に戻る可能性も指摘されている。

 詳しく見てみよう。

 世界の企業等による海外直接投資額は、2007年に2兆ドルに達したものの、2009年には1兆2000億ドルまで下落、その後は停滞が続いてきた。しかし、今回の2014年版報告によると、2013年に入り海外直接投資が地域を問わずに活発化し、投資額は1兆4500億ドルと、前年比9%増となった。この回復基調は2014年以降も続くとみられ、2016年の海外直接投資額は1兆8500億ドルに達すると見込まれている。

 注目されるのは、このうち「先進国」への海外直接投資額だ。特に・・・

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2014/08/01 新興国への投資額を逆転の可能性 先進国への投資が長期的に回復(会員限定)

 アジア諸国をはじめとする新興国に投資している(あるいは、投資を検討している)日本企業は多いが、グローバルで見ると、このトレンドに変化が生じている。

 それを裏付けるのが、2014年6月に国連貿易開発会議(UNCTAD)が発表した「2014年版・世界投資報告: World Investment Report 2014」だ。これは、企業等の民間部門による海外直接投資(Foreign direct investment)の世界的な動向を分析したもので、毎年発表されている。今回の報告は、2013年の動向および分析、これを踏まえた2014~2016年の世界的な海外投資トレンド予測などを示しているが、それによると、世界の企業による「先進国」への投資の回復が明確となっており、2016年までには、先進国への投資額が新興国への投資額を上回るという、リーマンショック(2008年)前の状況に戻る可能性も指摘されている。

 詳しく見てみよう。

 世界の企業等による海外直接投資額は、2007年に2兆ドルに達したものの、2009年には1兆2000億ドルまで下落、その後は停滞が続いてきた。しかし、今回の2014年版報告によると、2013年に入り海外直接投資が地域を問わずに活発化し、投資額は1兆4500億ドルと、前年比9%増となった。この回復基調は2014年以降も続くとみられ、2016年の海外直接投資額は1兆8500億ドルに達すると見込まれている。

 注目されるのは、このうち「先進国」への海外直接投資額だ。特に米国への投資額は前年比17%増の1700億ドル、EUへの投資額は同14%増の2460億ドルと、順調に回復した。投資先の“主役”はこれまで通り新興国等(全体の61%)であったものの、2014年版報告は、企業が先進国への投資に自信を取り戻しつつあり、その結果、今後、先進国への投資額がリーマンショック前の2007年当時のレベルまで回復する可能性を指摘している。

 米国とEUへの投資額が増加した背景には、両者の強い結びつきがある。2014年版報告によると、米国への投資額のうち62%はEU資本が占めており、逆にEUへの投資額のうち「EU圏外からの投資」の3分の1は米国資本が占めるという。つまり、米国企業がEUに、EU企業が米国に投資するという“共存共栄”の関係が強固に構築されているということだ。

 一方、日本企業による先進国への投資は、米国に集中しているのが大きな特徴となっている。しかし、米国でビジネスが確立していれば、そのビジネスモデルを活用してEUにおけるビジネスチャンスを探ることは検討に値すると思われる。「アジア市場に工場などの 経営資源を集中させ、先進国の市場としては米国を重視する」といった日本企業に多いモデルとは異なるかもしれないが、最近は多くの企業がEUへの投資にも大きなビジネスチャンスを見出しているというグローバルなトレンドに、日本企業の経営陣は留意すべきだ。

 なお、国外企業からの受けた投資(対内直接投資)額で米国に次ぐ多さだったのは中国だが(1240億ドル)、同時に中国は先進国・新興国を問わずに対外直接投資(国内の企業が海外に対して行う)を拡大しており(2013年は1000億ドル)、数年内に対外直接投資が対内直接投資を超えると予想される。今後は対外直接投資における中国の存在感はより大きくなっていくだろう。

2014/07/31 2014年7月度チェックテスト第5問解答画面(正解)

正解です。
 “Comply or Explain”とは、「ルールに従え(Comply:コンプライ)、従わないのであればその理由を説明せよ(Explain:エクスプレイン)」という “ソフト・ロー”の思想に基づく規制の手法です。我が国の規制手法としては、従来は法律をはじめ、ルールに従うことを強制する“ハード・ロー”が中心でしたが、最近では証券取引所の規則を中心に“Comply or Explain”による規制も散見されるようになりました。
 “Comply or Explain”は、“Comply”と“Explain”が“or”で結ばれていることから分かるように、どちらを選択することも可能ですが、実際のところは“Comply”を選択する企業がほとんどです。制度の建前としては両者は「選択可能」であるものの、現実には “Comply”を選択するように一定の“強制力”が働いてしまうのは、(1)合理的に“Explain”することは難しいこと、(2)「ルールを守らない会社」といったレッテルを張られてしまうことを恐れて横並びの対応に流されがちであることーーーなどの理由が考えられます。今後、“Comply or Explain”の本丸と言える「コーポレートガバナンス・コード*」が制定(2015年3月期の定時株主総会前には制定される見込み)される予定ですが(2014年5月19日のニュース「大人数の取締役会はNG?「コーポレートガバナンス・コード」制定の動き」参照)、上述したような一定の“強制力”があるだけに、どのような内容になるのか目が離せません。

* 上場企業のコーポレートガバナンス上の諸原則を記載したコード。上場企業は、コードに記されている原則を実施するか、実施しない場合は、その理由の説明が求められることになる。コーポレートガバナンスの強化により日本の「稼ぐ力」を取り戻すことを狙いとして、安倍政権が公表した「日本再興戦略 改訂2014」の中で、導入の方針が明記された。

こちらの記事で再確認!
2014/07/10 (新用語・難解用語)Comply or Explain(会員限定)

2014/07/31 (新用語・難解用語)EBITDA倍率

 EBITDA (Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization 「エビーダ」「イービッダー」「イービットディーエー」などと呼ばれる)とは「現金ベースの利益概念」であり、支払利息、税金、有形固定資産の減価償却費、無形固定資産の償却費を差し引く前の利益を指す。損益計算書の営業利益(支払利息や税金が控除される前の利益)に有形固定資産の減価償却費および無形固定資産の償却費を足すことで算定が可能であるため、フリーキャッシュフロー*よりも簡易的に算定することができる点に特徴がある。

* 現金ベースの利益概念の一つで、営業活動によるキャッシュフローから投資活動によるキャッシュフローを控除して算定する。

 EBITDAは、売上高、企業価値等と対比させることにより企業評価のツールとして用いられる。また、「買収金額÷EBITDA」により求められるEBITDA倍率は、買収金額を何年で回収できるかを表わす。M&Aの際に、買収価格が「割高」か「割安」を簡易的に判断するために利用される。

 サントリーホールディングスは今年(2014年)1月、米ビーム社を160億ドル(約1兆6400億円)で買収(過去3か月間の平均株価に対して24%のプレミアム)で買収することを発表した。一般的には、EBITDA倍率が「10倍台前半」でなければ買収は難しいと言われているが、この買収はEBITDA倍率が・・・

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2014/07/31 2014年7月度チェックテスト第3問解答画面(不正解)

不正解です。
 IR担当取締役や経営トップを除いた他の取締役は、IR活動を“他人事”のように捉えがちです。しかし、自分が管掌する分野にしか目を配れないようでは、取締役の職責を果たすことはできません。すべての取締役には「株主のために企業全体の価値を高める義務」があり、その義務の遂行においては全社的な視野を持つことが欠かせません。IR活動はまさに全社的な視野に基づいて行われるものだけに、IR担当取締役でない取締役にとって、積極的にIR活動の場に顔を出すことは、視野を広げる良い機会にはるはずです。

こちらの記事で再確認!
2014/07/07 評価されるIR活動と新任取締役に求められる意識(会員限定)