2014/05/16 景表法改正案が月末にも成立、「課徴金」を課されないための体制整備とは?

 昨年(2013年)秋の食品偽装表示問題を受けて今国会で審議が行われている「景品表示法改正案」が今国会において成立する見込みとなっている。改正法案のポイントは、「表示管理体制」の整備を法律で義務付けることと、課徴金制度の導入だ。

 表示管理体制とは、要するに表示の事務を担う「現場」の管理のこと。表示管理体制の整備義務付けの背景には、一連の偽装表示(不当表示)は不十分な現場管理が大きな要因となって引き起こされたとの問題意識がある。ただ、表示管理体制の整備だけでは、不当表示に対する“抑止効果”としては十分でないため、不当表示に対する課徴金制度も導入する。課徴金の対象は「売上高1億円以上の企業」とし、実際に課徴金を課すのは「不当表示につき『故意・重過失』がある場合」に限定される方向となっている。

 このため、売上規模の大きい上場企業は、課徴金制度の対象となることは避けられない。そこで気になるのは、「不当表示につき『故意・重過失』がある場合」とは具体的にどのようなケースを指すのかという点。「故意・重過失」により不当表示がなされたかどうかの認定にあたっては、評価の余地が入り込むと考えられるからだ。

 この評価を大きく左右するのが、・・・

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2014/05/16 景表法改正案が月末にも成立、「課徴金」を課されないための体制整備とは?(会員限定)

 昨年(2013年)秋の食品偽装表示問題を受けて今国会で審議が行われている「景品表示法改正案」が今国会において成立する見込みとなっている。改正法案のポイントは、「表示管理体制」の整備を法律で義務付けることと、課徴金制度の導入だ。

 表示管理体制とは、要するに表示の事務を担う「現場」の管理のこと。表示管理体制の整備義務付けの背景には、一連の偽装表示(不当表示)は不十分な現場管理が大きな要因となって引き起こされたとの問題意識がある。ただ、表示管理体制の整備だけでは、不当表示に対する“抑止効果”としては十分でないため、不当表示に対する課徴金制度も導入する。課徴金の対象は「売上高1億円以上の企業」とし、実際に課徴金を課すのは「不当表示につき『故意・重過失』がある場合」に限定される方向となっている。

 このため、売上規模の大きい上場企業は、課徴金制度の対象となることは避けられない。そこで気になるのは、「不当表示につき『故意・重過失』がある場合」とは具体的にどのようなケースを指すのかという点。「故意・重過失」により不当表示がなされたかどうかの認定にあたっては、評価の余地が入り込むと考えられるからだ。

 この評価を大きく左右するのが、上述した「表示管理体制の整備」である。すなわち、不当表示が発覚した場合には、十分な表示管理体制が構築されていたかどうかが真っ先に問われることになり、仮に十分でないと判断されれば、「故意・重過失」として課徴金の対象になり得る。

 政府は、法案成立後6か月以内に予定される施行日前に、表示管理体制の具体的な体制整備に関する「指針」を定める方針。企業は、この指針に沿って「十分な表示管理体制」を整備する必要がある。「指針」に沿って表示管理責任体制が構築され、それが機能していたかどうかが「故意・重過失」の認定にあたっての鍵になると考えられるからだ。

 もっとも、コンプライアンスの一環として従来から表示責任者を設けてきた上場企業は少なくない。今回の景品表示法の改正は、こうした企業に新たな負担を課す意図はないとされているが、法制度として「表示管理責任者」の規定が設けられる以上、今後不当表示事件が発生した場合には、マスコミ報道等においても「表示管理責任者」がクローズアップされることも考えられる。したがって、企業としては、「これまで通り」で済ますのではなく、誰を責任者として、その責任をいかに機能させるかについて、改めて検討しておくべきだろう。

2014/05/15 財務会計と税務会計(会員限定)

<解説>
どの会計を前提にした話なのかを理解する必要あり

 「会計」と言うと、会計基準という絶対的なルールが1つあり、それに則って会計処理を行うというイメージを持つ方がいるかも知れません。しかし、会計にはその目的に応じて、主として財務会計、管理会計、税務会計の3つがあります。今回のケースで議論になっているのは、このうち財務会計と税務会計です。

管理会計 : 経営の意思決定や業績測定に役立てることを目的した「社内向け」の会計。財務会計とともに企業会計の1つだが、社外向けに提供される財務会計とは対をなす。

 財務会計とは、株主や債権者をはじめとする利害関係者が会社の財政状態や経営成績、キャッシュ・フローの状況を適切に把握できるようにすることを目的とした会計や開示のルールです。上場企業が公表する決算書はこの財務会計に基づき作成されます。

 一方、税務会計とは、支払う税金の額を確定するためのルールです。税務会計は、企業の実態を適切に表現することよりも、「課税の公平性」を重視しています。

 社内の会議などで、経理部門の方や管理部門担当役員が、どの会計制度を前提にしているのかを明示せずに話をするケースがしばしばあるかと思います(彼らにとっては当たり前のことなので、その前提の説明を失念しがちです)。彼らが財務会計、税務会計どちらの話をしているのかを意識しながら、場合によっては事前に確認したうえで、話に耳を傾けることが重要です。

財務会計と税務会計の主な相違項目

 財務会計と税務会計でルールが異なる主な項目としては、例えば下表のようなものがあります。

項目 財務会計 税務会計
交際費 費用として計上 損金として計上できない場合あり
寄付金 費用として計上 損金として計上できない場合あり
減損等の資産の評価損 費用(損失)として計上 損金として計上できない
受取配当金 収益として計上 益金として計上しない場合あり
引当金繰入額 費用として計上 貸倒引当金の一部を除き、損金として計上できない

 社内の会議や役員会で、「有税で処理する」という言い回しを耳にする機会も多いことでしょう。「有税で処理」とは、「税務会計上の損金としては計上できないが、財務会計上は費用として計上する」という処理のことです。ここで注意したいのは、財務会計において費用処理をしようがしまいが、税金の額が変わるわけではないということです。税金はあくまで税務会計のルールで計算され、財務会計の処理には左右されないからです。「有税で処理する」という言い回しから、「財務会計上費用処理すると税金が増え、費用処理をしなければ税金が減る」といった誤解はしないようにしてください。

税効果会計により税引後利益への影響が緩和

 税務会計は税金計算を目的としています。一方、財務会計は、株主や債権者などの利害関係者に、企業の収益性や健全性などの情報を提供することを目的としています。

 両者の違いは、引当金や固定資産の減損等に現れることになります。すなわち、税務会計は国等が税収を確保できるよう、確定していない費用を損金とすること(その結果、税務上の所得が少なくなり、税額が減る)は、貸倒引当金の一部を除き認めていません。逆に、財務会計では、利害関係者に情報を提供するために、確定していない費用であっても、発生した分に応じて合理的に算定された概算額を費用として計上する必要があります。

 したがって、税務会計上損金にできないからという理由で財務会計上の費用や損失の計上を見送れば、財務会計の目的を達成することができません。

 そこで、財務会計上は費用として計上しつつ、税務会計上は、損金に計上できない費用を「なかったことにする(=税務会計上の所得に加算する)」必要が生じます。この手続きは、法人税申告書上だけで行われ、完結します。そして、損金に計上できる時期(本事例では、「実際に廃棄した時」)になったら、今度は(やはり法人税申告書上で)税務会計上の所得を減らします。

 仮に「財務会計上の税引前利益=税務会計上の所得」であれば、税引前利益に税率を乗じれば実際の税額が算出されるはずです。しかし、上述のとおり、税引前利益と税務会計上の所得は異なりますので、税引前利益と実際の税額も整合しません。このギャップを埋めるための工夫が税効果会計です。税効果会計は、財務会計上の資産・負債と税務会計上の資産・負債の差異に着目して、税引前利益と実際の税額のギャップを埋めることになります(税効果会計の詳細な解説は新用語・難解用語辞典の「資産負債法」を参照してください)。

 本事例でいうと、財務会計上の棚卸資産と税務会計上の棚卸資産は災害損失の分だけ金額が異なっています。この差異は、実際に廃棄した時点で税務会計上損金算入が認められることから、その時点で解消される差異と言えます。このような差異を、「一時差異」と言います。この一時差異に、廃棄予定の年度に適用される実効税率を乗じた金額を、損益計算書(P/L)の税引前利益の下に「法人税等調整額」として記載します。法人税等の額に法人税等調整額を加減して税金費用を計上します。この結果、税金費用の額は税引前利益に整合したものとなります。また、この法人税等調整額は、あたかも前払費用のように将来会社の税負担を減らすという“資産性”を有していることから、「繰延税金資産」として貸借対照表(B/S)にも計上され、一時差異が解消されるまで繰り越されることになります。

実効税率 : 法人税、住民税、事業税の税率をあわせた税率のこと。計算上の実質的な税負担率である。

法人税等 : 法人税、法人住民税、法人事業税のうち所得に比例する分。

 「有税」で費用を計上することで、重要な経営の成果である「税引前利益」は、その分減ってしまいます。もっとも、税効果会計を適用することにより、将来減額される法人税等の分だけ税金費用を減らすことで、税引後利益への影響は緩和されることになります。

さて、以上の解説をご覧いただければ、どの発言がGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。

<正解>
GOOD発言はこちら

発言B:「損失見込み額が算定できる以上、当期の決算において災害損失を計上することは必要かと思います。利益への影響を懸念されている方もいらっしゃるようですが、災害損失を計上しても、税効果会計により税引後利益へのインパクトは緩和されるのではないでしょうか。」
コメント:確かに、会社が計上しようとしている災害損失は、税務会計上は損金になりません。一方、財務会計上は、災害が発生した期にそれに関する損失を計上する必要があります。税務会計において損金になるのは実際に廃棄したときであるため、「有税」での費用計上となりますが、税効果会計により、災害損失に実効税率を乗じた額が「法人税等調整額」として法人税等の額から控除されますので、税引後利益への影響は小さくなります。たとえば、災害損失が100で実効税率が40%とすると、災害損失の計上により税引前利益は100減ってしまいますが、法人税等調整額40(=100×40%)の計上により税金費用は40だけ減ることから、税引前利益への影響は60となります。税効果会計の適用により税引後利益へのインパクトは40緩和されたことになります。

BAD発言はこちら
発言A:「廃棄をしていないのに廃棄損失を計上するのは、会計的に問題があるのではないでしょうか?実際に廃棄するのが来期になるなら、今期に計上する廃棄費用は見積額に過ぎないでしょうし、そのような曖昧な金額を費用に計上すれば、投資家に判断を誤らせることになりかねません。実際に廃棄した時には金額も確定するはずですから、その時点で廃棄損として計上すべきです。」
コメント:まず、本事例のメインである災害損失の議論と、廃棄損失の議論を混同してしまっています。また、廃棄費用の金額が未確定ということですが、それなりの精度を持った見積額であれば、財務会計上は災害損失として計上するべきです。なお、廃棄費用の見込額の精度がそこまで高くないというのであれば、廃棄費用部分についてはひとまず災害損失引当金として計上しておく方法もあります。損失計上の先送りは許されません。
発言C:「当期に生じた損害を当期に認識するというのは当たり前の話です。しかし、払わなくてもよい税金を払ってまで会計処理をする必要はありません。有税ということは、税金を払う必要があるということなので、節税という観点からは反対です。」
コメント:「当期に生じた損害を当期に認識するというのは当たり前の話」という部分はそのとおりです。問題は、「有税」イコール「税額が増える」と誤解している点です。「有税で(財務)会計処理をしたときの税額」と「当該会計処理をしなかった場合の税額」には変わりはありません。「有税」の意味を取り違えないようにしましょう。

2014/05/15 【役員会 Good&Bad発言集】財務会計と税務会計

 PPP社は北欧などからの輸入雑貨を扱う貿易商社(決算日は9月末)である。輸入雑貨の売れ行きは好調で、今期は大幅な増収増益で着地する予定であったが、決算日の直前である9月下旬になってアクシデントに見舞われてしまった。日本列島を大型台風が襲い、その影響で湾岸倉庫に保管していた輸入商品の一部が浸水してしまったのだ。幸い、損害保険をかけていたので、損失額はある程度填補される見込みだが、浸水してしまった商品に販売可能性はなく、廃棄処分するしかない。監査法人からは「販売可能性がない商品については、その帳簿価額に見積もり廃棄費用を加算した額を災害損失として特別損失に計上すべき」との指摘を受けている。ただし、実際の廃棄処理を9月末までに行うことは難しく、10月中旬にずれ込んでしまう予定である。経理部長が顧問税理士に確認したところ、税務上の損金算入時期は「実際に廃棄した時」であるため、今決算で計上する災害損失は法人税の所得計算上、自己否認するようにとの助言を受けた。

自己否認 : 自ら損金不算入とすること。

 10月上旬の取締役会で、経理担当役員は経理部長とともに、役員全員に対し災害損失についての説明を行うことになった。

経理担当部長「・・・・というわけで、当期の決算において総額で5億2千万円の災害損失を特別損失の部に計上する予定でおります。なお、有税処理となりますので税金計算上は自己否認し、来期、廃棄が完了した時点で認容して所得から減算する予定でおります。」

認容 : 一旦は自ら損金不算入とした費用を、翌期以降に損金に含めること。

社長「うーむ、君の言うことはよく分からない。経理担当役員、もっと簡単に説明してくれ。」

経理担当役員「はい、社長。要するに税金を算出するための課税所得の計算上、今回特別損失に計上予定の災害損失は損金として認められないため、今期の法人税申告書では、別表四において災害損失をゼロにするよう調整するということです。そして、来期において廃棄が完了したら、別表四で損金に計上することになります。」

社長「そういう技術的な話ではなく、決算への影響をもっと端的に知りたいんだよ。株主から利益還元へのプレッシャーも受けているし、今期の増収増益を踏まえ増配したいので、決算への影響は最小限にとどめたい。今期の増収増益に大いに貢献してくれた営業担当役員はどう思うかね?」社長がまだ発言していないあなたを指名し、発言を促しました。次のAからCの発言のうち、どの発言がGOOD発言でしょうか?

発言A:「廃棄をしていないのに廃棄損を計上するのは、会計的に問題があるのではないでしょうか?実際に廃棄するのが来期になるなら、今期に計上する廃棄費用は見積額に過ぎないでしょうし、そのような曖昧な金額を費用に計上すれば、投資家の判断を誤らせることになりかねません。実際に廃棄した時には金額も確定するはずですから、その時点で廃棄損として計上すべきです。」

発言B:「損失見込み額が算定できる以上、当期の決算において災害損失を計上することは必要かと思います。利益への影響を懸念されている方もいらっしゃるようですが、災害損失を計上しても、税効果会計により税引後利益へのインパクトは緩和されるのではないでしょうか。」

発言C:「当期に生じた損害を当期に認識するというのは当たり前の話です。しかし、払わなくてもよい税金を払ってまで会計処理をする必要はありません。有税ということは、税金を払う必要があるということなので、節税という観点からは反対です。」

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2014/05/15 (新用語・難解用語)アクティビスト

 アクティビストとは、いわゆる「モノ言う投資家」と同義とされ、一定の株式保有を背景として、投資先企業に経営改善を働きかけることで、株価上昇を達成して投資収益を獲得することを目標とする。ソニーに対してエンターテイメント事業の分離上場を提案した米サード・ポイント、日本たばこ産業に増配などの株主提案を実施した英チルドレンズ・インベストメントなどはアクティビストの典型例である。

 わが国では・・・

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2014/05/15 (新用語・難解用語)アクティビスト(会員限定)

 アクティビストとは、いわゆる「モノ言う投資家」と同義とされ、一定の株式保有を背景として、投資先企業に経営改善を働きかけることで、株価上昇を達成して投資収益を獲得することを目標とする。ソニーに対してエンターテイメント事業の分離上場を提案した米サード・ポイント、日本たばこ産業に増配などの株主提案を実施した英チルドレンズ・インベストメントなどはアクティビストの典型例である。

 わが国では2007年のブルドックソース事件(米スティール・パートナーズが、ブルドックのすべての発行済株式の取得を目指し、公開買付けを公告した事件)における買収防衛策の発動、2008年のリーマン・ショックによる信用収縮から、米スティール・パートナーズはじめ海外のアクティビスト・ファンドの多くは撤退した。しかし2013年以降、世界的な過剰流動性の高まりとアベノミクス相場への期待感から、アクティビストの動向が再び活発になっている。2000年代半ばにMBO(マネジメント・バイアウト:経営陣による買収)提案を立て続けに実施した米ダルトン・インベストメンツ、上場REITの買収を進めた米プロスペクト・アセット・マネジメントなどが、新たに株式を買い増したり買収提案を実施したりする動きが目立っている。

 国内組もリーマンショック前に活動していたプレイヤーの関係者が「復帰」している。代表格と言えるのがエフィッシモ・キャピタル・マネジメントで、M&Aコンサルティング(いわゆる村上ファンド)のファンドマネージャーが設立、投資先企業のMBOや完全子会社化に伴う株式買取りで利益を上げている。村上ファンド出身者による投資会社としてはレノ、ストラテジックキャピタルなども挙げられる。他には、かつてヘラクレスに上場していた投資会社オープンルーフ(2009年上場廃止)の元役員が代表者を務めるCFキャピタルが、創薬ベンチャーに対し株主提案で経営陣を送り込んだ。

 株主総会準備の中でも特に重要視されるのが「票読み」だが、株主総会の目的が議案に承認を得ることである以上、すべての準備は株主の議決権行使を意識して進めざるを得ない。役員としては、議決権行使結果に大きな影響を及ぼし得るアクティビストの動向には関心を持つ必要がある。

 なお、アクティビストは、議決権行使において積極的に反対票を投じるという点で「バリュー投資家」、経営権奪取を目指すことも辞さない点で「買収ファンド」と厳密に区別することはできないので留意したい。

2014/05/14 株主提案に対する備え

 3月期決算会社の株主総会が近づいてきている。最近はマスコミを賑わすような支配権争奪を巡る大規模な争いは生じていないが、代わって注目を集めているのが、個人株主による“株主提案権”行使の動向である。

 株主には、株主総会で議題とされている事項について議案を提出する権利が会社法で認められている(会社法304条)。例えば、定時株主総会の「取締役選任の件」といった議題に対して、株主は他の取締役の選任を議案として求めることができる。そして、取締役会設置会社では、株主のうち「6か月前から総株主の議決権の100の1以上の議決権を有する者」または「6か月前から総株主の議決権の300個以上の議決権を有する者」は、会社に対し、株主に対する議案の要領の通知を請求することができる(同法305条1項ただし書)。

 もっとも、2012年の株主総会では、奇をてらった商号の略称変更を求めたケースや1人の株主から多数の株主提案がなされたことが問題になった。特に後者のケースでは、会社側がそのすべての提案を招集通知や株主総会参考書類に記載することを拒否したことから、裁判に至った。会社法上、法令や定款に反しない限り、株主提案の内容や、1名の株主が行使することができる株主提案の数に制限はないことから、株主提案権を制限すること可否が問題になるわけだ。

 裁判所は、株主提案権の行使が・・・

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2014/05/14 株主提案に対する備え(会員限定)

 3月期決算会社の株主総会が近づいてきている。最近はマスコミを賑わすような支配権争奪を巡る大規模な争いは生じていないが、代わって注目を集めているのが、個人株主による“株主提案権”行使の動向である。

 株主には、株主総会で議題とされている事項について議案を提出する権利が会社法で認められている(会社法304条)。例えば、定時株主総会の「取締役選任の件」といった議題に対して、株主は他の取締役の選任を議案として求めることができる。そして、取締役会設置会社では、株主のうち「6か月前から総株主の議決権の100の1以上の議決権を有する者」または「6か月前から総株主の議決権の300個以上の議決権を有する者」は、会社に対し、株主に対する議案の要領の通知を請求することができる(同法305条1項ただし書)。

 もっとも、2012年の株主総会では、奇をてらった商号の略称変更を求めたケースや1人の株主から多数の株主提案がなされたことが問題になった。特に後者のケースでは、会社側がそのすべての提案を招集通知や株主総会参考書類に記載することを拒否したことから、裁判に至った。会社法上、法令や定款に反しない限り、株主提案の内容や、1名の株主が行使することができる株主提案の数に制限はないことから、株主提案権を制限すること可否が問題になるわけだ。

 裁判所は、株主提案権の行使が「主として、当該株主の私怨を晴らし、あるいは特定の個人や会社を困惑させるなど、正当な株主提案権の行使とは認められないような目的に出たものである場合には、株主提案権の行使が権利の濫用として許されない場合がある」と示したうえで、結論としては、本件提案自体が「全体として権利の濫用とまではいうことができない」と判断している(東京高裁平成24年5月31日決定)。

 企業にとっては、株主提案権の行使が、その目的によっては権利の濫用と認められることが示された点が重要である。しかし、会社側の判断で安易に「株主提案権の濫用」と判断することはリスクが大きい。たとえ少数株主であったとしても、会社の所有者である株主の意見表明の機会を奪うには相応の理由が必要と考えられるからだ。

 株主総会は「混乱なく無事に終わる」ことが当然の世界である。もし株主提案がなされた場合には、権利の濫用と認められる場合があることを踏まえながらも、提案の目的を慎重に確認することが必要だろう。

2014/05/13 日本企業への影響は?EUで役員報酬への大幅規制強化案

 高額な役員報酬は株主からの批判を受けやすいが、日本企業より全般的に役員報酬の水準が高い欧州では、近い将来、高額な役員報酬に対する規制を大幅に強化する法律が導入される方向となっている。

 役員報酬に対して株主に大きな発言権を与える「Say on Pay」制度はイギリスで初めて導入されるなど、欧州では、高額な役員報酬への関心が高い。こうした中、2012年には、業績見合いで過度に高額な役員報酬に対し、株主総会で多数の反対票が投じられる“株主の春”と言われる現象も発生した。

 これを受け、高額役員報酬問題は欧州各国で議論されることになり、例えば英国では会社法が改正され、上場企業の役員報酬方針が拘束力のある株主決議事項となり(ただし、3年ごと)、同方針に合致しない役員報酬は支給できなくなった。また、役員と一般従業員の報酬格差を公表するルールなども導入されている(2013年10月から実施)。

 それでも役員報酬を巡る規制強化の動きは止まらず、先月(2014年4月)には、・・・

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2014/05/13 日本企業への影響は?EUで役員報酬への大幅規制強化案(会員限定)

 高額な役員報酬は株主からの批判を受けやすいが、日本企業より全般的に役員報酬の水準が高い欧州では、近い将来、高額な役員報酬に対する規制を大幅に強化する法律が導入される方向となっている。

 役員報酬に対して株主に大きな発言権を与える「Say on Pay」制度はイギリスで初めて導入されるなど、欧州では、高額な役員報酬への関心が高い。こうした中、2012年には、業績見合いで過度に高額な役員報酬に対し、株主総会で多数の反対票が投じられる“株主の春”と言われる現象も発生した。

 これを受け、高額役員報酬問題は欧州各国で議論されることになり、例えば英国では会社法が改正され、上場企業の役員報酬方針が拘束力のある株主決議事項となり(ただし、3年ごと)、同方針に合致しない役員報酬は支給できなくなった。また、役員と一般従業員の報酬格差を公表するルールなども導入されている(2013年10月から実施)。

 それでも役員報酬を巡る規制強化の動きは止まらず、先月(2014年4月)には、EC(欧州委員会)が、英国の会社法改正をはるかに上回る規制強化を盛り込んだ法案を発表している。具体的には、EU内の約1万社の上場企業等を対象に、「役員報酬の最高額」や「従業員報酬と役員報酬との比率」の開示を義務付けるほか、役員報酬と企業の長期的利益や健全性との整合性、役員報酬決定過程における従業員の雇用状況の考慮などについても、説明を求めるというもの。そして、株主には、これら情報を基づき役員報酬方針等を承認・否決する投票権が与えられる。法案の成立は2016年以降になると予想されるが、実現すれば、企業には大きな負担となりそうだ。

 こうした規制強化の背景には、高額な役員報酬が企業による短期的利益の追求を促し、結果的に欧州企業や経済の長期的発展や安定性を阻害してきたとの問題意識がある。そこで、役員報酬等に対する株主の発言権を強めるとともに、経営参加を促すという狙いがある。実際、FTSE100(ロンドン証券取引所の時価総額上位100社)の経営層と一般従業員の給与格差は、1998年の47倍から、2013年には何と120倍にまで拡大しているとの調査結果もある。

 企業側からは、こうした規制が企業価値の向上に寄与するとは思えないとして批判の声も上がっているが、その一方では、「Say on Pay」がないフランスでは、2006年から2012年にかけて株価が1/3に低下しているにもかかわらず、役員報酬が平均で94%上昇しているといった事実から、役員報酬規制の必要性を訴える声もある。

 こうした中、企業の間では、役員報酬を抑制しようという動きも出始めている。英国企業を見ると、役員賞与は昨年より1%減となり、3年連続の減少となっているほか、CEOの基本給を据え置く会社も25%にのぼっているとの調査結果もある。

 ただ、株主の目は厳しい。2014年4月に開催された英大手銀行バークレイズの年次株主総会では、同社が2013年決算低迷にもかかわらず、行員のボーナスを引き上げる方針を示したことから、役員報酬議案に対し、大株主である英大手保険Standard Life社を含む20%を超える反対票が投じられている。

 日本では、上場企業に対し、役員報酬1億円以上の役員の個別開示が義務付けられているが、現状、一部の企業を除いては、日本の上場企業の役員報酬は欧米企業に比べると高くない。逆に言うと、日本の上場企業の役員報酬はまだ上昇する余地が大きいとも言える。役員としては、日本企業の “先行事例”として欧州の役員報酬を巡る動向にも関心を持っておきたいところだ。