2014/03/27 (新用語・難解用語)SPA

 元々は米国のアパレル企業「GAP」が自らを定義したSpeciality Store Retailer of Private Label Apparelの略で、直訳すると「独自ブランド(プライベート・レーベル)のスペシャリティ・ストアを展開する小売業者」ということになる。具体的には、原材料の調達から企画・製造・物流・販売までを、別々の会社でなく同じ会社が自ら担うか、もしくはコントロールしている業態を指し、日本語では「製造小売業」とも言われる。

 GAPのほか、海外ではZARA(スペイン)、H&M(スウェーデン)、日本ではユニクロブランドを展開するファーストリテイリングが有名。また、アパレル以外では家具のニトリグループやIKEA(スウェーデン)もSPAの代表的な会社とされる。

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2014/03/26 IFRS任意適用要件緩和で、上場企業の「選択」は?

 自民党政権時代の2009年6月、「2015年にもIFRS(国際会計基準)を上場企業等に強制適用する」との方針を金融庁が打ち出したことで、一時、多くのIFRS解説本が出版され、セミナーも頻繁に開催されるなど“IFRSブーム”が起こったが、このブームも最近はすっかり下火になった感がある。その背景には、2011年6月に当時の自見金融大臣が「2015年3月期の強制適用は考えていない」と発言し、それまでのIFRS強制適用の方針が事実上撤回されたことがある。

 しかし、そのIFRSに再び注目が集まりつつある。これは、IFRSの適用基準を定めた内閣府令が昨年(2013年)10月28日付で改正され、「上場していること」「国際的な財務活動又は事業活動を行っていること」という任意適用の要件が撤廃されたからだ。つまり、上場を目指している未上場企業や、国内向けビジネスを展開している企業であっても、IFRSの適用が可能となった。

 IFRS任意適用の要件としては、「IFRSによる連結財務諸表の適正性確保への取組み・体制整備をしていること」のみが残ったが、これは要するに「適正な財務諸表を作成するための内部統制が社内に備わっている」ということであり、これまで粉飾決算を行っていない普通の企業であれば、問題なくクリアできるだろう。すなわち、任意適用にあたって大きな障害にはならない。この結果、IFRSを任意適用できる企業数は飛躍的に増えることとなった。

 金融庁の思惑は、「企業からの批判が根強いIFRSの強制適用を回避しつつ、国際的には、IFRSに対する日本のプレゼンスを維持・向上させたい。そこで、とりあえずは任意適用を増やし、既成事実を積み上げていきたい」というもの。この点は、企業会計審議会の最新の報告書である「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」(2013年6月19日公表)で「我が国におけるIFRSの強制適用の是非については、…未だその判断をすべき状況には無い」としたうえで、まずは「IFRSの任意適用の積上げを図ることが重要」との認識が示されていることからも明らかだ。

 さて、金融庁の思惑通り、IFRSを適用する企業数は増えるのだろうか。まず予想されるのが、上場を目指す未上場企業での導入だ。いずれIFRSの適用が必要になるのであれば、最初からIFRSを適用してしまった方が、日本基準で上場してからIFRSに変更(IFRSと日本基準は未だに差異があるため、この場合、手間とともにシステム変更コストも生じる)するよりも負担が少なくて済む。特に、将来的に海外でビジネスを展開したい企業にとっては、IFRSの任意適用は一考に値するだろう。また、買収により正ののれん(いわゆる営業権)が発生した企業は、日本基準では正ののれんの定期的な償却負担を余儀なくされ、利益を圧迫することから、のれんの定期的な償却が必要とされないIFRSに乗り換えるインセンティブ(誘因)があることが指摘されている。

 では、上場企業ではどうだろうか?

 現在、企業会計基準委員会で「エンドースメントIFRS(エンドースメントとはIFRSの一部を自国会計基準に取り込むこと。いわゆる日本版IFRS)」が開発中のため、各社様子見の状況であり、IFRS適用を巡る目立った動きはない。もっとも、グローバル企業を中心に、IFRSの任意適用に踏み切る企業も散見されるようになってきた。そうでない企業でも、IFRS適用の検討は継続されており、「同業他社が適用すれば、すぐにでも適用できるように準備している」と話す企業が少なくない。経営トップのGOサイン待ちという企業も多い。有力企業がIFRSを適用することになれば、IFRSの適用が業界横並びで増えていく可能性が高い。また、東証マザーズに上場するバイオベンチャー「そーせいグループ株式会社」が2014 年3月期からIFRSを適用することを発表して話題になった。同社の場合、のれんの償却費が大きく、日本基準を適用した場合純利益が赤字になるのに、IFRSを適用することで黒字に転換する点が背景にあるものと思われる。加えて、上場準備企業のIFRSの適用が進めば、これらが呼び水となり、国内ビジネス中心の上場企業にも影響が及ぶことも十分考えられる。

 担当役員としては、同業他社の適用状況をウォッチするとともに、今のうちから適用の準備はしておくべきだろう。

2014/03/25 多重代表訴訟適用対象外の子会社でも、親会社取締役は安心できず!?

 最高裁はこのほど、親会社の取締役に、子会社の監督責任を問う判決を下した(平成24(受)1600)。今回の会社法改正では、「親会社の取締役は子会社業務の監督を職務とする」旨の規定を会社法に置くとの改正が見送られた経緯があるだけに、この最高裁判決は波紋を呼ぶ可能性がある。この最高裁判決を受け、親会社の取締役は、これまで以上に、子会社に対して適切な指導を行うことが求められそうだ。

 本事案は、福岡魚市場の株主である被上告人(株主)が、同社の代表取締役だった上告人(取締役)らに対し、同社の100%子会社に対する不正融資等により同社が18億8,000万円の損害を被ったとして、旧商法267条3項に基づき、福岡魚市場への損害賠償の支払いを求めた株主代表訴訟である。

 同社の子会社は不正な会計処理等により経営破たんしたが、最高裁は、親会社である福岡魚市場の取締役から見て、子会社の在庫状況や借入金の増加、帳簿上の商品単価、数量等を総合すると“非正常な取引”が行われていたことは経営判断上明らかであったなどと指摘。親会社の取締役の忠実義務ないし善管注意義務違反があったことは明らかであるとし、親会社の取締役らへの損害賠償請求を容認している。

 従来、親会社取締役の子会社等に対する監督責任は「原則なし」というのがこれまでの判例の立場だった。例えば、大手証券会社の株主である原告らが、同社の米国における100%孫会社が米国証券取引委員会規則違反を理由に課徴金を課されたことについて、同社の取締役らの責任を追及した株主代表訴訟では、東京地裁は「親会社の取締役は、特段の事情がない限り、子会社の取締役の業務執行の結果、子会社に損害が生じ、さらに親会社に損害が生じた場合でも直ちに任務懈怠の責任を負うわけではない」とし、親会社取締役に子会社を監督する責任は原則として存在しないと判示している(平成9年(ワ)9480号)。

 この点については、現在国会に提出されている「会社法の一部を改正する法律案」の議論の中で、法務省の法制審議会会社法制部会が、親会社取締役による子会社業務の監督を職務とする旨の規定を会社法に置くかどうか検討を行ったが、企業側の反対により、最終的には改正を見送っている。今回の最高裁の判決は、会社法改正で見送られた内容を実質的に実現するものとなる可能性もあり、注目される。

 会社法改正案では、親会社の株主がその子会社の取締役等の責任を追及する訴えを提起することができる「多重代表訴訟制度」が創設されるが、同制度は濫訴になるのではといった企業側の懸念に配慮し、提訴できるのは「親会社の発行済み株式を1%以上所有する株主」に限られるとともに、提訴される子会社も、「親会社が保有する株式の帳簿価格が親会社自身の総資産の5分の1を超える子会社」とされるなど、適用範囲はかなり限定されている。このため、多重代表訴訟の対象となる子会社はかなり少ないと予想される一方で、今回の判決は、多重代表訴訟制度の適用対象外の子会社についても、株主代表訴訟により親会社の取締役に対して監督責任を問うことができるという点、親会社の取締役としては留意しておくべき判決と言えるだろう。

2014/03/25 チェックリスト:株主優待制度を導入したい(会員限定)

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■チェックリスト:株主優待制度を導入したい

チェック事項 備考 対応未了 対応済
株主優待制度の内容が「株主平等の原則」に違反するものでないかを検討したか。
株主優待制度の内容が会社財産を現物で配当していることと実質的には同一であるとして「剰余金の配当」に該当するものでないことを検討したか。 株主優待制度の導入に際して、
(1)その制度が会社の財産、すなわち、貸借対照表上の資産の部を減少させるものかどうか
また、
(2)会社の財産を減少させるものであれば、社会的相当性が認められる範囲内の減少かどうか
について事前に検討しておく必要がある。
株主優待制度の内容が「株主への利益供与」に該当するものでないことを検討したか。 (1)導入の目的は正当か
(2)個々の株主に供与される額が社会通念上許容される範囲のものといえるのか
(3)株主全体に供与される総額も会社の財産的基礎に影響を及ぼすものでないといえるのか
といった観点から、株主への利益供与にあたるものではないということを確認する必要がある。

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2014/03/24 4月以降の先端設備投資はリース活用も視野に

 今年4月以降、先端設備は「リース」で取得することを検討してもよいかもしれない。

 リースにはオペレーティングリース(物を借りて賃借料を払う本来のリース)とファイナンスリース(実質的な割賦販売)の2種類がある。本来、オペレーティングリースの方がリース料が安く(ファイナンスリースではリース料の総額が「販売価格(正確には、リース料総額の現在価値≧見積り現金購入価格の90%)」となるのに対し、オペレーティングリースでは「販売価格-リース期間終了時の残存価額」となるため)、また、リース期間についても、法定耐用年数の75%以上とされ中途解約もできないファイナンスリースに対し、オペレーティングリースではリース期間の設定が自由で、契約によっては中途解約も可能。さらに、リース資産およびリース債務を貸借対照表に計上しなくてよい(=オフバランス。これにより、ROA(Return On Asset=総資本利益率。総資産に対する利益率)が高くなる)などメリットの多いオペレーティングリースだが、実際にはあまり普及していない。これは、自動車など一部を除き、リース期間が終了した資産を売却する中古市場が確立されていないため、リース会社が思ったほどリース料を下げられないことが一因となっている。

 こうした事態を打開して、オペレーティングリースを使った設備投資を増加させるため、政府は日本の成長戦略を示した「日本再興戦略(2013年6月14日閣議決定)」の一環として立法された産業競争力強化法(2013年12月4日成立)の中で、「先端設備」のリース期間終了時においてリース会社によりリース資産が売却された場合、その損失の“半分”を国が負担するスキームを来月4月から実施する。

 本スキームの対象とする「先端設備」には、3Dプリンター等の最先端設備のほか、工作機械であれば、ある程度新しいモデルはほぼ適用対象となりそうだ。ただし、資産を売却せずに再度リース(2次リース)した場合や、借手の会社が倒産した場合に発生した損失は保証されない。

 本スキームの導入によりオペレーティングリースの利用が増えるかどうかを左右するのが、本スキームを活用したリース取引が「オペレーティングリース」としてオフバランスにできるのかどうかどうかという会計上の取扱いだ。上述のとおり、オペレーティングリースとしてオフバランスにできれば、リース資産およびリース債務を貸借対照表にオンバランスする必要がなくなり、ROAなどの財務指標が改善するからだ。

 この点について企業会計基準委員会(ASBJ)はこのほど、本スキームによるリースの借手の会計処理を示す公開草案を公表したが、結論としては、本スキームだけ“特別扱い”はしないこととされた。つまり、上述したリース料総額やリース期間、中途解約の可否など、現行の「リース会計基準」に定めるリースの定義に従って「ファイナンスリースorオペレーティングリース」のいずれに該当するかを判断するということだ。

 ただ、実際には、リース会社が本スキームの使い勝手を良くするために、「オペレーティングリース」に区分されるように契約内容を仕組むものと思われる。すなわち、ファイナンスリースに該当しないよう、リース料総額や解約不能リース期間を調整することが予想される。

 その結果、「オペレーティングリース」に該当するケースがほとんどとなれば、本スキームを活用したオペレーティングリースの普及を後押しする可能性がある。これによりリース料が下がるようなら、最先端設備は「取得」せず、リースにすることも検討に値しそうだ。

2014/03/23 チェックリスト:ハラスメントを起こさせないために(会員限定)

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■チェックリスト:ハラスメントを起こさせないために

チェック事項 備考 対応未了 対応済
ハラスメント事案が発生したことを知ったら、必ず両当事者から事情を聴いたか。 その時点では、先入観を持たず、当事者本人の言い分をそのまま聴くように心がけるべき。解決を急ぐあまり、当事者に対して意見を述べたり、当事者を説得しようとすると、インタビュアーの価値観を押し付けてしまうことにもなりかねないので注意が必要である。
被害者の(特にメンタル面での)ケアを検討したか。 必要であれば、通院や休業を勧めることも検討する。
特にセクハラ事案では、事案の解決策として配置転換などの措置が検討される場合、公平・公正な立場を貫いているか。
EAP(Employee Assistance Programs=従業員援助プログラム。医師、臨床心理士、産業カウンセラー等による心理カウンセリングなど、従業員に提供されるメンタルヘルスケアの総称)の利用を検討したか。
経営トップが「ハラスメントは許さない」という方針を明確に打ち出しているか。
就業規則の「服務規律」や「懲戒」に「ハラスメントは許さない」旨を明記しているか。
ハラスメントに関する研修を管理職登用研修に組み入れるなどして、従業員の啓発を図っているか。 研修は1回だけでなく、定期的に実施することで高い効果が期待できる。
ハラスメントを防止するための社内体制として、「ハラスメント担当窓口」の設置を行っているか。 「窓口を男性向けと女性向けに分ける」「匿名での相談メールが送れるシステムを構築する」「あえて社外の専門業者を窓口にする」といった方策も検討すべきである。

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2014/03/23 【不祥事】ハラスメントを起こさせないために(会員限定)

 

ハラスメントの発生で「会社」が被告に

「ハラスメント」は一般的に「嫌がらせ」と訳されますが、日本語で「嫌がらせ」という場合、嫌がらせに当たるかどうかについて第三者的な視点からの評価が入るのに対し、「ハラスメント」はどちらかと言うと被害者の主観的な概念であり、「不愉快」と訳した方が適切な場合もあります。

ハラスメントには、「セクシャルハラスメント(セクハラ)」「パワーハラスメント(パワハラ)」「モラルハラスメント(モラハラ)」等があり、「性差別」「宗教差別」「えこひいき」といったものもハラスメントに含まれます(性差別はセクハラ、宗教差別、えこひいきはモラハラに該当します)。

このほか、飲酒の強要、酒に酔った状態での暴言・暴力などお酒に関する嫌がらせである「アルコールハラスメント」、職場で自己の意思に反してタバコの煙にさらされるといった喫煙に関する嫌がらせ行為である「スモークハラスメント」といった造語もあります。

近年、職場におけるハラスメントの被害者(従業員)が「会社」を相手取って訴訟を起こすケースが増えてきています。

ハラスメントには当然「個人」の加害者がいるはずですが、多くの場合、加害者ではなく会社が被告となるのは、加害者を雇用している会社は「使用者責任」もしくは「職場環境配慮義務(安全配慮義務や健康配慮義務をより広義にとらえた概念)不履行」の当事者だからです。

セクハラ以外の判例はまだ揺れている段階

ハラスメント関係の裁判では、セクハラに関しては「ハラスメントの存否」や「損害の程度の認定」について判例が固まりつつあるものの、他のハラスメントに関してはまだ判例も揺れている段階です。というのも、セクハラは明らかに職務とは関係のない行為であり、これを許さない社会的な風潮もありますが、パワハラをはじめとする他のハラスメントは職務の延長や職務に関連する行為であることが多く、また、当事者でなければ実態を把握しにくいこともあって、特に下級審においては裁判官の心証次第で判決が下されるケースが少なくないからです。そのため、企業にとっては、判決の行方が読みにくいという点で怖さがあります。

もっとも、セクハラ以外のハラスメントについては、現に損害(例:身体的な暴力を振るわれた、メンタルヘルスを害した、退職を余儀なくされた等)が発生していないと事件になりにくい、という特性があります。平成23年12月、厚労省は労災事案に関して「心理的負荷による精神障害の認定基準 」を取りまとめましたが、これも、パワハラ等により「うつ」を生じたケースなど、心身の健康を害した場合に限った話です。

ただ、会社がハラスメントの被害者から訴えられて敗訴すれば、被害者に損害賠償しなければなりませんし、仮に勝訴したとしても、「ハラスメントで従業員に訴えられた」ということ自体が世間(取引先、消費者、就職活動中の学生、行政機関等)に「ハラスメントを生み出す土壌のある会社ではないか」といった疑念を抱かせ、企業イメージのダウンにつながる恐れがあります。また、従業員の自社に対する誇りが損なわれ仕事へのモチベーションが低下したり、訴訟になるまで事態を放置した経営陣への不信感が芽生える可能性もあります。

したがって、役員としては、ハラスメントの発生を「予防」し、万が一発生してしまった場合には、大きな問題になる前に適切に対処する必要があります。

ハラスメント事案発生時の対処法

では、実際にハラスメント事案が発生してしまった場合、役員としてはどのようなことに注意して対処するべきでしょうか。具体的な対処方法は以下のとおりです。

(1) ハラスメント事案が発生したことを知ったら、必ず両当事者から事情を聴いてください。その時点では、先入観を持たず、当事者本人の言い分をそのまま聴くように心がけるべきです。解決を急ぐあまり、当事者に対して意見を述べたり、当事者を説得しようとすると、インタビュアーの価値観を押し付けてしまうことにもなりかねませんので、その場ではあくまで「聴くこと」に徹するのが無難です。

(2) 被害者の(特にメンタル面での)ケアを考えてあげてください。必要であれば、通院や休業を勧めることも選択肢に入れます。ハラスメントにおいては、第三者が想像する以上に本人は苦痛を感じていることが多いということを理解すべきでしょう。被害者のケアを真摯に考える姿勢を見せることで被害者の態度が軟化し、大問題化を回避できる可能性が高まります。

(3) 事案の内容によっては、加害者への指導や処分を検討しなければならないこともありますが、一方で、実は被害者側の勘違いや被害妄想、虚言だったというケースも珍しくありません。指導・処分を検討する前に必ず「加害者側」の言い分も聴いて、真実を冷静に見極める必要があります。

(4) 特にセクハラ事案では、事案の解決策として配置転換などの措置が検討される場合、会社は往々にして被害者(女性)側にとって不利な解決方法に向かいがちです。公平・公正な立場を貫きましょう。

(5) EAP(Employee Assistance Programs=従業員援助プログラム。医師、臨床心理士、産業カウンセラー等による心理カウンセリングなど、従業員に提供されるメンタルヘルスケアの総称)を利用するのもハラスメント事案の解決に有効な手段の一つです。ただし、EAPを外部の業者に依頼する場合、業者によっては効果が半減したり逆効果だったりすることがしばしばある点はあらかじめ認識しておく必要があります。

ハラスメントの「予防」のために

ハラスメントの発生を「予防」するためには、まず、経営トップが「ハラスメントは許さない」という方針を明確に打ち出すことが何よりも効果的です。就業規則の「服務規律」や「懲戒」にその旨を明記するのもその一環と言えますが、就業規則を制定して終わりになってしまわないよう、事あるごとに経営トップがこの方針を発信したり、ハラスメントに関する研修を管理職登用研修に組み入れるなどして、従業員の啓発を図りましょう。なお、研修は1回だけでなく、定期的に実施することで高い効果が期待できます。

また、ハラスメントを防止するための社内体制として、「ハラスメント担当窓口」の設置をお勧めします。もちろん、設置するだけでなく、活用しやすい体制を整える必要があります。例えば、「窓口を男性向けと女性向けに分ける」「匿名での相談メールが送れるシステムを構築する」「あえて社外の専門業者を窓口にする」といった方策が考えられます。これにより、ハラスメント事案が大きな問題に発展する前に解決できる可能性が高まることに加え、上述の就業規則への明記と同様、「ハラスメントを許さない」という方針が具現化され、従業員への抑止力となることに大きな意味があると言えるでしょう。

ハラスメントは、その根底に「弱い者いじめ」の構図が見え隠れするケースがほとんどです。したがって、これを未然に防ぐためには、究極的には「男性と女性」あるいは「上司と部下」の間に全人格的な主従関係はないということを従業員に理解させることが肝要であり、そのためにも、役員は普段から“風通し”の良い組織を作るよう心掛ける必要があります。

ハラスメント事案の問題化を防いだ実例

最後に、某大手メーカーで、ハラスメント事案を小さなうちに解決できた実例を紹介しましょう。「暑気払い」での出来事です。この暑気払いは、東京営業所が毎年8月に恒例で催している行事で、営業所職員の出欠は原則として任意ですが、取引先も招待され、経費も会社が負担することになっていました。

ある年の暑気払いに東京営業所の事務職員(女性)が出席していたところ、営業所長から取引先担当者にお酌をするように言われ、これに従いました。しかし、後日、この事務職員から人事部宛に「お酌を命じられたのが不愉快であった」との投書が届けられたのです。

そこで人事部がとった対応は以下の通りです。

まず人事部はこの投書を「セクハラ問題」として位置付け、投書した本人には産業カウンセラー(女性)が真意を尋ねる一方、営業所長や直属の上司には人事部員が事情を尋ねました。この際、上司らには投書があったことすら告げませんでした。

そして、状況を客観的に整理して、人事課長から投書した本人に「事務職といえども営業所の一員として取引先を接待することは業務と言える。お酌の強要については、男性営業マンも取引先にお酌して回っていたのであるから、殊さら『女性だから』との意図は無かった」と説明し、理解を求めました。さらに、「業務である以上、同様のケースにおいては時間外労働の対象とする」とし、これを全社各部門に通達しました。

その結果、投書した事務職員は納得し、同じ職場で何事もなかったかのように就労を続けているそうです。

この事案では、(1)会社が投書の内容を真摯に受け止め、(2)両当事者の言い分をきちんと聞き、(3)そのうえで会社としての判断を冷静に伝えた、という教科書どおりの対応手順により解決がみられました。個々の事案においてはこれとは異なる対応が求められることがあるとは思いますが、参考にはなるのではないでしょうか。

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2014/03/23 【不祥事】ハラスメントを起こさせないために

 

ハラスメントの発生で「会社」が被告に

「ハラスメント」は一般的に「嫌がらせ」と訳されますが、日本語で「嫌がらせ」という場合、嫌がらせに当たるかどうかについて第三者的な視点からの評価が入るのに対し、「ハラスメント」はどちらかと言うと被害者の主観的な概念であり、「不愉快」と訳した方が適切な場合もあります。

ハラスメントには、「セクシャルハラスメント(セクハラ)」「パワーハラスメント(パワハラ)」「モラルハラスメント(モラハラ)」等があり、「性差別」「宗教差別」「えこひいき」といったものもハラスメントに含まれます(性差別はセクハラ、宗教差別、えこひいきはモラハラに該当します)。

このほか、飲酒の強要、酒に酔った状態での暴言・暴力などお酒に関する嫌がらせである「アルコールハラスメント」、職場で自己の意思に反してタバコの煙にさらされるといった喫煙に関する嫌がらせ行為である「スモークハラスメント」といった造語もあります。

近年、職場におけるハラスメントの被害者(従業員)が「会社」を相手取って訴訟を起こすケースが増えてきています。

ハラスメントには当然「個人」の加害者がいるはずですが、多くの場合、加害者ではなく会社が被告となるのは、加害者を雇用している会社は「使用者責任」もしくは「職場環境配慮義務(安全配慮義務や健康配慮義務をより広義にとらえた概念)不履行」の当事者だからです。

セクハラ以外の判例はまだ揺れている段階

ハラスメント関係の裁判では、セクハラに関しては「ハラスメントの存否」や「損害の程度の認定」について判例が固まりつつあるものの、他のハラスメントに関してはまだ判例も揺れている段階です。というのも、・・・

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ハラスメント事案発生時の対処法

では、実際にハラスメント事案が発生してしまった場合、役員としてはどのようなことに注意して対処するべきでしょうか。具体的な対処方法は以下のとおりです。・・・

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ハラスメントの「予防」のために

ハラスメントの発生を「予防」するためには、まず、経営トップが「ハラスメントは許さない」という方針を明確に打ち出すことが何よりも効果的です。就業規則の「服務規律」や「懲戒」にその旨を明記するのもその一環と言えますが、就業規則を制定して終わりになってしまわないよう、事あるごとに経営トップがこの方針を発信したり、ハラスメントに関する研修を管理職登用研修に組み入れるなどして、従業員の啓発を図りましょう。なお、研修は1回だけでなく、定期的に実施することで高い効果が期待できます。

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ハラスメント事案の問題化を防いだ実例

最後に、某大手メーカーで、ハラスメント事案を小さなうちに解決できた実例を紹介しましょう。・・・

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2014/03/20 (新用語・難解用語)スチュワードシップ・コード(会員限定)

スチュワードシップ・コードとは、投資運用会社、金融機関、年金基金等の機関投資家が、顧客・受益者と投資先企業の双方を視野に入れ、「責任ある機関投資家」としてその責任を果たすに当たり有用と考えられる諸原則(コード)のことである。

スチュワードとは、もともと執事や世話役のこと。女性だとスチュワーデスになる。リーダーの力量や能力をリーダーシップというのと同様、スチュワードが果たすべき責任をスチュワードシップ・コードという。

機関投資家は、顧客・受益者から資金を預かり、運用する。その機関投資家が、投資先企業のガバナンスに無関心であったり、投資判断が投資先企業のガバナンスの質と連動していないとすれば、それは投資先企業の企業価値下落を容認することを意味し、ひいては顧客・受益者の投資リターンを低下させることにつながりかねない。

そこで金融庁は2014年2月、英国の制度を参考に「日本版スチュワードシップ・コード」を策定した。対象となるのは、日本の上場株式に投資する機関投資家だ。原則は全部で7つとなっており、主なものを抜粋すると次の通り(数字はコードの番号)。

1. 機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たすための明確な方針を策定し、これを公表すべきである。
3. 機関投資家は、投資先企業の持続的成長に向けてスチュワードシップ責任を適切に果たすため、当該企業の状況を的確に把握すべきである。
4. 機関投資家は、投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて、投資先企業と認識の共有を図るとともに、問題の改善に努めるべきである。

今後、各機関投資家には、1つ目の原則に基づき、スチュワードシップ責任を果たすための明確な方針を策定し、公表することが求められる。これにより、機関投資家の行動が律せられ、投資先企業のガバナンスの質が向上し、企業価値向上を通じて、顧客・受益者の中長期的な投資リターンを確保することが可能になるという算段だ。

投資先企業側としては、今後、機関投資家からスチュワードシップ活動の一環としてガバナンスの質を高めるための対話を求められる機会が増えるものと思われる。