スチュワードシップ・コードとは、投資運用会社、金融機関、年金基金等の機関投資家が・・・
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米国の「クラスアクション」というと濫訴(むやみやたらに訴訟を起こすこと)で悪名高いが、日本でも、このクラスアクションに相当する「集団訴訟」を可能にする法律(消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律。消費者訴訟特例法) が昨年(2013年)の臨時国会で成立したところだ。
もっとも、日本では米国のような濫訴が生じる可能性は低いとの見方が強い。これは、消費者訴訟特例法では、濫訴を防止するために下記のような工夫がなされているからだ。
(1)政府から認定を受けた消費者団体(特定適格消費者団体)のみが提訴できる。
(2)生命身体に関する損害や、拡大損害(例えば、商品が発火して他のものを損傷した場合の損害)の賠償請求に関する提訴はできない。
(3)「消費者契約」の相手方(実際の購入者)のみが提訴できる。
その一方で気になるのは、目的物(製品)の「瑕疵(製品が通常要する性能を欠いていること)」が明示的に損害賠償請求の対象に含まれている点(同法3条1項4号)である。これにより、ごく僅かな不具合でも安易に訴訟が提起される恐れがある。
しかも、この法律では「消費者契約の相手方」が被告となることから、メーカーではなくそれを販売した小売店等が訴訟の対象になる可能性がある。もっとも、仮に賠償が認められた場合には、小売店等はメーカーにその賠償金を請求(求償)することになるため、メーカーも無関係ではいられない。
政府から認定を受けた団体に訴えられれば、被告となる小売店等のみならず、製造元であるメーカーのレピュテーションは大きく傷つく。そうならないために品質管理に万全を尽くすべきなのは言うまでもないが、仮に問題が起きてしまった場合にはまず「リコール(自主的な製品の回収・交換等)」検討する必要がある。というのも、今後政府が策定する予定の消費者団体に対する監督指針では、企業(メーカー or 小売店等)がリコールをした場合には訴訟を提起できないとされる見込みだからだ。
過去に起きた企業の不祥事で大きな騒動となったものには、問題発覚後迅速に自主的な対応をしなかった、あるいは十分な説明をしなかったという共通点がある。そこからは、不祥事そのものより、“誠実な対応”がなかったことを問題視する消費者心理が読みとることができる。
役員としては、3年以内に予定されている法律の施行を見据え、問題が起こった場合の自主回収体制や広報のあり方を再度点検しておくことが必要だろう。
民間の会計基準設定主体である企業会計基準委員会(ASBJ)が、税効果会計の見直しの検討を開始している。
税効果会計の実務上の取扱いは、日本公認会計士協会が公表している実務指針や監査委員会報告で定められているが、これらの実務指針等は実質的に「会計基準」として機能しているため、ASBJは、策定の主体を日本公認会計士協会からASBJに移管するとともに、移管を機に「税効果会計専門委員会」を設置し、内容の見直しも行う模様だ。
移管されるのは、監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(以下、66号)。まず、繰延税金資産とは何かを説明しておこう。
賞与引当金や減損損失など、会計と法人税法の計上基準の違い(例えば法人税法では、税収を減らさないために引当金の計上基準が厳しかったり、減損の損金計上が認められないなどの違いがある)により、会計上の資産・負債と、税法上の資産・負債に差異(一時差異)が生じる場合、この一時差異が解消される将来の時点、すなわち法人税法上、損金に算入することができる時点(例えば実際に貸倒れが発生した時点)において、当該損金算入額と相殺するだけの課税所得があるかどうか(=税金を減らすことができるかどうか)を判断のうえ、この将来の税金の減少効果を「資産」として計上したのが繰延税金資産である。そして、「回収可能性」のない繰延税金資産は計上することができないことから、繰延税金資産を計上する際の「判断」は「回収可能性の判断」と言われる。
この「回収可能性の判断」の実質的な指針となってきたのが、上述した66号である。
66号は、会社の業績等の状況により会社を5つのタイプに分類し、計上できる繰延税金資産の額を示している。例えば、「業績が不安定であり、期末における将来減算一時差異(将来において課税所得を減らすことになる一時差異)を十分に上回るほどの課税所得がない会社」(第3区分)であれば、「過去の業績等により、長期にわたり安定的な課税所得の発生を予測することができない」として「将来の合理的な見積可能期間(おおむね5年)内の課税所得の見積額を限度」として、回収可能性を判断することになる。一方、「重要な税務上の繰越欠損金が存在する会社」(第4区分)では、「将来の課税所得の発生を合理的に見積ることは困難」であるため、「翌期」(つまり1年分)の課税所得の見積額のうち確実に見込まれる分が限度となるのが原則だ。いずれにしろ、会社区分に応じて見積可能期間が決められており、その期間内に見込まれる課税所得の範囲でしか、繰延税金資産の計上は認められない。
66号の中で見直しの俎上に上っているのが、この見積可能期間の長さだ。これは、平成23年12月の税制改正により「平成20年4月1日以後に終了した事業年度で生じた欠損金」の繰越期間が従来の5年から9年に延長されたにもかかわらず、繰延税金資産の回収可能性を判断する見積可能期間は「おおむね5年」とされたままだからだ。法人税法上の繰越期間が延びたことにより、「9年」を前提とした見積可能期間に変更すべきとの要望が企業側から上がっている。
66号が改正され、見積可能期間が延びれば、一般的には計上できる繰延税金資産の金額が増えることになる。しかし、計上できる繰延税金資産が増える分、積み増しした繰延税金資産は業績の悪化に伴い回収可能性が低下したときに、その取崩しを迫られ、結果として赤字幅が増幅する恐れがある。
一般的な中期経営計画の期間は3~5年程度。仮に見積可能期間が9年となった場合、経営陣はタックスプランニングを含め、5年を超える経営計画を策定するかどうかの判断に迫られることになる。長期の経営計画はそれだけ不確実性も増すことになり、回収可能性を巡る監査人との攻防が今以上に激しくなる可能性がある。
税効果会計専門委員会での議論はまだ始まっていないが、わざわざ専門委員会を設置する以上、見直しが行われる可能性は高い。同委員会の動きについては今後も続報する。
株主総会を滞りなく終わらせるため、総会運営事務局(通常は総務部が中心となり、顧問弁護士の協力を仰いで運営。以下、「事務局」)が中心となり、事前にシナリオを準備して、リハーサルを繰り返す会社も少なくないでしょう。株主がどのような質問をしてくるのか、それに対してどのように答えるのが最善なのか、総会屋とは言わないまでも議長の指示に従わない質問や野次などの“不規則発言”を繰り返す株主にどのように対応するのか等、事務局が事前に検討をすべき事項は多岐にわたります。なかでも、事務局やそれを統括する総会担当取締役が特に気をもむのが、株主総会で「動議」が出るのかどうかです。
なぜ事務局は動議が出ることに神経質になるのでしょうか。それは、動議への対応を間違えると、株主総会決議が取り消されてしまう可能性があるからです。以下、詳しく見ていきましょう。
動議とは、株主総会において「株主側」から審議・採決の提案が行われることをいいます。動議には「実質的動議」と「手続的動議」の2種類があります。
実質的動議とは、株主が株主総会において、株主総会の目的事項である「議題」に対して「議案」を提出することです(会社法304条。議題と議案の違いについては後述します)。ただし、取締役会設置会社では、株主には株主総会の場において「議題」そのものを提出する権利はなく、株主総会の日より8週間前までに、一定の要件(後述の「適法な実質的動議と不適法な実質的動議 」を参照してください)を満たした上で、議題を株主提案することができるにとどまります。
これに対し、取締役会非設置会社は、いつでも議題提案ができます(会社法303条1項)。これは、取締役会非設置会社は、株主の意思を直接経営に反映することを企図して、株主総会が会社の組織、運営、管理その他会社に関する一切の事項を決議することができるものとし(会社法295条1項)、事前に通知されていない事項についても株主総会で決議できるように設計されており(会社法309条5項の反対解釈)、議題の提案時期を制限して株主の意思を反映する機会を限定する理由がないためです。
一方、手続的動議とは、議題に対してではなく、「株主総会の運営」や「議事進行」に関する株主からの提案です。
動議が適法になされたにもかかわらず、これを“適切に”取り扱うことなく審議を進めると、株主総会決議の取消事由となり得ます。したがって、会社としては、株主総会の準備の段階から、考えられる動議とその対処方法について入念な検討を行っておくとともに、実際に株主総会で動議が出された場合には細心の注意を払って対応する必要があります。
以下、動議の具体的な例とその対応方法について見ていきましょう。
本題に入る前に、まず「議題」と「議案」の違いを説明しておきましょう。取締役選任のケースを例にとると、株主総会招集通知に記載された「取締役1名選任の件」といったものが議題にあたります。一方、「議案」とは議題の“中身”であり、「取締役1名選任の件」という議題について記載された「××××を取締役に選任する」といったものが該当します。すわなち、議題の内容をより具体的に表したものが「議案」ということになります。
なお、議題が複数ある場合は“第●号議案”と連番が付されます。招集通知には「第2号議案 取締役1名選任の件」といった具合に記載されるのが通常のため(「第2号議題 取締役1名選任の件」とは記載しません)、「取締役1名選任の件」が議案のように見えますが、そうではありません。あくまで「取締役1名選任の件」が議題であり、第2号議案の具体的な内容である「議案」は、通常、株主総会参考書類に記載されることとなります。
上述のとおり、株主による実質的動議とは、あくまで株主総会の目的たる「議題」について議案を提出することです。したがって、実質的動議において、議題を離れた議案を提出することは認められません。株主ができることは、「議題から予見可能な範囲」で議案の原案の修正を求めることにとどまります。例えば、「剰余金の配当」という議題の場合、配当額を「増額修正」する議案も「減額修正」する議案もどちらも議題から予見可能ですので、適法ということになります。
一方、「合併契約」や「吸収分割契約」の承認の議題に対して、これらの契約内容の修正を求める動議は不適法となります。なぜなら、これらの議題については、既に内容が確定している契約を承認するか否かしか選択肢がないからです。
また、「取締役●名選任の件」という議題に対し、当該人数の範囲内で、取締役会が提案する候補者以外の者を候補者として提案する動議は適法ですが、「取締役5名選任の件」という議題に対し、取締役6名の選任を求める動議や、そもそも取締役選任に関する議題がない場合に取締役の選任を求める動議はいずれも不適法ということになります。
なお、会社法では、下記のケースにおいては株主に実質的動議を認めていません。
(1)議決権を行使できない事項に関する動議(例えば、取締役選任議案についての議決権のない種類株式の保有者が取締役選任議案について行う動議)
(2)法令・定款に違反する動議
(3)過去の株主総会で議決権を行使できる株主の議決権の総数の10分の1以上の賛成を得られなかった議案と実質的に同一の議案について、当該賛成を得られなかった日から3年を経過していない日において行われる動議
(1)(2)については当然のことと言えます。(3)については、圧倒的多数で否決された議案について時間をあけずに提案したところで、再び否決されるのが通常ですから、株主による濫用的な動議を防ぐとともに、会社の負担を回避する観点から、このような動議には対応しなくてよいとされたものです。
| チェックリスト | チェックリストはこちら |
|---|
| チェック事項 | 備考 | 対応未了 | 対応済 |
|---|---|---|---|
| 株主総会の事前準備として、動議が出た場合の対応をマニュアル化しているか。 | |||
| 動議に対応できるよう、事前に大株主から包括委任状を受領しているか。 | |||
| 原案先議(会社提案の議案を株主提案の議案より先に採決すること)により原案を可決し、動議については別途の採決を行わず否決として扱う場合、念のため、事前に議場に諮って過半数の賛成を得てから行っているか。 | |||
| 議長不信任動議、株主総会提供資料の調査者選任動議(会社法316条1項)、延会・続行動議(同法317条)、会計監査人の出席を求める動議(同法398条2項)については、必ず議場に諮って決議をしているか。 | |||
| 議場に諮ることが法的に必要とされていない事項を株主提案された場合の対応方針を事前に定めているか。 | 議場に諮ることが会社法上必要な事項でなくても、「質疑打切り」のように、株主の権利を制限することになり得るような事項については、後々株主総会決議取消訴訟の場面において、議長が恣意的な議事進行を行った等の主張を受ける可能性を極力回避するためにも議場に諮っておく方が無難であり、現に議場に諮る例が多く見られる。 |
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株主総会を滞りなく終わらせるため、総会運営事務局(通常は総務部が中心となり、顧問弁護士の協力を仰いで運営。以下、「事務局」)が中心となり、事前にシナリオを準備して、リハーサルを繰り返す会社も少なくないでしょう。株主がどのような質問をしてくるのか、それに対してどのように答えるのが最善なのか、総会屋とは言わないまでも議長の指示に従わない質問や野次などの“不規則発言”を繰り返す株主にどのように対応するのか等、事務局が事前に検討をすべき事項は多岐にわたります。なかでも、事務局やそれを統括する総会担当取締役が特に気をもむのが、株主総会で「動議」が出るのかどうかです。
なぜ事務局は動議が出ることに神経質になるのでしょうか。それは、動議への対応を間違えると、株主総会決議が取り消されてしまう可能性があるからです。以下、詳しく見ていきましょう。
動議とは、株主総会において「株主側」から審議・採決の提案が行われることをいいます。動議には「実質的動議」と「手続的動議」の2種類があります。
実質的動議とは、株主が株主総会において、株主総会の目的事項である「議題」に対して「議案」を提出することです(会社法304条。議題と議案の違いについては後述します)。ただし、取締役会設置会社では、株主には株主総会の場において「議題」そのものを提出する権利はなく、株主総会の日より8週間前までに、一定の要件(後述の「適法な実質的動議と不適法な実質的動議 」を参照してください)を満たした上で、議題を株主提案することができるにとどまります。
これに対し、取締役会非設置会社は、いつでも議題提案ができます(会社法303条1項)。これは、取締役会非設置会社は、株主の意思を直接経営に反映することを企図して、株主総会が会社の組織、運営、管理その他会社に関する一切の事項を決議することができるものとし(会社法295条1項)、事前に通知されていない事項についても株主総会で決議できるように設計されており(会社法309条5項の反対解釈)、議題の提案時期を制限して株主の意思を反映する機会を限定する理由がないためです。
一方、手続的動議とは、議題に対してではなく、「株主総会の運営」や「議事進行」に関する株主からの提案です。
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政府は、女性の活躍を成長戦略の重要な要素ととらえ、それを加速させるための具体策の1つとして、企業に「女性の活躍状況」を有価証券報告書やコーポレート・ガバナンスに関する報告書などで開示することを促し、さらに義務付けることができないか検討している。
この議論は、平成24年の「女性の活躍による経済活性化を推進する関係閣僚会議」から公表された「女性の活躍促進による経済活性化行動計画」がきっかけになっている。同計画は、女性の活躍状況の“見える化”に向け、企業に女性の活躍に関する指標等の公表を促すため、有価証券報告書やコーポレート・ガバナンスに関する報告書、IR資料などにおける公表方法のあり方などを検討するもの。
この報告書に沿って、2012年9月には内閣府に「女性の活躍状況の資本市場における“見える化”に関する検討会」が設置され、同年12月に報告書が取りまとめられた。そこでは、有価証券報告書における男女別の従業員数や平均賃金等の記載を強制すべきとの意見も出されたが、この点は最終報告書には盛り込まれず、コーポレート・ガバナンスに関する報告書において「役員等の男女別の構成」や「役員への女性登用の状況」等の“自発的な”情報開示を促進するという方向性が示されるにとどまった。東証や内閣府、経済産業省等が積極的に開示を勧めていることもあり、コーポレート・ガバナンスに関する報告書における自主開示は進んでいるようだ。また、内閣府男女共同参画局による「女性の活躍「見える化」サイト」も立ち上がり、2014年2月14日現在上場企業3,552社中1,150社(32.4%)の情報が開示されている。
その後も、政府の産業競争力会議で「有価証券報告書等を通じた情報開示の促進」について議論が行われるなど、開示促進の流れは続いており、女性の活躍状況についても、最終的には、有価証券報告書で開示の強制が求められる可能性もある。
有価証券報告書での開示の強制といっても、例えば「役員の男女比」などであれば既存の情報を加工すれば足りるので、企業にとって開示コストはかからないと思われるが、一方で、女性に関する開示義務付けをきっかけに、次々に新たな開示が求められることを懸念する声が企業側から上がっている。つまり、「女性」の次は「環境」、その次は「人権」・・・といった具合に、五月雨式に新たな開示項目が出てきて、企業の開示コストが膨らむのではないかとの懸念だ。
企業としては、どのような開示を行うべきかは「作成者のコストと投資家のベネフィット」を比較考量のうえで決められるべきという立場であり、“ホットイシュー”というだけで開示項目を増やすべきではないというのが本音だろう。
金融庁が、平成26年3月期決算から連結開示情報や会社法開示情報と重複する情報を削減する金商法上の「単体開示の簡素化」を打ち出すなど、企業の開示負担削減の動きも見られる中で、「女性の活躍状況」の開示が強制開示となるのか、企業の自主開示となるのか、今後の企業の開示負担を占う意味でも注目される。
減損会計に関するルールは事細かに定められており、その計算方法も、将来の収益予測を含め様々な要素が絡み合う複雑なものとなっています。しかし、その目的は明快です。すなわち、減損会計は「投資した資金を投資額以上に回収できるのかどうかを判定する」ことを目的としています。「減損損失を計上する」ということを易しく言い換えると、「過去に投資した金額を回収するべくいままで頑張ってきましたが、どうやら回収は無理な状況となってきました」ということの意思表示と言えます。
企業は、投資額以上のリターンを求めて投資を実行するものです。投資後に様々な要因により当初の見込みどおりにならなかった場合、その事実を会計で表現することは当然と言えるでしょう。
人間誰しも臭いものには蓋をしたいものです。悪い話より良い話の方を聞きたいに決まっています。しかし、会社を経営する以上、悪い話であっても逃げ回るわけにはいきません。悪い話であってもしっかりと向き合って、解決していかなければなりません。
確かに、減損損失を計上すると利益は減ることになります。場合によっては赤字決算になるかもしれません。ただ、誤解してはならないのは、「減損損失を計上したから業績が悪くなる」わけではないということです。正しくは、「業績が悪くなったから減損損失の計上が不可避となった」のです。減損会計は、不採算の投資を早期にあぶり出し、手遅れになる前に次の一手を打つ猶予を与えてくれるものと見ることもできます。
減損損失の計上は、何度も述べているように投資に対する評価ですので、利益が出ていれば投資額を回収できている(回収できる見込みである)と判定できるため、減損損失の計上は必要ありません。ただし、減損会計を適用するかどうかは、グルーピングされた資産ごとに判定する必要があります。会計基準によれば、資産のグルーピングはキャッシュフローを生み出す最小単位とされていますが、いま一つピンとこない方も少なくないでしょう。大雑把に言えば事業の単位、投資の単位ごとに判定するということです。
会社全体で利益が出ていたとしても、事業単位で見れば大きく利益を稼いでいる事業と、逆に大幅に不採算となっている事業があるかも知れません。減損会計は、このうち「含み損を抱えている資産グループ」に対して減損損失の計上を求めるルールとなっています。
なお、資産のグルーピングは「経営者の意思」が色濃く反映される部分でもあり、グルーピング如何で減損損失額が大きく変わります。したがって、グルーピングを経理部任せにすることなく、「当社はどのような資産のグルーピングで事業を運営しているのか」を役員会等で十分に議論したうえで、合意しておくことが大切です。
減損損失は過去の投資に対する評価損失です。「過去に行ったキャッシュアウト」に対する評価と言い換えることもできるでしょう。したがって、減損損失の計上により追加のキャッシュアウトが必要になるということはありません。つまり、減損損失の計上 → 同額のキャッシュアウト → 資金繰りの悪化、とはならないということです。
もっとも、減損損失を計上するということは、その資産グループ(事業)は将来的に十分なキャッシュインを生み出さないと評価されることを意味しますので、今後の資金繰りや銀行からの融資評価という面ではマイナスに働く可能性が高いと言えます。
さて、以上の解説をご覧いただければ、どの発言がGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。
発言C:「今となっては、2年前に策定した中期事業計画の見込み自体が甘かったと言わざるを得ません。現に今期も予算未達だったのですよね。わが社を取り巻く外部環境は、この2年の間に随分と様変わりしました。それにもかかわらず、そのような甘い事業計画を盾に、減損損失を計上しないというのはいかがなものかと考えます。」
(コメント:誰しも甘い事業計画にすがりたいものです。しかし、事業計画の甘さをずばり指摘することも役員の職務の一つです。事業計画を所与としたうえで議論が行われているまさにその時に、議論の前提に一石を投じる発言がGOODと言えます。)
4月中旬のある日、ABC電機株式会社では前3月期の決算概要速報の報告と決算検討事項に関する議題が取締役会に上程されていた。ABC電機は中堅の電機メーカーであり、東証一部上場企業である。しかし、昨今のグローバル化の波に乗り遅れたため業績は青色吐息で、一部上場企業の中では規模、時価総額ともに小粒と言ってよい。ABC電機では毎月10日前後に定例の取締役会を開催している。今日は定例の取締役会の日。普段は会社にいない非常勤の社外取締役や社外監査役も全員出席しており、常勤の取締役・監査役はやや緊張した様子だ。
経理担当取締役「それでは、続いて決算検討事項として国内工場の減損損失の計上について審議させていただきます。・・・・・(中略)・・・・。この点、会計ルールでは・・・・(中略)・・・・。以上の結果、減損損失を特別損失の部に計上することにより、今期の税引前利益は○○億円の赤字となる見込みです・・・・なお、会計士の先生もこの処理に同意しています。」
社長「ちょっと待ってくれ。減損だかなんだか知らないが、そんなに多額の損失を計上する必要はあるのか? 今期は、販売部門の地べたを這った営業と製造部門の血の滲むようなコスト削減で、なんとか営業利益を確保したのだぞ。それを『会計ルールだから』と言ってすべて無駄にするのか?そんな会計処理一つで、会社の業績が赤字に転落するというのは納得がいかない。」
社長が口火を切り、減損会計に関する喧々諤々の議論が続きます。ある程度、意見が出そろったところで、まだ発言していないあなたを社長が指名し、発言を促しました。次のAからCの発言のうち、どの発言がGOOD発言でしょうか?
発言A:「確かに減損対象となる工場で作っている製品の販売は、競合他社との価格競争で実績が予算を大幅未達になってしまいましたが、他の製品でうまくカバーして何とか利益を確保しました。それに、2年前に策定した中期事業計画では来期から黒字化できる予定ですので、将来キャッシュフローも十分に獲得できるはずです。」
発言B:「こんなに多額の損失を計上したら資金繰りはどうなるのですか? 先日すったもんだの末、ようやく銀行から借り入れた資金が、すべて減損損失に消えてしまうことになってしまいます。これでは、追加の借入が必要になるのではないですか?」
発言C:「今となっては、2年前に策定した中期事業計画の見込み自体が甘かったと言わざるを得ません。現に今期も予算未達だったのですよね。わが社を取り巻く外部環境は、この2年の間に随分と様変わりしました。それにもかかわらず、そのような甘い事業計画を盾に、減損損失を計上しないというのはいかがなものかと考えます。」
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契約の基本ルールを定めた民法「債権法」の大改正作業が大詰めを迎えている。今回の改正では、消滅時効期間の統一・短期化によるシステム変更対応や(3月10日のニュース「短期消滅時効廃止で、債権管理システムの変更が必要に」参照)、民法404条で年5%と定められている法定利率の変動制への移行といったテクニカルな改正とともに、「契約当事者の意思の尊重」という民法の根本的な考え方を改めて明確にする規定も新設される。
もともと民法では「私的自治の原則」という考え方がとられており、信義誠実の原則(民法1条2項)や公序良俗(民法90条)に反しない限り、基本的に契約当事者が自由に契約内容を定めることができる。つまり、当事者が契約で定めたことが最大限尊重されるということであり、仮に債務が履行されなかった場合の損害賠償責任の負担は、当事者がどのように契約内容を定めていたかに左右される。
現行民法の下での損害賠償請求では、「債務者の責めに帰すべき事由(帰責性)」(民法第415条)が存在するかどうかが争われてきたように(債務者は帰責性があると認められれれば損害賠償責任を負い、逆に帰責性がなければ損害賠償責任も負わない)、「責めに帰すべき事由があったか否か」は「損害賠償責任があるか否か」を認定する際の重要な手がかりであり、それは結局のところ「契約」で債務者がどのような債務を負うと定めていたかによる。
今回の民法改正は、上述のようなこれまで行われてきた契約実務を明文化するものであり、具体的には、「債務不履行が『契約の趣旨に照らして債務者の責めに帰することができない事由』である場合には、損害賠償の責任を負わない」との規定が新設される見込みとなっている。
この改正が企業の契約実務に与える影響だが、たとえ「これまで行われてきた契約実務」を明文化するだけとはいえ、現行民法にはなかった新たな規定ができることで、紛争が発生した局面においては「契約の当事者が何を定めたか」が一層問われることになるだろう。
「契約の趣旨に照らして」という文言のとおり、今回の改正は、当事者のリスク分担に関するあらゆる事項を契約書に記すことを意図するものではないと考えられているが、企業としては、紛争が生じた場合に備え、少なくとも契約で「何について合意したのか」を明確にするとともに、きちんと証拠として文書で残しておくことがこれまで以上に求められることになろう。