2024/10/02 新リース会計基準でオンバランス不要なリースの具体例

新リース会計基準が公表され、上場会社各社では新リース会計基準適用時の影響についての検討が佳境に入っている(新リース会計基準の詳細については2024年9月17日のニュース「新リース会計基準が公表、準備期間は約2年半」参照)。現行リース会計基準では借手のオペレーティングリースとして扱われ、オフバランスとされてきた不動産(建物)のリース()が、新リース会計基準ではオンバランス(原資産の引渡しによりリースの借手に支配が移転した使用権部分に係る資産(使用権資産)と当該移転に伴う負債(リース負債)を計上する)が不可避になることのインパクトは決して小さくない。とりわけ、日本の会計基準を適用している小売業やサービス業、事業所や倉庫などの不動産(建物)を自社所有ではなく賃借している上場会社はオンバランスにより総資産が膨らみ、ROAが低下する(分母が大きくなるため)だけでなく、リース期間の判定、リース資産の台帳管理の手間や会計処理の工数も増え、影響は甚大だ。

* 土地のリース(借地)は、「借地権の権利金=土地を使用する権利に関する支払い」であり、毎月支払う賃料と同様に扱われるため、土地自体の所有権とは異なり、現行リース会計基準でも新基準でもオンバランスすることはない。ただし、定期借地権は契約期間が満了すると借地を返還しなければならず、リース期間が明確に定められているため、定期借地権上の賃借建物はリース資産として認識され、現行リース会計基準でもオンバランスが必要である。


オペレーティングリース : 購入の代替ではなく、「物を借りて賃借料を払う」という本来のリース
オフバランス : 毎期の支払いリース料を費用計上するだけで済み、B/Sには何も計上しなくてもよいこと。
原資産 : リースの対象となる資産
使用権資産 : 新リース会計基準では、現行の「リース資産」は「使用権資産」となる。「使用権資産」とは、借手が原資産(リースの対象となる資産)をリース期間にわたり使用する権利を表す資産のことをいう。
リース負債 : 新リース会計基準では、科目名が「リース債務」ではなく「リース負債」となる。
ROA : Return On Assets =総資産利益率(利益/総資産)。ROAは利益を総資産で除して求めるため、分母である総資産の増加はROAの低下をもたらす。実務上、ROAの利益には「営業利益」もしくは「事業利益」を使うことが多い。これは、総資産に対応する利益は、営業利益あるいは事業利益であるという考え方による。

新リース会計基準では現行リース会計基準の300万円基準という重要性の判断基準が踏襲された()ため、リース契約1件当たりの金額が300万円以下であれば、オンバランスを回避できるが、不動産の賃料は一般的に高額であり、リース期間中の支払総額が300万円を超える物件がほとんどであろう。

* 「リースに関する会計基準の適⽤指針」22項には「リース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリース」と記載されているだけで、重要性の判断基準として「300万円」という定量基準は明示されていないが、「リースに関する会計基準の適⽤指針」BC43項には「本適用指針第22項(2)①のリース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリースは、企業会計基準適用指針第 16 号において定められていたリース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下であるかどうかにより判定する方法を踏襲することを目的として取り入れたものである。」と記載されており、「300万円」という定量基準が踏襲されたことになる。

しかも、新リース会計基準では、借手の「リース期間」は、借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間だけでなく、さらに次の(1)及び(2)の両方の期間を加えて決定することとされている(新リース会計基準31項)だけに、なおさら300万円基準を超えやすい。
(1) 借手が行使することが合理的に確実であるリースの延長オプションの対象期間
(2) 借手が行使しないことが合理的に確実であるリースの解約オプションの対象期間

不動産(建物)の賃貸借契約は、契約期間が2年以内で解約不能期間はそれよりも短い(例えば半年前に解約予告をすれば解約できる)ことが多いものの、実際には契約を更新するケースが大半となっている。そのため、更新しないことが確定していない限り、「借手が行使することが合理的に確実」な期間が当初の解約不能期間に加わり、「リース期間」を長めに判定せざるを得なくなる。すなわち、賃料が安い物件であっても「リース期間」が長めに判定されることにより300万円基準を超えてしまい、オンバランスが必須となりかねない。これに対し、経済界からは強い反発の声が上がっていた。

そこで新リース会計基準に導入された例外規定が、・・・

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2024/10/02 新リース会計基準でオンバランス不要なリースの具体例(会員限定)

新リース会計基準が公表され、上場会社各社では新リース会計基準適用時の影響についての検討が佳境に入っている(新リース会計基準の詳細については2024年9月17日のニュース「新リース会計基準が公表、準備期間は約2年半」参照)。現行リース会計基準では借手のオペレーティングリースとして扱われ、オフバランスとされてきた不動産(建物)のリース()が、新リース会計基準ではオンバランス(原資産の引渡しによりリースの借手に支配が移転した使用権部分に係る資産(使用権資産)と当該移転に伴う負債(リース負債)を計上する)が不可避になることのインパクトは決して小さくない。とりわけ、日本の会計基準を適用している小売業やサービス業、事業所や倉庫などの不動産(建物)を自社所有ではなく賃借している上場会社はオンバランスにより総資産が膨らみ、ROAが低下する(分母が大きくなるため)だけでなく、リース期間の判定、リース資産の台帳管理の手間や会計処理の工数も増え、影響は甚大だ。

* 土地のリース(借地)は、「借地権の権利金=土地を使用する権利に関する支払い」であり、毎月支払う賃料と同様に扱われるため、土地自体の所有権とは異なり、現行リース会計基準でも新基準でもオンバランスすることはない。ただし、定期借地権は契約期間が満了すると借地を返還しなければならず、リース期間が明確に定められているため、定期借地権上の賃借建物はリース資産として認識され、現行リース会計基準でもオンバランスが必要である。


オペレーティングリース : 購入の代替ではなく、「物を借りて賃借料を払う」という本来のリース
オフバランス : 毎期の支払いリース料を費用計上するだけで済み、B/Sには何も計上しなくてもよいこと。
原資産 : リースの対象となる資産
使用権資産 : 新リース会計基準では、現行の「リース資産」は「使用権資産」となる。「使用権資産」とは、借手が原資産(リースの対象となる資産)をリース期間にわたり使用する権利を表す資産のことをいう。
リース負債 : 新リース会計基準では、科目名が「リース債務」ではなく「リース負債」となる。
ROA : Return On Assets =総資産利益率(利益/総資産)。ROAは利益を総資産で除して求めるため、分母である総資産の増加はROAの低下をもたらす。実務上、ROAの利益には「営業利益」もしくは「事業利益」を使うことが多い。これは、総資産に対応する利益は、営業利益あるいは事業利益であるという考え方による。

新リース会計基準では現行リース会計基準の300万円基準という重要性の判断基準が踏襲された()ため、リース契約1件当たりの金額が300万円以下であれば、オンバランスを回避できるが、不動産の賃料は一般的に高額であり、リース期間中の支払総額が300万円を超える物件がほとんどであろう。

* 「リースに関する会計基準の適⽤指針」22項には「リース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリース」と記載されているだけで、重要性の判断基準として「300万円」という定量基準は明示されていないが、「リースに関する会計基準の適⽤指針」BC43項には「本適用指針第22項(2)①のリース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリースは、企業会計基準適用指針第 16 号において定められていたリース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下であるかどうかにより判定する方法を踏襲することを目的として取り入れたものである。」と記載されており、「300万円」という定量基準が踏襲されたことになる。

しかも、新リース会計基準では、借手の「リース期間」は、借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間だけでなく、さらに次の(1)及び(2)の両方の期間を加えて決定することとされている(新リース会計基準31項)だけに、なおさら300万円基準を超えやすい。
(1) 借手が行使することが合理的に確実であるリースの延長オプションの対象期間
(2) 借手が行使しないことが合理的に確実であるリースの解約オプションの対象期間

不動産(建物)の賃貸借契約は、契約期間が2年以内で解約不能期間はそれよりも短い(例えば半年前に解約予告をすれば解約できる)ことが多いものの、実際には契約を更新するケースが大半となっている。そのため、更新しないことが確定していない限り、「借手が行使することが合理的に確実」な期間が当初の解約不能期間に加わり、「リース期間」を長めに判定せざるを得なくなる。すなわち、賃料が安い物件であっても「リース期間」が長めに判定されることにより300万円基準を超えてしまい、オンバランスが必須となりかねない。これに対し、経済界からは強い反発の声が上がっていた。

そこで新リース会計基準に導入された例外規定が、延長が「合理的に確実」であったとしても、「企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリース」であれば、契約に定められた期間(契約期間)を「リース期間」とするものだ(新リース会計基準の適用指針23項)。すなわち、企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリースで、かつ、リース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリースについて、借手は、会計基準33項の定めにかかわらず、リース開始日に使用権資産及びリース負債を計上せず(オンバランス不要)、借手のリース料を借手のリース期間にわたり、原則として定額法により費用として計上することができる(新リース会計基準の適用指針22項)。

この例外規定を適用できる事例として最もイメージしやすいのが社宅の賃借であろう。社宅は従業員向けの福利厚生サービスの一環に過ぎず、「企業の事業内容に照らして重要性が高い」とは言い難いからだ。例えば社宅を2年契約で賃借している場合、2年後に延長オプションを行使することが「合理的に確実」(上述した新リース会計基準31項参照)であったとしても、例外規定を利用することで、リース期間は契約期間の2年で判定することが可能(「合理的に確実」な期間を加算する必要がない)となり、賃料次第で重要性が乏しいリースに分類されることになる。2年契約であれば、300万円を24か月で除して算定した一月当たり賃料12万5千円が目安となり、1年契約であれば、一月当たり賃料25万円が目安となる。

もちろん、この例外規定は不動産リースだけでなく、コピー機や車両などの動産リースにも適用される()。リース契約の棚卸しにあたっては、「企業の事業内容に照らして重要性が高いかどうか」という視点も忘れないようにしたい。

* コピー機を客に利用させることが事業内容になっている企業には例外規定は適用されない。また、運送業の場合、車両は事業内容そのものであり、「企業の事業内容に照らして重要性が高い」と言わざるを得ない。

2024/10/01 【2024年10月の課題】2024年6月株主総会 議決権行使結果の個別開示を踏まえた機関投資家の動向

2024年10月の課題

本年6月総会に係る主要機関投資家の議決権行使結果の個別開示を踏まえ、以下3つの観点から機関投資家の動向について検討してみてください。

①取締役選任議案(会社提案)に対する機関投資家の行使判断
②剰余金処分議案(会社提案)に対する機関投資家の行使判断
③株主提案(特にアクティビスト提案議案)に対する機関投資家の行使判断

主要機関投資家の議決権行使結果の個別開示
アセットマネジメントOne

大和アセットマネジメント

日興アセットマネジメント

野村アセットマネジメント

ブラックロック・ジャパン

三井住友DSアセットマネジメント

三井住友トラスト・アセットマネジメント

三菱UFJアセットマネジメント

三菱UFJ信託銀行

りそなアセットマネジメント

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2024/09/30 2024年9月度チェックテスト

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【問題1】

「自社のウェブサイト」は自社の広告媒体そのものであり、ウェブサイトに表示されている内容が広告であるかどうかは、一般の消費者が簡単に判断できるはずである。したがって、「自社のウェブサイト」での表現がステルスマーケティングの規制を受けることはない。


正しい
間違い
【問題2】

ストックオプション・プール特例を利用して発行したストックオプションは税制適格ストックオプションには該当しえない。


正しい
間違い
【問題3】

保有株式の時価が高まれば高まるほど、取締役選任議案に反対票が集まる可能性も高まるということはありうる。

正しい
間違い
【問題4】

収益性が資本コストを下回っている事業があれば、当該事業からの撤退戦略を検討すべきである。


正しい
間違い
【問題5】

新リース会計基準ではオペレーティングリースのオンバランスが必要となるが、建物賃借契約は賃料が月300万円以下であればオンバランス不要である。


正しい
間違い
【問題6】

会計監査人の監査意見が不表明であった場合、会社は株主総会で株主に決算を報告できなくなるため、計算書類を確定しようがなくなる。


正しい
間違い
【問題7】

株主数が少ないベンチャー企業ではストックオプション・プール特例を利用する実益に乏しい。


正しい
間違い
【問題8】

ストックオプション・プール特例を利用しても、ストックオプションの発行がいわゆる有利発行に該当する場合には、再度株主総会を開催しなければならない。


正しい
間違い
【問題9】

東証プライム市場上場会社のうち過半数の独立社外取締役を選任している会社は二割程度である。


正しい
間違い
【問題10】

フリーランス新法は受注事業者が法人成りしていたら適用されない。


正しい
間違い

2024/09/30 2024年9月度チェックテスト第10問解答画面(不正解)

不正解です。
フリーランス新法の受託側の適用要件は「①個人であって、従業員を使用しないもの」「②法人であって、一の代表者以外に他の役員がなく、かつ、従業員を使用しないもの」とされています。フリーランスはたとえ法人成り(=法人化)していても、②の要件を充たせばフリーランス新法における特定受託事業者として保護されます(問題文は誤りです)。

こちらの記事で再確認!
2024年9月27日 【役員会 Good&Bad発言集】フリーランス新法(従業員の有無)(会員限定)

2024/09/30 2024年9月度チェックテスト第10問解答画面(正解)

正解です。
フリーランス新法の受託側の適用要件は「①個人であって、従業員を使用しないもの」「②法人であって、一の代表者以外に他の役員がなく、かつ、従業員を使用しないもの」とされています。フリーランスはたとえ法人成り(=法人化)していても、②の要件を充たせばフリーランス新法における特定受託事業者として保護されます(問題文は誤りです)。

こちらの記事で再確認!
2024年9月27日 【役員会 Good&Bad発言集】フリーランス新法(従業員の有無)(会員限定)

2024/09/30 2024年9月度チェックテスト第9問解答画面(不正解)

不正解です。
東京証券取引所が公表した「東証上場会社における独立社外取締役の選任状況及び指名委員会・報酬委員会の設置状況(2024年7月12日時点)」によると、過半数の独立社外取締役を選任しているプライム市場上場会社は約20パーセントであることが分かりました(問題文は正しいです)。

こちらの記事で再確認!
2024年9月25日 独立社外取締役「3分の1」はもはや最低水準に(会員限定)

2024/09/30 2024年9月度チェックテスト第9問解答画面(正解)

正解です。
東京証券取引所が公表した「東証上場会社における独立社外取締役の選任状況及び指名委員会・報酬委員会の設置状況(2024年7月12日時点)」によると、過半数の独立社外取締役を選任しているプライム市場上場会社は約20パーセントであることが分かりました(問題文は正しいです)。

こちらの記事で再確認!
2024年9月25日 独立社外取締役「3分の1」はもはや最低水準に(会員限定)

2024/09/30 2024年9月度チェックテスト第8問解答画面(不正解)

不正解です。
ストックオプション・プール特例を利用しても、ストックオプションの発行がいわゆる有利発行に該当する場合には、既存の株主保護の観点から、①権利行使価額、②権利行使期間、③新株予約権の上限、④新株予約権の割当日を当該決議の日から1年以内とする旨を株主総会の特別決議によらなければならない、とされています。せっかく会社法の特例であるストックオプション・プール特例を利用して最大で15年間もの期間、権利行使価額や権利行使期間の決定を取締役会に委任できるにもかかわらず、有利発行をすることで改めて株主総会決議(特別決議)を取り直さなければならないのであれば、ストックオプション・プール特例を利用する意味がなくなることから、ストックオプション・プール特例利用時にはストックオプションが有利発行とならないように留意しなければなりません。

こちらの記事で再確認!
2024年9月24日 ストックオプション・プール特例に潜むリスク(会員限定)

2024/09/30 2024年9月度チェックテスト第8問解答画面(正解)

正解です。
ストックオプション・プール特例を利用しても、ストックオプションの発行がいわゆる有利発行に該当する場合には、既存の株主保護の観点から、①権利行使価額、②権利行使期間、③新株予約権の上限、④新株予約権の割当日を当該決議の日から1年以内とする旨を株主総会の特別決議によらなければならない、とされています。せっかく会社法の特例であるストックオプション・プール特例を利用して最大で15年間もの期間、権利行使価額や権利行使期間の決定を取締役会に委任できるにもかかわらず、有利発行をすることで改めて株主総会決議(特別決議)を取り直さなければならないのであれば、ストックオプション・プール特例を利用する意味がなくなることから、ストックオプション・プール特例利用時にはストックオプションが有利発行とならないように留意しなければなりません。

こちらの記事で再確認!
2024年9月24日 ストックオプション・プール特例に潜むリスク(会員限定)