2024/08/08 【WEBセミナー】 グローバル・モードの取締役会実務と展望 ~複雑化する経営を支える幹部指名・報酬ガバナンスとリスクマネジメント~

概略

【WEBセミナー公開開始日】2024年8月8日

【講師】
WTW 経営者報酬・ボードアドバイザリー 日本リード
櫛笥 隆亮(くしげ たかあき)様 ほか

セミナー資料 資料の配布はございません。
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グローバル・モードの取締役会実務と展望
~複雑化する経営を支える幹部指名・報酬ガバナンスとリスクマネジメント~

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2024/08/08 【WEBセミナー】 グローバル・モードの取締役会実務と展望 ~複雑化する経営を支える幹部指名・報酬ガバナンスとリスクマネジメント~(会員限定)

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【WEBセミナー公開開始日】2024年8月8日

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WTW 経営者報酬・ボードアドバイザリー 日本リード
櫛笥 隆亮(くしげ たかあき)様 ほか

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~複雑化する経営を支える幹部指名・報酬ガバナンスとリスクマネジメント~

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2024/08/07 ダブル・マテリアリティに基づき有報に記載するサステナビリティ上の重要課題を選定することの問題点

2023年3月期の有価証券報告書より【サステナビリティに関する考え方及び取組】の記載欄が新設され、サステナビリティ情報の開示が義務付けられたところ。2024年3月期はサステナビリティ情報開示の2年目となるが、企業が2024年3月期の有価証券報告書においてどのようなサステナビリティ上の重要課題を選定しているのか当フォーラムが調査したところ、非常に興味深い事実が判明した。それは、・・・

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2024/08/07 ダブル・マテリアリティに基づき有報に記載するサステナビリティ上の重要課題を選定することの問題点(会員限定)

2023年3月期の有価証券報告書より【サステナビリティに関する考え方及び取組】の記載欄が新設され、サステナビリティ情報の開示が義務付けられたところ。2024年3月期はサステナビリティ情報開示の2年目となるが、企業が2024年3月期の有価証券報告書においてどのようなサステナビリティ上の重要課題を選定しているのか当フォーラムが調査したところ、非常に興味深い事実が判明した。それは、「ダブル・マテリアリティ」に基づきサステナビリティ上の重要課題を選定している会社が10社(2023年3月期は2社)見受けられたということだ。

周知のとおり「マテリアリティ」とは「重要性」を意味する用語であり、シングル・マテリアリティとダブル・マテリアリティに分けられる。シングル・マテリアリティとダブル・マテリアリティの考え方を整理したのが下図である。


ダブル・マテリアリティ : マテリアリティとは「重要性」を意味する用語であり、マテリアリティを開示する目的は要するに「自社にとって重要な課題は何か?」を明らかにすることにある。シングル・マテリアリティとは企業が環境や社会から「受ける」財務的な影響を示す“投資家目線”のマテリアリティであるのに対し、ダブル・マテリアリティとは、これに企業が環境や社会に「与える」影響を示す “(市民社会等を含む)マルチステークホルダー”目線のマテリアリティを統合したものを指す。

シングル・マテリアリティとダブル・マテリアリティの考え方
シングル・マテリアリティ
(財務マテリアリティ)
741961
企業が環境や社会から「受ける」影響をリスクと機会を通じて示す“投資家目線”のマテリアリティ
ダブル・マテリアリティ
(財務マテリアリティ+インパクト・マテリアリティ)
741962
企業がリスクと機会を通じて環境や社会から「受ける」影響を示す“投資家目線”のマテリアリティに、企業が環境や社会に「与える」インパクトを示す “市民社会等を含むマルチステークホルダー目線”のマテリアリティを統合したもの

では、有価証券報告書におけるサステナビリティ上の重要課題は、シングル・マテリアリティ、ダブル・マテリアリティいずれに基づいて選定すべきだろうか。

金融庁が2019年3月19日に公表した「記述情報の開示に関する原則」の開示原則2-2の「考え方」には、「記述情報の開示の重要性は、投資家の投資判断にとって重要か否かにより判断すべきと考えられる」とある。これは明らかに“投資家目線”であることから、シングル・マテリアリティの考え方に他ならない。有価証券報告書が「投資家の意思決定に必要な情報」を提供する目的で作成される書類であることからすれば、そこに記載されるサステナビリティ上の重要課題もシングル・マテリアリティの考えに基づき選定されることが、有価証券報告書の目的と整合的と言える。

現在、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が開発中のサステナビリティ開示基準(SSBJ基準)やそのベースとされているISSBが開発したIFRS S1号およびS2号はシングル・マテリアリティの考えに基づいており(2023年7月4日のニュース『ISSBのサステナビリティ開示基準基準が確定、サステナビリティ報告書等とは「マテリアリティ」に相違』参照)、その基準に基づいて開示される情報は「サステナビリティ関連財務情報」と呼ばれ、財務諸表とワンセットで開示されることが想定されている。一方、ダブル・マテリアリティの考えに基づくサステナビリティ開示基準であるESRS(欧州サステナビリティ報告基準)やGRIスタンダードに基づく情報には、企業価値とは直接関係ない「企業が経済、環境、社会に与えるインパクト」に関する情報が含まれる。当該情報は「サステナビリティ情報」と呼ばれ、上記「サステナビリティ関連財務情報」とは区別される。「サステナビリティ情報」には企業価値と直接関係ない情報が含まれるため、それが「投資家の意思決定に必要な情報」である有価証券報告書に記載されることは想定されていない。


SSBJ : 日本における非財務開示の基準を作成する団体。IFRS(国際財務報告基準)の母体であるIFRS財団が「国際サステナビリティ基準審議会(ISSB=International Sustainability Standards Board)」を設立し、非財務開示の国際的な基準「サステナビリティ報告基準」を策定することを受け、日本では財務会計基準機構(FASF)が母体となり、IFRS財団におけるISSBに相当するSSBJ(Sustainability Standards Board of Japan)が2022年7月1日に設立された。
IFRS S1号 : 「全般的な」サステナビリティ関連開示の要求事項を定めたもの。企業が短期のみならず、中長期にわたって直面するサステナビリティ関連のリスクおよび機会を企業が投資家に伝えるための開示基準である。
S2号 : 気候関連開示の要求事項を定めたものであるが、気候関連開示を求めつつ、S1号とセットで利用されるように設計されている。現状では、「個別テーマ」についての基準はS2号の気候変動しかないため、他のテーマ(例えば人的資本、人権、生物多様性)について開示する場合はS1号に基づくことになる。
ESRS : 「European Sustainability Reporting Standards」の略称で、「欧州サステナビリティ報告基準」と訳される。ESRSは、企業が持続可能な社会を作るためにどのような努力をしているかを透明にするためのルールであり、気候変動への対応をはじめとする「環境」、企業の経営方針、リスク管理といった「ガバナンス」に加え、コミュニティへの貢献、労働者の権利、平等な雇用機会など「社会」に関する情報を報告することを求めている。
GRIスタンダード : GRI(Global Reporting Initiative) が提供するサステナビリティ報告の基準である「GRIスタンダード」は、企業が経済、環境、社会(人権を含む)に与えるインパクト、すなわち持続可能な発展という目標へのプラス、マイナス両方の面について情報を提供することを目的とする。ESG課題等が企業に与える影響だけでなく、企業が社会や環境等に与える影響についての報告も重視しており、サステナビリティ報告の基準として世界で最も普及している。

サステナビリティ情報の情報の分類、開示基準及、想定される利用者との関係
サステナビリティ情報
サステナビリティ関連財務情報
財務諸表及び注記
主な
開示基準
ASBJ基準 SSBJ基準
ISSB基準
SASBスタンダード
ESRS
GRIスタンダード
想定される
利用者
投資家
マルチステークホルダー

冒頭で述べた「ダブル・マテリアリティ」に基づきサステナビリティ上の重要課題を選定した10社の一つがリクルートホールディングスだ。同社のマテリアリティマップ(下掲参照)を見ると、「インパクトおよび財務」の観点から最重要なサステナビリティ課題を報告対象としている。しかし、番号で言うと⑦⑩⑪(赤の線で囲んだ部分)は財務的に最重要ではないため、シングル・マテリアリティでは選定されないサステナビリティ課題であり、財務諸表とワンセットで開示される「サステナビリティ関連財務情報」ではない純粋な「サステナビリティ情報」ということになる。

出典:リクルートホールディングスの有価証券報告書(赤の線は筆者による)
74196a

リクルートホールディングスがダブル・マテリアリティに基づいてサステナビリティの重要課題を選定しているのか具体的な説明はないが、2028会計年度から適用されるESRS基準への対応が理由と考えられる。


ESRS基準への対応 : EUの企業持続可能性報告指令(CSRD)が2023年1月5日に発効し、EU加盟国は2024年7月6日までの国内法制化を義務付けられたが、日本を含むEU域外企業に対しても、対象となる子会社や支店をEU域内に有するなどの条件を満たす場合には、2028会計年度からESRSに基づく報告が適用される。

ダブル・マテリアリティに基づく情報を開示していれば、そこにはシングル・マテリアリティに基づく情報も含まれるため、投資家にとって必要な情報は開示されていることとなる。裏を返すと、「投資家の意思決定に必要な情報」である有価証券報告書の中に、投資家に限らないマルチステークホルダー向けの情報が含まれることになり、有価証券報告書の本来の役割を超える情報が提供されてしまっている、とも言える。とはいえ、現状、有価証券報告書の【サステナビリティに関する考え方及び取組】は、サステナビリティ開示基準がない中で開示されているため、ダブル・マテリアリティに基づく情報開示が行われていたとしても、金融庁はそれを“ダメ”とは言うことはできない。


マルチステークホルダー : 株主や債権者、従業員、顧客、仕入先、消費者、地域住民、地域社会、自治体など、企業にとってのあらゆる利害関係者のこと。

問題は、現在パブリックコメントに付されているSSBJ基準(同基準の詳細は【2024年6月の課題】Q&Aで学ぶ役員が知っておきたいSSBJ公開草案の概要 参照)が適用された時だ。2024年8月2日のニュース「“統合報告書の法定開示化”も 経産省の懇談会で、戦略報告を含む一体化された法定開示書類の作成に多くの支持」でお伝えしたとおり、経済産業省に設置された「企業情報開示のあり方に関する懇談会」では法定開示書類に盛り込む情報の範囲が議論されているが、ダブル・マテリアリティに基づく情報が有価証券報告書で開示されることは、有価証券報告書の統合報告書化を超える“サステナビリティ報告書化”となる。将来的にSSBJ基準が適用され、サステナビリティ情報に対する保証が行われることになるが、その際、有価証券報告書のサステナビリティ報告書化が容認されるのか、注目される。

2024/08/06 中期経営計画が企業価値向上に貢献するようになるための提言

周知のとおり、コーポレートガバナンス・コードの補充原則4-1②lは、取締役会・経営陣幹部に対し「中期経営計画」を株主に対するコミットメントと認識し、その実現に向けた最善の努力を求めている。しかし、日本企業の中期経営計画はしばしば「絵に描いた餅」と揶揄されるように、実効性に疑問が残るものも散見され、実際、未達に終わることも少なくない。果たして、現状の日本企業の中期経営計画は「企業価値向上」という観点から、どれだけの意味があるのだろうか。

日本企業の中期経営計画は、各事業部から出て来た数字を経営企画部門が統合して予算化する“積み上げ方式”により策定されるのが一般的となっているが、この策定プロセスは、中期経営計画を「絵に描いた餅」にする一因になっていると思われる。経済産業省が2024年5月に公表した「製造業を巡る現状と課題、今後の政策の方向性」では、日本企業にしか存在しない「経営企画部門」について、経営企画部式の予算編成とバケツリレー方式の情報展開により、全社的な経営視点での議論が最後の工程になってしまう傾向が指摘されている(17ページ参照)。その結果、取締役会が中期経営計画の策定プロセスに関与する密度は低くなる。また、米国企業と異なり、FPA部門が設けられていなかったり、CFOの権能が財務経理に限定されがちだったりと、企業価値に責任を負う組織体制が未整備なことも問題であろう。このような日本企業における中期経営計画の策定プロセスと組織体制によって「有効な経営計画の策定」と「経営計画の達成責任」が担保されているのかは疑問が残るところだ。また、計画の達成に向けた動機付けの弱さも、計画が未達に終わる原因の一つと考えられる。


FPA : 「Financial Planning &Analysis」の略称で、業務管理および財務計画の立案、財務データの分析を行う職種(またはその業務)を指す。職種としてのFP&AはCFOの配下に直属していることが多く、財務予測、すなわち現在および過去の財務データに基づき将来の収入、支出、利益、キャッシュフローを予測することが最も重要な任務となる。CFOは、FP&Aが作成した財務予測に基づき、事業の将来について長期的な意思決定を行う。 FP&Aには、管理会計に関する深い知識が求められる。

では、中期経営計画の望ましい策定プロセスとはどのようなものだろうか。バックキャスティング方式や積み上げ方式など策定方法の解説は世に溢れているが、ここでは「策定プロセスの規律付け」に着目し、その手段として、・・・


バックキャスティング方式 : 数年後の経営環境を踏まえた目標を起点に、そこから逆算して現在までのロードマップを描くこと。

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2024/08/06 中期経営計画が企業価値向上に貢献するようになるための提言(会員限定)

周知のとおり、コーポレートガバナンス・コードの補充原則4-1②lは、取締役会・経営陣幹部に対し「中期経営計画」を株主に対するコミットメントと認識し、その実現に向けた最善の努力を求めている。しかし、日本企業の中期経営計画はしばしば「絵に描いた餅」と揶揄されるように、実効性に疑問が残るものも散見され、実際、未達に終わることも少なくない。果たして、現状の日本企業の中期経営計画は「企業価値向上」という観点から、どれだけの意味があるのだろうか。

日本企業の中期経営計画は、各事業部から出て来た数字を経営企画部門が統合して予算化する“積み上げ方式”により策定されるのが一般的となっているが、この策定プロセスは、中期経営計画を「絵に描いた餅」にする一因になっていると思われる。経済産業省が2024年5月に公表した「製造業を巡る現状と課題、今後の政策の方向性」では、日本企業にしか存在しない「経営企画部門」について、経営企画部式の予算編成とバケツリレー方式の情報展開により、全社的な経営視点での議論が最後の工程になってしまう傾向が指摘されている(17ページ参照)。その結果、取締役会が中期経営計画の策定プロセスに関与する密度は低くなる。また、米国企業と異なり、FPA部門が設けられていなかったり、CFOの権能が財務経理に限定されがちだったりと、企業価値に責任を負う組織体制が未整備なことも問題であろう。このような日本企業における中期経営計画の策定プロセスと組織体制によって「有効な経営計画の策定」と「経営計画の達成責任」が担保されているのかは疑問が残るところだ。また、計画の達成に向けた動機付けの弱さも、計画が未達に終わる原因の一つと考えられる。


FPA : 「Financial Planning &Analysis」の略称で、業務管理および財務計画の立案、財務データの分析を行う職種(またはその業務)を指す。職種としてのFP&AはCFOの配下に直属していることが多く、財務予測、すなわち現在および過去の財務データに基づき将来の収入、支出、利益、キャッシュフローを予測することが最も重要な任務となる。CFOは、FP&Aが作成した財務予測に基づき、事業の将来について長期的な意思決定を行う。 FP&Aには、管理会計に関する深い知識が求められる。

では、中期経営計画の望ましい策定プロセスとはどのようなものだろうか。バックキャスティング方式や積み上げ方式など策定方法の解説は世に溢れているが、ここでは「策定プロセスの規律付け」に着目し、その手段として、中期経営計画の達成を条件とした株式報酬の付与を提言したい。日本企業の役員報酬は、固定報酬と単年度業績に紐付くインセンティブ報酬という構成が多く、3か年計画の達成状況に紐付けた報酬設計はまだ多くない。中期経営計画と報酬を紐付けることで、中期経営計画の策定プロセスを以下の2つの点で規律付けすることが可能になる。


バックキャスティング方式 : 数年後の経営環境を踏まえた目標を起点に、そこから逆算して現在までのロードマップを描くこと。

第一に、目標とする業績数値の妥当性が向上する。なぜなら、実現不可能な計画を策定すれば、取締役等は株式報酬を得ることができないからだ。逆に低い目標の計画を策定すれば、達成できたとしても株式市場からの評価は向上せず、株式報酬の金額は低いものとなる。これらは策定プロセスを有効なものにするとともに、中期経営計画の実効性を高め、資本市場の期待にも応える原理であろう。

第二に、計画達成に向けた執行の質が向上する。3か年の達成状況に応じて報酬が変動するため、計画策定後のアクションプランの実行精度が高まる。また、未達時にはアクションプランの再策定といったローリングの内容を有効なものにしようとするインセンティブが働くだろう。


ローリング : 計画と現状のズレを埋めるために、経営環境の変化や実情に応じて計画を見直すこと。

このように、中期経営計画と報酬を紐付けることで、策定プロセス・目標値・平時の議論・企業価値の向上が有機的に結び付き、ステークルホルダーへのベネフィットを高めることになる。

現在、多くの企業が2023年3月に公表された東証の要請を意識した中期経営計画を策定している。計画には、事業ポートフォリオマネジメントを通じたROEの向上や、成長性と収益性の高い分野への戦略的投資などが盛り込まれ始めている。いずれも資本効率や成長性といった多くの株主が望む事項である。また、IR活動の強化を通じた資本コストの低下と資本市場からの期待の醸成など、資本市場そのものに焦点を当てたアプローチも盛り込まれている。中期経営計画という3か年の企業戦略にこれらを盛り込むことは所要期間としても合理的だが、同じように株式報酬を中期経営計画に連動させることもまた、資本市場の期待を醸成するという点で有効と考えられる。


ROE : Return On Equity=株主資本利益率(当期純利益/株主資本)
資本コスト : 「資金提供者(債権者+株主)に対するリターン」のこと(なお、株主に対するリターンには、配当のほかキャピタルゲインも含まれる)。資金提供者に対するリターンが適切にできなければ、債権者は会社に資金の返還を求め、株主は株式を売却(=株価が下落する)せざるを得ない。したがって、会社にとって資本コストは「資金提供者に対するリターンの目標値」と言える。

東証の要請から1年半が経とうとする中、計画の内容はもちろん、その実効性に対する投資家の関心が高まっている。日本の上場企業の9割以上で何らかの株式報酬が導入されているとのデータはあるものの、上述のとおり中期経営計画の達成が付与の条件に含まれている事例は少ない。中期経営計画の達成をその策定プロセスによって規律付けられていない現状を打破するため、中期経営計画と株式報酬を連動させることは、中期経営計画に対する取締役等のコミットメントを引き出すとともに市場へのメッセージにもなり、企業価値向上に向けた大きな一歩となろう。

2024/08/05 “価格交渉ブラック企業”の社名公表、パートナーシップ構築宣言に沿った対応が必須に

足下ではドル高円安傾向が反転し、急速に円高が進んでいるものの、エネルギー価格や原材料費は高止まりが続く。また、最低賃金の引上げに伴う労務費の上昇も継続している。こうした中、上場企業各社においては、パートナーシップ構築宣言に基づき下請先との価格交渉に臨み、価格転嫁を受け入れつつ、自社製品・サービスの値上げの余地を探る展開となっている(「パートナーシップ構築宣言」については2024年4月12日のニュース「パートナーシップ構築宣言、早目の更新を」参照)。その一方で、価格競争の厳しい一部の業界や未だパートナーシップ構築宣言をしていない企業の中には、下請先との価格交渉・価格転嫁が円滑に進んでいないところもあるようだ。・・・

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2024/08/05 “価格交渉ブラック企業”の社名公表、パートナーシップ構築宣言に沿った対応が必須に(会員限定)

足下ではドル高円安傾向が反転し、急速に円高が進んでいるものの、エネルギー価格や原材料費は高止まりが続く。また、最低賃金の引上げに伴う労務費の上昇も継続している。こうした中、上場企業各社においては、パートナーシップ構築宣言に基づき下請先との価格交渉に臨み、価格転嫁を受け入れつつ、自社製品・サービスの値上げの余地を探る展開となっている(「パートナーシップ構築宣言」については2024年4月12日のニュース「パートナーシップ構築宣言、早目の更新を」参照)。その一方で、価格競争の厳しい一部の業界や未だパートナーシップ構築宣言をしていない企業の中には、下請先との価格交渉・価格転嫁が円滑に進んでいないところもあるようだ。中小企業庁が2024年8月2日に公表した「価格交渉促進月間(2024年3月)フォローアップ調査」()の結果(以下、本調査結果)により、発注側企業各社の価格交渉・価格転嫁への対応状況が明らかになった。

* 中小企業庁が受注側中小企業に対して行った主な取引先(発注側企業)との価格交渉・価格転嫁の状況についての調査結果をもとに、価格転嫁率や業界ごとの状況、順位等をとりまとめたもの。中小企業庁は本調査結果を踏まえ、下請中小企業振興法に則り、価格交渉・価格転嫁の状況が芳しくない親事業者に対して大臣名で指導・助言を行っている。中小企業庁は、中小企業が適切に価格転嫁をしやすい環境を作ることを目的として、2021年9月より、毎年9月と3月を「価格交渉促進月間」とし、両月において価格交渉・価格転嫁に関する広報や講習会、業界団体を通じた価格転嫁の要請等を実施している。本調査は、2024年3月の価格交渉促進月間において行われたもの。

中小企業庁は、受注側の中小企業に対して【価格交渉の状況】と【価格転嫁の状況の】の2つの観点から実施したアンケートの結果を、回答の選択肢に応じて点数化し、発注側企業ごとに平均値を算出したうえで、発注側企業各社を平均値に基づき下記の4区分(ア~エ)に分類した結果を、企業名とともに公表している(本調査結果の3ページの別紙2を参照)。なお、企業名の公表は、受注側企業10社以上から回答があった発注側企業に限定されている。


アンケートの結果 : この「企業リスト」に掲載されている発注側企業ごとの【価格交渉の状況】【価格転嫁の状況】は、今回のフォローアップ調査における受注側中小企業の回答状況を整理したものであり、各発注側企業が行っているすべての価格交渉および価格転嫁の状況を網羅的に整理したものではない。
平均値 : (各受注側企業からの回答を点数化したものの総和)/(回答企業数)

【価格交渉の状況】の調査における回答の選択肢と各選択肢の点数化の基準
741601
【価格交渉の状況】および【価格転嫁の状況】の調査結果における平均値の区分
741602

本調査結果によると、2024年3月の【価格交渉の状況】の調査において最低評価の「エ」となったのは以下の3社だった(カッコ内は回答企業数)。2023年9月の調査で「エ」となったのはJCOM1社だけだったが、今回は3社に増えている(今回の調査では、JCOMは10社以上の回答企業がなかったため、企業名公表の対象外となっている)。2024年3月の調査で最低評価となった3社中2社が価格競争力の高さを売りにする住宅建設メーカーであった。

【価格交渉の調査】で最低評価となった企業
エディオン(東証プライム)
※回答企業数は11社
一条工務店(非上場)
※回答企業数は26社
タマホーム(東証プライム)
※回答企業数は13社

「エ」に区分された企業は平均値が0点未満であることから、受注側企業に対し「価格交渉の申し入れ」を行っていないうえに、受注側企業の相当数がアンケートで、コストが上昇しているにもかかわらず「発注量減少や取引停止を恐れ、交渉を申し出なかった」あるいは「交渉を申し出たが、応じてもらえなかった」と回答した企業ということになる。

「エ」に区分された3社のうちエディオンと一条工務店は本調査結果の公表に即座に反応し、リリース(エディオンのリリースはこちら、一条工務店のリリースはこちら)を出しているが、タマホームは2024年8月5日現在、何らリリースを出していない。公的機関が公表した調査結果で、自社が悪い評価を伴って取り上げられていた場合、レピュテーションの毀損を最小限にとどめるため、“火消し”的なリリースを即日出すことが望ましい。

なお、3社がパートナーシップ構築宣言の中で表明していた価格決定方法は以下のとおり。

【価格交渉の調査】で最低評価になった企業のパートナーシップ構築宣言
企業名 パートナーシップ構築宣言の内容(抜粋)
エディオン 2.「振興基準」の遵守
親事業者と下請事業者との望ましい取引慣行(下請中小企業振興法に基づく「振興基準」)を遵守し、取引先とのパートナーシップ構築の妨げとなる取引慣行や商慣行の是正に積極的に取り組みます。
①価格決定方法
不合理な原価低減要請を行いません。取引対価の決定に当たっては、下請事業者から協議の申入れがあった場合には協議に応じ、労務費上昇分の影響を考慮するなど下請事業者の適正な利益を含むよう、十分に協議します。取引対価の決定を含め契約に当たっては、親事業者は契約条件の書面等による明示・交付を行います。
一条工務店 -(現時点でパートナーシップ構築宣言未実施)
タマホーム 2.「振興基準」の遵守
親事業者と下請事業者との望ましい取引慣行(下請中小企業振興法に基づく「振興基準」)を遵守し、取引先とのパートナーシップ構築の妨げとなる取引慣行や商慣行の是正に積極的に取り組みます。
① 価格決定方法
不合理な原価低減要請を行いません。取引対価の決定に当たっては、下請事業者と少なくとも年に1回以上の協議を行うとともに、下請事業者の適正な利益を含み、下請事業者における労働条件の改善が可能となるよう、十分に協議して決定します。その際、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」に掲げられた行動を適切にとった上で決定します。
また、原材料費やエネルギーコストの高騰があった場合には、適切なコスト増加分の全額転嫁を目指します。なお、取引対価の決定を含め契約に当たっては、契約条件の書面等による明示・交付を行います。

そもそもパートナーシップ構築宣言を行っていない一条工務店を除いた2社とも、パートナーシップ構築宣言上は「取引対価の決定に当たっては、下請事業者から協議の申入れがあった場合には協議に応じ」(エディオン)、「下請事業者と少なくとも年に1回以上の協議を行う」(タマホーム)と下請重視の姿勢を示しているものの、アンケートでは下請事業者の多くが「発注量減少や取引停止を恐れ、交渉を申し出なかった」あるいは「交渉を申し出たが、応じてもらえなかった」と回答していることから、「下請事業者との協議」が実質を伴ったものになっていなかった可能性がある。

本調査結果において「ウ」の評価になったのが以下の26社(順不同)だ。住宅建設業界からは「大東建託」「アイ工務店」「三井ホーム」「パナソニックホームズ」の4社、「2024年問題」に揺れる物流業界からは「西濃運輸」「ヤマト運輸」「アサヒロジ」の3社が名を連ねている(「物流の2024年問題」については2023年10月4日のニュース『送料無料」の表示を巡るせめぎあいの行方』参照)。両業界における価格面の締め付けの厳しさがうかがえる。


2024年問題 : 働き方改革法によりドライバーの労働時間に上限が課されることで生じる問題の総称

【価格交渉の調査】でウの評価になった企業
NTTドコモ スリーエムジャパンプロダクツ 西濃運輸
ヤマト運輸 大東建託 新菱冷熱工業
吉野工業所 セイコーエプソン UDトラックス
オークマ 大和リース トーエネック
アサヒロジ アイ工務店 モルテン
デンソーソリューション パナソニックホームズ ニチアス
太平ビルサービス ミライト・ワン コメリ
三井ホーム セコム イノアックコーポレーション
ヤマダデンキ ダイヘン

【価格交渉の調査】で「ウ」の評価になったということは、平均値が「4点未満0点以上」のゾーンにあったことを意味する。すなわち、5点以上の評価を付した受注側企業とマイナス5点以下の評価を付した受注側企業が混在しており、前者の方が多かったため平均点がマイナスにならなかったということだ。具体的には、受注側企業の回答のメインは「発注企業からの価格交渉の申し入れはあり、受注側のコストも上昇していたが、発注量減少や取引停止を恐れ、申し入れを辞退した」というものだったが、「発注企業から交渉申し入れがなく、受注側のコストも上昇していたが、発注量減少や取引停止を恐れ、交渉を申し出なかった」という回答もあり、後者の回答が平均値を引き下げた。いずれにせよ、評価がウであったということは、受注側企業のほとんどが「価格交渉が行われていない」と回答していることに変わりはない。

【価格転嫁の状況】の調査における回答の選択肢と各選択肢の点数化の基準
741603

【価格転嫁の調査】では「エ」の評価になった企業はなかった。すなわち、本調査で10社以上の回答者(受注側企業)があった発注側企業のすべてが、少なくとも一部の受注側企業からの価格転嫁を受け入れたことになる。もっとも、価格転嫁の受け入れ度合はピンキリであり、「ウ」の評価になった企業(平均値が4点未満、0点以上。すなわち、価格転嫁の割合が平均で4割から0割の間)も下記のとおり60社あった(順不同)。

【価格転嫁の調査】でウの評価になった企業
ナブテスコ 不二越 ホクレン農業協同組合連合会
東京電力パワーグリッド 鴻池運輸 今治造船
綜合警備保障 パナソニックホームズ 日立グローバルライフソリューションズ
丹青社 トランコム パナソニック産機システムズ
THK NECネッツエスアイ 東芝テックソリューションサービス
旭化成ホームズ 前田道路 住友不動産
トーハン セコム 丸全昭和運輸
エディオン 大和ハウス工業 UDトラックス
山崎製パン 上組 佐川急便
大成ロテック 豊田通商 トーエネック
住友林業 九電工 モルテン
大東建託 東亜道路工業 YKK AP
日本通運 オリックス自動車 ソフトバンク
一条工務店 タマホーム 日本郵便輸送
住友三井オートサービス アキレス セイノースーパーエクスプレス
セイコーエプソン 三和シヤッター工業 DNPコミュニケーションデザイン
テクノアソシエ ロジスティード東日本 コメリ
キーエンス 村田機械 SCREENセミコンダクターソリューションズ
大和リース 西濃運輸 イノアックコーポレーション
アイ工務店 澁谷工業 青山製作所

住宅建設業界からは、「一条工務店」「タマホーム」「パナソニックホームズ」「旭化成ホームズ」「大和ハウス工業」「住友林業」「大東建託」「アイ工務店」が、物流・運送業界からは「鴻池運輸」「トランコム」「丸全昭和運輸」「上組」「佐川急便「日本通運」「日本郵便輸送」「セイノースーパーエクスプレス」「ロジスティード東日本」「西濃運輸」が名を連ねている。【価格交渉の状況】で「エ」の評価となった3社(エディオン、一条工務店、タマホーム)は【価格転嫁の調査】ではすべて「ウ」の評価になっており、価格交渉が行われなければ価格転嫁も不十分となることが分かる。

一方、本調査結果で、価格交渉・価格転嫁の状況のいずれにおいてもアの評価を受けた “優良”企業は13社あった(順不同)。企業名は下記のとおり。

価格交渉・価格転嫁の状況のいずれもアの評価となった“優良”企業
鹿島道路 パナソニックコネクト 淀川ヒューテック
小松製作所 日立造船 朝日航洋
日本工営 KOKUSAI ELECTRIC 住友電装
応用地質 オリエンタルコンサルタンツ
デンカ いすゞ自動車

なお、2023年9月の調査で、価格交渉・価格転嫁の状況のいずれもアの評価を受けた企業は、「日立建機」「北海道電力」「SUBARU」「本田技研工業」「ジェイテクト」の5社しかなかった。下記の2023年9月の調査結果と2024年3月の調査結果の比較(中小企業庁が2024年6月21日に公表した「価格交渉促進⽉間(2024年3⽉)フォローアップ調査結果」の3ページ目から引用)からも分かるように、「①発注企業から、交渉の申し⼊れがあり、価格交渉が⾏われた」層が14.3%から18.4%に増えたことが背景にある。

価格交渉の状況の2期比較
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今回の中小企業庁の調査結果公表で、エディオン、一条工務店、タマホームの3社は下請軽視の姿勢が明らかとなり、レピュテーションを大きく損なうこととなった。多くの上場企業が該当する発注側企業は、“価格交渉・価格転嫁のブラック企業”などと言われないよう、パートナーシップ構築宣言の見直し、および実態との乖離の有無を検討するようにしたい。また、上記の中小企業庁「価格交渉促進⽉間(2024年3⽉)フォローアップ調査結果」14ページには、発注側企業の対応の好事例として下記の4つが紹介されている。いずれも「サプライチェーン全体の付加価値向上、大企業と中小企業の共存共栄」を謳うパートナーシップ構築宣言の趣旨に沿った対応であり、発注側企業としては参考にしたい。

発注企業側の好事例
1. 以前は、発注企業の特定の部⾨(製造部品)だけで定期的に価格交渉していたが、昨年度より、その他の部⾨(運輸部⾨)においても、価格交渉の窓⼝を設置され、実際に交渉が始まった。ドライバー不⾜問題から、特に労務費においては、要望額以上の値上げ回答額が提⽰された。
2. 発注企業から価格交渉を申出てほしい旨の連絡があり、記⼊例やフォーマットも送付して貰えた。また、「他の受注企業からは価格値上げの交渉が⼊っているが、御社からは未だ来てないが、⼤丈夫か︖」と、フォローも受けた。
3. 労務費に関する価格協議は、まずは受注企業の希望する取引価格を提⽰して貰い、その根拠資料の提⽰が難しい場合に、受注企業も答えやすい「シンプルな試算式」を送付した。
4. 発注企業から、全ての取引先を対象にレターを送付。 送付後、その到着状況を確認し、電話やメール、会議、商談等の場で「対話」を続け、状況をモニタリング。価格交渉に積極的に応じる姿勢を伝えている。

2024/08/02 “統合報告書の法定開示化”も 経産省の懇談会で、戦略報告を含む一体化された法定開示書類の作成に多くの支持

2024年7月23日付ニュース「伊藤レポートから10年、今後のコーポレートガバナンスの論点は?」では、経済産業省が2024年4月30日に設置した「持続的な企業価値向上に関する懇談会」が公表(6月26日)した「座長としての中間報告」についてお伝えしたところだが、同省は同日にもう一つ重要な「懇談会」を立ち上げている。それが「企業情報開示のあり方に関する懇談会」(以下、情報開示懇談会)であり、こちらも「課題と今後の方向性」と題する中間報告を2024年6月25日に公表している。

情報開示懇談会は「企業価値の向上に資する情報開示を行っていくためには、どのような開示体系に基づき、どのような情報開示を行うことが望ましいのかについて議論を行う」ことを目的としており、中間報告は計4回の会合での議論を踏まえたものとなっている。中間報告では冒頭、主な開示書類に対して会合で出された意見をまとめている(4ページ~)。ポイントは下表のとおり。・・・

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