2023/08/29 企業買収における行動指針案が月内公表へ 複数の投資家から「PBR1倍割れ」企業が買収提案を断ることに厳しい声(会員限定)

既報のとおり、経済産業省は2023年6月8日に「企業買収における行動指針(案)」(以下、本指針)を公表し、8月6日までパブリックコメントに付していたが(2023年6月19日のニュース「買収に関する公正なルール形成に向け示された指針案のポイント」参照)、「案」がとれた正式版およびパブリックコメントに対する経産省の回答が今月(8月)末に示されることが当フォーラムの取材により判明した。

本指針は、ソフトローとして原則論やベストプラクティスを提示するものであり(本指針「1.2 本指針の意義と位置づけ」参照)、法的拘束力や罰則があるわけではないが、投資家やM&Aに携わる法律家などからは、「買収防衛に重点を置かれた議論ではなく、価値創造的なM&Aの促進、買収の促進による健全な市場機能の発揮、上場会社の経営に対する規律付けとのバランスがとれている」「株主にとって最良の結果をもたらすような行動を取締役と経営者に求める行動規範の創設を歓迎する」といった本指針をポジティブに評価する声が上がっている。

こうした声が示すように、本指針は必ずしも企業を“守る”ことに主眼を置いたものではない。これは、本指針が取締役会に、「企業価値を高める提案を安易に断ることにならないよう留意する必要がある。」(「3.1.2 取締役会における検討」15ページ中段参照)、「買収価格等の取引条件が軽視されるようなことがあってはならず、過去の株価水準よりも相応に高い買収価格が示されていることから、合理的に考えれば企業価値を高めることが期待し得る提案であれば、取締役・取締役会としてはこれを十分に検討する必要がある。」と注意を喚起していることからもうかがえる(17ページ冒頭参照)。

この点について一部の投資家からは、「15ページの『企業価値を高める提案を安易に断ることにならないよう留意する必要がある。』の後に『特に、PBRが長期的に1倍を下回っている企業が買収提案を断る場合は、企業価値向上に向けた具体策を提示することが求められる。』といった趣旨の文言を追加するべき」、「対象会社については株価、特にPBR1倍割れであるか否かも現経営陣の評価材料になることを追記していただきたい」といったコメントや、17ページに以下の文章を追加するよう求めるコメントが寄せられている。


PBR : Price Book-value Ratio=株価純資産倍率(株価 ÷1株当たり株主資本)。株価が1株当たり純資産(BPS:Book value Per Share)の何倍まで買われているか(=1株当たり純資産の何倍の値段が付いているか)を指す。PBRが1.0を大幅に下回る場合、投資家が企業の将来性に疑問を持っていたり、減損リスクのように潜在的な資産の含み損が多額にのぼる可能性が株価に織り込まれていたりすることを示唆する。

特に、対象会社の取締役・取締役会(以下「現経営陣」という。)が PBR1倍以上の株価水準である買収価格よりも高い対抗提案を探さずに、対象会社の取締役を続投しようとする場合、現経営陣は自社の株価を PBR1倍以上の水準(当該買収提案の価格以上)とするための企業価値向上策及びその達成時期を具体的に公表し、買収者が提示する買収価格や企業価値向上策と現経営陣が経営する場合の企業価値向上策を、定量的な観点から十分に比較検討できる情報を追加的に開示することが期待される。

これに対し経済産業省は、「PBRは一つの指標となり得ると考えられる」としつつも、「企業が抱えている課題や資本市場の状況に応じて特に考慮されるべき要素は異なると考えられるため、(本指針には)特定の指標のみを取り上げた記載はしていない」という“どっちつかず”とも言える回答を示すにとどまる模様だが、「PBRは一つの指標となり得る」としている点は企業にとって要注意と言える。PBRの低い企業は、将来起こり得る買収提案に備え、投資家が指摘するように「企業価値向上に向けた具体策」を検討しておく必要があろう。

2023/08/28 「アクティビスト時代の到来」というにはまだ早い現状

当フォーラムでも報じてきたとおり、香港のアクティビストであるオアシスがフジテックの株主総会で当面の主導権争いに“勝利”したことで「アクティビスト時代の到来」を指摘する資本市場関係者も少なくないが、必ずしもそうとは言い切れない。それを端的に示すのが、オアシスがドラッグストア業界では一転苦戦しているという事実だ(フジテックで2023年6月に開催された定時株主総会については2023年6月21日のニュース「フジテック株主総会、怒声が飛び交う長丁場に」を参照)。・・・

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2023/08/28 「アクティビスト時代の到来」というにはまだ早い現状(会員限定)

当フォーラムでも報じてきたとおり、香港のアクティビストであるオアシスがフジテックの株主総会で当面の主導権争いに“勝利”したことで「アクティビスト時代の到来」を指摘する資本市場関係者も少なくないが、必ずしもそうとは言い切れない。それを端的に示すのが、オアシスがドラッグストア業界では一転苦戦しているという事実だ(フジテックで2023年6月に開催された定時株主総会については2023年6月21日のニュース「フジテック株主総会、怒声が飛び交う長丁場に」を参照)。

オアシスは、投資先の株主総会に先立ち、興信所なども利用した詳細な調査レポートに基づき、ガバナンスという“正論”を切り口にネガティブキャンペーンを張ることが多い。そして、ネガティブキャンペーンでは、「創業家支配(=少数株主を守る)」「対話の拒絶」「ガバナンス不在」といったキーワードで株主を扇動するのが常道となっている。この手法が最もハマったのがフジテックだったと言える。フジテックでは、オアシスが取締役会における多数派工作に成功し、創業家会長の追い出しに加え、その後の定時株主総会でオアシスが提案した取締役候補が選任されるなど、経営基盤を固めている。その勢いに乗る形で、オアシスが次のターゲットにしたのがドラッグストア業界だ。

ドラッグストア業界は、調剤だけでなく美容や食品などの周辺業界を取り込みながらまだまだ市場規模の拡大余地があり、インバウンドの需要回復の恩恵も受けやすい。このため、2021年にはマツモトキヨシグループとココカラファイングループが経営統合しマツキヨココカラ&カンパニーが誕生するなど、企業規模や業容拡大を目的としたM&Aが盛んな業界でもある。そのマツキヨココカラ&カンパニーは経営統合の成果を十分に出しており、それが株価にも如実に反映されている。この成功例もあり、業界内での経営統合の流れは今後も不可避とされている。経営統合による企業価値向上を図りやすいと踏んだオアシスが同業界に強い関心を寄せるのも頷けるところだ。ドラッグストア各社の営業利益率およびドラッグストアの株価推移は下表のとおりとなっている。

ドラッグストア各社の営業利益率
オアシス作成の「ツルハのコーポレートガバナンス改善」17ページより引用
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ドラッグストアの株価推移
(2021/9/29時点を100%として2023/5/15まで)
オアシス作成の「ツルハのコーポレートガバナンス改善」19ページより引用
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また、直近の連結売上高の業界トップ10社は下表のとおり(なお、「オアシスの動向」欄には、直近の有価証券報告書の【大株主の状況】欄等にオアシスのファンドが記載されているかなどを当フォーラムが調査した結果を記載している。ここを赤字で記載した会社がオアシスの投資先である。また、各社の国内店舗数も記載しているが、これにはフランチャイズの店舗やディスカウントストア事業などの他業態の店舗も含まれており、また店舗規模もまちまちであるため、単純に店舗数だけで規模の比較はできない)。

業界順位 会社名 連結売上高 国内店舗数 オアシスの動向
1位 ウエルシアホールディングス 1兆1,442億円(2023年2月) 2,751店舗(2023年2月28日現在) 【大株主の状況】欄に記載なし
2位 ツルハホールディングス 9,700億円(2023年5月度 2,589店舗(2023年5月15日現在) 【大株主の状況】欄に記載はないものの、2023年5月15日に12.84%を保有する旨記載された大量保有報告書の変更報告書が提出されている。
3位 マツキヨココカラ&カンパニー 9,512億円(2023年3月) 3,335店舗(2023年3月31日現在) 【大株主の状況】欄に記載なし。ただし、2020年から2021年にかけてココカラファインに投資していた。
4位 コスモス薬品 8,276億円(2023年5月) 1,358店舗(2023年5月31日現在) 【大株主の状況】欄に記載なし
5位 サンドラッグ 6,904億円(2023年3月) 1,380店舗(2023年3月31日現在) 【大株主の状況】欄に記載なし
6位 スギホールディングス 6,676億円(2023年2月) 1,565店舗(2023年2月28日現在) 【大株主の状況】欄に記載なし
7位 富士薬品 3,730億円(2023年3月) 1,365店舗(2023年3月31日現在) 非上場
8位 クリエイトSDホールディングス 3,809億円(2023年5月) 758店舗(2023年5月31日現在) 【大株主の状況】欄に記載なし
9位 クスリのアオキホールディングス 3,788億円(2023年5月) 903店舗(2023年5月20日現在) 【大株主の状況】欄に記載はないものの、2023年5月18日に5.5%を保有する旨記載された大量保有報告書が提出されている。
10位 カワチ薬品 2,818億円(2023年3月) 364店舗(2023年3月15日現在) 【大株主の状況】欄に記載なし

大量保有報告書の変更報告書 : 市場の透明性・公正性を高め、投資者保護を図ることを目的として、株券等の大量保有者に対し「大量保有報告書(or変更報告書)」の提出を義務付ける金融商品取引法上の制度。具体的には、①保有割合が5%超となった場合、②その後、保有割合が1%以上増減するなど重要な変更があった場合、それぞれ提出事由が生じた日から5営業日以内に「大量保有報告書(or変更報告書)」の提出が求められる(②の場合に提出するのは「変更報告書」)。

オアシスは決算日の近いツルハHD(決算日は5月15日)とクスリのアオキHD(決算日は5月20日)の定時株主総会に向け、決算日直前に株式を一気に買い増し、ネガティブキャンペーンと株主提案を仕掛けた。

ツルハHDは、ツルハドラッグやくすりの福太郎などのツルハグループを運営しており、上表のとおり連結売上高ではドラッグストア業界第2位に位置する。M&Aを繰り返すことでグループを拡大し、下記のとおりホールディングス傘下の主要子会社は商号(ブランド)を統一せずにその創業家が代表取締役に就任している。

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オアシスによるツルハHDの持株比率は、期末直前の大量取得で12.84%に達し、13.59%を保有するイオンに次ぐ第2位の株主となっている。そして、ツルハHDの定時株主総会(2023年8月10日開催)に先立ち、2023年6月中旬に既存の社外取締役の解任や郷原信郎氏など3名の社外取締役(監査等委員)、2名の監査等委員でない社外取締役の選任を求める株主提案を行った。さらに、6月22日には「ツルハのコーポレートガバナンス改善」と題するネガティブキャンペーンサイトを立ち上げ、再選が予想される同社の社外取締役2名は独立性を欠くとの主張を開始した。オアシスの主張とそれに対するツルハHDの取締役会の見解は次のとおり。

主なテーマ オアシスの主張 ツルハHDの取締役会の見解
創業家による強い支配とそれを監督できる社外取締役の不在 現状のツルハには、創業三家による企業支配を外形的に推認させる事実関係がある。一方、創業家を監督すべき社外取締役は、下記のとおり、創業家との長期に亘る関係を持つ者やかつてのメインバンクからの出身者など、社外取締役陣の独立性が欠落している。
佐藤はるみ氏:鶴羽家と10年以上に亘る家族ぐるみの付き合いをしており、かつて鶴羽家によるツルハの経営を絶賛する論文を執筆していた過去もある。
岡崎拓也氏:ツルハと20年以上の深い付き合いがあった酒井純氏の後任で、酒井氏とはホクリョウの社外監査役つながり。
藤井文世氏:かつてのメインバンクで今でも取引のある北洋銀行出身者。北洋銀行と株式の持ち合い関係にある北海道電力においても社外役員を務め、社外役員としての独立性に対する意識の低さが伺え、独立した立場から経営の監督を行う意思や能力に疑問が持たれる。
・オアシスは、当社取締役会には「創業家」による強い支配が存在し、「子会社間の事業上のシナジーの完全な発揮や、創業家以外の人材の登用が阻害され」ていると指摘しますが、事実無根であり、オアシスからもその根拠や具体例は一切示されていません。
・当社は創業家の出身者であるか否かにかかわらず、主要な事業子会社では、実力本位で適材適所の経営人材を起用し、また主要事業子会社の実情に精通した各子会社トップが持株会社としての当社によるグループ全体の経営に参画する体制としています。
・当社の監査等委員である社外取締役3名は、いずれも、各選任に係る株主総会において、99%を超える賛成率をもって選任いただいているところ、提案株主の主張は、そのいずれもが、上記各選任の機会より前から存在する事実を論難するものや、本来全く関連性のない事情をあたかも当社に「社外取締役の総入替え」が必要となるガバナンス上の重大な問題があるように歪曲して評価する憶測の域を出ないものであって、各監査等委員である社外取締役が、既にそれらの事情が存する状態で高い信任を得てきたものであることを看過し、又は無視したものです。
新たな社外取締役 取締役としての質、独立性、多様性に優れている新たな5名の社外取締役の選任を提案すべき。 ・各候補者と面談をした結果、オアシスの候補者には、①当社が各種開示書類を通じて公表している各種情報(当社の情報だけでなく、事業環境等を含みます)について、最低限の認識もお持ちでない候補者が複数存在した、②当社の将来に対する展望・考えが明確でなく、ドラッグストア業界や周辺業界に関する知見や見通しに乏しい候補者が複数存在した、③一部、オアシスとの関係性について、オアシスによる説明と異なる回答を行った候補者が存在した、④業務執行機関に対する監視・監督を中心とする監査等委員である取締役としての職責を十分に理解しているとは評価し難い発言が複数認められた。
・本株主提案に係る取締役候補者が当社社外取締役となった場合、財務会計や税務に関する専門的知見、経験等を有する社外取締役が不在となる一方で、経営や事業に関する経験を有する社外取締役が多くなる等、スキルマトリクスが、会社提案に係る社外取締役が当社取締役となった場合に比べてバランスを欠くものになると考えられること。
定款変更 会長職の廃止と鶴羽樹氏の会長職からの解任 当社会長及び副会長は、当社グループの事業経営について、昨今の事業環境の変化や中長期的な業績向上と企業価値増大への取り組み等に対し、今までの経験・知見等を踏まえ、社長等の求めに応じて経営全般に対する監督・助言を行うとともに、取締役会における議論を活発化させる等の取締役会機能の強化に貢献しており、当社として会長職及び副会長職は重要な役割を有しているため、現時点において廃止する必要はないと考えております。
株主との対話 オアシスは2020年以降、ツルハと継続的な対話を行ってきた。 当社が、本株主提案を受領するまでにオアシスと面談を行ったのは、通常のIR面談を除くと、2022年10月以降に行われた2回のみであり、また、当該面談ではオアシスの主張するガバナンス上の問題点等の本株主提案に関連する具体的な言及は全くありませんでした。これをもって、オアシスが当社と「継続的な対話を行ってきた」というのは誤導的であり、恣意的な印象操作です。なお、当社が、オアシスを含む株主との対話を「拒絶」した事実などありません。

論難 : 不正や誤りを論じ、非難・攻撃すること。

一方、クスリのアオキHDは2023年5月20日現在、北信越や関東を中心に903店舗を展開し、売上高はドラッグストア業界9位の3,788億円に上る。オアシスはクスリのアオキHDの定時株主総会(2023年8月17日開催)に先立ち、「クスリのアオキのコーポレート・ガバナンス改善」とするネガティブキャンペーンサイトを立ち上げ、M&A専門家を社外取締役候補とするなどの株主提案を会社に提出し、他の株主に向けて同調を訴えた。オアシスの主張とそれに対するクスリのアオキHDの取締役会の見解は次のとおり。

主なテーマ オアシスの主張 クスリのアオキHDの取締役会の見解
有償ストック・オプションの価値の妥当性 ・2020年1月に代表取締役の青木宏憲氏とその弟で取締役副社長の青木孝憲氏に対して発行したストック・オプションの公正価値は72.56億円であるにも関わらず、青木兄弟は僅か5,250万円しか会社に払い込んでいない。
・ディスカウントの理由とされている“行使条件の厳しさ”はいずれも「容易に達成可能ないし回避可能」。
・青木宏憲氏と青木孝憲氏がストック・オプションの公正価値をアオキに支払うか、アオキによる青木宏憲氏と青木孝憲氏からのストック・オプションの簿価での買戻しを要求する。
・ストック・オプションの発行は非合理とも思えるほどの業績予想の下方修正を行い、株価が下落した後に発行されている。
当社が発行した第5回新株予約権(以下、「本有償ストック・オプション」といいます。)の発行価額(以下、「公正価値」といいます。)及び公正な評価単価は、第三者評価機関である株式会社プルータス・コンサルティングが、当社の株価情報等を考慮して、一般的なオプション価格算定モデルを用いて算出したものであり、客観的な分析に基づくものです。
① 2020年1月9日(発行日)の「公正価値」については1個(100株)あたり1,500円(モンテカルロ・シミュレーションにより算定)
② 2020年1月28日(割当日)の「公正な評価単価」については1株あたり2,073円(ブラック・ショールズモデルにより算定)
公正な評価単価である1株あたり2,073円は、当社株価等を参考にした、将来株価の予測に基づくオプション価値である一方、公正価値である1個(100株)あたり1,500円は、本有償ストック・オプションに付された行使条件に基づくディスカウントを適用しており、何ら矛盾するものでありません。
また、本有償ストック・オプションの公正価値に適用されているディスカウントは、以下の行使条件に基づくものです。下記①については、条件を達成した場合に、本有償ストック・オプションの権利行使が可能となるため、達成の確度が低いほど、ディスカウントが大きくなり、また、下記②③については、条件に該当した場合、本有償ストック・オプションの権利行使ができなくなるため、条件に該当する可能性が高いほど、ディスカウントが大きくなります。
① 2024年5月期から2029年5月期までの6事業年度のいずれかの期において、当社の経常利益が220億円を超過した場合、本有償ストック・オプションを当該経常利益の水準を最初に充たした期の有価証券報告書の提出日の翌日から行使することができる。
② 2020年5月期以降、経常利益が上記の目標を達成する前に、経常利益が110億円を下回った場合、本有償ストック・オプションを行使することができない。
③ 本有償ストック・オプションの割当日から2024年5月20日までの間に、東京証券取引所における当社株式の普通取引の終値の平均値(当日を含む連続した過去42取引日の平均値)が、一度でも行使価額の70%を下回った場合、それ以降、新株予約権者は未行使の本有償ストック・オプションを行使することができない。
オアシスは、「発行価額は公正価値に対して、99.28%のディスカウントを受けていた」との主張をしておりますが、「公正な評価単価」と「公正価値」を混同している上、行使条件はいずれも「容易に達成可能ないし回避可能」であるとの主張は、もっぱら主観に基づく主張を述べたものであり、何ら根拠がありません。なお、行使条件の達成可能性について、当社として、容易であるとは考えておりません。
有償ストック・オプション発行の必要性 ・そもそも、青木家は一族全体でアオキ株式の27.6%を保有する大株主であり(当時の時価総額の27.6%は約595億円に相当)、経済的にはアオキと一心同体の関係にあることを踏まえると、青木家出身経営陣の経営に対するコミットメントを高めるためにストック・オプション(5,250万円の払込)が本当に必要だったのか疑問がある。
・青木家と比較して株式の保有分が少ない他の取締役は本ストック・オプションのプログラムに参加しておらず、この観点からも会社の説明の妥当性に疑問がある。
・このような会社の説明は本ストック・オプションに「報酬性」が強いことを示す一方で、本件は株主総会において決議されている報酬制度の枠の外で独自に行われており、株主が取締役の報酬をコントロールするべきであるというガバナンス上の観点からも懸念がある。
・第3次中期経営計画の開始を控えていた最中での増収減益は、当社における重大な危機であると捉えておりました。そこで、早期に増収増益へと再び転じるべく、株主をはじめとするステークホルダーの皆様に対して、企業価値を継続的に高めていくとのコミットメントをお示しするため、本有償ストック・オプションの発行を決議したものです。
・本有償ストック・オプションは、対象者への報酬ではなく、企業価値を継続的に高めるためのコミットメントとしての、個別の投資判断に基づく投資であり、報酬性が強いとの主張は、もっぱら主観に基づくものであると考えております。
有償ストック・オプション発行直前の業績予想の下方修正が不自然(株価が下落すれば有償ストック・オプションの評価を下げることが可能になるため、会社は敢えてしなくてもよい業績予想の下方修正をしたのではないかとの疑念) ・クスリのアオキHDは社内ポリシーにおいて業績予想の修正が求められていないにも関わらず業績予想の修正を行った。クスリのアオキHDが業績予想において下げた利益見通しはおおよそ15%程度
・利益のズレが30%以上予見される場合に業績予想の修正を行うというポリシーに当てはまらないにも関わらず、下方修正を実施
・その後、下方修正が後に悲観的過ぎることが判明しても再度の上方修正は行わず
・他の年度でも10%台中盤の業績のズレは多く見られるにも関わらず、それらの年度を含めて、HD体制移行後は業績予想の修正を一度も行っていない。特に直近年度においては第3四半期時点で通期予想を過達しているにも関わらず修正を行わないなど、クスリのアオキHDは修正を機動的に行わない体質であることは明らか。
オアシスは、当社が持株会社体制移行後に当社が業績予想の修正を一度も行っていないことをもって、本業績予想修正が不自然であるとの印象を与えるような主張をしておりますが、持株会社体制移行前の6事業年度(2011年5月期から2016年5月期)のいずれにおいても業績予想の修正を実施しており、オアシスの主張は誤導的なものです。また、かかる点はオアシスにも面談を通じて説明を行っておりましたところ、このような主張がなされたことには驚いております。
あずさ監査法人の退任(有償ストック・オプションの発行との関係の有無) ストック・オプションの発行後にあずさ監査法人(KPMG)からの申し出で、監査人が変更になった。 当社は、2020年7月16日付「会計監査人の異動に関するお知らせ」において開示しております通り、当時の当社会計監査人より、次期以降の監査工数の増加見通しを考慮すると報酬希望額が増加していくこと等を理由に、監査契約を更新しない旨の申し出を受け、同監査法人と上場来監査継続年数が長期にわたることも勘案し、この申し出を了承しております。
創業家による企業資産の私的流用 ・現社長の父親で、創業者の青木桂生氏は、現在1,700平方メートルに及ぶ豪華な住宅に居住していますが、本施設の一部は、過去にアオキが福利厚生施設として買い取っている。当施設の用水の東側部分は青木桂生氏の所有となっている一方で、用水の西側部分は会社所有となっており、本施設は用水をまたいでも繋がっている一体の施設であることが確認されている。現地調査に基づくと、青木桂生氏は本施設に居住しており、会社資産の不適切な私的流用である疑いがある。
・オアシスの調査の限りや近隣住民の認知している限りにおいては、当該施設の会社保有部が会社の保養施設として使用されている実績はない。
オアシス開示資料において言及されている当社所有部分の建物は「臨川書屋」(以下、「書屋」といいます。)といい、旧加賀藩の時代に町年寄を担っていた青木家歴代が、加賀藩主の宿泊・休息に供してきたものであり、当社が1869年に薬種商として創業した場所でもあります。当社による書屋の所有は、株式会社クスリのアオキ第22期有価証券報告書に記載の通り、福利厚生施設としての利用価値に加え、書屋の文化的価値及び当社創業の地を保全することで、当社のステークホルダーである地域社会への貢献という観点からも重要であると考えております。
書屋と本建物はそれぞれ別の入口が設けられているなど、独立した構造となっており、一体としての利用が前提との主張は、単なる憶測に基づくものです。
また、オアシスは、「オアシスは現地調査を通じて、青木桂生氏の居住実態が本施設にあることを確認済み」との主張をしておりますが、青木氏が書屋に居住しているとの事実はありません。前述の通り、書屋は由緒ある文化財であり、そもそも居住する環境として適しておりません。
M&A専門家を社外取締役として登用することの是非 日本初のM&A専門会社である株式会社レコフの創業から参画していた池井良彰氏を社外取締役候補者として株主提案する。 提案株主より推薦を受けた候補者(以下、「株主提案候補者」)につきましては、他の社外取締役候補者と同様に、人事を管掌する管理担当取締役及び管理本部長による面談を実施したうえで、社外取締役も参加する取締役会において慎重に審議・検討いたしました。本株主提案のとおり、株主提案候補者のM&Aにおける経験や識見は当社が実施した面談でも認められましたが、株主提案候補者を当社の社外取締役として迎え、取締役会に対する助言や監督を頂くよりも、M&A仲介会社の代表者として、当社の事業成長に資する潜在案件の紹介等を頂く方が、当社の中長期的な企業価値向上の観点からは望ましいのではないかと考えており、株主提案候補者の経験、識見、実績及び当社事業に対する理解を踏まえても、株主提案候補者を取締役に選任する必要はないと判断いたしました。
株主との対話の拒絶 オアシスは、2022年11月より代表取締役社長の青木宏憲氏との面談を複数回に亘って要請してきた。度重なる要請にも関わらず、オアシスの継続的な要請は全て断られた。
・社長との面談を依頼してから8か月経過して初めて社内取締役と面談できた。なお、青木宏憲社長及び社外取締役は未だ面談に一度も応じず。
オアシスとの面談は、当社IR方針(当社コーポレートガバナンス・コード【原則 5.1. 株主との建設的な対話に関する方針】に記載)に則り実施したものです。また、当社IR方針については、面談の調整に際して、オアシスに説明を行っております。 なお、当社は、オアシスからの面談要請等、IRの状況について、当社取締役会に適宜報告を行っております。

有償ストック・オプション : 役職員が金銭を払い込むことで付与されるストックオプションのこと。金銭の代わりに、役職員が会社に対して持つ報酬債権が用いられることもある。

いざ蓋を開けてみると、いずれの会社の株主総会でも会社提案議案が圧倒的多数で可決され、オアシスの株主提案議案は取締役選任議案がすべて20%台に留まるなど低調な結果となった。クスリのアオキHDの取締役会の見解を読む限り、有償ストック・オプションの発行の必要性(なぜいまさら創業家の2人の取締役にだけ有償ストック・オプションに「投資」させるのか)について会社側の説明は十分とは言い難いにもかかわらず、株主全体としてはオアシスよりも現経営陣を支持する層の方が多かったことになる。なお、ツルハHDでは、13.59%の株式を保有するイオンが会社側についたことの影響も大きい。

もっとも、オアシスの狙いは、冒頭でも述べたとおりマツキヨココカラ&カンパニーの成功事例(マツモトキヨシグループとココカラファイングループの経営統合)の再現にある。それは、オアシスがクスリのアオキHDの社外取締役候補者としてM&Aの専門家を株主提案していたことからも明らかだ。そもそもドラッグストア業界自体がM&Aによる規模・業容拡大に積極的な業界であり、更なるM&Aを期待している投資家も少なくない。それにもかかわらず、M&Aを加速させるはずのオアシスの株主提案は賛成票を集めることができなかった。その理由として、今回のオアシスの投資家向けプレゼンテーション(ツルハHD向けはこちら、クスリのアオキHD向けはこちら)は、東京ドームへの業務改善計画案(オアシスによる東京ドームへの業務改善計画案については2020年10月28日のニュース「アクティビストの業務改善提案への対応が遅れ社長の解任請求へ」を参照)と比べると、調査が不十分なまま印象操作()に頼っており、迫力に欠ける箇所も少なくないことが挙げられる。ツルハHDによる新任役員候補者面談でもオアシス提案の候補者がドラッグストア業界への知識のなさを露呈してしまうなど準備不足が目立った。

とはいえ、会社側にも論点をずらした回答やオアシスに簡単に反駁されてしまう回答が散見され、いわば“印象操作対決”となった(ツルハHDに対するオアシスの反駁はこちら、それに対するツルハHD取締役の見解はこちら。クスリのアオキHDに対するオアシスの反駁は見当たらず)。

例えば、オアシスはクスリのアオキHDの投資家向けプレゼンテーションの14ページにおいて、「ストック・オプションの発行後にあずさ監査法人(KPMG)からの申し出で、監査人が変更」という見出しを設け、あずさ監査法人の退任と有償ストック・オプションの発行に因果関係があるかのように見せているが、単に日付が近接しているだけで、具体的なエビデンスは何も示せていない。

オアシスはドラッグストア業界とは別に北越コーポレーションの株式も3.33%取得し、株主提案を行うも否決されるという憂き目にあっている(2023年6月8日のニュース「アクティビストに狙われた北越コーポレーションの株主総会の行方」を参照)。翻って考えてみると、フジテックでは会社側の悪手が重なりオアシスの印象操作が成功しただけとも言える。仮にアクティビストに株式を買い占められても、会社が落ち着いて対応(対話や反論)すれば、アクティビストも動きにくくなる。フジテックの一例だけをもって、「アクティビストの時代到来」というにはまだ早いと言えそうだ。

2023/08/25 管理職の多様性についてあえて数値目標を定めないという選択も

周知のとおり、2023年3月期の有価証券報告書(以下、有報)から人的資本に関する開示(以下、人的資本開示)が求められている。・・・

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2023/08/25 管理職の多様性についてあえて数値目標を定めないという選択も(会員限定)

周知のとおり、2023年3月期の有価証券報告書(以下、有報)から人的資本に関する開示(以下、人的資本開示)が求められている。具体的には、有報の【従業員の状況】において、有報提出会社やその連結子会社が女性活躍推進法等に基づき公表している「女性管理職比率」「男性の育児休業取得率」「男女間賃金格差」を、【サステナビリティに関する考え方及び取組】において、人材の多様性の確保を含む人材育成の方針や社内環境整備の方針並びに当該方針に関する指標の内容、当該指標の目標及び実績を開示する必要がある。

人的資本開示の義務化は、“無形資産”としての人材の価値が資本市場で適切に評価されるようにすることを狙いとしているが、少なくとも2023年3月期の有報では十分な人的資本開示が行われたとは言い難い。当フォーラムがTOPIX100を構成する3月決算会社81社の2023年3月期の有報中、【サステナビリティに関する考え方及び取組】の「指標及び目標」においてどのような人的資本に関する指標がKPIとされているかを調査したところ、下表のとおりの結果だった。

(注)原則として定量的に目標が定められているもののみを抽出。
主なKPI 会社数(81社に占める割合)
女性管理職比率 51(63%)
男性の育休取得率 25(30%)
エンゲージメントに関する指標 18(22%)
新卒採用女性比率/女性採用比率 13(16%)
障害者雇用率 11(13%)
デジタル・AIプロ人材の採用人数 10(12%)
女性取締役比率/女性役員比率 8(9%)
有給取得率 8(9%)
研修受講者数/受講率 8(9%)
社員の女性比率/正社員の女性比率 6(7%)

上表から分かるとおり、そもそも人的資本に関するKPIを開示していない会社も少なくない。例えば、【従業員の状況】で開示される「女性管理職比率」「男性の育児休業取得率」「男女間賃金格差」についてKPIを掲げていない会社は、それぞれ30社(37%)、56社(69%)、80社(99%)に上る。さらには、人的資本に関するKPIを1つも掲げていない会社も12社(15%)あった。

もっとも、何をKPIとするかは自社の将来の企業価値に結びつくため、各社独自の考え方が許容されてしかるべきだろう。例えば住友不動産は、上記調査結果のとおり多くの会社が女性管理職比率をはじめとする「女性」に関する指標をKPIに掲げているにもかかわらず、「数値目標を定めること」の弊害に触れつつ、女性を含む管理職の多様性についてはあえて目標設定しない方針を打ち出している。

住友不動産(株) 2023年3月期有価証券報告書より抜粋
管理職の多様性は、上記のような公正な採用方針、公正な制度、公正な登用の結果として自ずと確保されていくべきものと考えております。管理職の多様性について数値目標を定めることは、却って、管理職登用における機会均等を歪め、職員全体のモラールを下げてしまう懸念があると考えているため、かかる数値目標は定めない方針です。

一方で、自社が将来目指す方向を明らかにし、現状では何が足りないのか、そのためにどのような人材が必要なのか等を明確にすれば、自ずと人的資本に関するKPIも定まってくるはず、と考える投資家も少なくない。こうした中、人的資本に関するKPIを掲げておらず、さらに中長期計画等にも組み込んでいないとなれば、「人的資本経営が行われていない」と投資家に判断されるリスクもあろう。住友不動産が打ち出した方針にも一定の説得力はあるが、人的資本経営に対する投資家の関心が高まる中、KPIの設定(あるいは設定しないという判断)にあたっては、投資家との対話を踏まえる必要があろう。


人的資本経営 : 人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上に繋げる経営

2023/08/24 【失敗学第110回】タムロンの事例(会員限定)

概要

カメラレンズメーカーのタムロン(東証プライム)で、代表取締役社長が出張に第三者女性を同伴させ、会社経費を私的に流用していたことが内部通報で発覚し、代表取締役社長は辞任に追い込まれた。

経緯

タムロンが2023年8月22日に公表した「特別調査委員会の設置に関するお知らせ」等によると、一連の経緯は次のとおり。

2023年
7月9日:タムロンが運営する内部通報制度の外部窓口宛に、同社の代表取締役社長(当時)である鯵坂司郎氏が、出張に第三者女性を同伴させ、同社の経費を私的に流用した旨の内部通報があった。それを契機として、同社の監査役および社外取締役において当該事実に関する調査が開始された。
8月22日:タムロンの取締役会において、同社から独立した中立かつ公正な外部専門家および同社独立社外取締役で構成される特別調査委員会を設置し、本件事案に関する徹底した事実調査を実施することを決議した(タムロンのリリース「特別調査委員会の設置に関するお知らせ」はこちら)。また、鯵坂司郎氏から同日付で取締役および代表取締役を辞任する申し出があったため、同社はこれを受理し、取締役副社長である桜庭省吾氏を代表取締役社長に選任する旨の決議を行った(タムロンのリリース「代表取締役および取締役の異動(辞任)に関するお知らせ」はこちら)。さらに、本件事案に関する支出管理を行っていた元常務取締役の(不作為を含む)関与が疑われたことから、常務取締役の地位を解職し平の取締役にするとともに、経営戦略本部、管理本部、CSRおよび情報マネジメント担当から外す決議をした(タムロンのリリース「役付取締役の異動及び役員の担当変更のお知らせ」はこちら)。

内容・原因・当面の対応

タムロンが2023年8月22日に公表した「特別調査委員会の設置に関するお知らせ」によると、特別調査委員会が設置された理由や当面の対応は次のとおりとされている。

会社経費の不正支出
内容 ・鯵坂氏は、出張に第三者女性を同伴させ、その費用をタムロンに負担させていた(内部通報で発覚)。
・鯵坂氏は少なくとも過去5年間、月に複数回にわたり上記の第三者女性が関与する特定の飲食店において飲食し、当該費用を当社に負担させていた(監査役および社外取締役による調査結果で判明)。
原因 (機会)
鯵坂氏の経費支出を管理していた常務取締役(当時)が(不作為を含む)関与をしており、内部牽制が働かなかった。
当面の対応 ・特別調査委員会に徹底的な調査を行わせる。
・鯵坂司郎氏は取締役および代表取締役を辞任。
・鯵坂氏の経費支出を管理していた常務取締役は常務取締役の地位を解職し(平取締役に降格)、経営戦略本部、管理本部、CSRおよび情報マネジメント担当から外す。
<この事例から学ぶべきこと>

上場会社の現役社長が飲食店の女性に入れあげて会社経費を注ぎ込み、さらに出張にも同伴させていたという、「いったいいつの時代の話?」という不祥事が発覚しました。ただ、不正発覚の契機となったのがマスコミ報道ではなく内部通報であったという点にかろうじて救いを見出すことができます。少なくとも心ある通報者が存在していることが分かりますし、そういった通報者の存在は不祥事後の規律強化につながるからです。

タムロンでは監査役と社外取締役が協働して代表取締役社長を辞任させるに至りましたが、代表取締役社長を辞任させるには(社内取締役を巻き込むには)相当のエネルギーを必要としたはずです。不祥事の内容からして、代表取締役の解任(代表権を取り上げる。なお、取締役を解任することは取締役会ではできず、株主総会の権限となる)も相当の案件ですが、今後の調査への協力要請と引き換えに辞任(自ら辞める)という道を選ばせたのかもしれません。

タムロンのコーポレートサイトの社長名や写真が辞任発表後しばらくは鯵坂社長のままであり、調査が秘密裏に進んでいたこと、辞任発表により社内が相当混乱していたことがうかがえます(辞任の翌日の8月23日になってようやくサイトが更新されました)。辞任のリリースとともにサイトへのアクセスが集中することを考えると、コーポレートサイトもリリースと同時に更新しておきたいところですが、リリース前に情報が洩れるリスクもあり、実務的には同時更新は難しいところです。

2022年12月期の同社の有価証券報告書によると、鯵坂社長の役員報酬は1億26百万円でした。それだけの高額報酬を得ても、飲食店の女性との交際は会社の経費で落とし、管理本部管掌の常務取締役もそれを黙認するというのでは、従業員はさぞ勤労意欲が失われたことでしょう(参考までに2022年12月期の同社の有価証券報告書によると同社従業員の平均年間給与は751万円です)。鯵坂社長は退任時に株式報酬を受け取る権利を有するとのことですから、それが辞任時にどのように扱われたのかが気になるところです。今後、特別調査委員会の調査が進むにつれ、別の不祥事も飛び出すリスクもありえます。株式市場は警戒し、タムロンの株価は翌日23日には3.33%下落しました(36億円の時価の喪失)。

本件については、今後、特別調査委員会による調査報告書が公表された段階で続報を行うことにします。

2023/08/23 税制適格ストックオプションの「付与決議」とは?

既報のとおり、国税庁は2023年5月30日付で「ストックオプションに対する課税(Q&A)」(以下、Q&A)を公表したところ(2023年5月30日のニュース「時価発行新株予約権信託を巡る懸念が現実のものに」参照)。このQ&Aにおいて・・・

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2023/08/23 税制適格ストックオプションの「付与決議」とは?(会員限定)

既報のとおり、国税庁は2023年5月30日付で「ストックオプションに対する課税(Q&A)」(以下、Q&A)を公表したところ(2023年5月30日のニュース「時価発行新株予約権信託を巡る懸念が現実のものに」参照)。このQ&Aにおいて最も注目を集めたのは、当フォーラムが早くから警鐘を鳴らしていたように(2023年2月13日のニュース「時価発行新株予約権信託を巡る新たな見解」、2023年2月21日のニュース「続報・時価発行新株予約権信託の行方」参照)、「信託型ストックオプション(時価発行新株予約権信託)は権利行使の時点で給与所得課税対象になる」ことを明らかにした問3の(答)の④だが、これとは別に企業の間で懸念が広がっているのが、税制適格ストックオプションの課税関係について解説した問6の(答)の②の(注)にある「付与決議の日とは、新株予約権の割当に関する決議の日をいいます。」との記述だ。


税制適格ストックオプション : 税法が求める要件を満たすことで、権利行使によって株式を購入した時点で生じている含み益(株式の購入価格-ストックオプションの発行費用)への課税が、実際に株式を売却する時点まで繰り延べられる(=株式を購入した時点で課税されない)ストックオプションのこと。具体的な要件としては、無償発行、権利行使期間が「株主総会での発行決議の2年後~10年後までの最大8年間」、行使価格が発行時の時価以上、権利行使金額が「年間1,200万円まで」などがある。

旧商法時代、新株引受権の発行時には、新株引受権の発行要項(現在の会社法で言うところの募集事項)決定決議と割当決議をセットで一度に決議することになっていたが、商法が会社法となったことに伴い募集事項決定決議と割当決議が分離され、現行会社法では、募集事項決定決議では割当者を定めないことになっている。

しかし、上記Q&A問6の「付与決議の日とは、新株予約権の割当に関する決議の日をいいます。」との記述を見る限り、国税当局は、付与決議とは旧商法時代の「具体的に新株予約権(旧商法では新株引受権)を割り当てる対象者を決定する決議」と認識していると推察される。すなわち、いまだに旧商法時代の新株引受権に関する規定を念頭に置いているということだ。

税制適格ストックオプションについて規定している租税特別措置法29条の2の条文を見ると、「付与決議」とは「募集事項決定決議」(会社法238条第2項の決議、会社法第239条1項の決議による委任に基づく同項に規定する募集事項の決定、会社法第240条第1項の規定による取締役会の決議)となっている。仮に「付与決議=割当決議」と解釈するのであれば、租税特別措置法29条の2の中に「会社法243条(募集新株予約権の割当て)2項」という条文が出きてしかるべきだが、一切見当たらない。要するに、租税特別措置法29条の2は、会社法施行後も旧商法時代のままとなっているということだ。

当フォーラムの取材によると、これまでに新株予約券の発行手続きを行った上場企業の中には、現行租税特別措置法29条の2に則り、「付与決議=募集事項決定決議」として割当契約書を作成したケースが少なからず存在する模様。仮に国税当局がQ&Aのとおり「付与決議=割当決議」という解釈を貫き通した場合、「付与決議=募集事項決定決議」との解釈を前提として設計された新株予約権(ストックオプション)は「税制非適格」ということにもなりかねない。こうした中、企業からは、Q&Aの記述を租税特別措置法の規定に対応する形で修正することを望む声が上がっている。

2023/08/22 【新任役員向けトレーニングプログラム】社外役員・独立役員の職務内容と責任 の更新

下記の【新任役員向けトレーニングプログラム】につき、法令等の改正や実務動向の変化に対応するため、講義内容(動画およびレジュメの双方)を更新いたしました。本動画は新任役員向けトレーニングプログラムの受講の契約をされている方のみが閲覧可能です。

概略

本講義では、社外取締役に求められる機能、特に「監督機能」の具体的な内容、社外監査役に期待される役割・機能、社外役員に関する開示義務、(独立)社外取締役・監査役の善管注意義務や責任について解説します。

【講師】TMI総合法律事務所 和藤 誠治 弁護士
【講義時間】20分17秒
【目次】
Ⅰ 社外役員・独立役員の概念
 1 定義
 2 社外役員の要件
 3 独立役員の要件
Ⅱ 社外役員・独立役員の職務・役割
 1 社外取締役の職務
 2 社外取締役の役割
 3 独立社外取締役の職務・役割
 4 社外監査役・独立社外監査役の職務・役割
Ⅲ 社外役員・独立役員の責任

講義資料 社外役員・独立役員の職務内容と責任.pdf
講義

社外役員・独立役員の職務内容と責任
newseminar17585

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