2023/06/23 従業員は執行役の代わりに取締役会で「報告者」になれる?

指名委員会等設置会社では、業務の執行は執行役に委譲されており、執行役は取締役会の構成員ではないが、会社法では、執行役に取締役会に対する一定の報告義務を課している。1つは“定期報告”であり、具体的には「3か月に1回以上」、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならないとされている(会社法第417条4項)。もう1つは取締役会の要求があった場合の報告であり、この場合、執行役は取締役会に出席し、取締役会が求めた事項について説明をしなければならないこととされている(同5項)。

このうち5項の趣旨は、取締役会の構成員ではない執行役は当然に取締役会に出席して取締役の質問に対して説明する義務を負うわけではないため、執行役に対する取締役会の監督機能の実効性を高める方策の一つとして、取締役会の要求に応じて執行役に出席を義務付けようということにあるが、業務に関する決定権は執行役にあるとはいえ、実質的に業務を実行するのは従業員であり、従業員の方が内容を理解しているというケースも少なくないだろう。実際、定期報告は執行役が行っているものの、取締役会の要求があった場合の報告においては従業員を報告者にしたいと考える会社もある。ただ、この場合に懸念されるのが会社法への抵触だ。

結論から言うと、まず執行役が取締役会から「取締役会への出席と説明を要求された場合」(会社法417条5項)には、当該執行役自身が説明者となる必要があり、従業員はその執行役の代理人として説明者にはなることはできない。もっとも、・・・

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2023/06/23 従業員は執行役の代わりに取締役会で「報告者」になれる?(会員限定)

指名委員会等設置会社では、業務の執行は執行役に委譲されており、執行役は取締役会の構成員ではないが、会社法では、執行役に取締役会に対する一定の報告義務を課している。1つは“定期報告”であり、具体的には「3か月に1回以上」、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならないとされている(会社法第417条4項)。もう1つは取締役会の要求があった場合の報告であり、この場合、執行役は取締役会に出席し、取締役会が求めた事項について説明をしなければならないこととされている(同5項)。

このうち5項の趣旨は、取締役会の構成員ではない執行役は当然に取締役会に出席して取締役の質問に対して説明する義務を負うわけではないため、執行役に対する取締役会の監督機能の実効性を高める方策の一つとして、取締役会の要求に応じて執行役に出席を義務付けようということにあるが、業務に関する決定権は執行役にあるとはいえ、実質的に業務を実行するのは従業員であり、従業員の方が内容を理解しているというケースも少なくないだろう。実際、定期報告は執行役が行っているものの、取締役会の要求があった場合の報告においては従業員を報告者にしたいと考える会社もある。ただ、この場合に懸念されるのが会社法への抵触だ。

結論から言うと、まず執行役が取締役会から「取締役会への出席と説明を要求された場合」(会社法417条5項)には、当該執行役自身が説明者となる必要があり、従業員はその執行役の代理人として説明者にはなることはできない。もっとも、取締役会の同意を得て従業員が取締役会に出席し、執行役が当該従業員に説明させること自体は問題ない。ただし、この場合も当該従業員は執行役の代理人として説明をするわけではないため、法的にはあくまで執行役が説明したことになる。

なお、執行役による取締役会への「定期報告」(会社法417条4項)の場合には、執行役は「他の執行役」を代理人として業務報告をすることができる。これは、業務執行取締役には取締役会出席義務があるが、執行役には一般的な取締役会への出席義務がないため、執行役を統括する執行役(代表執行役)がまとめて報告する方が効率的であるとともに、執行役の円滑な業務執行にも資すると考えられるからだ。ただし、ここでいう「代理人」には「(他の執行役に限る)」というカッコ書きが付されているため、従業員等を代理人にすることはできない点、留意したい。

2023/06/22 ROAの悪化は確実 上場企業の役員が押さえておきたい「新リース会計基準」が経営に与える影響

2023年5月、企業会計基準委員会(ASBJ)はついに「リースに関する会計基準(案)」(以下、リース会計基準案)の公表したところだ。現在の日本の会計基準では、名目上は同じリースでも「ファイナンス・リース」(借入れによる物の購入とみなされるリース)と、「物を借りて賃借料を払う」という本来のリースである「オペレーティング・リース」では会計処理が異なる。具体的には、ファイナンス・リースではリース資産をB/S上の「資産」に計上するとともに、リース債務(未経過リース料)をB/S上の「負債」にそれぞれ計上することが求められる(バランスシートに計上するという意味でこれらを「オンバランス」という)のに対し、オペレーティング・リースは、毎期の支払いリース料を費用計上するだけで済み、B/Sには何も計上しなくてもよい(=オフバランス)。オフバランスであれば、ROAの分母が小さくなり、さらに負債も計上しなくてよいといったメリットがあるため、ファイナンス・リースの要件を上手く外したオペレーティング・リースを利用している企業も少なくないものと思われる。

ファイナンス・リース : 「支払いリース料総額の現在価値が、見積もり現金購入価額の90%以上」または「リース期間が耐用年数の75%以上」で中途解約もできないリースを指す。
ROA : Return On Assets = 総資本利益率。「利益/総資産」により計算される。ROAは利益を総資産で除して求めるため、分母である総資産の増加はROAの低下をもたらす。なお、実務上は、ROEの利益には「当期純利益」を使うことが多い。これは、株主資本に対応するのは、株主資本に帰属する当期純利益であるとの考え方による。
PBR : Price Book-value Ratio=株価純資産倍率(株価 ÷1株当たり株主資本)。株価が1株当たり純資産(BPS:Book value Per Share)の何倍まで買われているか(=1株当たり純資産の何倍の値段が付いているか)を指す。PBRが1.0を大幅に下回る場合、投資家が企業の将来性に疑問を持っていたり、減損リスクのように潜在的な資産の含み損が多額にのぼる可能性が株価に織り込まれていたりすることを示唆する。

しかし、世界に目を向けると、2016年1月には国際会計基準審議会(IASB)が国際財務報告基準第16号「リース」(以下、IFRS第16号)を公表、同年2月には米国財務会計基準審議会(FASB)がTopic842「リ「ース」(以下、Topic 842)を公表し、いずれにおいても、オペレーティング・リースを含むすべてのリースは「資産および負債」に計上することが求められている。日本の会計基準との比較では、特に「負債」の認識の違いを問題視する声が大きい。こうした中、日本の会計基準もようやく国際的なルールとの整合を図ったことになる。

新リース会計基準案は、IFRS第16号と同様に、ファイナンス・リースであるかオペレーティング・リースであるかにかかわらず、すべてのリースを原則として資産計上するというシンプルなルールとなっている。小売業や物流業(倉庫)など多数の不動産リース契約を行っている企業はもちろんのこと、オフィスビルを借りている企業は業種を問わず、現行のリース会計基準でオペレーティング・リースとして賃借処理してきたものを今後は資産(使用権資産)として計上(負債としてリース負債も計上)しなければならなくなるため、少なからず影響を受けることが予想される。

使用権資産 : 新リース会計基準では、現行の「リース資産」は「使用権資産」となる。「使用権資産」とは、借手が原資産(リースの対象となる資産)をリース期間にわたり使用する権利を表す資産のことをいう。
リース負債 : 新リース会計基準では、科目名が「リース債務」ではなく「リース負債」となる。

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(1) 財政状態に与える影響   ※数値はイメージ(以下同)
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2023/06/22 ROAの悪化は確実 上場企業の役員が押さえておきたい「新リース会計基準」が経営に与える影響(会員限定)

2023年5月、企業会計基準委員会(ASBJ)はついに「リースに関する会計基準(案)」(以下、リース会計基準案)の公表したところだ。現在の日本の会計基準では、名目上は同じリースでも「ファイナンス・リース」(借入れによる物の購入とみなされるリース)と、「物を借りて賃借料を払う」という本来のリースである「オペレーティング・リース」では会計処理が異なる。具体的には、ファイナンス・リースではリース資産をB/S上の「資産」に計上するとともに、リース債務(未経過リース料)をB/S上の「負債」にそれぞれ計上することが求められる(バランスシートに計上するという意味でこれらを「オンバランス」という)のに対し、オペレーティング・リースは、毎期の支払いリース料を費用計上するだけで済み、B/Sには何も計上しなくてもよい(=オフバランス)。オフバランスであれば、ROAの分母が小さくなり、さらに負債も計上しなくてよいといったメリットがあるため、ファイナンス・リースの要件を上手く外したオペレーティング・リースを利用している企業も少なくないものと思われる。

ファイナンス・リース : 「支払いリース料総額の現在価値が、見積もり現金購入価額の90%以上」または「リース期間が耐用年数の75%以上」で中途解約もできないリースを指す。
ROA : Return On Assets = 総資本利益率。「利益/総資産」により計算される。ROAは利益を総資産で除して求めるため、分母である総資産の増加はROAの低下をもたらす。

しかし、世界に目を向けると、2016年1月には国際会計基準審議会(IASB)が国際財務報告基準第16号「リース」(以下、IFRS第16号)を公表、同年2月には米国財務会計基準審議会(FASB)がTopic842「リ「ース」(以下、Topic 842)を公表し、いずれにおいても、オペレーティング・リースを含むすべてのリースは「資産および負債」に計上することが求められている。日本の会計基準との比較では、特に「負債」の認識の違いを問題視する声が大きい。こうした中、日本の会計基準もようやく国際的なルールとの整合を図ったことになる。

新リース会計基準案は、IFRS第16号と同様に、ファイナンス・リースであるかオペレーティング・リースであるかにかかわらず、すべてのリースを原則として資産計上するというシンプルなルールとなっている。小売業や物流業(倉庫)など多数の不動産リース契約を行っている企業はもちろんのこと、オフィスビルを借りている企業は業種を問わず、現行のリース会計基準でオペレーティング・リースとして賃借処理してきたものを今後は資産(使用権資産)として計上(負債としてリース負債も計上)しなければならなくなるため、少なからず影響を受けることが予想される。

使用権資産 : 新リース会計基準では、現行の「リース資産」は「使用権資産」となる。「使用権資産」とは、借手が原資産(リースの対象となる資産)をリース期間にわたり使用する権利を表す資産のことをいう。
リース負債 : 新リース会計基準では、科目名が「リース債務」ではなく「リース負債」となる。

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(1) 財政状態に与える影響   ※数値はイメージ(以下同)
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①総資産、総負債の増大
現行基準ではオフバランスとなっているオペレーティング・リースの大半について「使用権資産」「リース負債」を認識することが要求されるため、総資産、総負債が増大することになる。この結果、ROAをKPIとしている企業には大きな影響が出る可能性がある。

②資本の圧迫
使用権資産の減価償却方法は定額法、リース負債の支払利息は原則的な利息法という会計処理を採用した場合、使用権資産は定額で減価する一方、リース負債は当初の支払利息の負担が大きいため、リース負債の減少は使用権資産の減価より少なくなり、「使用権資産<リース負債」となる。この結果、少なくともリース期間当初は「資産<負債」となり、資本(利益剰余金)が圧迫される。

利息法 : 各期のリース債務の未返済元本残高に一定の利率(リース料総額の現在価値が、リース取引開始日におけるリース資産(リース債務)の計上価額と等しくなる利率)を乗じて、支払利息相当額を算定する方法。

(2)経営成績に与える影響
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①リース当初は費用負担額が増加
(前提:使用権資産の減価償却は定額法、リース負債の支払利息を原則的な利息法により計上)
現行基準では、オペレーティング・リースの賃借料は毎月定額計上するが、新リース会計基準では、賃借料こそ大きく減少するものの、使用権資産減価償却費およびリース負債支払利息が発生する。そして、使用権資産の減価償却は定額であり、リース負債支払利息はリース契約当初は多く発生するがリース期間を通じて逓減していくことになる。この結果、オペレーティング・リースとして会計処理してる現行基準と比べて、リース契約当初は費用負担額が多くなる。

②営業損益が改善
現行基準では営業費用とされていた賃借料に相当する金額の一部が、新リース会計基準ではリース負債支払利息として「営業外費用」に計上されることにため、営業利益が改善する。

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(3)キャッシュ・フローに与える影響
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〇営業活動CFが改善、財務活動CFが悪化
新リース会計基準のもとでは、現行基準では営業活動によるキャッシュ・フローとされているオペレーティング・リースの支払額(賃借料)が、基本的に財務活動によるキャッシュ・フローのリース負債の返済額に置き換わることとなり、営業活動によるキャッシュ・フローが改善する。その一方で、財務活動によるキャッシュ・フローは悪化する。

まとめ
新リース会計基準の適用予定は公表から2年程度経過した4月1日開始事業年度とされている。2023年度中に公表された場合は、2026年4月1日開始事業年度からの適用が予想されるが(ただし、早期適用可能)、連結財務諸表だけではなく、個別財務諸表にも適用されるため、両財務諸表に与える影響を早めにシミュレーションすることが中期計画の策定にあたっては重要になる。

また、各財務諸表に与える影響だけではなく、採用するKPIや、業績連動役員報酬の算定指標に与える影響なども把握しておく必要がある。

なお、財政状態、経営成績、キャッシュ・フローに与える影響については、重要性が乏しい場合には簡便的な会計処理が認められるケースもあるため、各社が採用する会計方針に従って判定されたい。

2023/06/21 フジテック株主総会、怒声が飛び交う長丁場に 元会長側の株主提案はすべて否決

香港のアクティビストのオアシスと創業家の元会長が主導権を巡って対立しているフジテック(東証プライム市場上場)で2023年6月21日に定時株主総会が開催され、会社提案の議案はすべて可決される一方、内山元会長が提出した株主提案はすべて否決される結果となった(一連の経緯は2022年7月1日のニュース「創業家社長、アクティビストへの対応が後手に回り社長の座を失う」、2022年12月8日のニュース『オアシスがフジテックに総会招集を請求 「責務を果たさない」社外取全員の解任を目指す』、2023年6月5日のニュース「フジテックで元会長が反転攻勢、オアシス側が守りに」を参照)。「アクティビスト VS 創業家」という分かりやすい対立構造と、アクティビスト側が主導権を握ったことで大きな注目を集める総会となったが、2023年2月の臨時株主総会に続き、オアシス側の“連勝”となった。

午前10時にスタートした定時株主総会は、総会検査役が見守る中、攻める元会長側と守るオアシス側のせめぎあいが続き、時に怒声が飛び交う長丁場となった。今回の株主総会では主に内山会長側から多数の質問が出されたが、それらの質問は大きく以下の2つの論点に集約できる。・・・

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2023/06/21 フジテック株主総会、怒声が飛び交う長丁場に 元会長側の株主提案はすべて否決(会員限定)

香港のアクティビストのオアシスと創業家の元会長が主導権を巡って対立しているフジテック(東証プライム市場上場)で2023年6月21日に定時株主総会が開催され、会社提案の議案はすべて可決される一方、内山元会長が提出した株主提案はすべて否決される結果となった(一連の経緯は2022年7月1日のニュース「創業家社長、アクティビストへの対応が後手に回り社長の座を失う」、2022年12月8日のニュース『オアシスがフジテックに総会招集を請求 「責務を果たさない」社外取全員の解任を目指す』、2023年6月5日のニュース「フジテックで元会長が反転攻勢、オアシス側が守りに」を参照)。「アクティビスト VS 創業家」という分かりやすい対立構造と、アクティビスト側が主導権を握ったことで大きな注目を集める総会となったが、2023年2月の臨時株主総会に続き、オアシス側の“連勝”となった。

午前10時にスタートした定時株主総会は、総会検査役が見守る中、攻める元会長側と守るオアシス側のせめぎあいが続き、時に怒声が飛び交う長丁場となった。今回の株主総会では主に内山会長側から多数の質問が出されたが、それらの質問は大きく以下の2つの論点に集約できる。

総会検査役 : 公正中立の立場で株主総会の招集の手続および決議の方法を調査する役目を担う会社法上の機関。総会検査役は、会社および総株主の議決権の1%以上の議決権を有する株主が、株主総会に先立ち、裁判所に選任を申し立てることにより選任される(会社法306条1項)。株主提案や委任状勧誘が行われている株主総会では、後日、株主総会決議取消訴訟や決議不存在確認訴訟等が提起され、決議の有効性が争われることがある。総会検査役を選任するのは、こうした事態に備えるためである。

・会社がオアシス(セス・フィッシャー氏)に乗っ取られていいのか
・三品社外取締役のスタンス替え

オアシスはファンド投資を行っている以上、ファンドへの投資家からリターンを求められている。そのリターンを実現するために、仮にフジテックがオアシスの意向に沿った短期的視野に基づいた施策(事業の切り売りや極端な配当増額など)を行うのであれば、もはやフジテックの長期的な企業成長は期待できない。株主総会の場では内山会長側の株主から、オアシスを「ハゲタカファンド」「反市場勢力」と強く非難する声が相次いだ。

三品社外取締役はオアシスが登場する前はもともと会社(内山社長当時)側から選任議案に名を連ねていた社外取締役である。2023年2月24日に開催されたフジテックの臨時株主総会直後の同社取締役会で、取締役総数9名中、オアシスの提案により選任された(社外)取締役は4名に過ぎなかったにもかかわらずオアシスが主導権を握ることができたのは、かろうじて退任を免れた三品社外取締役がオアシス側に付くことで、オアシス側が過半数を握ったからだ(その経緯については2023年3月30日のニュース「総数9名の取締役会で4名のアクティビスト派が多数決を制した背景」を参照)。内山元会長側としては「三品社外取締役が寝返った」との思いから、「一番悪いのはオアシス代表のセス・フィッシャー、二番目は三品社外取締役」と糾弾した。具体的には「三品社外取締役の投票行動の変化」をやり玉にあげ、「会長選定決議の際に反対しなかった三品社外取締役が、オアシスの株主提案が通った直後の2023年3月の内山会長追い出しに賛成した理由は何か」「2022年3月期の定時株主総会では譲渡制限付株式報酬(RSU)を受け取らないと言っていた三品社外取締役が、今年に入ってから急に受け取ることになったのはなぜか」「2023年2月の臨時株主総会前には、三品社外取締役はオアシスの提案してきた社外取締役は適任ではないとの判断を下しておきながら、今回の定時株主総会では手のひらを返したかのように適任と判断したのはなぜか」と様々な切り口で三品社外取締役に回答を迫る展開が続いた。最初は「私から回答する」「誰が回答者として適任かは議長である私が決める」としていた岡田議長も、株主からの執拗な質問に加えて会場内の他の株主からも「三品さん、逃げるな」との声が何度も上がったことで、ついには庇(かば)い切れなくなり、株主総会の途中から三品社外取締役が直接質問に回答することになった。「あなたは社外取締役の職責を果たしていない」と迫る株主に対し三品社外取締役は、「2022年6月の株主総会直後の取締役会で内山氏を会長に選定した時に取締役会が当初出してきた議案は、内山氏を『執行役員本部長である会長』にするというものであった。それに対して、1時間前に株主総会で選任されたばかりの取締役であった私は反対し、『執行役員』も『本部長』も認めなかった。結局「せめて会長だけでも」と執行側が懇願するので、やむなく『会長』には賛成した。今から思えば、妥協して賛成すべきではなかった。」と当時の内幕を暴露する場面もあった。

RSU : 譲渡制限付株式報酬(リストリクテッド・ストック)には、株式交付のタイミングによって、事前交付型と事後交付型に分けられる。「事前交付型」とは、取締役等の報酬対象勤務期間の開始後、速やかに取締役等に株式の発行(or自己株式の交付)を行い(この時が会社法上の「割当日」に該当)、取締役等と会社の契約において、当該株式に譲渡制限を付しておき、権利確定条件(例えば「3年間勤務する」「3年後に株価を倍増させる」など)が達成された場合に譲渡制限が解除され(すなわち、取締役等は当該株式を売却して換金できる)、権利確定条件が達成されない場合には企業が無償で株式を取得(没収)する仕組み。一方、「事後交付型」とは、取締役等と会社の契約において、株式の発行等について権利確定条件が付されており、権利確定条件が達成された場合に株式の発行等が行われる仕組みであり、RSU(リストリクテッド・ストック・ユニット)は「事後交付型」に該当する。

内山会長の意を酌んだ弁護士(株主代理人)や取引先株主などからの質問は終わる気配がなかったが、議長は打ち切りを宣言して決議に持ち込み、冒頭で述べたとおりオアシス側が完勝し、2時間40分以上かかった株主総会は幕を閉じた。

アクティビストの活動はここ2~3年で急激に目立つようになってきたが、多くの会社にとっては未だに“他人事”であるのが現状だ。今後、アクティビストが日本の資本市場でも受け入れられるようになるかは、オアシスの息が掛かった経営陣によりフジテックがどのように長期的経営を実現し企業価値を高めていけるかにかかっていると言っても過言ではないだろう。

総会中、内山会長側の株主から「オアシスの横暴を許すと、これが蟻の一穴になり、日本企業が外資に食われてしまう」「官公庁にもエレベーターを納入しており外国企業に買収されでもしたらセキュリティに不安が生じる」という論旨の主張が幾度も繰り返されていたが、そもそも資本市場に上場している以上、そのリスク(主導権を握られるリスク)は常に存在しているわけであり、“今更感”は否めない。「多額の現預金」「低株価」「ビジネス面やガバナンス面でネガティブキャンペーンをされる余地」といった条件が揃えば、アクティビストの目に留まることは自明の理と言える。上場会社の経営陣としては、資本市場に上場していることのもたらすリスクを平時から認識し、高株価と高水準のガバナンスでアクティビストを寄せ付けない経営を心掛けるようにしたいところだ。

2023/06/20 東証「建設的な対話に資するエクスプレインのポイント・事例」が期待する効果

東証が3月31日に公表した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」との要請文に添付された資料の一つに「建設的な対話に資するエクスプレインのポイント・事例」がある。同資料では、不十分と考えられる「エクスプレイン」の主な類型として、①何を実施していない(エクスプレイン)のかが不明確、②単に「検討中」としているのみで理由や検討状況などの記載がない、③抽象的な説明(コード文言のままなど)のみで記載に具体性が伴っていない、の3つを挙げたうえで、「建設的な対話に資するエクスプレイン」を行うことを求めている。

東証が・・・

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2023/06/20 東証「建設的な対話に資するエクスプレインのポイント・事例」が期待する効果(会員限定)

東証が3月31日に公表した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」との要請文に添付された資料の一つに「建設的な対話に資するエクスプレインのポイント・事例」がある。同資料では、不十分と考えられる「エクスプレイン」の主な類型として、①何を実施していない(エクスプレイン)のかが不明確、②単に「検討中」としているのみで理由や検討状況などの記載がない、③抽象的な説明(コード文言のままなど)のみで記載に具体性が伴っていない、の3つを挙げたうえで、「建設的な対話に資するエクスプレイン」を行うことを求めている。

東証が設置した「市場区分の見直しに関するフォローアップ会議」の第5回参考資料(14ページ)では、英国のFRC(財務報告評議会=Financial Reporting Council)が2021年に「現状の各社のエクスプレインの大半が不十分なものであると指摘」し、「明確かつ意味のあるエクスプレインを行うための要点や、好事例などを紹介」したと報告されている。このFRCの「Improving the quality of ‘comply or explain’ reporting」(以下、FRCレポート)が東証の「建設的な対話に資するエクスプレインのポイント・事例」の手本になった。

FRC : コーポレートガバナンスに関する独立の規制機関

FRCレポートは、以下の5項目を「明確かつ意味のあるエクスプレインを行うための要点」に挙げている。このうちⅠが東証が不十分と考える「エクスプレイン」の類型①、Ⅳが同②、Ⅴが同③に対応しており、これらは日本の上場企業が①~③に対応する際の指針となるだろう。

I. エクスプレインする理由と背景を明確にする:
何がエクスプレインに該当するのかを明示したうえで、その理由や事情を説明する
II. コンプライせずに採用した別の取り組みについて説得力ある根拠を示す:
コードと異なる取り組みを採用した際の基準など、論理的な根拠を提供する
III. エクスプレインすることによるリスクを認識し、その軽減措置を説明する:
コードと異なる取り組みの採用により、何らかのリスクが生じないかを検討する
IV. コンプライする予定の時期(タイムスケジュール)を設定する:
エクスプレインの期間を明示、無期限の場合はその要因や状況を説明する
V. エクスプレインは分かりやすく、かつ説得力のあるものとする:
曖昧さの生じる余地のない平易な文言を使い、十分に詳細な情報を提供する

なお、FRCはⅡの例として、「取締役会議長の任期は9年まで」というコードをエクスプレインした場合、代わりに設定している任期がなぜ妥当なのか、そのような任期の設定がなぜ重要なのかを説明することを挙げている。また、Ⅲの例としては、社外取締役が過半数に達していない場合、経営陣がリスクテイクを避けた保守的な判断をしたり、経営トップによる専横的な会社支配が行われたりする可能性が指摘されている。

このように質の伴ったエクスプレインを厳格に求めると、エクスプレインすることへの負担感が増し、かえって形だけのコンプライが増えるのではないかとの懸念もあろう。しかし、FRCの2022年版「Review of Corporate Governance Reporting」によると、逆にフルコンプライした企業の数は急速に減少する結果となっている。FTSE350および同小型株の両指数に含まれる100社をサンプルとした調査では、2020年に58社あったフルコンプライの企業が2021年は36社、2022年には27社と、2年前に比べ半減した。エクスプレインが増加したことについてFRCは、「原則主義の利点を示しており、企業が個別の状況に最も適したオーダーメイドのガバナンス体制を選択できているということ」と評価している。

フルコンプライ : すべてのコードをコンプライすること
FTSE350 : ロンドン証券取引所に上場する時価総額上位100銘柄で構成される株価指数である「FTSE100」と、FTSE100に次ぎ時価総額が大きい250銘柄で構成される「FTSE250」の両指数の銘柄で構成される株価指数

FRCの提言を受けて英国企業は、不十分なエクスプレインを安易にコンプライに切り替えるのではなく、むしろ前述のⅠ〜Ⅴの指摘を真摯に受け止め、これまでコンプライとしていたコードをエクスプレインすべきものと捉え直したのだろう。今回の東証要請も同様の効果を期待していると考えられ、今秋を目処にフォローアップ会議で検証することが想定される。これを機に上場企業は、各原則についてコンプライすることが本当に適切なのか、再検証すべきだろう。

2023/06/19 ニュース記事の配信方法及び会費の見直し並びに据え置きについて

2014年3月1日に上場会社役員ガバナンスフォーラムがスタートしてから既に10年近くが経過する中、上場会社のガバナンスを巡る課題も大きく変わってまいりました。政府、証券取引所、会計、非財務情報、株主総会、アクティビズム等々の分野において、様々な動きが重層的に起きており、当フォーラムにおけるコンテンツの配信のあり方についても見直しが必要となってまいりました。
具体的には、従来の「平日毎日1本」としていたニュース記事の配新方法を改め、随時配新に変更させていただき、概ね月12~15本程度の配新といたします。緊急性の高い情報については、1日2本配新させていただくこともある一方、情報の取捨選択、1本のニュース記事の内容の充実を図り、会員の皆様が自社のガバナンス構築にあたり必要となる情報を効率的かつタイムリーに取得できるよう、努めてまいります。
また、これまで会費維持のための経営努力を続けてまいりましたが、セキュリティ体制の強化に加え、諸物価及び人件費の高騰により良質なコンテンツを安定的に配信する体制を維持するためには従来の会費を維持することが困難となりました。そこで、会費につきましては、下記のとおり変更させていただきます。
今後も会員の皆様にとってガバナンス体制の向上に資するコンテンツを数多くお届けできるよう継続的な努力・改善を図ってまいりますので、引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。

<会費(消費税込み)>
変更前:年額払い38,500円、月額払い3,850円
変更後:年額払い55,000円、月額払い5,500円

<ニュース配信数>
変更前:平日毎日
変更後:随時配信(目安として概ね月12~15本程度)

<割引率>
会員数 会費(消費税込み) 割引率
1人~5人 55,000円 0%
6人~10人 49,500円 10%
11人~19人 41,250円 25%
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2023/06/19 買収に関する公正なルール形成に向け示された指針案のポイント

上場会社の買収にあたり、買収者が重要な情報を隠すなどして買収の対象となっている会社の株主の判断を誤らせたり、強圧的に株主を追い出すような“不適切な買収”が横行したりすれば、買収への警戒感が高まり、損失を被った株主が資本市場を去っていくことでマーケットはシュリンクしていくであろう。一方、“適切な買収”が増えれば、リソース分配の最適化が行われることにより買収された会社の企業価値は向上し、業界再編が促されたり、資本市場の健全な新陳代謝が促進されたりすることが期待される。

企業価値 : 会社の財産、収益力、安定性、効率性、成長力等株主の利益に資する会社の属性又はその程度をいい、概念的には、企業が将来にわたって生み出すキャッシュフローの割引現在価値の総和

後者のような買収の増加を目論んで経済産業省が2023年6月8日に公表したのが・・・

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