ESGの評価機関・データ提供機関に対する企業側の不満の声が高まる中、金融庁は、同庁に設置された「ESG評価・データ提供機関等に係る専門分科会」(以下、専門分科会)が7月にとりまとめた「ESG評価・データ提供機関等に係る専門分科会報告書-ESG 評価・データの質の更なる向上を通じた市場の発展に向けて-」(2022年6月27日のニュース「ESG評価・データ提供機関の行動規範、コンプライorエクスプレイン方式に」参照)に基づき作成した「ESG評価・データ提供機関に係る行動規範(案)」を公表し、7月12日から9月5日までパブリックコメントに付していたが、このほどパブリックコメントの概要が11月10日に開催された専門分科会に報告された。
金融当局主導によるESG評価・データ提供機関の行動のグローバルな規範づくりは世界でも珍しく、パブリックコメントには国内外の45の個人・団体から209件もの意見が寄せられたとのことであり、事務局は嬉しい悲鳴を上げているようだ。今回寄せられた意見を踏まえ、行動規範(案)には、次のような修正が加えられ、最終化・公表される見込みであることが当フォーラムの取材により判明した。具体的には以下のとおり。
(1)行動規範は3年後に改定
規範を策定し、運用してみたうえで「変化」を取り入れていくべきとの意見を踏まえ、次の改定のタイミングが設定される。運用することにより把握された課題への対応、他国で同様の規範が策定された場合などグローバルな変化への対応のため、本行動規範は今後も改定を重ねる前提とすべきとの考え方が示され、次の改定時期は「3年後」とされる。
(2)コンプライ・オア・エクスプレインは原則や指針ごとに行うこと
読み手が各原則や指針の「具体的な遵守状況」を理解できるよう、コンプライ・オア・エクスプレインは、例えば「全体として」「趣旨については」「一部を除いて」コンプライする、といった表現ではなく、原則や指針ごとに、コンプライするのか、あるいは実施しない理由をエクスプレインするのか、明確に示すことが重要とされる。
(3)データ提供への賛同・受入れには1年の猶予
金融庁は、ESG評価・データ提供機関に対し、行動規範の受入れとともに、受け入れた場合には自らのウェブサイトにその旨を公表し、かつ金融庁に通知するよう呼びかける。そのうえで金融庁は、賛同・受入れの状況を、規範の公表の「半年後」を目途に一覧性のある形で公表する。ただし、行動規範のうち「データ提供」への賛同・受入れの状況については「さらに1年後」に公表することとされ、猶予期間を長めにとることとする。
また、「相当の意思はあっても、賛同・受入れには一定の時間を要する」ような場合には、実施の初年に「今後の取組み予定や実施時期の目途を明確に説明すること」が例示される。
(4)利益相反に関する留意点の記述を修正・拡充
原則3(独立性の確保・利益相反の管理)に関する指針の原案では、評価対象企業との間に既存のビジネス関係がある場合、それが評価に影響を与えないようにするための「措置等の開示」が求められていたが、これが「適切な措置を講じること」に改められる。すなわち、「評価等に係る情報を他のサービスに活用する場合には、情報管理に加えて、利益相反の観点からも特に留意が必要」とされる。
利益相反については、原則6(企業とのコミュニケーション)の指針においても、「利益相反等にも留意しつつ」可能な限り企業との間で建設的な対話を行うこととされる。
(5)評価対象企業に確認する時間的な猶予を与える「重大な欠陥」の有無の内容を「事実誤認など」と例示
原則6(企業とのコミュニケーション)の指針の原案では、自らの評価手法や顧客対応の方針等を踏まえて、ESG評価・データを開示するに際には、可能な限り速やかに当該評価・データの重要な情報源について評価対象企業に通知又は周知し、評価対象企業に重大な欠陥がないかを確認する時間的猶予を確保することとされていた。この点について、パブリックコメントを受け、「重大な欠陥」として「事実誤認など」との例が示され、重大な欠陥の趣旨が明確にされる。
また、原則6の「考え方」では、評価やデータといった最終的に提供される商品等については、企業等とのコミュニケーションを踏まえつつも「あくまで評価機関が自らの責任によって発行するものであること」には留意が必要との注意が喚起される。
この行動規範は日本の金融庁の示したものではあるが、本行動規範は世界のESG評価・データ提供機関に賛同・受入れが呼びかけられる。本規範にどれだけの機関が賛同・受入れを表明するのか、注目される。

