2022/11/22 速報 ESG評価・データ提供機関の行動規範案の修正事項(会員限定)

ESGの評価機関・データ提供機関に対する企業側の不満の声が高まる中、金融庁は、同庁に設置された「ESG評価・データ提供機関等に係る専門分科会」(以下、専門分科会)が7月にとりまとめた「ESG評価・データ提供機関等に係る専門分科会報告書-ESG 評価・データの質の更なる向上を通じた市場の発展に向けて-」(2022年6月27日のニュース「ESG評価・データ提供機関の行動規範、コンプライorエクスプレイン方式に」参照)に基づき作成した「ESG評価・データ提供機関に係る行動規範(案)」を公表し、7月12日から9月5日までパブリックコメントに付していたが、このほどパブリックコメントの概要が11月10日に開催された専門分科会に報告された。

金融当局主導によるESG評価・データ提供機関の行動のグローバルな規範づくりは世界でも珍しく、パブリックコメントには国内外の45の個人・団体から209件もの意見が寄せられたとのことであり、事務局は嬉しい悲鳴を上げているようだ。今回寄せられた意見を踏まえ、行動規範(案)には、次のような修正が加えられ、最終化・公表される見込みであることが当フォーラムの取材により判明した。具体的には以下のとおり。

(1)行動規範は3年後に改定
規範を策定し、運用してみたうえで「変化」を取り入れていくべきとの意見を踏まえ、次の改定のタイミングが設定される。運用することにより把握された課題への対応、他国で同様の規範が策定された場合などグローバルな変化への対応のため、本行動規範は今後も改定を重ねる前提とすべきとの考え方が示され、次の改定時期は「3年後」とされる。

(2)コンプライ・オア・エクスプレインは原則や指針ごとに行うこと
読み手が各原則や指針の「具体的な遵守状況」を理解できるよう、コンプライ・オア・エクスプレインは、例えば「全体として」「趣旨については」「一部を除いて」コンプライする、といった表現ではなく、原則や指針ごとに、コンプライするのか、あるいは実施しない理由をエクスプレインするのか、明確に示すことが重要とされる。

(3)データ提供への賛同・受入れには1年の猶予
金融庁は、ESG評価・データ提供機関に対し、行動規範の受入れとともに、受け入れた場合には自らのウェブサイトにその旨を公表し、かつ金融庁に通知するよう呼びかける。そのうえで金融庁は、賛同・受入れの状況を、規範の公表の「半年後」を目途に一覧性のある形で公表する。ただし、行動規範のうち「データ提供」への賛同・受入れの状況については「さらに1年後」に公表することとされ、猶予期間を長めにとることとする。

また、「相当の意思はあっても、賛同・受入れには一定の時間を要する」ような場合には、実施の初年に「今後の取組み予定や実施時期の目途を明確に説明すること」が例示される。

(4)利益相反に関する留意点の記述を修正・拡充
原則3(独立性の確保・利益相反の管理)に関する指針の原案では、評価対象企業との間に既存のビジネス関係がある場合、それが評価に影響を与えないようにするための「措置等の開示」が求められていたが、これが「適切な措置を講じること」に改められる。すなわち、「評価等に係る情報を他のサービスに活用する場合には、情報管理に加えて、利益相反の観点からも特に留意が必要」とされる。

利益相反については、原則6(企業とのコミュニケーション)の指針においても、「利益相反等にも留意しつつ」可能な限り企業との間で建設的な対話を行うこととされる。

(5)評価対象企業に確認する時間的な猶予を与える「重大な欠陥」の有無の内容を「事実誤認など」と例示
原則6(企業とのコミュニケーション)の指針の原案では、自らの評価手法や顧客対応の方針等を踏まえて、ESG評価・データを開示するに際には、可能な限り速やかに当該評価・データの重要な情報源について評価対象企業に通知又は周知し、評価対象企業に重大な欠陥がないかを確認する時間的猶予を確保することとされていた。この点について、パブリックコメントを受け、「重大な欠陥」として「事実誤認など」との例が示され、重大な欠陥の趣旨が明確にされる。

また、原則6の「考え方」では、評価やデータといった最終的に提供される商品等については、企業等とのコミュニケーションを踏まえつつも「あくまで評価機関が自らの責任によって発行するものであること」には留意が必要との注意が喚起される。

この行動規範は日本の金融庁の示したものではあるが、本行動規範は世界のESG評価・データ提供機関に賛同・受入れが呼びかけられる。本規範にどれだけの機関が賛同・受入れを表明するのか、注目される。

2022/11/21 迷走する執行役員制度

1997年にソニーが国内で初めて導入した執行役員制度は、その後、普及の一途をたどり、2021年時点で全上場企業の約8割が導入するまでになった。各社が掲げる導入の目的としては、「監督と執行の分離」「経営の意思決定の迅速化」「業務執行の効率化」「責任の明確化」などがある。2022年に入っても導入企業は増え続けており、もはやこの流れが止まることはないだろう。その一方で、2015年のコーポレートガバナンス・コード施行以降、経営の効率化や意思決定の迅速化を本気で目指す一部の企業において、むしろ執行役員の数を削減し、場合によっては執行役員制度自体を廃止する事例が出てきた。こうした動きの背景には、・・・

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2022/11/21 迷走する執行役員制度(会員限定)

1997年にソニーが国内で初めて導入した執行役員制度は、その後、普及の一途をたどり、2021年時点で全上場企業の約8割が導入するまでになった。各社が掲げる導入の目的としては、「監督と執行の分離」「経営の意思決定の迅速化」「業務執行の効率化」「責任の明確化」などがある。2022年に入っても導入企業は増え続けており、もはやこの流れが止まることはないだろう。その一方で、2015年のコーポレートガバナンス・コード施行以降、経営の効率化や意思決定の迅速化を本気で目指す一部の企業において、むしろ執行役員の数を削減し、場合によっては執行役員制度自体を廃止する事例が出てきた。こうした動きの背景には、これまで執行役員制度が“都合良く”利用されてきたということがある。

会社法の制約を受けない執行役員制度は、取締役の員数を削減するための移行ポスト、または従業員最高位の管理ポスト、あるいは営業面での有効な肩書きを与える仕組みとして長年運用されることで、次第に執行役員の役割・位置付けが曖昧になるとともに、人数も増え過ぎてしまった。その結果、当初の導入の目的に反して、「執行サイドの意思決定に時間がかかる」「責任の所在が不明瞭になる」といった弊害が生じ、むしろ経営の非効率化が進んでいる企業も少なからず見受けられる。それでも近年、取締役会の実効性向上を求める投資家や規制当局からのプレッシャーを受け、取締役会が特に重要な経営戦略の議論やその遂行のモニタリングに注力するため、取締役会の業務執行権限をこれまで以上に執行役員に委譲したいというニーズは高まっている。

このように、執行役員制度は「経営の非効率化」を招きつつも、「取締役会の業務執行権限の委譲」というニーズにも応えなければならないという矛盾した状況下にある。この矛盾を解消し、真に経営の効率化を実現するためには、取締役会の役割・機能と執行役員の役割・責任を明確にしたうえで、取締役会の業務執行権限の一部を執行役員に委任することとあわせて、「経営会議を含む執行サイドの意思決定プロセスの効率化」や「(役割・責任が重くなる)執行役員の処遇の適正化」を図る必要がある。そして、このような議論・検討を進めるなかで、(過度に増え過ぎた)執行役員の員数の適正化(削減)が必要となるのは自然な流れであろう。企業の業態や規模によっては、むしろ取締役会に権限を集中した方が、意思決定の迅速化や経営の効率化が進むとの判断に基づき、執行役員制度を廃止する事例もある。

ここ数年間における執行役員制度の廃止事例としては、プライム市場の「千趣会」「幸楽苑ホールディングス」「ライトオン」、スタンダード市場の「東祥」「シャルレ」「朝日印刷」、グロース市場の「アンジェス」などがある。廃止の理由はいずれも類似しており、例えば千趣会は、「各部門の業務執行における取締役の責任と権限を強化し、現在の企業規模に相応しい組織運営形態とすることで経営効率化及び意思決定の迅速化を図り、業績回復等への取り組みを推進する」ことを、幸楽苑ホールディングスは「業務執行を担う取締役の責任と権限の明確化及び組織階層の簡素化による更なる経営効率化を図るとともに、全部門長が機動的に業務執行を推進する」ことを廃止の理由に挙げている。また、少し遡ると、ロート製薬は2016年に、「取締役の責任と権限を明確にし、経営の効率化、意思決定の迅速化を図ること、執行役員という枠にこだわらず、全管理職が責任をもって、機動的な業務執行を進める」ことを目的として、執行役員制度を廃止している。

執行役員制度の実質的な縮小事例としては、例えばブリヂストンは2020年に執行役員制度を廃止するとともに、グローバルな経営責任を担う経営層を60人から20人レベルに削減することを公表した。また、トヨタ自動車は2019年に執行役員相当の役員・理事を「執行役員」と「幹部職」に分けることで実質的に執行役員の数を半分に減らし、さらに翌2020年には、当時23人いた執行役員を9人に減らしている。パナソニックも2019年に、当時49人いた執行役員を16人へと6割減らすことを公表した。

また、執行役員制度を時代に適した、より良い制度とすべく、継続的な改定を進める企業もある。例えば資生堂は2017年に、有能な人材の継続登用を目的として、執行役員の任期の上限延長を可能にする一方で、手続きの透明性を確保するために指名諮問委員会の審議を前提することを明文化した。また、2022年には、全社経営・ダイバーシティ経営を加速させるため、従来の執行役員制度をいったん廃止したうえで、CxOを中心としたエグゼクティブオフィサー制度に移行している。

今後も執行役員制度を新たに導入する企業は増え続けることが見込まれるが、導入に際しては、当初の目的を見失わないようにするとともに、環境や戦略の変化に即した継続的な見直しも念頭に、選解任プロセスには指名諮問委員会を関与させるなど、手続面での整備もセットで検討するべきだろう。

2022/11/18 改正開示府令における気候変動開示の位置付け

サステナビリティ開示というと、真っ先に思い浮かぶのが「気候変動」だろう。金融庁が(2022年)11月7日に公表した改正開示府令案の目玉はサステナビリティ開示だが、改正開示府令案自体には「気候変動」という言葉は見当たらない。改正開示府令案は大きく分けると下図のような構成となっているが(2022年11月7日のニュース「気候変動情報、一律の開示は見送り」参照)、この図を見ると「人的資本」「多様性」というサステナビリティ項目については独立したカテゴリーとして(2)が設けられているのに対し、気候変動のカテゴリーは存在しない。

改正開示府令案の構成
【1】サステナビリティに関する企業の取組みの開示 (1)「サステナビリティ全般」に関する開示
(2)人的資本、多様性に関する開示
【2】コーポレートガバナンスに関する開示
【3】その他

しかし、だからと言って、今回の改正開示府令では気候変動開示が求められていないというわけではない。むしろ、事実上、すべての企業に気候変動開示が求められることになる点、留意したい。・・・

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2022/11/18 改正開示府令における気候変動開示の位置付け(会員限定)

サステナビリティ開示というと、真っ先に思い浮かぶのが「気候変動」だろう。金融庁が(2022年)11月7日に公表した改正開示府令案の目玉はサステナビリティ開示だが、改正開示府令案自体には「気候変動」という言葉は見当たらない。改正開示府令案は大きく分けると下図のような構成となっているが(2022年11月7日のニュース「気候変動情報、一律の開示は見送り」参照)、この図を見ると「人的資本」「多様性」というサステナビリティ項目については独立したカテゴリーとして(2)が設けられているのに対し、気候変動のカテゴリーは存在しない。

改正開示府令案の構成
【1】サステナビリティに関する企業の取組みの開示 (1)「サステナビリティ全般」に関する開示
(2)人的資本、多様性に関する開示
【2】コーポレートガバナンスに関する開示
【3】その他

しかし、だからと言って、今回の改正開示府令では気候変動開示が求められていないというわけではない。むしろ、事実上、すべての企業に気候変動開示が求められることになる点、留意したい。

気候変動開示は、『(1)「サステナビリティ全般」に関する開示』として行うことになる。ここでは、「ガバナンス」および「リスク管理」が必須記載事項とされ、「戦略」および「指標及び目標」は、“重要性があれば”記載することととされている。気候変動が自社にとって「重要でない」と言える企業はほとんどないと思われることを踏まえれば、多くの企業が気候変動について「戦略 」「指標及び目標」まで記載してくることが予想される。

ガバナンス : サステナビリティ関連のリスク及び機会を監視・管理するためのガバナンスの過程、統制、手続きのこと。
リスク管理 : サステナビリティ関連のリスク及び機会を識別、評価、管理するための過程のこと。
戦略 : 短期・中期・長期にわたり連結会社の経営方針・経営戦略等に影響を与える可能性があるサステナビリティ関連のリスク及び機会に対処するための取組みのこと。
指標及び目標 : サステナビリティ関連のリスク及び機会に関する連結会社の実績を長期的に評価、管理、監視するために用いられる情報のこと。

この点は、改正開示府令案ではなく、そのガイドラインとして同時に公表された「記述情報の開示に関する原則(別添)―サステナビリティ情報の開示について―」の2ページ目の(注2)で説明されている。本来であれば、気候変動についても、人的資本や多様性と並び「【1】サステナビリティに関する企業の取組みの開示」の中に独立したカテゴリーが設けられてしかるべきだが、改正開示府令が3月決算企業にとっては進行期である「2023年3月期」に係る有価証券報告書から適用されることを踏まえ、気候変動という“重い”テーマを改正開示府令内に盛り込むのは企業にとって酷ではないかとの判断もあり、気候変動開示に関する説明はガイドラインの方に落とし込んだという経緯がある。ガイドラインの内容からも、企業への配慮が見て取れる。例えば、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)では、スコープ3までの開示を「義務」と言っているが、ガイドラインでは、スコープ1スコープ2のGHG(温室効果ガス)排出量に絞って、「企業において積極的に開示することが期待される」とするにとどめている。

ISSB(国際サステナビリティ基準審議会) : International Sustainability Standards Board(国際サステナビリティ基準審議会)。資本市場向けのサステナビリティ開示の包括的なグローバル・ベースラインを開発するため、IFRS財団が2021年11月に設立した団体。
スコープ3 : 事業者自ら排出している温室効果ガス(二酸化炭素等)であるScope1、Scope2以外の間接排出、具体的には「事業者の活動に関連する他社」による温室効果ガスの排出のこと。
スコープ1 : 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出のこと。
スコープ2 : 他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う温室効果ガスの間接排出のこと。

とはいえ、気候変動開示が今回の改正開示府令のレベルのままであるわけではない。ISSBが今年(2022年)中にもファイナライズ(最終化)し、来年早々にも公表する方向となっている「気候変動に関する非財務開示基準」の内容を踏まえ、いずれは開示府令においても気候変動は「【1】サステナビリティに関する企業の取組みの開示」の中の独立したカテゴリーに“格上げ”され、より厳格な開示が求められることになろう。

2022/11/17 「翌日配達」は困難になる恐れ “スピード勝負”のビジネスに影響を与える可能性のある新たな労働基準が施行へ

長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態を問わない公正な待遇の確保などを実現するため、以前から存在していた8つの労働関係の法律の改正を総称する「働き方改革関連法」により、一般企業については既に時間外労働の上限が原則360時間(労使合意がある場合でも720時間)とされているが、「自動車運転者」については令和6年(2024年)4月から時間外労働の上限が960時間となる。これを受けて、厚生労働省に設置された労働政策審議会の労働条件分科会では「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第7号 以下、新基準)の見直しを進めてきたが、その作業がほぼ終わり、年内にも新基準が告示される見通しとなっている。「自動車運転者」に関する基準というと、運送業界にのみ関係する話と思われがちだが、実はそうではない。・・・

8つの労働関係の法律 : 労働基準法、労働時間等設定改善法、労働安全衛生法、じん肺法、パートタイム労働法、労働者派遣法、労働契約法、雇用対策法

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2022/11/17 「翌日配達」は困難になる恐れ “スピード勝負”のビジネスに影響を与える可能性のある新たな労働基準が施行へ(会員限定)

長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態を問わない公正な待遇の確保などを実現するため、以前から存在していた8つの労働関係の法律の改正を総称する「働き方改革関連法」により、一般企業については既に時間外労働の上限が原則360時間(労使合意がある場合でも720時間)とされているが、「自動車運転者」については令和6年(2024年)4月から時間外労働の上限が960時間となる。これを受けて、厚生労働省に設置された労働政策審議会の労働条件分科会では「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年労働省告示第7号 以下、新基準)の見直しを進めてきたが、その作業がほぼ終わり、年内にも新基準が告示される見通しとなっている。「自動車運転者」に関する基準というと、運送業界にのみ関係する話と思われがちだが、実はそうではない。新基準は「運送業を利用するすべての者」に影響が及ぶので留意したい。

8つの労働関係の法律 : 労働基準法、労働時間等設定改善法、労働安全衛生法、じん肺法、パートタイム労働法、労働者派遣法、労働契約法、雇用対策法

新基準では、例えばトラックドライバーの場合、以下のような基準となる。
(1) 1年の拘束時間:原則3300時間(現行3516時間)
(2) 1か月の拘束時間:原則284時間(現行293時間)、最大320時間(現行310時間)
(3) 1日の休息時間:継続11時間を基本とし、9時間下限(現行は継続8時間)
※この他、タクシードライバー向け、バスドライバー向けにそれぞれ新しい基準が設けられる。

トラックドライバーの労働条件改善には運送事業者ばかりでなく、「荷主」の協力が必須となる。そこで厚生労働省は、新基準の施行後、労働基準監督署を通じて荷主に対し「トラックドライバーへの配慮(長時間の恒常的な荷待ち時間を発生させないよう努めること、運送業務の発注担当者に改善基準告示を周知させること)」を要請するとともに、関係者への周知を速やかに実施することとしている。また、これに先駆けて、今年8月には「トラック運転者の長時間労働改善特別相談センター」を開設し、ドライバー、運送事業者、荷主などからの相談を受け付けている。

このほか企業への影響として、トラックドライバー1人あたりの労働時間縮減に伴い、これまで翌日(あるいは当日)に届いていた荷物・貨物の到着が遅くなることも起こりうる。商品と到着の速さをウリにする事業を展開していた企業は、販売戦略を見直す必要が出て来るかもしれない。また、トラックドライバー1人あたりの労働時間縮減に伴い、より多くのトラックドライバーを雇用しなければならなくなった運送業者が、人件費のコストアップ分を運賃に転嫁してくることも想定される。

なお、新基準の適用対象となる「自動車運転者」とは、「労働基準法第9条に規定する労働者であって、四輪以上の自動車の運転の業務に主として従事する者をいう」(同告示第1条第1項)とされている。すなわち、運送業に限らず、例えばサービス業、流通業、飲食業等の配達部門に属する者にも新基準が適用されることになる。運送業以外であっても新基準の直接的な対象となるケースがある点、留意したい。

2022/11/16 中小監査法人にも監査法人のガバナンス・コード適用で企業への影響は?

既報のとおり、監査法人を大手から中小に変更する上場会社が年々増加している(監査法人変更のトレンドについては2022年7月27日のニュース「会計監査人の異動件数が過去5年間で最多に もっとも多い異動理由は?」参照)。これに伴い重要性が高まっているのが、中小監査法人における品質管理への取り組みなど内部状況の透明性の確保だ。ここがブラックボックスのままでは、投資家が中小監査法人に監査を依頼している上場会社への投資に躊躇することにもなりかねない。また、上場会社が監査契約の妥当性、継続などを検討するうえで、内部状況は重要な要素となる。中小監査法人に変更したことで監査報酬の負担が減ったとしても、その監査法人の監査品質が低ければ、監査品質の高い監査法人であれば検出できたであろう粉飾や使い込みなどを見つけることができずに、企業価値が大きく毀損するリスクもある。

2022年10月24日に開催された「監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会」で配布された事務局資料9ページより抜粋
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監査法人の内部状況の透明性を確保するため、・・・

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2022/11/16 中小監査法人にも監査法人のガバナンス・コード適用で企業への影響は?(会員限定)

既報のとおり、監査法人を大手から中小に変更する上場会社が年々増加している(監査法人変更のトレンドについては2022年7月27日のニュース「会計監査人の異動件数が過去5年間で最多に もっとも多い異動理由は?」参照)。これに伴い重要性が高まっているのが、中小監査法人における品質管理への取り組みなど内部状況の透明性の確保だ。ここがブラックボックスのままでは、投資家が中小監査法人に監査を依頼している上場会社への投資に躊躇することにもなりかねない。また、上場会社が監査契約の妥当性、継続などを検討するうえで、内部状況は重要な要素となる。中小監査法人に変更したことで仮に監査報酬の負担が減ったとしても、その監査法人の監査品質が低ければ、監査品質の高い監査法人であれば検出できたであろう粉飾や使い込みなどを見つけることができずに、結果として企業価値が大きく毀損するリスクもある。

2022年10月24日に開催された「監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会」で配布された事務局資料9ページより抜粋
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監査法人の内部状況の透明性を確保するため、2017年3月に導入されたのが「監査法人の組織的な運営に関する原則」、通称“監査法人のガバナンス・コード”(以下、適宜「コード」という)だが、コードの前文に「大手上場企業等の監査を担い、多くの構成員から成る大手監査法人における組織的な運営の姿を念頭に策定されている」とあることから分かるように、コードはもともと大手監査法人への適用を想定している。このため、監査法人の経営から独立した立場で経営機能の実効性を監督・評価する機関の設置が求められる(同コードの指針3-1参照)など、中小監査法人にとっては“重い”内容となっている。実際、監査法人のガバナンス・コードを受け入れた監査法人は2022年9月末現在、大手・準大手を中心に18法人しかない(金融庁がまとめたリストはこちら。なお、同リストは「2021年12月現在」となっているが、コードを採用した監査法人数に変更はない)。大手監査法人および準大手監査法人はコードのすべての原則をコンプライ(適用)しているものの、コードを受け入れている中小監査法人の中には、一部の原則についてはコンプライせずにエクスプレイン(説明)にとどめているところもある。

こうした中、上場会社監査の担い手の裾野の拡大を踏まえ、金融庁は監査法人のガバナンス・コードを改正し、中小監査法人にもコードを受け入れさせることで、監査の“見える化”を図ろうとしている。

“見える化”に有効なのが、監査法人のガバナンス・コードが監査法人に作成・公表を求めている「透明性報告書」だ。現行コードの指針5-1には『監査法人は、被監査会社、株主、その他の資本市場の参加者等が評価できるよう、本原則の適用の状況や、会計監査の品質の向上に向けた取組みについて、一般に閲覧可能な文書、例えば「透明性報告書」といった形で、わかりやすく説明すべきである。』と定められており、透明性報告書を見れば、投資家に「ブラックボックス」などと揶揄されてきた監査法人の内部状況が理解しやすくなるとされる。

監査法人のガバナンス・コードを所管する金融庁の「監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会」は、コードの改正に向け既に2回の会合(2022年10月24日、11月14日)を開催しており、そこでの議論の内容から、コードの改正の方向性が見えてきた。要約すれば以下のとおり。

・中小監査事務所に限定したコードを現行のコードとは別に作成するのではなく、現行のコードを中小監査事務所が採用しやすくなるように改正する。
・コンプライ・オア・エクスプレインの前提に変更はない。
・日本公認会計士協会が、各監査法人におけるコードの適用状況に関する説明内容を定期的にモニタリングする。
・上場会社監査を担う中小監査法人がコードを採用しやすくするため、コードの各原則・指針において、形式的な経営機関や監督・評価機関の設置は必須としないことを明確にする。
・市場参加者にとって有益な情報として、各監査法人が中長期的に目指す姿やその方向性を示すKPIの開示を求める。
・監査法人の財務上及び業務上の意思決定に対して重要な影響力を有するグローバルネットワークやグループ法人との間で経営上の重要な契約の締結や取引を行う場合、その概要を市場参加者に説明する。
・IT基盤の実装化や積極的なテクノロジーの活用に向けた対応状況(サイバーセキュリティ対策を含む)に関する開示を求める(IT対応の一環である電子監査調書システムについては2022年6月10日のニュース「監査審査会の検査で不適切対応が発覚、中小監査法人選別の“踏み絵”とは?」参照)。
・各監査法人における海外進出企業活動への対応状況に関する開示を求める。

透明性報告書を開示する中小監査法人が増えれば、監査契約の妥当性や継続、あるいは監査法人の変更を検討するうえで必要な情報を収集する監査役・監査等委員にとって、有益な判断材料が増えることにつながるのは間違いない。その意味では、上場会社としても今回のコード改正は歓迎すべきだろう。ただし、監査法人が品質管理体制の強化をこれまで以上に推し進めることで、監査報酬の増額という影響を被る可能性も否定はできない点、留意したい。

2022/11/15 四半期決算短信のエンフォースメント、投資家の声受け“揺り戻し”も

既報のとおり、第1四半期報告書、第3四半期報告書の廃止は既定路線となっており、第2四半期報告書については、たとえ名称は「半期報告書」となったとしても、これまで通り第2四半期報告書を作成し、その対象期間(3月決算企業であれば7~9月)についてのみ監査法人のレビューを受ければよいという整理となることも確実となっている(2022年10月3日のニュース「10月5日からDWGが再開、見えて来た第2四半期報告書の取扱い、第1・第3四半期決算短信へのエンフォースメントの行方」参照)。

四半期報告書の見直し、特に第1四半期報告書、第3四半期報告書の廃止に伴い重要性が高まる第1・第3四半期決算短信については、四半期決算短信を公表したことを金商法上の臨時報告書で開示させることにより、四半期決算短信による開示を金商法の対象に取り込み、同法上の罰則等の対象とする(エンフォースメント)案が浮上していたが、第1・第3四半期の四半期報告書のみを対象とした虚偽記載に係る課徴金納付命令勧告事案が少ない(1件)ことから、エンフォースメントの対象とする意義は薄いとして、見送られる方向となっていたところ(上記で引用のニュースの上から2段落目、2022年10月3日のニュース「10月5日からDWGが再開、見えて来た第2四半期報告書の取扱い、第1・第3四半期決算短信へのエンフォースメントの行方」の下から2段落目参照)。しかし、ここに来て、・・・

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