2022/04/06 日本企業向けの「ダイバーシティ基準」の将来(会員限定)

既報のとおり、議決権行使助言会社のISSは2023年2月からジェンダー・ダイバーシティ基準を導入し、株主総会後の取締役会に女性取締役が1人もいない場合には、経営トップである取締役(社長、会長)の選任議案に対して反対を推奨する(2021年12月20日のニュース「ISSが2022年版ポリシーの改定内容を公表、バーチャルオンリー総会を可能とする定款変更議案で反対推奨を受けない方法が判明」参照)。グラスルイスは既に女性役員(監査役、執行役を含む)が不在の場合、会長(会長職がない場合は社長)もしくは指名委員会委員長の選任議案に反対推奨する基準を運用しているが、2023年2月以降はプライム市場上場会社に対し、女性取締役比率「10%」を求める(12月24日のニュース「グラスルイスが2022年版ポリシーの改定内容を公表、ジェンダー・ダイバーシティに高い要求水準を設定」参照)。

ISSの基準新設およびグラスルイスの基準変更は、ジェンダー・ダイバーシティを求めるグローバルな潮流に沿ったものであり、今後も「複数化」や「比率引き上げ」など一層の厳格化が図られることが予想される。その時期や程度をイメージするうえでは、両助言会社の海外先進国向けポリシーを確認することが有用だ。下表は両助言会社がそれぞれ海外で運用(一部は今後導入)しているジェンダー・ダイバーシティ基準である。下表に該当する場合、指名委員会委員長などの選任議案に反対推奨することになる。

※カッコ内は対象となる会社(以下同)
  ISS グラスルイス
米国 ●取締役会に女性が1人もいない(Russell 3000S&P 1500
※2023年以降は全上場会社

Russell 3000 : 米国企業株のうち、時価総額上位3000銘柄からなる時価総額加重平均型指数
S&P 1500 : S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社が算出しているアメリカの代表的な株価指数で、ニューヨーク証券取引所、NYSE MKT、NASDAQに上場している企業の中から代表的な500社を選出し、その銘柄の株価を基に算出される時価総額加重平均型株価指数

●異なる性別の取締役が2人未満(Russell 3000)
●異なる性別の取締役が1人もいない(Russell 3000以外、または取締役の人数が6人以下の場合)
英国 ●取締役会に女性が33%未満(FTSE 350
●取締役会に女性が1人もいない(FTSE SmallCap

FTSE 350 : ロンドン証券取引所に上場する時価総額上位100銘柄で構成される株価指数である「FTSE100」と、FTSE100に次ぎ時価総額が大きい250銘柄で構成される株価指数である「FTSE250」の両指株価数の構成銘柄で構成される株価指数
FTSE SmallCap : ロンドン証券取引所の主要市場に上場する時価総額が351位から619位までの小規模企業で構成される株価指数

●異なる性別の取締役が33%未満(FTSE 350)
●異なる性別の取締役が1人もいない(LSE’s main market

LSE’s main market : ロンドン証券取引所(LSE)の最大の市場であり、「プレミアム」「標準」「高成長」などのセグメントから構成される。メインマーケット以外の市場としてはAIMなどがある。

大陸欧州 ●少数派の性別の取締役が30%未満 ●異なる性別の取締役が30%未満(large-cap and mid-cap
●異なる性別の取締役が1人もいない(main market)

large-cap and mid-cap : 大型株、中形株を指す。

議決権行使助言会社や地域によってジェンダーの定義は異なる(woman、underrepresented gender、gender diverse director)が、共通する傾向としては、米国においては男性以外のジェンダーの要求水準が1~2名にとどまる一方、英国および大陸欧州では30%または33%と高水準にあることが分かる。欧米でこのような格差が存在することを踏まえると、日本において早急に「30%」といった基準が導入されることは考えにくいだろう。

underrepresented : ここでは「少数派の」といった意味を持つ。

また、グローバルにおいて「ダイバーシティ」という場合、ジェンダーにとどまらず、人種(racial)および民族(ethnic)も含まれる。下表は、欧米における両助言会社のジェンダー以外のダイバーシティに関するポリシーを整理したもの。いずれも人種あるいは民族の観点から多様性のある取締役1名の選任か、相応の開示を求めている。

  ISS グラスルイス
米国 ●人種的・民族的に多様な取締役が1人もいない(Russell 3000、S&P 1500) ●人種・少数民族の取締役会における選任状況について開示がない(S&P 500 ※2023年以降適用)
英国 ●少数民族のバックグラウンドを持つ取締役が1人もいない(FTSE 100)
※2024年以降は全上場会社
●少数民族出身の取締役が1人もいない(FTSE 100)
大陸欧州 (なし) ●民族や国籍の多様性についての開示が著しく劣っている場合

基本的に国民が単一民族で構成されている日本向けに、人種や民族について欧米のような厳格な助言ポリシーがすぐに導入されることは考えにくい。しかし、日本企業でも外国人取締役が珍しくなくなる中、特にグローバルに事業を展開している企業は、人種および民族のダイバーシティについても関心を持っておく必要があろう。

2022/04/05 米国で化石燃料事業関連の取引停止求め株主提案

ロシアのウクライナ侵攻がESG投資を揺るがせている。既報のとおり、「サステナビリティ」の観点から一部の軍需産業への投資が再開され、気候変動の最大の原因とされてきた化石燃料の一つである天然ガスと、核廃棄物の処分という現状では答えのない課題があり「サステナブル」とは言えない原子力が・・・

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2022/04/05 米国で化石燃料事業関連の取引停止求め株主提案(会員限定)

ロシアのウクライナ侵攻がESG投資を揺るがせている。既報のとおり、「サステナビリティ」の観点から一部の軍需産業への投資が再開され、気候変動の最大の原因とされてきた化石燃料の一つである天然ガスと、核廃棄物の処分という現状では答えのない課題があり「サステナブル」とは言えない原子力がEUタクソノミーに追加されることになった(2022年3月10日のニュース「変化するESG投資の価値観」参照)。こうした流れを踏まえESG投資の後退を懸念する声が上がる一方、これとは対照的な動きもある。

EUタクソノミー : 欧州委員会が環境に配慮したグリーンな経済活動を定めるEU規則。2020年7月から施行されたEUタクソノミーは、「何がグリーン(環境的に持続可能)な経済活動なのか」を分類するための枠組みであり、サステナブル・ファイナンスを促進するとともに、グリーン・ウォシングを防ぐことを目的としている。例えば、グリーンな経済活動の分類基準として、①気候変動の緩和、②気候変動への適応、③水と海洋資源の持続可能な利用と保全、④循環型経済への移行、⑤環境汚染の防止と抑制、⑥生物多様性と生態系の保全と回復、の6つの環境目標の1つ以上に貢献するか、あるいはいずれにも「著しい害を及ぼさない」ことが求められる。EUタクソノミーは世界に先行する取り組みであり、日本を含む世界にも影響を与えている。

5月に開催される米国損害保険大手会社チャブ(Chubb)の株主総会には、化石燃料事業に関する保険の引受け停止を求める株主提案議案が提出された。同議案を提出したのが、チャブの株主であり、米資産運用会社のグリーンセンチュリー・キャピタルマネジメント(Green Century Capital Management)だ。グリーンセンチュリーは、同じく米国損害保険会社のとトラベラーズ(Travelers)や米保険ハートフォード(Hartford)に対しても同様の保険引受停止を求める株主提案を提出している。今回の株主提案の背景には、気候変動問題のほかに、原油がロシアの戦争資金源になっているのではないかとの疑念がある。チャブ社への株主提案について、設立以来40年近い歴史を持つ米サンフランシスコの環境NGOであるRainforest Action Networkは、「今こそ権威主義や暴力、戦争に紐づいた化石燃料から脱却するべき」との声明を出している。

グリーンセンチュリーは30年前に環境および公衆衛生の非営利団体によって設立されたという経緯から、ESGのパフォーマンス評価に基づき、持続可能な企業に投資することをポリシーとしており、今回の株主提案もそのポリシーに沿った想定内の行動と言えるが、注目されるのは、当該株主提案に対する米証券取引委員会(SEC)の判断だ。米国の上場企業はSECに対し株主提案の却下を申請することが認められており、SECが審査を経て当該株主提案が「不適格」と認められれば、株主総会の議案から除外することができる。しかし、チャブ社の申請に対し、SECは今回のグリーンセンチュリーの株主提案を適格と認める判断を下している。

化石燃料事業に関する保険の引受停止を求める株主提案は過去に例がない。仮にこの株主提案が可決されれば、投資家が企業の収益事業に対して気候変動対応等の観点からストップをかけたという前例となるだけに、来月開催されるチャブ社の株主総会の結果には他業界の企業からも注目が集まりそうだ。

2022/04/05 WEBセミナー「速報 2022年3月株主総会のポイント」近日配信予定!

新型コロナウイルス禍において会員の皆様に必要な情報をいち早くお届けするべく、近日中に下記のWEBセミナーの配信を予定しております。

テーマ 講 師
~2022年6月総会対応を“シミュレーション”~
速報 2022年3月株主総会のポイント
三菱UFJ信託銀行 法人コンサルティング部
中川 雅博 様

■WEBセミナーの詳細

セミナー
の内容
3月決算会社に続いて社数が多い12月決算会社の3月総会の動向は、6月総会を控える3月決算会社にとって参考になることが多々あります。6月総会に向けた準備の中で、12月決算会社の3月総会は是非ともチェックしておきたいところです。
本セミナーでは、株主総会実務や株主総会分析の第一人者であり、全国株懇連合会の理事も務める三菱UFJ信託銀行の中川雅博様をお招きし、12月決算会社の2022年3月総会を分析していただきます。2022年3月総会は、2021年6月のコーポレートガバナンス・コード改訂後、多数の「事例」を参照できる初の機会となります。改訂された原則への対応、特にプライム市場上場予定会社においてはより難易度の高いプライム市場特則への対応が問われることになります。気候変動、ダイバーシティ、スキルマトリックス、さらにはサステナビリティとの関連が強いポストコロナ、ロシア問題など、株主にとっては会社に対応を問いたい重要テーマも少なくありません。本セミナーでは、こうしたテーマを背景とした各議案への賛否状況、賛成率の低かった議案についてはその要因、注目される株主からの質問、株主提案議案の動向などを分析していただくほか、コロナ禍の影響がいまだ残る中での出席状況、平均所要時間、事前質問の募集やバーチャル総会の採用状況、招集通知のリリース・送付時期、当日の会場運営といった株主総会実務についてもご紹介いただきます。
講師の
ご紹介
中川 雅博(なかがわ まさひろ)様
大阪大学法学部卒、大阪大学大学院法学研究科(修士課程)修了。1990年、東洋信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)に入社。以後、証券代行部門・法人ビジネス部門に所属し、一貫して会社法務に関するコンサルティングを行う。現在、三菱UFJ信託銀行(株)法人コンサルティング部に所属し、全国株懇連合会理事、東京株式懇話会常任幹事(研究部 研究第1部担当)も務める。
ハンドブックシリーズ1「株主総会」(共著:2002年12月・商事法務)、ハンドブックシリーズ2「株式実務」(共著:2003年4月・商事法務)、「委員会等設置会社への移行戦略」(共著:2003年5月・商事法務)、「株券電子化と移行のポイント」(共著:2008年5月・商事法務)、「株券電子化-その実務と移行のすべて」(共著:2008年8月・きんざい)、「全株懇モデル[新訂2版]」(共著:2009年3月・商事法務)、「株式事務の基礎知識」(2009年11月・商事法務)、「株主総会ハンドブック第3版」(共著:2015年3月・商事法務)、「株主総会・取締役会・監査役会の議事録作成」(共著:2015年3月・清文社)、「監査等委員会設置会社の活用戦略」(共著:2015年9月・商事法務)、「新株主総会実務なるほどQ&A」(共著:2017年3月・中央経済社)、「株主総会の準備実務・想定問答」(共著:2018年1月・中央経済社)など著書多数。

2022/04/04 新市場区分がスタート、経過措置適用期間に対する東証の回答は?

本日(2022年)4月4日、東京証券取引所の株式取引の市場区分(一部、二部、JASDAQ、マザーズ)が、プライム・スタンダード・グロースの3市場に再編された。市場区分の再編に伴い、上場会社各社ではコーポレートサイトの会社概要欄や株式基本情報欄に記載している市場名の変更、会社案内や名刺などに上場市場名を入れている場合は印刷のし直しなど臨時的な業務も発生した(現時点でコーポレートサイト等に旧市場名が記載されている会社も見受けられるので、自社サイト等を確認されたい)。

東証が市場再編日として新年度が開始する4月1日ではなく、あえて4月4日を選定したのには、システム障害のリスクを減らすために週末をはさんでおきたかったという意図がある。その甲斐もあり、4月4日にはシステムトラブルもなく新市場区分での売買が行われ、無事に初日の商いを終えた。4月4日のTOPIX終値が前日比0.48%増となっただけでなく、グロース市場第一号のIPO案件となったセカンドサイトアナリティカは需要高により初値が付かず、明日以降に初値決定がずれ込む展開となるなど、IPOマーケットも活況を呈していた。

順調なスタートを切った市場再編に先立ち、東証は2022年3月31日に・・・

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2022/04/04 新市場区分がスタート、経過措置適用期間に対する東証の回答は?(会員限定)

本日(2022年)4月4日、東京証券取引所の株式取引の市場区分(一部、二部、JASDAQ、マザーズ)が、プライム・スタンダード・グロースの3市場に再編された。市場区分の再編に伴い、上場会社各社ではコーポレートサイトの会社概要欄や株式基本情報欄に記載している市場名の変更、会社案内や名刺などに上場市場名を入れている場合は印刷のし直しなど臨時的な業務も発生した(現時点でコーポレートサイト等に旧市場名が記載されている会社も見受けられるので、自社サイト等を確認されたい)。

東証が市場再編日として新年度が開始する4月1日ではなく、あえて4月4日を選定したのには、システム障害のリスクを減らすために週末をはさんでおきたかったという意図がある。その甲斐もあり、4月4日にはシステムトラブルもなく新市場区分での売買が行われ、無事に初日の商いを終えた。4月4日のTOPIX終値が前日比0.48%増となっただけでなく、グロース市場第一号のIPO案件となったセカンドサイトアナリティカは需要高により初値が付かず、明日以降に初値決定がずれ込む展開となるなど、IPOマーケットも活況を呈していた。

順調なスタートを切った市場再編に先立ち、東証は2022年3月31日に『「上場会社アンケート」を踏まえた今後の東証の取組み』(以下、今後の東証の取組み)を上場会社各社に通知している。これは、東証が昨年(2021年)11月18日から12月17日にかけて上場会社に対して実施したアンケートで寄せられた要望に対する東証としての取組みをまとめたもの。

例えば、「新たな市場区分への移行に伴い、現行制度の実務・業務が変わる場合には、セミナー等で周知してもらいたい」「コーポレートガバナンス・コード全般に関して、解説などのコンテンツがあるとよい」といった要望に対しては、現在は新型コロナウイルス感染症の影響で集合形式のセミナー開催を見合わせているものの、近日中に下記の動画セミナーの配信を行う予定としている。新市場区分下での最新情報を入手するうえで有益なものとなりそうだ。

・「事業計画及び成長可能性に関する事項」開示のポイントと好事例(グロース市場向け)
・「上場維持基準の適合に向けた計画」及び「計画に基づく進捗状況」 作成上の留意事項
・決算発表における留意事項
・「株券等の分布状況表(新様式)」等の作成要領の解説
・コーポレートガバナンス・コードの解説

また、コーポレートガバナンス・コード補充原則3-1③がプライム市場上場会社に対して求めているTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に基づく気候変動開示(気候変動開示については【2021年7月の課題】TCFD等に基づく気候変動開示を参照)に関して、「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)などのESG情報開示に関する解説コンテンツを提供してほしい」といった要望に対しては、既に「ESG情報開示実践ハンドブック」及び「JPX ESGKnowledge Hub」があるとして、その活用を提案している(今後の東証の取組み3ページを参照)。

一方、「適時開示資料について、開示予定日の数日前からTDnetに登録できるようにしてほしい」との要望に対しては、「現行のTDnetでは、適時開示資料の開示予定時刻について、登録日の翌営業日の午前8時59分(普通取引の立会開始時刻前)までの範囲で指定可能な仕様」(それより先の日付の適時開示資料の登録はできない仕様)であるうえに、そもそも適時開示とは「投資者の投資判断に重要な影響を与える会社情報について、発生後直ちにTDnetを通じて開示していただく」という趣旨であることから、今後この仕様を見直す予定はない旨断言している(今後の東証の取組み11ページを参照)。実際のところ、適時開示情報の発生時よりも数日前に開示用の原稿は作られているのが通常だが、あくまで「発生後直ちに開示」という“建前”が維持された。適時開示担当者の働き方改革に資する要望であっただけに、適時開示担当者からは不満の声も上がっている。

新市場の上場維持基準に適合しておらず経過措置の適用を受けている会社にとって最も気になるのは、「経過措置の適用期間を明確にしてほしい」との要望に対する東証の回答内容だろう。しかし、これに対する東証の回答は「現在、具体的に決定した事項はございませんが、今後の検討の進捗に応じて、その都度、必要な情報発信を行うよう努めてまいります」という具体性のないものにとどまっている。唯一、「決まっていない」ということだけが示された格好だ(今後の東証の取組み8ページを参照)。もっとも、東証は以前から、経過措置の適用を受ける各社の上場維持基準に適合しておらず上場維持基準への適合に向けた計画書が出揃ったところで統計をとれば、各社が経過措置としてどれくらいの期間を必要としているかもおおむね見えてくるとし、この期間が経過措置の存続期間であるとの考え方を示しており、経過措置には必ず「終わり」あることも明言している(2021年9月3日のニュース『新市場区分 経過措置が適用される「当分の間」はいつ終わる?』を参照)。この東証のスタンスに変更はないと見られるだけに、経過措置の適用を受けている会社は危機感をもって計画の遂行に努める必要があろう。

経過措置 : 緩和された上場維持基準のこと。プライム市場を選択する場合には、旧市場区分における指定替え基準(流通株式時価総額10億円以上、流通株式比率5%以上など)と同水準、スタンダード市場、グロース市場を選択する場合には、旧市場区分における上場廃止基準(流通株式時価総額2.5億円以上、流通株式比率5%以上など)と同水準。
上場維持基準への適合に向けた計画書 : 初めて「上場維持基準」のいずれかの項目に適合しないこととなったときなどに東証に提出する計画。「上場維持基準の適合に向けた取組の基本方針」や「上場維持基準に適合していない項目ごとの課題と取組内容」の記載が求められる。提出期限は基準日から3か月以内とされている。












2022/04/01 金融庁が注意喚起 有報の定性的情報、記載充実化の裏で不十分な開示例

ここ数年で有価証券報告書のいわゆる定性的情報(【経理の状況】より前の項目)の記載事項が各段に拡充された。特に【事業の状況】の【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【事業等のリスク】【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】や【コーポレート・ガバナンスの状況等】の記載事項の拡充ぶりは目覚ましいものがある(各記載事項の改正内容については、2020年2月18日のニュース「投資家にとって魅力ある有価証券報告書作成のポイント」や2018年11月5日のニュース『速報 「コーポレート・ガバナンスの状況等」の記載内容が大幅改正へ』を参照)。今後、取締役会・委員会等の活動状況、人的資本、気候変動リスク、男女別賃金格差についての情報開示も追加される見込みであり(2022年3月18日のニュース「取締役会・委員会等の活動状況、有価証券報告書での開示義務化へ」、2022年3月30日のニュース「人的資本開示にもTCFD」、2022年1月24日のニュース『岸田総理が「有価証券報告書」における男女別賃金の開示を明言』を参照)、金融庁が有価証券報告書に企業を理解するための情報を集中させていく方針をとっていることは間違いない。

こうした中、例年3月末に公表されている・・・

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2022/04/01 金融庁が注意喚起 有報の定性的情報、記載充実化の裏で不十分な開示例(会員限定)

ここ数年で有価証券報告書のいわゆる定性的情報(【経理の状況】より前の項目)の記載事項が各段に拡充された。特に【事業の状況】の【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【事業等のリスク】【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】や【コーポレート・ガバナンスの状況等】の記載事項の拡充ぶりは目覚ましいものがある(各記載事項の改正内容については、2020年2月18日のニュース「投資家にとって魅力ある有価証券報告書作成のポイント」や2018年11月5日のニュース『速報 「コーポレート・ガバナンスの状況等」の記載内容が大幅改正へ』を参照)。今後、取締役会・委員会等の活動状況、人的資本、気候変動リスク、男女別賃金格差についての情報開示も追加される見込みであり(2022年3月18日のニュース「取締役会・委員会等の活動状況、有価証券報告書での開示義務化へ」、2022年3月30日のニュース「人的資本開示にもTCFD」、2022年1月24日のニュース『岸田総理が「有価証券報告書」における男女別賃金の開示を明言』を参照)、金融庁が有価証券報告書に企業を理解するための情報を集中させていく方針をとっていることは間違いない。

こうした中、例年3月末に公表されている「有価証券報告書レビューの審査結果及び審査結果を踏まえた留意すべき事項」が、今年度(2022年)も3月25日に金融庁から公表された。それによると、金融庁は、一部の会社の有価証券報告書における定性的情報の開示に改善の余地があると指摘している。金融庁が問題視しているのが、下記の有価証券報告書の【コーポレート・ガバナンスの状況等】の【役員の報酬等】の「記載上の注意」における赤字部分だ。

<第三号様式記載上の注意(38)が準用する第二号様式記載上の注意(57)c>
提出会社の役員の報酬等の額又はその算定方法の決定に関する方針の決定権限を有する者の氏名又は名称、その権限の内容及び裁量の範囲を記載すること。また、株式会社が最近事業年度の末日において取締役会設置会社(指名委員会等設置会社を除く。)である場合において、取締役会から委任を受けた取締役その他の第三者が最近事業年度に係る取締役(監査等委員である取締役を除く。)の個人別の報酬等の内容の全部又は一部を決定したときは、その旨、委任を受けた者の氏名並びに当該内容を決定した日における当該株式会社における地位並びに担当、委任された権限の内容、委任の理由及び当該権限が適切に行使されるようにするための措置を講じた場合における当該措置の内容を記載すること。提出会社の役員の報酬等の額又はその算定方法の決定に関する方針の決定に関与する委員会(提出会社が任意に設置する委員会その他これに類するものをいう。以下cにおいて「委員会等」という。)が存在する場合には、その手続の概要を記載すること。また、最近事業年度の提出会社の役員の報酬等の額の決定過程における、提出会社の取締役会(指名委員会等設置会社にあっては報酬委員会)及び委員会等の活動内容を記載すること。

上記のとおり、「記載上の注意」が要求しているのは「取締役会及び委員会等の活動の内容」の記載だが、金融庁は、有価証券報告書の提出会社の中には「活動の内容」を記載せず、「役員の報酬等の額を取締役会等で決定していること(決定方針等)」しか記載していない会社があるとして注意を喚起している(令和元年度(平成31年度)の審査結果のフォローアップ(2/3)を参照)。「活動の内容」という以上、「当事業年度における役員の報酬を決定する過程で、取締役会等において、いつ、どのような内容の審議を行って決定したか」といったことを記載する必要がある。具体的には、(1)「いつ」「どのような」議論をして、(2)「いつ」「何を」決定したのか、という要素が最低限盛り込まれていることは必須となる。例えば、「2021年●月●日に開催した取締役会において●●について、また、▲月▲日に開催した取締役会において▲▲について検討を行い、■月■日の取締役会で■■を決定・・・」)といった記述が求められる。この「活動の内容」が一目瞭然となっているのが、カゴメの2021年12月期の有価証券報告書だ。上場会社各社が参考にすべき開示例と言えよう。

<報酬・指名諮問委員会の役割・活動内容>
 報酬・指名諮問委員会は、取締役会の諮問機関として、役員報酬制度・評価制度の構築・改定にかかる審議や、評価結果、固定報酬、業績連動報酬の妥当性に関する審議を実施しています。
 当事業年度の役員報酬については、以下の通り審議・報告いたしました。
・2021年1月22日:(審議)2020年度役員賞与、役員人事
         (報告)サクセッションプランの進捗、2018年度分ストックオプションの確定
・2021年3月22日:(審議)2021年4月以降の委員会体制、2021年度役員報酬、海外CEO報酬
・2021年7月20日:(審議)取締役処遇
・2021年11月19日:(審議)クローバックマルス条項、(報告)市場報酬サーベイ結果
・2021年12月24日:(審議)クローバック条項、2022年報酬・指名諮問委員会スケジュール
・2022年1月21日:(審議)2021年度役員賞与、(報告)2019年度ストックオプションの確定

また、取締役会の決議により役員報酬の決定の全部または一部を取締役(例えば代表取締役等)に再一任している場合も、「再一任している」で終わりにするのではなく、例えば、再一任に関する審議を行った取締役会の審議内容及び開催時期、再一任を受けた取締役により決定された内容について取締役会で審議を行っている場合にはその審議内容及び開催時期等を記載することで初めて取締役会の「活動内容」を開示したことになる。

記載事項の拡充とともにその内容も複雑となり、「記載上の注意」が定める要件を充たす開示ができていない上場会社は少なくない。「担当者の理解が不十分だった」といった言い訳が通用しないことは、有価証券報告書の【コーポレート・ガバナンスの状況等】の記載内容に虚偽があったとして初めて課徴金を課せられる事案が発生していることからも明らかだ(本事案については2020年2月5日のニュース「有報のCG状況の虚偽記載に初の課徴金、上場会社が今とるべき対策」を参照)。3月決算会社はいよいよ本決算に突入するが、本決算と並行して、金融庁が公表している「記述情報の開示の好事例集2021」や宝印刷などのひな形を参考にしながら、定性的情報の記載内容が開示府令の定める要件を充たしたものとなっているか、点検しておきたい。

2022/03/31 2022年3月度チェックテスト第10問解答画面(不正解)

不正解です。
新市場区分に係る流通株式関連基準のクリアに悩む総務担当者は、実態は政策保有をしている株主に依頼して「純投資」と強引に言い張るような保有状況報告書を差し入れてもらうインセンティブがあるので、上場会社の役員としては、保有状況報告書関連の事務を総務担当者任せにせずに、提出前(自社が株主の場合は相手の会社に提出する前。自社が受け取る場合は東証に提出する前)に保有状況報告書を主体的にチェックする必要があります(問題文は正しいです)。

こちらの記事で再確認!
2022年3月24日 流通株式関連基準の充足が危うい上場会社がとるべき対応(会員限定)

2022/03/31 2022年3月度チェックテスト第10問解答画面(正解)

正解です。
新市場区分に係る流通株式関連基準のクリアに悩む総務担当者は、実態は政策保有をしている株主に依頼して「純投資」と強引に言い張るような保有状況報告書を差し入れてもらうインセンティブがあるので、上場会社の役員としては、保有状況報告書関連の事務を総務担当者任せにせずに、提出前(自社が株主の場合は相手の会社に提出する前。自社が受け取る場合は東証に提出する前)に保有状況報告書を主体的にチェックする必要があります(問題文は正しいです)。

こちらの記事で再確認!
2022年3月24日 流通株式関連基準の充足が危うい上場会社がとるべき対応(会員限定)