2021/12/10 上場企業における人権方針と人権デュー・ディリジェンス対応の実態

2022年の北京冬季オリンピックを控え、西側先進諸国等による外交的ボイコットが現実味を増している。このような人権を錦の御旗にした対中包囲の動きは政治から経済に飛び火しがちだ。ユニクロや無印良品は中国の新疆ウイグル自治区における強制労働や人権侵害に関与している企業と取引があるとして非難を受けたが、北京冬季オリンピックの開催が近づくにつれ、中国でビジネスを展開する企業が突如として次のターゲットにされることもあり得ない話ではない。

そうなる前に打っておきたい「先手」が、人権方針の策定・公表と人権デュー・ディリジェンスの実施だ()。

 2011年に国連人権理事会が策定した「ビジネスと人権に関する指導原則」(以下、指導原則)では、企業に人権方針の策定・公表や人権デュー・ディリジェンスの実施を要請している。指導原則はⅡA15において「人権を尊重する責任を果たすために、企業は、その規模及び置かれている状況に適した方針及びプロセスを設けるべきである。」としたうえで、企業に対し具体的に下記のaからcを要請している。このうちaが「人権方針」であり、bが「人権デュー・ディリジェンス」に該当する。
a 人権を尊重する責任を果たすという方針によるコミットメント
b 人権への影響を特定し、防止し、軽減し、そしてどのように対処するかについて責任を持つという人権デュー・ディリジェンス・プロセス
c 企業が引き起こし、または助長する人権への負の影響からの是正を可能とするプロセス

では、現状、どれほどの日本企業が人権方針を策定し、人権デュー・ディリジェンスを実施しているのだろうか。・・・

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2021/12/10 上場企業における人権方針と人権デュー・ディリジェンス対応の実態(会員限定)

2022年の北京冬季オリンピックを控え、西側先進諸国等による外交的ボイコットが現実味を増している。このような人権を錦の御旗にした対中包囲の動きは政治から経済に飛び火しがちだ。ユニクロや無印良品は中国の新疆ウイグル自治区における強制労働や人権侵害に関与している企業と取引があるとして非難を受けたが、北京冬季オリンピックの開催が近づくにつれ、中国でビジネスを展開する企業が突如として次のターゲットにされることもあり得ない話ではない。

そうなる前に打っておきたい「先手」が、人権方針の策定・公表と人権デュー・ディリジェンスの実施だ()。

 2011年に国連人権理事会が策定した「ビジネスと人権に関する指導原則」(以下、指導原則)では、企業に人権方針の策定・公表や人権デュー・ディリジェンスの実施を要請している。指導原則はⅡA15において「人権を尊重する責任を果たすために、企業は、その規模及び置かれている状況に適した方針及びプロセスを設けるべきである。」としたうえで、企業に対し具体的に下記のaからcを要請している。このうちaが「人権方針」であり、bが「人権デュー・ディリジェンス」に該当する。
a 人権を尊重する責任を果たすという方針によるコミットメント
b 人権への影響を特定し、防止し、軽減し、そしてどのように対処するかについて責任を持つという人権デュー・ディリジェンス・プロセス
c 企業が引き起こし、または助長する人権への負の影響からの是正を可能とするプロセス

では、現状、どれほどの日本企業が人権方針を策定し、人権デュー・ディリジェンスを実施しているのだろうか。経済産業省と外務省が2021年8月末に東証一部・二部上場企業等2,786社を対象に実施した「日本企業のサプライチェーンにおける人権に関する取組状況のアンケート調査」の集計結果(2021年11月30日公表。以下、アンケート調査結果)によると、回答があった企業760社のうち約7割(69%、523社)が人権方針を策定し、約5割(52%、392社)が人権デュー・ディリジェンスを実施していた(集計結果の3ページ参照)。
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アンケートに回答しなかった企業の中には人権関連の取り組みが遅れている企業が多く含まれていると推測されることから、東証一部・二部上場企業全体における「人権方針を策定している企業の比率」「人権デュー・ディリジェンスを実施している企業の比率」は回答企業における比率よりもかなり少ないものと思われる。

もっとも、「人権方針を策定している」「人権デュー・ディリジェンスを実施している」と回答した企業であっても、それが指導原則の求めるレベルに達しているとは限らない。上記アンケート調査結果では、“遵守のレベル感”も明らかになっている。

まず「人権方針」について定めた指導原則B16では、企業に対し「人権を尊重する責任を定着させるための基礎」として、以下の要件を備える方針の声明を通して、その責任を果たすというコミットメントを明らかにすることを求めている。

・企業の最上級レベルで承認されている。
・社内及び/または社外から関連する専門的助言を得ている。
・社員、取引先、及び企業の事業、製品またはサービスに直接関わる他の関係者に対して企業が持つ人権についての期待を明記している。
・一般に公開されており、全ての社員、取引先、他の関係者にむけて社内外にわたり知らされている。
・企業全体にこれを定着させるために必要な事業方針及び手続のなかに反映されている。

これらの要件の遵守状況は下掲のグラフのとおりとなっている(集計結果の4ページ参照)。

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特に遵守割合が低かったのが「内部及び/または外部の適切な専門家により情報提供を受けたこと」であり、56%にとどまった。人権の専門家の力を借りずに人権方針をゼロから策定するのはハードルが高いことを考えると、他社の開示例を参考にしたボイラープレート的な内容の域を出ていない企業も少なくないことが想定される。

ボイラープレート : ひな型的な決まり文句を指す。

また、「人権デュー・ディリジェンス」について定めた指導原則ⅡB17では、その対象を「企業がその企業活動を通じて引き起こしあるいは助長し、またはその取引関係によって企業の事業、商品またはサービスに直接関係する人権への負の影響」としていることから、仕入先(直接仕入先だけでなく間接仕入先も含む)や販売先、最終顧客についても人権デュー・ディリジェンスを実施することが望ましい。しかし、下掲のグラフのとおり、特に間接仕入先や顧客、投融資先については多くの企業が人権デュー・ディリジェンスを実施できていないことが分かる(集計結果の7ページ参照)。

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ただし指導原則の解説では、人権リスクについて、「契約やその他の合意が形作られる段階で増大または軽減されうる」と指摘したうえで「新たな事業または取引関係を展開するにあたっては、人権デュー・ディリジェンスはできるだけ早く着手されるべき」としつつも、企業のバリューチェーンに多数の企業体がある場合には、企業がそれら全てにわたって人権への負の影響に対するデュー・ディリジェンスを行うことは困難であることから、「関係する供給先または受給先企業の事業状況、特定の事業活動、関連製品やサービス、または他の関連する考慮事項によって、人権への負の影響のリスクが最も大きくなる分野を特定し、人権デュー・ディリジェンスのためにこれらを優先的に取り上げるべき」としている。すなわち指導原則では、人権デュー・ディリジェンスに優先順位を付けて対応することを想定しているということだ。

このように、人権方針や人権デュー・ディリジェンスについて指導原則が定める要件の遵守状況が必ずしも十分とは言えない水準であるというアンケート調査結果に、まだ人権方針や人権デュー・ディリジェンスへの対応に着手さえしていない企業は胸をなでおろすかもしれないが、投資家がESGSDGsへの取り組みに注目する中、このまま何もしなければ、ユニクロや無印良品に起きたような“有事”が発生した際には一気に企業価値を下げることにつながるリスクがある。人権問題について最初から100点を狙うのは困難であるため、まずは“及第点”を目指して大きな穴から順に潰し、指導原則が求める水準に徐々に近づけていくべく、一刻も早く第一歩を踏み出すべきであろう。

ESG : 「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を組み合わせたもので、近年、特にグローバル機関投資家の間で、企業の投資価値を測る評価項目としての地位を確立している。
SDGs : 「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、「エスディージーズ」と読む。「人間、地球及び繁栄」のための行動計画として国連が掲げる世界共通の目標であり、気候変動対策やジェンダーの平等など17の目標と169のターゲットからなる。2015年9月に開催された「国連持続可能な開発サミット」において150を超える加盟国首脳の参加のもとで採択され、2016年から2030年までの15年間での達成を目指している。

 

 

 

 

 

2021/12/09 有価証券報告書に「サステナビリティ情報」欄が新設された場合の留意点

金融庁の金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」では現在、気候変動情報をはじめとするサステナビリティ情報の有価証券報告書での開示について検討を重ねているが、2021年11月17日のニュース「有価証券報告書において任意開示書類を参照することの是非」でお伝えしたとおり、サステナビリティ情報を有価証券報告書で開示する際に統合報告書などの任意開示書類を有価証券報告書から参照する方法は、有価証券報告書が「一覧性」という機能を果たせなくなるなど複数の問題をはらんでいる。このため、少なくとも企業価値や業績などに影響を与える重要なサステナビリティ情報は有価証券報告書に記載することになりそうだ。では、サステナビリティ情報は有価証券報告書のどの欄で開示されるのだろうか。・・・

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2021/12/09 有価証券報告書に「サステナビリティ情報」欄が新設された場合の留意点(会員限定)

金融庁の金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」では現在、気候変動情報をはじめとするサステナビリティ情報の有価証券報告書での開示について検討を重ねているが、2021年11月17日のニュース「有価証券報告書において任意開示書類を参照することの是非」でお伝えしたとおり、サステナビリティ情報を有価証券報告書で開示する際に統合報告書などの任意開示書類を有価証券報告書から参照する方法は、有価証券報告書が「一覧性」という機能を果たせなくなるなど複数の問題をはらんでいる。このため、少なくとも企業価値や業績などに影響を与える重要なサステナビリティ情報は有価証券報告書に記載することになりそうだ。では、サステナビリティ情報は有価証券報告書のどの欄で開示されるのだろうか。

気候変動情報について考えてみると、TCFDに基づく開示における4つの柱「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」を現行の有価証券報告書の開示欄に当てはめれば下表のイメージとなる(TCFD開示の4つの柱については2021年7月7日のニュース「TCFD開示の4要素のうち有報での開示が必須となりそうな2要素とは?」参照)。

TCFD : 主要国の金融当局(中央銀行、金融監督当局、財務省)やIMF(国際通貨基金)、世界銀行、BIS(国際決済銀行)、OECD(経済協力開発機構)などで構成される国際的な金融システムの安定を目的とする組織である金融安定理事会(FSB)が設置した組織。TCFDとは「Task Force on Climate-related Financial Disclosures」の略である。TCFDが2017年6月に公表した最終提言は、気候変動リスクに関する情報開示のフレームワーク(枠組み)のグローバルスタンダードになりつつある。

TCFDに基づく開示項目 左記の開示項目に対応すると考えられる現行有価証券報告書の開示欄
ガバナンス 【コーポレート・ガバナンスの状況等】
戦略 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
【事業等のリスク】
リスク管理 【事業等のリスク】
指標と目標 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

ただ、現行の有価証券報告書の開示欄を変更せずにサステナビリティ情報を開示すれば、情報が有価証券報告書の各所に分散することになり、投資家にとって分かりにくいものとなるうえ、仮にサステナビリティ情報の監査をすることになった場合には、監査の対象範囲が不明確になるといった問題が生じることも予想される。

既にサステナビリティ情報を有価証券報告書で開示している会社の多くは、【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【事業等のリスク】欄を活用しているが、その開示内容はサステナビリティに関する大枠の方針が大半となっており、今後サステナビリティ情報の開示内容の充実・拡大を図った場合、他の「課題」「リスク」のボリュームとのバランスが崩れて本欄を読みにくくなるだけでなく、重点の置きどころが分かりづらくなり有価証券報告書の利用者である投資家の判断をミスリードする可能性もある。そこで考えられるのは、「サステナビリティ情報」といった記載欄を新たに設けて、【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】【事業等のリスク】と関連させる形だ。

本来、サステナビリティを巡る課題は「経営課題」そのものであり、それを経営方針にどう組み込んでいくかは取締役会が責任を持って決定する必要がある。そこで、まずは有価証券報告書の【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】欄でサステナビリティに関する方針の全体像を示し、そのうえで、サステナビリティ関連の指標や具体的な取り組みについては、「サステナビリティ情報」欄に集約することが考えられる。会社に開示を促し、その結果として各社の比較可能性を向上させるという観点からも、新たな記載欄を設けることは有用と言えよう。

ただし、会社によっては【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】や【事業等のリスク】といった既存の記載欄に記載した方がよりストーリー性が出しやすい、あるいは情報の重複が避けられるということもあるだろう。そのような場合には、既存の記載欄で開示を行ったうえで、「サステナビリティ情報」欄とリンクさせるといった柔軟な対応が考えられる。

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もっとも、「サステナビリティ情報」という開示欄を新たに設けることが必ずしもメリットばかりを生むわけではない。「サステナビリティ情報」欄が設けられることで、組織がセクショナリズムに陥る可能性もある。例えば、「サステナビリティ情報」欄がサステナビリティ専従部門あるいはCSR部門の独壇場となり、そこで企業価値や投資判断とは異なる世界が形成されてしまうリスクがある。

CSR : 「Corporate Social Responsibility」の略で、「企業の社会的責任」と訳される。企業を「社会の構成員」として位置付けることで、企業は取引先・消費者・株主・従業員・地域社会などのステークホルダーに対し責任ある行動を行い、社会的課題に応え、ステークホルダーとの間で信頼関係を築いていくべきという考え方。

現在は上場会社の多くが気候変動情報をはじめとするサステナビリティ情報の開示を真剣に検討している段階にあると思われるが、そもそも経営トップがサステナビリティを巡る課題を「経営の重要課題」と認識していなければ、サステナビリティ情報を開示したところで絵に描いた餅となってしまう。現場は単なる“開示作業”に追われ、その結果、関係各部署間での作業分担の問題が生じ、現場が疲弊するだけという事態を招きかねない。それを避けるためには、経営陣がサステナビリティ情報の提供は企業価値向上や投資判断のために必要であるという大前提を踏まえて開示を促す、自社なりの開示フレームワークの構築が必要となろう。

2021/12/08 変わる「投資家にとって魅力の高い会社」の定義

投資家にとって魅力のある会社は、産業の盛衰など時代の変化とともに移り変わってきた。その定義は一律ではないが、一つの考え方を示すのが、・・・

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2021/12/08 変わる「投資家にとって魅力の高い会社」の定義(会員限定)

投資家にとって魅力のある会社は、産業の盛衰など時代の変化とともに移り変わってきた。その定義は一律ではないが、一つの考え方を示すのが、「投資者にとって投資魅力の高い会社」を構成銘柄とすることをコンセプトとしているJPX日経インデックス400銘柄の選定基準だ。

東証は来年(2022)年4月4日からの新市場区分への移行を前にJPX日経インデックス400の算出要領を改定、その中でJPX日経インデックス400の銘柄選定基準も見直しており、2022年8月の定期入替から適用する(改定に関する東証および日本経済新聞社のリリースはこちら)。

JPX日経インデックス400に選定される銘柄の母集団は新興市場を含む東証の市場(1部・2部、マザーズ、JASDAQ市場。今回の改定が適用される2022年8月の定期入替からはプライム、スタンダード、グロース市場)に上場する普通株式等であり、この中から「投資者にとって投資魅力の高い会社」が選出される。現行の選定基準および選定プロセスは以下のとおりとなっている(赤字・下線部分が今回の改定箇所。改定内容については後述)。

(1)適格性:以下の銘柄を除外
・上場後3年未満(テクニカル上場を除く)
・過去3期いずれかの期で債務超過
・過去3期すべての期で営業赤字
・過去3期すべての期で最終赤字
整理銘柄等に該当

テクニカル上場 : 通常の新規上場審査よりも簡略化された手続きにより非上場会社の株式を速やかに上場させること。上場会社が非上場会社との合併により解散する場合や、株式交換、株式移転により非上場会社の完全子会社となる場合、当該非上場会社が発行する株式の上場が想定されている。これにより、従来の上場会社の株主に継続的な株式流通の場を提供することが可能となる。
整理銘柄 : 上場廃止基準に該当し、上場廃止が決定した銘柄のこと。上場廃止が決定した場合には、投資家が整理売買を行うことができるよう、原則として1か月間、整理銘柄に指定し、上場廃止の事実を投資家に周知させる。これに対し、上場廃止基準に該当する恐れがあるものの上場廃止が決定したわけではない銘柄は「監理銘柄」に指定され、その後上場廃止が決定した場合に整理銘柄に指定されることになる。

(2)流動性:以下の指標で上位1000銘柄を抽出 
・直近3年間の売買代金
選定基準日時点における時価総額

選定基準日 : 定期入替に係る基準日は、「毎年6 月の最終営業日」とされる。

(3)定量指標:以下の3つの指標について順位スコアを付与したうえで、各指標のウェイトによって総合スコアを算出
・3年平均ROE:40%
・3年累積営業利益:40%
・選定基準日時点における時価総額:20%
3年平均および直近のROEが負、または3年累積営業利益が負の銘柄は後順位とする

ROE : Return On Equity=株主資本利益率(当期純利益/株主資本)

(4) 定性要素:以下の各項目への該当状況を勘案した定性スコアを加点
独立した社外取締役の選任(1/3以上又は3人以上)
・IFRS採用(または採用を決定)
・決算情報・CG報告書に係る英文資料のTDnetを通じた開示

TDnet : Timely Disclosure networkの略。上場会社が行う適時開示に関する一連のプロセス、すなわち証券取引所への事前説明(開示内容の説明)、報道機関への開示(記者クラブや報道機関の本社の端末への開示資料の伝送)、ファイリング(開示資料のデータベース化)、公衆縦覧(開示資料の適時開示情報閲覧サービスへの掲載)を総合的に電子化したシステム。

(5)銘柄選定:最終スコアを基準に以下の手順により400銘柄を決定
・前年度採用銘柄でスコアが440位以内
・未だ400に不足する場合は、スコア上位で3年平均および直近のROEが中央値以上
未だ400に不足する場合は、スコア上位

今回、上記赤字・下線部分は以下のとおり改定された。改定には大きく分けて3つのポイントがある。具体的には、上記(3)と(5)におけるROE基準の強化と、(4)における独立社外取締役の閾値引き上げ、(4)における女性役員の追加、である。「ROE」と「ガバナンス」がより重視されたものと言えよう。

(3)の定量指標におけるROEの重視
3年平均および直近のROEが負、または3年累積営業利益が負の銘柄は後順位とする 3年平均および直近のROEが下位10%もしくは負、または3年累積営業利益が負の銘柄は後順位とする
(5)の銘柄選定におけるROE重視
未だ400に不足する場合は、スコア上位 未だ400に不足する場合は、スコア上位のうち、3年平均ROEが高い順
(4)の定性要素における独立社外取締役の閾値引き上げ
独立した社外取締役の選任(1/3以上又は3人以上) 独立した社外取締役の選任(過半数)
(4)定性要素における女性役員の追加
女性役員が1人以上(有報「役員の状況」)

JPX日経インデックス400は銘柄の入れ替わりが激しく、連続性のある指標として評価しにくいことや、結果的にパフォーマンスがTOPIXと大差ないことなどから、その存在意義を疑問視する向きも少なくない。しかし、「投資者にとって投資魅力の高い会社」を定義付ける指標として一定の存在感・影響力はあるだけに、上場会社としては、銘柄選定におけるROEとガバナンスの期待水準が引き上げられたという事実を真摯に受け止める必要があろう。

2021/12/07 速報版・TCFDが公表した2つの新しいガイダンスの改訂箇所&改訂のポイント

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース。以下、適宜「タスクフォース」という)は2021年10月14日、企業向けの2つのガイダンスを公表している。1つはTCFDが2017年に最終報告書(以下、「勧告」という)を公表した際の付属書である実施ガイダンスを初めて改訂した「Implementing the Recommendations of the Task Force on Climate-related Financial Disclosures」、もう1つは、TCFD開示の4要素(2021年7月7日のニュース「TCFD開示の4要素のうち有報での開示が必須となりそうな2要素とは?」参照)を構成する「指標と目標」および「移行計画」についての新規のガイダンス「Guidance on Metrics, Targets, and Transition Plans」だ。

TCFD : 主要国の金融当局(中央銀行、金融監督当局、財務省)やIMF(国際通貨基金)、世界銀行、BIS(国際決済銀行)、OECD(経済協力開発機構)などで構成される国際的な金融システムの安定を目的とする組織である金融安定理事会(FSB)が設置した組織。TCFDとは「Task Force on Climate-related Financial Disclosures」の略である。TCFDが2017年6月に公表した最終提言は、気候変動リスクに関する情報開示のフレームワーク(枠組み)のグローバルスタンダードになりつつある。

実施ガイダンスの改訂では、勧告の「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」という開示の4要素とその下に設定された11の推奨事項(上記で引用したニュースの表参照)という基本的な構造は変えず、主に「戦略」と「指標と目標」が更新された。更新内容は全セクターに適用される項目と、金融セクター(銀行、保険会社、アセット・オーナー、アセット・マネジャー)に適用される項目に分かれる。・・・

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2021/12/07 速報版・TCFDが公表した2つの新しいガイダンスの改訂箇所&改訂のポイント(会員限定)

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース。以下、適宜「タスクフォース」という)は2021年10月14日、企業向けの2つのガイダンスを公表している。1つはTCFDが2017年に最終報告書(以下、「勧告」という)を公表した際の付属書である実施ガイダンスを初めて改訂した「Implementing the Recommendations of the Task Force on Climate-related Financial Disclosures」、もう1つは、TCFD開示の4要素(2021年7月7日のニュース「TCFD開示の4要素のうち有報での開示が必須となりそうな2要素とは?」参照)を構成する「指標と目標」および「移行計画」についての新規のガイダンス「Guidance on Metrics, Targets, and Transition Plans」だ。

TCFD : 主要国の金融当局(中央銀行、金融監督当局、財務省)やIMF(国際通貨基金)、世界銀行、BIS(国際決済銀行)、OECD(経済協力開発機構)などで構成される国際的な金融システムの安定を目的とする組織である金融安定理事会(FSB)が設置した組織。TCFDとは「Task Force on Climate-related Financial Disclosures」の略である。TCFDが2017年6月に公表した最終提言は、気候変動リスクに関する情報開示のフレームワーク(枠組み)のグローバルスタンダードになりつつある。

実施ガイダンスの改訂では、勧告の「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」という開示の4要素とその下に設定された11の推奨事項(上記で引用したニュースの表参照)という基本的な構造は変えず、主に「戦略」と「指標と目標」が更新された。更新内容は全セクターに適用される項目と、金融セクター(銀行、保険会社、アセット・オーナー、アセット・マネジャー)に適用される項目に分かれる。

■実施ガイダンスの改訂箇所と改訂のポイント
A はじめに セクションA.3を更新。重要性評価とは無関係に、すべての組織がスコープ1スコープ2の温室効果ガス(GHG=GreenHouse Gas)排出量を開示することを奨励するための勧告を適用。スコープ3のGHG排出量の開示は重要性評価の対象だが、タスクフォースは開示を奨励。

スコープ1 : 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出のこと。
スコープ2 : 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出のこと。
スコープ3 : スコープ1、スコープ2以外の間接排出、具体的には「事業者の活動に関連する他社の排出」のこと。

B 勧告 変更なし
C すべてのセクターのための手引き 勧告を開発する際にタスクフォースが既存の開示枠組みを使用していることを主に示すために記載されていた、勧告と他の開示枠組みとの整合性に関する表を削除。タスクフォースが勧告を公表した2017年以降、多くの気候関連の開示枠組みは勧告と整合しており、一般的に整合性がある箇所を枠組み内で示しているため。
戦略
・組織に対する財務的影響、および低炭素経済への移行に関する計画(移行計画)の明確な開示を求める。
・組織への潜在的な財務的影響の明確な開示を求める。
指標と目標
・現在、過去、将来の期間について、業界横断的な気候関連の指標の明確な開示を求める。
重要性評価とは無関係に、スコープ1、スコープ2のGHG排出量の開示を求める。
スコープ3のGHG排出量の開示を奨励
業界横断的な気候関連の指標についての目標の開示を求める。
・中長期目標を開示する組織向けに、可能な場合は中間目標の開示を求める。
D 金融セクターのための補足手引き
:銀行
戦略
炭素関連資産へのエクスポージャーを報告する目的で、資産の定義を拡張。2017年の勧告でタスクフォースが特定したすべての非金融グループを対象とした。

エクスポージャー : 保有する金融資産のうち、市場の価格変動リスクや特定のリスクにさらされている金融資産の金額や割合のこと。エクスポージャー(exposure)とは本来「晒されていること」との意味がある。

指標と目標
貸付およびその他の金融仲介事業が2℃以下シナリオと整合している範囲の開示を求める。
・可能な範囲での貸付およびその他の金融仲介事業のGHG排出量の開示を求める。

2℃以下シナリオ : 気温の上昇を「2℃以内」にとどめることを目標とするパリ協定で合意された脱炭素社会を目指すシナリオ

:保険会社 指標と目標
保険引受が2℃以下シナリオとどの程度整合しているかの開示を求める。
・可能な限り、商業用不動産および専門事業に関連する加重平均炭素強度またはGHG排出量の開示を求める。

加重平均炭素強度 : 企業の売上当たりの温室効果ガス排出量を、投資家のポートフォリオにおける保有割合に応じて加重平均した指標。WACI(Weighted Average Carbon Intensity)とも呼ばれ、TCFDが開示を推奨している。

:アセット・オーナー 指標と目標
保有資産、ファンドと投資戦略が関連する場合、2℃以下シナリオとどの程度整合しているかの開示を求める。
・可能な範囲での保有資産のGHG排出量の開示を求める。
:アセット・マネジャー 指標と目標
運用資産、商品と投資戦略が関連する場合、どの程度2℃以下シナリオと整合しているかの開示を求める。
・データと方法論が許す場合、運用資産のGHG排出量の開示を求める。
E 非金融グループのための補足手引き 他の開示枠組みと基準設定機関による作業は、セクター固有の指標に関するより詳細なガイダンスを提供し、定期的に更新されることから、4つの非金融グループの指標の例示を削除。
F 効果的な開示のための基本原則 変更なし
付録 業界横断的な気候関連の指標のカテゴリーに関する新しい付録を追加し、各指標を用いる理由に関する詳細な情報を提供。

また、全セクターガイダンス「指標と目標」では、開示の比較可能性を高めるため、財務上の影響を評価するうえで特に重要な「業界横断的な指標の7つのカテゴリー」を示している。

※TCFD 「2017 TO 2021 TCFD IMPLEMENTING GUIDANCE (ANNEX) Summary of Change」より一部抜粋して仮訳
GHG排出量 スコープ1、スコープ2、スコープ3の総量。排出量原単位

排出量原単位 : 一定量の生産物を作る過程で排出する二酸化炭素排出量のこと。

移行リスク

移行リスク : 低炭素経済への移行に伴うリスク。例えば、既存製品/サービスの低炭素オプションへの置換、低炭素技術への移行の先行コストの発生、原材料コストの高騰、消費者の嗜好変化、特定のセクターへの非難など。

移行リスクに対して脆弱な資産または事業活動の量と範囲
物理的リスク

物理的リスク : 異常気象の激化や海面上昇、長期的高温などに伴うリスク。例えば製造能力の減少、輸送の困難性・サプライチェーンの障害)による収入減少。不動産及び資産へのダメージ、水力発電設備や原子力・火力発電所用冷却水への不十分な水供給による操業コストの増大など。

物理的リスクに対して脆弱な資産または事業活動の量と範囲
気候関連機会 気候関連機会と連動する収益、資産、またはその他の事業活動の割合
資本的支出等 気候関連リスクと機会に対して配分した資本支出、資金調達、または投資の金額
内部炭素価格 組織が内部で使用するGHG排出量1トンあたりの価格
報酬 気候変動の考慮に関連する経営幹部の報酬の割合

この7つのカテゴリーを含め、新規のガイダンスでは「指標と目標」や移行計画について詳述している。

日本国内では、「気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響」についての開示を求めるコーポレートガバナンス・コードの補充原則3-1③のほか、現在金融庁の金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」議論が進んでいる制度開示(有価証券報告書)の中でのサステナビリティ情報開示はTCFDを前提としている。また、今回のTCFDのガイダンスの改訂内容は資本市場の声を踏まえたものであり、2022年6月に公表予定のISSB(International Sustainability Standards Board=国際サステナビリティ基準審議会)基準(国際的に統一された気候変動開示基準。2021年12月1日のニュース「IFRS財団におけるISSBの設立と日本の対応」参照)にも大きな影響を与えることが想定される。ガイダンスの改訂内容の詳細については続報したい。

2021/12/06 年末年始休業のお知らせ

誠に勝手ながら、2021年12月28日~2022年1月7日は
事務局の年末年始休業となります。
ご不便をおかけしますが、何卒ご理解いただきますようお願い致します。

なお、会員登録は冬季休業期間中もオンラインにて可能です。
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