既に新聞報道等もされているとおり、IFRS財団は11月3日、COP26において、ISSB(International Sustainability Standards Board=国際サステナビリティ基準審議会)の設立を正式に公表した(ISSB については2021年9月28日のニュース『気候変動など非財務の「開示基準」の行方』および同ニュースで引用されているニュース参照)。そこでは、ISSBと既存の非財務情報開示基準設定主体との統合(*1)、ISSBの拠点(*2)についても明らかにされた。
COP26 : 英国グラスゴーで2021年11月1日~12日に開催された「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議」のこと。COP26では、「パリ協定」と「気候変動に関する国際連合枠組条約」の目標達成に向けた行動を加速させるため、締約国が一堂に会して議論する。COPとは「Conference Of the Parties」の略で「コップ」と読む。「Parties」とは条約を結んだ締約国の集まりのことである。
*1 ISSBがVRF(Value Reporting Foundation:
IIRCと
SASBが統合した組織)および
CDSB(Climate Disclosure Standards Board=気候変動情報開示審議会)と2022年6月までに完全な統合を行うことが表明された。
*2 ISSBの議長オフィスをフランクフルトに置く一方で、モントリオール・サンフランシスコ・ロンドンにも拠点を置くこと、アジア・オセアニア地域については、東京と北京に拠点を設置することについて議論を継続することが明らかにされた。
IIRC : International Integrated Reporting Council(国際統合報告評議会)の略称で、財務資本の提供者が利用可能な情報の改善、効率的に伝達するアプローチ確立等を目指し、英国で設立された、規制者、投資家、企業、基準設定主体、会計専門家、NGOにより構成される国際的な連合組織である。IIRCは2013年、統合報告書の作成についての考え方をまとめた「国際統合報告フレームワーク(The International <IR> Framework)」を公表。それ以降、日本をはじめ、世界で統合報告化が進んだ。現在は米国SASB (サステナビリティ会計基準審議会)と合併し、VRF(=Value Reporting Foundation ※SASBとIIRCが合併して設立された団体)となった。
SASB : Sustainability Accounting Standards Board(サステナビリティ会計基準審議会)の略称で、2011年に米国サンフランシスコを拠点に設立された非営利団体。企業の情報開示の質向上に寄与し、中長期視点の投資家の意思決定に貢献することを目的に、将来的な財務インパクトが高いと想定されるESG要素に関する開示基準を設定している。2018年11月、11セクター77業種について情報開示に関するスタンダードを作成し、公表した。
今後、ISSBは、来年6月を目途に国際的に統一された気候変動開示基準を公表すべく、作業を加速させる見込みだ。ここで重要なのは、ISSBの設立表明の際に、気候変動開示基準のプロトタイプが公表されており、それを基にISSBで検討が行われ、来年早々にも気候変動開示基準の公開草案が公表されるという点である。気候変動以外のサステナビリティ基準の策定に向けたアジェンダを協議する機会の設定も予定されている。本稿では、当フォーラムの独自取材に基づき、今後の日本国内における対応をレポートする。
FASF(財務会計基準機構)による国際発信と国内基準開発
ISSBの設立に対応して、国内の体制整備に向けた議論が我が国でも行われている。
金融庁金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ(第3回会合)では、「サステナビリティ開示基準対応を行う組織」を新設し、「ISSBへの意見発信」と「ISSB基準を踏まえた我が国におけるサステナビリティ開示の個別項目の検討」を行うことが提案された。
経団連も提言「国際的な意見発信と国内の基準開発を担うサステナビリティ基準委員会(仮称)の設立を求める」を11月16日公表し、「FASFのもとに、『サステナビリティ基準委員会(仮称)』を新たに立ち上げ、我が国の意見の積極的な国際発信、透明性のある国内のサステナビリティ基準開発を行うことが適当である」と主張した。
既にFASFは、「サステナビリティ報告基準の調査研究及び開発」「国際的なサステナビリティ報告基準の開発への貢献」を事業内容に盛り込む定款変更を完了している。実質的に、FASFにおいて、ISSBの対応と国内基準の開発が行われることが固まったと言える。
今後の焦点
今後、我が国では、FASFが新たに組成することが見込まれる「サステナビリティ基準委員会(仮称)」が、ISSBの開発する基準に対する我が国からの意見発信の中核を担う。ISSBが最終化した基準を踏まえ、「サステナビリティ基準委員会(仮称)」が国内基準を策定、それを基に金融庁が開示府令を改正し、金融商品取引法に基づく有報開示の対象が定まる、といった国内プロセスとなることが見込まれている。
したがって、まず重要なのは、ISSBでどのような基準が作られるかということになる。
上述のとおり、ISSBは、設立の前から気候変動開示基準のプロトタイプを公表している。今後これをベースに、ISSBの第1号基準(気候変動開示基準)が来年の6月までに策定される。
本プロトタイプの詳細は改めて詳報するが、プロトタイプでは、TCFD提言のみならず、SASBスタンダード(業種別基準)の内容も色濃く反映されているまた、いわゆる温室効果ガス(GHG=Greenhouse Gas)排出量の開示も「Scope3(企業のサプライチェーンまでを含めたGHG排出量の開示)」までを射程とした厳しい内容となっている。ISSBが気候変動開示基準の公開草案を公表すれば、「サステナビリティ基準委員会(仮称)」を中心に、日本の実情を踏まえた基準となるよう、強力な意見発信を行うことが重要になろう。
Scope3 : 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出のことを指すのが「Scope1」 、他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出のことを指すのが「Scope2」であり、「Scope3」とは、Scope1、Scope2以外の間接排出、具体的には「事業者の活動に関連する他社の排出」のことを指す。