2021/12/06 帳簿書類の「紙」保存を巡る留意点(会員限定)

本日、一部の新聞で、来年(2022年)1月1日から施行される改正電子帳簿保存法により帳簿書類の保存は「電子データ」でしか認めないこととする措置(=電子データを出力した「紙」を保存していても、電子データ自体がなければ「帳簿書類の保存がない」とされ、電子帳簿保存法違反となる)について2年間の適用猶予期間を設けるとの報道が見受けられた。基本的な内容は既に当フォーラムが報じてきたとおりだが(2021年11月18日のニュース「改正電子帳簿保存法への対応に企業が悲鳴、来年1月1日までにシステム構築間に合わず」、2021年12月2日のニュース「予想以上に高かった帳簿書類のペーパーレス化の壁」参照)、この新聞報道には一部正確ではないと思われる情報が含まれているので注意したい。

電子帳簿保存法 : 法人税法などは、正しく納税されているかどうかを後々検証できるよう、帳簿書類を一定期間(例えば法人税法上、帳簿書類は確定申告書の提出期限の翌日から7年間)保存することを求めている。電子帳簿保存法とは、企業等の保存コストを軽減するため、帳簿書類を「電子データ」で保存することを認めるものである。

具体的には、帳簿書類を引き続き「紙」で保存する場合、その可否を「企業の申し出に応じて税務署長が判断する」との部分だ。

結論から言えば、紙での保存にあたり税務署への届出などは一切必要ない。そもそも今回の適用猶予措置は、改正電子帳簿保存法の施行までにシステム対応が間に合わないという企業が続出しているという事態を受けたものであり、改正電子帳簿保存法(施行規則)の“再改正”により、全企業に対し一律に適用される。すなわち、企業が望むか望まないかにかかわらず、改正電子帳簿保存法の施行(2022年1月1日)から2年間は、現行法同様、紙での帳簿書類の保存が認められることになる。

当フォーラムが改正電子帳簿保存法に対応したシステム構築に取り組む会員企業(すべて上場企業)数社にヒアリングしたところ、改正電子帳簿保存法の施行にシステム構築・実装が間に合うと回答した企業は1社もなく、最も早い時期を示した企業でも来年の夏~秋口との見通しだった。

著名大手企業である当該企業でさえ本来の施行日より半年前後システムの導入が遅れることを考えると、むしろ最初から政府による施行日の設定に無理があったという面は否定できないだろう。このような経緯を踏まえても、紙による保存の可否について企業側が税務署長に“お伺い”を立てるという制度設計に合理性が見いだせないことは明らかだろう。企業はシステムが完成するまでは紙での保存を併用しながら(繰り返しになるが、税務署長の承認は不要)、猶予期間を有効に活用して精度の高いシステムの構築にまい進されたい。

2021/12/04 DXで再び注目を集めるBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)

ITの力を借りてビジネスモデルや組織を変革するDX(デジタル・トランスフォーメーション)に取り組む企業が急増する一方で(DXの詳細については【WEBセミナー】デジタル変革の本質を参照)、かつてブームにあったBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)にも再び注目が集まっている。BPRとは、4半世紀以上前の1993年に刊行された「リエンジニアリング革命」(著者は元マサチューセッツ工科大学教授のマイケル・ハマーと経営コンサルタントのジェイムズ・チャンピー)によって提唱された概念であり、「コスト、品質、サービス、スピードのような、重大で現代的なパフォーマンス基準を劇的に改善するために、ビジネス・プロセスを根本的に考え直し、抜本的にそれをデザインし直すこと」と定義されている(BPRの詳細についてはこちらを参照)。同書の影響を受け、多くの日本企業でBPRが実践され、それなりの成果を出してきたが、一時の流行は落ち着いた感があった。しかし、近年の働き方改革やコロナ禍におけるリモートワークの普及が企業の目を再びBPRに向けさせるきっかけとなった。

ビジネス・プロセス : 平たく言えば、業務フローのことを指す。

そのBPRによって図らずも不適切決算を発見することとなったのが、・・・

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2021/12/03 DXで再び注目を集めるBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)(会員限定)

ITの力を借りてビジネスモデルや組織を変革するDX(デジタル・トランスフォーメーション)に取り組む企業が急増する一方で(DXの詳細については【WEBセミナー】デジタル変革の本質を参照)、かつてブームにあったBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)にも再び注目が集まっている。BPRとは、4半世紀以上前の1993年に刊行された「リエンジニアリング革命」(著者は元マサチューセッツ工科大学教授のマイケル・ハマーと経営コンサルタントのジェイムズ・チャンピー)によって提唱された概念であり、「コスト、品質、サービス、スピードのような、重大で現代的なパフォーマンス基準を劇的に改善するために、ビジネス・プロセスを根本的に考え直し、抜本的にそれをデザインし直すこと」と定義されている(BPRの詳細についてはこちらを参照)。同書の影響を受け、多くの日本企業でBPRが実践され、それなりの成果を出してきたが、一時の流行は落ち着いた感があった。しかし、近年の働き方改革やコロナ禍におけるリモートワークの普及が企業の目を再びBPRに向けさせるきっかけとなった。

ビジネス・プロセス : 平たく言えば、業務フローのことを指す。

そのBPRによって図らずも不適切決算を発見することとなったのが、RIZAPグループ(札証アンビシャス上場)だ。同社は2021年4月より、BPRプロジェクト(*1)を開始し、間接業務を含むグループ全体のあらゆる業務のベストプロセス化(高位標準化)、生産性の向上、経営管理体制の強化などに取り組んでいる最中である。同社のBPRプロジェクトでは間接業務の代表格である経理業務も当然改革のターゲットの一つとされており、経理担当者の業務工数の分析を通じた業務合理化や会計処理の再点検などが行われていた。その過程で、同社の連結子会社であったワンダーコーポレーション(現在は同社連結子会社 REXTの子会社)の親会社向け報告から一部のリース契約が漏れていたことが発覚した(*2)。これはリース契約の会計処理の間違いに直結するため、RIZAPグループは過年度(3期分)の有価証券報告書および決算短信等の訂正を余儀なくされ、2021年11月26日に過年度決算の訂正を公表するとともに、内部統制報告書について「開示すべき重要な不備があり、財務報告に係る内部統制は有効でない」旨を記載した訂正報告書を関東財務局に提出する事態となった。

*1 RIZAPグループが2021年11月26日に公表した「過年度の有価証券報告書等および決算短信等の訂正に関するお知らせ」によると、同社ではBPRプロジェクトを「BPX(ビジネス・プロセス・トランスフォーメーション)プロジェクト」と称している。これは同社独自の概念であり、「BPR(業務プロセス改革)のさらに先をいく改革」で、「かつてない企業変革モデルを確立し、グループ内のあらゆる業務を再設計することで、より付加価値の高い領域へ経営資源を再配置することを目指す」ための取り組みとしている。同社は経理業務のBPXとして、グループ企業の勘定科目の統一、会計システムの統合、経理担当者の業務工数の分析を通じた業務合理化、総勘定元帳・経理伝票の総見直しを進めるとしている。
*2 RIZAPグループは、一部のリース契約について親会社への報告が漏れたのは、連結子会社に点在する経理部門からリース契約に関する情報を収集する際に、報告の対象とすべきリース契約についての認識が十分に共有されていなかったこと、リース契約に関する情報収集の業務手順が不十分であったことにより報告の対象となる契約の網羅性が確保されていなかったことが原因であったと分析している。

RIZAPグループは、トレーニングジムの「RIZAP」事業を中核としつつ、短期間でスポーツ関連、美容、ファッション、出版などさまざまな分野の企業の買収を重ねてきている。同社の2021年3月期の有価証券報告書の【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】の(3)中長期的な会社の経営戦略の①グループ管理体制の強化およびグループ機能統合に「当社グループは当社および連結子会社72社で構成されており、今後の持続的成長のためには、各社の経営管理体制を整備し、経営の機動性および計画実行の確実性を向上させていくことが必要」と記載されていることが示唆するように、グループ会社の急増で経営統合が追い付かず、グループ内でビジネス・プロセスに無駄や重複などが生じていたであろうことは容易に想像がつく。同社のようなM&Aによって形成された企業グループにとって、ビジネス・プロセスを改革するBPRが有効であることは間違いない。本来、BPRは不適切会計の発見を目的とするものではないが、RIZAPグループが業務手順を再構築する中で結果的に不適切決算をあぶりだすことにつながったのも、BPRの効用と言える。

ビジネスへのデータ活用に積極的に取り組んでいることから「DX推進企業」と評されるRIZAPグループがBPRにも熱心である点からも分かるとおり、ビジネスモデルを再構築するDXとビジネス・プロセスを改革するBPRは相容れないものではなく、むしろビジネスモデルの再構築にはビジネス・プロセスの改革が付きものという点で、両者は表裏一体の関係にあると言える。たたでさえペーパーレス化の進展、コロナ禍をきっかけとしたリモートワークの普及、高齢化の進行による労働力不足などによりビジネス・プロセスの見直しが迫られている中、DXだけでなく、BPRにもより多くの予算や時間を注ぐべきだろう。

2021/12/02 予想以上に高かった帳簿書類のペーパーレス化の壁

2021年も残り1か月を切る中、上場企業をはじめ高度なコンプライアンスを求められる企業が頭を抱えているのが、・・・

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2021/12/02 予想以上に高かった帳簿書類のペーパーレス化の壁(会員限定)

2021年も残り1か月を切る中、上場企業をはじめ高度なコンプライアンスを求められる企業が頭を抱えているのが、年明けの1月1日から施行される改正電子帳簿保存法への対応だ。2021年11月18日のニュース「改正電子帳簿保存法への対応に企業が悲鳴、来年1月1日までにシステム構築間に合わず」でもお伝えしたとおり、改正電子帳簿法の下では、帳簿書類の保存は文字通り「電子データ」のみでしか認められなくなる。つまり、電子データを出力した「紙」を保存していても、電子データがなければ「帳簿書類の保存がない」とされてしまう(すなわち、電子帳簿保存法違反)ということだ。この点は、「紙または電子データ」の“いずれか”を保存しておけばよいとされてきた現行の電子帳簿保存法との大きな違いと言える。

電子帳簿保存法 : 法人税法などは、正しく納税されているかどうかを後々検証できるよう、帳簿書類を一定期間(例えば法人税法上、帳簿書類は確定申告書の提出期限の翌日から7年間)保存することを求めている。電子帳簿保存法とは、企業等の保存コストを軽減するため、帳簿書類を「電子データ」で保存することを認めるものである。

企業は本改正に対応するためのシステム構築を急ピッチで進めているものの、上記で引用したニュースのとおり、改正電子帳簿保存法の施行までには全くもって間に合わないという事例が続出しており、企業側からは「そもそも法律の施行日の設定に無理があった(準備期間が短すぎた)のではないか」との批判の声すら上がっている。

こうした事態を受け、政府は改正電子帳簿保存法の施行から当面の間(2年間が想定されている模様)は現行法同様、「紙」での保存も認めることを検討していることが分かった。ただし、これは改正電子帳簿保存法の施行そのものを遅らせるということではない。したがって、「検索条件の設定」の簡素化()などは予定通り来年1月1日から実施される。

 今回の改正により、日付や金額等の範囲指定・組み合わせ(例えば、「●月●日~■月■日」の「▲円以上」の「交際費」といった検索範囲を組み合わせて指定した検索)ができる検索機能を備えていること、との要件が廃止された。

本来は電子データの保存しか認めない改正電子帳簿保存法の下で「紙」での保存を認めるためには、改正電子帳簿保存法の“改正”が必要になるはずだ。しかも、それは改正電子帳簿保存法が施行される2022年1月1日より前に行われなければならないはずであることから、慌ただしい年の瀬に法令改正が行われる可能性が高い。2022年1月1日の施行を前提にシステムの構築を進めてきた企業、システムベンダーには大きな影響を与えることになろう。もっとも、ほとんどの企業はシステム構築が間に合わない状況に陥っていたことを考えれば、グッドニュースと言えそうだ。

2021/12/01 IFRS財団におけるISSBの設立と日本の対応

既に新聞報道等もされているとおり、IFRS財団は11月3日、COP26において、ISSB(International Sustainability Standards Board=国際サステナビリティ基準審議会)の設立を正式に公表した(ISSB については2021年9月28日のニュース『気候変動など非財務の「開示基準」の行方』および同ニュースで引用されているニュース参照)。そこでは、ISSBと既存の非財務情報開示基準設定主体との統合(*1)、ISSBの拠点(*2)についても明らかにされた。

COP26 : 英国グラスゴーで2021年11月1日~12日に開催された「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議」のこと。COP26では、「パリ協定」と「気候変動に関する国際連合枠組条約」の目標達成に向けた行動を加速させるため、締約国が一堂に会して議論する。COPとは「Conference Of the Parties」の略で「コップ」と読む。「Parties」とは条約を結んだ締約国の集まりのことである。

*1 ISSBがVRF(Value Reporting Foundation:IIRCSASBが統合した組織)およびCDSB(Climate Disclosure Standards Board=気候変動情報開示審議会)と2022年6月までに完全な統合を行うことが表明された。
*2 ISSBの議長オフィスをフランクフルトに置く一方で、モントリオール・サンフランシスコ・ロンドンにも拠点を置くこと、アジア・オセアニア地域については、東京と北京に拠点を設置することについて議論を継続することが明らかにされた。

IIRC : International Integrated Reporting Council(国際統合報告評議会)の略称で、財務資本の提供者が利用可能な情報の改善、効率的に伝達するアプローチ確立等を目指し、英国で設立された、規制者、投資家、企業、基準設定主体、会計専門家、NGOにより構成される国際的な連合組織である。IIRCは2013年、統合報告書の作成についての考え方をまとめた「国際統合報告フレームワーク(The International <IR> Framework)」を公表。それ以降、日本をはじめ、世界で統合報告化が進んだ。現在は米国SASB (サステナビリティ会計基準審議会)と合併し、VRF(=Value Reporting Foundation ※SASBとIIRCが合併して設立された団体)となった。
SASB : Sustainability Accounting Standards Board(サステナビリティ会計基準審議会)の略称で、2011年に米国サンフランシスコを拠点に設立された非営利団体。企業の情報開示の質向上に寄与し、中長期視点の投資家の意思決定に貢献することを目的に、将来的な財務インパクトが高いと想定されるESG要素に関する開示基準を設定している。2018年11月、11セクター77業種について情報開示に関するスタンダードを作成し、公表した。

今後、ISSBは、来年6月を目途に国際的に統一された気候変動開示基準を公表すべく、作業を加速させる見込みだ。ここで重要なのは、ISSBの設立表明の際に、気候変動開示基準のプロトタイプが公表されており、それを基にISSBで検討が行われ、来年早々にも気候変動開示基準の公開草案が公表されるという点である。気候変動以外のサステナビリティ基準の策定に向けたアジェンダを協議する機会の設定も予定されている。本稿では、当フォーラムの独自取材に基づき、今後の日本国内における対応をレポートする。・・・

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2021/12/01 IFRS財団におけるISSBの設立と日本の対応(会員限定)

既に新聞報道等もされているとおり、IFRS財団は11月3日、COP26において、ISSB(International Sustainability Standards Board=国際サステナビリティ基準審議会)の設立を正式に公表した(ISSB については2021年9月28日のニュース『気候変動など非財務の「開示基準」の行方』および同ニュースで引用されているニュース参照)。そこでは、ISSBと既存の非財務情報開示基準設定主体との統合(*1)、ISSBの拠点(*2)についても明らかにされた。

COP26 : 英国グラスゴーで2021年11月1日~12日に開催された「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議」のこと。COP26では、「パリ協定」と「気候変動に関する国際連合枠組条約」の目標達成に向けた行動を加速させるため、締約国が一堂に会して議論する。COPとは「Conference Of the Parties」の略で「コップ」と読む。「Parties」とは条約を結んだ締約国の集まりのことである。

*1 ISSBがVRF(Value Reporting Foundation:IIRCSASBが統合した組織)およびCDSB(Climate Disclosure Standards Board=気候変動情報開示審議会)と2022年6月までに完全な統合を行うことが表明された。
*2 ISSBの議長オフィスをフランクフルトに置く一方で、モントリオール・サンフランシスコ・ロンドンにも拠点を置くこと、アジア・オセアニア地域については、東京と北京に拠点を設置することについて議論を継続することが明らかにされた。

IIRC : International Integrated Reporting Council(国際統合報告評議会)の略称で、財務資本の提供者が利用可能な情報の改善、効率的に伝達するアプローチ確立等を目指し、英国で設立された、規制者、投資家、企業、基準設定主体、会計専門家、NGOにより構成される国際的な連合組織である。IIRCは2013年、統合報告書の作成についての考え方をまとめた「国際統合報告フレームワーク(The International <IR> Framework)」を公表。それ以降、日本をはじめ、世界で統合報告化が進んだ。現在は米国SASB (サステナビリティ会計基準審議会)と合併し、VRF(=Value Reporting Foundation ※SASBとIIRCが合併して設立された団体)となった。
SASB : Sustainability Accounting Standards Board(サステナビリティ会計基準審議会)の略称で、2011年に米国サンフランシスコを拠点に設立された非営利団体。企業の情報開示の質向上に寄与し、中長期視点の投資家の意思決定に貢献することを目的に、将来的な財務インパクトが高いと想定されるESG要素に関する開示基準を設定している。2018年11月、11セクター77業種について情報開示に関するスタンダードを作成し、公表した。

今後、ISSBは、来年6月を目途に国際的に統一された気候変動開示基準を公表すべく、作業を加速させる見込みだ。ここで重要なのは、ISSBの設立表明の際に、気候変動開示基準のプロトタイプが公表されており、それを基にISSBで検討が行われ、来年早々にも気候変動開示基準の公開草案が公表されるという点である。気候変動以外のサステナビリティ基準の策定に向けたアジェンダを協議する機会の設定も予定されている。本稿では、当フォーラムの独自取材に基づき、今後の日本国内における対応をレポートする。

FASF(財務会計基準機構)による国際発信と国内基準開発
ISSBの設立に対応して、国内の体制整備に向けた議論が我が国でも行われている。

金融庁金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ(第3回会合)では、「サステナビリティ開示基準対応を行う組織」を新設し、「ISSBへの意見発信」と「ISSB基準を踏まえた我が国におけるサステナビリティ開示の個別項目の検討」を行うことが提案された。

経団連も提言「国際的な意見発信と国内の基準開発を担うサステナビリティ基準委員会(仮称)の設立を求める」を11月16日公表し、「FASFのもとに、『サステナビリティ基準委員会(仮称)』を新たに立ち上げ、我が国の意見の積極的な国際発信、透明性のある国内のサステナビリティ基準開発を行うことが適当である」と主張した。

既にFASFは、「サステナビリティ報告基準の調査研究及び開発」「国際的なサステナビリティ報告基準の開発への貢献」を事業内容に盛り込む定款変更を完了している。実質的に、FASFにおいて、ISSBの対応と国内基準の開発が行われることが固まったと言える。

今後の焦点
今後、我が国では、FASFが新たに組成することが見込まれる「サステナビリティ基準委員会(仮称)」が、ISSBの開発する基準に対する我が国からの意見発信の中核を担う。ISSBが最終化した基準を踏まえ、「サステナビリティ基準委員会(仮称)」が国内基準を策定、それを基に金融庁が開示府令を改正し、金融商品取引法に基づく有報開示の対象が定まる、といった国内プロセスとなることが見込まれている。

したがって、まず重要なのは、ISSBでどのような基準が作られるかということになる。

上述のとおり、ISSBは、設立の前から気候変動開示基準のプロトタイプを公表している。今後これをベースに、ISSBの第1号基準(気候変動開示基準)が来年の6月までに策定される。

本プロトタイプの詳細は改めて詳報するが、プロトタイプでは、TCFD提言のみならず、SASBスタンダード(業種別基準)の内容も色濃く反映されているまた、いわゆる温室効果ガス(GHG=Greenhouse Gas)排出量の開示も「Scope3(企業のサプライチェーンまでを含めたGHG排出量の開示)」までを射程とした厳しい内容となっている。ISSBが気候変動開示基準の公開草案を公表すれば、「サステナビリティ基準委員会(仮称)」を中心に、日本の実情を踏まえた基準となるよう、強力な意見発信を行うことが重要になろう。

Scope3 : 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出のことを指すのが「Scope1」 、他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出のことを指すのが「Scope2」であり、「Scope3」とは、Scope1、Scope2以外の間接排出、具体的には「事業者の活動に関連する他社の排出」のことを指す。

 

 

 

2021/11/30 2021年11月度チェックテスト

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【問題1】

2022年6月1日から施行予定の改正公益通報者保護法によると、公益通報対応業務の従事者が内部公益通報者の特定につながる情報を取締役会で報告したとしても、取締役会は会社の業務執行の意思決定を行う重要な機関である以上、従事者が罰金を科されることはありえない。


正しい
間違い
【問題2】

3月決算の上場会社は、2022年3月期の定時株主総会で、WEB開示制度に関する定款規定を「株主総会資料の電子提供制度が利用可能になるタイミングの到来」との条件付きで削除しておくことが望ましい。


正しい
間違い
【問題3】

議決権行使助言会社最大手のISSは2023年2月から、取締役会に女性取締役が一人もいない場合は、経営トップである取締役に対して反対を推奨する基準を導入する予定である。


正しい
間違い
【問題4】

株主総会検査役は株主総会が公正中立に行われることを目的として裁判所が選任する臨時的な機関であり、裁判所の代わりに株主総会の現場で「正しい」「正しくない」といった判断を下す権限を有している。


正しい
間違い
【問題5】

ROEは事業セグメント別に算定するのが通常である。


正しい
間違い
【問題6】

ダイナミックマテリアリティとは、企業の業績に与える影響が甚大なマテリアリティを指す。


正しい
間違い
【問題7】

押印簿による印章管理は、拠点長に印章を不正使用させないための統制としてはとりわけ有効と言える。


正しい
間違い
【問題8】

TOPIX100を構成する2021年3月末決算会社の業績連動報酬に係る指標を調査したところ、業績指標としてTSRなど株価をベースとした指標を採用している会社が大半であることが分かった。


正しい
間違い
【問題9】

「独立社外取締役は、例えば、互選により「筆頭独立社外取締役」を決定することなどにより、経営陣との連絡・調整や監査役または監査役会との連携に係る体制整備を図るべきである。」とする補充原則4-8②のコンプライ率は東証一部上場会社で9割を超えているが、実際に筆頭独立社外取締役を決定した上場会社は半数を切っている。


正しい
間違い
【問題10】

統合報告書を作成する上場会社は3年で2倍近くに増えている。


正しい
間違い

2021/11/30 2021年11月度チェックテスト第10問解答画面(不正解)

不正解です。
全国株懇連合会が2021年11月17日に公表した「2021年度全株懇調査報告書~株主総会等に関する実態調査集計表~」によると、問題文のとおり統合報告書を作成する上場会社は3年で2倍近くに増えていることが分かりました(以上より、問題文は正しいです)。

こちらの記事で再確認!
2021年11月26日 時系列の変化から見えてくる株主総会、CGコード対応のトレンド(会員限定)

2021/11/30 2021年11月度チェックテスト第10問解答画面(正解)

正解です。
全国株懇連合会が2021年11月17日に公表した「2021年度全株懇調査報告書~株主総会等に関する実態調査集計表~」によると、問題文のとおり統合報告書を作成する上場会社は3年で2倍近くに増えていることが分かりました(以上より、問題文は正しいです)。

こちらの記事で再確認!
2021年11月26日 時系列の変化から見えてくる株主総会、CGコード対応のトレンド(会員限定)