2021/04/22 一部企業では“逆転現象”も 制度開示と自主開示の将来像(会員限定)

近年、投資家が期待する情報開示に対応するため、多くの上場企業が有価証券報告書やコーポレート・ガバナンス報告書といった制度開示書類に加え、統合報告書等の自主開示書類を作成している。統合報告書を開示している上場企業は2019年度には500社を突破し、一部の企業では制度開示と自主開示の“逆転現象”も生じている。

味の素(株)の統合報告書(82ページ)に記載されている情報体系を見ると、第1階層に「統合報告書」、第2階層に「有価証券報告書」「コーポレート・ガバナンス報告書」といった制度開示書類が表示されている。すなわち、自主的な開示書類であるはずの統合報告書が制度開示書類よりも上位に位置付けられるという、いわば“逆転現象”が生じている。このような逆転現象が生じている原因は、有価証券報告書をはじめとする制度開示により提供される情報がボイラープレート(ひな形)的なものとなっており、投資情報としての有用性が低いことにあると考えられる。

こうした中、日本公認会計士協会は2020年8月に「企業情報開示に関する有用性と信頼性の向上に向けた論点の検討 ~ 開示とガバナンスの連動による持続的価値創造サイクルの実現に向けて~」を公表し、制度開示と自主開示の関係の方向性について提案を行っているが、本稿ではこの提案を踏まえつつ、制度開示と自主開示の将来像を見通してみたい。

まず、制度開示と自主開示それぞれに該当する主な書類と主な利用者を整理すれば下表のとおりとなる。

<制度開示と自主開示の比較>
  制度開示 自主開示
主な書類 有価証券報告書
事業報告書・計算書類
決算短信
コーポレート・ガバナンス報告書
統合報告書
サステナビリティ―レポート
主な利用者 株主・投資家 株主・投資家、社員、取引先、金融機関などのステークホルダー
特徴 ・記載する内容が法令等で定められており、開示内容の均質性や比較可能性が高い。
・会計監査人による監査の対象となっている書類は信頼性が高い。
開示する内容に関する国際的なフレームワーク(国際的なフレームワークについては2021年3月29日のニュース「改訂CGコード、気候変動開示関連の新たな原則創設も」参照)は存在するものの、基本的に企業の自主的な判断に依存する部分が多く、様式・形式にとらわれず、ストーリー性の高い情報開示が行うことが可能。

上表のとおり、制度開示では様式や開示規則に従うことが求められる結果、開示の自由度が低く、ボイラープレート的な開示となるなど、利用者が求める情報提供がなされないケースがある。それだけに、様式にとらわれず、ストーリー性の高い「経営者目線」の情報が提供される自主開示がなされることにより利用者が受けるメリットは大きい。例えば有価証券報告書にも、経営戦略、事業のリスク、MD&Aといった経営者マターの開示項目があるものの、統合報告書のように「トップメッセージ」といった形がとられないため文字通りメッセージ性が弱く、そもそも本当に経営者が関与して書かれた内容なのかといった疑念の声さえ聞かれる。

MD&A : 「Management’s Discussion and Analysis of Financial Condition and Results of Operations」の略で、「経営陣による財政状態および経営成績の検討と分析」と訳される。有価証券報告書では【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】欄に記載する。

もっとも、自主開示にも以下のような重大な問題点がある。

① 自主開示には、開示規則や作成責任、監査制度など、制度開示に比べてその「信頼性」を担保する基盤が十分でない。このため、企業にとって都合の良い情報だけ開示される可能性がある。
② 有価証券報告書等の法定開示書類と統合報告書等の自主開示書類の作成部署が異なる結果、両者の開示情報が整合的でない場合や、自主開示書類で重要性の高い情報として記述されている情報が法定開示書類では開示されていない場合がある。
③ 自主開示媒体が複数ある場合における開示媒体間の関連性や自主開示の体系が明確でない。

金融商品取引法に基づく制度開示書類である有価証券報告書においては、近年、同法に基づく開示府令の改正により記述情報(非財務情報)の開示の充実が進み、統合報告書に記載されているような「経営者目線」の情報を記載することが求められており、両報告書で開示される内容が近づきつつある。これには、上述した自主開示と制度開示の“逆転現象”を踏まえ、「投資家向けの企業情報開示」としての有価証券報告書の内容を再構築するという目的がある。また、2021年3月期の有価証券報告書より、会計監査人が記述情報を通読し、重要な虚偽記載がある場合には監査報告書で報告されることになる。

記述情報 : 有価証券報告書における「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「事業等のリスク」、「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)」を指す。2019年1月31日に公布・施行された開示府令により、2020年3月期決算企業から記載内容の充実が求められることとなった。

さらに金融庁は、法令改正にとどまらず、「記述情報の開示の好事例集」を公表し、記述情報の充実を促しているが、当該好事例集には有価証券報告書のみならず自主開示書類である統合報告書における記載事例も多く含まれている。こうした有価証券報告書における記述情報の充実に向けた一連の施策により、自主開示実務の進展および成果が有価証券報告書に反映され、有価証券報告書が真の「投資家向け」の年次報告書としての地位を確立することが期待されている。これが実現した場合、自主開示書類である統合報告書は単独で利用されるものではなく、有価証券報告書の利用を前提としつつ、多様な情報ニーズに応える観点から、制度開示を補完する役割を果たすものと位置付けられることになろう。経営陣としては、法定開示書類と自主開示書類の作成部署が異なるために両者の開示情報が整合的でないという現状を解消すべく、同一の開示項目については作成部署および担当者を集約するなど、開示関連の部門の再編成も検討する必要があろう。

<制度開示と自主開示の今後の方向性>
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2021/04/22 WEBセミナー「速報! 3月総会実務のポイント~2021年6月総会対応に向けて~」配信開始!

新型コロナウイルス禍において会員の皆様に必要な情報をいち早くお届けするべく、2021年4月22日(木)より下記のWEBセミナーの配信を開始いたしました。

テーマ 講 師
速報! 3月総会実務のポイント
~2021年6月総会対応に向けて~
三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部
中川 雅博 様

■WEBセミナーの詳細

セミナー
の内容
3月決算会社においては、2021年6月の定時株主総会に向けた準備が本格化していますが、その“前哨戦”と言えるのが、3月決算会社に続いて社数が多い12月決算会社の2021年3月総会です。昨年の3月総会は、新型コロナウイルス感染症のリスクが世間に認識され始めた初期の頃の開催となりましたが、今年はまさにコロナ禍の真っただ中での開催となりました。コロナ対応をはじめ、3月総会の内容は6月総会に向け参考になることが多いはずです。

本セミナーでは、株主総会実務や株主総会分析の第一人者であり、全国株懇連合会の理事も務める三菱UFJ信託銀行の中川雅博様をお招きし、12月決算会社の2021年3月総会を分析していただきます。コロナ禍における出席状況や平均所要時間、主な発言内容、事前質問の募集やバーチャル総会の採用状況、招集通知や当日の会場におけるコロナ対応など3月総会の概況のほか、役員選任議案への賛否状況、賛成率の低かった会社提案議案や株主提案議案についても詳細に分析していただきます。また、改正会社法への対応状況や記載例等についてもご紹介いただきます。改正会社法の多くの規定は3月総会には適用されませんが、こうした規定についても任意で対応を図った会社が一定数出ています。これらの対応事例は3月決算会社にとって大いに参考になるはずです。

講師の
ご紹介
中川 雅博(なかがわ まさひろ)様
大阪大学法学部卒、大阪大学大学院法学研究科(修士課程)修了。1990年、東洋信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)に入社。以後、証券代行部門・法人ビジネス部門に所属し、一貫して会社法務に関するコンサルティングを行う。現在、三菱UFJ信託銀行(株)法人コンサルティング部に所属し、全国株懇連合会理事、東京株式懇話会常任幹事(研究部 研究第2部担当)も務める。
ハンドブックシリーズ1「株主総会」(共著:2002年12月・商事法務)、ハンドブックシリーズ2「株式実務」(共著:2003年4月・商事法務)、「委員会等設置会社への移行戦略」(共著:2003年5月・商事法務)、「株券電子化と移行のポイント」(共著:2008年5月・商事法務)、「株券電子化-その実務と移行のすべて」(共著:2008年8月・きんざい)、「全株懇モデル[新訂2版]」(共著:2009年3月・商事法務)、「株式事務の基礎知識」(2009年11月・商事法務)、「株主総会ハンドブック第3版」(共著:2015年3月・商事法務)、「株主総会・取締役会・監査役会の議事録作成」(共著:2015年3月・清文社)、「監査等委員会設置会社の活用戦略」(共著:2015年9月・商事法務)、「新株主総会実務なるほどQ&A」(共著:2017年3月・中央経済社)、「株主総会の準備実務・想定問答」(共著:2018年1月・中央経済社)など著書多数。

会員の方は下記URLよりWEBセミナーを視聴いただくことができます。
■会員向けURL(ログインが必要です)
https://govforum.jp/member/webseminar-webseminar-l/55689/

非会員の方は下記URLよりWEBセミナーの視聴をお申込みいただけます。
■非会員向けURL(グーグルフォームが立ち上がります)
https://docs.google.com/forms/d/1jbqS_riIsIZEUUIf5-vQv1l8GYw4Q3P0T75nroYaWaQ

<収録月>
2021年4月

<収録時間>
1時間40分

<視聴環境>
ブラウザー上で視聴できます。インターネットエクスプローラー、エッジで再生できない場合は、ChromeまたはFirefoxなど他のブラウザーをお試しください。また、インターネットに接続する際にプライベートネットワークやプロキシサーバーを経由している場合やファイアーウォールのセキュリティレベルが高い場合には、サンプル動画が再生されない可能性があります。
万が一、こちらのサンプル動画が再生されない場合、端末を管理するシステム管理者にお問い合わせください。

2021/04/22 【WEBセミナー】速報! 3月総会実務のポイント~2021年6月総会対応に向けて~

概略

【WEBセミナー収録日】2021年4月16日(金)

3月決算会社においては、2021年6月の定時株主総会に向けた準備が本格化していますが、その“前哨戦”と言えるのが、3月決算会社に続いて社数が多い12月決算会社の2021年3月総会です。昨年の3月総会は、新型コロナウイルス感染症のリスクが世間に認識され始めた初期の頃の開催となりましたが、今年はまさにコロナ禍の真っただ中での開催となりました。コロナ対応をはじめ、3月総会の内容は6月総会に向け参考になることが多いはずです。

本セミナーでは、株主総会実務や株主総会分析の第一人者であり、全国株懇連合会の理事も務める三菱UFJ信託銀行の中川雅博様をお招きし、12月決算会社の2021年3月総会を分析していただきます。コロナ禍における出席状況や平均所要時間、主な発言内容、事前質問の募集やバーチャル総会の採用状況、招集通知や当日の会場におけるコロナ対応など3月総会の概況のほか、役員選任議案への賛否状況、賛成率の低かった会社提案議案や株主提案議案についても詳細に分析していただきます。また、改正会社法への対応状況や記載例等についてもご紹介いただきます。改正会社法の多くの規定は3月総会には適用されませんが、こうした規定についても任意で対応を図った会社が一定数出ています。これらの対応事例は3月決算会社にとって大いに参考になるはずです。

【講師】三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部
中川 雅博 様

セミナー資料 速報! 3月総会実務のポイント~2021年6月総会対応に向けて~.pdf

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速報! 3月総会実務のポイント~2021年6月総会対応に向けて~(前半)

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速報! 3月総会実務のポイント~2021年6月総会対応に向けて~(後半)

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2021/04/21 中核人材の多様性原則が「取締役会等の責務」に規定されなかった影響

今般のコーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)改訂の目玉の一つが、「中核人材の多様性の確保」に関する“開示”を伴う新設の補充原則2-4①だが、同原則を巡りある疑問が生じている。

補充原則2-4①
上場会社は、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を示すとともに、その状況を開示すべきである。
また、中長期的な企業価値の向上に向けた人材戦略の重要性に鑑み、多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針その実施状況と併せて開示すべきである。

それは、同原則が・・・

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2021/04/21 中核人材の多様性原則が「取締役会等の責務」に規定されなかった影響(会員限定)

今般のコーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)改訂の目玉の一つが、「中核人材の多様性の確保」に関する“開示”を伴う新設の補充原則2-4①だが、同原則を巡りある疑問が生じている。

補充原則2-4①
上場会社は、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を示すとともに、その状況を開示すべきである。
また、中長期的な企業価値の向上に向けた人材戦略の重要性に鑑み、多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針その実施状況と併せて開示すべきである。

それは、同原則がCGコードのうち「第4章 取締役会等の責務」ではなく、「第2章 株主以外のステークホルダーとの適切な協働」の中に規定されたということだ。

同原則の“原案”は昨年(2021年)12月18日のフォローアップ会議で示された意見書(5)「コロナ後の企業の変革に向けた取締役会の機能発揮及び企業の中核人材の多様性の確保」の中で既に示されており、そこでは、中核人材の多様性の確保については「取締役会」が主導的にその取組みを促進し監督するという“取締役会の責務”に明確に言及していた(下記の赤字部分参照)。この記述を踏まえ、中核人材の多様性の確保に関する原則は「第4章 取締役会等の責務」の中に創設されるとの理解が広がっていた。

・・・多様な働き方やキャリア形成を受け入れた上で、社員のスキルや成果が公正に評価され、それに応じた役職・権限、報酬、機会を得る仕組みの整備が求められる。こうした多様性の確保に向けては、取締役会が、主導的にその取組みを促進し監督することが期待される。
こうした観点を踏まえ、上場企業に対し、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を示すとともに、その状況の公表を求めるべきである。また、多様性の確保に向けた人材育成方針・社内環境整備方針をその実施状況とあわせて公表するよう求めるべきである。

ところが、フタを開ければ、中核人材の多様性の確保に関する原則は「第2章 株主以外のステークホルダーとの適切な協働」の中に規定されたうえ、上記のとおりその内容も“開示”に絞り込まれ、意見書(5)に明記されていた「取締役会」の責務に関する記述は一切入らなかった。このことについて、「取締役会の負担を減らすために、意図的に開示に焦点を絞ったのではないか」といった指摘も聞かれる。

確かに、改訂CGコードに何も書かれなかった以上、中核人材の多様性の確保に向けた「取締役会による主導的な取組みの促進と監督」は補充原則2-4①の対象外であり、同原則による開示対象にもならないと言える。しかし、改訂CGコードの“前文”に該当する金融庁から公表された「コーポレートガバナンス・コードと投資家と企業の対話ガイドラインの改訂について」(2021年4月6日に確定済)の「2.企業の中核人材における多様性(ダイバーシティ)の確保」には、「取締役会が、主導的にその取組みを促進し監督することが期待される」というフォローアップ会議の意見書(5)と全く同じ記述があることからも分かるように、中核人材の多様性の確保についての考え方や目標、多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針などを開示するためには、当然「取締役会による主導的な取組みと監督」が必要になる。例えば「目標設定」には予算が絡み、「人材育成方針」の決定や「社内環境整備」にも経営陣(取締役会)の関与が欠かせないのは明らかだ。

要するに、改訂CGコード本体に取締役会に関する記述が入らなかったと言っても、実質的にはフォローアップ会議意見書(5)から何も変わっていないということである。補充原則2-4①をコンプライするためには、特に開示が求められているわけではないものの、“当然の前提”として、取締役会は「主導的にその取組みと監督」に努める必要がある。

2021/04/20 【WEBセミナー】速報! 3月総会実務のポイント~2021年6月総会対応に向けて~(会員限定)

概略

【WEBセミナー収録日】2021年4月16日(金)

3月決算会社においては、2021年6月の定時株主総会に向けた準備が本格化していますが、その“前哨戦”と言えるのが、3月決算会社に続いて社数が多い12月決算会社の2021年3月総会です。昨年の3月総会は、新型コロナウイルス感染症のリスクが世間に認識され始めた初期の頃の開催となりましたが、今年はまさにコロナ禍の真っただ中での開催となりました。コロナ対応をはじめ、3月総会の内容は6月総会に向け参考になることが多いはずです。
本セミナーでは、株主総会実務や株主総会分析の第一人者であり、全国株懇連合会の理事も務める三菱UFJ信託銀行の中川雅博様をお招きし、12月決算会社の2021年3月総会を分析していただきます。コロナ禍における出席状況や平均所要時間、主な発言内容、事前質問の募集やバーチャル総会の採用状況、招集通知や当日の会場におけるコロナ対応など3月総会の概況のほか、役員選任議案への賛否状況、賛成率の低かった会社提案議案や株主提案議案についても詳細に分析していただきます。また、改正会社法への対応状況や記載例等についてもご紹介いただきます。改正会社法の多くの規定は3月総会には適用されませんが、こうした規定についても任意で対応を図った会社が一定数出ています。これらの対応事例は3月決算会社にとって大いに参考になるはずです。

【講師】三菱UFJ信託銀行
法人コンサルティング部
中川 雅博 様

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速報! 3月総会実務のポイント~2021年6月総会対応に向けて~(前半)

速報! 3月総会実務のポイント~2021年6月総会対応に向けて~(後半)
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2021/04/20 令和3年度も“コロナ開示”が有価証券報告書レビューの重要テーマに

金融庁は2021年4月8日、毎年実施している「有価証券報告書の記載内容の適正性」を確保するための審査であるいわゆる有価証券報告書レビューを最新版を公表したところだ(全文は「令和2年度 有価証券報告書レビューの審査結果及び審査結果を踏まえた留意すべき事項」参照)。2021年3月決算企業をはじめ、これから有価証券報告書を提出する企業は、特に「(令和2年度における)審査結果を踏まえた留意点」や「令和3年度有価証券報告書レビューの実施内容」を念頭において作成に当たる必要がある。今回の有価証券報告書レビューは45ページにもわたる長いものとなっているが、本稿では重要と思われる点を、「令和2年度有価証券報告書レビューの審査結果及び審査結果を踏まえた留意すべき点」と「令和3年度 有価証券報告書レビューの実施内容」に分けてコンパクトに解説する。・・・

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2021/04/20 令和3年度も“コロナ開示”が有価証券報告書レビューの重要テーマに(会員限定)

金融庁は2021年4月8日、毎年実施している「有価証券報告書の記載内容の適正性」を確保するための審査であるいわゆる有価証券報告書レビューを最新版を公表したところだ(全文は「令和2年度 有価証券報告書レビューの審査結果及び審査結果を踏まえた留意すべき事項」参照)。2021年3月決算企業をはじめ、これから有価証券報告書を提出する企業は、特に「(令和2年度における)審査結果を踏まえた留意点」や「令和3年度有価証券報告書レビューの実施内容」を念頭において作成に当たる必要がある。今回の有価証券報告書レビューは45ページにもわたる長いものとなっているが、本稿では重要と思われる点を、「令和2年度有価証券報告書レビューの審査結果及び審査結果を踏まえた留意すべき点」と「令和3年度 有価証券報告書レビューの実施内容」に分けてコンパクトに解説する。

有価証券報告書レビュー : ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けた対応として、有価証券報告書の記載内容の適正性を確保するための審査。従来から、金融庁および財務局等が連携して実施している。毎年3月頃、金融庁のホームページにおいて、その事業年度に係る有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項とその年度に実施される具体的なテーマが公表される。

1.令和2年度有価証券報告書レビューの審査結果及び審査結果を踏まえた留意すべき点
(1)令和2年度有価証券報告書レビューの対象項目

まず、令和2年度において実施された有価証券報告書レビューの対象となった項目とレビューのポイントは下表のとおり。新型コロナウイルス感染症の影響により、「(3) 重点テーマ審査」のうちセグメント情報についてはレビューが中止されている。

MD&A: 「Management’s Discussion and Analysis of Financial Condition and Results of Operations」の略で、「経営陣による財政状態および経営成績の検討と分析」と訳される。有価証券報告書では【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】欄に記載する。

項 目 レビューのポイント
(1)新型コロナウイルス感染症の影響に係る仮定に関する追加情報の開示の審査

追加情報 :利害関係人が会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する適正な判断を行うために必要と認められる事項がある場合に行う注記のこと

企業会計基準委員会が公表した議事概要「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方」(2020年4月10日公表、2020年5月11日追補)にもとづき、新型コロナウイルス感染症の影響に係る仮定に関する追加情報の記載内容を審査

会計上の見積り :繰延税金資産の回収可能性の判断、減損会計における将来キャッシュ・フローの見積りなど、財務諸表を作成するにあたって必要になる様々な見積りのこと

(2)法令改正関係審査
平成31年1月に施行された「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」による改正(詳細は2018年11月5日のニュース『速報 「コーポレート・ガバナンスの状況等」の記載内容が大幅改正へ』を参照)について、有価証券報告書の記載内容を審査
令和2年度は「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」、「事業等のリスク」、「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析( MD&A)」及び「監査の状況」が対象。
(3)重点テーマ審査
以下のテーマに着目して審査
顧客との契約から生じる収益( IFRS採用会社のみ対象)
(注)当初予定していたセグメント情報に関しては、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ中止。

次に、各審査(レビュー)結果のうち重要な点、および審査結果を踏まえた2021年3月期におけるポイントについて見てみよう。

(1)新型コロナウイルス感染症の影響に係る仮定に関する追加情報の開示の審査
金融庁は、追加情報を記載していない企業が挙げた下記の不記載の理由について「以下が合理的な理由かどうかは慎重に検討する必要がある」とコメントし、事実上、問題視している。

〇他の項目に記載しており重複を避けるため(審査対象企業の12%がこのように回答)
〇見通しが全く立たないため(同8%)

上記審査結果を踏まえ金融庁は、「新型コロナウイルス感染症は未だ収束していない」とし、2021年3月期の有価証券報告書では、前期の有価証券報告書に追加情報で開示した内容の前提となった環境の変化を踏まえつつ、積極的な開示を求めている。

(2)法令改正関係審査平成31年1月に施行された「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」による改正について
①経営方針、経営環境及び対処すべき課題等

審査の結果、主に以下の2点が指摘されている。

〇経営環境について、経営者の認識に関する記載がない(新型コロナウイルス感染症が経営環境に及ぼす影響など、直近の状況を踏まえた具体的な説明がない)。
〇主な事業と関連付けた経営方針・経営戦略の記載がない。

この審査結果を踏まえ、2021年3月期の有価証券報告書では、「経営環境」について以下の記載を求めている。

〇経営環境については、企業構造、事業を行う市場の状況や競合他社との競争優位性に加えて、自社の弱みや課題、経営環境の変化を踏まえた自社にとっての機会やリスクに関する経営者の認識を記載する。
〇各セグメントに固有の経営環境についての経営者の認識も併せて説明する。

新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた開示としては下記を求めている。「経営者が新たに認識した」といった記述からもうかがえるように、経営環境の変化を踏まえた記載が求められていると言えよう。

〇新型コロナウイルス感染症が自社の経営環境にどのような影響を与えているかについて、経営者が新たに認識した自社の弱みや課題、機会やリスク等も踏まえ、セグメントごとに具体的に記載する。
〇現状の経営環境の変化を踏まえて経営方針・経営戦略等を見直す場合、従前からどのような点を変更したかが分かるように記載する。

②事業等のリスク
審査の結果、主に以下の2点が指摘されている。コロナ禍においても過年度から記載内容が変わっていないことや、具体的なリスクの記載がないことが問題視されている。

〇過年度から記載内容の見直しがされていない(他の記載箇所に新型コロナウイルス感染症により大きな影響を受けた旨の記載があるものの、事業等のリスクでは一切触れられていない、など)。
〇事業等のリスクについて、顕在化する可能性の程度や時期、影響の内容、リスクへの対応策、などの具体的な記載がない。

審査結果で把握された上記の問題点を踏まえ、2021年3月期の有価証券報告書では、「経営環境」について以下の記載を求めている。「取締役会や経営会議等における議論の内容を踏まえ」といった記述からも、記載内容の具体性が重視されていることがうかがえる。

〇一般的なリスクの羅列や抽象的な記載ではなく、各社固有のリスクを具体的に記載する。
〇新型コロナウイルス感染症が経営成績等に重要な影響を与える可能性があると認識している場合には、取締役会や経営会議等における議論の内容を踏まえ「事業等のリスク」に記載する。

③経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)
審査の結果、主に以下の2点が指摘されており、このうち「仮定に関する項目はあるものの具体的な説明がない」という点については実例をあげて注意を喚起している。「継続して評価し、必要に応じて」といった記述は、投資家等に必要な情報を実質的に何も伝えていないに等しいだけに、避けるべきと言える。

〇複数セグメントを有するにもかかわらず、セグメントに紐づけた説明がない。
〇重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定に関する項目がなく、また、仮定に関する項目はあるものの具体的な説明がない
「仮定に関する項目はあるものの具体的な説明がない」事例
【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(X)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されておりますが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は異なる場合があります。
重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5経理の状況1連結財務諸表等(1)連結財務諸表(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)4会計方針に関する事項」に記載のとおりであります。

この審査結果を踏まえ、2021年3月期の有価証券報告書では下記の点を踏まえた開示を求めている。「具体的に」という言葉が繰り返し登場していることを踏まえ、ボイラープレート(ひな形)的な記述を避けることは肝に銘じる必要があろう。

〇経営成績等の状況に関して、単に財務情報の数値の増減ではなく、事業全体とセグメント情報のそれぞれについて、経営者の評価を提供する。
〇重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定を具体的に開示する。

新型コロナウイルス感染症の影響に関する開示のポイント
(経営成績等の状況)
〇新型コロナウイルス感染症が、経営成績等に大きな影響を与えている状況において、「新型コロナウイルス感染症による影響」と「それ以外の影響」とに区分し具体的に記載する。
(重要な会計上の見積り)
〇会計上の見積りを行う上で企業が新型コロナウイルス感染症の影響について「会計上の見積りの開示に関する会計基準」に基づく注記等との関連を踏まえ具体的に開示する。

④監査の状況
審査の結果、主に以下の2点が指摘されており、これらの両方に該当する実例を示している。

〇監査役等の活動状況の記載が形式的な内容(会議に出席、書類の閲覧、等)にとどまる。
〇監査役等の具体的な活動が読み取れない。
上記2つの指摘事項に該当する事例
(X)【監査の状況】
①監査役監査の状況
当社における監査役監査は、監査基準の定めに基づき監査を実施しております。常勤監査役は監査計画に従い、取締役会その他重要な会議に出席する、重要な決裁書類を閲覧する、担当取締役からの業務執行に関する報告聴取を行う、などして、業務執行の適法性、業務の効率性を検証し、経営に関する必要な助言を行っております。
当事業年度において当社は監査役会を年〇回開催しており、個々の監査役の出席状況については次のとおりであります。
(以下略)

このほか、「監査法人の 継続監査期間の記載がない」ことも指摘されている。会計不正が相次ぐ中、継続監査期間は投資家の関心事であり、EUでは既に監査法人のローテーション制度が導入されている(監査法人のローテーション制度については、2016年6月24日のニュース『「同一の監査人による監査期間」の開示が制度化された場合の企業への影響』参照)。記載がないことで投資家にあらぬ疑いを抱かれることにもなりかねないだけに、確実に記載しておきたい。

継続監査期間 : 同一の会計監査人に継続して監査を受ける期間

この審査結果を踏まえ、2021年3月期の有価証券報告書では下記の点を踏まえた開示を求めている。監査役および監査役会に対し、重点的に監査した点の情報提供を求めるなど、監査の形骸化防止に重点を置いた要望と言えよう。

〇提出会社の監査役及び監査役会の活動状況に関しては、単に会議の開催頻度や参加回数を記載するにとどまらず、具体的にどのような点を重点的に監査したか等の情報提供が必要。

新型コロナウイルス感染症の影響に関する開示のポイント
〇監査役等の活動のうち実施困難となったものがあれば、その内容及び代替的な対応を記載する。
〇会計監査人の監査の遂行に支障をきたす状況が生じた場合は、適正な監査の確保に向けて監査役等が、会計監査人とどのような協議を行い、どう対応をしたかについて、具体的に記載する。

(3)重点テーマ審査 顧客との契約から生じる収益(IFRS15号)の開示(IFRS採用会社のみ対象)
審査の結果、主に以下の点が指摘されている。「開示目的に照らすと改善の余地があると考えられる事項」としては、例えば、収益の分解情報と収益の分解情報以外の情報(特に履行義務の内容)との関係について、投資家が十分に理解出来るような説明がない点などが挙げられている。

〇顧客との契約から生じる収益に関する開示に関し、以下の各項目の開示等について、開示目的に照らすと改善の余地があると考えられる事項が識別された。
・収益の分解(
・履行義務
・残存履行義務に配分した取引価格
・履行義務の充足の時期の決定
・見積りを伴う判断
 顧客との契約から生じる収益および当該契約から生じるキャッシュ・フローの性質、金額、時期および不確実性に影響を及ぼす主要な要因に基づく区分に当該収益を分解した情報のこと。具体例については2020年8月26日のニュース「収益の分解情報、早期適用の13社はどう区分した?」を参照。

この審査結果を踏まえ、2021年3月期の有価証券報告書では下記の点を踏まえた開示を求めている。安易な開示の省略に釘を刺す内容となっている。

〇個々の開示要求に対する形式的な対応にとどまらず、関連する開示が全体として開示目的を達成するための十分な情報となっているか検討する。
〇基準で求められている開示を省略する理由として以下は適切ではないと考えられ再考が必要。
・特殊な履行義務ではないため
・業界慣行に従い処理しているため
・日本の会計基準による会計処理と差異がないため
〇重要性がないとして要求されている開示を省略する際は、その省略によって開示目的の達成に必要な情報の理解も困難になっていないかどうか検討する。

2.令和3年度 有価証券報告書レビューの実施内容
2021年3月期決算以降の有価証券報告書がレビュー対象となる令和3年度有価証券報告書レビューの実施内容は下表のとおり。令和2年度の有価証券報告書レビューでは、(1)の法令改正関係審査は新会計基準への対応、(2)重点テーマ審査は【経理の状況】(追加情報)に関する新型コロナウイルス感染症の開示がテーマだったが、令和3年度有価証券報告書レビューではこのうち(2)について、【経理の状況】に加え、新型コロナウイルス感染症に関する記述情報の開示もレビュー対象となる。令和3年度も“コロナ開示”が有価証券報告書レビューの重要テーマになるということだ。なお、顧客との契約から生じる収益は令和2年度に続きIFRS採用会社のみが対象となる。

審査の種類 レビュー内容
(1)法令改正関係審査 会計上の見積りの開示に関する会計基準」及び「会計方針の開示、 会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」の改正について、適切な記載がなされているか。
(2)重点テーマ審査 ・新型コロナウイルス感染症に関する開示(注1)
・顧客との契約から生じる収益(注2)

(注1)新型コロナウイルス感染症に関連する、非財務情報(「経営方針・経営戦略等」、「事業等のリスク」、「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」)、及び、 財務情報(「会計上の見積りの開示に関する会計基準に基づく注記」、「追加情報」)の記載を審査。
(注2)IFRSを任意適用する会社を対象に、顧客との契約から生じる 収益(IFRS 第15号)の適用状況を審査。会計処理や連結財務諸表の表示に加え、注記についても審査対象。

金融庁は2021年4月16日よりYouTubeの「金融庁チャンネル」で「記述情報の開示の充実に向けた解説動画」と題して、有価証券報告書の「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「事業等のリスク」「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)」「コーポレートガバナンスの状況等」について1コマ10分~20分程度の解説を配信している。有価証券報告書の作成に先立ち、開示業務に携わっている取締役や担当者は目を通しておきたい。

2021/04/19 従業員逮捕の余波で株主提案

上場会社にとって「従業員の逮捕」は一大事であり、ましてやそれが会社の業務に関連した事件による逮捕となれば、会社のコンプライアンス体制が問われることとなる。

2020年7月、東証一部に上場している・・・

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2021/04/19 従業員逮捕の余波で株主提案(会員限定)

上場会社にとって「従業員の逮捕」は一大事であり、ましてやそれが会社の業務に関連した事件による逮捕となれば、会社のコンプライアンス体制が問われることとなる。

2020年7月、東証一部に上場しているソウルドアウトで、「医療品・医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下、薬機法)違反により従業員が逮捕された。逮捕の容疑は、健康食品会社(ステラ漢方)からの依頼を受け、医薬品ではない健康食品にあたかも脂肪肝改善効果があるかのように思わせる広告(LP記事)をウェブメディアに配信していたというもの(同社のリリースはこちら)。当該従業員は薬事広告規制について一定程度の知識は有していたものの、広告内容が薬事広告規制をクリアしているかどうかを自ら判断をすることはなく、できるだけ訴求力の高い“攻めた”内容の広告を作り、薬事広告規制をクリアしているかどうかは配信の依頼先の広告媒体側の審査(以下、媒体審査)に委ねていた。具体的には、各広告媒体の媒体審査に合格した場合には各広告媒体がそのままの内容で配信し、不合格となった場合には当該従業員が指摘された問題点を修正するなどのプロセスを経てから配信するという慣行となっていた。その結果、客観的には薬機法が定める薬事広告規制に違反する内容であったとしても、「媒体審査を経た以上は問題がない」という理解の下で広告が配信されてしまうという状況が生じていた。

LP記事 : 検索エンジンなどから流入した読者を製商品やサービスの購入に誘導するための読み物的なウェブページのこと。LPとは「Landing Page(ランディングページ)」の略で、最初にアクセスするウェブページのことを指す。

本来であれば、広告内容の適法性は広告媒体ではなく広告主体である広告主やソウルドアウトが責任をもって管理すべきものであり、かつ、媒体審査に通れば適法であると言えるものではない以上、媒体審査に適法性の判断を委ねるというソウルドアウトにおける実務慣行は決して許されるものではない。同社の経営陣としては、違法な広告配信がなされないよう薬事広告規制に関する社内の自主的なチェック体制を構築しておくべきであった。

本事件では、2021年3月31日付で大阪地方検察庁より、従業員のうち1名が不起訴処分とされ、もう1名については薬機法違反として略式起訴(罰金)とされた。また、法人としての同社も、薬機法が定める 両罰規定により、略式起訴(罰金)とされた。両罰規定の適用を受けたこと以上にソウルドアウトにとってダメージとなったのはレピュテーションの棄損だ。本日(2021年4月19日)現在、googleで同社名を検索すると検索用語候補の一覧に「逮捕者」等の字句が追加されたリコメンドが表示されるなど、従業員逮捕の事実がいまなお同社のレピュテーションに悪影響を与えていることが推測される。

話はこれで終わらない。ソウルドアウトの親会社であるデジタルホールディングス(東証一部)は、2021年3月26日開催の当社第27期定時株主総会に先立ち、株主であるLIM JAPAN EVENT MASTER FUNDから「上場子会社であるソウルドアウトの社員逮捕を受けて、グループ全体としての企業価値最大化及び資本効率性の観点から、上場子会社として維持することが最適なものであるかを点検するため、当該上場子会社に関する次に掲げる点について、取締役会で審議し、当会社が金融商品取引所に提出するコーポレート・ガバナンスに関する報告書において、その審議の内容等を開示しなければならないものとする」旨の定款変更を求める株主提案を受ける事態に発展したのだ。同株主提案に対してデジタルホールディングスの取締役会は反対意見を表明(同社のリリースはこちら)、定時株主総会における決議動向が注目されていた。

両罰規定 : 犯罪行為をした個人のみならず、それが業務の中で行われている以上は、企業も処罰するという規定。

結局、株主提案は21.5%の賛成率にとどまり否決されたが、コンプライアンスの不備による社員の逮捕が何らかの株主提案の誘因になりかねないということを上場会社の経営陣は認識しておく必要がある。