2020年12月3日のニュース「見えて来たCGコード改訂の“柱”」では、12月8日に開催される金融庁の「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(以下、フォローアップ会議)で・・・
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2020年12月3日のニュース「見えて来たCGコード改訂の“柱”」では、12月8日に開催される金融庁の「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(以下、フォローアップ会議)で、「取締役会の構成」と「社内のダイバーシティ」をテーマとした“取りまとめ”が公表される方向であることを報じたところだが、それが同日のフォローアップ会議に会議資料として提出された「コロナ後の企業の変革に向けた取締役会の機能発揮及び企業の中核人材の多様性の確保(案)」だ 。これは事実上、「取締役会の構成」と「社内のダイバーシティ」に関する改訂CGコードの「原案」と言ってよい(以下、原案)。上記で引用したニュースでも触れたとおり、菅総理の所信表明演説や(2020年)12月1日にとりまとめられたばかりの成長戦略実行計画でこれらのテーマに言及があったことから、この部分だけ対応を急いだものとみられる。
原案にもあるように、「取締役会の3分の1以上の独立社外取締役の選任」が改訂CGコードにおける“最低ライン”となることは間違いないが、気になるのは、「さらに、それぞれの経営環境や事業特性等を勘案して必要と考える企業には、独立社外取締役の過半数の選任を検討するよう促すべきである。」との記述だ。この点については、前回(第20回:2020年11月18日開催)のフォローアップ会議で“過半数説”に勢いがあったため、それを反映する形で原案に書き込まれることとなった可能性が高い。ただ、フォローアップ会議のメンバーの弁護士からも発言があったように、いくらCGコードが「コンプライ・オア・エクスプレイン」方式をとっているとはいえ、機関投資家の中には「コンプライしていない場合には反対票を投じる」というところもあるため、「過半数」という文言がCGコードに明記されるかどうかは不透明だろう。
また原案には、「スキルマトリックスを公表するべき」としつつ(スキルマトリックスについては、2020年2月26日のニュース「2019年におけるスキル・マトリックス開示の傾向」参照)。最近では、スキル・マトリックスが経営権を巡る争いの材料に使われる事例(2020年6月19日のニュース「“お家騒動”で双方が異なるスキル・マトリックスを示す事態に」も発生している)、「その際、独立社外取締役には、他社での経営経験を有する者を含むよう求めるべきである。」との記述があり、これは実質的に「経営者出身の独立社外取締役を1人は入れよ」と言っているようにも見える。実際、フォローアップ会議では社外取締役の「質の確保」に焦点が当たっており、フォローアップ会議でも「最低1人は経営者」との考えを持つメンバーが目に付く。一方で、「元社長の社外取締役が取締役会で幅をきかすことにならないか」といった意見や、特定の属性からの選任を求めることに対しては否定的な意見もある。
スキルマトリックス : 取締役のスキル・能力の開示手法。縦軸に各取締役の氏名、横軸にスキル・能力を分野別に並べ、各取締役がスキル・能力を有する分野に丸印をつけるといった形式をとることが多いため、「スキル・マトリックス(あるいはマトリクス)」と呼ばれる。
「投資家との対話の窓口となる筆頭独立社外取締役の設置」という記述も注目される(筆頭独立社外取締役については2020年11月24日のニュース『フォローアップ会議で「筆頭社外取締役」の役割に期待する意見』参照)。この記述は、「投資家との対話は筆頭独立社外取締役がやるべき」と言っているように見える。この意見は英国のCGコードに倣ったものと思われるが、フォローアップ会議のメンバーの中でも異論は多い。したがって、「筆頭独立社外取締役」と「投資家との対話の窓口」のリンクは切れる可能性があろう。その一方で、著名大学教授はこの意見に賛成していることもあり、何らかの形で記述が残ることも考えられる。
冒頭でも触れた原案の2大テーマの一つである「社内のダイバーシティ」については、下記のような記述となった。
| ・・・上場企業に対し、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を示すとともに、その状況の公表を求めるべきである。また、多様性の確保に向けた人材育成方針・社内環境整備方針をその実施状況とあわせて公表するよう求めるべきである。 |
この記述を見る限り、必ずしも「女性」「外国人」「中途採用者」について“個別に”目標設定することまでは求められておらず、また、2箇所出て来る「多様性の確保」という文言における「多様性」には様々な要素があることから(例えば年齢、学歴など)、「女性」「外国人」「中途採用者」に限らない、より幅広い意味での「多様性」を確保するということでも足りるということになる可能性があろう。
コロナ禍はこれまで投資家の批判の対象となってきた内部留保の重要性を企業の経営陣に認識させることになったが、一方で、内部留保を厚くするために新たな製品やサービスを生み出すためのR&Dへの投資を抑制すれば、将来の成長の芽を摘むことになる。いまだコロナ禍が収束しない中で、経営陣には難しい判断が迫られていると言えるだろう。
R&D : 「Research and Development」の略称で、「研究開発」と訳されるのが一般的。自社の競争力を高めるための技術調査や技術開発、事業領域に関する研究といった活動を指す。
企業がR&D投資を行った場合、・・・
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コロナ禍はこれまで投資家の批判の対象となってきた内部留保の重要性を企業の経営陣に認識させることになったが、一方で、内部留保を厚くするために新たな製品やサービスを生み出すためのR&Dへの投資を抑制すれば、将来の成長の芽を摘むことになる。いまだコロナ禍が収束しない中で、経営陣には難しい判断が迫られていると言えるだろう。
R&D : 「Research and Development」の略称で、「研究開発」と訳されるのが一般的。自社の競争力を高めるための技術調査や技術開発、事業領域に関する研究といった活動を指す。
企業がR&D投資を行った場合、ある事業年度の投資総額の⼀定割合(6〜14%)を当該事業年度の法⼈税から控除できる「研究開発税制 (総額型)」(以下、研究開発税制)という制度(経済産業省「研究開発税制の概要」4ページ参照)が租税特別措置法に設けられているが、コロナ禍による企業の業績悪化を踏まえ、政府は研究開発税制を改正し、法人税から控除できる金額の上限を引き上げる方針だ。この改正は、(2020年)12月10日に与党が公表する令和3年度税制改正大綱に盛り込まれる。
研究開発税制 : 複数の計算方法があるが、例えば、試験研究費の増減に応じて6~14%。増加率が高いほど控除率が高くなる)をその事業年度の法人税額から控除する。
租税特別措置法 : 納税者(企業や個人など)に特定の行動(例えば研究開発への投資)を促すため、一定の要件を満たした場合に税金を優遇する各種の特例措置を規定した法律のこと。各規定は、通常は適用期限が設けられた時限措置である。
税制改正大綱 : 税制改正は毎年1回行われるのが通常だが、翌年度の税制改正の内容を大まかにとりまとめたものが税制改正大綱であり、毎年12月中旬頃に政府(与党)が公表する。
今回の改正の最大の趣旨は、コロナ禍により法人税計算上の所得(≒利益)が十分に生じない企業の救済にある。上述のとおり、研究開発税制はR&D投資総額の⼀定割合を法⼈税から控除できる制度だが、現行制度では、控除できる金額の上限は法人税額の25%相当額となっている。例えば100億円の法人税が発生している企業であれば、最大25億円のR&D投資額を法人税から控除することができる。しかし、仮にこの企業がコロナ禍のダメージで業績不振に陥り所得が大幅に減少し、その結果、法人税額が10億円にまで落ち込んだ場合、法人税から控除することができるR&D投資額は最大2億5千万円となる。例えばこの企業のR&D投資額が10億円だとすると、100億円の法人税が発生していた時には10億円を丸々法人税から控除することができたのに対し、法人税額が10億円となった場合には10億円のうち7億5千万円(=10億円-2億5千万円)は法人税から控除できなくなってしまう。そこで政府は、控除できる金額の上限を法人税額の25%から「30%」に引き上げる。5%の差であっても、大規模企業であれば、法人税負担は大きく変わってくる。
この控除上限の引上げは、令和3年度から2年間の時限措置とする。あくまで一時的な措置であり、コロナ禍が収束すればまた25%に戻される可能性が高いだけに、経営陣としては本措置のメリットを享受したいところだが、本措置の適用を受けるためには、「基準年度比で売上が2%以上減少」かつ「基準年度比で試験研究費が増加」という要件を満たす必要があることとされる点、要注意だ。ここでいう基準年度とは、「令和2年2月1日前に最後に終了した事業年度」を指す。例えば3月決算法人であれば、「平成30年度(2018年度)」ということになる。要するに、本措置は、コロナ前の事業年度に比べ業績は悪化したもののR&D投資は積極的にやっていこうという企業を念頭に置いていると言える。「2%」以上の売上減少というのは比較的“穏便”な要件と言えるが、それでも、売上が減少している中でR&D投資を増やそうというマインドになれる経営陣は多くはないだろう。「2%以上」の売上減少というのは本措置の適用を受けるための最低ラインであるため、当然ながら売上がマイナス10%、あるいはたとえ半分になったとしても、「2%以上の売上減少」という要件は満たすことになる。その上で、R&D投資は増やさなければ本措置の適用はない。
コロナ禍は多くの企業に業態、ビジネスモデルの変革を迫る機会となったが、「売上減少下の積極投資」を求める本措置は、変革を迫られる企業の背中を押すものとも言えそうだ。
2020年12月3日のニュース「見えて来たCGコード改訂の“柱”」でお伝えしたとおり、12月8日に開催される金融庁の「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(以下、フォローアップ会議)では、「取締役会の構成」と「社内のダイバーシティ」がテーマとなる(会議の模様はこちらでライブ配信される)。当フォーラムが2020年11月19日のニュース「女性、外国人、中途採用者の管理職への登用状況等を数字で公表要求へ」で改訂コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)に盛り込まれる方向である旨報じていた ①取締役会の「3分の1以上」の独立社外取締役の選任を求める、②「女性」「外国人」「中途採用者」の管理職への登用等の目標・状況を自主的かつ測定可能な形で策定し公表する、という改訂内容を含む改訂CGコードの一部の論点についての“取りまとめ”が示されることになる。
投資家などからは、「取締役会の3分の1」という独立社外取締役の割合について「不十分」との声も聞かれるが、政府は、まずは日本企業の取締役会に一定数の社外取締役を入れてモニタリング・ボードの“土台”を作り(モニタリング・ボードについては2020年11月4日のニュース「野村AM 取締役会のモニタリングボード化を期待」参照)、次のステップとして社外取締役の実効性を高めていくという二段構えの政策をとっている。最初からハードルを上げすぎれば“土台”を作ることさえできないからだ。
モニタリング・ボード : 経営陣の監督を主たる役割・任務とする取締役会のこと。
しかし、社外取締役の実効性を確保するという観点からは、「3分の1」では不十分という指摘にも合理性はある。その理由の1つとして、ここ最近、社外取締役の役割が急速に変質していることが挙げられる。欧米では「株主第一主義」という考え方は見直すべきという議論が主流になりつつある中で、「社外取締役=株主の代理人」という考え方は既に古い。今や社外取締役には、株主の代理人という立場だけでなく、従業員、顧客をはじめとする様々なステークホルダーや環境問題にまで目配りをし、会社との利害を調整するという役割が求められている。社外取締役がこの役割を果たすためには、多様なバックグラウンドを持った人材が忌憚のない意見をぶつけ合えるという環境が欠かせない。社外取締役にダイバーシティが求められる理由もここにある。
ただ、現状、多くの日本企業の取締役会は業務執行者である社内取締役を中心に構成されており、社外取締役が取締役会をリードしているという雰囲気はない。リード役が社内取締役である場合、広い目でステークホルダー等との利害調整を図ることが難しくなる大きな原因が、取締役会における「ヒエラルキー」の存在だ。社内取締役には、会長・社長を筆頭に、副社長、専務、常務、平取といった序列があり、(企業カルチャーにもよるが)それが活発な議論を阻害している面は否めない。例えば平取が何か意見を述べたとしても、序列が上の取締役がそれを否定すれば、平取は意見を引っ込めるのが通常だろう。このように、ヒエラルキーのある取締役会が、多様なステークホルダー等との利害調整を適切に図ることが難しいのは必然と言える。
取締役会について日本企業と欧米企業が比較される場合、「社内取締役中心か社外取締役中心か」という点にフォーカスが当たることが多いが、実は日本企業と欧米企業の取締役会の最も重要な違いは、フラットかどうか(ヒエラルキーがあるかどうか)という点にある。もっとも、欧米企業の取締役会がフラットなのは取締役会が社外取締役中心に構成されているためであり、両者は表裏一体の関係にある。取締役会のメンバーがフラットな関係であるからこそ、各メンバーがそれぞれの立場で自由な意見を出しやすく、様々なステークホルダー等との利害調整もフェアにできる。そもそもフラットに議論ができなければ、たとえ社外取締役のダイバーシティを確保してもそれが活きて来ない。この点、現在の多くの日本企業の取締役会は、ステークホルダー等との利害調整を担うべき社外取締役が社内取締役のヒエラルキーの影に隠れて存在感が薄くなっているという構図になっているとの指摘もある。
では、このような状態を解消するにはどうすればよいのだろうか。その方法としては2つ考えられる。1つは、・・・
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2020年12月3日のニュース「見えて来たCGコード改訂の“柱”」でお伝えしたとおり、12月8日に開催される金融庁の「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(以下、フォローアップ会議)では、「取締役会の構成」と「社内のダイバーシティ」がテーマとなる(会議の模様はこちらでライブ配信される)。当フォーラムが2020年11月19日のニュース「女性、外国人、中途採用者の管理職への登用状況等を数字で公表要求へ」で改訂コーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)に盛り込まれる方向である旨報じていた ①取締役会の「3分の1以上」の独立社外取締役の選任を求める、②「女性」「外国人」「中途採用者」の管理職への登用等の目標・状況を自主的かつ測定可能な形で策定し公表する、という改訂内容を含む改訂CGコードの一部の論点についての“取りまとめ”が示されることになる。
投資家などからは、「取締役会の3分の1」という独立社外取締役の割合について「不十分」との声も聞かれるが、政府は、まずは日本企業の取締役会に一定数の社外取締役を入れてモニタリング・ボードの“土台”を作り(モニタリング・ボードについては2020年11月4日のニュース「野村AM 取締役会のモニタリングボード化を期待」参照)、次のステップとして社外取締役の実効性を高めていくという二段構えの政策をとっている。最初からハードルを上げすぎれば“土台”を作ることさえできないからだ。
モニタリング・ボード : 経営陣の監督を主たる役割・任務とする取締役会のこと。
しかし、社外取締役の実効性を確保するという観点からは、「3分の1」では不十分という指摘にも合理性はある。その理由の1つとして、ここ最近、社外取締役の役割が急速に変質していることが挙げられる。欧米では「株主第一主義」という考え方は見直すべきという議論が主流になりつつある中で、「社外取締役=株主の代理人」という考え方は既に古い。今や社外取締役には、株主の代理人という立場だけでなく、従業員、顧客をはじめとする様々なステークホルダーや環境問題にまで目配りをし、会社との利害を調整するという役割が求められている。社外取締役がこの役割を果たすためには、多様なバックグラウンドを持った人材が忌憚のない意見をぶつけ合えるという環境が欠かせない。社外取締役にダイバーシティが求められる理由もここにある。
ただ、現状、多くの日本企業の取締役会は業務執行者である社内取締役を中心に構成されており、社外取締役が取締役会をリードしているという雰囲気はない。リード役が社内取締役である場合、広い目でステークホルダー等との利害調整を図ることが難しくなる大きな原因が、取締役会における「ヒエラルキー」の存在だ。社内取締役には、会長・社長を筆頭に、副社長、専務、常務、平取といった序列があり、(企業カルチャーにもよるが)それが活発な議論を阻害している面は否めない。例えば平取が何か意見を述べたとしても、序列が上の取締役がそれを否定すれば、平取は意見を引っ込めるのが通常だろう。このように、ヒエラルキーのある取締役会が、多様なステークホルダー等との利害調整を適切に図ることが難しいのは必然と言える。
取締役会について日本企業と欧米企業が比較される場合、「社内取締役中心か社外取締役中心か」という点にフォーカスが当たることが多いが、実は日本企業と欧米企業の取締役会の最も重要な違いは、フラットかどうか(ヒエラルキーがあるかどうか)という点にある。もっとも、欧米企業の取締役会がフラットなのは取締役会が社外取締役中心に構成されているためであり、両者は表裏一体の関係にある。取締役会のメンバーがフラットな関係であるからこそ、各メンバーがそれぞれの立場で自由な意見を出しやすく、様々なステークホルダー等との利害調整もフェアにできる。そもそもフラットに議論ができなければ、たとえ社外取締役のダイバーシティを確保してもそれが活きて来ない。この点、現在の多くの日本企業の取締役会は、ステークホルダー等との利害調整を担うべき社外取締役が社内取締役のヒエラルキーの影に隠れて存在感が薄くなっているという構図になっているとの指摘もある。
では、このような状態を解消するにはどうすればよいのだろうか。その方法としては2つ考えられる。1つは、取締役会のヒエラルキーをなくすことだ。ただ、これは容易なことではないだろう。たとえ専務や常務といった肩書を廃止したとしても、先輩・後輩、入社年次などにより、“上意下達”の意識は残る。例えばかつてある東証一部上場企業は、業務執行取締役を2年毎に2名入れ替える制度を実施していたが、ヒエラルキーを緩和するにはこれくらいの大胆な改革が必要かもしれない。確かにこのやり方の下では、新規事業の立ち上げに意欲を見せる若手の大抜擢も起り得るし、業務執行役員間のヒエラルキーも生まれにくい。
といえ、いきなりこのような仕組みを導入するのには経営の安定性という観点からリスクも伴う。実際、上記東証一部上場企業も、10年続けたこの制度を2年前に廃止している。即効性があるのは、やはり社外取締役を増やし、取締役会のマジョリティにすることだろう。さらに、社外取締役の人選においても、経歴だけでなく、ステークホルダー等との利害調整ができる人材なのかどうか、人間性やマインドセットも見極める必要がある。
今回のCGコードの改訂は日本企業のコーポレートガバナンス向上に寄与することが期待される一方、足下を見れば、社外取締役の役割が大きく変わる中で、社外取締役が実効性を発揮できず、せっかく作った“土台”が崩れてしまいかねないという危機に瀕しているとも言えよう。
誠に勝手ながら、2020年12月28日~2021年1月6日は
事務局の年末年始休業となります。
ご不便をおかけしますが、何卒ご理解いただきますようお願い致します。
なお、会員登録は冬季休業期間中もオンラインにて可能です。
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2021年3月1日からの改正会社法施行に先立ち、法務省は2020年11月27日、会社法施行規則を改正し公布している。会社法施行規則の改正にあたり、法務省は公開草案に対しパブリックコメントを募集していたが、修正を求める声が多く寄せられていたのが「社外取締役が果たすことが期待される役割」を社外取締役の選任議案に記載することを求める改正案だ(詳細は2020年10月7日のニュース『「社外取に期待される役割」の開示案に対しパブコメで賛否』を参照)。しかし、・・・
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2021年3月1日からの改正会社法施行に先立ち、法務省は2020年11月27日、会社法施行規則を改正し公布している。会社法施行規則の改正にあたり、法務省は公開草案に対しパブリックコメントを募集していたが、修正を求める声が多く寄せられていたのが「社外取締役が果たすことが期待される役割」を社外取締役の選任議案に記載することを求める改正案だ(詳細は2020年10月7日のニュース『「社外取に期待される役割」の開示案に対しパブコメで賛否』を参照)。しかし、結局修正は入らず、パブコメに付された改正案のまま確定した。本改正案の対象を社外監査役にも広げることを求める意見も寄せられていたが、法務省は「監査役については、法令上求められる職責の中から、株式会社が期待する役割を特定して記載させることにもなじまない」との考え方を示し、原案を維持している。
また、改正会社法361条7項では、「上場している監査役会設置会社(大会社に限る)」または「監査等委員会設置会社」は、取締役会で「取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針」として「法務省令で定める事項」を決議(*)する必要があることとされているが(2020年9月7日のニュース「速報・改正会社法政省令 来年の株主総会参考書類、事業報告に記載が必要な事項」を参照)、「法務省令で定める事項」の内容も確定した(パブコメ案から変更なし)。
大会社 : 負債200億円以上または資本金5億円以上の株式会社
| 会社法361条 7項 次に掲げる株式会社の取締役会は、取締役(監査等委員である取締役を除く。以下この項において同じ。)の報酬等の内容として定款又は株主総会の決議による第1項各号に掲げる事項についての定めがある場合には、当該定めに基づく取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針として法務省令で定める事項を決定しなければならない。ただし、取締役の個人別の報酬等の内容が定款又は株主総会の決議により定められているときは、この限りでない。 一 監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)であって、金融商品取引法第24条第1項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないもの 二 監査等委員会設置会社 |
改正会社法361条7項の「法務省令で定める事項」を具体的に定めているのが、改正会社法施行規則の98条の5である。
| (取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針) 第98条の5 法第361条第7項に規定する法務省令で定める事項は、次に掲げる事項とする。 一号 取締役(監査等委員である取締役を除く。以下この条において同じ。)の個人別の報酬等(次号に規定する業績連動報酬等及び第三号に規定する非金銭報酬等のいずれでもないものに限る。)の額又はその算定方法の決定に関する方針 二号 取締役の個人別の報酬等のうち、利益の状況を示す指標、株式の市場価格の状況を示す指標その他の当該株式会社又はその関係会社(会社計算規則第2条第3項第二十五号に規定する関係会社をいう。)の業績を示す指標(以下この号及び第121条第五号の二において「業績指標」という。)を基礎としてその額又は数が算定される報酬等(以下この条並びに第121条第四号及び第五号の二において「業績連動報酬等」という。)がある場合には、当該業績連動報酬等に係る業績指標の内容及び当該業績連動報酬等の額又は数の算定方法の決定に関する方針 三号 取締役の個人別の報酬等のうち、金銭でないもの(募集株式又は募集新株予約権と引換えにする払込みに充てるための金銭を取締役の報酬等とする場合における当該募集株式又は募集新株予約権を含む。以下この条並びに第121条第四号及び第五号の三において「非金銭報酬等」という。)がある場合には、当該非金銭報酬等の内容及び当該非金銭報酬等の額若しくは数又はその算定方法の決定に関する方針 四号 第一号の報酬等の額、業績連動報酬等の額又は非金銭報酬等の額の取締役の個人別の報酬の額に対する割合の決定に関する方針 五号 取締役に対し報酬等を与える時期又は条件の決定に関する方針 六号 取締役の個人別の報酬等の内容についての決定の全部又は一部を取締役その他の第三者に委任することとするときは、次に掲げる事項 イ 当該委任を受ける者の氏名又は当該株式会社における地位及び担当 ロ イの者に委任する権限の内容 ハ イの者によりロの権限が適切に行使されるようにするための措置を講ずることとするときは、その内容 七号 取締役の個人別の報酬等の内容についての決定の方法(前号に掲げる事項を除く。) 八号 前各号に掲げる事項のほか、取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する重要な事項 |
既に取締役会において「取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針」を“すべて”決定している場合には、特段の変更がない限り、毎年取締役会において当該方針を決定し直す必要はない(法務省の考え方の17ページの丸数字9番より)。すなわち、法務省令(改正会社法施行規則の98条の5)に定める「取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針」のうち一つでも決定していない事項があればそれを決定する必要があるが、一度すべての事項を決定すれば、「特段の変更」がない限り、翌年は何もする必要はない。
上記の改正後の会社法施行規則98条の5第六号において特筆すべきは、「任意の報酬委員会」と「その他の第三者」(上記の赤字部分)の関係が法務省の考え方として整理されたという点だ。まず、取締役で構成する任意の報酬委員会に報酬等の最終決定権限を持たせている場合は、同号イの「当該委任を受ける者の氏名」とは、当該委員会の構成員である各取締役の個人名を指すこととされた(法務省の考え方の23ページの丸数字22番および23番より)。一方、任意の報酬委員会が報酬等の最終決定権限を持たず、単なる諮問機能を有するだけの場合、報酬等に関する決定権限を委任していることにはならず、同号の「取締役の個人別の報酬等の内容についての決定の全部又は一部を取締役その他の第三者に委任すること」には該当しないので要注意だ(法務省の考え方の24ページの丸数字25番より)。
パブコメで反対が多かった六号ハの「権限が適切に行使されるようにするための措置」も原案通り確定した(パブコメ案から変更なし)。パブコメでは、「権限が適切に行使されるようにするための措置」の具体例として、「任意の委員会に委任する場合の委員会構成や決議プロセスの透明性の工夫、また、取締役社長に一任した場合の取締役社長による決定に対する任意の委員会による事前及び事後のチェックプロセスなどという理解でよいか」との質問が寄せられたが、これに対し法務省が「ご理解のとおり」と回答している点は押さえておきたい。取締役報酬の個人別金額の確定を社長に再一任する場合は、任意の報酬委員会に社長の決定に対するチェックという牽制機能を持たせることは必須と言えそうだ。また、“報酬ガバナンス”の観点からは、任意の報酬委員会を、単なる諮問機関やチェック機関から報酬等の最終決定機関に格上げすることを検討すべきだろう。
上場会社であれば必ず該当することとなる公開会社は、事業報告で上記「取締役の個人別の報酬等に係る決定方針」の概要等を開示しなければならない。さらに、上場会社は有価証券報告書でも当該方針や上記改正会社法施行規則98条の5第六号の内容の開示が必要となる見込みだ(2020年11月17日のニュース「開示規制強化により変化を余儀なくされる個別報酬の決定権限」を参照)。ここまで開示が強化されると、「いっそのこと業績連動報酬に移行した方が説明責任の果たし方としては楽ではないか」と判断し、個別報酬の決定を社長に一任してきた会社が業績連動報酬への切り替えを迫られることも予想される。
このほか法務省は、会社法施行規則第98条の5第8号の「重要な事項」として、「例えば、一定の事由が生じた場合に取締役の報酬等を返還させることとする場合におけるその事由の決定に関する方針等が考えられる」としている(法務省の考え方の26ページの丸数字28番より)。これはいわゆるクローバック条項と言われるもの。改正会社法施行を機に、粉飾決算へのディスインセンティブとしてクローバック条項を設ける上場会社が増えることになりそうだ。
周知のとおり、現在、金融庁の「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(以下、フォローアップ会議)ではコーポレートガバナンス・コード(以下、CGコード)の改訂議論が進められているが、・・・
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