2020/11/07 【WEBセミナー】役員報酬の近時の動向

概略

【セミナー収録日】2020年10月30日(金)

近時、「指名」とともにコーポレートガバナンスの中核をなす「役員報酬」を取り巻く環境に大きな変化が生じています。新型コロナウイルス感染症は多くの企業の業績に大きなダメージを与えており、未だ感染が収束していない中、今後そのダメージは拡大する可能性があります。これに伴い、役員報酬の水準の見直し等が検討課題となり得ます。また、 日本企業の間でも一般化しつつある株式報酬については、自社の取締役等のみならず、海外子会社の経営幹部にも付与したいというニーズが高まっており、それを実現するためのスキームが注目を集めています。さらに、会社法改正をはじめ、役員報酬に関連する法規制等の見直し・整備も進んでいます。
そこで本セミナーでは、経営者報酬コンサルティング等の分野で世界的な権威を持つウイリス・タワーズワトソンの経営者報酬プラクティス部門でシニアコンサルタントを務める小川直人様に、「役員報酬の近時の動向」と題し、コロナ禍を受けた経営者報酬トレンド、コロナ禍における責任ある経営者報酬のあり方、株式報酬を海外子会社の経営幹部に付与するスキームとして注目を集める「グローバルLTI(Long Term Incentive)の仕組みや設計例、会社法改正が役員報酬に与える影響など役員報酬を巡る法規制やガイドラインの状況等について解説していただきます。

【講師】ウイリス・タワーズワトソン
経営者報酬部門
シニアコンサルタント 小川 直人 様

セミナー資料 役員報酬の近時の動向.pdf

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セミナー動画
①ウイリス・タワーズワトソン経営者報酬プラクティスの紹介、本セミナーの内容

55822a

②コロナ禍を受けた各国の経営者報酬トレンド

55822b

③株式報酬のグローバル対応

55822c

④経営者報酬を取り巻く法規制・ガイドラインの状況

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本Webセミナーを閲覧して感じたことや気付いた点(学んだ点、疑問点、自社の課題など)を下の右側の「感想の登録」ボタンを押してください。マイ研修レポートの所感等記入欄の書き直しもこちらからどうぞ。

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2020/11/06 “一人経理” 子会社のリスクとその防止策

規模の小さい会社では、経理担当者が一人で経理・財務を担う、いわゆる“一人経理”の状態になることも珍しくない。一人経理には様々な問題(下表参照)があることから決して勧められるものではないにせよ、人件費抑制や人材不足のため現実問題としてやむを得ない面もあろう。一人経理はたとえ上場会社のグループ会社であっても、会社の規模によってはしばしば見受けられる。経理、財務だけでなく、総務、人事の業務をも一人の担当者が担っているケースも少なくない。

一人経理の主な問題点
引継ぎ 業務内容が多岐にわたることから、退職時の引継ぎが難しい。
働き方 業務量が多いことから、残業が恒常的となる。
休み方 有給を取得しづらくなる。
誤謬 上長や同僚が業務をチェックする機会がないため、ミスが発覚しづらい。
不正 経理担当者が財務(振込業務)も担う場合には、その者が会社の資金に手を付けた(横領した)としても、会計処理を工夫することで横領を発覚しにくくさせることが可能。

このように一人経理には様々な問題があるが、特に気を付けなければならないのが「不正」だ。一人経理の会社における経理担当者の不正は発覚しづらく、しかも長期間にわたりやすいため、結果として横領額が巨額に上るケースが少なくない。内部統制上は、少なくとも経理と財務の担当を分け、それぞれが互いに牽制を効かせることで、横領しづらいような仕組みにしなければならないとされている。

まさにこの懸念が現実のものとなり、子会社の一人経理が7億円を横領していたことが発覚したのが東証二部に上場する・・・

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2020/11/06 “一人経理” 子会社のリスクとその防止策(会員限定)

規模の小さい会社では、経理担当者が一人で経理・財務を担う、いわゆる“一人経理”の状態になることも珍しくない。一人経理には様々な問題(下表参照)があることから決して勧められるものではないにせよ、人件費抑制や人材不足のため現実問題としてやむを得ない面もあろう。一人経理はたとえ上場会社のグループ会社であっても、会社の規模によってはしばしば見受けられる。経理、財務だけでなく、総務、人事の業務をも一人の担当者が担っているケースも少なくない。

一人経理の主な問題点
引継ぎ 業務内容が多岐にわたることから、退職時の引継ぎが難しい。
働き方 業務量が多いことから、残業が恒常的となる。
休み方 有給を取得しづらくなる。
誤謬 上長や同僚が業務をチェックする機会がないため、ミスが発覚しづらい。
不正 経理担当者が財務(振込業務)も担う場合には、その者が会社の資金に手を付けた(横領した)としても、会計処理を工夫することで横領を発覚しにくくさせることが可能。

このように一人経理には様々な問題があるが、特に気を付けなければならないのが「不正」だ。一人経理の会社における経理担当者の不正は発覚しづらく、しかも長期間にわたりやすいため、結果として横領額が巨額に上るケースが少なくない。内部統制上は、少なくとも経理と財務の担当を分け、それぞれが互いに牽制を効かせることで、横領しづらいような仕組みにしなければならないとされている。

まさにこの懸念が現実のものとなり、子会社の一人経理が7億円を横領していたことが発覚したのが東証二部に上場するカンダホールディングスだ。カンダホールディングスが2020年9月29日に公表した「社内調査委員会の調査結果報告書受領に関するお知らせ」によると、同社の連結子会社の一つで設立以来27年間にわたって経理財務の業務を一人で担当してきた使用人兼務役員が、自分名義の複数の銀行口座に「給与」名目で会社資金を振り込んでいた。横領は2000年4月から2020年3月までの20年間にわたり、横領額の総額は7億円を超えていた(7億1千9百万円)。当該連結子会社では、一人経理の業務内容が誰からもチェックされなかったことから、長期にわたって不正を続けることができた。

カンダホールディングスは、後任者が不正に気付いた後、社内調査委員会による調査を経て、10月30日に「社内調査委員会の調査結果報告書に基づく当社グループの対応について」を公表した。そこで打ち出されたのが下表の再発防止策だ。「7億円」という高い“授業料”を払って考案された再発防止策だけに、子会社の管理部門の内部牽制に悩んでいる親会社は、解説(当フォーラムが作成)とともに是非とも参考にしていただきたい。

カンダホールディングスが取った再発防止策 解説(当フォーラムが作成)
1.人事の固定化を防ぐ方策の強化
(1)10年以上異動のない役職員(特に経理処理担当者)については、当社人事部にてリストアップを終え、人事異動に向けた後任の人選、グループ会社間のローテーション等の検討を行っております。また、今後は人事異動、業務のローテーションを定期的に行い、他の業務を理解する機会を増やし、他者の業務に対しても関心が持てる職場環境に改善して参ります。
(2)上記(1)の実施に際しては、人事異動が完了するまでの間、当面の処置として、給与データ等の入力者とチェック者、振り込み作業者が相互牽制できる様、チェック機能面の強化を実施中であります。
担当者を長期にわたり固定すると不正が起きやすくなる。不正は担当の引継ぎ時に発覚することが多いので、ローテーションが定期的に行われれば、そのこと自体が不正の歯止めになる。ただ、経理財務のようなスペシャリスト業務は同一社内でのローテーションが難しいことから、出向制度を利用したグループ会社間でのローテーションも一案と言える。
2.当社管理部門・内部監査部門等による一層の関与
(1)一部のグループ会社においては、自社が独自で選定した勤怠システムや給与システム、会計システム等を使用していた実態があったためこれを全社統一のシステムに改め、システム間のデータ受け渡しは、当社管理部門が関与し順次自動化を進めて参ります。
(2)全グループ会社にて、給与振込口座の登録は一人1口座を徹底して参ります。現状、複数口座の登録が無いことを確認しております。
(3)小規模のグループ会社などで、人数的な制約等により、入力者とチェック者とを分けた配置が難しい状況にある場合は、グループ内の事務代行会社(カンダビズパートナー)への委託を進めております。既に数社については移行を完了いたしました。
(4)内部監査部門においては、社員マスターファイルの保守管理の状況、給与データと会計データ、銀行振込データとの照合、事務の作業プロセスにおけるダブルチェック等、牽制機能の有効性を監査項目に加え、管理を強化して参ります。
・従業員からの要請に応じ、基本給の振込口座とは別の口座に手当の一部を振り込むことを容認している会社も見受けられる。給与振込口座を複数登録することを認めると、支払時のチェックが煩雑になるだけでなく、「件数」チェック(振込件数と従業員数が同じであることの確認)が機能しづらくなり不正を見逃しかねないだけに、「一人1口座」は厳守すべきである。
・子会社が多い場合、各子会社の間接部門を集約化することで連結グループとしての間接部門経費を圧縮することができる。
・小規模な子会社はJ-SOXの網にかかりにくいため、親会社の監査部門が業務監査を実施することが望ましい(子会社とJ-SOXの評価範囲の関係については【役員会 Good&Bad発言集】J-SOXの評価範囲を参照)。

業務監査 : 会計以外の業務の準拠性・効率性の検証や不正行為を発見することを目的とした調査を指す。

3.ルール・態勢の周知及び不正に関する社内への啓発
(1)当社社長から全グループ会社管理職に対しトップメッセージを発信し、コンプライアンスの重要性を改めて指導いたしました。
(2)『不正は絶対に許さない』という当社の姿勢を明示し、全グループ会社の管理職、総合職を対象とした社内研修会では、当社社長をはじめ管理本部の役員が講師となって、コンプライアンス研修を実施しております。
(3)当社グループの全役員を対象に、外部の弁護士を講師に招きコンプライアンス研修を実施いたしました。今後も、取締役の職責・法的責任等についての啓発を継続的に図って参ります。
(4)期初に開催しております『カンダグループ管理職全体会議』や『グループ会社年頭会議』等においても、コンプライアンス研修を実施して参ります。
(5)営業所の所長をはじめ管理職を対象とした、経営や経理に関する知識についての研修を定例化し、収支分析力等スキルアップを図ります。
不正防止に向けた社内への啓発は、今後も定期的に実施をして参ります。
・コンプライアンス確保に向けた各種施策が実際に機能するかどうかはトップの姿勢次第と言われている。形だけの制度を作ってもトップが本腰を入れていないことが従業員に見透かされれば、従業員としては面従腹背となるだけである。トップメッセージの発信やコンプライアンス研修はしつこいくらい実施することが肝要である。
・営業所の所長が経理に詳しくなることで、営業所レベルでの不正が起きにくくなる効果が期待できる。
4.内部通報制度の活性化
(1)通常のレポートラインで報告されない、子会社経営層の不適切行為に対処するため、内部通報制度のさらなる活性化(関連規程の見直し、周知徹底)に取り組んで参ります。既にグループの全従業員、協力会社を対象に、当社コンプラアンス委員会及び顧問弁護士への連絡先が記載された『コンプライアンスカード』を作成、配布を完了しております。
(2)啓蒙用のポスターを営業店所に掲示すると共に、社内コンプライアンス研修を通じてコンプライアンスカードの使用を啓蒙し、たとえ上位者であっても一切の不正は許されないという企業風土を醸成して参ります。
(3)コンプライアンス委員会に挙げられた内部通報については、定期的に取締役会に件数、傾向等を報告し、継続的な評価を受けることで、より健全な企業体の構築を目指して参ります。
内部通報制度が機能していない会社では制度の周知が徹底されていないことが多い。外部の通報窓口を設け、内部通報制度の趣旨をコンプライアンス研修の場で周知することで、内部通報制度が機能し始めることが期待できる。
5.類似する業務内容のグループ会社統合の検討
コンプライアンスや指揮命令系統の強化のため、同一の得意先の業務を主に行っているグループ会社や、類似する業務を行っているグループ会社については、今後企業統合等を検討して参ります。
子会社が多い場合、そもそも業務分野が重複しているケースも少なくない。このようなケースは、特にM&Aを繰り返して大きくなった企業グループでよく見受けられる。小さい子会社にはガバナンスが行き届かないこともあり、不正抑止の観点から子会社の統合を図ることも視野に入れるべきである。

2020/11/05 CO₂ゼロ目標で海外投資家が日本企業のイノベーション復活に期待

菅首相の就任以来、携帯電話料金の引き下げやデジタル庁の設立など様々な政策が打ち出されたが、海外の投資家にとって最もインパクトがあったのは、・・・

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2020/11/05 CO₂ゼロ目標で海外投資家が日本企業のイノベーション復活に期待(会員限定)

菅首相の就任以来、携帯電話料金の引き下げやデジタル庁の設立など様々な政策が打ち出されたが、海外の投資家にとって最もインパクトがあったのは、2050年までに温暖化ガスの排出量をゼロにするという決意表明だ。もちろん、同様の表明は既に欧州では行われており、日本は明らかに後発となっている。また、具体的な施策もこれから検討するという状況ではある。それでも、この決意表明が海外の投資家に与えたメッセージ性は大きく、近年、日本を含め世界で急拡大しているESG投資の資金が、さらに日本に向かうきっかけとなる可能性がある。

ESG投資 : 「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」に優れた企業に投資すること。

現在は世界に後れをとっているが、日本は元々、環境技術では先行していた。それを示す一例として、近年何かと批判の対象となっている石炭火力も、新興国のそれと比べて、環境への悪影響は小さい。しかし、皮肉なことに、こうした高い環境技術力を有していたことで石炭火力などの既存のエネルギーに執着し、結果として再生可能エネルギーへの取り組みが遅れることになった。この経緯を踏まえると、2050年までに温暖化ガスの排出量ゼロを実現できるかどうかは、再生可能エネルギー分野において技術的な優位性を生み出せるかどうかがポイントとなる。

もっとも、企業のCSRやESG投資についても日本は後発だったが、この10年間で目覚ましいキャッチアップを図った。例えば、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)では日本企業が世界を牽引している。今後は、再生可能エネルギー分野でも同様のキャッチアップが期待される。

CSR : 主要国の金融当局(中央銀行、金融監督当局、財務省)やIMF(国際通貨基金)、世界銀行、BIS(国際決済銀行)、OECD(経済協力開発機構)などで構成される国際的な金融システムの安定を目的とする組織である金融安定理事会(FSB)が設置した組織。TCFDとは「Task Force on Climate-related Financial Disclosures」の略である。TCFDが2017年6月に公表した最終提言は、気候変動リスクの情報開示を進める気候変動リスクに関する開示フレームワーク(枠組み)のグローバルスタンダードになりつつある。この開示フレームワークは制度開示書類、つまり日本においては有価証券報告書への適用を想定しているが、日本においては現状、金融庁が気候変動リスクについて「開示義務化の予定はない」と明言しており、有価証券報告書だけでなく、統合報告書など投資家向け任意開示書類をも含めた開示媒体への“自主的な”記載が推奨されている。
TCFD : 主要国の金融当局(中央銀行、金融監督当局、財務省)やIMF(国際通貨基金)、世界銀行、BIS(国際決済銀行)、OECD(経済協力開発機構)などで構成される国際的な金融システムの安定を目的とする組織である金融安定理事会(FSB)が設置した組織。TCFDとは「Task Force on Climate-related Financial Disclosures」の略である。TCFDが2017年6月に公表した最終提言は、気候変動リスクに関する情報開示のフレームワーク(枠組み)のグローバルスタンダードになりつつある。この開示フレームワークは制度開示書類、つまり日本においては有価証券報告書への適用を想定しているが、日本においては現状、金融庁が気候変動リスクについて「開示義務化の予定はない」と明言しており、有価証券報告書だけでなく、統合報告書など投資家向け任意開示書類をも含めた開示媒体への“自主的な”記載が推奨されている。

そのためには、政府が果たすべき役割も大きいが、同時に投資家の役割も無視できない。日本企業は、元々長期志向で経営を行ってきたという歴史があるため、再生可能エネルギーのような長期的課題への取り組みには期待が持てる。海外の投資家も、こうした日本企業の特徴を理解するとともに評価しつつある。今回の温暖化ガス排出量ゼロ目標が達成できるかどうかは、いかに海外の投資家を引き付けられるかが重要になるだろう。もちろん、日本でもESG投資が拡大する中、日本の投資家にもその役割が期待される。

2050年の前には、2030年にパリ協定での合意をクリアしなければならない。パリ協定では2030年の温室効果ガスの排出量を2013年比26%削減することが目標となっている。2050年にゼロを目指すなら、26%以上の削減は必須となる。日本企業のイノベーションの復活が期待されるところだ。

パリ協定 : 2015年末にパリで開催されたCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)で採択された2020年以降の温暖化対策の国際的枠組み。パリ協定では、18世紀後半に起きた産業革命前と比較し、気温の上昇を「2℃以内」にとどめることを目標としており、各国に対し、温室効果ガスの排出削減目標を設定のうえ、5年ごとに進捗報告およびより厳しい目標への更新を行うことを義務付けている。

2020/11/04 野村AM 取締役会のモニタリングボード化を期待

野村アセットマネジメントは(2020年)11月1日、「日本企業に対する議決権行使基準」を改定し、公表した。多くの国内機関投資家は6月の株主総会シーズンが近付いた時期に議決権行使基準(以下、基準)を改定するが、野村アセットマネジメントは「株主総会の集中期までに企業と対話するための十分な期間を確保」するため、毎年秋に基準の見直し・改定を実施している。

今回改定におけるポイントは下記の3点となっている。・・・

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2020/11/04 野村AM 取締役会のモニタリングボード化を期待(会員限定)

野村アセットマネジメントは(2020年)11月1日、「日本企業に対する議決権行使基準」を改定し、公表した。多くの国内機関投資家は6月の株主総会シーズンが近付いた時期に議決権行使基準(以下、基準)を改定するが、野村アセットマネジメントは「株主総会の集中期までに企業と対話するための十分な期間を確保」するため、毎年秋に基準の見直し・改定を実施している。

今回改定におけるポイントは下記の3点となっている。

1.新型コロナ感染症拡大を考慮した一部基準の停止継続
2.社外取締役の人数・割合などに関する基準の新設
3.「モニタリング・ボード」採用企業に対する基準緩和

上場企業に広く影響が及ぶという点では、基準の適用を一時停止する「1」、基準の厳格化となる「2」ということなろう。しかし、我が国におけるコーポレートガバナンス議論へのインパクトという意味では「3」が最も大きい。以下、具体的に解説する。

1.新型コロナ感染症拡大を考慮した一部基準の停止継続
野村アセットマネジメントの基準では、取締役選任議案について、「直近3期連続して株主資本利益率(ROE)が5%未満かつ業界の中央値未満で、経営改善努力が認められない」場合、「直近3期以上在任した会長・社長等」の再任に反対することとしている。また、剰余金処分議案については、「①株主資本比率>50% 、②ネット金融資産/売上高>30% 、③ネット金融資産/総資産>30%」の全項目に該当し、「ROEが8%未満かつ株主還元率が50%未満」である場合には原則反対するとしている。

ROE : Return On Equity=株主資本利益率(利益/株主資本)
株主資本比率 : 企業の総資本(自己資本(資本金、法定準備金、剰余金等)+他人資本(借入金、社債等))に対する株主資本(自己資本)の割合。「自己資本比率」と概ね同じ意味である。
株主還元率 : (配当+自社買い)/当期純利益

しかし、新型コロナ感症染拡大を踏まえ、今年(2020年)6月以降、上記「株主資本利益率(ROE)低迷や株主還元不足を理由に取締役選任・剰余金処分議案に反対する基準」は運用が停止されている。野村アセットマネジメントは、「不透明な情勢が継続していることを考慮」して運用停止を継続する。すなわち、来年(2021年)秋の基準改定まで引き続き上記基準は適用されないということだ。

2.社外取締役の人数・割合などに関する基準の新設
従来の基準では、支配株主のいない監査役会設置会社における社外取締役の必要最低水準を「2名」としていた。新基準では、支配株主の有無および機関設計にかかわらず、一律で「2名または取締役数の3分の1の多い方」とする。ただし経過措置として、1年間は「2名または20%の多い方」との基準が適用される。

支配株主 : 必ずしも一律の定義はないが、東証の上場規則では、議決権の50%超を有している者や議決権の40%以上を有している者で、かつ、取締役の過半数を派遣していたり重要な財務および事業の方針の決定を支配する契約書が存在していたりする者を指す(東証 有価証券上場規程施行規則3条の2)。「支配株主」以外を「一般株主」という。ちなみに、上場会社の支配株主自体も上場しているケースが「親子上場」である。

社外取締役および社外監査役の独立性基準としては従来、独立役員として東証に届け出ている(または届け出る予定である)こと、大株主である会社に在籍した実績がないこと(直近3年以内)が求められていた。今回の改定により「在任期間が12年未満であること」が追加されている。

独立役員 : 一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役または社外監査役。東証は企業に対し、独立役員を独立役員届出書により届け出ることを求めている。
大株主 : 直近期に係る当該会社の事業報告中の「上位10 名の株主」の表に記載された持株比率が10%以上の株主をいう。

また、賞与の支給対象とすることに反対する者として、従来は監査役のみが挙げられていた。今回の基準改定で、これに「社外取締役、監査委員もしくは監査等委員である取締役」が加わった。

このほか、従来の基準には、原則賛成とする「株主提案」による定款変更議案の一つに、「役員報酬の個別開示を求めるもの」があったが、今回の基準改定によりこれに「取締役でない顧問、相談役の報酬の個別開示」が追加されている。

3.「モニタリング・ボード」採用企業に対する基準緩和
野村アセットマネジメントは、経営陣の監督を主たる役割・任務とする取締役会を「モニタリング・ボード」と呼んでいるが、今回の基準改定では、日本企業における取締役会の望ましい在り方としてのモニタリング・ボードへの「移行を後押しするための改定」を盛り込んだ。同社がモニタリング・ボードと判断する基準は下記の通り。

① 社外取締役が過半数
② 社外取締役が過半数を占める指名・報酬委員会(法定・任意を問わない)を設置
③ 指名・報酬委員会の議長は社外取締役
④ 女性の取締役1名以上
⑤ 買収防衛策を導入していない
⑥ 政策保有株式を過大に保有していない(投下資本の10%未満)
⑦ 監査役会設置会社の場合、取締役の任期が1年
⑧ 支配株主がいる場合、取締役会議長は社外取締役

モニタリング・ボードを備えている企業と認められた場合、2つの基準の適用が除外される。1つは、取締役選任議案について、3期連続でROEが5%未満であっても会長・社長の再任に反対しない。もう1つは株式報酬の支給議案について、対象者に社外取締役および監査委員・監査等委員である取締役が含まれていても賛成する。経営判断および報酬付与に際して、実効性を伴った取締役会(および報酬委員会)が株主に代わって監督機能を発揮したとみなし、株主総会においては信認を与えるスタンスを採用するということだろう。

また、現在はモニタリング・ボードとは言えなくても、「移行に向けた取組みを進める企業」であれば、株式報酬に賛成する要件を緩和する。具体的には、社外取締役が取締役会の過半数でかつ独立性のある報酬委員会(上記②③で判断するものと考えられる)が設置されていれば、「報酬ガバナンスを整備している場合」に該当するとして、株式報酬に求めるべスティング期間を3年から2年に短縮する。なお、従来基準から、「独立性のある報酬委員会が設置されている場合」は一定の水準以上の役員報酬には賛成(通常は原則反対)することし、また、「報酬に関するガバナンスを整備している場合」には、ストックオプション議案における累積希薄化率の判断基準を10%(通常は5%)としていた。

べスティング : 権利を付与されてから権利行使可能になるまでの期間のこと。ベスティング(vesting)とは「権利確定」という意味である。

今回のモニタリング・ボードに関する基準緩和は、企業にガバナンスの改善を促するものと評価できよう。ただし、上記①〜⑧の各判断項目については、既に一部の機関投資家が各種議案の反対要件に採用しているものが少なからず含まれており、中期的には資本市場のマジョリティが上場企業に求める基準になり得るということは認識しておきたい。

2020/11/02 ESG対応への評価を“賢く”株式報酬に組み込む手法

既に多くの上場企業が「株式報酬」を導入しているが、一口に株式報酬と言っても様々な種類がある(株式報酬の種類については、【特集】2017年度税制改正を踏まえたインセンティブ報酬設計のポイント「1.中長期のインセンティブ報酬の類型」参照)。

代表的な株式報酬として・・・

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2020/11/02 ESG対応への評価を“賢く”株式報酬に組み込む手法(会員限定)

既に多くの上場企業が「株式報酬」を導入しているが、一口に株式報酬と言っても様々な種類がある(株式報酬の種類については、【特集】2017年度税制改正を踏まえたインセンティブ報酬設計のポイント「1.中長期のインセンティブ報酬の類型」参照)。

代表的な株式報酬としてリストリクテッド・ストック(譲渡制限付株式報酬)パフォーマンス・シェア(業績連動型株式報酬)があるが、現状ではリストリクテッド・ストックを導入している企業の方が多い。最初に付与株式数が定められ、所定の勤務期間在籍する等の条件を満たせば譲渡制限が解除されるリストリクテッド・ストック(したがって、リストリクテッド・ストックは役職員にとってある程度“アテにできる報酬”であり、それゆえ、役職員の引留め(リテンション)効果が高いと言われている)に対し、パフォーマンス・シェアは一定期間内に予め定めた業績等の目標の達成度合いによって付与株式数が変動するため、リストリクテッド・ストックよりもパフォーマンス・シェアの方がよりインセンティブ性が高く、また、設計の自由度も大きいと言える。

リストリクテッド・ストック(譲渡制限付株式報酬) : 一定期間の譲渡制限が付された株式報酬で、企業が株式を無償取得することとなる事由(没収事由:例えば所定の期間勤務を継続しないなど)が定められているものを指す。
パフォーマンス・シェア(業績連動型株式報酬) : 中長期的な“業績目標等の達成度合い”に応じて交付される株式報酬。

ただ、パフォーマンス・シェアの支給にあたりネックとなるのが税金だ。リストリクテッド・ストック、パフォーマンス・シェアともに、株式交付のタイミングによって、「事前交付型」(リストリクテッド・ストック(以下、RS)、パフォーマンス・シェア(以下、PS))と「事後交付型」(リストリクテッド・ストック・ユニット(以下、RSU)、パフォーマンス・シェア・ユニット(以下、PSU))に分けられるが(【特集】2017年度税制改正を踏まえたインセンティブ報酬設計のポイント「1.中長期のインセンティブ報酬の類型」の図表2、2020年9月25日のニュース『改正会社法で導入された株式報酬、「事前交付」と「事後交付」の違い』参照)、このうちRSとRSUは、法人税の計算上、「事前確定届出給与」として、PSUは「業績連動給与」として損金算入できる一方、PSは損金算入が認められない(【特集】2017年度税制改正を踏まえたインセンティブ報酬設計のポイント「2.損金算入要件の変化」参照)。

事前交付型 : 取締役等の報酬対象勤務期間の開始後、速やかに取締役等に株式の発行(or自己株式の交付)を行い(この時が会社法上の「割当日」に該当)、取締役等と会社の契約において、当該株式に譲渡制限を付しておき、権利確定条件(例えば「3年間勤務する」「3年後に株価を倍増させる」など)が達成された場合に譲渡制限が解除され(すなわち、取締役等は当該株式を売却して換金できる)、権利確定条件が達成されない場合には企業が無償で株式を取得(没収)する仕組み。
事後交付型 : 取締役等と会社の契約において、株式の発行等について権利確定条件が付されており、権利確定条件が達成された場合に株式の発行等が行われる仕組み。
事前確定届出給与 : いつ、どれくらい(確定額、確定した株式数・新株予約権など)支給するかを“事前に”確定した上で原則として税務署に届け出をし、それに基づいて支給するもの。
業績連動給与 : その事業年度の利益や株価、売上等に関する指標に基づく「あらかじめ定められた方法」により決定されるもの。複数年度にわたる指標(例えば3年間の平均利益)を採用することも認められる。
損金 : 法人税計算の基礎となる法人所得を減らす性質の支出等のこと。損金は企業会計上の費用とおおむね一致するが、役員賞与や固定資産の減損損失など「損金には該当しない費用」もある。

PSが損金不算入となることは、経済産業省『「攻めの経営」を促す役員報酬』(2020年9月時点版)のQ5の最終段落にも明記されている。

なお、勤務期間以外の事由(業績など)により無償取得される数が決まる特定譲渡制限付株式については、業績連動給与として損金算入の対象とはならないことに留意する必要があります。

特定譲渡制限付株式 : 法人税法上の損金算入を満たす譲渡制限付株式のこと。具体的には、(1)役務の提供の対価として個人に生ずる債権の給付と引換えにその個人に交付される、(2)個人に給付されることに伴って役務の提供の対価として個人に生ずる債権が消滅する、譲渡制限付株式である。

つまり、パフォーマンス・シェア系のインセンティブ報酬として損金算入できるのはPSUのみということになるが、上述のとおり、PSUを損金算入するためには法人税法上の「業績連動給与」に該当する必要がある。しかし、業績連動給与に該当するためには、業務執行役員ごとに「業績連動給与の算定の基礎となる業績連動指標」「限度としている確定した額又は確定した数」「客観的な算定方法の内容」等を網羅的に有価証券報告書において開示しなければならない(法人税基本通達9-2-19(算定方法の内容の開示)参照)など厳しい開示要件があり、これを嫌って損金算入を断念する企業が少なくない。

こうした中、積水ハウスが今年(2020年)4月に開催した定時株主総会に付議したPSUを業績連動給与として損金算入していたことが当フォーラムの取材により確認された(積水ハウス「役員報酬制度改定に関するお知らせ」参照)。

積水ハウスのPSUで注目されるのは、「業績評価指標」に「ESG経営指標」が含まれているということだ。法人税法上、損金算入の対象となる業績連動給与は、「利益」「株価」「売上」に関する指標(法人税法施行令69条⑩~⑫)に基づき算定されたものに限定されており、それ以外の指標により算定された業績連動給与は損金算入できないことになっている。例えば、営業利益、売上高、ROEEPSROICなどは「利益」「株価」「売上」のいずれかに該当するが、積水ハウスが算定指標にした「ESG経営指標」はそのどれにも当てはまらない。したがって、一見すると、積水ハウスのPSUは丸々損金算入できないようにも見える。

ROE : Return On Equity=株主資本利益率(利益/株主資本)
EPS : 1株当たり利益(Earnings Per Share)=当期純利益÷発行済株式数

積水ハウスのPSUは、ESG経営指標に加え「ROE」も業績評価指標としているとはいえ、ESG経営指標をPSU全体の算定指標に組み込めば、やはり損金算入はできないことになる。そこで同社は、ESG関連の定性評価部分とROEによる定量評価部分を分離し、前者については損金算入を断念し、後者、すなわち「ROE」による定量評価部分だけを損金算入した模様だ。

投資家から役員報酬制度のインセンティブ性を求める声が高まるとともに、コロナ禍を機にESG投資も一段と活発化することが予想される中(2020年8月7日のニュース「コロナ禍・コロナ後のESG投資で注目される領域」参照)、積水ハウスのPSUはその両方のニーズを満たしつつ、損金算入できる部分は損金算入してキャッシュの流出も抑えるという“一石三鳥”を実現するものと言える。今後役員報酬制度改革を検討する企業にも参考にされるモデルケースとなりそうだ。

ESG投資 : 「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」に優れた企業に投資すること。

2020/10/31 【役員会 Good&Bad発言集】J-SOXの評価範囲

東証一部上場企業のNK社の監査役会では、内部監査室より次年度の監査計画について報告が行われたところ、計画の内容について議論になりました。下記の3人の発言のうち、誰の発言がGood発言でしょうか?

監査役A:「なぜ、内部監査の計画でJ-SOXの全社統制に係る監査は親会社のみを評価範囲としていて、子会社が1社も入っていないのですか。いくら重要性が低いからと言って、子会社の全社統制を一切チェックしないのは手抜きと思われても致し方ないかと思います。」

監査役B:「全社統制だけでなくJ-SOXの業務プロセスに係る監査でも子会社は評価範囲に含まれていませんね。連結経営の観点からいかがなものかと考えます。」

監査役C:「J-SOXはそういうものだと割り切って、子会社はむしろ業務監査で対応すべきではないでしょうか。」

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