2020/09/30 2020年9月度チェックテスト第1問解答画面(正解)

正解です。
厚生労働省が(2020年)9月1日に改定した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」によると、副業・兼業を認める場合の労働者の時間管理について「管理モデル」が提案されています。従業員の副業を認めている企業が同管理モデルを使用する場合、実際には副業を行おうとしている労働者を経由して副業予定先の使用者に対して同モデルにより副業・兼業を行うことを提案し、当該使用者に同意してもらう必要があります(問題文は正しいです)。

こちらの記事で再確認!
2020年9月3日 副業する従業員の労働時間を容易に管理する方法(会員限定)

2020/09/29 【2020年10月の課題】東証の市場区分見直しに伴うCGコード改訂

2020年10月の課題

東証の市場区分見直しに伴い、コーポレートガバナンス・コード(CGコード)の改訂に向けた検討が始まろうとしています。市場区分見直し後はプライム市場とスタンダード市場で異なったコードが適用されると言われており、上場企業はCGコード改訂を見越した対応が必要となっています。

そこで、昨今のガバナンス関連の論議や機関投資家の要求を踏まえて、どのような改訂が実施されるのか、また、プライム市場上場企業、スタンダード市場上場企業それぞれに適用されるCGコードはどこか異なるのか、考察してください。

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2020/09/29 【失敗学第76回】三井住友信託銀行およびみずほ信託銀行の事例(会員限定)

概要

三井住友信託銀行およびみずほ信託銀行において、株主名簿管理人として受託した議決権行使書集計業務で、議決権行使書の有効票の集計漏れがあった。

経緯

三井住友信託銀行株式会社が2020年9月24日にリリースした「当社取引先の議決権行使書集計に係る業務についての調査結果のお知らせ」およびみずほ信託銀行が2020年9月24日にリリースした「議決権行使書の集計方法の確認結果について」によると、一連の経緯は次のとおり。

2008年
4月1日:三井住友信託銀行およびみずほ信託銀行が50%ずつ出資して、証券代行業務における株主名簿管理および特別口座管理にかかる事務の受託に関する業務、株主名簿管理及び特別口座管理にかかるシステムの開発及び運営に関する業務を営むため、日本株主データサービスを設立する。

2009年
1月1日:日本株主データサービスは、株券電子化制度施行と同時に本格的な事業を開始する。

2020年
7月31日:東芝で定時株主総会が開催される。

8月4日:東芝は7月31日開催の定時株主総会における「決議事項に対する賛成、反対及び棄権の意思の表示に係る議決権の数、当該決議事項が可決されるための要件並びに当該決議の結果」を記載した臨時報告書をEDINETで開示する。

8月4日以降:東芝は、一部株主から、議決権行使書を提出期限(2020年7月30日午後5時15分)の3日前である7月27日に郵送により発信したにもかかわらず、臨時報告書で開示された議決権行使結果に反映されていなかったとの指摘を受け、同社の株主名簿管理人である三井住友信託銀行および日本郵便に調査を要請する。また、東芝の監査委員会が外部の法律事務所に委託して三井住友信託銀行の調査方法およびその結果の相当性について検証を行う。

9月18日:東芝は「第181期定時株主総会における議決権行使の集計について」をリリースし、提出期限までに日本株主データサービスに物理的に持ち込まれていた議決権行使書(有効なものに限る)の議決権数は議決権比率で1.3%に達していたことを公表。一方、三井住友信託銀行も「当社取引先の議決権行使書集計に係る業務について」を公表。

9月24日:三井住友信託銀行が「当社取引先の議決権行使書集計に係る業務についての調査結果のお知らせ」をリリースする。また、三井住友信託銀行と同様、日本株主データサービスに議決権行使書集計業務を委託していたみずほ信託銀行も「議決権行使書の集計方法の確認結果について」をリリース。

内容・原因・改善策

東芝が2020年9月18日に公表した「第181期定時株主総会における議決権行使の集計について」、三井住友信託銀行が2020年9月24日にリリースした「当社取引先の議決権行使書集計に係る業務についての調査結果のお知らせ」およびみずほ信託銀行が2020年9月24日にリリースした「議決権行使書の集計方法の確認結果について」によると、議決権行使書の有効票の集計漏れが生じたことの原因ならびに対応策は次のとおりとされている。

議決権行使書の有効票の集計漏れ
内容 日本株主データサービス(三井住友信託銀行およびみずほ信託銀行が株主名簿管理人として受託した議決権行使書集計業務を委託した先)において、繁忙期(3月、5月、6月。なお、2020年はコロナ禍により3月決算上場会社の定時株主総会の延期が相次いだことから7月も繁忙期扱いとなる)に限り、郵便局に対して議決権行使書の本来の配達日の前日の朝に持ち込むよう依頼し、郵便局はそれに応じるとともに、料金受取人払郵便物の料金・通数を記載したレシート(交付証)を本来の配達日の日付で発行していた。こういった実務慣行は長年行われており、その結果、集計期限日の当日に届いた議決権行使書であっても翌日の日付(集計期限後)に届いたものとして処理され、議決権行使書の集計結果に誤りが発生していた。

原因 (議決権行使書の集計のための時間の確保)
繁忙期においては多数の議決権行使書を集計するために時間が掛かることから、日本株主データサービスは「本来の配達日の前日の朝」に届けるよう郵便局に依頼していた。一方で、郵便局は「本来の配達日」をもって交付証を発行しており、日本株主データサービスは交付証に記載された「本来の配達日」(実際の配達日の翌日)基準で締め切っていたため、実際の配達は期限に間に合っていたにもかかわらず、「本来の配達日」基準で期限に間に合っていないとして処理される議決権行使書が発生してしまった。

対応策 ・再集計の対象となっている委託会社には、個別に再集計の結果と今後の対応について速やかに案内する。
・従来日本株主データサービスで実施していた先付処理については、速やかにその運用を取り止め、実際に郵便局から議決権行使書を受領した日を基準に集計業務を行う。
・より正確かつ迅速で効率的な議決権行使集計が可能となる電子行使を推奨する取り組みを従来以上に促進する。
<この失敗から学ぶべきこと>

本件は東芝の株主からの指摘により発覚しましたが、問題は東芝だけに留まらず、東芝と同様に三井住友信託銀行を株主名簿管理人に選任している企業、さらにはみずほ信託銀行を株主名簿管理人に選任している企業も同様の状況にあることになり、影響が広範囲に及ぶことが判明しました。両行とも、株主名簿管理人を受託していた会社の議案の成否に影響はなかったと説明していますが、両行に株主名簿管理人業務を委託していた上場会社では、株主への説明責任を果たすために、本件の自社株主総会への影響の有無や調査結果をリリースした方が望ましいものと思われます。実際に、「株主様の意思を集計に反映できなかった事は誠に遺憾であります。なお、具体的な賛成率等については、再集計の上、臨時報告書の訂正報告書にて報告させていただきます。」(メタウォーターのリリース)、「当社は、議決権行使の集計業務をSMTBに委託しておりますが、当社が2020年8月6日に開催した第144回定時株主総会における議決権行使の集計については、適切に処理がされており、集計結果は適正なものである旨の報告を、SMTBより受けていることをお知らせ致します。」(富士電機のリリース)、「株主名簿管理人から報告を受け、事実関係を調査いたしましたところ、集計に反映されなかった議決権行使書の議決権比率は0.05%であり、議決権行使の有無にかかわらず、議案の成否に影響を与えるものではございませんでした。」(日本信号のリリース)といったリリースが出ており、今後同様のリリースをする企業が増えることが予想されます。

ところで、両行のリリースを読んでもよく理解できないのが「議決権行使書が本来の配達日(7月31日)の前日(7月30日)に郵便局から持ち込まれた」というくだりです。これだけを読むと7月30日の遅い時間(たとえば深夜)に7月31日配達分を特別の配慮により配達してもらっていたのかと思いがちですが、東芝のリリースによれば「前日」に配達した時間は「午前9時30分ごろ」とのことです。そうすると、すでに「7月30日」の「午前9時30分ごろ」より前に配達郵便局に届いていた議決権行使書が、なぜ配達郵便局では「7月31日配達分」として仕分けしていたのか(配達郵便局での滞留時間が長過ぎるのではないか)という疑問が生じます。また、配達回数は1日1回だけなのかという疑問も残ります。両行は「先付処理の運用をやめる」としていますが、「議決権行使書の本来の配達日の前日の朝に持ち込むよう依頼すること」は止めないで欲しいところです。なぜなら、「7月30日」の「午前9時30分ごろ」までにはすでに配達郵便局に届いている議決権行使書であっても、配達郵便局がそういった議決権行使書を「7月31日配達分」に仕分けするのであれば、それが実際に日本株主データサービスに届くのは7月31日になってしまい、結局株主の意思が反映されないことには変わりはないからです。さらに欲を言えば、少しでも多くの株主の意思を反映させるためには、三菱UFJ信託銀行のように配達郵便局に受け取りに行って欲しいところです。株主としても、締め切り間際の議決権行使は郵便局という第三者の仕事ぶりに左右されることから、郵便の遅れを想定して可能な限り早く議決権行使書を提出するようにするのは当然として、さらに踏み込んで議決権の電子行使を選択するようにすべきと言えます。

2020/09/28 開示広がるか “役員のキャラ”のマトリックス

役員のスキル・マトリックスを株主総会招集通知や統合報告書で開示する上場企業は2018年頃から見受けられ始め、以来、増加の一途を辿っている(2020年2月26日のニュース「2019年におけるスキル・マトリックス開示の傾向」参照)。最近では、スキル・マトリックスが経営権を巡る争いの材料に使われる事例も発生している(2020年6月19日のニュース「“お家騒動”で双方が異なるスキル・マトリックスを示す事態に」参照)。

スキル・マトリックス : 取締役のスキル・能力の開示手法。縦軸に各取締役の氏名、横軸にスキル・能力を分野別に並べ、各取締役がスキル・能力を有する分野に丸印をつけるといった形式をとることが多いため、「スキル・マトリックス(あるいはマトリクス)」と呼ばれる。

スキル・マトリックスは文字通り自社の役員陣のスキル・能力のダイバーシティを投資家に示すために作成・開示されるものだが、スキル・マトリックスより一歩踏み込んだ取り組みと言えるのが、・・・

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2020/09/28 開示広がるか “役員のキャラ”のマトリックス(会員限定)

役員のスキル・マトリックスを株主総会招集通知や統合報告書で開示する上場企業は2018年頃から見受けられ始め、以来、増加の一途を辿っている(2020年2月26日のニュース「2019年におけるスキル・マトリックス開示の傾向」参照)。最近では、スキル・マトリックスが経営権を巡る争いの材料に使われる事例も発生している(2020年6月19日のニュース「“お家騒動”で双方が異なるスキル・マトリックスを示す事態に」参照)。

スキル・マトリックス : 取締役のスキル・能力の開示手法。縦軸に各取締役の氏名、横軸にスキル・能力を分野別に並べ、各取締役がスキル・能力を有する分野に丸印をつけるといった形式をとることが多いため、「スキル・マトリックス(あるいはマトリクス)」と呼ばれる。

スキル・マトリックスは文字通り自社の役員陣のスキル・能力のダイバーシティを投資家に示すために作成・開示されるものだが、スキル・マトリックスより一歩踏み込んだ取り組みと言えるのが、役員の性格(Character)診断結果の開示だ。これを実行しているのが、開示先進企業として評価が高い丸井である。同社役員の性格診断はMBTI(Myers–Briggs Type Indicator=マイヤーズ・ブリッグスタイプ指標)と呼ばれる心理的な選考を調査するためのテスト(自己申告アンケート)によって行われている。同社は、性格診断の結果を開示した理由について、「ビジネススキルだけではお伝えできない役員の特徴や多様性の本質をお伝えするために、MBTIのタイプを公開することにした」と説明している(同社の統合報告書「共創経営レポート 2019」120ページ参照)。

具体的には、「丸井グループ役員の性格(Character)に迫る」と題し、「外向・内向:どこに関心を向けることを好むか。どこからエネルギーを得るか?」「感覚・直観:どのように情報を取り入れることを好むか?」「思考・感情:どのように結論を導くことを好むか?」「判断的態度・知覚的態度:どのように外界(皮膚の外)と接することを好むか?」の4つの切り口からマトリックスを作成し、各役員を顔写真とともに該当箇所に表示している。同社はこのマトリックスを「丸井グループの役員・監査役の持って生まれた性格(Character)が、非常に多様性に富んでいることがわかりました。」と評価している。

取締役会のメンバーの多様性を重視する風潮が高まる中、スキルにフォーカスしたマトリックスを公表する企業は今後も増加の一途を辿るとみられるが、丸井のように性格診断の結果を公表する企業は現在のところ稀と言える。役員を対象にした性格分析を取締役会評価の一環として提供するコンサルティング会社もあるが、性格診断の結果を公表することは、(特にそれがネガティブな結果である場合)通常は役員に嫌がられるからだ。このような診断を受けるのは、一般的には不祥事が起きた企業などに限定される。

海外の状況を見ても、ボードメンバーやシニアマネジメント層が、自分の下の層の従業員とのエンゲージメントやチームアップ(チームを組む)の際、あるいは、外部から新たに人材を採用する際に行われることはあるが、「ガバナンス」の文脈で、企業のトップ層であるボードメンバーに対して行われる事例は全くなくはないがやはり珍しい。

それだけに丸井の取り組みは斬新であり、実際、同社の“キャラ”マトリックスからは、同社が自己評価するように、同社の役員陣が性格(Character)面からも絶妙の組み合わせとなっており、役員会の雰囲気の良さが伝わってくるという点で功奏している。同社の統合報告書は、長期投資家と社外取締役の対談記事を掲載するなど(同社の統合報告書「共創経営レポート 2019」74ページ参照)、その独自性には元々定評があるが、近く公表されるであろう同社の2020年版統合報告書の内容も注目されるところだ。

2020/09/25 改正会社法で導入された株式報酬、「事前交付」と「事後交付」の違い

2021年3月1日に施行される改正会社法により、上場会社は取締役と執行役(以下、取締役等)への報酬として株式を「無償」で交付することが可能とされたところ(改正会社法202条の2)。既に取締役等に株式報酬を支給している上場会社は多いが、これまでは、取締役会等が会社への役務提供により得る「報酬債権」を会社に「現物出資」し、これと引き換えに株式の交付を受けるという何とも“技巧的”な支給手法がとられていた。これは、現行会社法が株式の発行は金銭等の「払込み」があることを前提としていることから、「株式をタダであげる(無償発行)」ことはできないため(2017年7月21日のニュース「株式報酬がシンプルに」参照)。しかし、冒頭で述べたとおり、改正会社法施行後はこうしたややこしい手法は不要となり、シンプルに「無償」で株式報酬を支給することが可能となる。今後は改正会社法に則った株式報酬の支給が一般化することになろう。

取締役等 : 監査役や子会社の取締役は含まれない。

それに先立ち、無償で株式報酬を支給するための会社法上の手続きや会計処理が明らかになったので、その留意点を嚙み砕いてお伝えしよう。・・・

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2020/09/25 改正会社法で導入された株式報酬、「事前交付」と「事後交付」の違い(会員限定)

2021年3月1日に施行される改正会社法により、上場会社は取締役と執行役(以下、取締役等)への報酬として株式を「無償」で交付することが可能とされたところ(改正会社法202条の2)。既に取締役等に株式報酬を支給している上場会社は多いが、これまでは、取締役会等が会社への役務提供により得る「報酬債権」を会社に「現物出資」し、これと引き換えに株式の交付を受けるという何とも“技巧的”な支給手法がとられていた。これは、現行会社法が株式の発行は金銭等の「払込み」があることを前提としていることから、「株式をタダであげる(無償発行)」ことはできないため(2017年7月21日のニュース「株式報酬がシンプルに」参照)。しかし、冒頭で述べたとおり、改正会社法施行後はこうしたややこしい手法は不要となり、シンプルに「無償」で株式報酬を支給することが可能となる。今後は改正会社法に則った株式報酬の支給が一般化することになろう。

取締役等 : 監査役や子会社の取締役は含まれない。

それに先立ち、無償で株式報酬を支給するための会社法上の手続きや会計処理が明らかになったので、その留意点を嚙み砕いてお伝えしよう。

改正会社法では、取締役等の報酬として自社の株式を付与しようとする場合には、まず定款または株主総会の決議により、株式の数の上限などを定めなければならないこととされている(下記の「三」参照)。

(取締役の報酬等)
第361条
取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。
一 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
二 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法
三 報酬等のうち当該株式会社の募集株式(第199条第1項に規定する募集株式をいう。以下この項及び第409条第3項において同じ。)については、当該募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び種類ごとの数)の上限その他法務省令で定める事項
四~六(略)

募集株式 : 株式会社が、募集に応じて株式の引受けの申込みをした者に対して割り当てる株式のこと。新株の発行や自己株式の処分のことを、「募集株式の発行等」という。

定款で取締役等の報酬としての株式の数の上限を定めるためには、株主総会で定款を変更しなければならないが、一度定款に定めるとその後の状況の変化に応じて臨機応変に上限を変更することが難しくなる(定款変更は株主総会の特別決議を経なければならいことからハードルが高い)。したがって、実際にはほとんどの会社が定款変更ではなく、株主総会で上記会社法361条三号の決議をすることになろう。

特別決議 : 議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、その出席株主の議決権の3分の2以上の多数による決議。

また、この取締役等への報酬としての株式無償交付ができるのは、あくまで「上場会社」に限定される点にも留意したい(下記の「1」参照)。

(取締役の報酬等に係る募集事項の決定の特則)
第202条の2
1 金融商品取引法第2条第16項に規定する金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社は、定款又は株主総会の決議による第361条第1項第3号に掲げる事項についての定めに従いその発行する株式又はその処分する自己株式を引き受ける者の募集をするときは、第199条第1項第2号及び第4号に掲げる事項を定めることを要しない。この場合において、当該株式会社は、募集株式について次に掲げる事項を定めなければならない。
一 取締役の報酬等(第361条第1項に規定する報酬等をいう。第236条第3項第1号において同じ。)として当該募集に係る株式の発行又は自己株式の処分をするものであり、募集株式と引換えにする金銭の払込み又は第199条第1項第3号の財産の給付を要しない旨
二 募集株式を割り当てる日(以下この節において「割当日」という。)
2項以下省略

第199条第1項第2号及び第4号に掲げる事項 : 2号は「募集株式の払込金額(募集株式一株と引換えに払い込む金銭又は給付する金銭以外の財産の額をいう又はその算定方法」で4号は「募集株式と引換えにする金銭の払込み又は前号の財産の給付の期日又はその期間」を指す。

さらに、報酬としての株式無償交付の対象者は「自社の取締役等」に限られる点にも注意したいところ。つまり、監査役や「子会社の取締役等」には本制度を用いた株式報酬の支払いはできないということになる。ホールディングス形態をとる上場会社のように、実態は子会社がグループ損益のほとんどを生み出していたとしても、子会社の取締役等(かつ、上場親会社の取締役や執行役ではない者)に対して上記会社法202条の2を用いて親会社の株式を報酬として交付することはできないわけだ。

以上が改正会社法の定めであるが、これだけでは株式を報酬として取締役等に無償交付する場合の具体的な仕組みが分かりづらいので、以下、上場会社が採りうる選択肢について説明しよう。

まず、取締役等に報酬として無償交付する株式は、新たに発行してもよいし、自己株式を用いてもよい。新たに株式を発行すると希薄化が生じる(ただし、後述するとおり権利確定条件の達成が判明するまでは一株当たり利益の希薄化は生じない手当がされる予定)ことから、希薄化を避けるために株価の低い時期に自己株式を取得しておくのも手だ。また、「株式」でなく「新株予約権」を報酬として付与することも認められている。

希薄化 : 「1株当たりの価値」が下がること。希薄化は発行済株式数の増加により起こる。どれくらい希薄化したかを示す「希薄化率」とは発行済株式数の増加率のことであり、「新規発行株式数 / 既発行株式数」によって計算される。既存株主からすれば、希薄化により一株当たり株主価値が低下するのみならず、議決権比率が低下し、投資先企業への影響力も薄まることになる。そこで、例えばある大手機関投資家は、株式報酬制度の導入に関する議案への賛成の条件として、「希薄化率が10%未満」であることを挙げている。発行済み株式数のみならず、今後実際の株式に転換される可能性のあるストックオプションや転換社債などまで含めた株式数をベースに計算された希薄化を「完全希薄化(Fully Diluted)」という。

さらに、取締役等への報酬としての株式無償交付は、株式の交付のタイミングによって「事前交付型」と「事後交付型」に分類することもできる。事前交付型とは、取締役等の報酬対象勤務期間の開始後、速やかに取締役等に株式の発行等を行い(この時が会社法上の「割当日」に該当)、取締役等と会社の契約において、当該株式に譲渡制限を付しておき、権利確定条件(たとえば「3年間勤務し、3年後に株価を倍増させる」)が達成された場合に譲渡制限が解除され(すなわち、取締役等は当該株式を売却して換金できる)、権利確定条件が達成されない場合には企業が無償で株式を取得(没収)する仕組みをいう。一方、事後交付型とは、取締役等と会社の契約において、株式の発行等について権利確定条件が付されており、権利確定条件が達成された場合に株式の発行等が行われる仕組みをいう。要するに、「事前交付型」か「事後交付型」かは、役員等への株式の割当が対象勤務期間の事前になるか、事後になるかの違いと言える。

株式の発行等 : 株式の発行だけでなく自己株式の交付も含まれる。
権利確定条件 : 「勤務条件」や「業績条件」がある。勤務条件は、取締役等の一定期間の勤務や職務執行に基づく条件をいう。また、「業績条件」とは、一定の業績(株価を含む)の達成又は不達成に基づく条件をいう。

株式を報酬として取締役等に無償交付する場合の具体的な手続きを、「事前交付型」「事後交付型」に分けてまとめると下表のとおり(ASBJの実務対応報告公開草案第60号「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い(案)」等のコメントの募集及び本公開草案の概要の【参考3】想定される取引の概要を引用)。

事前交付型 事後交付型
①株主総会において、取締役の報酬等としての募集株式の数の上限等を決議する。
②取締役会において、上記で決定した募集株式の交付(新株の発行又は自己株式の処分)を決議する。
③取締役との間で上記の募集株式の引受に関する契約を締結する。
④割当日において契約に基づく譲渡制限を付した株式を交付(新株の発行又は自己株式の処分)する。

対象勤務期間経過

⑤一定期間の勤務や一定の業績目標等の達成によって譲渡制限を解除する。
⑥譲渡制限が解除されなかった株式は、企業が無償取得する。
①株主総会において、取締役の報酬等としての募集株式の数の上限等を決議する。
②上記で決定した内容に基づき、取締役との間で株式報酬に関する契約を締結する。





対象勤務期間経過

③上記の契約に定める一定期間の勤務や一定の業績目標等の達成等によって、株式が 交付される権利が確定する。
④権利が確定した株式について、取締役会において募集株式の交付(新株の発行又は自己株式の処分)を決議する。
⑤取締役との間で上記の募集株式の引受に関する契約を締結する。
⑥割当日において確定した株式を交付(新株の発行又は自己株式の処分)する。

以上の流れを図解すれば下図のとおりとなる。

52440

事前交付型は、その仕組み上、株式の割当が先に発生し、権利確定条件が不達成だと割り当てた株式を没収する必要があることから、事後交付型よりも手間がかかる。一方、事後交付型は、例えば希薄化を防ぐために自己株式の交付を想定している場合、契約時点で自己株式を保有していなくても、上述のとおり対象勤務期間中の株価低迷時に自己株式を取得しておくことも可能。会社にとっては、事後交付型の方が使い勝手は良いと言えそうだが、引受人である取締役等にとってはそうとも言えない。事前交付型では、割当を受けた取締役等は割当日に株主になる(改正会社法294条4項)ので、割当日から没収されるまでに生じた配当金を受け取ることができるうえ、株主総会での議決権も有することになるため、取締役等にとっては事前交付型の方がメリットがある(取締役等が会社に有利な議決権行使を行うことを前提にすれば、取締役等が議決権を有するという点は会社にとってもメリットがあると言える)。

新株発行を伴う事前交付型の場合、他の株主にとっては希薄化が気になるところだが、事前交付時に新株を発行したとしても、権利確定条件の達成・不達成が判明するまでは一株当たり純資産や一株当たり純利益の計算にあたり希薄化が生じないよう会計的にも手当てがされる見込み。企業会計基準委員会(ASBJ)が2020年9月11日に公表した公開草案「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い(案)」によると、事前交付型を用いて新株を取締役等に交付しても、割当日においては払込資本を増加させない案が示されている。これは、割当時点では資本を増加させる財産等の増加は生じていないことが理由。その代わり、勤務条件の達成まで期間に応じて漸次費用(株式報酬費用)を計上し、株式引受権を増加させていく。対象勤務期間中に決算が到来した場合、一株当たり純資産の算定にあたり、分子の純資産から株式引受権の残高を控除し、分母の期中平均株式数からも未確定の株式報酬分の株式数は控除する(一株当たり純利益算定の際の分母においても同様)。そのため、新株発行を伴う事前交付型のスキームであっても株式報酬が確定するまでは一株当たり純資産や一株当たり純利益の希薄化が生じることはない(なお、議決権の希薄化は生じる点には留意が必要である)。

株式引受権 : 取締役等に報酬として株式を無償交付することが会社法で認められるようになったことをきっかけとして、会計基準でも手当が行われ新設された科目で、純資産の一部を構成する。事前交付型であれば勤務条件の達成・不達成が判明するまで、事後交付型であれば割当を行うまで、一時的に株式報酬を累積させるための勘定科目となる。

なお、実務対応報告案は、冒頭で触れた “報酬債権の現物出資方式”、すなわち、取締役等に会社に対する報酬支払請求権を会社に現物出資し、その見返りに、報酬として会社から株式の交付を受けるケース(現物出資スキーム)には適用されない。この点については続報したい(現物出資スキームと会社法スキームの会計処理の違いは2020年10月14日のニュース「会計基準新設で株式報酬の“現物出資スキーム”の行方は?」を参照)。

2020/09/24 議決権行使結果の個別開示で判明、「平均反対率」が最も高い運用機関は?

2020年株主総会シーズンにおける主要な運用機関による議決権行使結果の個別開示が出揃った。そこで当フォーラムが抽出した影響力の大きい10機関をサンプルとして、どのように議決権行使が行われたか、また、議案ごとにどのような特徴があったかを分析する。・・・

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2020/09/24 議決権行使結果の個別開示で判明、「平均反対率」が最も高い運用機関は?(会員限定)

2020年株主総会シーズンにおける主要な運用機関による議決権行使結果の個別開示が出揃った。そこで当フォーラムが抽出した影響力の大きい10機関をサンプルとして、どのように議決権行使が行われたか、また、議案ごとにどのような特徴があったかを分析する。

抽出した10機関:
野村アセットマネジメント、大和アセットマネジメント、日興アセットマネジメント、三菱UFJ信託銀行、三井住友トラストアセットマネジメント、アセットマネジメントOne、三井住友DSアセットマネジメント、りそなアセットマネジメント、ブラックロックジャパン、フィデリティ投信

※大和アセットマネジメントは2020年6月、日興アセットマネジメントは2019年7月〜2020年6月、その他の8機関は2020年4月〜6月の議決権行使結果を開示している。

まず10機関による会社提案議案への反対率は、全議案平均で14.2%だった(下表左参照)。役員選任議案については、取締役が14.7%、監査役が14.9%とほぼ同水準の反対率となっている。目立って反対率が高かった議案としては、買収防衛策の導入(継続)議案の97.8%、退職慰労金支給議案の71.0%が挙げられる。

議案ごとの平均反対率の前年同期比は下表右のとおり。なお、ブラックロックジャパンは2019年6月以前の行使結果を開示していないため、同社を除いた9機関をベースに前年同期との比較を行った。取締役選任議案への反対率が高まった一方で、監査役選任議案への反対率は大幅に低下していること、買収防衛策の導入(継続)議案や退職慰労金支給議案について運用機関の賛成を得るのは一層厳しくなっていることなどがうかがえる。

  2020年
10社
  2020年
9社
2019年
9社
取締任 14.7% 15.8% 14.9%
監査役 14.9% 15.3% 18.1%
会計監査人 0.2% 0.2% 0.2%
役員報酬 10.6% 11.0% 13.6%
退職慰労金 71.0% 74.9% 68.6%
剰余金処分 1.9% 2.1% 6.3%
組織再編 1.3% 1.5% 2.5%
買収防衛策 97.8% 98.0% 84.9%
資本政策 5.6% 6.3% 3.4%
定款変更 2.9% 2.8% 2.9%
その他 40.0% 40.0% 20.0%
合計 14.2% 15.2% 15.0%

運用機関を「平均反対率」が高い順にランキングしたのが下表である。三菱UFJ信託銀行は実に3分の1近い議案(候補者)に反対したことが判明している。一方、ブラックロックジャパンは全体の5%程度にしか反対していない。同じ日本版スチュワードシップ・コードを受け入れた運用機関であっても、実際の議決権行使における賛否のスタンスには相当な違いがあることが確認できる。

機関名 2020年
三菱UFJ信託銀行 32.0%
三井住友DSアセットマネジメント 23.6%
三井住友トラストアセットマネジメント 19.8%
アセットマネジメントOne 15.3%
日興アセットマネジメント 12.0%
りそなアセットマネジメント 9.8%
大和アセットマネジメント 9.3%
フィデリティ投信 7.4%
野村アセットマネジメント 7.1%
ブラックロックジャパン 5.9%
平均 14.2%

議案別に見ると、最も議案数(候補者数)が多い取締役選任議案について特に反対率が高かったのは、三菱UFJ信託銀行の38.0%だった。同社は本年度より「社外取締役が複数かつ取締役総数の1/3以上」いない場合、機関設計を問わず、「取締役候補者全員」の選任議案に反対するとしており、この基準が反対率を押し上げたものとみられる。ちなみに、2019年4〜6月における取締役選任議案への反対率は17.0%にとどまっている。

監査役選任議案については、三井住友DSアセットマネジメントの反対率が28.0%と高かった。社外監査役の独立性は多くの運用機関が東証への独立役員届出書の提出の有無で判断しているのに対して、同社は「大株主(保有比率5%程度以上)」「役員在任期間が 12 年」など独自の独立性基準で精査しており、これらの基準に抵触する社外監査役候補者が多かったことが反対率を押し上げたものと考えられる。

多くの運用機関が反対に回った退職慰労金支給議案だが、こうした中で、大和アセットマネジメントの反対率が20%と目立って低かった。同社の議決権行使基準では「原則として賛成」とした上で、反対するケースを社外役員を対象とする場合などに限定しているためだろう。

買収防衛策の導入(継続)議案については運用機関の多くが全投資先の議案に反対する中、三菱UFJ信託銀行の反対率は94.3%(4議案に賛成)にとどまった。同社の議決権行使基準では「原則反対」としつつも、社外取締役が過半数かつ合理的な説明があれば賛成するとしていることが原因と考えられる。もっとも、前年の反対率が89.4%(7議案に賛成)であったことを踏まえると、他の運用機関同様、「全投資先」の議案に反対する方向に向かっていることは間違いなさそうだ。