2020/01/14 ISSの反対推奨を受けても85%の賛成率

議決権行使助言会社(以下、助言会社)大手のISSとグラスルイスの2020年版ポリシーが確定した(ISSのポリシーについては2019年10月15日のニュース『ISS、上場子会社に社外取締役比率「3分の1」基準導入へ』、(グラスルイスのポリシーについては2019年12月11日のニュース「グラスルイスが2020年版ガイドライン公表、ISSが見送った政策保有株式のポリシー導入」参照)。上場会社としては今後、各助言会社のポリシーに抵触する恐れがあれば助言会社と対話する機会を持ち、助言内容によっては反駁リリースを出すなどの対応を検討する必要があろう。そこで当フォーラムでは。2019年の株主総会において助言会社の反対推奨を受けた上場会社の対応事例を調査し、レポートする。第1回目は・・・

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2020/01/14 ISSの反対推奨を受けても85%の賛成率(会員限定)

議決権行使助言会社(以下、助言会社)大手のISSとグラスルイスの2020年版ポリシーが確定した(ISSのポリシーについては2019年10月15日のニュース『ISS、上場子会社に社外取締役比率「3分の1」基準導入へ』、(グラスルイスのポリシーについては2019年12月11日のニュース「グラスルイスが2020年版ガイドライン公表、ISSが見送った政策保有株式のポリシー導入」参照)。上場会社としては今後、各助言会社のポリシーに抵触する恐れがあれば助言会社と対話する機会を持ち、助言内容によっては反駁リリースを出すなどの対応を検討する必要があろう。そこで当フォーラムでは。2019年の株主総会において助言会社の反対推奨を受けた上場会社の対応事例を調査し、レポートする。第1回目は武田薬品工業を取り上げる。

反駁 : 他人の主張や批判に対して反論すること。「はんばく」と読む。

武田薬品工業は2019年6月17日、「武田薬品の坂根正弘取締役会議長によるクリストフ・ウェバー氏への信任表明ならびに第143回定時株主総会議案に対する考え」と題するリリースを公表した。同リリースは、社外取締役である坂根氏(小松製作所顧問)の名義で、ISSによるウェバー代表取締役兼社長CEOの不信任推奨に対し、「驚きを隠せず理解ができない」と、異例と言えるほどの激しい論調で非難している。

これに先立つ6月14日には、会社名義で、「第143回定時株主総会における会社提案議案への賛成推奨について」と題するリリースを出しており、2018年12月5日開催の臨時株主総会でシャイアー社の買収に関する議案が株主から約90%の賛成率を得て承認されたこと、シャイヤー社買収の結果として、同社統合後の会社ベースと旧武田薬品ベースでROEに差異が生じていることを述べている。具体的には、統合後の会社ベースのROEは2018年度が3.0%かつ過去5年間平均が3.2%である一方、旧武田薬品ベースでは同15.0%かつ5.6%となっており、この差異は買収に伴う「一時的かつ非資金性の費用」によるものと説明している。本リリースからは、ISSが統合後の会社ベースのROEに基づいて反対推奨したことが窺われる。

非資金性の費用 : キャッシュの動きがないにもかかわらず、費用として計上される項目のこと。減価償却費や減損損失、のれんの償却費などが挙げられる。

坂根氏名義のリリースは、ISSが当該買収について「十分な投資利益をあげるためには3年を要する」とした上で支持したにも関わらず、ウェバー氏の再任については「ごく一面の業績指標に焦点を絞った議論」で不信任としたことを遺憾とした。一連のISSによる推奨は言行不一致であって相当性を欠くものと断じたと言えよう。これを踏まえ株主に対しては、「ウェバー社長無き武田薬品では、シャイアー社との統合によって生み出される価値が著しく棄損される」ことから、同氏の再任に賛成するように要請している。

結果としてウェバー氏の選任議案への賛成率は84.3%であった。同社の外国人株主比率が50.7%に達することや海外投資家の議決権行使におけるISSの影響力の大きさを勘案すると、反対割合が10%台にとどまったことは、会社側にとって相当な“健闘”と言えそうだ。実質株主の多くは上記リリースなどによる会社側の主張について肯定的な判断をした可能性が高い。なお、グラスルイスは賛成推奨した模様。

実質株主 : 投資判断や議決権を行使できる株主のこと。これに対し、株主名簿に載っている株主を名義株主という。個人株主や事業会社が株主となる場合などは「実質株主=名義株主」となるが、信託銀行が信託勘定で「管理」だけをする株式は、実質株主と名義株主は一致しない。機関投資家が保有する株式は基本的に後者のケースとなる。

ISSの立場を推測すると、顧客である機関投資家とのディスカッションを重ねた上で定めた「直近期および過去5年平均のROEが5%未満の場合は経営トップの選任議案に反対推奨する」とのポリシーがある以上、たとえ企業買収による一時的な影響であったとしても、そうそう簡単に例外は認められないということだろう。仮に同様のケースが複数あった場合、賛否を分ける線引きをどう設定すればよいのかという難しい問題もある。

武田薬品は、ISSから反対推奨を受けたとしても、例外として認められて然るべきと考える事情があれば、反駁リリースなどで「株主」に訴えかけることが有効な手段になり得ることを示した。上場会社各社としては参考にしたい事例と言えよう。

2020/01/10 「型」の保管料を発注側が負担すべき類型と廃棄時期の目安

工場の海外移転などにより製造業の空洞化が進んだとはいえ、日本の産業の屋台骨を支えているのはいまだ製造業であることに異論は少ないだろう。その製造業に欠かせないのが「型」(金型・木型)だ。型は、「製造業における大量生産のために金属、樹脂、ガラスなどの素材を正確かつ迅速に成型することを目的に製作され、製品の外観の優劣、品質・性能あるいは生産性に影響を与える重要な役割を有しており、その役割の大きさから、型の生産額のうち、大半を占める金型については「製品の産みの親」などと呼称されている」(中小企業庁に設置された型取引の適正化推進協議会が2019年12月に公表した「型取引の適正化推進協議会 報告書」1ページ参照)という。

ところが近年、「型の管理」の問題が顕在化している。型は部品の量産を終えた後であっても、アフターサービス用の部品の供給に備えて保存しておく場合が少なくない。本来は、型の保存にかかるコスト(保存のためのスペース確保)は部品の発注側(下請法上の親事業者)が負担するのが“筋”だが、発注側が廃棄時期やコスト負担を曖昧にしたまま、受注側(下請事業者)に負担を長期間押しつけるケースが多いという実態がある。右肩上がりで製造業が伸びている間は、それが問題化することはなかった。部品の注文が相次げば、受注側も型の長期保存コストの負担以上に報われることが多かったからだ。しかし、国内製造業の空洞化に伴い国内の部品マーケットが縮小する中、量産が終了した製品の型を下請事業者に保管させる実務慣行が問題視されるようになった。・・・

■下請法 : 下請取引の公正化・下請事業者の利益保護のため、下請代金の支払い遅延禁止、下請け代金の減額の禁止、買いたたきの禁止など、親事業者と下請事業者の取引に関するルールを定めた法律。正式名称は「下請代金支払遅延等防止法」である。

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2020/01/10 「型」の保管料を発注側が負担すべき類型と廃棄時期の目安(会員限定)

工場の海外移転などにより製造業の空洞化が進んだとはいえ、日本の産業の屋台骨を支えているのはいまだ製造業であることに異論は少ないだろう。その製造業に欠かせないのが「型」(金型・木型)だ。型は、「製造業における大量生産のために金属、樹脂、ガラスなどの素材を正確かつ迅速に成型することを目的に製作され、製品の外観の優劣、品質・性能あるいは生産性に影響を与える重要な役割を有しており、その役割の大きさから、型の生産額のうち、大半を占める金型については「製品の産みの親」などと呼称されている」(中小企業庁に設置された型取引の適正化推進協議会が2019年12月に公表した「型取引の適正化推進協議会 報告書」1ページ参照)という。

ところが近年、「型の管理」の問題が顕在化している。型は部品の量産を終えた後であっても、アフターサービス用の部品の供給に備えて保存しておく場合が少なくない。本来は、型の保存にかかるコスト(保存のためのスペース確保)は部品の発注側(下請法上の親事業者)が負担するのが“筋”だが、発注側が廃棄時期やコスト負担を曖昧にしたまま、受注側(下請事業者)に負担を長期間押しつけるケースが多いという実態がある。右肩上がりで製造業が伸びている間は、それが問題化することはなかった。部品の注文が相次げば、受注側も型の長期保存コストの負担以上に報われることが多かったからだ。しかし、国内製造業の空洞化に伴い国内の部品マーケットが縮小する中、量産が終了した製品の型を下請事業者に保管させる実務慣行が問題視されるようになった。

■下請法 : 下請取引の公正化・下請事業者の利益保護のため、下請代金の支払い遅延禁止、下請け代金の減額の禁止、買いたたきの禁止など、親事業者と下請事業者の取引に関するルールを定めた法律。正式名称は「下請代金支払遅延等防止法」である。

そこで経済産業省は2016年9月、当時の大臣の名を付した「世耕プラン」と称する政策パッケージ「未来志向型の取引慣行に向けて」を公表、本来は親事業者が負担すべき費用等を下請事業者に押しつけることがないよう、「コスト負担の適正化」を求めたところだ。これを受け産業界では、型管理の適正化に向けた行動計画を自主的に策定する業界団体が相次ぐこととなった。しかし、2017年12月に経済産業省が公表した自主行動計画のフォローアップ調査結果では、型管理の適正化に関して明確な改善傾向が見られず、新たに「型代金の分割払いに伴う資金繰り負担の強要」という問題も浮き彫りになったとして、下請中小企業振興法第3条第1項の規定に基づく振興基準も改正された(世耕プランや振興基準の改正については2018年1月11日のニュース「“世耕プラン”に基づく中小企業と大企業の取引慣行の改善が進まない理由」参照)。

下請中小企業振興法 : 下請中小企業を支援し、企業体質の改善、強化を図ることを目的とした法律。振興基準(後述)、下請企業振興協会、下請事業者が金融上の優遇措置を受けるための諸制度を定めている。名称が類似した法律として下請法があるが、下請法が指導・規制法規であるのに対し、下請中小企業振興法は下請中小企業の支援法としての性格を有するといった違いがある。
振興基準 : 下請中小企業振興法に基づき定められる経済産業省告示。下請事業者および親事業者がよるべき一般的な基準が記載されている。

また、型取引における基本的な考え方や型管理の適正化に係る目安を明らかにすることを目的として、昨年(2019年)8月には産学官が参画する「型取引の適正化推進協議会」が経済産業省内に設立され、12月11日に「型取引の適正化推進協議会 報告書」を公表している。報告書では、型取引に関して下記の5つの課題(論点)が指摘されている。

<型取引の課題(論点)>
課題(論点) 内容
①型に関する取引条件の曖昧さ 型の取扱いについて、取引条件が曖昧なままで取引が行われている。
②部品の受注側企業による資金繰り負担 部品の受注側企業から型製作企業へは型代金が一括払いされる一方、発注側企業から受注側企業の支払いは24 か月分割払いや部品代への上乗せ払いがあり、部品の受注側企業に資金繰り負担が偏る。
③適正対価を伴わない受注側企業による型の長期保管 量産終了後も、発注側企業から保管期間を明示されないまま、受注側企業が長期間の保管を強いられる。型の保管費も支払われないか、支払われたとしても実費相当額になっていない。
④型の廃棄・返却、保管費用項目の目安 部品の量産終了後の型の保管期間、型の廃棄に係る具体的な手順・ステップなどの型管理の適正化に係る「目安」が不存在。
⑤型の製作技術・ノウハウ流出 発注側企業から、部品だけでなく型や型の図面まで提供を求められるケースがあり、その型や図面を用いて、海外企業等へ生産を切り替えられることもある。

型取引の適正化推進協議会は、上記課題(論点)を踏まえ、型取引を下記のAからCまでの3類型に分類したうえで、類型ごとに課題(論点)への対応を整理している。

<型取引の分類>

48302a

型取引の適正化推進協議会報告書7ページより抜粋)

<類型ごとの課題(論点)への対応>

48302b

型取引の適正化推進協議会報告書の概要1ページより抜粋)

最大のポイントは、類型C以外では、型の保管料は発注側が負担すべきことが明示されたという点だろう。また、業界ごとの型の廃棄・返却時期の目安が示されたため、業界における議論の出発点になることが期待される。報告書には、類型A・Bにおける型の取扱いに関する覚書ひな形(報告書22ページ)も示されている。製造担当の取締役としては自社が関与する部品取引を各類型に分類し、5つの課題(論点)に関する自社の現状を調査して、覚書の締結を急ぐべきだ。

また、上記論点⑤「型の製作技術・ノウハウ流出」については、昨年(2019年)6月に公正取引委員会が公表した「製造業者のノウハウ・知的財産権を対象とした優越的地位の濫用行為等に関する実態調査報告書」の中で、「発注内容に含まれていなかった金型設計図面やその他の技術データを後から全て無償で提供させられる」「金型だけを納品する取引から、金型に併せて自社のノウハウが含まれる金型設計図面等の技術資料も納品する取引に変更したにもかかわらず、対価は一方的に据え置かれる」という問題事例が紹介されている。こういった行為が、自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して不当に取引先に不利益を与えていることに該当すれば、「優越的地位の濫用」として独占禁止法に抵触する可能性がある。コンプライアンス担当の取締役や監査役は自社においてこのような問題が発生していないか、点検しておく必要があろう。

2020/01/09 対話による“賛否判断逆転”の余地、アンケート結果で明確に

2014年2月の制定からはや丸6年が経過し、今春に2回目の改訂が予定されているスチュワードシップ・コードは、投資家の間でもすっかり定着した感がある。こうした中、多くの機関投資家が会員に名を連ねる日本投資顧問業協会は昨年末(2019年12月18日)、「日本版スチュワードシップ・コードへの対応等に関するアンケート(第6回)の結果について(2019年10月実施分)」を公表した。これは同協会員を対象とした定期的な調査で、スチュワードシップ・コードに対する受入れ表明状況や体制整備状況などを把握することを主な目的としている。

92頁にわたる当該報告書では、スチュワードシップ・コードに関する方針の策定および開示状況、顧客(アセット・オーナー)に対する説明あるいは顧客によるモニタリングの実態など、様々な分析結果が示されているが、本稿では、企業が知っておくべき内容として、投資家とのエンゲージメントに関連する3つの事項を紹介する。・・・

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2020/01/09 対話による“賛否判断逆転”の余地、アンケート結果で明確に(会員限定)

2014年2月の制定からはや丸6年が経過し、今春に2回目の改訂が予定されているスチュワードシップ・コードは、投資家の間でもすっかり定着した感がある。こうした中、多くの機関投資家が会員に名を連ねる日本投資顧問業協会は昨年末(2019年12月18日)、「日本版スチュワードシップ・コードへの対応等に関するアンケート(第6回)の結果について(2019年10月実施分)」を公表した。これは同協会員を対象とした定期的な調査で、スチュワードシップ・コードに対する受入れ表明状況や体制整備状況などを把握することを主な目的としている。

92頁にわたる当該報告書では、スチュワードシップ・コードに関する方針の策定および開示状況、顧客(アセット・オーナー)に対する説明あるいは顧客によるモニタリングの実態など、様々な分析結果が示されているが、本稿では、企業が知っておくべき内容として、投資家とのエンゲージメントに関連する3つの事項を紹介する。

① エンゲージメントの議題(30ページ(10)参照)
本アンケートでは、エンゲージメント活動における企業との対話において「議題」として重視すべきと考える事項として、20の選択肢の中から3つを選択させている。下表は、本アンケートに回答した投資家のうち日本株投資残高のある者の回答を対象に、パーセンテージが二桁に達した議題、選択社数・割合を前年の結果とともにまとめたものである。

議題 2018年10月 2019年10月
企業戦略(除く株主還元政策) 53 社(71.6%) 51 社(68.9%)
ガバナンス体制(取締役会構成や資本構造を含む) 50 社 (67.6%) 49 社 (66.2%)
企業業績および長期見通し 31 社 (41.9%) 31 社 (41.9%)
株主還元策 20 社 (27.0%) 17 社 (23.0%)
社会・環境問題 13 社 (17.6%) 16 社 (21.6%)
取締役・取締役会の資質 8 社 (10.8%) 10 社 (13.5%)

大部分が「企業戦略」と「ガバナンス体制」というエンゲージメントにおける二大テーマを挙げている。「企業業績および長期見通し」がこれらに次ぐが、「業績」は「エンゲージメント(対話)」というよりも「ディスクロージャー(情報開示)」のテーマと捉えるべきとも言える。ESGの構成要素である「社会・環境問題」を選択した投資家の割合は増加しているもののまだ少ない。もっとも、社会・環境問題は機会・リスクの一つとして「企業戦略」と捉えられている可能性もあろう。

ESG : ESGとは、「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を組み合わせたもので、近年、特にグローバル機関投資家の間で、企業の投資価値を測る評価項目としての地位を確立しつつある。

② エンゲージメントの効果(41ページ(7)参照)
会社に対するエンゲージメント活動の結果、事前説明を受けて賛否等を変更した議案があったかについて、「ある/なし」で回答を求めた結果が下表である(本アンケートに回答した投資家のうち日本株投資残高がある者を対象に集計)。

  2018年10月 2019年10月
変更した議案がある 31 社 (33.0%) 32 社 (34.4%)
変更した議案はない 63 社 (67.0%) 61 社 (65.6%)

3分の1がエンゲージメントを受けて賛否の判断を変更したと回答している(会社提案であれば反対から賛成に、株主提案であれば賛成から反対に変更したものと推測される)。この結果は、企業にとって積極的にエンゲージメントに取り組むモチベーションとなりそうだ。

③ 議決権行使助言機関の活用(45ページ(17)参照)
本アンケートに回答した日本株投資残高のある投資家のうち、議決権行使指図に関し助言機関を活用した者は39社(41.5%)あった。下表は、助言機関を活用した者が助言内容をどのように活用しているか、いくつかの選択肢を用意して選択させた結果をまとめたものである(複数回答可)。

  2018年10月 2019年10月
議決権行使指図の判断の際、参考としている 17 社 (43.6%) 16 社 (42.1%)
当社ガイドラインに沿って議決権行使案の作成を委託している 11 社 (28.2%) 16 社 (42.1%)
稀に異なる時もあるが、基本、助言内容に沿って議決権行使を指図する 12 社 (30.8%) 9 社 (23.7%)
親会社などについて助言内容に沿って議決権行使を指図する 8 社 (20.5%) 5 社 (13.2%)

4割超が「参考としている」と「当社ガイドラインに沿って委託している」と回答している。いずれも自ら主体的に判断していることを示す回答であり、議決権行使助言機関の影響力が限定的であることが伺われる。「基本的に助言内容に沿う」は4分の1近くあるものの2018年からは約7ポイント減少しており、表から外した「必ず助言内容に沿って議決権行使を指図する」に至っては2018 年、2019年ともに1社のみだった。これらのアンケート結果は、たとえ議決権行使助言機関からネガティブな賛否助言があったとしても、企業は実質株主である投資家とのエンゲージメントによりこれを覆す余地があることを示していると言えよう。

2020/01/08 【特集】改正開示府令の有報記載分析(役員報酬、政策保有株式)

日本シェアホルダーサービス株式会社
チーフコンサルタント 藤島 裕三
コンサルタント 矢幡 静歌

 
2019年1月31日に施行された「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(以下、改正開示府令)」により、上場企業は2019年3月期以降の有価証券報告書から、役員報酬および政策保有株式に関する記載の充実が求められている。日本シェアホルダーサービス(JSS)では、TOPIX100構成企業である3月決算の監査役会設置会社(57社)をサンプルに、改正開示府令(役員報酬、政策保有株式)への対応状況について調査分析を実施した。本稿では、その結果の重要な部分を紹介する。

自社に最適な役員報酬や政策保有株式に対するスタンス、また、それらに関する開示を検討し説得力のあるIRおよびSR活動を展開するうえで、本稿の分析を役立てていただきたい。

「役員の報酬等」に関する開示例の分析

従来の開示府令では、「報酬等の額又はその算定方法に係る決定方針の内容及び決定方法」については、それが「ある場合」にのみ、記載することが求められていた。これに対し改正開示府令では、単に「方針」「方法」とするにとどまらず、報酬金額がどのように決まるか(報酬プログラム)、またどのように決めるか(報酬決定の枠組み)を、それらを構成する各要素にブレイクダウンした上で詳細に説明することが求められている。以下、代表的な要素について、サンプル企業の開示内容を分析する。

(1) 支給割合の決定方針

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2020/01/08 【特集】改正開示府令の有報記載分析(役員報酬、政策保有株式)(3・会員限定)

役員報酬開示で目立つ二極化、政策保有株式開示は投資家の期待値と大きな乖離

調査対象企業の役員報酬に関する有価証券報告書の記載を概観すると、役員報酬改革に向けた取り組みおよび情報開示の質にバラツキが目立つ。両面において「二極化」が進展していると言えよう。

一方、政策保有株式に関する開示については、少なくとも投資家目線からは総じて記載内容に物足りなさを覚えた。そもそも改正開示府令の要請には投資家による期待値の高さが反映されているため、上場企業の現状の開示内容との「乖離」が大きくなっている。

役員報酬は価値創造ストーリーを反映した設計とすることで、投資家に成長期待を抱かせることができる。特に業績悪化局面や成長ステージの転換点を迎えているなどにより、資本市場において自社の成長性に対する見方が分かれている場合、先進的な報酬制度を導入して積極的に開示することは、投資家の銘柄選択に少なからず影響する可能性がある。IRにおけるブランディングとの見方もできるだろう。

投資家は、政策保有株式に関する各社の取り組みや開示を、資本生産性および議決権行使の観点から株主重視の姿勢を表す“代理変数”として注視している。株主構成における機関投資家の比率が高い企業、機関投資家の議決権行使基準に抵触する恐れのある議案の上程を検討している企業などは、政策保有株式の縮減に積極的な姿勢を示すことで、少なからず反対行使を抑制することができるかもしれない。こちらはSRにおけるリスクマネジメントと捉えられよう。

SR : Shareholder Relations の略で、「株主向け広報」と訳される。株主を含む広く投資家全般に対する広報活動を「IR」 (Investor Relations) と呼ぶのに対し、SR活動とは、企業と株主との信頼関係を築くための活動を指す。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)

2020/01/08 【特集】改正開示府令の有報記載分析(役員報酬、政策保有株式)(2・会員限定)

(1) 支給割合の決定方針
改正開示府令は、報酬プログラムの一環として「業績連動報酬と業績連動報酬以外の報酬等の支給割合の決定に関する方針」を記載することを求めている(役員報酬に業績連動部分が含まれる場合)。望ましい開示方法としては、「報酬全体の〇割」や「基本報酬の〇倍」といった定量的な説明が考えられよう。

調査対象57社のうち支給割合の決定方針を説明している企業は約6割に過ぎず、また上述のような定量的な説明が伴っている企業は5割に達していない。同方針の記載が欠けている企業の中には、そもそも業績連動の報酬制度を導入していないところもあるだろうが、導入しているにもかかわらず記載を避けた事例も少なからず含まれる可能性がある。

なお、定量的に説明している5割弱の事例をピックアップし、業績連動報酬が役員報酬全体に占める割合の平均値を求めたところ、48%であった(30~50%など「幅」で説明している場合は最大値を採用)。日本企業の業績連動報酬比率は、長らく3~4割程度と認識されてきたが、少なくともTOPIX100構成企業の開示事例を見る限り、固定部分と変動部分が拮抗しつつあることが分かる。最も変動部分が大きかった事例としては、全体の80%が業績連動報酬、そのうち45%が中長期インセンティブというものがあった(卸売業)。

(2) 業績連動報酬の指標
改正開示府令が開示を求める「業績連動報酬に係る指標」については、ほぼ全ての調査対象企業が具体的な記載をしている。記載がなかったのは2社のみで、いずれも業績連動報酬を導入していない模様。さらに、記載事例を短期インセンティブ(賞与など)と中長期インセンティブ(株式報酬など)で分けると、短期インセンティブでは8割以上、中長期インセンティブでは4割近くが説明に「指標」が伴っている。下記のグラフは具体的な指標の分布である(重複あり)。

【業績連動報酬の指標(短期、中長期)】

48217a

出所:各社有価証券報告書よりJSS作成

短期インセンティブの指標としては、「営業/経常利益(率を含む)」あるいは「当期純利益」という損益計算書における会計上の利益が大部分を占めている。利益には貸借対照表の概念が反映されておらず、また経営者によるコントロールが可能という批判もあり、これを業績連動報酬の指標として採用することは投資家目線からは必ずしも好ましいとは言えない。資本生産性(ROEROICなど)やキャッシュフロー(EBITDA資本コスト控除後のキャッシュフローなど)、さらには個別の事業内容に紐づいた非財務指標(顧客満足度、労働災害件数など)の採用が期待される。

ROE : Return On Equity=株主資本利益率(利益/株主資本)(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)
資本コスト : 株主など資本提供者の期待利回りのこと。資本コストが小さい=投資家にとってのリスクが小さいということになる。ここで「株主など」としたのは、負債にも資本コストはあるためである。株主資本により資金調達を行った場合のコストが「株主資本コスト」であり、株主資本の提供者である株主が期待する収益率のことを指す。一方、他人資本コストとは要するに借入金の金利を指す。この株主資本と他人資本を合わせた「総資本」のコストが「総資本コスト」である。総資本コストは、株主資本コストと他人資本コストを、株主資本(株式の時価総額)と他人資本(負債総額)の合計額に占めるそれぞれ額で按分(加重平均)した上で合計するため「加重平均資本コスト」、英語では「Weighted Average Cost of Capita=WACC(ワック)」と呼ばれる。(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)

一方、長期インセンティブにおいても、やはり会計上の利益がある程度採用されているが、同等以上に資本生産性や投資指標(TSREPSなど)も採用されている。これらの指標は株価との連動性が高いため、パフォーマンス・シェアなど長期インセンティブの指標に採用することで、経営陣が株主利益を一層強く意識するようになるという効果が得られよう。

EPS : 1株当たり当期純利益(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)
パフォーマンス・シェア : 中長期的な業績目標の達成度合いに応じて交付される株式報酬(文責:上場会社役員ガバナンスフォーラム)

(3) 決定権限を有する者
改正開示府令は、報酬決定の枠組みとして、役員報酬の金額および決定方針について「決定権限を有する者の氏名または名称」の開示を求めている。調査対象企業は監査役会設置会社であるため一義的には取締役会となるが、経営トップに授権しているケースも多い。下記のグラフは調査対象企業における報酬決定権限者をまとめたものである。決定方針は取締役会、個別金額は社長が権限を持つといった場合、「社長・CEO」としている。

【役員報酬の決定権限者】

48217b

出所:各社有価証券報告書よりJSS作成

大まかに分ければ、取締役会と経営トップ(社長、会長など)で半々となっている。

また、決定方針は取締役会が決めるとしつつ、個別の金額は社長などに授権するケースが目立つ。なお、取締役会に決定権限があると言っても、実態は社長が作成した報酬案を追認するにとどまるものも含まれる点、留意を要する。

ごく少数のプラクティスとして、報酬に関する任意の委員会に決定権限を付与している事例が見られることは興味深い。これは、監査役会設置会社であっても、取締役会の授権によって指名委員会等設置会社と同等の取り組みが可能であることを示している。記載事例としては、「指名・報酬委員会が取締役会の授権を受けて決定」(サービス)、「取締役会および社外取締役が過半数を占める報酬案策定会議で決定」(輸送用機器)などがあった。

「株式の保有状況(政策保有株式)」に関する開示例の分析

改正開示府令では、これまで述べてきた役員報酬に加え、特定投資株式(貸借対照表計上額が提出会社の資本金の1%を超える銘柄)の記載に関する開示強化も図られている。具体的には、開示対象が30銘柄から60銘柄に拡大するとともに、政策保有株式を保有する合理性の検証方法および検証の内容、特定投資株式における定量的な保有効果などといった、個別の取り組みについて具体的な説明が求められることとなった。以下、注目される新たな記載事項について分析した結果を紹介する。

(1) 政策保有株式に関する方針:取締役会等における検証内容
改正開示府令では新たに、「個別銘柄の保有の適否に関する取締役会等における検証の内容」の記載が要請されている。求められる記載内容としては、売却した株式数や金額を含む具体的な売却実績や、保有の合理性が取締役会で確認されており、その結果として保有に特段問題がないと認識している旨の説明などが考えられる。

下記の図は、個別銘柄の保有の適否に関する検証内容の記載状況をまとめたものである。具体的には、検証内容の記載の有無、売買実績の有無および売買に関する定量的な情報(銘柄数や合計金額など)の記載の有無を調査した。それによると、調査対象企業57社のうち何らかの検証内容を記載している企業は3割にとどまった。また、そのうち定量的な売却実績を記載している企業の割合は全体の1割程度とさらに低い。TOPIX100構成企業においても、改正開示府令ひいては投資家が求めるレベルの開示を行っている事例は少ないことが分かる。

【検証内容の記載状況】

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出所:各社有価証券報告書よりJSS作成

下記の各事例では、売却した株式の具体的な銘柄数・金額、売却方針や保有の合理性の確認状況が説明されている。これらの中でも、①のように「定量的な売買実績」が明記された記載が最も望ましい。なぜなら投資家は、「取締役会が検証した」ことのみならず、検証の結果として政策保有株式が売却されたかということにも重きを置いているためである。売却を実施していない場合でも、取締役会における保有合理性の確認結果について記載することなどが期待されていると言えよう。

【検証内容の記載事例】
出所:各社有価証券報告書よりJSS作成
①売買実績あり(定量的情報あり) 医薬品 2018年度においては、10銘柄(一部売却を含む)を約143億円で売却いたしました。
卸売業 当事業年度は前事業年度比約1割縮減した。
②売買実績あり(定量的情報なし) 繊維製品 2019年3月末の状況については、2019年5月22日の取締役会で審議を行った。その結果、一部株式については売却の方針を確認した。
③売買実績の記載なし 電気機器 現在保有する関係会社以外の株式については、取締役会において、(中略)定性面での検証ならびに、株式保有による投資収益率が当社資本コストを上回っているか否か、定量面の検証を実施し、その結果、全ての銘柄について保有が適当であるとの結論が得られました。
輸送用機器 直近では、2019年6月20日の取締役会にて検証を行い、保有の合理性を確認しました。

なお、コーポレートガバナンス・コード原則1-4でも政策保有株式の保有の適否などの検証内容の開示が求められているが、コーポレートガバナンス報告書では検証内容が開示されているにもかかわらず、有価証券報告書に検証内容が記載されていないケースが散見される。コーポレートガバナンス報告書と有価証券報告書の記載レベルを合わせることが望ましい。

原則1-4 : 上場会社が政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有株式の縮減に関する方針・考え方など、政策保有に関する方針を開示すべきである。また、毎年、取締役会で、個別の政策保有株式について、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証するとともに、そうした検証の内容について開示すべきである。上場会社は、政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための具体的な基準を策定・開示し、その基準に沿った対応を行うべきである。

(2) 特定投資株式に関する情報:定量的な保有効果
改正開示府令では、特定投資株式について「提出会社の経営方針・経営戦略等、事業の内容及びセグメント情報と関連付けた定量的な保有効果」を記載することが要請されている。これは、特定投資株式を保有することによる事業上の効果を、定量的にかつ個別に記載することを求めるものである。なお、定量的な保有効果の記載が困難な場合には、その旨及び保有の合理性を検証した方法を記載することが求められている。

ほぼ全ての調査対象企業が定量的な保有効果を開示しておらず、注記で「記載が困難」である旨を説明している。下記に記載例を示した2社(4%)のみが個別の保有効果を開示しているが、これらも事業取引に紐づいた定量効果ではなく、金融取引である配当状況を記載するにとどまっており、開示府令の要請に応えたものとは言い難い。

【定量的な保有効果の記載例】
化学 当年度は上記取引に加え、配当(配当利回り2.0%)を受け取っています。
化学 定量的保有効果については、具体的検証内容は、事業活動における機密保持を考慮し記載しませんが、②の方法に基づいた検証の結果、十分な定量的保有効果があると判断しています。前事業年度及び当事業年度の受取配当金額は、それぞれ0百万円及び19百万円です。

出所:各社有価証券報告書よりJSS作成

また、上述した通り、大部分の調査対象企業は定量的な保有効果の記載が困難である旨を注記で開示しているが、保有効果を非開示とした理由として主に以下の3つが挙げられている。
・保有先企業との関係や、相手先に与える様々な影響を考慮した
・営業機密である取引条件を開示できない
・取締役会や重要会議で保有の適否を検証しており問題ない

このように本開示項目は、上場企業にとって対応が非常に難しいものだと言える。そもそも政策投資に対して資本市場は厳しい目を向けており、こうした背景の下、改正開示府令は、株主資本の非効率化および議決権の空洞化を防止する観点から、厳しい開示内容を課すことで企業に政策保有株式の縮減を促す意図があるとも考えられる。上場企業各社には、記載内容の充実に努めるとともに、政策保有株式の着実な縮減に向けた検討を進めることが期待される。

役員報酬開示で目立つ二極化、政策保有株式開示は投資家の期待値と大きな乖離(会員限定)

2019/12/27 【2020年1月の課題】「その他の記載内容」のチェックポイントと企業に求められる対応

2020年1月の課題

金融庁の企業会計審議会・監査部会は、有価証券報告書における財務諸表以外の非財務情報や事業報告の内容(以下、その他の記載内容)について、 監査報告書に独立した区分を設けたうえで、会計監査人に対し、「その他の記載内容」を特定するとともにそれに関する会計監査人の責任や作業の結果の記載を求めるべく監査基準を改正する方向です(2019年11月18日のニュース 有報「その他の記載内容」への監査人の関与強化策導入の影響 参照)。

現状、非財務情報は監査対象ではありませんが、会計監査人は財務情報と重要な差異があるかどうかを確認することにはなっています。とはいえ、今後その結果を監査報告書に記載することが求められるとなれば、会計監査人の”本気度”も変わってくるでしょう。

では、会計監査人は、有価証券報告書の非財務情報、事業報告について具体的にどのような点をチェックしてくることが予想されるでしょうか。これに伴い企業に求められる対応とともに検討してみてください。

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