周知のとおり、昨年(2018年)6月1日に施行された改訂コーポレートガバナンス・コードでは、上場企業(以下、母体企業)に対し、自社の企業年金がアセットオーナーとして期待される機能を発揮できるよう、企業年金の人事面や運営面でどのような取り組みを行っているかを開示することを求める【原則2-6.企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮】が新設されている。さらに次期「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」では企業年金によるスチュワードシップ活動の取組みの推進が重要なテーマの一つとなることが確実となっており(2019年8月20日のニュース「フォローアップ会議、今後の検討テーマは?」参照)、今後、母体企業へのプレッシャーが高まることが予想される。
「企業年金の人事面や運営面でどのような取り組みを行うか」は母体企業にとって難題と言えるが、それは巨大年金にとっても変わらない。パフォーマンスの向上に向け現在改革を進めているのが、世界有数の年金基金である米国の公的年金基金「カリフォルニア州退職年金基金(通称:CalPERS=カルパース)」だ。
運用資産約3,763億ドルを誇るカルパースだが、同基金の積立比率(=(年金資産/退職給付債務))は約70%と低水準にとどまっており、2019年第2四半期の運用収益率も6.7%と、目標の7%を下回っている。今後積立不足の拡大も懸念される中、カルパースは、業務の効率化と投資領域におけるガバナンスを強化する方針を打ち出している。
このうち業務効率化の目玉となるのが会議の削減だ。具体的には、これまで年に9回開催していた取締役会を年6回に、オフサイトミーティング(社外の施設を利用した集中的なミーティング)を年2回から1回に、投資委員会など各委員会の開催を月1回から年4回へと大幅に削減する。これにより、現在全業務時間のうち約25%程度を費やしている会議準備の負担を軽減し、投資スタッフが投資業務に集中できる環境を確保する。
また、年金基金において重要な役割を果たす投資委員会のスリム化も図る。投資委員会はこれまで全取締役(13名)で構成されていたが、これを9名に絞り込む。参加メンバーを限定することで、投資委員会をより専門的な議論や現場目線での意思決定を行う場とするためだ。その一方で、投資領域におけるガバナンスを強化するため、これまでは投資委員会が単独で立案・決議していた投資戦略やアセット・アロケーションなど投資領域の全事項を今後は取締役会に報告し、かつ取締役会の承認を得ることとする。
アセット・アロケーション : 運用資金を、何(例えば株式、債券、不動産など)にどのような割合で投資するのかを決めること。
カルパースは景気後退時における収益性や積立比率改善のため改革を推進しており、今後も最大限のパフォーマンス発揮という年金加入者への責務を果たすため、改革を続けていくという。この「年金加入者への責務を果たす」という姿勢はまさに次期フォローアップ会議でも企業年金に対して求められることになろう。また、無駄な会議の削減や専門的な議論の推進、投資の意思決定に関するガバナンスの強化などカルパースが進める改革は、日本の母体企業にとっても、特に「企業年金の運営面」での取り組みとして、参考になりそうだ。

