2019/10/02 機関投資家、社外取締役の出席率を厳格にチェック(会員限定)

時価総額上位企業の2019年6月株主総会において反対行使(株主提案議案については賛成行使)が目に付いた議案分析の第七弾では、時価総額第7位(2019年8月末現在)のソフトバンクをとり上げる。なお、今回は本連載の第二弾でとり上げたソフトバンクグループではなく、その上場子会社である通信事業会社のソフトバンクである点、留意されたい。

第一弾 2019年9月5日『独立性の説明なければ「独立性なし」と“推定”される恐れ
第二弾 2019年9月9日『「独立役員届出書」の内容も議決権行使の判断材料に
第三弾 2019年9月10日「賛成率2%台の株主提案議案に機関投資家が賛成票
第四弾 2019年9月12日「親会社出身の社外監査役選任に賛成した機関投資家も
第五弾 2019年9月19日「役員報酬制度の設計が賛成率を左右する傾向顕著に
第六弾 2019年9月25日「低い配当性向、無借金経営に機関投資家の厳しい目

議案 内容 賛成率
第1号議案 取締役11名選任 【会長】孫正義 99.42%
【社長CEO】宮内謙 99.41%
【副社長COO】榛葉淳 99.43%
【副社長COO】今井康之 99.43%
【副社長CTO】宮川潤一 99.43%
【専務CFO】藤原和彦 99.43%
川邊健太郎 99.43%
【社外】堀場厚 98.22%
【社外】上釜健宏 99.52%
【社外】大木一昭 99.53%
【社外】植村京子 99.52%
第2号議案 監査役3名選任 島上英治 99.24%
【社外】山田康治 98.15%
君和田和子 99.18%

全ての議案が役員選任であり、いずれの候補者も100%に近い高い賛成率をもって信任されている。直近期のROEが40%を超えていること、配当性向も40%超の水準にあること、全取締役11人のうち社外取締役が4人に達すること、女性役員が2名(社外取締役および監査役)いること、さらに親会社から派遣された社外役員もいないなど、機関投資家が厳しい議決権行使スタンスをとる余地はまずないと言えよう。

ROE : Return On Equity=株主資本利益率(利益/株主資本)
配当性向 : 当期純利益に占める「配当金」のみの割合を示す。近年は、配当性向とともに、企業が利益をどの程度株主に還元しているかを示す指標である「総還元性向」を開示する企業が多い。自社株買いも株主還元の1つであるため、総還元性向は「(配当金+自社株買いの金額)÷当期純利益」によって計算され、「総配分性向」「株主還元性向」とも言われる。

ただし、個別開示を丹念にチェックしてみると、賛成率が98%台にとどまった2名については、反対票を投じた国内機関投資家があったことが分かった。社外取締役候補者である堀場氏に対しては、アセットマネジメントOneが反対票を投じたことを開示している。同氏は前年度の取締役会11回のうち出席が9回で、出席率は81.8%であった。アセットマネジメントOneの議決権行使基準には、社外取締役の選任について「取締役会への出席率が85%未満の場合、原則反対」とあり、この基準に同氏は明確に抵触している。

なお、社外取締役の出席率について、多くの国内機関投資家は「75%」「3/4」を基準としている(野村アセットマネジメント、大和証券投資信託委託、三菱UFJ信託銀行、三井住友トラスト・アセットマネジメント、ブラックロック・ジャパンなど)。日興アセットマネジメントの議決権行使基準には「合理的な理由なく取締役会への出席率が低いと判断される場合」とあるが、他の機関投資家と同様に75%を判断基準にしているものと思われる。ちなみに、マツモトキヨシホールディングスに出席率が70%にとどまった社外取締役がいるが、同氏の選任議案に対して日興アセットマネジメントは反対票を投じている。社外取締役の人材難が懸念される中、せっかく招聘した社外取締役に不信任票が集まる事態を避けるため、出席率(取締役会および委員会、社外監査役の場合は監査役会)の確保を念頭に置くべきだろう。

社外監査役候補者である山田氏については、JPモルガン・アセット・マネジメント、朝日ライフアセットマネジメント、ティー・ロウ・プライス・ジャパンが反対行使したことが確認された。同氏はみずほ銀行の出身者ではあるものの、招集通知および独立役員届出書において独立性が疑われるような記載は特にない。しかし、JPモルガン・アセット・マネジメントは「独立性が担保出来ない社外取締役および社外監査役候補」との基準に抵触すると判断、朝日ライフアセットマネジメントは「その他関係先に在職もしくは退職後5年以内」(同氏は2016年退職)との基準に抵触すると判断したものと考えられる。

2019/10/01 政策保有株式保有の合理性に関する開示が不十分な事例

政策保有株式の保有意義・効果に投資家から厳しい目線が注がれる中(2019年7月29日のニュース『ISS、株式持合を「日本で最も深刻なガバナンスの問題」と指摘』参照)、開示府令の改正により2019年3月期の有価証券報告書からは、有価証券報告書の【株式の保有状況】の状況の中で、政策保有株式について以下の開示が求められるようになったところだ(【2018年11月の課題】新たな有報における「役員報酬」と「政策保有株式」の記載事項、 2019年2月15日のニュース「社外役員、報酬、政策保有等今3月期から必要な開示への金融庁の考え方」、2019年7月22日のニュース「政策保有株式の定量的な保有効果の開示例」参照)。

※第二号様式記載上の注意(58) 株式の保有状況より抜粋
①提出会社の保有方針及び保有の合理性を検証する方法
②個別銘柄の保有の適否に関する取締役会等における検証の内容
③提出会社の経営方針・経営戦略等、事業の内容及びセグメント情報と関連付けた定量的な保有効果
(定量的な保有効果の記載が困難な場合には、その旨及び保有の合理性を検証した方法)

このような開示が義務付けられることとなった背景には、資本コストをかけ株価の下落リスクをとって政策保有株式を保有する以上、保有の合理性を検証する方法や取締役会等における議論の状況について開示を求めるべきとの声がある(上記開示府令改正のベースとなったディスクロージャーワーキンググループ報告13ページ~参照)。ところが、2019年3月期の有価証券報告書では、下記の観点から記載が十分でない事例が見受けられる。

資本コスト : 株主など資本提供者の期待利回りのこと。資本コストが小さい=投資家にとってのリスクが小さいということになる。ここで「株主など」としたのは、負債にも資本コストはあるためである。株主資本により資金調達を行った場合のコストが「株主資本コスト」であり、株主資本の提供者である株主が期待する収益率のことを指す。一方、他人資本コストとは要するに借入金の金利を指す。この株主資本と他人資本を合わせた「総資本」のコストが「総資本コスト」である。総資本コストは、株主資本コストと他人資本コストを、株主資本(株式の時価総額)と他人資本(負債総額)の合計額に占めるそれぞれ額で按分(加重平均)した上で合計するため「加重平均資本コスト」、英語では「Weighted Average Cost of Capita=WACC(ワック)」と呼ばれる。

・提出会社の保有方針及び保有の合理性を検証する方法、個別銘柄の保有の適否に関する取締役会等における検証の内容が十分記載されていない。
・定量的な保有効果の記載が困難な場合に、保有の合理性を検証した方法が十分記載されていない。

上記観点からは、例えば下記の事例は「開示が不十分」であると考えられる。・・・

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2019/10/01 政策保有株式保有の合理性に関する開示が不十分な事例(会員限定)

政策保有株式の保有意義・効果に投資家から厳しい目線が注がれる中(2019年7月29日のニュース『ISS、株式持合を「日本で最も深刻なガバナンスの問題」と指摘』参照)、開示府令の改正により2019年3月期の有価証券報告書からは、有価証券報告書の【株式の保有状況】の状況の中で、政策保有株式について以下の開示が求められるようになったところだ(【2018年11月の課題】新たな有報における「役員報酬」と「政策保有株式」の記載事項、 2019年2月15日のニュース「社外役員、報酬、政策保有等今3月期から必要な開示への金融庁の考え方」、2019年7月22日のニュース「政策保有株式の定量的な保有効果の開示例」参照)。

※第二号様式記載上の注意(58) 株式の保有状況より抜粋
①提出会社の保有方針及び保有の合理性を検証する方法
②個別銘柄の保有の適否に関する取締役会等における検証の内容
③提出会社の経営方針・経営戦略等、事業の内容及びセグメント情報と関連付けた定量的な保有効果
(定量的な保有効果の記載が困難な場合には、その旨及び保有の合理性を検証した方法)

このような開示が義務付けられることとなった背景には、資本コストをかけ株価の下落リスクをとって政策保有株式を保有する以上、保有の合理性を検証する方法や取締役会等における議論の状況について開示を求めるべきとの声がある(上記開示府令改正のベースとなったディスクロージャーワーキンググループ報告13ページ~参照)。ところが、2019年3月期の有価証券報告書では、下記の観点から記載が十分でない事例が見受けられる。

資本コスト : 株主など資本提供者の期待利回りのこと。資本コストが小さい=投資家にとってのリスクが小さいということになる。ここで「株主など」としたのは、負債にも資本コストはあるためである。株主資本により資金調達を行った場合のコストが「株主資本コスト」であり、株主資本の提供者である株主が期待する収益率のことを指す。一方、他人資本コストとは要するに借入金の金利を指す。この株主資本と他人資本を合わせた「総資本」のコストが「総資本コスト」である。総資本コストは、株主資本コストと他人資本コストを、株主資本(株式の時価総額)と他人資本(負債総額)の合計額に占めるそれぞれ額で按分(加重平均)した上で合計するため「加重平均資本コスト」、英語では「Weighted Average Cost of Capita=WACC(ワック)」と呼ばれる。

・提出会社の保有方針及び保有の合理性を検証する方法、個別銘柄の保有の適否に関する取締役会等における検証の内容が十分記載されていない。
・定量的な保有効果の記載が困難な場合に、保有の合理性を検証した方法が十分記載されていない。

上記観点からは、例えば下記の事例は「開示が不十分」であると考えられる。

記載が不十分な事例①

46577a

記載が不十分な事例②

46577b

これらの事例に対し、提出会社の保有方針及び保有の合理性を検証する方法、個別銘柄の保有の適否に関する取締役会等における検証の内容が具体的に記載されていると思われるのが下記の事例だ。

九州フィナンシャルグループ(定量的な保有効果を記載)

46577c

上場企業各社は、上記のようなGood事例、Bad事例を踏まえ、次の決算期の有価証券報告書では「不十分な記載」との指摘を受けないようにしたいところ。なお、企業機密に配慮して開示を行わないのであれば、その旨を記載する必要がある。

2019/09/30 【役員会 Good&Bad発言集】子会社株式の減損(会員限定)

<解説>
非上場の子会社株式は実質価額が著しく低下したときに減損

売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式および関連会社株式以外の有価証券は、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は洗い替え方式に基づき、次のいずれかの方法により処理する(金融商品会計基準第18項)。
(1) 評価差額の合計額を純資産の部に計上する。
(2) 時価が取得原価を上回る銘柄に係る評価差額は純資産の部に計上し、時価が取得原価を下回る銘柄に係る評価差額は当期の損失として処理する。

一方、子会社株式および関連会社株式は、時価での評価は行わず、取得原価をもって貸借対照表価額とします(金融商品会計基準第17項)。このように子会社株式および関連会社株式を取得原価をもって貸借対照表価額とすることとしたのは、事業投資と同じく時価の変動を財務活動の成果とは捉えないという考え方に基づくものです(金融商品会計基準第73項)。

もっとも、子会社株式の価値がどのようになっても取得原価のまま据え置くのかというとそのようなことはありません。価値が著しく下落すれば減損処理が必要となります。すなわち、非上場株式のように、時価を把握することが極めて困難と認められる株式については、発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときは、相当の減額をなし、評価差額は当期の損失として処理しなければなりません(金融商品会計基準第21項)。これが、子会社株式の減損と言われる会計処理です。

以上の話は単体の財務諸表を前提とした話です。連結財務諸表においては、子会社や関連会社の損益のうち持分相当額を取り込むことから、子会社や関連会社の純資産の実質価額が適時に反映されることになります。

さて、以上の解説をご覧いただければ、誰の発言がGOOD発言か、もうお分かりですね。正解は以下のとおり。

<正解>
GOOD発言はこちら

取締役C:「S社株式の評価にあたっては取得価額の55%を落とせば十分でしょう。なお、当社単体の決算上、子会社株式を減損するかしないかは連結利益に影響を与える話ではないと考えます。」
コメント:取締役Cの発言は、非上場の子会社の株式の実質価額による評価方法を理解しつつ、連結と単体の違いも把握できていることが分かるGood発言です。

BAD発言はこちら
取締役A:
「S社の純資産がS社株式の取得価額の45%の水準になった以上、S社株式の簿価を1円まで落とすべきです。」
コメント:S社の純資産が取得価額の45%の水準になったのであれば、理論的には45%の水準で評価すべきです。1円まで落とすのは「過度の保守主義」と批判されてもやむを得ない会計処理と言えます。以上よりAの発言はBadです。
取締役B:
「それは落としすぎでしょう。1円まで落としたら連結利益に与える影響が大きすぎるのではないでしょうか。」
コメント:1円まで落とすのは落とし過ぎとの指摘は適切です。しかし、取締役Cの発言にあるように、単体で子会社株式を減損しようがしまいが、いずれにしても連結利益には一切影響はありません。これは、連結財務諸表においては、子会社や関連会社の損益のうち持分相当額を取り込むことから、子会社や関連会社の純資産の実質価額が適時に反映されることが理由です。以上より、以上よりBの発言は連結と単体の違いを意識できていないBad発言です。

2019/09/30 【役員会 Good&Bad発言集】子会社株式の減損

東証一部上場企業のP社の取締役会では子会社S社(設立時からP社が持分のすべてを所有する100%子会社)の普通株式(非上場)の評価を巡って議論が交わされているところです。取締役AからCの発言のうち、誰の発言がGood発言でしょうか?

取締役A:「S社の純資産が取得価額の45%の水準になった以上、1円まで落とすべきです。」

取締役B:「それは落としすぎでしょう。1円まで落としたら連結利益に与える影響が大きすぎるのではないでしょうか。」

取締役C:「取得価額の55%を落とせば十分でしょう。なお、単体で子会社株式を減損しようがしまいが、いずれにしても連結利益には一切影響はありません。」

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2019/09/30 【2019年10月の課題】社外取締役“1/3基準”への対応

2019年10月の課題

6月の株主総会シーズンから約3か月が経ちました。企業が臨時報告書において公表する議案の賛成率に加えて、国内機関投資家も個別開示(自社ホームページでの企業ごと・議案ごとの賛否の開示)をおおむね終えています。そのなかで見えてきた本年株主総会の特徴は、「経営トップの賛成率低下」です。この要因は企業により様々ですが、特に海外機関投資家による、取締役会に占める独立役員の割合を理由とした反対行使が多かったと考えられます。

国内においても三菱UFJ信託銀行が2020年4月以降、全ての企業に対して取締役の総数の1/3以上の社外取締役の選任を求め、これを満たさない場合には原則として取締役候補者の選任議案に反対するとのガイドラインを既に公表しています。来年の総会に向けて、同様の基準の導入が他の投資家にも広がりを見せるか注目されるところです。
このような「1/3の独立役員を求める動き」に、企業はどのように対応していくべきでしょうか。

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2019/09/30 2019年9月度チェックテスト第10問解答画面(不正解)

不正解です。
問題文のとおり、2019年6月に金融庁が企業内容等開示ガイドラインを改正し、臨時報告書に会計監査人が異動した実質的な理由が記載されるよう、具体的な交代理由を例示しましたが、それ以降も相変わらず「任期満了」のみを挙げた事例が4件もありました。もともと監査人の任期は1年で終了することからすれば、「任期満了」のみを記載することはそもそも交代理由の開示として不適切です。こういった不適切な開示がはびこる限り、上場企業のオピニオン・ショッピングの状況は依然として外部からはうかがい知れないままと言わざるをえません。

こちらの記事で再確認!
2019年9月26日 監査法人の交代理由開示、ガイドライン改正受け充実進むも残る課題(会員限定)

2019/09/30 2019年9月度チェックテスト第10問解答画面(正解)

正解です。
問題文のとおり、2019年6月に金融庁が企業内容等開示ガイドラインを改正し、臨時報告書に会計監査人が異動した実質的な理由が記載されるよう、具体的な交代理由を例示しましたが、それ以降も相変わらず「任期満了」のみを挙げた事例が4件もありました。もともと監査人の任期は1年で終了することからすれば、「任期満了」のみを記載することはそもそも交代理由の開示として不適切です。こういった不適切な開示がはびこる限り、上場企業のオピニオン・ショッピングの状況は依然として外部からはうかがい知れないままと言わざるをえません。

こちらの記事で再確認!
2019年9月26日 監査法人の交代理由開示、ガイドライン改正受け充実進むも残る課題(会員限定)

2019/09/30 2019年9月度チェックテスト第9問解答画面(正解)

正解です。
配当性向が低ければ低いほど、投資家は剰余金の処分議案に反対票を投じる可能性が高まります。生命保険協会の調査によると、投資家が中長期的に望ましいと考える配当性向として最も多いレンジは「30%以上40%未満」であり(問題文は正しいです)、上場企業としてはこのレンジを意識した配当を心掛けるようにしたいところです。

こちらの記事で再確認!
2019年9月25日 低い配当性向、無借金経営に機関投資家の厳しい目(会員限定)

2019/09/30 2019年9月度チェックテスト第9問解答画面(不正解)

不正解です。
配当性向が低ければ低いほど、投資家は剰余金の処分議案に反対票を投じる可能性が高まります。生命保険協会の調査によると、投資家が中長期的に望ましいと考える配当性向として最も多いレンジは「30%以上40%未満」であり(問題文は正しいです)、上場企業としてはこのレンジを意識した配当を心掛けるようにしたいところです。

こちらの記事で再確認!
2019年9月25日 低い配当性向、無借金経営に機関投資家の厳しい目(会員限定)