2019/08/26 【失敗学第63回】コロプラの事例(会員限定)

概要

スマホゲームを運営するコロプラ(東京証券取引所市場第一部)が、自社ゲームタイトル「最果てのバベル」に課金ブーストを行っていた。

課金ブースト:セールスランキングの不正操作を目的として、自社ゲームに自社の資金で課金すること。課金ブーストの結果、当該ゲームがセールスランキングで上位になれば、メディアで話題になったりゲームユーザーからの注目が集まったりすることで知名度が向上してゲームのダウンロード数の増加が期待できるため、より一層の課金の“呼び水”になることを目的として行われる。

経緯

コロプラが2019年8月13日に特別調査委員会の調査報告書を公表するまでの経緯は次のとおり。

2019年
5月16日:コロプラの「最果てのバベル」のマーケティング担当者は、広告業務の外注先D社に対して課金ブーストを別名目で発注(1,000万円)。
6月12日:コロプラは自社タイトル「最果てのバベル」の配信をスタート。D社はレンタル業者からiPhoneを200台調達し、各端末に「最果てのバベル」をダウンロードする等準備を行う。
6月13日:D社は用意したiPhoneで一斉に課金を実施。これにより同日のセールスランキングで「最果てのバベル」が一定程度押し上げられる。
6月18日:コロプラに匿名の情報提供があり、「最果てのバベル」に課金ブーストの疑いがあることが判明。同ゲームのマーケティング担当者にヒアリングを実施したところ関与を認める。
6月20日:コロプラは課金ブーストに関わったマーケティング担当者を自宅謹慎処分に付する。
6月21日:コロプラは課金ブーストをしていたことについて適時開示を行う(こちらを参照)。
6月26日:コロプラの取締役会は課金ブースト問題を調査するため特別調査委員会の設置を決議(こちらを参照)。
8月13日:コロプラは特別調査委員会の調査報告書を公表。課金売上約800万円と広告費役800万円を相殺(Appleに対するプラットフォーム使用料約200万円は相殺できないため計上)。

内容・原因・改善策

コロプラが公表した特別調査委員会の調査報告書によると、同社が課金ブースト事件を起こした原因、再発防止策は次のとおりである。

課金ブースト
内容 ・コロプラのゲーム「最果てのバベル」のマーケティング担当者は、App Storeのデータに基づくセールスランキングにおける同ゲームの順位を上げて注目を集めることを目的として、広告会社D社に資金を提供し、2019年6月12日に配信がスタートした「最果てのバベル」への課金ブーストを行った。
・D社は1台当たりの課金額を分散させ怪しまれないようにするため、iPhone端末を200台レンタルして一般のユーザーの動きに近い形となるようして課金ブーストを実施した。
原因 (動機)
コロプラでは、2014年にリリースしてヒットした白猫プロジェクトを最後にヒットタイトルに恵まれず、売上高は2016年9月期をピークにじり貧になっていた。

2016年9月期 2017年9月期 2018年9月期 2019年9月期第三四半期
売上高 84,009百万円 50,692百万円 43,666百万円 27,579百万円
経常利益 33,042百万円 14,629百万円 6,422百万円 ▲16百万円

(機会)
コロプラでは、広告宣伝業務の外部発注にあたり、四半期ごとに経営会議で承認される広告宣伝費の予算の総額に収まる限り、発注金額の大小にかかわらず上長(当該発注担当者より上位の上長であればよいものとされていた)1名の承認があれば発注が可能であった。
(正当化)
担当者は、D社に広告宣伝の一環としてゲーム攻略サイトの立ち上げを発注しており、課金ブーストはゲーム攻略の一環と位置付けることも可能という考えを持っていた。また、報告書によると、担当者は取締役にも事前相談を実施していた可能性が高いとされている。

再発防止策 1 コンプライアンス徹底のビジョンの全社的共有
2 コンプライアンス教育
3 広告宣伝費の稟議手続きの見直し
4 モニタリングの強化
・内部監査室・担当取締役によるモニタリングの強化
・業務フローにおけるモニタリングの強化
・ITシステムによるモニタリングの強化
<この失敗から学ぶべきこと>

外部の第三者に資金を出して自社製品・サービスを利用してもらえれば、売上高を水増しすることができます。広告費など第三者への資金提供が当該第三者の手数料(取り分)も含まれることから最終的には利益を減らす行為と言えますが、少なくとも売上高の水増しはできることから、売上高が賞与や昇給の重要な要素になっている企業では生じやすい不正と言えます。とりわけスマホゲーム業界では、自社タイトルのゲームがセールスランキングで上位に躍り出れば注目を集め、さらなるダウンロード・課金が望めることから、海外では「課金ブースト」が恒常的に行われている模様です。

コロプラの営業担当者が課金ブーストに手を染めた理由として、同社では自社ゲームのヒットが不在のまま売上高がじり貧傾向にあった(下のグラフを参照)ことが指摘されています。スマホゲームは「当たれば一攫千金」と言われていますが、ヒット自体が少なく、ヒットしても永続するものではありません。次のヒット、その次のヒットを出し続けなければ企業価値はじり貧になるだけです。
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コロプラは2018年9月期の有価証券報告書の【経営上の重要な契約等】にApple社とのApple Developer Program License Agreement(iOS搭載端末向けアプリケーションの配信及び販売に関する契約)を重要な契約の一つとして掲げています。Apple社のガイドラインでは「デベロッパがカスタマーレビューの内容を改ざんしたり、金銭や報酬を与えてフィードバックを得たり、フィードバックの一部のみ悪用したり、偽のフィードバックを書くなどしたりしてチャートランキングの上昇を図るか、そのようなサービスを提供する他社と協力したことが判明した場合、AppleはApp Storeの信頼性を保つための手順を踏み、そのデベロッパをDeveloper Programから除名する場合があります。」と定め、そうした行為を固く禁じています(こちらを参照)。コロプラのようなスマホゲーム事業者にとってプラットフォーマーであるAppleから除名されることはAppleでのゲーム配信ができなくなることを意味するため死活問題と言え、Appleの今後の判断の行方が気がかりです。

特別調査委員会の調査報告書によると、コロプラは自社タイトルのゲームについて広告会社に攻略サイトの立ち上げを依頼していました。そのこと自体は今回の調査では問題視されていませんが、自作自演とも思われる販促方法に問題がないのか気になるところです。

2019/08/23 JPX400銘柄の過半数が独立社外取を3分の1以上選任

東証一部上場会社が独立社外取締役を「2名以上」選任することはもはや当然となった感があり、投資家の関心は既に「(取締役総数の)3分の1以上」の選任へと移っている。この傾向は既に2年ほど前から指摘されていたが(2017年8月3日のニュース『独立社外取締役、焦点は「人数」から「比率」へ』参照)、いよいよ本格化してきたと言える。・・・

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2019/08/23 JPX400銘柄の過半数が独立社外取を3分の1以上選任(会員限定)

東証一部上場会社が独立社外取締役を「2名以上」選任することはもはや当然となった感があり、投資家の関心は既に「(取締役総数の)3分の1以上」の選任へと移っている。この傾向は既に2年ほど前から指摘されていたが(2017年8月3日のニュース『独立社外取締役、焦点は「人数」から「比率」へ』参照)、いよいよ本格化してきたと言える。これはデータからも裏付けられる。東京証券取引所が2019年8月1日に公表した「東証上場会社における独立社外取締役の選任状況及び指名委員会・報酬委員会の設置状況」(以下、調査結果)によると、コーポレートガバナンス・コード原則4-8が求める「2名以上の独立社外取締役」を選任している上場会社は、市場第一部で93.4%、JPX日経400銘柄では99.0%に達している。さらに独立社外取締役が全取締役の3分の1以上を占める上場会社は、市場第一部では4割を超え(43.6%)、JPX日経400銘柄では過半数(55.7%)に及んでいる。JPX日経400銘柄では、昨年の調査時(40.6%)と比較して15.1ポイントも増加している。この背景には、議決権行使助言会社が新たな議決権行使助言ポリシーで社外取締役の増員を求めたことがある(ISSとグラスルイスの議決権行使助言ポリシーについては2019年6月19日のニュース「独立社外取締役の“1/3基準”満たす監査等委員会設置会社の割合判明」を参照)。

JPX日経400銘柄:JPX日経インデックス400の略。東京証券取引所および日本経済新聞社が東証の市場第一部等に上場している株式のうち代表的な銘柄として選定した400銘柄。業績が低迷している企業を除いたうえで規模が大きい企業が選定されるため、東京証券取引所の代表的銘柄とも言える。

もっとも、「3分の1」が何人なのかは各上場会社の取締役総数に応じて決まる。社外取締役を設置する監査役(会)設置会社の取締役総数は平均で8.29人だが(日本監査役協会の「役員等の構成の変化などに関する第19回インターネット・アンケート集計結果(監査役(会)設置会社版)」の20ページ参照)、監査等委員会設置会社では9.41人となっている(同集計結果の監査等委員会設置会社版参照)。これらの取締役総数の平均値を基にすれば、「3分の1以上」という基準を満たすには概ね3人から4人の独立社外取締役の選任が必要となってくる。独立社外取締役が2人しかいない企業ではもう1~2人の“積み増し”が必要になるわけだ(あるいは取締役総数を減らすことも考えられる。この手法については2017年8月3日のニュース『独立社外取締役、焦点は「人数」から「比率」へ』参照)。

独立社外取締役の頭数がそろった上場会社で次に問われるのは、独立社外取締役の「質」に他ならない。今後は、各独立社外取締役の「他社の役員の兼任状況」「取締役会への出席率」「継続就任年数」といった定量的なデータに加えて、「独立性」(例えば、会計監査人である監査法人出身者や取引銀行の出身者でないかなど)「多様性」(バックグラウンド、スキル、性別、国籍等)「発言内容」「取締役会で議論を呼んだ議案への賛否の状況」「兼任先の企業の評判」などに注目が集まることになろう。社外取締役を追加選任する際には、人選ミスを避けるためにも、時間をかけて人材の質を見極めたいところだ。

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2019/08/22 「E」と「S」に関する企業と国内機関投資家の対話の現状

産業能率大学 経営学部 教授
光定 洋介

今年も3月決算の上場企業の統合報告書のリリースに向けた準備が佳境を迎えつつある。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がESG投資を本格化する中(2019年7月11日のニュース「GPIFによるESG活動の行方」参照 引用:上場会社役員ガバナンスフォーラム)、機関投資家の注目を集めているのが、・・・

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2019/08/22 「E」と「S」に関する企業と国内機関投資家の対話の現状(会員限定)

産業能率大学 経営学部 教授
光定 洋介

今年も3月決算の上場企業の統合報告書のリリースに向けた準備が佳境を迎えつつある。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がESG投資を本格化する中(2019年7月11日のニュース「GPIFによるESG活動の行方」参照 引用:上場会社役員ガバナンスフォーラム)、機関投資家の注目を集めているのが、ESGのうち「E(環境)」と「S(社会)」に対する企業の取り組みだ。

ESG投資:ESGとは、「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を組み合わせたもので、近年、特にグローバル機関投資家の間で、企業の投資価値を測る評価項目としての地位を確立しつつある。ESG投資とは文字通り「Environmental(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」に優れた企業に投資することをいう。

EとSに関する企業と国内機関投資家による対話は2015年前後に始まったとみられるが、当初から対話活動の中心は「開示」の改善要求であり、現在もそれが主流となっている。これは、例えば投資先企業がE、S活動に取り組んでいるにもかかわらず、そのことが開示されていないが故にESG評価機関からの評価が低く、その結果、機関投資家のポートフォリオから除外されたり、ESG指数に採用されず、ESG投資を呼ぶ込めない恐れがあるからだ(この点については、2015年11月23日掲載の「【特集】世界のESG投資の動向と日本企業への影響」の「日本企業の今後の課題」参照 引用:上場会社役員ガバナンスフォーラム)。そこで国内機関投資家は、E、S情報の開示を促したり、開示方法の変更(例えば、E、Sへの取り組みがどのように企業価値向上につながっているかを示す)を提案したりしてきた。一部の国内大手信託銀行は、企業が統合報告書を作成する際に具体的なアドバイスを行っており、実際、開示方法について外部のアドバイスを受けた企業がESG指数入りを果たし、自社の株式需給を改善させたという事例も出ている。

また、E、Sに関する開示において、環境省が運営する「企業と投資家のためのESG対話プラットフォーム」が果たしている役割も決して小さくない 。「低炭素・脱炭素活動を含む持続的な取り組みを行う企業へ適切な資金配分が行われることを目指し、上場企業とESG投資家を結ぶコミュニケーションの場を提供する」という同プラットフォームの設立目的からすると、同プラットフォームはE(環境)の要素が強いように見えるが、実際の対話はESG全般にわたって行われているようだ。同プラットフォームでは、登録している企業と投資家双方が、コンタクトしたい相手を選択しコメントを送受信することができる。双方のコミュニケーションはクローズドな(送受信者以外はコメントのやり取りを閲覧できない)環境で行われるため、ESG投資家にとっては企業との対話を行いやすく、一方、企業にとっても、ESG投資家が本当に知りたいことを聞き出し、CSRレポートや統合報告書の改善に役立てることが可能だ(同プラットフォームの活用法については、2017年10月19日のニュース「ESG対応に悩む企業が利用したい“官製”プラットフォーム」も参照 引用:上場会社役員ガバナンスフォーラム)。

環境省はパリ協定発効(2020年予定)後の2021年度からの本プラットフォームの本格運用を計画中だが、早くもプラットフォームを通じた対話の成果が出ている。例えば、同プラットフォームを活用した丸井グループ(以下、丸井)はCSRレポート作成に際し、どのようなコンテンツにすべきかについて複数の機関投資家に対話を持ちかけ、それに対して三菱UFJ信託銀行は、企業価値向上の観点から、もう少し地域活性化に対する貢献を強調し、同社が実施する「お客様会議」の内容などを踏まえ「この地域特性だからこそ、この店を作りました」というこだわりの事例を多くすれば、投資家が企業価値向上を連想しやすくなるのではないかといったことを提案している。また同じく丸井に対し、欧州系の機関投資家のアムンディ・ジャパンは、ステークホルダーのうち取引先について、特にアパレル業界においてはサプライチェーン上のリスクが懸念されることから、CSR調達の取り組みについての記載を増やし、リスクや課題などについて現状の会社の認識と取り組み方針を説明することを提案している。

パリ協定:2015年末にパリで開催されたCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)で採択された2020年以降の温暖化対策の国際的枠組み。パリ協定では、18世紀後半に起きた産業革命前と比較し、気温の上昇を「2℃以内」にとどめることを目標としており、各国に対し、温室効果ガスの排出削減目標を設定のうえ、5年ごとに進捗報告およびより厳しい目標への更新を行うことを義務付けている。

CSR:CSRとは「Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任」の略で、企業は社会の一員として社会に与える影響に対して責任を負うべきであるという考え方。

CSR調達:企業が製品の原材料等を調達するにあたり、調達先の企業に対しても自社のCSR規範に準じる水準の社会的責任を果たすよう調達条件を設定すること。調達条件としては、例えば人権の尊重や適正な労働環境の確保、環境への配慮、贈収賄の禁止などが条件)などがよく見受けられる。

さらに、国内大手機関投資家の一部は、E、S問題が投資先の本業に悪影響を及ぼすことが懸念される場合には、より深い対話活動を行っている。例えば、ある大手機関投資家は、パームオイル調達をテーマに設定し、複数の国際的NGOやグローバル企業にヒアリングを行ったうえで、国内企業にエンゲージメントを行う動きがある。また、児童労働や環境リスクの高いパームオイルを調達している可能性のある企業(川下企業(小売)から始めて徐々に川上企業まで対象を広げる)にグローバル・ベストプラクティスに沿った調達方針を提示し、調達方法の改善を促している機関投資家もある。パームオイル問題が顕在化した場合、ブランド価値の毀損や買い控えが起こる可能性があるため、問題のある調達を徐々に減らしていくことは企業価値のダウンサイド・リスクを抑制することにつながるというわけだ。世界的なESG投資残高の増加傾向を踏まえると、企業は投資家からE、Sについて低評価を受けないよう、「企業が投資家を活用する」という姿勢で、さまざまな企業のESGに関するベストプラクティスを熟知しているESG投資家と胸襟を開いて対話し、E、Sへの取り組みを継続的に改善していく必要がある。

パームオイル:パームオイル(世界で最も多く生産されている植物油脂)を巡っては、その原料となるアブラヤシの大規模な農園開発の過程で多くの熱帯林が伐採されたり、焼き払われたりした結果、伐採、森林火災による温室効果ガスの大量排出、熱帯林の消失、絶滅のおそれのある野生生物、生物多様性の減少、大規模農園の開発による土壌、水、大気の汚染といった環境面、森林に依存する先住民等との軋轢、農園における劣悪な労働環境、児童労働、人権侵害など社会面の問題が生じている。

また、G20からの要請を受け、主要国の金融当局から構成される金融安定理事会(FSB)が2015 年に設置した民間主導の「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD=Force on Climate-related Financial Disclosures)」の提言に基づいた開示も求められ始めている。TCFDは、気候関連のリスクおよび機会を適切に評価し価格付けするために投資家、貸付業者、保険会社が必要とする情報を明らかにできるよう2017年6月に最終報告書「気候関連財務情報開示タスクフォースによる提言」をとりまとめており、下記の4項目について開示を求めている。

ガバナンス 気候関連リスク及び機会に関する当該組織のガバナンス
戦 略 当該組織のビジネス・戦略・財務計画に対する気候関連リスク及び機会の実際の及び潜在的影響
リスク管理 当該組織が気候関連リスクを識別・評価・管理するために用いるプロセス
指標と目標 気候関連リスク及び機会を評価・管理するのに使用する指標と目標

GPIFもTCFDの提言に賛同する意向を明らかにしており(2018年12月)、既に上場企業の間でもTCFDの提言に賛同する動きが広がっている(TCFD賛同企業等はこちら)。上場企業はグローバルな開示レベルを意識しながらESG評価を向上させていく必要がありそうだ。

2019/08/21 上場子会社を持つ親会社のジレンマ

周知のとおり、8月2日に開催されたアスクルの定時株主総会では、代表取締役社長の岩田氏および社外取締役3名(いずれも当時)の再任議案が否決されたところだ(本件の関連記事として2019年7月30掲載の【役員会 Good&Bad発言集】上場子会社の独立社外取締役の選任議案参照)。これに先立ち、同社の株式の45%を保有するヤフー、12%を保有するプラスが上記4名の再任議案に反対する意向を表明しており、全体の議決権行使結果の確定を待たず否決は明らかな状態であった。ヤフーは反対理由として、「低迷する業績の早期回復」「経営体制の若返り」などを挙げている(ヤフーのリリースその1その2参照 )。背景には両社が業務・資本提携するLOHACO事業を巡る見解の相違があったとされる。

双方の経営判断の妥当性はさておき、本件をコーポレート・ガバナンスの問題として捉えた場合、論点は・・・

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2019/08/21 上場子会社を持つ親会社のジレンマ(会員限定)

周知のとおり、8月2日に開催されたアスクルの定時株主総会では、代表取締役社長の岩田氏および社外取締役3名(いずれも当時)の再任議案が否決されたところだ(本件の関連記事として2019年7月30掲載の【役員会 Good&Bad発言集】上場子会社の独立社外取締役の選任議案参照)。これに先立ち、同社の株式の45%を保有するヤフー、12%を保有するプラスが上記4名の再任議案に反対する意向を表明しており、全体の議決権行使結果の確定を待たず否決は明らかな状態であった。ヤフーは反対理由として、「低迷する業績の早期回復」「経営体制の若返り」などを挙げている(ヤフーのリリースその1その2参照 )。背景には両社が業務・資本提携するLOHACO事業を巡る見解の相違があったとされる。

双方の経営判断の妥当性はさておき、本件をコーポレート・ガバナンスの問題として捉えた場合、論点は「支配株主が上場子会社のトップ人事に決定的な影響力を及ぼすことの是非」に尽きる。ちなみに、アスクルのコーポレート・ガバナンス報告書によるとヤフーは「親会社」とはされていないが、現実的な議決権行使比率を前提にすると議決権の過半数を握っていると言っても過言ではなく、本件は親子上場の問題として扱うべきだ。

支配株主:議決権の50%超を有している者や議決権の40%以上を有している者で、かつ、取締役の過半数を派遣していたり重要な財務および事業の方針の決定を支配する契約書が存在していたりする者を指す(東証 有価証券上場規程施行規則3条の2)。上場会社の支配株主自体も上場しているケースを「親子上場」という。「支配株主」以外を「一般株主」という。

本株主総会前におけるアスクルの取締役会の人数は10名で、社外取締役は5名、そのうち3名は独立社外取締役であった。この取締役会構成は、(2019年)6月28日に経済産業省が公表した報告書「グループガバナンスの強化と持続的な企業価値の向上に向けて」(サマリー版はこちら)が上場子会社に求める「取締役会における独立社外取締役の比率を高めること(1/3 以上や過半数等)を目指すこと」(131ページ「6.3.4 上場子会社における 実効的なガバナンスの仕組みの在り方」参照)という要望は満たしている。

子会社が上場しており一般株主の利益を最大化する使命を負っている以上、親会社は上場子会社の独立したガバナンスを無視するべきではない。事業譲渡や役員人事などにおいて決定権を握る必要があるならば、完全子会社化により非上場化すべきだろう。一般株主に対しては適切なプレミアムの支払いにより報いることで利害関係から外れてもらい、子会社の経営資源の100%をグループの共有資産としたうえで、最適な資源配分や人事マネジメントを選択すればよい。その際に上場子会社の経営陣が反発するのであれば敵対的TOBも辞さないスタンスが求められるし、逆に上場子会社側には、株主に対しさらに魅力的な条件でMBOを提案することで、親会社の影響下から脱する覚悟が求められよう。

プレミアム:割増価格のこと

MBO:MBO(マネジメント・バイアウト)とは、現在の経営者が全部または一部の資金を出資し、事業の継続を前提として一般株主から対象会社の株式を取得することをいう。

2019/08/20 フォローアップ会議、今後の検討テーマは?

2019年6月の株主総会シーズンが終わり、来年に向けたコーポレートガバナンス関連規制の改革議論が間もなく始まる。金融庁・東証が共催する「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」も例年、早ければ9月に再開されており、3年ごとの改訂が予定されているスチュワードシップ・コードを中心に議論が進むとみられる。その際には、今年(2019年)4月24日に公表された「『スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議』 意見書(4)」が議論の土台となる。

同意見書は、スチュワードシップの検討事項として、①運用機関による議決権行使に係る賛否理由などの説明を充実させること、②企業年金によるスチュワードシップ活動の取組みを推進すること、③議決権行使助言会社や運用コンサルタントの活動の適正性の確認、などを挙げている(2ページ~)。いずれもアセットマネージャーである運用機関がスチュワードシップ活動を一層厳格に進めることにつながる施策であり、その結果、投資先企業に対する議決権行使やエンゲージメントのスタンスも厳格化することになるだろう。

コーポレートガバナンス・コードは昨年(2018年)改訂されたばかりであり、次の大きな改訂は前回の改訂から3年後の2021年と予想される。同意見書はコーポレートガバナンスの検討事項として、・・・

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2019/08/20 フォローアップ会議、今後の検討テーマは?(会員限定)

2019年6月の株主総会シーズンが終わり、来年に向けたコーポレートガバナンス関連規制の改革議論が間もなく始まる。金融庁・東証が共催する「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」も例年、早ければ9月に再開されており、3年ごとの改訂が予定されているスチュワードシップ・コードを中心に議論が進むとみられる。その際には、今年(2019年)4月24日に公表された「『スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議』 意見書(4)」が議論の土台となる。

同意見書は、スチュワードシップの検討事項として、①運用機関による議決権行使に係る賛否理由などの説明を充実させること、②企業年金によるスチュワードシップ活動の取組みを推進すること、③議決権行使助言会社や運用コンサルタントの活動の適正性の確認、などを挙げている(2ページ~)。いずれもアセットマネージャーである運用機関がスチュワードシップ活動を一層厳格に進めることにつながる施策であり、その結果、投資先企業に対する議決権行使やエンゲージメントのスタンスも厳格化することになるだろう。

コーポレートガバナンス・コードは昨年(2018年)改訂されたばかりであり、次の大きな改訂は前回の改訂から3年後の2021年と予想される。同意見書はコーポレートガバナンスの検討事項として、①内部監査が一定の独立性をもって有効に機能するよう、独立社外取締役を含む取締役会・監査委員会や監査役会などに対しても直接報告が行われる仕組みを確立するなど「守りのガバナンス」の実効性の担保、②上場子会社において支配株主等から独立性がある社外取締役の比率を高め取締役会の独立性を高めるなど、グループガバナンスの厳格化、などを挙げている(4ページ~)。時期的にコーポレートガバナンス・コード改訂を伴うかは不明だが、上場規則の改正など何らかの措置が講じられるものとみられる(なお、①については2019年5月10日のニュース「CEOの圧力に屈しない内部監査部門を構築する方法」、②については2019年7月30日掲載の【役員会 Good&Bad発言集】上場子会社の独立社外取締役の選任議案 参照)。

内部監査:自社の従業員(内部監査担当者)によって行われる監査で、経営者の手足となって監査対象部門から独立した立場で法令や定款・社内規程を遵守できているかどうか等を評価し、改善を促す仕組み。コーポレートガバナンスやリスクマネジメント等の観点から重要な役割を担う。

守りのガバナンス:不祥事の防止や発見を主眼に置いたガバナンス

ところで、同意見書は冒頭で、企業側における「更なる課題」として、以下のポイントを提起している。早々にフォローアップ会議の議題に上るとは限らないが、次回のコーポレートガバナンス・コード改訂の際には重要な検討テーマとして取り上げられる可能性は高い。上場会社としては早めに対応(当フォーラムで加筆した例(赤字部分)参照)を進めておく必要があろう。

・ 指名委員会、報酬委員会が設置されていながらも委員構成の偏り等により必ずしもその機能が十分発揮されておらず、必ずしも企業価値向上の観点から適切な資質を備えた独立社外取締役の選定につながっていない
(→委員会の独立性を高めるため、社内委員を減らす。議長を社外者に限定するなど

・ 企業年金の運用資産に占める政策保有株式が過大となっている例がある
(→みなし保有株式を含めた政策保有株式を詳細に開示し、その売却を加速する。企業年金がスチュワードシップ・コードを受け入れる、など

みなし保有株式:提出会社が所有権は有しないものの議決権行使権限又はその指図権限を留保している株式をいい、貸借対照表計上額は、みなし保有株式の事業年度末の時価に株式数を乗じた数とする。

・ 取締役会の活動内容や実効性評価について必ずしも具体的に説明や情報提供がなされていない
(→有価証券報告書や統合報告書において、取締役会の議題や実効性評価の結果を開示する。実効性評価において第三者機関を活用し、実効性評価のプロセスを透明化する、など